攻めたカップ麺を得意とするエースコックから、またもやニッチな商品がデビューしました。それが、「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」です。
「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」。希望小売価格は298円(税別)で、1食107g(麺90g)あたり444kcal、炭水化物68.8g
商品名で頭が混乱するかもしれませんが、要は、弁当や洋食の付け合わせとして下敷きにされている、“あのスパゲッティ”を再現したカップ麺です。“あのスパゲッティ”の味は弁当によって異なり、ナポリタンやマヨネーズ和えなど数パターンありますが、今回商品化のターゲットとなったのは、デミグラスハンバーグのソースを絡めることを想定としたプレーンなタイプ。
側面には「『ガロニ』って知ってる?」の文字が。「ガロニ(ガルニ)」とは、フランス語の「ガルニチュール(飾り付けの意)」が語源で、料理の付け合わせを指す言葉。“あのスパゲッティ”も「ガロニ」のひとつです。ちなみに、煮込みで用いられる香草の束「ブーケ(花束)ガルニ(飾り付け)」も、同様の意味で使われます
弁当で下敷きにされているスパゲッティの味をイメージはできるものの、再現度はどうなのか、スパゲッティをカップ麺で表現とはどういうことなのか……。また、そもそもおいしいのかも気になるところ。そこで、リアルなハンバーグ弁当(の下敷きスパゲッティ)と食べ比べてみます。
左は、近所のスーパーで売っていたデミグラスハンバーグ弁当(黒米ご飯仕立て)。こちらの下敷きスパゲッティと、本商品を食べ比べます
「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」のフタを開けると、3つの袋が入っていました。それぞれ、かやく、香味油、調味たれです。
そして麺は、太めでもっさりとした印象。一見、スパゲッティらしさはありませんが、断面が丸いところはスパゲッティ風と言えるでしょう。
かやくは、鶏・豚味付けそぼろとタマネギ。量は心許ないですが、存在感はいかに?
熱湯による調理時間は5分。注いで待ち、湯切りをして調味料類をかけて完成です。カップ焼きそばやカップまぜそばと同じ要領ですね。なお、調理時点で「おっ」と思ったのが香味油の仕事ぶり。
香味油は麺をほぐしやすくする効果もありつつ、その香りに驚かされました
この香味油、リッチな牛脂っぽいものを使っているのか、この香りだけで一流洋食店のデミグラスソース的なアロマが感じられます! もっと簡略化するなら、油を調味たれと混ぜて1袋にする方法もあったと思いますが、油とソース(調味たれ)とで分けるところには、メーカーのこだわりを感じました。
調味たれは、トマトケチャップ、ウスターソース、醤油などで構成されていました。洋食的なフレーバーなので、ジャンクさは十分ありつつも、普通のまぜそばとは少々異なります
さっそく味わってみると、いろんな意味で麺の主張が強めです。パッケージ側面の原材料表記を確認すると、そこには中華麺に欠かせない「かんすい」の文字が。しかも揚げ麺なので、その味はカップラーメンと同じで、スパゲッティとは異なります。とはいえ、だからダメかというとそんなことはなく、カップ麺らしいジャンクなパンチがあって、これはこれでいい気がします。
麺は太めのストレートタイプ。見た目は、もそっとした印象です
今はなき、日清食品の「日清スパ王」(現行の「スパ王」は冷凍食品の「日清スパ王プレミアム」)をはじめ、ひと昔前はパスタのカップ麺が市場に出回っていましたから、技術的にパスタを使うことはできたはず。それをあえて「かんすい」入りの揚げ麺にしたのは、コスト面も含めさまざまな意図があったのでしょう。それに、味はカップ麺系ですが食感はスパゲッティっぽい側面もあります。
イメージは、昔ながらのロメスパ系スパゲッティ店(気軽にスパゲッティを食べられる路面店)にありがちな、太いロングパスタ
まあ厳密にはスパゲッティよりも太い、スパゲットーニやヴェルミチェッリと呼ばれるタイプかもしれません。はたまた、断面は丸いものの真円ではなく平打ちの楕円なので、形状としてはリングイネと呼ばれるパスタに近いです。
形状に関してはさておき、食感は、強めのコシともちもちが両立。もっさりしていてツルツル感はありませんが、五島うどんのような、細めの平打ちうどんに似た部分もあります。そこに、リッチな牛脂っぽいアロマをはらんだデミグラスソースがフィット。トマトや酸味は弱めで、その分タマネギや肉の風味といったハンバーグの要素を豊かに感じる味わいです。
かやくはぶっちゃけチープ。しかしながら、あるのとないのとでは大違いです
かやくの、鶏・豚味付けそぼろは小さいながらも粒感が豊かで、デミグラスソースを凝縮したような濃い味付けも秀逸。タマネギはソテーオニオンのような甘みと、やわらかさの中に感じるシャキッとしたニュアンスがナイス。“スパゲッティに乗っていたハンバーグを食べた後”を再現してのこの量なのかもしれませんが、おいしいからこそ、もっと入っていたらいいのになと思います。
お次はいよいよ、リアルなハンバーグ弁当の下敷きスパゲッティと食べ比べます。より詳しく観察すると、ハンバーグの下敷きになっていながらも、まだソースと絡まっていない状態です。これはあえて、弁当工場による配慮でしょう。
ソースと絡まっていなければ、そのままの味を楽しんだり、野菜と絡めたりといった食べ方もできます
このスパゲッティをハンバーグのデミグラスソースに絡め、「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」の麺と並べてみました。交互に食べ、その違いなどをチェックします。
リアルなほう(右)はベースのスパゲッティが白く、赤褐色のデミグラスソースがよく映えます
リアルな下敷きスパゲッティは、トマトのうまみだけでなく酸味も感じられ、比較的あっさり。なお、この弁当の場合は副菜の野菜にハーブソースがかかっており、その影響もあってより軽めな味に感じられます。
ハーブが強めなデミグラスソースでしたが、「ガチだとこうだよね」と納得の味!
いっぽうの「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」を改めて食べてみると、やはり麺が別物なので、その分リアルな下敷きスパゲッティから遠ざかってしまう点は否めません。ただ、いい意味でアーティフィシャル(人工的)であり、パッとイメージするデミグラスソースの風味は「まさにこれ!」という感じ。実に印象的です。
麺が「かんすい」なしのノンフライ麺であれば、もっと近い味になるのかもしれません。とはいえ、あえて味の近さよりもおいしさやコスパを求めてこうなったのかも
そもそもデミグラスソースの味は、クラシカルからモダンまで幅広く、濃厚系、淡麗系とさまざま。その中でも、かなり王道のデミグラスソースを狙ったのではないかと思いました。その意味では、商品名が「ハンバーグ弁当風」となっているのも納得できます。
「名もなき下敷きスパゲッティ味焼そば ハンバーグ弁当風」は、ボリューム的に大盛りタイプにあたりますが、具材が少なめなので298円(税別)という希望小売価格は強気にも感じます。ただ、トガッたコンセプトと、珍しく洋風な味わいには意外なおいしさがあって、食べる価値は十分あると言えるでしょう。
スーパーなら、安めに販売している店舗もあります
以前、価格.comマガジンで、同じくエースコックの「まぜてザクザク!シン・濃厚アブラソバ」を紹介しましたが、個人的には今回のほうが好印象。エースコックはユニーク系カップ麺を得意としているので、今後にも期待です!