WO2022210816A1 - 冷凍炒めパスタの製造方法 - Google Patents

Abstract

本発明の冷凍炒めパスタの製造方法は、α化処理したパスタを油脂とともに炒め調理して、水分含量が５９．０～６４．０質量％の炒めパスタを調製する工程と、該炒めパスタとソースとを混合して冷凍する工程とを有する。前記α化処理は、該α化処理したパスタの水分含量が６２．０～６５．０質量％になるよう行われることが好ましい。前記炒め調理は、前記油脂と増粘剤との混合物を用いて行われることが好ましい。前記冷凍炒めパスタは、出力１０００Ｗ以上の電子レンジで加熱してから食されるものである。

Description

冷凍炒めパスタの製造方法

　本発明は、炒めパスタをソースとともに冷凍してなる冷凍炒めパスタに関する。

　パスタ等の麺類は比較的人気の高い食品であるが、調理に大量の湯が必要になるなど、喫食可能な状態にするまでに比較的手間がかかる。そこで、調理済み麺類を冷凍した冷凍麺類が広く普及している。冷凍麺類は、電子レンジ等の加熱調理器で加熱するだけで簡便に喫食可能な状態となるため、人気がある。一方で冷凍麺類は、冷凍保存中に麺の表面から水分が蒸発し、麺本来の色が失われて白っぽくなる等の現象、いわゆる「冷凍焼け」が起きる場合がある。冷凍焼けした冷凍麺類は、変色によって外観が劣るだけでなく、これを電子レンジで加熱しても冷凍焼けした部分は硬い食感となってしまうため食味食感にも劣り、商品価値が著しく低下したものとなる。また近年、出力が１０００Ｗ以上になるような高出力電子レンジが普及しているところ、高出力電子レンジで冷凍麺類を加熱すると、冷凍焼けした部分だけでなく、冷凍焼けしていない部分でも焦げが発生し、食用に適さない場合があった。

　また、スパゲティやマカロニ等のパスタを炒め調理（ソテー）して得られる炒めパスタは、炒め調理による香ばしい香りが食欲をそそり、近年人気が高まっている。炒めパスタについても冷凍食品として流通しているものがあり、そのような冷凍炒めパスタは、電子レンジ加熱により簡便に喫食することが可能である。冷凍炒めパスタには、パスタとソースとが一体となったソース付きのものがある。ソース付き冷凍炒めパスタの製造方法としては従来、茹でパスタとソースとを混合して炒め調理した後、冷凍する工程を有するものが一般的である。しかしながら、このような方法で製造されたソース付き冷凍炒めパスタは、冷凍工程又はその後の冷凍保存中にパスタがソース中の水分を吸収するため、解凍後のパスタの食感がぱさぱさとした好ましくないものになりやすいという問題がある。

　特許文献１及び２には、ソース付き冷凍炒めパスタに特有の前記問題を解決し得る技術が記載されている。特許文献１に記載の技術は、ソース付き冷凍ソテーパスタの製造方法において、茹でパスタをソテーした後、得られたソテーパスタの上にソースを添加して冷凍する工程を採用することが主な特徴である。特許文献２に記載の技術は、冷凍ソース和え炒め麺の製造方法において、茹で麺を炒めて炒め麺を得る工程、炒め麺をソースと和える工程、ソース和え炒め麺を真空冷却した後に冷凍する工程を採用することが主な特徴である。

　特許文献３には、焼きそば等の、ソースと一体となっていない麺料理の加熱調理法の改良技術として、α化した麺類を、高温の熱風を直接吹き付けて短時間加熱して、炒め調理と焼き色付けがされた麺類に仕上げることを特徴とするものが記載されている。特許文献３には、冷凍麺類に関する技術事項は特に記載されていない。

特開２００８－２７８８９９号公報 特開２０１６－４２８２４号公報 特開２０００－２４５３７６号公報

　特許文献１～３に記載の技術は、炒めパスタの風味改善に一定の効果は期待できるものの改善の余地があり、特に高出力電子レンジで加熱した場合の焦げ防止効果は限定的であった。

　本発明の課題は、冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくい冷凍炒めパスタを提供することである。

　本発明者は、炒めパスタをソースとともに冷凍した冷凍炒めパスタを、電子レンジで加熱すると、パスタの一部に、炒めすぎて焦げたような部分が生じやすいことを知見した。特に、近年普及している出力１０００Ｗ以上の高出力電子レンジを用いて冷凍炒めパスタを加熱すると、パスタに強い焦げが発生し、食用に適さないものとなりやすい。高出力電子レンジを有する冷凍炒めパスタは未だ提供されていない。

　本発明は、前記知見に基づきなされたもので、α化処理したパスタを油脂とともに炒め調理して、水分含量が５９．０～６４．０質量％の炒めパスタを調製する工程と、該炒めパスタとソースとを混合して冷凍する工程とを有する、冷凍炒めパスタの製造方法である。

　冷凍炒めパスタの製造方法は、α化処理したパスタ（以下、「α化パスタ」とも言う。）を油脂とともに炒め調理して炒めパスタを得る工程（炒め工程）と、該炒めパスタとソースとを混合する工程（混合工程）と、その混合物（ソース付き炒めパスタ）を冷凍する工程（冷凍工程）とを有する。本発明の冷凍炒めパスタの製造方法は、前記炒め工程の前に、α化パスタの製造工程を有していてもよい。前記α化パスタの製造工程は、例えば、生地を調製し、該生地を所定形状に成形してパスタを得、該パスタを加熱調理する工程を有する。

　本発明で用いるα化パスタの原料となるパスタの種類は特に制限されず、例えば、麺線形状のロングパスタ、マカロニやペンネ等のショートパスタが挙げられる。
　パスタの製造方法は特に制限されず、従来公知の方法を利用できる。パスタの製造方法は、典型的には、穀粉類を含む粉体原料と水等の液体原料とを混合して生地を調製し、該生地を常法に従って、麺線形状などの所定形状に成形する工程を含む。斯かる工程を経て得られるパスタは、乾燥処理が施されていない生パスタである。本発明では、生パスタをα化調理してα化パスタとしてもよく、あるいは、生パスタに乾燥処理を施して乾パスタとし、該乾パスタを加熱調理してα化パスタとしてもよい。また、生地の成形方法は特に制限されず、例えば、所定形状の押出ノズルから生地を高圧で押し出す押出成形法でもよく、あるいは、生地を麺帯状に高圧で押し出して麺帯を得、該麺帯をローラー等によって圧延し、更に切り刃で切り出す方法でもよい。

　前記粉体原料に含まれる穀粉類には、穀粉及び澱粉が含まれ、本発明ではこれらの１種を単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉としては、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉等が挙げられ、該小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム粉（デュラムセモリナ、デュラム小麦粉を含む）等が挙げられる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、小麦澱などの未加工澱粉；未加工澱粉に、架橋、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化などの加工処理の１種以上を施した加工澱粉が挙げられる。
　前記粉体原料は、穀粉類以外に必要に応じ、麺類の製造に使用可能な各種原料、例えば、糖類、油脂類、色素、調味料等を含有してもよい。

　本発明では、パスタのα化処理法は特に制限されず、従来公知の方法を利用でき、例えば、８０～１００℃の湯を用いた茹で調理、飽和水蒸気を用いた蒸し調理など、水分の存在下での加熱調理法が挙げられる。

　パスタのα化処理は、それによって得られるα化パスタの水分含量（炒め調理前のα化パスタの水分含量）が、好ましくは６２．０～６５．０質量％、より好ましくは６２．５～６４．５質量％になるよう行われるとよい。これにより、続いて行われるα化パスタの炒め調理で、炒めパスタの水分含量を後述する特定範囲に調整することが容易になる。
　本明細書において「水分含量」とは、絶乾法に準じて、試料を１０５℃で定質量になるまで乾燥し、乾燥前後の質量差を水分質量として、乾燥前の試料の質量における水分質量を百分率で表したものである。

　本発明では、α化パスタを炒め調理する前に、α化処理後から炒め調理までの間のα化パスタの乾燥、α化パスタどうしの結着等の不都合を防止する目的で、α化パスタの表面に液体を付着させてもよい。α化パスタに付着させる液体は、例えば、油脂、水、増粘剤、塩等を適宜組み合わせて調製することができる。なお、この炒め調理前にα化パスタに付着させる液体に含まれる油脂は、炒め調理に用いる油脂には含まれない。
　α化パスタの表面に液体を付着させる方法は特に制限されず、例えば、α化パスタに対して液体を噴霧する方法、液体中にα化パスタを浸漬させる方法が挙げられる。液体は、α化パスタの表面全体に均一に付着させることが好ましく、これを確実に行う観点から、液体及びこれを付着させるα化パスタそれぞれの品温は、２０～６０℃の範囲にあることが好ましい。
　α化パスタへの液体の付着量は、α化パスタ１００質量部に対して湿重量基準で、好ましくは２～１０質量部、より好ましくは４～８質量部である。
　本明細書において「湿重量」とは、当該物体（液体）の非冷凍及び非乾燥状態（喫食可能な状態）での重量を指す。

　前記炒め工程では、α化パスタを油脂とともに炒め調理して炒めパスタを得る。炒め調理（ソテー）は、加熱した鉄板やフライパン等の調理器具を用い、該調理器具からの熱伝導を主に利用して食材を加熱する調理法である。
　炒め調理に油脂を用いることにより、α化パスタに油脂の香味や香ばしい焦げ臭等が付与されるとともに、α化パスタの旨味成分等の漏出防止が期待できる。炒め調理に用いる油脂としては、例えば、コーン油、綿実油、大豆油、オリーブ油など、炒め調理に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、１種の油脂を単独で又は２種以上の油脂を組み合わせて用いることができる。
　炒め調理に用いる油脂の量は、α化パスタ１００質量部に対して、好ましくは５～２０質量部、より好ましくは８～１６質量部である。

　本発明は、前記炒め工程において、水分含量が５９．０～６４．０質量％、好ましくは５９．５～６３．５質量％、より好ましくは６０．０～６３．０質量％の炒めパスタを調製する点で特徴づけられる。換言すれば本発明は、α化パスタの炒め調理を、該α化パスタの水分含量が前記特定範囲となるように行う点で特徴づけられる。これにより、後述する実施例のように、冷凍焼けが生じにくく、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくく、食感に優れる冷凍炒めパスタが得られるようになる。炒めパスタの水分含量は、炒め調理前のα化パスタの水分含量、炒め調理方法等を適宜調整することで調整可能である。

　前記炒め工程において、α化パスタの炒め調理は、油脂と増粘剤との混合物を用いて行うことが好ましい。これにより本発明の所定の効果が一層確実に奏され得る。増粘剤としては、食品の調理に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、キサンタンガム、タマリンドガム、グアガム、アラビアガム、力一ドラン、力ラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、ヒアル口ン酸、ペクチン、アルギン酸、セルロース、メチルセルロースが挙げられ、これらの１種を単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。油脂と増粘剤との混合物における増粘剤の含有量は、該混合物の全質量に対して、好ましくは０．０５～１質量％、より好ましくは０．１～０．５質量％である。

　前記炒め工程において、α化パスタの炒め調理は常法に従って行うことができる。例えば、熱した鉄板に油脂を流しいれ、油脂が温まったところでα化パスタを投入し、α化パスタをほぐしながら、α化パスタの表面全体ができるだけ均一に加熱されるように炒める。炒め処理条件（炒め温度、炒め時間）は、炒めパスタの水分含量が前記特定範囲となるよう、α化パスタの種類、調理器具の加熱能力等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、炒め温度（炒め調理時のパスタの品温）は、好ましくは１２０～２３０℃、より好ましくは１３０～２１０℃であり、炒め時間（前記炒め温度を維持する時間）は、好ましくは３０秒～８分、より好ましくは４５秒～６分である。
　前記炒め工程後は、調理器具から炒めパスタを取り出し、必要に応じて該炒めパスタを冷却してから次工程に供する。

　前記混合工程では、前記炒め工程で得られた炒めパスタとソースとを混合する。これらの混合方法及び混合物（ソース付き炒めパスタ）の形態は特に制限されず、該混合物は、例えば、炒めパスタの全体にソースが付着した形態でもよく、炒めパスタの一部のみにソースが付着した形態でもよい。前記混合方法は、例えば、炒めパスタをトレイ等の容器に取り分けた後、該炒めパスタの一部又は全体に上からソースをかける方法でもよく、炒めパスタにソースをかけてかき混ぜる方法でもよく、ソース中に炒めパスタを投入する方法でもよい。

　本発明で用いるソースは、常温常圧で流動性を有する液状ないし半固形状ないしペースト状の食品であり、使用するパスタの種類等に応じて適宜選択し得る。ソースに含まれる成分は特に制限されず、例えば、食塩、香辛料、甘味料、グルタミン酸ナトリウム等の調味料；動植物エキス；牛乳、生クリーム、バター、チーズ等の乳製品；水飴、デキストリン、還元デキストリン、サイクロデキストリン、ソルビトール、トレハロース等の糖類；卵黄、卵白等の卵類；食酢、クエン酸等の有機酸又はその塩；アスコルビン酸又はその塩、ビタミンＥ等の酸化防止剤；水、油脂、澱粉、増粘剤、着色料、保存料等が挙げられ、ソースの種類等に応じて、これらの１種を単独で又は２種以上を組み合わせて用いることできる。ソースは、固形の食材のような、常温常圧で流動性を有しない具材を含有していてもよく、具材としては、野菜類、キノコ類、肉類、魚介類等を用いることができる。本発明ではソースの種類も特に制限されず、例えば、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース、トマトソース、カルボナーラソース、チーズソース、クリームソース、ホワイトソース、オイルソース、ブラウンソース、カレーソース、ウスターソース、ホワイトソースが挙げられる。

　前記混合工程において、炒めパスタと混合するソースの量は特に制限されないが、食感の更なる向上等の観点から、炒めパスタ１００質量部に対して湿重量基準で、好ましくは５０～３００質量部、より好ましくは７０～２００質量部である。

　前記冷凍工程では、前記混合工程で得られた炒めパスタとソースとの混合物（ソース付き炒めパスタ）を冷凍する。ソース付き炒めパスタの冷凍方法は特に制限されず、この種の麺類に対して通常行われる冷凍方法を採用することができ、例えば、急速冷凍、緩慢冷凍が挙げられる。特に急速冷凍が好ましい。ソース付き炒めパスタを一旦急速冷凍で冷凍した後、通常の冷凍保存条件で保存すればよく、その場合、ソース付き炒めパスタの冷凍物を袋状又はトレイ等の定形の容器に収容した後、冷凍保存することもできる。ソース付き炒めパスタを容器に収容し、該容器ごと冷凍してもよく、これにより、冷凍焼けの防止効果が期待でき、更には、電子レンジ等の加熱調理器による解凍処理が簡便になり得る。具体的には例えば、ソース付き炒めパスタを、所定の分量、例えば、一人分ずつに分けて容器に入れた後、その容器ごと冷凍することができる。また例えば、ソース付き炒めパスタを、所定の分量、例えば、一人分ずつに分け、冷凍した後、その冷凍物を容器に収容することができる。

　本発明の製造方法によって製造された冷凍炒めパスタは、解凍することで喫食可能な状態となる。冷凍炒めパスタの解凍方法は特に制限されず、自然解凍、緩慢解凍でもよいが、加熱を伴う解凍（急速解凍）が簡便である。本発明の製造方法によって製造された冷凍炒めパスタは、加熱しても焦げが生じにくいため、急速解凍を安心して行うことができる。急速解凍には、電子レンジ加熱、ボイル、蒸気による加熱、オーブン加熱等がある。冷凍炒めパスタが容器に収容されている場合には、衛生上の点から、容器ごと該冷凍炒めパスタを電子レンジ加熱にて解凍することが好ましい。電子レンジとしては、マイクロ波加熱を行う加熱調理器のうち、一般的な出力５００～６００Ｗのものを使用してもよく、より高出力な１０００～１８００Ｗのものを使用してもよい。本発明の製造方法によって製造された冷凍炒めパスタは、冷凍焼けのみならず、電子レンジ加熱で懸念される焦げにも耐性があるため、短時間で加熱可能な出力１０００Ｗ以上の電子レンジで加熱してから食することができる。

　以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。

〔実施例１～１８、比較例１～４〕
　市販の乾燥スパゲティ（日清フーズ株式会社製）を大量の湯を張った鍋に投入し、茹で歩留まりが所定範囲となるように一定時間茹でた後、ざるに入れて水分を十分に切り、直径１．８ｍｍの麺線形状で且つ水分含量が所定範囲にあるα化スパゲティ（α化パスタ）を調製した。別の鍋にα化スパゲティ１００ｇ当たり１０ｇとなる量の油脂（オリーブ油）又は油脂組成物を入れ、該鍋をＩＨ調理器にて加熱し、該油脂又は該油脂組成物の品温が所定温度となったところで、該鍋に前記α化スパゲティを加えてかき混ぜながら炒め調理し、炒めスパゲティを得た。炒め調理後速やかに、炒めスパゲティの一部を取って水分含量の測定に供するとともに、１食分（２００ｇ）の炒めスパゲティをトレイにとり、市販のトマトソース（日清フーズ株式会社製）から固形物を除いたもの１００ｇを加えてよく混合し、炒めスパゲティの全体にトマトソースを付着させた。こうして得られたソース付き炒めスパゲティを、庫内温度－２０℃の冷凍庫で急速冷凍し、目的の冷凍炒めスパゲティ（冷凍炒めパスタ）を製造した。表１～３に、α化パスタ調製時の茹で歩留まり、α化パスタの炒め調理条件（炒め温度、炒め時間）、炒め調理前後のα化パスタの水分含量、前記油脂組成物の組成（表３のみ）を示す。

〔比較例５〕
　α化パスタを炒め調理せずにソースと混合し、その混合物（ソース付き非炒めパスタ）を炒め調理する工程を経て、冷凍炒めパスタを製造した。具体的には、市販の乾燥スパゲティ（日清フーズ株式会社製）を大量の湯を張った鍋に投入し、茹で歩留まりが２５４質量％となるように一定時間茹でた後、ざるに入れて水分を十分に切り、直径１．８ｍｍの麺線形状で且つ水分含量が６４．６質量％のα化スパゲティ（α化パスタ）を調製した。別の鍋にα化スパゲティ１００ｇ当たり１０ｇとなる量の油脂（オリーブ油）を入れ、該鍋をＩＨ調理器にて加熱し、該油脂の品温が所定温度となったところで、該鍋に、前記α化スパゲティを１食分（２００ｇ）と、市販のトマトソース（日清フーズ株式会社製）から固形物を除いたもの１００ｇとを加え、かき混ぜながら炒め調理し、ソース付き炒めスパゲティを得た。こうして得られたソース付き炒めスパゲティを、庫内温度－２０℃の冷凍庫で急速冷凍し、目的の冷凍炒めスパゲティ（冷凍炒めパスタ）を製造した。

　本明細書において「茹で歩留まり」とは、茹で調理前の対象物（乾燥スパゲティ）の加水（練り水）を除いた原料の質量に対する、茹で調理後の対象物（α化スパゲティ）の質量の比率（百分率）である。例えば、２００質量％の茹で歩留まりに茹でられたα化スパゲティは、その茹で調理前の加水を除いた原料の質量の２倍の質量になるまで吸水するように茹でられた茹でスパゲティである。

〔評価試験：冷凍焼け、焦げ、食感〕
　前記の手順で製造した各実施例及び比較例の冷凍炒めスパゲティを、プラスチック製の包装袋に入れて密封し、庫内温度－２０℃の冷凍庫で１週間冷凍保存した。この保存期間中、２４時間おきに、冷凍庫から包装袋を取り出して雰囲気温度２０℃の環境に５分間静置することで、包装袋内の冷凍炒めスパゲティにヒートショックを与えた。１週間経過後、包装袋から冷凍炒めスパゲティを取り出し、冷凍焼けの程度を下記方法により評価した。
　また、冷凍焼けの評価後、冷凍炒めスパゲティを耐熱皿に載置し、ラップフィルムで上面を軽く覆った状態で、出力１５００Ｗの電子レンジで２分３０秒間加熱した。加熱終了後、スパゲティの焦げの状態及び喫食時の食感をそれぞれ下記方法により評価した。
　前記評価は何れも、訓練されたパネルが、評価対象の冷凍炒めスパゲティ１種につき１０点のサンプルについて行い、その１０点のサンプルの評価点の算術平均値を、当該評価対象の評価点とした。その結果を表１～３に示す。

（冷凍焼けの評価基準）
＜冷凍焼けの評価方法＞
　評価対象の冷凍炒めスパゲティ（冷凍麺塊）の上面を撮像し、その撮像したカラー画像データをコンピュータに取り込み、該画像データにおける冷凍麺塊の全面積（冷凍麺塊の上面の面積）を算出し、その算出した面積値を、冷凍麺塊を構成する麺線形状のスパゲティの直径（当該スパゲティを規定どおりに茹で調理して得られる茹でスパゲティの直径を指し、前記実施例及び比較例では１．８ｍｍ）で除して、「スパゲティ上面視全長」を算出する。また、前記カラー画像データにおいて、「通常の冷凍スパゲティの色（黄色又は黄色に近い色）と異なり白化している部分」（冷凍焼け部分）の最大差し渡し長さを測定し、「冷凍焼け長さ」とする。前記カラー画像データに前記冷凍焼け部分が複数ある場合は、その複数の冷凍焼け部分それぞれの冷凍焼け長さを測定し、それらの合計値を「冷凍焼け長さ」とする。前記「スパゲティ上面視全長」に対する前記「冷凍焼け長さ」の割合（以下、「冷凍焼け部分占有率」とも言う。）を算出し、下記評価基準で点数化する。
（冷凍焼けの評価基準）
　５点：冷凍焼け部分占有率が１％未満である。
　４点：冷凍焼け部分占有率が１％以上５％未満である。
　３点：冷凍焼け部分占有率５％以上１０％未満である。
　２点：冷凍焼け部分占有率１０％以上２０％未満である。
　１点：冷凍焼け部分占有率２０％以上である。

＜焦げの評価方法＞
　評価対象の加熱した冷凍炒めスパゲティ（麺塊）の上面を撮像し、その撮像したカラー画像データをコンピュータに取り込み、該画像データにおける麺塊の全面積（麺塊の上面の面積）を算出し、その算出した面積値を、麺塊を構成する麺線形状のスパゲティの直径（当該スパゲティを規定どおりに茹で調理して得られる茹でスパゲティの直径を指し、前記実施例及び比較例では１．８ｍｍ）で除して、「スパゲティ上面視全長」を算出する。また、前記カラー画像データにおいて、「麺線の直径が他の部分と比べて９０％以下の直径となった細い部分、又は通常のスパゲティの色（黄色若しくは黄色に近い色）と異なり茶色ないし黒色の程度が高い部分」（焦げ部分）の最大差し渡し長さを測定し、「焦げ長さ」とする。前記カラー画像データに前記焦げ部分が複数ある場合は、その複数の焦げ部分それぞれの焦げ長さを測定し、それらの合計値を「焦げ長さ」とする。前記「スパゲティ上面視全長」に対する前記「焦げ長さ」の割合（以下、「焦げ部分占有率」とも言う。）を算出し、下記評価基準で点数化する。
（焦げの評価基準）
　５点：焦げ部分占有率が５％未満である。
　４点：焦げ部分占有率が５％以上１０％未満である。
　３点：焦げ部分占有率１０％以上２０％未満である。
　２点：焦げ部分占有率２０％以上４０％未満である。
　１点：焦げ部分占有率４０％以上である。

（食感の評価基準）
　５点：スパゲティのつるみと弾力が十分にあり、冷凍していない調理済みスパゲティと比べて食感にほとんど差がなかった。
　４点：スパゲティのつるみと弾力があり、冷凍していない調理済みスパゲティと比べて食感がわずかに劣る程度であった。
　３点：スパゲティのつるみと弾力が感じされるが、わずかに部分的に硬い食感が感じられる。
　２点：スパゲティのつるみと弾力にやや乏しく、やや硬い食感が感じられる。
　１点：スパゲティのつるみと弾力に乏しく、硬い食感が感じられる。

　表１～２に示すとおり、各実施例は、α化パスタの炒め調理を、炒めパスタの水分含量が５９．０～６４．０質量％となるように行ったため、これを満たさない各比較例に比べて、冷凍焼け、電子レンジ加熱による焦げが大幅に低減されており、食感に優れていた。比較例５は、炒めパスタの水分含量は実施例７と同程度であるものの、α化パスタの炒め調理をソースの存在下で行ったため、α化パスタの炒め調理をソースの非存在下で行った実施例７に比べて特に加熱時の焦げ耐性の点で低評価となった。また表３に示すとおり、炒め調理で油脂と増粘剤との混合物（油脂組成物）を用いた実施例１２～１８は、該混合物に代えて油脂のみを用いた実施例１に比べて高評価であった。

　本発明によれば、冷凍焼けが生じにくく、また、高出力電子レンジを用いて加熱を行っても焦げが生じにくく、冷凍していない調理済み麺と同等の食感を有する冷凍炒めパスタを提供することができる。
　本明細書において「冷凍焼け」とは、冷凍パスタ等の冷凍麺類の冷凍保存中に麺類が部分的に乾燥する現象をいう。冷凍焼けは、麺類に含有される水分が蒸発したり、麺類内を移動したりすることにより生じ、麺類の表面が白っぽく変色する、麺類が硬化する、麺線形状の麺類の太さが細くなる等の現象が見られる。
　また本明細書において「焦げ」とは、冷凍麺類を加熱した際に生じる、麺類が硬く縮む、麺類の表面が茶色ないし黒色に変色する等の現象をいう。いわゆるレンジ焼けは、焦げの一種である。

Claims (4)

1. 　α化処理したパスタを油脂とともに炒め調理して、水分含量が５９．０～６４．０質量％の炒めパスタを調製する工程と、該炒めパスタとソースとを混合して冷凍する工程とを有する、冷凍炒めパスタの製造方法。
2. 　前記α化処理は、該α化処理したパスタの水分含量が６２．０～６５．０質量％になるよう行われる、請求項１に記載の冷凍炒めパスタの製造方法。
3. 　前記炒め調理は、前記油脂と増粘剤との混合物を用いて行われる、請求項１又は２に記載の冷凍炒めパスタの製造方法。
4. 　前記冷凍炒めパスタは、出力１０００Ｗ以上の電子レンジで加熱してから食されるものである、請求項１～３の何れか１項に記載の冷凍炒めパスタの製造方法。