WO2011155317A1

WO2011155317A1 - 電子機器の放熱構造

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Publication number: WO2011155317A1
Application number: PCT/JP2011/061818
Authority: WO
Inventors: 達朗黒田
Original assignee: シャープ株式会社
Priority date: 2010-06-09
Filing date: 2011-05-24
Publication date: 2011-12-15
Also published as: US20130077256A1

Abstract

　基板に発熱体となるＩＣチップを搭載して、このＩＣチップとカバー部材との間に放熱シートを介装して放熱させる放熱構造において、装着する際に脱落せず、ＩＣチップとカバー部材との間に確実に放熱シートを装着して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を得るために、放熱シート１は、ＩＣチップ３との当接面側に相当する下面１１に、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面１１Ｂと、前記発熱部以外の部分に当接し接着剤が塗布された接着面１１Ａとを備えた構成とした。

Description

電子機器の放熱構造

　本発明は、液晶表示装置などに用いられる電子機器の放熱構造に関する。

　近年、ＩＣチップ（半導体チップ）等の電子部品を搭載した基板を備える電子機器が多く出回っている。例えば、液晶表示装置の液晶表示パネルを駆動するための基板にはこれらの電子部品が多く実装されている。

　また、各種電子機器に使用されている電子部品は、電子機器の小型化に対応するため、その集積度が向上し、ＩＣチップ等の電子部品を小さなスペースに高密度に配置することにより、発熱に対する放熱対策が大きな問題となっている。

　基板上に実装されるＩＣチップ等の電子部品は、使用時の発熱による温度上昇によって特性が変動して機器の誤作動の原因になったり、電子部品自体が故障したりすることがある。そのために、従来から、ＩＣチップ等の電子部品の温度上昇を抑える放熱構造が提案されている。

　例えば、ＩＣチップ等の電子部品の発熱を放熱するために、放熱板を用いているものがある。また、この放熱板とＩＣチップとの間に熱伝導性を有するゴムシートを介装して、このゴムシートを介して、ＩＣチップの熱を速やかに放熱板に伝熱しているものもある。

　また、同一基板に複数のＩＣチップを搭載している場合には、近接して複数の発熱体が存在する構成となるので、このような構成の電子機器であれば、それぞれのＩＣチップのさらに速やかな放熱が求められる。

　しかし、それぞれのチップ自体の厚みが異なることに起因して、その実装高さが異なる場合には、それぞれのチップ高さに応じたゴムシートや放熱板を設置して、それぞれのＩＣチップ毎に対応した放熱構造を選択する必要がある。

　そのために、それぞれのＩＣチップ毎に直接放熱シートを介装して、それぞれのＩＣチップを放熱させることが行われる。例えば、基板上に搭載される発熱体と金属製のケースとの間に放熱用のシリコーンゴムシートを介装して、この発熱体の発熱を速やかに金属製のケースに伝導して、機器外部に放熱する電子機器の放熱構造が既に提案されている（例えば、特許文献１参照）。

　また、ＬＥＤ（発光ダイオード）を光源とするバックライトを有する液晶表示装置では、ＬＥＤチップ自体が発熱体となるので、このＬＥＤチップの発熱を速やかに放熱させることが好ましく、放熱性に優れた金属ケースを嵌合部材を介して位置決めして装着して、ＬＥＤチップの発熱を効率よく放熱する液晶表示装置が既に提案されている（例えば、特許文献２参照）。

特開平１０－３０８４８４号公報特開２０１０－２７４５号公報

　基板に搭載するＩＣチップなどの発熱体と、この基板をカバーすると共に放熱板ともなるカバー部材との間に、熱伝導性の良好なシリコーンゴムなどの放熱シートを介装することで、ＩＣチップなどの発熱体の発熱をカバー部材から放熱させることが可能である。また、柔軟性を有する放熱シートを用いることで、ＩＣチップなどの発熱体とカバー部材との間の寸法のばらつきにもある程度は対応可能となる。

　しかし、同一基板上に高さの異なる複数のＩＣチップを搭載する場合では、それぞれのＩＣチップと基板カバーとの間隙寸法も異なるので、ＩＣチップと放熱シートとの当接圧にばらつきが生じて、放熱性が十分発揮されなくなってしまう問題が生じる。そのために、この間隙寸法に応じた適当な厚みの放熱シートを介装することが望ましい。

　また、基板カバーに熱伝導性を備えるチップ押さえ部を突出して設けて、同一厚みの放熱シートを介装させてもよく、この場合には、予め搭載するチップ厚みに応じた所定の突出高さに製作しておけばよい。しかし、製作誤差が生じると、突出高さが異なってしまい、当接圧が小さくなったり大きくなり過ぎたりして問題となる。

　また、複数のＩＣチップにそれぞれ放熱シートを取り付けて、この上に放熱板やカバー部材を載置する際に、放熱シートがずれたり脱落したりすると、十分な放熱性が得られなくなって、ＩＣチップの温度が上昇して特性が変動して機器の誤作動の原因になったり、電子部品自体が故障したりする問題を生じる。

　このように、放熱シートとＩＣチップとの当接圧が小さくなったり、放熱シートがＩＣチップから脱落したりすると、放熱性が低下してしまい問題となる。また、当接圧が大きくなり過ぎると、基板が撓んでダメージを受けたり、ＩＣチップが損傷したりして問題となる。

　そのために、基板に複数のＩＣチップを搭載する場合に、それぞれの実装高さが異なっていても、装着の際に脱落せずに適当な当接圧で放熱シートをＩＣチップの全面に確実に当接させて、確実に放熱性を発揮する放熱構造であることが好ましい。

　そこで本発明は、上記問題点に鑑み、基板に発熱体となるＩＣチップを搭載して、このＩＣチップとカバー部材との間に放熱シートを介装して放熱させる放熱構造において、装着する際に脱落せず、ＩＣチップとカバー部材との間に確実に放熱シートを装着して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するために本発明は、ＩＣチップと該ＩＣチップを搭載する基板と、放熱性を有し前記基板の実装面側をカバーするカバー部材とを備え、当該ＩＣチップと前記カバー部材との間に放熱シートを介装して、前記ＩＣチップの熱を放熱する電子機器の放熱構造において、前記放熱シートは、前記ＩＣチップとの当接面側に相当する下面に、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面と、前記発熱部以外の部分に当接し接着剤が塗布された接着面とを備えたことを特徴としている。

　この構成によると、接着剤が塗布された接着面を介して、ＩＣチップに確実に接着して容易に脱落しない構成となる。また、接着剤が塗布されていない伝熱面を介して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を得ることができる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記下面に前記ＩＣチップが嵌まり込む嵌合凹部を設け、該嵌合凹部の凹面を前記ＩＣチップと当接する伝熱面とし、前記下面の前記嵌合凹部を囲む面を接着面としたことを特徴としている。この構成によると、接着面がＩＣチップを搭載している基板に接着するので、発熱部を外れた部分で確実に接着固定することができる。また、ＩＣチップに当接する伝熱面を介して十分な放熱性を発揮する。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記下面と対向する前記放熱シートの上面は、その角部がテーパ状にカットされていることを特徴としている。この構成によると、ＩＣチップに貼付した放熱シートの上面の角部がテーパ状になっているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シートを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記下面と対向する前記放熱シートの上面は、その角部が円弧状に丸められていることを特徴としている。この構成によると、ＩＣチップに貼付した放熱シートの上面の角部が円弧状に丸められているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シートを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記放熱シートは、前記下面と該当接面と対向する上面との間の側面が丸められた扁平形状とされていることを特徴としている。この構成によると、ＩＣチップに貼付した放熱シートの側面が丸められているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シートを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記放熱シートに熱伝導性を有する粒子状の熱伝導補助材を配合したことを特徴としている。この構成によると、放熱シートの厚みが厚くなっても、厚み方向の熱伝導性を発揮して、ＩＣチップの熱を確実に放熱することができる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記放熱シートは、前記下面もしくは前記上面の少なくとも一方の面に熱伝導性を有し不導体からなる膜材を積層したことを特徴としている。この構成によると、配合する熱伝導補助材が導体であっても、ＩＣチップの予期しない導通を防止することが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記熱伝導補助材は、金属粒子であることを特徴としている。この構成によると、高い熱伝導性を有する金属粒子を配合した放熱シートを介装してＩＣチップの熱を確実に放熱して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記放熱シートは、熱伝導性を有する熱伝導補助層を積層したことを特徴としている。この構成によると、高い熱伝導性を有する熱伝導補助層を介してＩＣチップの熱を確実に放熱して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記嵌合凹部が形成する伝熱面は、その中央部を湾曲状に突出した凸伝熱面であることを特徴としている。この構成によると、伝熱面が湾曲状に突出しているので、ＩＣチップの発熱部である中央部に確実に当接して十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記嵌合凹部が、前記ＩＣチップの本体外形部が嵌まり込む中央嵌合部と、該ＩＣチップの側面に設けられている電極端子に当接する端子当接面を備えていることを特徴としている。この構成によると、放熱シートが電極端子にも当接して、この電極端子の熱も放熱可能となるので、ＩＣチップの放熱性をさらに向上することができる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記中央嵌合部が、その輪郭外周部に逃げ部を設けたことを特徴としている。この構成によると、放熱シートに設ける中央嵌合部の輪郭外周部が先にＩＣチップに当接して、ＩＣチップの中央部分に位置する発熱部との当接状態を妨害することが生じないので、放熱シートの伝熱面がＩＣチップの発熱部に確実に当接して十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また本発明は上記構成の電子機器の放熱構造において、前記端子当接面は、前記電極端子に当接する方向に突出した凸状端子当接面であることを特徴としている。この構成によると、放熱シートに設ける端子当接面を確実に電極端子に当接させて、放熱性を発揮可能となる。

　本発明によれば、基板に発熱体となるＩＣチップを搭載して、このＩＣチップとカバー部材との間に放熱シートを介装して放熱させる放熱構造において、ＩＣチップとの当接面側に相当する下面に、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面と、前記発熱部以外の部分に当接し接着剤が塗布された接着面とを備えた構成の放熱シートとしたので、接着剤が塗布された接着面を介して、ＩＣチップに確実に接着して容易に脱落しない構成となる。また、接着剤が塗布されていない伝熱面を介して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を得ることができる。

本発明に係る電子機器の放熱構造の概要を示す概略側面図である。本発明に係る電子機器の放熱構造の概要を示す概略平面図である。本発明に係る放熱シートの構成例を示す概略斜視図である。本発明に係る放熱シートの構成例を示す概略断面図である。本発明に係る放熱シートの側面図であって、角部をテーパ状カットした第一例の放熱シートの側面図である。角部を丸めた第二例の放熱シートの側面図である。扁平形状にした第三例の放熱シートの側面図である。放熱シートのその他の構成例を示す断面図であって、熱伝導補助材を配合した構成例を示す。不導体からなる膜材を積層した構成例を示す断面図である。熱伝導補助層を積層した構成例を示す断面図である。基板押さえ部を弾性押さえ部とした変形例を示す要部拡大図である。図５Ａの弾性押さえ部の装着例を示す図である。放熱シートのその他の実施形態例を示す断面図であって、嵌合凹部を備える例を示す。放熱シートのその他の実施形態例を示す断面図であって、嵌合凹部に凸伝熱面を設けた例を示す。嵌合凹部と端子当接面を備える放熱シートの変形例を示す断面図である。図７Ａの放熱シートにさらに凸伝熱面を備えた変形例を示す断面図である。中央嵌合部の輪郭外周部に逃げ部を設けた変形例を示す断面図である。テーパ状の凸端子当接面を備えた変形例を示す断面図である。湾曲状に突出した凸端子当接面を備えた変形例を示す断面図である。

　以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。

　本実施形態に係る電子機器の放熱構造は、ＩＣチップ（半導体チップ）等の電子部品を搭載した基板を備える電子機器に関する放熱構造であって、例えば図１Ａに示すように、基板２に実装されるＩＣチップ３（３Ａ、３Ｂ）と基板カバーなどのカバー部材４との間に放熱シート１（１Ａ、１Ｂ）を介装して放熱する放熱構造である。

　また、この放熱シートとしては、厚み方向に変形容易な柔軟性を備えて、ＩＣチップ３とカバー部材４との間隙の寸法のばらつきに拘らずに、容易に圧接されてＩＣチップ３に確実に当接する程度のゴム硬さのゴムシートが好ましく、例えば、アスカーＣ硬度が１０～６０程度のシリコーンゴムシートやアクリルゴムシートなどの放熱性を有するゴムシートを用いることができる。なお、アスカーＣ硬度とは、日本ゴム協会標準規格で規定されるゴム硬度であり、ＪＩＳ　Ｋ　６２５３で規定されるショア硬度Ｅに相当する。

　カバー部材４は、上面４１と側面４２と取付け面４３を備えた基板カバーであって、例えば、熱伝導性を備えて放熱性を発揮するアルミ板などの金属板金を用いて折り曲げ構成とされ、取付け面４３を基板２に載置して止めネジ４４を用いてネジ固定される。また、基板２に複数のＩＣチップ３（３Ａ、３Ｂ）を搭載する場合には、このＩＣチップ搭載部に合致した位置の上面部にチップ押さえ部５（５Ａ、５Ｂ）が設けられている。

　図１Ｂに示すように、例えば、矩形の基板２にＩＣチップ３が４個搭載された構成であれば、カバー部材４も平面視矩形に形成される。また、搭載されるＩＣチップ３の個数に応じて、平面視矩形のカバー部材４に４個のチップ押さえ部５（５Ａ、５Ｂ、５Ｃ、５Ｄ）が設けられている。これらのチップ押さえ部５（５Ａ～５Ｄ）も熱伝導性を備えた板金製であることが好ましく、熱伝導性を備えたカバー部材４の上面４１部を板金加工して設けることができる。また、熱伝導性を備えた別部材からなる押さえ部を接合して設けてもよく、特に限定されるものではない。

　それぞれのチップ押さえ部５の突出高さは、それぞれのＩＣチップ３とカバー部材４との間に放熱シート１を圧接状態に介装可能な程度に突出した高さとされる。また、放熱シート１がシリコーンゴムやアクリルゴムからなる放熱性に優れた柔軟なシートであれば、このチップ押さえ部５を介して、放熱シート１を弾性的に押圧して圧接することが容易となって好ましい。

　上記のような構成であれば、熱伝導性を有する放熱シート１からチップ押さえ部５を介して、ＩＣチップ３の熱が放熱板ともなるカバー部材４に速やかに伝導されるので、ＩＣチップ３の熱を速やかに放熱することができる。

　次に、装着する際に脱落せず、ＩＣチップとカバー部材との間に確実に介装され、十分な放熱性を発揮する放熱シート１の構成について図２Ａ、図２Ｂを用いて説明する。

　ＩＣチップに装着する放熱シート１は、例えば、図２Ａの斜視図に示すように、ＩＣチップとの当接面側に相当する下面１１とこの下面１１に対向する上面１２を有する矩形状とされる。また、下面１１は、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面１１Ｂと、発熱部以外の部分に当接し接着剤ＰＡが塗布された接着面１１Ａとを備えた構成とされている。

　これは、ＩＣチップの発熱は、一般に、ＩＣチップの中央部分が最も高くてこの部分が発熱部となるので、この発熱部からの放熱性を高めることがＩＣチップを放熱させるために最も有効だからである。また、比較的発熱温度が低い周囲縁部やその他の面部を介して、放熱シート１を強固に接着するために、発熱部以外の部分に当接するシート下面の周端部領域に接着面１１Ａを設ける構成とした。

　上記した構成であれば、接着剤ＰＡが塗布された接着面１１Ａを介して、ＩＣチップに確実に接着して容易に脱落しない構成となる。また、接着剤が塗布されていない伝熱面１１Ｂを放熱シート１の発熱部位に当接して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を得ることができる。

　これは、一般に、接着剤は放熱シートよりも熱伝導率が低く、熱抵抗になりやすいからである。しかし、放熱シート自体は接着力が小さいので、放熱シートをＩＣチップに取り付ける組付作業中に脱落してしまう場合が生じる。そこで、本実施形態では、ＩＣチップの発熱部となるコア部分には接着剤を塗布していない伝熱面１１Ｂを当接させ、このコア部分を囲む周端部領域に、つまり放熱性が重要でない部分に接着剤を塗布した接着面１１Ａを設け、接着力を強化する構成としている。

　そのために、周端部に接着面１１Ａを備える下面１１をＩＣチップ３の外周部に押し当てるようにして放熱シート１をＩＣチップ３に取り付けると、図２Ｂの概略断面図に示すように、基板２に搭載されたＩＣチップ３の外周部に接着剤ＰＡが塗布された接着面１１Ａを介して、放熱シート１が接着構成される。このように、本実施形態によれば、ＩＣチップ３に対して放熱シート１を正しく配置した状態で貼付可能となる。

　また、さらに脱落し難い構成とした放熱シートについて図３Ａ～図３Ｃを用いて説明する。

　図３Ａに示す放熱シート１Ｃは、下面１１と対向する放熱シートの上面１２の角部がテーパ状にカットされている。このテーパ状角部１３が形成された構成であれば、ＩＣチップに貼付した放熱シート１Ｃの上面の角部がテーパ状になっているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シート１Ｃを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　図３Ｂに示す放熱シート１Ｄは、下面１１と対向する放熱シートの上面１２の角部が円弧状に丸められている。この円弧状角部１４が形成された構成であれば、ＩＣチップに貼付した放熱シート１Ｄの上面の角部が円弧状に丸められているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シート１Ｄを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　図３Ｃに示す放熱シート１Ｅは、下面１１と該下面と対向する上面１２との間の側面が丸められた扁平形状１５とされている。この構成でも、ＩＣチップに貼付した放熱シート１Ｅの上面の角部が丸められているので、組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シート１Ｅを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　また、いずれの構成であっても、下面１１に、ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面１１Ｂと、発熱部以外の部分に当接し接着剤ＰＡが塗布された接着面１１Ａとを備えた構成であることが好ましい。

　また、放熱シートの厚みが厚くなると熱伝導性が悪化するので、上記したように、発熱部以外の部分に接着面１１Ａを設ける構成とするだけでは、放熱性能を十分発揮することができない虞が生じる。そのために、厚みの厚い放熱シートであっても、十分な放熱性能を発揮することを可能とした放熱構造について図４Ａ～図４Ｃを用いて説明する。

　図４Ａに示す放熱シート１Ｆは、熱伝導性を有する粒子状の熱伝導補助材Ｋを配合した構成である。この構成であれば、放熱シート１Ｆの厚みが厚くなっても、厚み方向の熱伝導性を発揮して、ＩＣチップの熱を確実に放熱することができる。

　熱伝導補助材Ｋは、例えば、銅などの金属粒子を用いる。この構成であれば、高い熱伝導性を有する金属粒子を配合した放熱シートを介装することで、放熱シートの厚み方向の熱伝導性が低下せずにＩＣチップの熱を確実に放熱可能となって、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また、高い熱伝導性は備えるが電気の導通はしない不導体であることが望まれる場合には、絶縁膜で被覆した金属粒子を用いるとよい。また、アルマイト処理を施したアルミ金属粒子を用いてもよい。もしくは、熱伝導性を有する不導体からなる粒子状の熱伝導補助材Ｋを用いる。

　また、図４Ｂに示すように、シートの下面もしくは上面のいずれか一面もしくは両面に、すなわち、少なくとも一方の面に熱伝導性を有し不導体からなる膜材１６（１６Ａ、１６Ｂ）を積層した放熱シート１Ｇとすることが好ましい。この構成であれば、配合する熱伝導補助材Ｋが導体であっても、ＩＣチップの予期しない導通を防止することが可能となる。

　この膜材１６（１６Ａ、１６Ｂ）は、熱伝導性を有する薄い樹脂膜でも、熱伝導性を有する接着剤を塗布して硬化させた層であってもよい。

　図４Ｃに示す放熱シート１Ｈは、熱伝導性を有する熱伝導補助層１７（１７Ａ、１７Ｂ）を積層した構成としている。このような構成でも、放熱シートの厚み方向の熱伝導性の悪化を抑制して、ＩＣチップの熱を速やかに放熱可能となる。そのために、熱伝導性を有する熱伝導補助層１７（１７Ａ、１７Ｂ）を積層した構成の放熱シート１Ｈは、良好な熱伝導性を維持してＩＣチップの熱を確実に放熱可能となる。そのために、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　この熱伝導補助層１７は、金属片や熱伝導性樹脂などの高い熱伝導性を有する片材を、シリコーンゴムやアクリルゴムからなる放熱シート材中に積層して形成される。この熱伝導補助層１７の形状はフィルム状でも薄板状でも、その他の不定形状であってもよく、また、その積層数や積層密度も特には限定されず、シートの厚み方向に、所定の熱伝導性を発揮可能な程度の積層数や積層密度であればよい。

　また、カバー部材に設けるチップ押さえ部を用いて、より確実に、放熱シートをＩＣチップに当接させることが可能であるので、図５Ａ、図５Ｂを用いて、チップ押さえ部の変形例の実施形態について説明する。

　図５Ａに示すチップ押さえ部は、カバー部材４に一端が固着されてカバー部材から接離する方向に弾性変形可能とされる弾性片部５１ｂと、この弾性片部５１ｂの他端側に連接され放熱シートに当接して押圧する当接片部５１ａを備えた弾性押さえ部５１である。

　また、図５Ｂに、この弾性押さえ部５１を用いて実際に基板２に搭載されたＩＣチップ３に放熱シート１を介装した状態を示す。

　図に示すように、当接片部５１ａに押圧されて、放熱シート１がＩＣチップ３の上面に確実に当接した状態となる。このとき、弾性片部５１ｂは弾性変形しており、当接片部５１ａがＩＣチップ３と放熱シート１Ａの上面に弾性的に付勢された状態となる。

　この構成であれば、ＩＣチップ３とカバー部材４との隙間にバラツキが生じても、適当な圧でＩＣチップ３と放熱シート１、および、放熱シート１とカバー部材４とを当接させて、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造となる。

　また、放熱シート１は、その下面にＩＣチップ３が嵌まり込む嵌合凹部を備えた形状であってもよく、下面の嵌合凹部を囲む面を接着面とすることで、ＩＣチップ３を搭載している基板に放熱シート１を確実に接着可能な構成となる。この嵌合凹部を備えた放熱シートの実施形態例について、図６Ａ、図６Ｂおよび図７Ａ～図７Ｅを用いて説明する。

　図６Ａに示す放熱シート１Ｋは、ＩＣチップ３（３Ｃ）が嵌まり込む嵌合凹部１８を備えた実施形態例を示す。そのために、ＩＣチップ３（３Ｃ）が矩形であれば、この嵌合凹部１８の形状も矩形とされる。

　この構成の放熱シート１Ｋの場合は、嵌合凹部１８の凹面が伝熱面１１Ｂａとなり、下面の嵌合凹部１８を囲む面が接着面１１Ａａとなる。そして、基板２に搭載されたＩＣチップ３（３Ｃ）に放熱シート１Ｋを嵌め込むようにして押し付けると、接着剤が塗布された接着面１１Ａａが基板２に接着し、伝熱面１１ＢａがＩＣチップ３（３Ｃ）の発熱部に当接した状態となる。

　上記したように、下面にＩＣチップが嵌まり込む嵌合凹部１８を設け、該嵌合凹部１８の凹面をＩＣチップと当接する伝熱面１１Ｂａとし、嵌合凹部１８を囲む面を接着面１１Ａａとした構成であれば、接着面１１ＡａがＩＣチップを搭載している基板２に接着するので、ＩＣチップの発熱部を外れた部分で確実に接着固定することができる。また、前述したチップ押さえ部５や弾性押さえ部５１を介して圧接させることでＩＣチップの発熱部に密着する伝熱面１１Ｂａを介して十分な放熱性を発揮する構成となるので好ましい。

　また、図６Ｂに示す放熱シート１Ｌは、嵌合凹部が形成する伝熱面を、その中央部を湾曲状に突出した凸伝熱面１１Ｂｂとした実施形態例を示している。この構成であれば、凸伝熱面１１Ｂｂが湾曲状に突出しているので、放熱シートの加工ばらつきに拘らずにＩＣチップの発熱部となる中央部に確実に当接して十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また、図７Ａに示す放熱シート１Ｍのように、嵌合凹部が、ＩＣチップ３Ｄの本体外形部が嵌まり込む中央嵌合部１１Ｂｃと、該ＩＣチップ３Ｄの側面から突出して設けられている電極端子３１に当接する端子当接面１１Ｂｄを備えた構成であれば、放熱シート１Ｍが、ＩＣチップの本体発熱部に当接する中央嵌合部１１Ｂｃに加えて、同じく発熱する電極端子３１に当接する端子当接面１１Ｂｄを介して、ＩＣチップ３Ｄの熱をさらに良好に放熱して、放熱性能をさらに向上することができる。

　この場合でも、中央嵌合部１１Ｂｃを、図７Ｂに示すように前述した湾曲状に突出した凸伝熱面１１Ｂｂとして、放熱シートの製造誤差や加工ばらつきに拘らずにＩＣチップの発熱部である中央部に確実に当接させる構成としてもよい。

　また、図７Ｃに示す放熱シート１Ｐのように、中央嵌合部１１Ｂｃの輪郭外周部に溝状の逃げ部１１Ｂｅを設けたり、図７Ｄに示す放熱シート１Ｒのように、端子当接面をテーパ状に突出した凸状端子当接面１１Ｂｆとしたり、図７Ｅに示す放熱シート１Ｓのように、端子当接面を湾曲状に突出した凸状端子当接面１１Ｂｇとしたりして、発熱部である、ＩＣチップの中央部や電極端子に確実に当接させることが好ましい。

　中央嵌合部が、その輪郭外周部に溝状の逃げ部１１Ｂｅを設けた構成であれば、放熱シートに設ける中央嵌合部の輪郭外周部が先にＩＣチップに当接して、ＩＣチップの中央部分に位置する発熱部との当接状態を妨害することが生じず、装着が容易となるゆとり部を備えた構成となる。そのために、放熱シートの伝熱面を、ＩＣチップの発熱部に当接させるように確実に装着でき、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能となる。

　また、端子当接面が、電極端子３１に当接する方向に突出した凸状端子当接面１１Ｂｆ、１１Ｂｇであれば、放熱シートに設ける端子当接面を確実に電極端子３１に当接させて放熱することが可能となる。端子当接面を備えた放熱シート１Ｍ～１Ｓの場合にも、下面の、中央嵌合部と端子当接面を含む嵌合凹部を囲む面が接着面１１Ａａとなる。

　このように、ＩＣチップの全体を覆うようにして放熱シート１（１Ｋ～１Ｓ）を装着してＩＣチップの発熱を放熱シート１を介して放熱することができる。また、端子当接面を備える放熱シート１Ｍ～１Ｓであれば、ＩＣチップ本体部の発熱に加えて電極端子部からの発熱の同時に効率よく放熱することができ、放熱性能が向上する。

　上記の放熱シート１Ｋ～１Ｓの場合でも、放熱シートに熱伝導性を有する粒子状の熱伝導補助材を配合したり、熱伝導性を有する熱伝導補助層を積層したりして、さらに放熱性能を向上させることができる。

　上記したように、本発明によれば、基板に発熱体となるＩＣチップを搭載して、このＩＣチップとカバー部材との間に放熱シートを介装して放熱させる放熱構造において、ＩＣチップとの当接面側に相当する下面に、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面と、該伝熱面を囲む領域に設けられ、前記発熱部以外の部分に当接し接着剤が塗布された接着面と、を備えた構成の放熱シートとしたので、接着剤が塗布された接着面を介して、ＩＣチップに確実に接着して容易に脱落しない構成となる。また、接着剤が塗布されていない伝熱面を介して、十分な放熱性を発揮して電子機器の信頼性を向上させることが可能な電子機器の放熱構造を得ることができる。

　また、放熱シートの上面の角部を、テーパ状にカットしたり、円弧状に丸めたりすることで、ＩＣチップにこの放熱シートを装着する組立作業中に脱落し難い形状となって、放熱シートを確実にＩＣチップに装着することが可能となる。

　さらに、放熱シートに熱伝導性を有する粒子状の熱伝導補助材を配合したり、熱伝導性を有する熱伝導補助層を積層したりして、厚み方向の熱抵抗を減らして、厚みのある放熱シートであっても、十分な放熱性を発揮する構成とすることが可能となる。

　そのために本発明に係る電子機器の放熱構造は、発熱するＩＣチップを確実に放熱することが望まれる電子機器に好適に利用可能となる。

　　　１（１Ａ～１Ｓ）　　放熱シート
　　　２　　基板
　　　３　　ＩＣチップ
　　　３１　電極端子
　　　４　　カバー部材
　　　５（５Ａ～５Ｄ）　　チップ押さえ部
　　　５１　弾性押さえ部
　　１１　　下面
　　１１Ａ　接着面
　　１１Ｂ　伝熱面
　　１１Ｂｂ　凸伝熱面
　　１１Ｂｃ　中央嵌合部
　　１１Ｂｄ　端子当接面
　　１１Ｂｅ　逃げ部
　　１１Ｂｆ、１１Ｂｇ　凸状端子当接面
　　１２　　上面
　　１３　　テーパ状角部
　　１４　　円弧状角部
　　１５　　扁平形状
　　１６（１６Ａ、１６Ｂ）　膜材
　　１７（１７Ａ、１７Ｂ）　熱伝導補助層
　　１８　　嵌合凹部
　　　Ｋ　　熱伝導補助材
　　ＰＡ　　接着剤

Claims

ＩＣチップと該ＩＣチップを搭載する基板と、放熱性を有し前記基板の実装面側をカバーするカバー部材とを備え、当該ＩＣチップと前記カバー部材との間に放熱シートを介装して、前記ＩＣチップの熱を放熱する電子機器の放熱構造において、
　前記放熱シートは、前記ＩＣチップとの当接面側に相当する下面に、当該ＩＣチップの発熱部に当接すると共に接着剤が塗布されていない伝熱面と、前記発熱部以外の部分に当接し接着剤が塗布された接着面とを備えたことを特徴とする電子機器の放熱構造。
前記下面に前記ＩＣチップが嵌まり込む嵌合凹部を設け、該嵌合凹部の凹面を前記ＩＣチップと当接する伝熱面とし、前記下面の前記嵌合凹部を囲む面を接着面としたことを特徴とする請求項１に記載の電子機器の放熱構造。
前記下面と対向する前記放熱シートの上面は、その角部がテーパ状にカットされていることを特徴とする請求項１または２に記載の電子機器の放熱構造。
前記下面と対向する前記放熱シートの上面は、その角部が円弧状に丸められていることを特徴とする請求項１または２に記載の電子機器の放熱構造。
前記放熱シートは、前記下面と該下面と対向する上面との間の側面が丸められた扁平形状とされていることを特徴とする請求項１または２に記載の電子機器の放熱構造。
前記放熱シートに熱伝導性を有する粒子状の熱伝導補助材を配合したことを特徴とする請求項１から５のいずれかに記載の電子機器の放熱構造。
前記放熱シートは、前記下面もしくは前記上面の少なくとも一方の面に熱伝導性を有し不導体からなる膜材を積層したことを特徴とする請求項６に記載の電子機器の放熱構造。
前記熱伝導補助材は、金属粒子であることを特徴とする請求項６または７に記載の電子機器の放熱構造。
前記放熱シートは、熱伝導性を有する熱伝導補助層を積層したことを特徴とする請求項１から５のいずれかに記載の電子機器の放熱構造。
前記嵌合凹部が形成する伝熱面は、その中央部を湾曲状に突出した凸伝熱面であることを特徴とする請求項２から９のいずれかに記載の電子機器の放熱構造。
前記嵌合凹部が、前記ＩＣチップの本体外形部が嵌まり込む中央嵌合部と、該ＩＣチップの側面に設けられている電極端子に当接する端子当接面を備えていることを特徴とする請求項２から９のいずれかに記載の電子機器の放熱構造。
前記中央嵌合部が、その輪郭外周部に逃げ部を設けたことを特徴とする請求項１１に記載の電子機器の放熱構造。
前記端子当接面は、前記電極端子に当接する方向に突出した凸状端子当接面であることを特徴とする請求項１１または１２に記載の電子機器の放熱構造。