WO2023080251A1

WO2023080251A1 - 医療器具

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Publication number: WO2023080251A1
Application number: PCT/JP2022/041506
Authority: WO
Inventors: 優畑; 陽一郎岩瀬; 宏伊藤; 弘樹吉川; 学有延; 拓心密岡; 聡山本
Original assignee: テルモ株式会社
Priority date: 2021-11-08
Filing date: 2022-11-08
Publication date: 2023-05-11
Also published as: JPWO2023080251A1

Abstract

【課題】投与物を脳等の部位に投与する手技の侵襲性を低くし得る医療器具を提供する。【解決手段】　医療器具１００は、生体内に留置可能であって薬物を経時的に徐放可能な投与装置１０と、投与装置を収容可能な内側壁２２１を含み、先端が血管壁ＢＷを貫通可能に形成した穿刺部２２０と、を有する。

Description

医療器具

　本発明は、医療器具に関する。

　中枢神経疾患に対する薬物治療では特に高分子を含む製剤等が血液脳関門を通過できないことから十分な薬効を得ることが難しい。このような技術について、特許文献１には、頭蓋内の開口部を通して投与物である固形薬剤を脳室に投与する装置について記載されている。

特表２０１６－５１５８６６号公報

　本発明者らは、特許文献１のような技術では薬剤が頭蓋に作製した穿頭孔等の開口部から目的部位に投与されるため、手技の侵襲性が高くなることについて懸念している。

　本発明の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、薬剤等の投与物を脳等の部位に投与する手技の侵襲性を著しく低くし得る医療器具を提供することを目的としている。

　上記課題を解決するため、本実施形態に係る医療器具は、投与装置と、穿刺部と、を有する。投与装置は生体内に留置可能であって投与物（薬物など）を経時的に徐放可能に構成している。穿刺部は、投与装置を収容可能な内側壁を含み、先端が血管壁に貫通可能に形成している。

　本発明の一実施形態に係る医療器具は、上記のように構成しているため、薬物等の投与物を脳等の部位に投与する手技の侵襲性を低くすることに寄与しうる。

本実施形態に係る医療器具を構成する投与装置によって投与される投与物の作用する部位を説明する脳の概略図である。本実施形態に係る医療器具を構成する投与装置によって投与される投与物の作用する部位を説明する脳の概略図である。本実施形態に係る医療器具を構成する投与装置によって投与される投与物の作用する部位を説明する脳の概略図である。本実施形態に係る医療器具を構成する投与装置を留置する部位を説明する脳の概略図である。第１実施形態に係る医療器具の構成を示す図である。医療器具の留置部を穿刺部の内部空間から外部に移動させた（配置した）際を示す図である。医療器具を構成する投与装置を示す図である。第１実施形態に係る医療器具の使用方法について示すフローチャートである。第１実施形態に係る医療器具を導入する部位を示す図である。医療器具の使用方法に係る手技について説明する図である。医療器具を構成する穿刺部によって開けられた血管壁の穴部を管状部材によって穿通させ、留置部を構成する先端側拡張部を血管外で拡張させた状態を示す図である。医療器具を構成する穿刺部によって開けられた血管壁の穴部を管状部材によって穿通させ、留置部を構成する先端側拡張部を血管外で拡張させるとともに、血管内で先端側拡張部を拡張させた状態を示す図である。第２実施形態に係る医療器具を示す図であって、医療器具を構成する留置部と投与装置を分離させた状態を示す図である。図１３に係る医療器具の留置部と投与装置を接続した状態を示す図である。第２実施形態に係る医療器具を導入する部位を示す図である。第２実施形態に係る医療器具を構成する穿刺部によって開けられた血管壁の穴部を管状部材によって穿通させ、血管外で先端側拡張部を拡張させた状態を示す図である。第２実施形態に係る医療器具を頸部近傍の皮下に留置した状態について説明する図である。

　以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

　さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。

　また、以下の説明において、「第１」、「第２」のような序数詞を付して説明し得るが、特に言及しない限り、便宜上用いるものであって何らかの順序を規定するものではない。

　図１から図４は、本実施形態に係る医療器具１を構成する投与装置１００を留置する部位を示す生体内部の図である。図５は本実施形態に係る医療器具１を示す図である。図６は、医療器具１を構成する留置部２３０を穿刺部２２０の内部空間から外部に配置した状態を示す図である。図７は投与装置１００の構成について示す図である。

　本実施形態に係る医療器具１は、医療器具１を構成する投与装置１００を下錘体静脈洞ＳＰＩ（図４参照）等の血管壁ＢＷに穿刺して留置することができる。投与装置１００によって投与される投与物Ｘは、図１から図３に示すように側脳室ＬＶ付近に位置する線条体ＳＴで作用し得る。

　本実施形態に係る医療器具１は、生体などの投与対象に対して薬物などの投与物Ｘを長期間（少なくとも３週間～数か月、さらには数年間）持続的に投与（徐放）するための装置である。医療器具１から投与する投与物Ｘは、投与対象となる生体に対して長期徐放により所定の効果発現が得られ、かつ連続的に装置から放出可能な流体組成物である。投与物Ｘは、一例として、所定の疾患の治療を目的とする薬剤（液剤）である。薬剤は、薬物を含む。薬物は、任意の生理学的にまたは薬理学的に活性な物質であり、特にヒトまたは動物の体に送達されることが知られるものであり得る。薬物は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン作動性受容体、骨格筋、心臓血管系、平滑筋、血管系、シナプス（ｓｙｎｏｐｔｉｃ）部位、神経交換器接合部位、内分泌およびホルモン系、免疫系、生殖器系、骨格系、局所ホルモン系、消化器及び排泄系、ヒスタミン系、または中枢神経系に作用する薬物を含むが、これらに限定されない。さらに、薬物は、感染症、慢性痛、糖尿病、自己免疫疾患、内分泌疾患、代謝異常、及びリウマチ性疾患の治療に用いられる薬物を含むが、これらに限定されない。さらに、薬物は、ペプチド、タンパク質、ポリペプチド（例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン）、核酸、オリゴヌクレオチド、ウィルス、ウィルスベクター、プラスミド、核タンパク質、多糖、糖タンパク質、リポタンパク質、細胞、ステロイド、鎮痛薬、局所麻酔薬、抗生物質製剤、抗炎症性コルチコステロイド、眼薬、製薬学的用途の他の小分子、またはこれらの種の合成アナログ、およびこれらの混合物などを含むが、これらに限定されない。投与物Ｘは、具体的にはヌシネルセンナトリウム製剤であるスピンラザ、バクロフェン、イデュルスルファーゼベータ（遺伝子組換え）製剤であるヒュンタラーゼ、セルリポナーゼアルファ（遺伝子組換え）製剤であるブリニューラ、ドパミンＤ２受容体作動薬であるロピニロール等を使用することができる。医療器具１を構成する投与装置１００は、本実施形態において患者の血管内に留置されて投与物Ｘ
が徐放される。

　医療器具１は、図５から図７に示すように投与装置１００と、押し込み部材２１０と、穿刺部２２０と、留置部２３０と、を備える。以下、詳述する。

　（投与装置）
　投与装置１００は、生体内に留置可能であって、投与物Ｘを経時的に徐放可能に構成している。投与装置１００は、図７に示すように本体部１０と、液体透過部２０と、押圧部３０と、栓体４０と、放出部５０と、を備える。

　本体部１０は、投与装置１００の筐体を構成する中空の筒状部材で構成される。本体部１０は、体液（細胞外液）中の液体成分が流入する上流側に位置する基端部１２と、投与物Ｘを生体に放出する下流側に位置する先端部１３とを有する。液体透過部２０、押圧部３０、栓体４０、および放出部５０は、本体部１０の基端部１２から先端部１３に向かって順に配置される。

　本体部１０は、栓体４０を境に第１空間Ａ１と、第２空間Ａ２と、を有する。第１空間Ａ１は、液体透過部２０と栓体４０とによって区画され、押圧部３０が収納される空間である。第２空間Ａ２は、栓体４０と、放出部５０によって区画され、投与物Ｘが収納される空間（内腔）である。また、第２空間Ａ２の少なくとも一部は、栓体４０の摺動領域を構成する。

　第１空間Ａ１と第２空間Ａ２は、投与装置１００の駆動前後において、栓体４０の摺動に伴い空間が拡大または縮小する。すなわち、第１空間Ａ１は、投与装置１００が駆動を開始すると、押圧部３０によって栓体４０が下流側へ摺動して徐々に間隔が広がる。また、第２空間Ａ２は、投与装置１００が駆動を開始すると、押圧部３０によって栓体４０が下流側へ摺動して徐々に間隔が狭まる。第１空間Ａ１と第２空間Ａ２は本体部１０の内部空間を共有しているため、栓体４０の摺動により第１空間Ａ１が増大すれば第２空間Ａ２は減少し、第１空間Ａ１が減少すれば第２空間Ａ２が増大する。

　本体部１０の構成材料としては、生体に対して非侵襲若しくは低侵襲であって医療分野において公知の樹脂材料（アクリロニトリルポリマー類、ハロゲン化ポリマー類、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル－アクリル酸共重合体、ポリカーボネート－アクリロニトリル－ブタジエン－スチレン、及びポリスチレンなど）、金属材料（ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、バナジウム、白金、タンタル、金、およびこれらの合金、並びに、金めっき合金鉄、白金めっき合金鉄、コバルトクロム合金、および窒化チタン被覆ステンレス鋼など）が適用可能である。また、表面をコーティングするなどにより、血栓の形成や線維化、内皮化などを適宜抑制または促進させることにより、生体適合性を向上させてもよい。

　液体透過部２０は、本体部１０の基端側に配置され、生体と投与装置１００の内部とを隔離すると共に、生体内の体液に含まれる液体成分のみを透過させる。液体透過部２０は、体液中の液体成分のみを透過させることが可能な固液分離機能を有する部材で構成される。液体透過部２０は、一例として、可塑化されたセルロース系材料、ヒドロキシルエチルメタクリレート（ＨＥＭＡ）のような強化ポリメチルメタクリレート類（ＰＭＭＡ）、並びに、ポリウレタン類及びポリアミド類、ポリエーテル－ポリアミド共重合体類、熱可塑性コポリエステル類のようなエラストマー材料などの材料で構成される半透膜を適用することができる。

　押圧部３０は、本体部１０内において液体透過部２０よりも下流側に位置し、栓体４０よりも上流側に配置され、栓体４０を下流側に押圧する。本実施形態では、押圧部３０は、浸透圧の原理を利用して液体透過部２０を透過した液体成分によって浸透することで膨張する浸透圧エンジンである。押圧部３０は、液体透過部２０を透過した液体成分によって徐々に膨張し、この膨張に伴う第１空間Ａ１内の内圧上昇に起因する押圧作用により栓体４０を下流側に摺動させる。

　押圧部３０は、使用条件（投与物Ｘの徐放期間や単位時間あたりの放出量など）に応じた栓体４０の押圧速度（すなわち、押圧部３０の膨張速度）となるように、構成材料やサイズなどを適宜決定することができる。押圧部３０は、一例として塩等を使用することができる。投与装置１００は、押圧部３０を構成する浸透圧エンジンの組成や液体透過部２０を構成する半透膜の材料や厚みなどによって、数年間に亘って長期的に薬剤を徐放することが可能である。

　栓体４０は、柱状の基部４１と、この基部４１の径方向外周に突設されている環状凸条の突出部４２と、を有して構成される。栓体４０は、押圧部３０により押圧されて下流側へ摺動により移動し、第２空間Ａ２内に収容される投与物Ｘを放出部５０側へ押し出す。栓体４０は、本体部１０内において押圧部３０よりも下流側に位置し、その外周面が本体部１０の内腔１１の内周面に液密に接すると共に、内腔１１内に摺動可能に配置されている。

　本実施形態では、突出部４２は、基部４１の基端側の外面に設けられる第１突出部４２ａと、基部４１の略中間に設けられる第２突出部４２ｂと、基部４１の先端側の外面に設けられる第３突出部４２ｃと、で構成される。突出部４２の最も外側に突出した頂点部は、本体部１０の内腔１１の内周面と当接する。第１突出部４２ａ、第２突出部４２ｂ、および第３突出部４２ｃは、投与物Ｘが栓体４０よりも基端側に漏出しないように内腔１１の内周面との間をシールする。

　なお、突出部４２は、第１突出部４２ａ、第２突出部４２ｂ、および第３突出部４２ｃを備えた構成であるが、その数や配置位置は特に限定されない。また、栓体４０は、突出部４２を備えていない構成とすることもできる。

　栓体４０の構成材料としては、本体部１０の内腔１１の内周面との密着性（液密性）を保持し、可撓性を有する材料で構成される。可撓性材料は弾性材料であることが好ましく、弾性材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル－ブタジエンゴム、スチレン－ブタジエンゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム材料（特に、加硫処理したもの）や、スチレン系エラストマー、水添スチレン系エラストマー、およびこれらスチレン系エラストマーにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、α－オレフィン共重合体などのポリオレフィンや、流動パラフィン、プロセスオイルなどのオイルやタルク、キャスト、マイカなどの粉体無機物を混合したものが挙げられる。さらに、ポリ塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーや、それら混合物が構成材料として使用できる。構成材料としては、特に、弾性特性を有し、γ線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌が可能などの観点からジエン系ゴム、スチレン系エラストマーなどを適用することができる。なお、栓体４０は、内腔１１内を液密に摺動可能な構成を有すればよい。そのため、栓体４０は、基部４１および突出部４２を可撓性材料あるいは弾性材料で構成してもよいし、例えば内腔１１と当接する突出部４２のみを弾性材料で構成して基部４１は弾性を有さない硬質材料で構成してもよい。また、表面をコーティングするなどにより、摺動性能を変化させることもできる。

　放出部５０は、本体部１０の先端側に配置され、栓体４０により押し出された投与物Ｘを生体内に放出する。放出部５０は、投与物Ｘを生体内に効率的に投与するため、所定の厚みを有する板状部材に軸方向に沿って貫通する貫通孔５１を有する。放出部５０は、貫通孔５１を後述する管状部材２４０の流路２４１と連通させることにより、投与物Ｘを生体内に放出することができる。なお、放出部５０の貫通孔の形状に関しては、管状部材２４０の流路２４１に投与物Ｘを流通できること、投与物Ｘの性状や投与装置１００の留置箇所における投与物Ｘの拡散のし易さなどを考慮して適宜決定することができる。また、放出部５０や管状部材２４０の表面を親水性素材、疎水性素材、ヘパリン、パリレン等によるコーティングにより、血栓の付着、細胞遊走による流路２４１の詰まり、投与物Ｘの適切な投与量の調整などに適宜利用できる。

　（押し込み部材）
　押し込み部材２１０は、投与装置１００の基端側に配置でき、投与装置１００を生体管腔に向けて押し込み可能に構成している。押し込み部材２１０は、複雑に湾曲した生体管腔に追従できるように可撓性を備えるとともに、投与装置１００を押し込めるように比較的剛性を高く構成している。

　押し込み部材２１０の材料について例示すれば、本体部１０と同様の公知の樹脂材料や金属材料等、またはその組み合わせで構成できる。押し込み部材２１０の先端部は投与装置１００を先端側に押し込むことができれば特に限定されないが、投与装置１００と接続していなくてもよく、または粘着部材を設ける等して投与装置１００と着脱自在に構成してもよい。

　（穿刺部）
　穿刺部２２０は、図５に示すように投与装置１００と留置部２３０を収容可能な内部空間を形成する内側壁２２１を含み、先端が血管壁ＢＷを貫通可能に鋭利な形状に形成している。穿刺部２２０は、先端部を血管壁ＢＷに穿刺できるようにステンレス鋼、チタン、ニッケル、またはそれらを含む合金などの金属を含むことができる。穿刺部２２０の寸法は、一例として、直径２ｍｍ、肉厚０．１ｍｍ、長手方向の長さ１５０ｃｍなどのように形成することができる。

　ただし、穿刺部２２０は目的部位である血管壁の近傍に穿刺できれば、材料や具体的な寸法は上記に限定されない。穿刺部２２０は、先端の位置を造影画像等にて視認できるように先端にマーカー等を設けて血管壁ＢＷからの穿刺距離等を確認することができる。これにより、脳組織への損傷を防止することができる。

　（留置部）
　留置部２３０は投与装置１００に接続され、投与装置１００を血管内に配置した状態において血管壁ＢＷに引っ掛かることができるように構成している。留置部２３０は、図５等に示すように管状部材２４０と、先端側拡張部２５０と、基端側拡張部２６０と、を備える。留置部２３０は穿刺部２２０の内部空間に収納可能に構成している。

　管状部材２４０は長尺状に構成するとともに、穿刺部２２０の内部空間に収容可能であって穿刺部２２０が穿刺した血管壁ＢＷの穿刺部位に配置可能に構成している。管状部材２４０は、図５に示すように流路２４１と開口部２４２と、を備える。

　流路２４１は管状部材２４０の内部に設けられ、投与装置１００の放出部５０と連通し、投与装置１００の放出部５０の貫通孔５１からの投与物Ｘを流通可能に構成している。管状部材２４０は周方向における肉厚が略均等となるように流路２４１を形成できる。開口部２４２は流路２４１と連通して設けられ、流路２４１から流通する投与物Ｘを外部に放出可能に構成している。開口部２４２は、本実施形態において管状部材２４０の長手方向における先端において先端側を向く穴部として構成できる。ただし、投与物Ｘを外部に放出できれば、放出部は上記に限定されず、管状部材２４０の先端側において側面に穴部を設けるように構成してもよい。

　管状部材２４０は投与装置１００の本体部１０と同様の材料によって形成できる。また、管状部材２４０は、ワイヤやスプリング等を巻き付けることによって、管状部材２４０を長手方向の先端側に押し込んだ際の押し込み力を良好にすることができる。管状部材２４０は、放出部５０に形成された穴部と連通するように構成できる。この時、先端側拡張部２５０基部側表面に膨潤ゲルなどのコーティングを施すことにより、血管壁ＢＷに留置した際に脊髄液の漏出を防止することができる。また、管状部材２４０は本実施形態において投与装置１００と一体に連結されるように構成している。この時、管状部材２４０の内腔に滅菌グレードのフィルターを設置することにより、投与物Ｘの投与にともなう感染症を防止することもできる。

　先端側拡張部２５０および基端側拡張部２６０は、穿刺部２２０の内部空間に収納可能であるとともに、穿刺部２２０の内部空間から外部に位置した状態において内部空間に位置する状態よりも径方向の寸法が大きくなるように拡張変形可能に構成している。先端側拡張部２５０および基端側拡張部２６０は、穿刺部２２０の内部空間にいない無負荷状態において穿刺部の内部空間の寸法よりも大きくなるように形成された拡張部材を備える。先端側拡張部２５０および基端側拡張部２６０の拡張部材は、穿刺部２２０の内部空間よりも大きくなるように付勢された形状記憶合金、形状記憶樹脂、またはばねなどの弾性部材をふくむことができる。

　先端側拡張部２５０は、管状部材２４０の先端側に設けられる。先端側拡張部２５０は、図６に示すように管状部材２４０の外部に配置されることによって径方向外方に拡張し、穿刺部２２０が血管壁ＢＷを穿刺した状態で血管壁ＢＷに引っ掛かり得る。先端側拡張部２５０は、血管壁ＢＷに引っ掛かることによって先端側拡張部２５０が静脈壁等の血管壁を通過して血管内に移動することを防止する。

　基端側拡張部２６０は、管状部材２４０の長手方向において先端側拡張部２５０よりも基端側に形成され、穿刺部２２０の内部空間に収容可能であって長手方向と交差する径方向に拡張可能に構成している。基端側拡張部２６０は、先端側拡張部２５０と同様に形状記憶合金または弾性部材などを含むことによって径方向外方に拡張可能となり、留置部２３０を血管内に留置した際に血管壁ＢＷに突っ張るように形成される。

　これにより、留置部２３０の管状部材２４０と投与装置１００が管状部材２４０の長手方向に移動することを防止または抑制できる。基端側拡張部２６０は、穿刺部２２０に対して外部に位置した状態で拡張した際に血管内で血栓の形成を抑制するために外表面にコーティングを設けることができる。

　また、先端側拡張部２５０は、先端部と穿刺部２２０の内部空間に収容時の長手方向における中間の位置に、少なくとも所定角度での折り曲げを可能にするヒンジｊｔを設けることができる。同様に、基端側拡張部２６０は、穿刺部２２０の内部空間に収容時の長手方向における中間の位置に、少なくとも所定角度での折り曲げを可能にするヒンジｊｔを設けることができる（図５、図６参照）。

　（使用方法）
　次に、本実施形態に係る医療器具１を用いた手技について説明する。図８は医療器具１の使用方法について説明するフローチャートであり、図９から図１２は医療器具１の使用方法の説明に供する図である。図８を参照して医療器具１の手技について概説すれば、医療器具１を生体管腔へ導入し（ＳＴ１）、穿刺部２２０を目的部位へ移動させ、穿刺部２２０により血管壁ＢＷを穿刺して（ＳＴ２）、投与装置１００を目的部位に留置する（ＳＴ３）。以下、詳述する。

　まず、術者は、図９に示すように大腿静脈ＦＶからセルジンガー法によりガイドワイヤＧＷを血管内に挿入し、ガイドワイヤＧＷの先端部を頚静脈経由で硬膜（下錘体）静脈洞まで移動させる。ガイドワイヤＧＷの先端部を硬膜静脈洞まで送達できたら、術者はガイドワイヤＧＷに沿ってガイドカテーテルＧＣを挿入し、ガイドカテーテルＧＣの先端部を硬膜静脈洞の近傍まで移動させる（図１０参照）。なお、本実施形態では大腿静脈ＦＶから穿刺しているが、穿刺部位はこれに限定されず、頚静脈、腋窩静脈、肘窩静脈、橈骨静脈、尺骨静脈、下肢静脈などからも穿刺可能である。

　ガイドカテーテルＧＣの先端部を硬膜静脈洞まで送達できたら、術者は硬膜静脈洞まで送達したガイドワイヤＧＷを生体管腔から抜去する。次に、術者は、ガイドカテーテルＧＣの内部空間に医療器具１を導入し、硬膜静脈洞の付近の血管壁ＢＷまで移動させる（ＳＴ１）。医療器具１の穿刺部２２０の先端部にはマーカーを設けることによって穿刺部２２０の位置を造影画像等にて確認することができる。

　医療器具１を硬膜静脈洞の付近の血管壁ＢＷまで送達させたら、術者は留置したい血管壁ＢＷの位置を見定めて、医療器具１を押し込むことによって穿刺部２２０に血管壁ＢＷを穿刺させる（ＳＴ２）。穿刺部２２０によって血管壁ＢＷを穿刺したら、術者は穿刺部２２０の先端部を、脳組織を損傷しない程度に位置させた状態で穿刺部２２０の長手方向の位置を固定し、押し込み部材２１０によって先端側拡張部２５０を穿刺部２２０よりも先端側に押し出す。

　これにより、管状部材２４０が穿刺部２２０の内部空間から穿刺部２２０により穿刺された血管壁ＢＷを貫通して先端側が外部に移動する。その結果、先端側拡張部２５０が血管の内部から外部であるくも膜下腔等に配置された状態で管状部材２４０の長手方向と交差する径方向外方に拡張変形する（図１１参照）。これにより、管状部材２４０が意図せず血管内部に引き寄せられても先端側拡張部２５０により、医療器具１の位置が長手方向の特に血管内部に移動することを防止または抑制できる。

　次に、術者はガイドカテーテルＧＣを体内から抜去するとともに、押し込み部材２１０および穿刺部２２０を体内から抜去する。穿刺部２２０を留置部２３０から抜去することによって留置部２３０を構成する基端側拡張部２６０が穿刺部２２０の内部空間から外部に移動する（配置される）ことになり、その結果、基端側拡張部２６０が径方向外方に拡張する。これにより、基端側拡張部２６０は図１２に示すように径方向外方に張り出して周囲の血管壁ＢＷと接触し得る。

　これにより、先端側拡張部２５０とともに管状部材２４０および投与装置１００の体内における位置がずれることを防止または抑制できる。次に、術者は大腿の穿刺した部位を止血する。これにより、脳室内に投与装置１００が血管内に留置され（ＳＴ３）、投与物Ｘを目的部位に長期的に徐放することができる。

　以上説明したように、本実施形態に係る医療器具１は、投与装置１００と、穿刺部２２０と、を有する。投与装置１００は生体内に留置可能であって、投与物Ｘを経時的に徐放可能に構成している。穿刺部２２０は投与装置１００を収容可能な内部空間を形成する内側壁２２１を含み、先端が血管壁ＢＷを貫通可能に形成している。

　このように構成することによって、頭蓋骨からカニューレを導入して目的部位に薬剤を投与する従来の手技と比較して、薬剤を目的部位に投与する手技の侵襲性を低くするようにできる。

　また、医療器具１は、投与装置１００に接続され、投与装置１００を血管内に配置した状態において血管壁ＢＷに引っ掛かることが可能な留置部２３０を有する。このように構成することによって、投与装置１００が留置した位置からずれることを防止または抑制することができる。

　また、留置部２３０は、管状部材２４０と、先端側拡張部２５０と、を備える。管状部材２４０は、長尺状であり、穿刺部２２０の内部空間に収容可能であって、穿刺部２２０が穿刺した血管壁ＢＷの穿刺部位に配置可能に構成している。先端側拡張部２５０は、管状部材２４０の先端側に設けられ、穿刺部２２０の内部空間に収容可能であって、穿刺部２２０の内部空間から露出した状態において拡張変形可能に構成している。このように構成することによって、投与装置１００を目的の血管内部に留置した状態を維持し易くできる。

　また、留置部２３０は、管状部材２４０の長手方向において先端側拡張部２５０よりも基端側に設けられ、長手方向と交差する径方向に拡張可能な基端側拡張部２６０を備える。このように構成することによって、投与装置１００を投与物Ｘの投与付近である血管内部において動き難くできる。また、基端側拡張部２６０により管状部材２４０を生体管腔の略中央付近に配置し、これにより血栓の生成を防止または抑制できる。

　また、管状部材２４０は、投与装置１００を流通する投与物Ｘを流通可能な流路２４１と、流路２４１を流通する投与物Ｘを外部に放出可能な開口部２４２とを備える。このように構成することによって、中枢神経疾患に用いられる投与物Ｘを薬効の得られやすい状況で投与し得る。

　投与装置１００は、本体部１０と、液体透過部２０と、栓体４０と、押圧部３０と、投与物Ｘと、を備える。本体部１０は薬物等の投与物Ｘを収容する内腔を備える。液体透過部２０は、本体部１０の内腔に配置され体液に含まれる液体成分を透過させるように構成している。栓体４０は、本体部１０の内腔に配置され、内腔を摺動可能に構成している。押圧部３０は、本体部１０の内腔において栓体４０よりも上流側に配置され、栓体４０を下流側へ押圧するように構成している。投与物Ｘは、本体部１０の内腔において栓体４０よりも下流側に収納され、投与装置１００を生体内に留置した状態において栓体４０の下流側への摺動によって生体内に放出される。

　このように構成することによって、投与装置１００を生体内に留置した状態で投与物Ｘを例えば０．０１ｍＬ／ｄａｙ以下等のように長期的に徐放することができる。このように、投与装置１００は、長期徐放を想定した速度で投与物Ｘを投与できるため、脳脊髄圧等の上昇を抑えることに寄与し得る。

　また、本実施形態に係る医療器具１を用いた手技では医療器具１を生体管腔へ導入し、穿刺部２２０を目的部位へ移動させ、穿刺部２２０により血管壁ＢＷを穿刺して投与装置１００を目的部位または目的部位の近傍に留置する。このような方法を用いて穿刺部２２０を頚静脈近傍の下錘体静脈洞ＳＰＩ等に穿刺すれば、薬剤によらず側脳室ＬＶと第３脳室ＴＶの間等に投与物Ｘを局所投与することができる。

　また、穿刺する静脈を上矢状静脈洞等のように変えることで、上矢状静脈洞であれば大脳直上等のように投与物Ｘを任意の部位に局所投与できる。また、リザーバーとなる投与装置１００を血管内に埋め込むことにより、感染症のリスクを低減することができる。

　（第２実施形態）
　図１３、図１４は第２実施形態に係る医療器具１ａの説明に供する図である。第１実施形態では留置部２３０の管状部材２４０と投与装置１００とが一体的に連結されており、医療器具１は大腿静脈ＦＶから生体管腔に導入されると説明した。ただし、医療器具は以下のように構成することもできる。

　医療器具１ａは、図１３、図１４に示すように投与装置１００ａと、穿刺部２２０と、留置部２３０ａと、を有する。穿刺部２２０と先端側拡張部２５０は第１実施形態と同様であるため、説明を省略する。

　（投与装置）
　投与装置１００は、本体部１０ａと、液体透過部２０と、押圧部３０と、栓体４０と、放出部５０と、を備える。液体透過部２０、押圧部３０、栓体４０および放出部５０は第１実施形態と同様であるため、説明を省略する。

　本体部１０ａは、第１実施形態と同様に基端部１２と先端部１３を備え、栓体４０によって内部空間が第１空間Ａ１と第２空間Ａ２に分割される。本体部１０ａは、第１実施形態に対して本体部１０の放出部５０側の内壁面におねじ等の係合部１４を設けて管状部材２４０ａと着脱自在に構成している。放出部５０は、係合部１４またはその近傍に設けることができる。本体部１０ａのその他の構成は第１実施形態と同様であるため、説明を省略する。

　（留置部を構成する管状部材）
　管状部材２４０ａは、第１実施形態と同様に流路２４１と開口部２４２を備えるとともに、被係合部２４３を備えるように構成している（図１３参照）。被係合部２４３は、流路２４１を形成する中空部材の基端側に本体部１０ａの係合部１４と係合する形状を設けるように構成している。被係合部２４３は、中空部材の内壁面にめねじ等を設けることによって係合部１４と係合することができる。これにより、留置部２３０ａを投与装置１００ａと着脱可能（接続可能）に構成できる。なお、係合部１４には、係合時までに汚染されないよう、キャップなどが設置されていても良い。また、管状部材２４０ａの内腔に滅菌グレードのフィルターを設置することにより、係合による内腔の汚染を防止することもできる。

　（使用方法）
　次に本実施形態に係る医療器具１ａを用いた手技について説明する。まず、術者は投与装置１００ａを埋め込む部位の皮膚を切開し、頚静脈ＪＶを露出させる。そして、術者は頚静脈ＪＶからセルジンガー法によりガイドワイヤＧＷを生体管腔に導入し、第１実施形態と同様にガイドワイヤＧＷの先端部を硬膜静脈洞まで移動させる。なお、本実施形態では、頚静脈ＪＶから穿刺しているが、穿刺部位はこれに限定されず、頚静脈、腋窩静脈、肘窩静脈、橈骨静脈、尺骨静脈、下肢静脈などからも穿刺可能である。

　ガイドワイヤＧＷの先端部を硬膜静脈洞まで送達させたら、術者はガイドワイヤＧＷに沿ってガイドカテーテルＧＣを体内に導入し、目的部位まで移動させる。ガイドカテーテルＧＣの先端部を目的部位まで移動させたら、術者はガイドワイヤＧＷを抜去し、ガイドカテーテルＧＣの内部空間に医療器具１ａを導入し、先端を穿刺したい部位の血管壁ＢＷの近傍まで移動させる（図８のＳＴ１参照）。造影画像等によって医療器具１ａの穿刺部２２０が目的の血管壁ＢＷ近傍に送達したことを確認できたら、術者は穿刺部２２０を押し込み、穿刺部２２０の先端部によって血管壁ＢＷを穿刺する（図８のＳＴ２参照）。

　次に、術者は第１実施形態と同様に穿刺部２２０の先端部を血管壁ＢＷから脳組織を損傷しない程度に位置させた状態で、整理食塩液または投与物Ｘでプライミングされた穿刺部２２０の先端側拡張部２５０を穿刺部２２０の内部空間から外部に移動させる操作を行う。これにより、管状部材２４０ａが穿刺部２２０の内部空間から穿刺部２２０により穿刺された血管壁ＢＷを貫通して先端側が外部に移動する。その結果、留置部２３０ａの先端側拡張部２５０が血管壁ＢＷの外側であるくも膜下腔等で径方向外方に拡張する。

　次に、術者はガイドカテーテルＧＣおよび穿刺部２２０を生体管腔から抜去する。なお、穿刺部２２０は外側面の一部を他の外側面の一部から分離させることによって、生体から抜去することができる（このような機構をピールカットと称し得る）。

　次に、術者は穿刺部位となった頚静脈ＪＶを止血する。次に、術者は管状部材２４０ａの被係合部２４３を本体部１０ａの係合部１４に篏合させて留置部２３０ａを投与装置１００ａと接続する。次に、術者は投与装置１００ａを皮下に埋め込んだ状態において埋め込んだ部位の周辺及び皮膚を縫合する。なお、術者は投与装置１００ａをより強固に固定するため、頚静脈ＪＶや筋肉層に縫い付けてもよい。

　上記操作により、投与装置１００ａを皮下に留置して投与装置１００ａの内部に収容された投与物Ｘを徐放可能な状態とすることができる。なお、投与装置１００ａを交換する際は皮膚を切開して管状部材２４０ａの被係合部２４３と本体部１０ａの係合部１４との係合を解除し、新しい投与装置１００ａの本体部１０ａの係合部１４を管状部材２４０ａの被係合部２４３と係合させ、皮膚を縫合する。

　また、投与装置１００ａをすぐに交換せず、体内に留置部２３０ａを留置した状態を維持する場合には、管状部材２４０ａの流路２４１を生理食塩水等で洗浄して栓をし、新たな投与装置１００ａを埋め込む際に上記栓を外す。

　以上説明したように、本実施形態では投与装置１００ａを留置部２３０ａと接続（脱着）可能に構成している。そのため、一の投与装置によって薬剤の投与が完了しない場合に投与装置の交換を比較的容易に行うことができる。

　なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。第１実施形態および第２実施形態において医療器具１、１ａは留置部２３０、または留置部２３０ａを備えると説明したが、投与装置を留置する手技を比較的低侵襲で実施できれば医療器具は留置部を備えていなくてもよい。この場合、投与装置は穿刺部の内部空間に収容され、穿刺部を目的部位の周辺の血管壁ＢＷに穿刺した後に投与装置を残して穿刺部を穿刺部位から抜去するように構成することができる。

　また、第２実施形態において投与装置を皮下に留置する場合、投与装置１００ａと留置部２３０ａは着脱自在であると説明したが、目的部位に薬剤を投与できれば、投与装置は第１実施形態と同様に留置部と着脱できなくてもよい。

　本出願は、２０２１年１１月８日に出願された日本国特許出願第２０２１－１８２０２０号に基づいており、その開示内容は、参照により全体として引用されている。

１、１ａ　医療器具、
１０、１０ａ　本体部、
２０　液体透過部、
３０　押圧部、
４０　栓体、
５０　放出部、
１００、１００ａ　投与装置、
２２０　穿刺部、
２２１　内側壁、
２３０、２３０ａ　留置部、
２４０、２４０ａ　管状部材、
２４１　流路、
２４２　開口部、
２５０　先端側拡張部、
２６０　基端側拡張部、
ＢＷ　血管壁、
Ｘ　投与物。

Claims

　生体内に留置可能であって投与物を経時的に徐放可能な投与装置と、
　前記投与装置を収容可能な内部空間を形成する内側壁を含み、先端が血管壁を貫通可能に形成された穿刺部と、を有する医療器具。
　前記投与装置に接続または接続可能に構成され、前記投与装置を血管内に配置した状態において血管壁に引っ掛かることが可能な留置部を有する請求項１に記載の医療器具。
　前記留置部は、前記穿刺部の前記内部空間に収容可能であって前記穿刺部が穿刺した血管壁の穿刺部位に配置可能な長尺状の管状部材と、前記管状部材の先端側に設けられ、前記穿刺部の前記内部空間に収容可能であって前記穿刺部の前記内部空間から露出した状態において拡張変形可能な先端側拡張部と、を有する請求項２に記載の医療器具。
　前記留置部は、前記管状部材の長手方向において前記先端側拡張部よりも基端側に形成され、前記長手方向と交差する径方向に拡張可能な基端側拡張部を備える請求項３に記載の医療器具。
　前記管状部材は、前記投与装置を流通する前記投与物を流通可能な流路と、前記流路を流通する前記投与物を外部に放出可能な開口部を備える請求項３に記載の医療器具。
　前記投与装置は、前記投与物を収容する内腔を備える本体部と、前記内腔に配置され体液に含まれる液体成分を透過させる液体透過部と、前記内腔に配置され前記内腔を液密に摺動可能な栓体と、前記内腔において前記栓体よりも上流側に配置され、前記栓体を下流側へ押圧する押圧部と、前記内腔において前記栓体よりも下流側に収納され、前記投与装置を生体内に留置した状態において前記栓体の下流側への摺動によって生体内に放出される前記投与物と、を備える請求項１～４のいずれか１項に記載の医療器具。