「え…本当ですか?そんなことあり得るの?」 廃炉の取材を担当して7年近く。 様々なトラブルや工程の延期を経験し、大抵のことには驚かなくなっていた私も、さすがに耳を疑った。 去年8月、初めてとなる核燃料デブリの試験的取り出しに臨んだ東京電力。 世界が注目する歴史的作業は、装置を押し込むパイプの取り付け順を誤るという「初歩的なミス」で延期された。 最長40年とされる廃炉の遅れにもつながるミスやトラブルを防ぐことはできないのか。 内情を知る作業員に話を聞くと、根深い背景があることが浮かび上がってきた。 (科学・文化部記者 吉田明人) 14年前の事故で溶け落ちた核燃料と周囲の構造物が混ざり合った核燃料デブリは、福島第一原発の1号機から3号機までで総量880トンとされ、その取り出しは廃炉で最大の難関とされている。 その難関に初めて挑んだ今回の試験的取り出しでは、去年11月に0.7グラムの核燃料デブリ