WO2011007625A1

WO2011007625A1 - 車両用シート

Info

Publication number: WO2011007625A1
Application number: PCT/JP2010/059427
Authority: WO
Inventors: 堀口　賢治; 弘行呉竹; 英紀木下
Original assignee: トヨタ車体株式会社
Priority date: 2009-07-15
Filing date: 2010-06-03
Publication date: 2011-01-20
Also published as: CN102470782B; CN102470782A; EP2455254A4; US20120169099A1; US9114731B2; EP2455254A1; EP2455254B1

Abstract

　本発明は、臀部より大腿部が低い中腰に近い姿勢で乗員が車両に乗降できるようにして、乗員の乗降を楽にすることを目的とする。本発明に係る車両用シートは、固定クッション部（Ｓ）と可動クッション部（Ｍ）とからなり、可動クッション部（Ｍ）が固定クッション部（Ｓ）に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜可能に構成されたシートクッション（４０）と、シートクッション（４０）の下に設けられており、可動クッション部（Ｍ）を固定クッション部（Ｓ）に対して上昇させつつ、傾斜させるクッション傾斜機構（５０）とを備えることを特徴とする。

Description

車両用シート

　本発明は、シートクッションとシートバックとを備える車両用シートに関する。

　これに関する車両用シートが特許文献１に記載されている。
　特許文献１に記載の車両用シートは、図３２に示すように、シートフレーム５０２上にシートクッション５０４とシートバック５０５とが設置されている。そして、シートクッション５０４がシートフレーム５０２に対して乗降口側が低くなるように傾斜可能に構成されている。このため、降車時にシートクッション５０４をシートフレーム５０２に対して傾斜させることで、そのシートクッション５０４に着座している乗員がシートクッション５０４のサイド部５０４ｓを乗越え易くなり、車両から降りる際に前記サイド部５０４ｓが邪魔にならなくなる。

実開昭６０－１６８６３２号

　しかし、例えば、乗用車等ではシートクッション５０４のクッション座面５０４ｚは低い位置にあり、さらに乗員の着座姿勢は臀部よりも大腿部が高い状態になる。このため、クッション座面５０４ｚが低いままでサイド部５０４ｓが低くなったとしても、乗員がシートクッション５０４から立ち上がる際に膝が大きく曲がるようになり、高齢者等にとっては膝に負担が掛かる。
　この点を改善するため、降車時にシートクッション５０４をシートフレーム５０２に対して上昇させることが考えられる。しかし、図３２に示す構成において、シートクッション５０４を上昇させると、着座している乗員の臀部と大腿部とが共に上昇するようになるため、その乗員の大腿部がステアリング等に接近し、車両から降りる際に乗員の大腿部が前記ステアリング等と干渉するようなことがある。

　本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、臀部より大腿部が低い中腰に近い姿勢で乗員が車両に乗降できるようにして、乗員の乗降を楽にすることである。

　上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
　請求項１の発明は、固定クッション部と可動クッション部とからなり、前記可動クッション部が固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜可能に構成されたシートクッションと、前記シートクッションの下に設けられており、前記可動クッション部を固定クッション部に対して上昇させつつ、傾斜させるクッション傾斜機構とを備えることを特徴とする。

　本発明によると、乗降時にクッション傾斜機構を動作させることで、シートクッションの可動クッション部を固定クッション部に対して上昇させ、乗降側が低くなるように傾斜させることができる。このため、シートクッションに着座している乗員の姿勢が中腰に近い姿勢になり、膝が伸びるようになる。また、シートクッションの可動クッション部を上昇させても乗員の大腿部が例えばステアリング等と干渉し難くなる。
　さらに、シートクッションの可動クッション部は乗降側が低くなるように傾斜しているため、シートクッションのサイド部を乗越える際に乗員が脚を持ち上げる必要がなく、中腰に近い姿勢を保持できる。

　請求項２の発明によると、可動クッション部が傾斜するときに、その可動クッション部の乗降側に位置するサイドサポート部も一体となって傾斜することを特徴とする。このため、乗降がさらに容易になる。
　請求項３の発明によると、クッション傾斜機構は、シートクッションの下で倒伏位置から起立位置まで回動可能に構成された第１リンクと、その第１リンクと交差するように連結されて、前記第１リンクとほぼ対称に動作可能に構成された第２リンクと、前記第１リンク、第２リンクを倒伏位置から起立位置まで回動させられるように構成された駆動部とを備えており、前記第１リンク、第２リンクが倒伏位置から起立位置まで回動することで、前記シートクッションの可動クッション部が前記固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜させられることを特徴とする。
　このように、交差する第１リンクと第２リンクとを使用する構成のため、交差位置を調整することで上限位置におけるシートクッションの可動クッション部の傾斜角度調整が可能になる。

　請求項４の発明によると、クッション傾斜機構は、シートクッションの可動クッション部を上下回動可能な状態で支持部材に連結する連結機構と、その連結機構の回動中心回りに可動クッション部を上下回動させる駆動部とを備えており、前記可動クッション部が前記連結機構の回動中心回りに上方に回動することで、その可動クッション部が前記固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜するように構成されていることを特徴とする。
　このように、可動クッション部が連結機構の回動中心回りに上方に回動することで、その可動クッション部が固定クッション部に対して上昇して乗降口側が低くなるように傾斜するように構成のため、クッション傾斜機構の構成を簡単にできる。

　請求項５の発明によると、シートクッション及びシートバックを支持するシートフレームを車室フロアに沿ってスライドさせるスライド機構と、前記シートフレームを前記車室フロアに対して昇降させるフレーム昇降機構とを備えていることを特徴とする。
　このため、スライド機構とフレーム昇降機構とにより、車室フロアに対する車両用シートの位置調整が可能になる。
　請求項６の発明によると、乗降口のドアが開いている状態で、上昇スイッチが操作されたときにクッション傾斜機構がシートクッションの可動クッション部を上昇させる方向に動作することを特徴とする。
　このため、乗員が降車しようとする意思があるときのみクッション傾斜機構を上昇動作させることができ、意に反してクッション傾斜機構が動作するような不具合がない。

　請求項７の発明によると、クッション傾斜機構は、シートクッションの下側で可動部を水平方向に往復移動させられるように構成された駆動機構と、前記可動部が前記駆動機構の働きで一定方向に移動することにより、その移動量に応じて前記シートクッションの可動クッション部を傾斜させられるように構成されたリンク機構とを有することを特徴とする。
　本発明によると、シートクッションの下側に配置された駆動機構は、可動部を水平方向に往復移動させる構成である。このため、可動部を高さ方向に往復移動させる構成と比較して、駆動機構の高さ寸法を小さくすることができる。したがって、駆動機構の上側に配置されるシートクッションのヒップポイントを低く抑えることができる。
　さらに、前記可動部が水平方向に往復移動する構成のため、シートクッションのヒップポイントを低く抑えた状態で、前記可動部の往復移動のストロークを大きく設定することができる。このため、乗降時にシートクッションの可動クッション部の傾斜を大きくして、その可動クッション部の一部である臀部受け部の上昇量を大きくすることが可能になる。

　請求項８の発明によると、シートクッションを車両の乗降口側に水平回転させる回転機構を備えていることを特徴とする。
　このため、前記回転機構の働きで車両への乗降がさらに容易になる。
　請求項９の発明によると、リンク機構は、シートクッションの可動クッション部を車両の乗降口側に傾斜させられるように構成されており、さらに、前記可動クッション部、前記リンク機構及び前記駆動機構を車両の乗降口側に水平スライドさせるスライド機構を備えていることを特徴とする。
　このため、前記スライド機構の働きで車両への乗降がさらに容易になる。

　請求項１０の発明によると、リンク機構は、シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の途中位置をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、その水平支持部に近い方の前記クッション支持部材の一端と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする。
　このため、前記駆動機構の可動部、及びリンク機構のリンクによりシートクッション支持部材の一端を一定方向に移動させることができ、これにより、そのシートクッション支持部材を水平支持部回りに上方に回転させて、シートクッションの可動クッション部を傾斜させることができる。

　請求項１１の発明によると、リンク機構は、シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の一端をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、前記クッション支持部材の途中位置と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする。
　このため、前記駆動機構の可動部、及びリンク機構のリンクによりシートクッション支持部材の途中位置を一定方向に移動させることができ、これにより、そのシートクッション支持部材を水平支持部回りに上方に回転させて、シートクッションの可動クッション部を傾斜させることができる。

　請求項１２の発明によると、固定クッション部に対する可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材を備えることを特徴とする。
　本発明によると、乗降位置にある可動クッション部が下降する際に、乗員が誤って可動クッション部と固定クッション部との開放部分に手を滑り込ませようとしても、前記閉鎖部材によってこれが妨げられ、可動クッション部と固定クッション部との間に手等を挟む等のトラブルを防止できる。

　請求項１３の発明によると、閉鎖部材は、可動クッション部の境界位置側面の下端から下方に突出する塀状の板部と、前記板部の下端縁と前記固定クッション部の境界位置側面との間の開放部分を塞ぐ変形自在なシート状部材とから構成されていることを特徴とする。
　このように、閉鎖部材が板部と変形自在なシート状部材とから構成されるため、簡単な構成で閉鎖部材と固定クッション部等との干渉を防止できる。
　請求項１４の発明によると、シート状部材は、前記板部に連結されていることを特徴とする。

　請求項１５の発明によると、シート状部材の基端部が可動クッション部に設けられた板部の下端縁に連結され、あるいは前記板部の内側で可動クッション部に連結され、そのシート状部材の先端部が前記固定クッション部の境界位置側面に連結されて、前記可動クッション部が上昇する過程で前記シート状部材が展開される構成であり、前記可動クッション部が乗降位置にある状態で、前記可動クッション部の着座面から前記板部と前記シート状部材との連結位置、あるいは前記板部の下端縁までの高さ寸法は、その連結位置、あるいは前記板部の下端縁から前記固定クッション部の着座面までの高さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする。
　このため、可動クッション部が着座位置まで下降する過程でシート状部材の基端部が可動クッション部の板部の下端縁によって下方に引っ張られ、前記シート状部材が着座面よりも下側に収納されるようになる。即ち、可動クッション部が着座位置まで下降した状態で、シート状部材の一部が可動クッション部と固定クッション部との着座面の上に残るようなことがない。したがって、シートクッションの座り心地が低下するようなことがなく、さらに着座面の見栄えが低下するようなこともない。

　請求項１６の発明によると、固定クッション部の境界位置側面は、上方を指向するように傾斜しており、可動クッション部の境界位置側面は、下方を指向するように傾斜しており、前記可動クッション部が着座位置にある状態で、前記可動クッション部の境界位置側面が前記固定クッション部の境界位置側面と面接触するように構成されていることを特徴とする。
　このため、可動クッション部が着座位置にある状態で、シートクッションに乗員が座っている場合に、乗員の体重が可動クッション部の境界位置側面から固定クッション部の境界位置側面に加わるようになる。このため、可動クッション部の境界位置側面と固定クッション部の境界位置側面とが乗員の体重を受けた状態で完全に面接触し、可動クッション部と固定クッション部との境界位置で隙間が生じなくなる。これにより、シートクッションの座り心地が低下するようなことがない。
　また、固定クッション部と可動クッション部との境界位置側面が縦に形成されている場合と比較して、前記可動クッション部の昇降時における両境界位置側面間の隙間寸法が大きくなり、シート状部材を着座面の下側に収納し易くなる。

　請求項１７の発明によると、クッション傾斜機構の駆動部の操作スイッチは、降車時に開かれるドアの室内側であって、そのドアの窓の下側に配置されており、前記ドアが開かれた状態でその操作スイッチが操作されることで、前記駆動部が動作するように構成されていることを特徴とする。
　本発明によると、乗員は、降車時にドアを開けた後、上体を自然に車両の外側に出し、前傾姿勢で操作スイッチを操作するようになる。そして、乗員が操作スイッチを操作することでクッション傾斜機構が動作し、可動クッション部が上昇するようになる。即ち、乗員は前傾姿勢の状態で可動クッション部により臀部が押上げられるため、前傾姿勢で立ち上がるようになる。これにより、乗員が頭部を車両の乗降口の天井部分に当てるようなことがなくなる。

　請求項１８の発明によると、駆動部はモータを備えており、操作スイッチは操作されている間だけオンし、その操作スイッチがオンしている間だけ前記モータに対する給電が可能なように構成されていることを特徴とする。
　このため、乗員は可動クッション部が上昇する間、常に、操作スイッチを操作することで前傾姿勢を保持するようになる。この結果、乗員の頭部が乗降口の天井部分に当たり難くなる。
　請求項１９の発明によると、ドアが開方向に所定位置まで回動していない状態では、操作スイッチがオンしていても、モータに対する給電が行われないように構成されていることを特徴とする。
　このため、乗員が運転中に誤って操作スイッチにさわっても可動クッション部が上昇するようなことがない。

　本発明によると、中腰に近い姿勢で乗員が車両に乗降できるため、乗員の乗降が楽になる。

本発明の本実施形態１に係る車両用シートの車両運転時の状態を表す模式斜視図（Ａ図）であり、車両用シートの乗降時の状態を表す模式斜視図（Ｂ図）である。前記車両用シートの全体側面図である。前記車両用シートの乗降時の状態を表す正面図である。前記車両用シートのクッション傾斜機構を表す正面図である。前記車両用シートの前記クッション傾斜機構の動作原理図である。前記車両用シートのクッション傾斜機構を表す側面図（図４のVI-VI矢視図）である。変更例に係る車両用シートの一部破断正面図である。本発明の本実施形態２に係る車両用シートの乗降時の状態を表す模式斜視図である。前記車両用シートの車両運転時の状態を表す模式斜視図（A図）、車両用シートの乗降時の状態を表す模式斜視図（B図）である。前記車両用シートの乗降時の状態を表す一部破断側面図である。前記車両用シートの車両運転時の状態を表す一部破断側面図である。前記車両用シートの車両運転時の状態を表す正面図である。変更例１に係る車両用シートの乗降時の状態を表す側面図である。変更例２に係る車両用シートの一部破断正面図である。本発明の本実施形態３に係る車両用シートの全体斜視図である。可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す車両用シートの正面図である。可動クッション部の昇降機構を表す正面図である。図１５のXVIII- XVIII 矢視断面図である。図１８のXIX部拡大図である。可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す車両用シートの縦断面図（図１６のXX-XX矢視断面図）である。図２０のXXI部拡大図である。変更例に係る車両用シートの全体縦断面図である。図２２のXXIII部拡大図である。変更例に係る車両用シートにおいて可動クッション部が乗降位置まで上昇した状態を表す拡大縦断面図である。本発明の本実施形態４に係る車両用シートの車両運転時の状態を表す模式斜視図（Ａ図）であり、車両用シートの降車時の状態を表す模式斜視図（Ｂ図）である。前記車両用シートの降車時の状態を表す縦断面図（図２５（Ｂ）のXXVI- XXVI 矢視縦断面図）である。前記車両用シートのクッション傾斜機構を表す正面図（図２６のXXVII- XXVII 矢視図）である。前記クッション昇降機構の駆動源であるモータの電気回路を表す模式図である。前記モータの操作スイッチが取付けられたドアの斜視図である。前記車両用シートの動作を表す背面図である。前記車両用シートの動作を表す背面図である。従来の車両用シートを表す模式正面図である。従来の車両用シートを表す模式正面図である。

　　［実施形態１］
　以下、図１から図７に基づいて本発明の実施形態１に係る車両用シートについて説明する。
　ここで、図中における前後左右及び上下は車両用シート及びその車両用シートが設置される乗用車の前後左右及び上下に対応している。また、明細書中の前後左右及び上下も上記した前後左右及び上下に対応している。

＜車両用シート１０の概要について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０は、車高が比較的低い乗用車において右側の乗降口を通って右方向から着座するように構成されたシート（運転席等）である。
　車両用シート１０は、図１、図２に示すように、シート本体３０と、そのシート本体３０を車室フロアＦに対して前後スライドさせる前後スライド機構２０と、前記シート本体３０を車室フロアＦに対して昇降させる昇降機構２５（図２参照）とを備えている。
　前記シート本体３０は、図２に示すように、シートフレーム３１と、そのシートフレーム３１上に設置されたシートクッション４０と、前記シートフレーム３１の後端部に上下回動可能な状態で連結されたシートバック３５と、シートクッション４０の一部Ｍを前記シートフレーム３１に対して上昇させて乗降口側に傾斜させることが可能なクッション傾斜機構５０とから構成されている。

＜前後スライド機構２０について＞
　前後スライド機構２０は、図１～図３に示すように、車室フロアＦ上で前後方向に延びる左右一対のロアレール２２と、左右のロアレール２２に沿って前後方向にスライド可能に構成された左右のアッパレール２３と、前記アッパレール２３をロアレール２２に対して前後スライドさせるための駆動機構（図示省略）とから構成されている。ロアレール２２は、上側が開放された横断面形状略Ｃ字形の溝状レールであり、図２等に示すように、前端部の下側と後端部の下側とが支持材２１によって車室フロアＦに固定されている。アッパレール２３は、図３に示すように、横断面形状略逆Ｔ字形に形成された板状レールであり、そのアッパレール２３の下部がロアレール２２に対して前端側、あるいは後端側から嵌め込まれている。そして、前記アッパレール２３がロアレール２２と嵌合した状態で、アッパレール２３はロアレール２２に沿って前後方向に摺動できるようになる。
　即ち、前後スライド機構２０が本発明のスライド機構に相当する。

＜昇降機構２５について＞
　昇降機構２５は、前後スライド機構２０の左右のアッパレール２３に対してシート本体３０のシートフレーム３１を昇降させる機構であり、図２等に示すように、左右一対の前部リフトリンク２７と、同じく左右一対の後部リフトリンク２８と、昇降駆動源となる駆動機構（図示省略）とから構成されている。左右一対の前部リフトリンク２７と後部リフトリンク２８とは左右のアッパレール２３に対してシートフレーム３１を平行に昇降できるように構成されている。そして、前部リフトリンク２７と後部リフトリンク２８との一端部（下端部）がアッパレール２３に対して上下回動可能な状態で連結されており、他端部（上端部）がシートフレーム３１に対して上下回動可能な状態で連結されている。
　ここで、シートフレーム３１及び前部リフトリンク２７、後部リフトリンク２８は、図１等に示すように、側面カバー３１ｃによって覆われている。なお、図２では側面カバー３１ｃが省略されている。
　即ち、前記昇降機構２５が本発明のフレーム昇降機構に相当する。

＜シートクッション４０について＞
　シートクッション４０は、図１（Ａ）に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部４１、クッション中央部４２、クッション後部４３を備えており、前記中央部分の右側（乗降口（図示省略）側）に右サイド部４４、前記中央部分の左側（車室中央側）に左サイド部４５が設けられている。
　クッション前部４１は、着座した乗員の主として大腿部を支える部分であり、着座面が後側で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。クッション中央部４２は、主として乗員の臀部を支える部分であり、着座面が最も低い位置にあって平坦に形成されている。クッション後部４３は前方で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。
　右サイド部４４は、着座面が右側（乗降口側）で高くなるように傾斜した状態で形成されており、前部４４ｆ、中央部４４ｃ及び後部４４ｂに分割されている。左サイド部４５は、着座面が左側（車室中央側）で高くなるように傾斜した状態で形成されている。即ち、右サイド部４４の着座面、左サイド部４５の着座面がクッション前部４１、クッション中央部４２、クッション後部４３の着座面に対して斜面状に形成されているため、乗員がシートクッション４０に着座したときのホールド性が高くなる。

　シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとは一体化されており、そのシートクッション４０の他の部分、即ち、右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とから分割されている。そして、シートクッション４０の右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とがシートフレーム３１に固定されている。このため、シートクッション４０の右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とを、以後、シートクッション４０の固定クッション部Ｓと呼ぶことにする。
　そして、シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとが、図１（Ｂ）に示すように、クッション傾斜機構５０（後記する）の働きでシートクッション４０の固定クッション部Ｓ、及びシートフレーム３１に対して昇降可能に構成されている。このため、シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとを、以後、シートクッション４０の可動クッション部Ｍと呼ぶことにする。

＜クッション傾斜機構５０について＞
　クッション傾斜機構５０は、シートフレーム３１、及びシートクッション４０の固定クッション部Ｓに対してシートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させ、さらに乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるための機構である。クッション傾斜機構５０は、図６の側面図に示すように、シートフレーム３１に吊り支持されたベース板５２と、そのベース板５２上に設置された前後一対のクロスリンク５３と、それらのクロスリンク５３を動作させる駆動部５６とから構成されている。
　クッション傾斜機構５０のベース板５２は、図６に示すように、側面形状略Ｕ字形に折り曲げ成形されており、そのベース板５２の前端上部がシートフレーム３１の前部で幅方向に延びる前部梁部３１ｈにボルト止めされている。また、前記ベース板５２の後端上部がシートフレーム３１の後部で幅方向に延びる後部支持管３１ｔに連結されている。

　クッション傾斜機構５０の前後一対のクロスリンク５３は、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを前後から支えてその可動クッション部Ｍを昇降及び傾斜させられるように構成されている。ここで、前後のクロスリンク５３は前後方向において対称に形成されて、等しい構成であるため、図４、図５の正面図に基づき代表して前側のクロスリンク５３について説明する。
　クロスリンク５３は、図４に示すように、直線状の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとから構成されており、両リンク５３ａ，５３ｂの中央部近傍が中央連結ピン５３ｘによって互いに上下回動可能な状態で連結されている。そして、第１リンク５３ａの基端部（下端部）が下端連結ピン５４によって上下回動可能な状態でベース板５２の前側底部右端に形成された受け部（図示省略）に連結されている。また、第１リンク５３ａの先端部（上端部）にはローラ５３ｒが装着されており、そのローラ５３ｒがシートクッション４０の可動クッション部Ｍの下側に左右方向に延びるように形成された前側レール部４０ｆに沿って転動できるように構成されている。
　また、第２リンク５３ｂの基端部（上端部）は、上端連結ピン５５によって上下回動可能な状態でシートクッション４０の可動クッション部Ｍにおける前側レール部４０ｆの右端近傍に連結されている。また、第２リンク５３ｂの先端部（下端部）にはローラ５３ｚが装着されており、そのローラ５３ｚがベース板５２の前側底部５２ｙに沿って左右方向に転動できるように構成されている。

　クッション傾斜機構５０の駆動部５６は、図５に示すように、扇型歯車５７と、二段歯車５８と、駆動歯車５９と、その駆動歯車５９を回転させるモータ（図示省略）とから構成されている。扇型歯車５７は、クロスリンク５３の第１リンク５３ａと一体で回転する歯車であり、扇の要に相当する位置に回転中心となる中心孔５７ｅが形成されている。そして、扇型歯車５７の中心孔５７ｅに第１リンク５３ａをベース板５２に連結する下端連結ピン５４が回り止めされた状態で通されている。即ち、扇型歯車５７は、第１リンク５３ａと回転中心を一致させた状態で、その第１リンク５３ａと一体で回転できるように構成されている。前記扇型歯車５７には、外周部（円弧部）に歯部５７ｗが形成されており、その歯部５７ｗが二段歯車５８の小径歯車５８ｓと噛合している。さらに、二段歯車５８の大径歯車５８ｒが駆動歯車５９と噛合している。
　上記した二段歯車５８と駆動歯車５９、及びモータは、駆動部５６のハウジング５６ｈ（図６参照）に収納支持されており、そのハウジング５６ｈがベース板５２上に固定されている。

　上記構成により、図５に示す状態で、モータが起動して駆動歯車５９が左回転（正転）すると（矢印参照）、その駆動歯車５９と噛合している二段歯車５８の大径歯車５８ｒが右回転する（矢印参照）。そして、二段歯車５８が右回転することにより、その二段歯車５８の小径歯車５８ｓと噛合している扇型歯車５７が左回転する（矢印参照）。これにより、扇型歯車５７と一体化された第１リンク５３ａが下端連結ピン５４を中心にして左回動しながら起立する。そして、第１リンク５３ａが起立する過程で先端部のローラ５３ｒがシートクッション４０の可動クッション部Ｍを押し上げながら、その可動クッション部Ｍの前側レール部４０ｆに沿って右方向に転動する。また、第１リンク５３ａが左回動しながら起立することで、その第１リンク５３ａと中央連結ピン５３ｘによって連結されている第２リンク５３ｂがシートクッション４０の可動クッション部Ｍの上端連結ピン５５を中心に右回動しながら起立する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍの右端部が第２リンク５３ｂによって押し上げられ、その第２リンク５３ｂの先端部（下端部）のローラ５３ｚがベース板５２の前側底部５２ｙに沿って右方向に転動するようになる。即ち、モータの起動により駆動歯車５９が左回転（正転）することで第１リンク５３ａ、第２リンク５３ｂが起立方向に回動し、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが押し上げられる。

　そして、第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとが所定位置まで起立した状態で、シートクッション４０の可動クッション部Ｍは、図４等の実線に示すように、上限位置に保持されるとともに、右側（乗降口側）が低くなるように傾斜するようになる。ここで、第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとを連結する中央連結ピン５３ｘの位置は、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上限位置にある状態で、その可動クッション部Ｍの傾斜角度θが約17°になるような位置に設定されている。このため、中央連結ピン５３ｘの位置を調整できるようにすれば、可動クッション部Ｍの傾斜角度θを調整することが可能になる。
　次に、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上限位置にある状態で、モータにより駆動歯車５９が右回転（逆転）させられると、上記とは逆に、第１リンク５３ａが下端連結ピン５４を中心にして倒伏方向（右方向）に回動し、第２リンク５３ｂがシートクッション４０の可動クッション部Ｍの上端連結ピン５５を中心にして倒伏方向（左方向）に回動するようになる。そして、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下限位置まで戻された状態で（図１（Ａ）、及び図４の二点鎖線参照）、その可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続するようになる。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の動作について＞
　先ず、乗員の乗車が完了した状態から車両用シート１０の動作について説明する。この状態では、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下限位置に保持されており、図１（Ａ）に示すように、可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続している。また、前後スライド機構２０と昇降機構２５とを動作させることで、乗員の体格にあわせてシート本体３０の前後位置を調整し、さらにシート本体３０の高さ位置を調整することが可能になる。
　次に、乗員が降車する場合には、シートベルトを外し、右側のドアを開けた状態で、上昇スイッチ（図示省略）を操作する。これにより、前記上昇スイッチが操作されている間、クッション傾斜機構５０のモータが動作して駆動部５６がクロスリンク５３の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとを起立させる方向に回動させる。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが固定クッション部Ｓ及びシートフレーム３１に対して上昇して、乗員の臀部が押し上げられる。そして、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上昇する過程で、乗降口側が低くなるように傾斜するようになる。このとき、乗員の大腿部を支えるシートクッション４０のクッション前部４１（固定クッション部Ｓ）はシートフレーム３１に対して定位置に保持されているため、可動クッション部Ｍに対して低くなる。即ち、シートクッション４０に着座している乗員の姿勢は臀部より大腿部が低い中腰に近い姿勢になるため、膝が伸びるようになる。さらに、可動クッション部Ｍは乗降口側が低くなるように傾斜しているため、乗員がシートクッション４０の右サイド部４４の中央部４４ｃを乗越える際に脚を持ち上げる必要がなく、中腰に近い姿勢を保持できる。

　また、乗車時には、乗員が上限位置にあるシートクッション４０の可動クッション部Ｍに着座できるため、中腰に近い姿勢で膝を大きく曲げる必要がなくなり、乗員の身体への負担が軽減される。そして、着座後、下降スイッチ（図示省略）を操作することで、クッション傾斜機構５０のモータが動作して駆動部５６がクロスリンク５３の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとを倒伏させる方向に回動させる。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下降し、その可動クッション部Ｍが下限位置に到達した状態で、図１（Ａ）に示すように、可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続するようになる。この状態で、ドアを閉めることで乗車が完了する。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の長所について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０によると、乗降時にクッション傾斜機構５０を動作させることで、シートクッション４０の可動クッション部Ｍ（クッション中央部４２等）を固定クッション部Ｓ（クッション前部４１）に対して上昇させて、乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させることができる。このように、乗降時にシートクッション４０のクッション前部４１をクッション中央部４２等に対して低くできるため、シートクッション４０に着座している乗員の姿勢が中腰に近い姿勢になり、膝が伸びるようになる。また、クッション中央部４２等を上昇させても乗員の大腿部が例えばステアリング等と干渉し難くなる。
　さらに、シートクッション４０の可動クッション部Ｍ（クッション中央部４２等）は乗降口側が低くなるように傾斜しているため、乗員がシートクッション４０の右サイド部４４を乗越える際に脚を持ち上げる必要もなくなる。このように、臀部より大腿部が低い中腰に近い姿勢で乗員が車両に乗降できるため、乗員の乗降が楽になる。
　また、車両用シート１０は、シートフレーム３１を車室フロアＦに沿ってスライドさせる前後スライド機構２０と、シートフレーム３１を車室フロアＦに対して昇降させる昇降機構２５とを備えているため、車室フロアＦに対する車両用シート１０の位置調整が可能になる。
　また、乗降口のドアが開いている状態で、上昇スイッチが操作されたときにクッション傾斜機構５０がシートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させる方向に動作する。即ち、乗員が降車しようとする意思があるときのみクッション傾斜機構５０を上昇動作させることができ、意に反してクッション傾斜機構５０を動作させるような不具合がない。

＜変更例＞
　ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、本実施形態に係る車両用シート１０では、クッション傾斜機構５０のクロスリンク５３をシートクッション４０の可動クッション部Ｍの前後に設け、前記クロスリンク５３の第１リンク５３ａ、第２リンク５３ｂを左右方向に起立、倒伏させる例を示した。しかし、クロスリンク５３をシートクッション４０の可動クッション部Ｍの左右に設け、前記クロスリンク５３の第１リンク５３ａ、第２リンク５３ｂを前後方向に起立、倒伏させる構成でも可能である。
　また、クッション傾斜機構５０の駆動部５６として扇型歯車５７等を使用する例を示したが、例えば、送りネジ＆ナット等やエアシリンダ等を使用することも可能である。

　さらに、クロスリンク５３等を備えるクッション傾斜機構５０の代わりに、例えば、図７に示すような、クッション傾斜機構６０を使用することも可能である。
　即ち、図７に示すクッション傾斜機構６０は、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを上下回動可能な状態でシートフレーム３１に連結するヒンジ状の連結機構６０ｃと、その連結機構６０ｃの回転中心回りに可動クッション部Ｍを上下回転させる駆動部６０ｚとを備えている。
　連結機構６０ｃは、シートクッション４０の可動クッション部Ｍに固定されたクッション側ヒンジ片（図示省略）と、シートフレーム３１に固定されたフレーム側ヒンジ片（図示省略）とから構成されており、両ヒンジ片がヒンジピン６０ｐによって上下方向に相対回転可能な状態で連結されている。連結機構６０ｃのヒンジピン６０ｐは、その連結機構６０ｃの回転中心であり、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを構成する右サイド部４４（中央部４４ｃ）の裏面（下面）位置で、ほぼ水平な状態で前後方向に延びるように位置決めされている。このため、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが連結機構６０ｃのヒンジピン６０ｐを中心にして図７において左回動（上回動）すると、可動クッション部Ｍのクッション中央部４２が上昇し、その可動クッション部Ｍの右サイド部４４（中央部４４ｃ）の右端が下降して、可動クッション部Ｍは乗降口側が低くなるように傾斜するようになる（二点鎖線参照）。
　即ち、前記シートフレーム３１が本発明の支持部材に相当する。

　クッション傾斜機構６０の駆動部６０ｚは、シートフレーム３１上で左右方向に延びるように水平に配置されたネジ軸６２と、そのネジ軸６２と螺合するナット６３とを備えている。ネジ軸６２の基端部には、そのネジ軸６２を軸心回りに回転させるモータ６１が連結されており、前記ネジ軸６２の先端部が軸受６４によって回転自在に支持されている。また、ナット６３には、直線状リンク６７の基端部が上下回動可能な状態で連結されており、その直線状リンク６７の先端部が同じく上下回転可能な状態で可動クッション部Ｍの裏面右端位置（ヒンジピン６０ｐの右側）に固定された連結ピン６５に連結されている。

　上記構成により、例えば、図７に示す状態で、モータ６１が駆動され、ネジ軸６２が正転方向に回転すると、ネジ軸６２とナット６３との螺合作用により前記ナット６３がネジ軸６２に沿って左方向（モータ６１側）に移動する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍの連結ピン６５が直線状リンク６７によって左下方に引っ張られ（二点鎖線参照）、シートクッション４０の可動クッション部Ｍは連結機構６０ｃのヒンジピン６０ｐを中心に左回動（上回動）するようになる。そして、ナット６３が左限位置まで到達した状態でモータ６１が停止し、可動クッション部Ｍは乗降口側が低くなるように所定角度だけ傾斜した状態に保持される（二点鎖線参照）。
　また、この状態からネジ軸６２が逆転方向に回転すると、ネジ軸６２とナット６３との螺合作用により前記ナット６３がネジ軸６２に沿って右方向（乗降口側）に移動する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍの連結ピン６５が直線状リンク６７によって右上方に押され、シートクッション４０の可動クッション部Ｍは連結機構６０ｃのヒンジピン６０ｐを中心に右回動（下回動）するようになる。そして、ナット６３が右限位置まで到達した状態でモータ６１が停止し、可動クッション部Ｍが元の位置まで戻されて、その可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続するようになる（実線参照）。
　ここで、前記クッション傾斜機構６０の駆動部６０ｚをネジ軸６２とナット６３等から構成する例を示したが、ネジ軸６２とナット６３の代わりに、例えば、ラック＆ピニオン等を使用することも可能であるし、エアシリンダ等を使用することも可能である。

　また、本実施形態では、右側の乗降口を通って右方向から着座する車両用シート１０（運転席等）において、クッション傾斜機構５０，６０によりシートクッション４０の可動クッション部Ｍを右側が低くなるように傾斜させる例を示した。しかし、左側の乗降口を通って左方向から着座する車両用シート（助手席等）に本発明を適用することも可能である。ここで、前記助手席等の車両用シートでは、クッション傾斜機構５０，６０によりシートクッション４０の可動クッション部Ｍを左側が低くなるように傾斜させるものとする。
　また、本実施形態では、シートフレーム３１上にクッション傾斜機構５０，６０を設ける例を示したが、シートフレーム３１の下にクッション傾斜機構５０，６０を設ける構成でも可能である。さらに、シートフレーム３１を省略することも可能である。
　さらに、本実施形態では、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを乗降口側が低くなるように傾斜させる例を示したが、シートの向きによっては乗降口側ではなく、シート幅方向の一方（乗降側）が低くなるように傾斜させることも可能である。
　また、本実施形態では、車両前方を向いているシートに本発明を適用する例を示したが、車両横方向を向いているシートに本発明を適用することも可能である。

　　［実施形態２］
　以下、図８から図１４に基づいて本発明の実施形態２に係る車両用シートについて説明する。
＜従来の構成＞
　従来（特開平７－６９１０６号）の車両用シートは、シートクッションの中央に位置する可動シート部が前端側を中心に上下回転可能に構成されている。そして、その可動シート部の後部がシートクッションの下側に設置された駆動機構と駆動アームとによって押上げられる構成である。即ち、駆動機構と駆動アームとによって可動シート部の後部が押上げられることで、その可動シート部が前端側を中心に上方に回転して、乗員の臀部を支える臀部受け部が上昇するようになる。
　前記駆動機構は、縦向きに配置された送りネジ部と、その送りネジ部に螺合されているナット部と、前記送りネジ部を軸心回りに回転させるモータとを備えている。そして、駆動機構のナット部が駆動アームを介して可動シート部の後部に連結されている。
　上記した車両用シートでは、シートクッションの可動シート部の後部を押上げる駆動機構は、縦向きの送りネジ部と、その送りネジ部に沿って上下動するナット部等とから構成されている。このため、駆動機構の高さ寸法が大きくなり、その駆動機構の上側に配置されるシートクッションのヒップポイントが高くなるという問題がある。
　また、シートクッションのヒップポイントを低く抑えるために、送りネジ部の長さ寸法を小さくすると、可動シート部の後部の押上げ量が小さくなって、乗員の臀部を希望する高さ位置まで押上げられないという問題が生じる。
　本実施形態に係る車両用シートが解決しようとする課題は、シートクッションのヒップポイントが高くならないようにするとともに、乗降時に乗員の臀部を支えるシートクッションの臀部受け部を高く持ち上げられるようにすることである。

＜車両用シート１０の概要について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０は、車高が比較的低い乗用車Ｃにおいて、図８に示すように、右側の乗降口Ｅを通って右方向から着座するように構成されたシート（運転席等）である。
　車両用シート１０は、図１０～図１２に示すように、シート本体３０と、そのシート本体３０を車室フロアＦに対して前後にスライドさせつつ水平回転させるスライド回転機構１２０と、前記シート本体３０をそのスライド回転機構１２０の回転テーブル１２６に対して前後にスライドさせる前後スライド機構１２７とを備えている。
　前記シート本体３０は、図１１等に示すように、シートフレーム３１と、そのシートフレーム３１上に設置されたシートクッション４０と、前記シートフレーム３１の後端部３１ｂに上下回動可能な状態で連結されたシートバック３５と、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを前端縁側が下になるように傾斜（起立）させるクッション傾斜機構１５０とから構成されている（図１０参照）。

＜スライド回転機構１２０及び前後スライド機構１２７について＞
　スライド回転機構１２０は、図８に示すように、乗員の降車時にシート本体３０を前方にスライドさせながらセンターピラーＣｐを回避して右方向に水平回転させる機構である。スライド回転機構１２０は、図１０～図１２に示すように、車室フロアＦ上でスライドテーブル１２３を前後スライドさせるスライド機構１２２と、そのスライドテーブル１２３上で回転テーブル１２６を水平回転させる回転機構１２５と、両機構１２２，１２５を連動させる連動機構（図示省略）とから構成されている。スライド機構１２２は、車室フロアＦ上で前後方向に延びる左右一対のロアレール１２２ｒと、前記スライドテーブル１２３の下面に取付けられ、左右のロアレール１２２ｒに摺動可能な状態で嵌め込まれる左右の摺動レール１２３ｓと、前記スライドテーブル１２３を前後スライドさせるためのモータ等の駆動機構（図示省略）とから構成されている。

　回転機構１２５は、軸心回りに相対回転可能に連結された内輪１２５ｅと、外輪１２５ｒと、両者１２５ｅ，１２５ｒを軸心回りに相対回転させるためのモータ等の駆動機構（図示省略）とから構成さている。そして、内輪１２５ｅの下面がスライドテーブル１２３の上面に固定され、外輪１２５ｒの上面が回転テーブル１２６の下面に固定されている。
　回転テーブル１２６上には、前後スライド機構１２７を介してシート本体３０が設置されている。前後スライド機構１２７は、シート本体３０の前後位置調整を行うための機構であり、図９に示すように、回転テーブル１２６上で前後方向に延びる左右一対のロアレール１２７ｒと、シートフレーム３１の幅方向両側（側壁部）に取付けられて、左右のロアレール１２７ｒに嵌め込まれるアッパレール１２７ｕと、前記シートフレーム３１を前後スライドさせるモータ等の駆動機構（図示省略）とから構成されている。
　ここで、シートフレーム３１の側壁部は、図９、図１２等に示すように、フレームカバー３１ｃによって覆われている。なお、図１０、図１１では、フレームカバー３１ｃ及びシートフレーム３１の側壁部は省略されている。

＜シートクッション４０について＞
　シートクッション４０は、図９（Ａ）に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部４１、クッション中央部４２、クッション後部４３を備えており、前記中央部分の右側（乗降口（図示省略）側）に右サイド部４４、前記中央部分の左側（車室中央側）に左サイド部４５が設けられている。
　クッション前部４１は、着座した乗員の主として大腿部を支える部分であり、着座面が後側で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。クッション中央部４２は、主として乗員の臀部を支える部分であり、着座面が最も低い位置にあって平坦に形成されている。クッション後部４３は前方で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。
　右サイド部４４は、着座面が右側（乗降口側）で高くなるように傾斜した状態で形成されており、左サイド部４５は、着座面が左側（車室中央側）で高くなるように傾斜した状態で形成されている。即ち、右サイド部４４の着座面、左サイド部４５の着座面がクッション前部４１、クッション中央部４２、クッション後部４３の着座面に対して斜面状に形成されているため、乗員がシートクッション４０に着座したときのホールド性が高くなる。

　シートクッション４０のクッション前部４１とクッション中央部４２とは一体化されており、そのシートクッション４０の他の部分、即ち、クッション後部４３、右サイド部４４及び左サイド部４５とから分割されている。シートクッション４０のクッション後部４３、右サイド部４４及び左サイド部４５とは、シートフレーム３１に固定されている。そして、シートクッション４０のクッション前部４１とクッション中央部４２とが、図９（Ｂ）に示すように、クッション傾斜機構５０（後記する）の働きで、そのクッション前部４１の前端縁側を中心にして上下回動可能に構成されている。
　即ち、シートクッション４０のクッション前部４１とクッション中央部４２とが可動クッション部Ｍであり、シートクッション４０のクッション後部４３、右サイド部４４及び左サイド部４５が固定クッション部Ｓである。

＜クッション傾斜機構１５０について＞
　クッション傾斜機構１５０は、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを前端縁側が下になるように徐々に傾斜（起立）させながら前記クッション中央部４２側を上昇させる機構で、前記シートクッション４０の下側に配置されている。クッション傾斜機構１５０は、図１０、図１１に示すように、可動クッション部Ｍと一体化されて、その可動クッション部Ｍを下側から支えるクッション支持部材１５２と、クッション支持部材１５２の前部を上下回動可能な状態で支持する水平支持軸１５４と、前記クッション支持部材１５２を水平支持軸１５４回りに上下回動させるリンク１５５及び駆動部１６０とから構成されている。
　クッション支持部材１５２は、可動クッション部Ｍに沿って形成されたフレーム部１５２ｆと、前記水平支持軸１５４に掛けられる回転中心部１５２ｃと、その回転中心部１５２ｃの位置からフレーム部１５２ｆに対して略直角に突出した突出部１５２ｔとにより側面略逆L字形に形成されている。
　水平支持軸１５４は、シート本体３０の前部で、そのシート本体３０の幅方向に延びるように設置されており、その水平支持軸１５４の両端がシートフレーム３１の左右の側壁部（図示省略）に固定されている。このため、水平支持軸１５４によりクッション支持部材１５２の回転中心部１５２ｃがシート本体３０の定位置で位置決めされる。
　即ち、水平支持軸１５４が本発明の水平支持部に相当し、その水平支持軸１５４、クッション支持部材１５２及びリンク１５５が本発明のリンク機構に相当する。

　クッション傾斜機構１５０の駆動部１６０は、シートフレーム３１の底板３１ｚ上で前後方向に延びるように配置されたネジ軸１６２と、そのネジ軸１６２と螺合するナット１６３とを備えている。ネジ軸１６２の基端部（後端部）には、そのネジ軸１６２を軸心回りに回転させるモータ１６１が連結されており、前記ネジ軸１６２の先端部と基端部とが軸受１６４ａ，１６４ｂによって回転自在に支持されている。また、ナット１６３には、リンク１５５の基端部が上下回動可能な状態で連結されており、そのリンク１５５の先端部が同じく上下回転可能な状態でクッション支持部材１５２の突出部１５２ｔの先端に連結されている。

　このため、例えば、図１１に示す状態で、モータ１６１が駆動され、ネジ軸１６２が正転方向に回転すると、ネジ軸１６２とナット１６３との螺合作用により前記ナット１６３がネジ軸１６２に沿って後方向（モータ１６１側）に移動する。これにより、クッション支持部材１５２の突出部１５２ｔがリンク１５５によって後下方に引っ張られ、図１０に示すように、クッション支持部材１５２、及びシートクッション４０の可動クッション部Ｍが水平支持軸１５４を中心にして右回動するようになる。即ち、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが、その可動クッション部Ｍの前端縁側を中心にクッション中央部４２側が高くなるように傾斜する。そして、ナット１６３が後退限位置まで到達した状態でモータ１６１が停止し、可動クッション部Ｍは所定角度傾斜した状態に保持される（図１０参照）。

　また、この状態からネジ軸１６２が逆転方向に回転すると、ネジ軸１６２とナット１６３との螺合作用により前記ナット１６３がネジ軸１６２に沿って前方向に移動する。これにより、クッション支持部材１５２の突出部１５２ｔがリンク１５５によって前上方に押されるとともに自重で、シートクッション４０の可動クッション部Ｍは水平支持軸１５４を中心にして左回動するようになる。そして、ナット１６３が前進限位置まで前進した状態でモータ１６１が停止し、可動クッション部Ｍが元の位置まで戻されて、その可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続するようになる（図９（Ａ）参照）。
　即ち、前記駆動部１６０が本発明の駆動機構に相当し、その駆動部１６０のナット１６３が本発明の駆動機構における可動部に相当する。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の動作について＞
　先ず、乗員の乗車が完了した状態から車両用シート１０の動作について説明する。この状態では、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下限位置に保持されており、図９（Ａ）に示すように、可動クッション部Ｍの着座面がシートクッション４０の他の着座面と連続している。また、前後スライド機構１２７を動作させることで、乗員の体格にあわせてシート本体３０の前後位置を調整することが可能になる。
　次に、乗員が降車する場合には、シートベルトを外し、右側のドアを開けた状態で、降車スイッチ（図示省略）を操作する。これにより、先ず、スライド回転機構１２０が動作してシート本体３０が前方にスライドしながら右方向に回転し、シート本体３０が乗降口E側を向くようになる。次に、クッション傾斜機構１５０のモータ１６１が動作してネジ軸１６２が正転方向に回転し、図１１の状態から前記ナット１６３がネジ軸１６２に沿って後方向に移動する。これにより、クッション支持部材１５２の突出部１５２ｔがリンク１５５によって後下方に引っ張られ、図１０に示すように、クッション支持部材１５２、及びシートクッション４０の可動クッション部Ｍが水平支持軸１５４を中心にして右回動するようになる。この結果、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが前端縁側を下にした状態で徐々に起立（傾斜）してクッション中央部４２側が高くなり、乗員の臀部が押し上げられる（図８参照）。これにより、乗員の膝が伸び、降車時における乗員の身体への負担が軽減される。

　図８に示す状態から乗員が乗車する場合には、シートクッション４０の可動クッション部Ｍに体重を掛けた状態で乗車スイッチ（図示省略）を操作する。これにより、先ず、クッション傾斜機構１５０のモータ１６１が動作してネジ軸１６２が逆転方向に回転し、図１０の状態から前記ナット１６３がネジ軸１６２に沿って前方向に移動する。これにより、クッション支持部材１５２、及びシートクッション４０の可動クッション部Ｍが水平支持軸１５４を中心にして左回動し、クッション中央部４２側が徐々に低くなる。そして、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下限位置に到達した状態で、図９（Ａ）、図１１に示すように、可動クッション部Ｍの着座面が固定クッション部Ｓの着座面と連続するようになる。次に、スライド回転機構１２０が動作してシート本体３０が後方にスライドしながら左方向に回転し、シート本体３０が車両前方を向くようになる。
　この状態で、右側のドアを閉じることで、乗車が完了する。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の長所について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０によると、シートクッション４０の下側に配置されたクッション傾斜機構１５０の駆動部１６０は、ナット１６３（可動部）をネジ軸１６２に沿って水平方向に往復移動させられるように構成されている。このため、ナット１６３（可動部）を高さ方向に往復移動させる構成と比較して、駆動部１６０の高さ寸法を小さくすることができる。したがって、駆動部１６０の上側に配置されるシートクッション４０のヒップポイントを低く抑えることができる。
　さらに、ナット１６３（可動部）が水平方向に往復移動する構成のため、シートクッション４０のヒップポイントを低く抑えた状態で、ナット１６３（可動部）の往復移動のストロークを大きく設定することができる。このため、乗降時にシートクッション４０の可動クッション部Ｍの傾斜を大きくして、可動クッション部Ｍの上昇量を大きくすることが可能になる。
　また、シートクッション４０を車両の乗降口Ｅ側に水平回転させるスライド回転機構１２０を備えているため、車両への乗降がさらに容易になる。

＜変更例＞
　ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態に係る車両用シート１０では、クッション傾斜機構１５０のクッション支持部材１５２の途中位置にある回転中心部１５２ｃを水平支持軸１５４で支持し、そのクッション支持部材１５２の突出部１５２ｔの先端をリンク１５５により駆動部１６０のナット１６３に連結する例を示した。しかし、図１３に示すように、クッション支持部材１５２の先端側に設けられた回転中心部１５２ｃを水平支持軸１５４で支持し、クッション支持部材１５２の途中位置をリンク１５５により駆動部１６０のナット１６３と連結する構成でも可能である。

　また、本実施形態では、スライド回転機構１２０によりシート本体３０を乗降口Ｅ側に水平回転させた後、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを前端縁側が下になるように徐々に傾斜させる例を示した。しかし、図１４に示すように、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを乗降口Ｅ側に右スライドさせた後、その可動クッション部Ｍを右端縁側が下になるように傾斜させる構成でも可能である。
　即ち、図１４に示すシートクッション４０では、可動クッション部Ｍはクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部分とから構成されており、その可動クッション部Ｍの下面側にクッション支持部材１５２が設けられている。そして、クッション支持部材１５２の右端近傍位置に回転中心部１５２ｃが設けられ、その回転中心部１５２ｃが前後方向に延びる水平支持軸１５４によって支持されている。
　前記水平支持軸１５４は、シートクッション４０に対して右スライド可能に構成された右スライドテーブル１３１ｙの壁部（図示省略）によって水平に支持されている。

　前記右スライドテーブル１３１ｙ上には、クッション傾斜機構１５０の駆動部１６０のネジ軸１６２が左右方向に延びるように配置されており、そのネジ軸１６２にナット１６３が螺合している。ネジ軸１６２の基端部には、そのネジ軸１６２を軸心回りに回転させるモータ１６１が連結されており、前記ネジ軸１６２の先端部が軸受１６４によって回転自在に支持されている。ナット１６３には、リンク１５５の基端部が上下回動可能な状態で連結されており、そのリンク１５５の先端部が同じく上下回転可能な状態でクッション支持部材１５２の右端位置に連結されている。
　このため、モータ１６１の駆動によりネジ軸１６２が回転すると、ネジ軸１６２とナット１６３との螺合作用により前記ナット１６３がネジ軸１６２に沿って左方向、あるいは右方向に移動する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍは、前記水平支持軸１５４を中心に図１４において左回動、あるいは右回動するようになる。
　右スライドテーブル１３１ｙは、ロアレール１２７ｒとアッパレール１２７ｕとを備える前後スライド機構１２７の働きにより前後スライドテーブル１２３上を左右方向にスライドできるように構成されている。
　このため、乗降時にシートクッション４０の可動クッション部Ｍを乗降口Ｅの方向に右スライドさせた後、可動クッション部Ｍを右端縁側が下になるように傾斜させて、乗員の臀部を押上げることが可能になる。

　ここで、本実施形態では、前記クッション傾斜機構１５０の駆動部１６０をネジ軸１６２とナット１６３等から構成する例を示したが、ネジ軸１６２とナット１６３の代わりに、例えば、ラック＆ピニオン等を使用することも可能であるし、エアシリンダ等を使用することも可能である。
　また、本実施形態では、スライド回転機構１２０や前後スライド機構１２７をモータ等からなる駆動機構により動作させる例を示したが、手動で動作させる構成でも可能である。
　また、本実施形態では、右側の乗降口Ｅを通って右方向から着座する車両用シート１０（運転席等）に本発明を適用する例を示したが、左側の乗降口を通って左方向から着座する車両用シート（助手席等）に本発明を適用することも可能である。
　また、本実施形態では、車両前方を向いているシートに本発明を適用する例を示したが、車両横方向を向いているシートに本発明を適用することも可能である。

＜クレーム案＞
［クレーム１］　固定クッション部と可動クッション部とからなり、前記可動クッション部を傾斜させることで、その可動クッション部の一部で乗員の臀部を支える臀部受け部を上昇させられるように構成されたシートクッションと、
　前記シートクッションの下側に設置されて、そのシートクッションの下側で可動部を水平方向に往復移動させられるように構成された駆動機構と、
　前記可動部が前記駆動機構の働きで一定方向に移動することにより、その移動量に応じて前記シートクッションの可動クッション部を傾斜させられるように構成されたリンク機構と、
を有することを特徴とする車両用シート。
　［クレーム２］　クレーム１に記載された車両用シートであって、
　前記シートクッションを車両の乗降口側に水平回転させる回転機構を備えていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム３］　クレーム１に記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部を車両の乗降口側に傾斜させられるように構成されており、
　さらに、前記可動クッション部、前記リンク機構及び前記駆動機構を車両の乗降口側に水平スライドさせるスライド機構を備えていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム４］　クレーム１からクレーム３のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の途中位置をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、その水平支持部に近い方の前記クッション支持部材の一端と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム５］　クレーム１からクレーム３のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の一端をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、前記クッション支持部材の途中位置と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする車両用シート。

　　［実施形態３］
　以下、図１５から図２４に基づいて本発明の実施形態３に係る車両用シートについて説明する。
＜従来の構成＞
　従来の車両用シート（特開２００７－２３７８０４号）は、図３３に示すように、クッション前部６０２とクッション後部６０３とからなるシートクッション６００を備えている。クッション前部６０２の前端下部はヒンジ６０５によりシートフレーム６０６の前端部に連結されており、そのクッション前部６０２の後端下部がクッション後部６０３の前端下部にヒンジ６０７により連結されている。さらに、クッション後部６０３はダンパ６０８によって下方から支えられている。これにより、乗車時に乗員がダンパ６０８に押上げられたクッション後部６０３及びクッション前部６０２に着座すると、クッション後部６０３及びクッション前部６０２は、その乗員の体重によりダンパ６０８の力に抗して着座位置まで緩やかに下降する。また、乗員が車両から降りる際は、立ち上がろうとする乗員の臀部をダンパ６０８が押上げる方向に動作する。
　車両用シートでは、クッション前部６０２とクッション後部６０３とがダンパ６０８により押上げられた状態で、図３３に示すように、クッション前部６０２、クッション後部６０３とシートフレーム６０６との間が開放されている。このため、乗車時に乗員等がクッション後部６０３の下面やダンパ６０８に触れることが可能になり、安全上好ましくない。
　本実施形態に係る車両用シートが解決しようとする課題は、昇降可能な可動クッション部と固定クッション部との間に手等が挟まれないようにして安全性向上を図ることである。

＜車両用シート１０の概要について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０は、車高が比較的低い乗用車において右側の乗降口を通って右方向から着座するように構成されたシート（運転席等）である。
　車両用シート１０は、図１５、図１６に示すように、シート本体３０と、そのシート本体３０を車室フロアＦに対して前後スライドさせる前後スライド機構２０とを備えている。
　さらに、前記シート本体３０は、前後スライド機構２０に支持されるシートフレーム（図示省略）と、そのシートフレーム上に設置されたシートクッション４０と、前記シートフレームの後端部に上下回動可能な状態で連結されたシートバック３５と、シートクッション４０の一部Ｍを前記シートフレーム等に対して上昇させ、乗降口側に傾斜させるクッション傾斜機構５０とから構成されている。なお、前記シートフレームはシートフレームカバー３１ｃに覆われており、外側からは見えないようになっている。

＜前後スライド機構２０について＞
　前後スライド機構２０は、図１５、図１６に示すように、車室フロアＦ上で前後方向に延びる左右一対のロアレール２２と、左右のロアレール２２に沿って前後方向にスライド可能に構成された左右のアッパレール２３と、前記アッパレール２３をロアレール２２に対して前後スライドさせるための駆動機構（図示省略）とから構成されている。ロアレール２２は、上側が開放された横断面形状略Ｃ字形の溝状レールであり、図１６等に示すように、前端部の下側と後端部の下側とが支持材２１によって車室フロアＦに固定されている。アッパレール２３は、図１６に示すように、横断面形状略逆Ｔ字形に形成された板状レールであり、そのアッパレール２３の下部がロアレール２２に対して前端側、あるいは後端側から嵌め込まれている。そして、前記アッパレール２３がロアレール２２と嵌合した状態で、アッパレール２３はロアレール２２に沿って前後方向に摺動できるようになる。

＜シートクッション４０について＞
　シートクッション４０は、図１５に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部４１１、クッション中央部４１２、クッション後部４１３を備えており、前記中央部分の左側（車室中央側）に左サイド部４１４、前記中央部分の右側（乗降口（図示省略）側）に右サイド部４１５が設けられている。さらに、右サイド部４１５は、前部４１６、中央部４１７及び後部４１８に分割されている。
　シートクッション４０のクッション中央部４１２と右サイド部４１５の中央部４１７とは一体化されており、そのシートクッション４０の他の部分、即ち、右サイド部４１５の前部４１６、後部４１８とクッション前部４１１と左サイド部４１４とクッション後部４１３とから分割されている。そして、シートクッション４０の右サイド部４１５の前部４１６、後部４１８とクッション前部４１１と左サイド部４１４とクッション後部４１３とが前記シートフレームに固定されている。このため、シートクッション４０の右サイド部４１５の前部４１６、後部４１８とクッション前部４１１と左サイド部４１４とクッション後部４１３とを、以後、固定クッション部Ｓと呼ぶことにする。
　そして、シートクッション４０のクッション中央部４１２と右サイド部４１５の中央部４１７とが、クッション傾斜機構５０（後記する）の働きで固定クッション部Ｓに対して昇降可能に構成されている。このため、シートクッション４０のクッション中央部４１２と右サイド部４１５の中央部４１７とを、以後、可動クッション部Ｍと呼ぶことにする。

　可動クッション部Ｍには、図１５に示すように、固定クッション部Ｓとの境界位置に前端境界位置側面４３ｆ、左端境界位置側面４３ｅ、及び後端境界位置側面４３ｂが縦に形成されている。また、固定クッション部Ｓには、可動クッション部Ｍとの境界位置に前端境界位置側面４５ｆ、左端境界位置側面４５ｅ、及び後端境界位置側面４５ｂが縦に形成されている。そして、可動クッション部Ｍが、図１５に示すように、着座位置まで下降した状態で、可動クッション部Ｍの前端境界位置側面４３ｆ、左端境界位置側面４３ｅ、及び後端境界位置側面４３ｂと、固定クッション部Ｓの前端境界位置側面４５ｆ、左端境界位置側面４５ｅ、及び後端境界位置側面４５ｂとがそれぞれ面接触するようになる。
　可動クッション部Ｍは、図１８、図１９等の縦断面図に示すように、成形鉄板４３２の上側にウレタン等から構成されたクッション本体４３４が重ねられており、そのクッション本体４３４の表面が表皮４３５によって覆われている。
　固定クッション部Ｓも同様に、成形鉄板４５２の上側にウレタン等から構成されたクッション本体４５４が重ねられており、そのクッション本体４５４の表面が表皮４５５によって覆われている。

＜クッション傾斜機構５０について＞
　クッション傾斜機構５０は、シートクッション４０の固定クッション部Ｓに対して可動クッション部Ｍを上昇させ、さらにその可動クッション部Ｍを乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるための機構である。クッション傾斜機構５０は、図１６～図１８等に示すように、前端部と後端部とが前記シートフレームに吊り支持されたベース板５２と、そのベース板５２上に設置された前後一対のクロスリンク５３（図１７参照）と、それらのクロスリンク５３を動作させる駆動部５６（図１８参照）とから構成されている。
　クッション傾斜機構５０のベース板５２は、図１８等に示すように、側面形状略Ｕ字形に折り曲げ成形されており、そのベース板５２の前端上部がシートフレームの前部で幅方向に延びる前部梁部３１ｈにボルト止めされている。また、前記ベース板５２の後端上部がシートフレームの後部で幅方向に延びる後部支持管３１ｔに連結されている。

　クッション傾斜機構５０の前後一対のクロスリンク５３は、可動クッション部Ｍを前後から支えてその可動クッション部Ｍを昇降及び傾斜させられるように構成されている。ここで、前後のクロスリンク５３は前後方向において対称に形成されて、等しい構成であるため、図１７の正面図に基づき代表して前側のクロスリンク５３について説明する。
　クロスリンク５３は、直線状の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとからなり、両リンク５３ａ，５３ｂの中央部近傍が中央連結ピン５３ｘによって互いに上下回動可能な状態で連結されている。そして、第１リンク５３ａの下端部が下端連結ピン５４によって上下回動可能な状態でベース板５２の前側底部右端に形成された受け部（図示省略）に連結されている。また、第１リンク５３ａの上端部にはローラ５３ｒが装着されており、そのローラ５３ｒが可動クッション部Ｍの下側に左右方向に延びるように形成された前側レール部４３ｙに沿って転動できるように構成されている。
　また、第２リンク５３ｂの上端部は、上端連結ピン５５によって上下回動可能な状態で可動クッション部Ｍにおける前側レール部４３ｙの右端近傍に連結されている。また、第２リンク５３ｂの下端部にはローラ５３ｚが装着されており、そのローラ５３ｚがベース板５２の前側底部５２ｙに沿って左右方向に転動できるように構成されている。

　クッション傾斜機構５０の駆動部５６が動作して、第１リンク５３ａが下端連結ピン５４を中心にして左回動しながら起立すると、その第１リンク５３ａと中央連結ピン５３ｘによって連結されている第２リンク５３ｂがシートクッション４０の可動クッション部Ｍの上端連結ピン５５を中心に右回動しながら起立する。即ち、クッション傾斜機構５０の駆動部５６の動作によりクロスリンク５３が起立する。これにより、可動クッション部Ｍがクロスリンク５３によって押し上げられ、固定クッション部Ｓに対して上昇しつつ、右側（乗降口側）が低くなるように徐々に傾斜する。そして、可動クッション部Ｍが固定クッション部Ｓに対してその可動クッション部Ｍの厚み寸法、即ち、境界位置側面４３ｆ，４３ｅ，４３ｂの高さ寸法以上に上昇することで、可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの境界位置には高さ方向に開放部分が形成される。この状態からクロスリンク５３がさらに起立し、前記クロスリンク５３が所定角度まで起立した段階で、可動クッション部Ｍは、図１７の実線に示すように、所定の高さ位置まで上昇し、右側（乗降口側）が低くなるように傾斜する。即ち、可動クッション部Ｍは乗降位置に保持される。
　また、駆動部５６の逆方向の動作によりクロスリンク５３が倒伏方向に動作すると、上記とは逆に可動クッション部Ｍが下降しつつ傾斜が緩やかになる方向に回動する。そして、可動クッション部Ｍが原位置（着座位置）まで下降すると、その可動クッション部の着座面４０ｆが固定クッション部Ｓの着座面４０ｆと連続するようになる。

＜閉鎖部材２６０について＞
　可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの境界位置、及び可動クッションと右側のシートフレームとの境界位置には、閉鎖部材２６０が設けられている。閉鎖部材２６０は、可動クッション部Ｍが固定クッション部Ｓ等に対し、その可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆ，４３ｅ，４３ｂの高さ寸法以上に上昇することで前記境界位置に形成される開放部分を塞ぐための部材である。閉鎖部材２６０は、図１９～図２１に示すように、樹脂製の板部２６２と、可動クッション部Ｍの表皮４３５と等しい材料からなるシート状部材２６４とから構成されている。板部２６２は、可動クッション部Ｍの下面周縁に沿って塀状に形成された角筒体であり、その板部２６２の上端縁が、図１９等に示すように、可動クッション部Ｍの成形鉄板４３２に形成された縦リブ４３２ｆにクリップやネジ等（図示省略）により固定されている。ここで、板部２６２の高さ寸法は、可動クッション部Ｍが着座位置まで下降した段階で、その板部２６２の先端（下端）がクッション傾斜機構５０のベース板５２等と干渉しない高さ寸法に設定されている。

　シート状部材２６４は、板部２６２を覆うとともに、可動クッション部Ｍが乗降位置まで上昇する際に、板部２６２の下端部と固定クッション部Ｓ及び前記シートフレームとの間に形成される開放部分を塞ぐ部材である。シート状部材２６４は、そのシート状部材２６４の基端縁が、図１９、図２１等に示すように、可動クッション部Ｍの表皮４３５の下端縁に縫い付けられており、さらにその近傍が板部２６２の上端縁と共に可動クッション部Ｍの成形鉄板４３２の縦リブ４３２ｆに固定されている。また、シート状部材２６４は、板部２６２の下端部を覆う部位が周方向に等間隔で複数個設けられた固定ピン２６５によってその板部２６２の下端部に固定されている。
　即ち、固定ピン２６５の位置が本発明における板部とシート状部材とが連結される連結位置に相当する。
　シート状部材２６４は、可動クッション部Ｍが乗降位置まで上昇した状態（図２０、図２１参照）で板部２６２の下端部よりも下側に垂れ下がる部分の四隅が高さ方向に切り離されている。即ち、シート状部材２６４は、可動クッション部Ｍの前端境界位置側面４３ｆの下側に位置する前側シート部２６４ｆと、左端境界位置側面４３ｅの下側に位置する左側シート部（図示省略）と、後端境界位置側面４３ｂの下側に位置する後側シート部（図示省略）と、右側シート部（図示省略）とに切り離されている。

　そして、図１９、図２１等に示すように、シート状部材２６４の前側シート部２６４ｆの先端部が固定クッション部Ｓの前端境界位置側面４５ｆの表皮４５５下側に縫い付けられている。
　同様に、シート状部材２６４の左側シート部と後側シート部の先端部がそれぞれ固定クッション部Ｓの左端境界位置側面４５ｅの表皮４５５と後端境界位置側面４５ｂの表皮４５５に縫い付けられている。また、シート状部材２６４の右側シート部の先端部が右側のシートフレームに連結されている。
　ここで、図２１に示すように、可動クッション部Ｍの着座面４０ｆから板部２６２の下端縁（固定ピン２６５）までの高さ寸法Ｈは、可動クッション部Ｍが乗降位置にあるときの固定ピン２６５の位置から固定クッション部Ｓの着座面４０ｆまでの高さ寸法Ｌよりも大きく設定されている。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の動作について＞
　先ず、乗員の乗車が完了した状態から車両用シート１０の動作について説明する。この状態では、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが着座位置（下限位置）に保持されており、図１５に示すように、可動クッション部Ｍの着座面４０ｆが固定クッション部Ｓの着座面４０ｆと連続している。また、前後スライド機構２０を動作させることで、乗員の体格にあわせてシート本体３０の前後位置を調整できるようになる。
　次に、乗員が降車する場合には、シートベルトを外し、右側のドアを開けた状態で、上昇スイッチ（図示省略）を操作する。これにより、クッション傾斜機構５０がシートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させる方向に動作して、乗員の臀部が徐々に押し上げられる。
　ここで、可動クッション部Ｍが上昇する際には、その可動クッション部Ｍと共に閉鎖部材２６０の板部２６２も上昇するため、その板部２６２に連結されたシート状部材２６４の基端部も上昇し、そのシート状部材２６４が徐々に展開される。これにより、可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆ，４３ｅ，４３ｂが固定クッション部Ｓの各々の境界位置側面４５ｆ，４５ｅ，４５ｂから上方に離れ、さらに可動クッション部Ｍの右端が右側のシートフレームから上方に離れることにより形成される開放部分が閉鎖部材２６０によって塞がれるようになる。
　そして、可動クッション部Ｍが乗降位置まで上昇した段階でクッション傾斜機構５０が停止し、可動クッション部Ｍが乗降位置に保持されるとともに、図２０、図２１に示すように、閉鎖部材２６０のシート状部材２６４が完全に展開された状態になる。

　乗車時には、乗員が乗降位置にある可動クッション部Ｍに着座した後、下降スイッチ（図示省略）を操作することで、クッション傾斜機構５０が可動クッション部Ｍを下降させる方向に動作する。可動クッション部が下降すると、その可動クッション部Ｍと共に閉鎖部材２６０の板部２６２も下降し、その板部２６２に連結されたシート状部材２６４の基端部も下降して、そのシート状部材２６４が徐々に弛むようになる。そして、板部２６２の下端部が固定クッション部Ｓの着座面４０ｆよりも下降すると、シート状部材２６４の基端部が板部２６２の下端部によって下方に引っ張られ、シート状部材２６４は可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの境界位置、及び可動クッションと右側のシートフレームとの境界位置の内側に収納される。このようにして、可動クッション部Ｍが着座位置まで下降した段階でクッション傾斜機構５０が停止し、可動クッション部Ｍが着座位置に保持されるとともに、図１８、図１９に示すように、閉鎖部材２６０のシート状部材２６４が前記境界位置の内側に完全に収納される。さらに、可動クッション部Ｍの着座面４０ｆが固定クッション部Ｓの着座面４０ｆと連続するようになる。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の長所について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０によると、閉鎖部材２６０は、固定クッション部Ｓに対する可動クッション部Ｍの上昇により、その可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓのとの境界位置においてその可動クッション部Ｍの下端と固定クッション部Ｓの着座面４０ｆとの間に形成される開放部分を塞ぐことができるように構成されている。このため、乗降位置にある可動クッション部Ｍが下降する際に、乗員が誤って可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの開放部分に手を滑り込ませようとしても、前記閉鎖部材２６０によってこれが妨げられ、可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの間に手等を挟む等のトラブルを防止できる。
　また、閉鎖部材２６０が板部２６２と変形自在なシート状部材２６４とから構成されるため、簡単な構成で閉鎖部材２６０と固定クッション部Ｓ、クッション傾斜機構５０等との干渉を防止できる。

　また、図２１に示すように、可動クッション部Ｍの着座面４０ｆから板部２６２の下端縁とシート状部材２６４とが連結される連結位置（固定ピン２６５の位置）までの高さ寸法Ｈは、可動クッション部Ｍが乗降位置にある状態でその固定ピン２６５の位置から固定クッション部Ｓの着座面４０ｆまでの高さ寸法Ｌよりも大きく設定されている。
　このため、可動クッション部Ｍが着座位置まで下降する過程でシート状部材２６４の基端部が板部２６２の下端縁によって下方に引っ張られ、シート状部材２６４が着座面４０ｆよりも下側に収納されるようになる。即ち、可動クッション部Ｍが着座位置まで下降した状態で、シート状部材２６４の一部が可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの着座面４０ｆの上に残るようなことがない。したがって、シートクッション４０の座り心地が低下するようなことがなく、さらに着座面４０ｆの見栄えが低下するようなこともない。

＜変更例＞
　ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、図１８から図２１に示すように、可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆ，４３ｅ，４３ｂ（以下、境界位置側面４３ｆと記載する）と固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆ，４５ｅ，４５ｂ（以下、境界位置側面４５ｆと記載する）とを縦に形成する例を示した。しかし、図２２から図２４に示すように、固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆを上向き傾斜面とし、可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆを下向き傾斜面として、着座位置で可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆが固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆに面接触するように構成しても良い。
　これにより、可動クッション部Ｍが着座位置にある状態で、シートクッション４０に乗員が座っている場合に、乗員の体重が可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆから固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆに加わるようになる。このため、可動クッション部Ｍの境界位置側面４３ｆと固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆとが乗員の体重を受けて完全に面接触し、可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの境界位置で隙間が生じなくなる。これにより、シートクッション４０の座り心地が低下するようなことがなくなる。
　また、固定クッション部Ｓと可動クッション部Ｍとの境界位置側面４５ｆ，４３ｆが縦に形成されている場合と比較して、可動クッション部Ｍの昇降時における両境界位置側面４５ｆ，４３ｆ間の隙間寸法が大きくなり、シート状部材２６４を着座面４０ｆの下側に収納し易くなる。

　また、本実施形態では、図１５に示すように、可動クッション部Ｍをシートクッション４０のクッション中央部４１２と右サイド部４１５の中央部４１７とから構成し、可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの境界位置が平面コ字形となるような例を示した。しかし、シートクッション４０における可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとの区分けは適宜変更することが可能で、これに伴う境界位置の変更により閉鎖部材２６０が設けられる位置を変更することが可能である。
　また、本実施形態では、可動クッション部Ｍの右端と右側のシートフレームとの間にも閉鎖部材２６０を設ける例を示したが、可動クッション部Ｍの上昇時にその可動クッション部Ｍの右端とシートフレームカバー３１ｃとの間に隙間が生じないような構成であれば、この部分の閉鎖部材２６０を省略することが可能である。
　また、本実施形態では、閉鎖部材２６０のシート状部材２６４と板部２６２の下端縁とを固定ピン２６５により連結する例を示した。しかし、シート状部材２６４を板部２６２の内側から可動クッション部Ｍの下端に連結するようにすることで、シート状部材２６４と板部２６２とを連結しなくても、可動クッション部Ｍが下降する際に板部２６２の下端でシート状部材２６４を下方に押し下げる（引っ張る）ことが可能になる。
　また、本実施形態では、閉鎖部材２６０のシート状部材２６４の基端部を可動クッション部Ｍに設けられた板部２６２の下端部に連結し、そのシート状部材２６４の先端部を固定クッション部Ｓの境界位置側面４５ｆに縫い付ける例を示した。しかし、シート状部材２６４の先端側をシートフレーム側に設けられた巻取り装置により巻取り、繰出し可能にする構成でも良い。
　また、本実施形態では、運転席側のシートに本発明を適用する例を示したが、助手席側のシート、その他のシートに本発明を適用することも可能である。さらに、可動クッション部Ｍを昇降させるクッション傾斜機構５０の構成は適宜変更可能である。

＜クレーム案＞
　［クレーム１］　シートクッションが固定クッション部と可動クッション部とから構成されて、その可動クッション部が前記固定クッション部と着座面が連続する着座位置と、前記固定クッション部よりも高い乗降位置との間で昇降可能に構成された車両用シートであって、
　前記固定クッション部に対する前記可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材を備えることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム２］　クレーム１に記載された車両用シートであって、
　前記閉鎖部材は、前記可動クッション部の境界位置側面の下端から下方に突出する塀状の板部と、
　前記板部の下端縁と前記固定クッション部の境界位置側面との間の開放部分を塞ぐ変形自在なシート状部材とから構成されていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム３］　クレーム２に記載された車両用シートであって、
　前記シート状部材は、前記板部に連結されていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム４］　クレーム２又はクレーム３のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記シート状部材の基端部が前記可動クッション部に設けられた板部の下端縁に連結され、あるいは前記板部の内側で可動クッション部に連結され、そのシート状部材の先端部が前記固定クッション部の境界位置側面に連結されて、前記可動クッション部が上昇する過程で前記シート状部材が展開される構成であり、
　前記可動クッション部が乗降位置にある状態で、前記可動クッション部の着座面から前記板部と前記シート状部材との連結位置、あるいは前記板部の下端縁までの高さ寸法は、その連結位置、あるいは前記板部の下端縁から前記固定クッション部の着座面までの高さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする車両用シート。
　［クレーム５］　クレーム１からクレーム４のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記固定クッション部の境界位置側面は、上方を指向するように傾斜しており、前記可動クッション部の境界位置側面は、下方を指向するように傾斜しており、
　前記可動クッション部が着座位置にある状態で、前記可動クッション部の境界位置側面が前記固定クッション部の境界位置側面と面接触するように構成されていることを特徴とする車両用シート。

　　［実施形態４］
　以下、図２５から図３１に基づいて本発明の実施形態４に係る車両用シートについて説明する。
＜従来の構成＞
　従来の車両用シート（特開２００７－２３７８０４号）は、図３３に示すように、クッション前部６０２とクッション後部６０３とからなるシートクッション６００を備えている。クッション前部６０２の前端下部はヒンジ６０５によりシートフレーム６０６の前端部に連結されており、そのクッション前部６０２の後端下部がクッション後部６０３の前端下部にヒンジ６０７により連結されている。さらに、クッション後部６０３はダンパ６０８によって下方から支えられている。
　上記構成により、乗員が降車する際に、シートクッション６００がダンパ６０８の力で乗員の臀部を押上げるように動作する。これにより、乗員が立ち上がり易くなり、体力が低下した乗員であっても自身の力で降車できるようになる。
　しかし、上記した車両用シートでは、乗員の姿勢の如何に係わらずその乗員が立ち上がろうとするときにシートクッション６００が乗員の臀部を押上げる。このため、乗員が上体を起こした状態で立ち上がろうとすると、乗員の頭部が車両の乗降口の天井部分に当たることがある。
　本実施形態に係る車両用シートが解決しようとする課題は、乗員が降車する際に、その乗員が乗降口の天井部分に頭を当てないようにすることである。

＜車両用シート１０の概要について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０は、図３０、図３１に示すように、車高が比較的低い乗用車２において、右側の乗降口３を通って右方向から着座するように構成されたシート（運転席等）である。
　車両用シート１０は、図２５（Ａ）（Ｂ）に示すように、シート本体３０と、そのシート本体３０を車室フロアＦに対して前後スライドさせる前後スライド機構２０等とを備えている。
　シート本体３０は、シートフレーム３１と、そのシートフレーム３１上に設置されたシートクッション４０と、前記シートフレーム３１の後端部に上下回動可能な状態で連結されたシートバック３５と、シートクッション４０の一部Ｍ（４２，４４ｃ）を前記シートフレーム３１等に対して昇降させるクッション傾斜機構５０とから構成されている。

＜シートクッション４０について＞
　シートクッション４０は、図２５（Ａ）に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部４１、クッション中央部４２、クッション後部４３を備えており、前記中央部分の右側（乗降口（図示省略）側）に右サイド部４４、前記中央部分の左側（車室中央側）に左サイド部４５が設けられている。
　クッション前部４１は、着座した乗員の主として大腿部を支える部分であり、着座面が後側で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。クッション中央部４２は、主として乗員の臀部を支える部分であり、着座面が最も低い位置にあって平坦に形成されている。クッション後部４３は前方で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。
　右サイド部４４は、着座面が右側（乗降口側）で高くなるように傾斜した状態で形成されており、前部４４ｆ、中央部４４ｃ及び後部４４ｂに分割されている。左サイド部４５は、着座面が左側（車室中央側）で高くなるように傾斜した状態で形成されている。

　シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとは一体化されており、そのシートクッション４０の他の部分、即ち、右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とから分割されている。そして、シートクッション４０の右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とがシートフレーム３１に固定されている。このため、シートクッション４０の右サイド部４４の前部４４ｆ、後部４４ｂとクッション前部４１と左サイド部４５とクッション後部４３とを、以後、シートクッション４０の固定クッション部Ｓと呼ぶことにする。
　そして、シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとが、図２５（Ｂ）に示すように、クッション傾斜機構５０（後記する）の働きでシートクッション４０の固定クッション部Ｓ、及びシートフレーム３１に対して昇降可能に構成されている。このため、シートクッション４０のクッション中央部４２と右サイド部４４の中央部４４ｃとを、以後、シートクッション４０の可動クッション部Ｍと呼ぶことにする。

＜クッション傾斜機構５０について＞
　クッション傾斜機構５０は、シートフレーム３１、及びシートクッション４０の固定クッション部Ｓに対してシートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させ、さらに乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるための機構である。クッション傾斜機構５０は、図２６の縦断面図に示すように、シートフレーム３１の前後に吊り支持されたベース板５２と、そのベース板５２上に設置された前後一対のクロスリンク５３（図２７参照）と、それらのクロスリンク５３を動作させる駆動部（図示省略）とから構成されている。
　クッション傾斜機構５０のベース板５２は、図２６に示すように、側面形状略Ｕ字形に折り曲げ成形されており、そのベース板５２の前端上部がシートフレーム３１の前部にボルト止めされている。また、前記ベース板５２の後端上部がシートフレーム３１の後部で幅方向に延びる後部支持管３１ｔに連結されている。

　クッション傾斜機構５０の前後一対のクロスリンク５３は、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを前後から支えてその可動クッション部Ｍを昇降及び傾斜させられるように構成されている。
　クロスリンク５３は、図２７に示すように、直線状の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとから構成されており、両リンク５３ａ，５３ｂの中央部近傍が中央連結ピン５３ｘによって互いに上下回動可能な状態で連結されている。そして、第１リンク５３ａの基端部（下端部）が下端連結ピン５４によって上下回動可能な状態でベース板５２の底部右端に形成された受け部（図示省略）に連結されている。また、第１リンク５３ａの先端部（上端部）にはローラ５３ｒが装着されており、そのローラ５３ｒがシートクッション４０の可動クッション部Ｍの下側に左右方向に延びるように形成されたレール部４０ｆに沿って転動できるように構成されている。
　また、第２リンク５３ｂの基端部（上端部）は、上端連結ピン５５によって上下回動可能な状態でシートクッション４０の可動クッション部Ｍにおけるレール部４０ｆの右端近傍に連結されている。また、第２リンク５３ｂの先端部（下端部）にはローラ５３ｚが装着されており、そのローラ５３ｚがベース板５２の底部５２ｙに沿って左右方向に転動できるように構成されている。

　クッション傾斜機構５０の駆動部（図示省略）は、モータ５６（図２８参照）の回転力を利用してクロスリンク５３の第１リンク５３ａと第２リンク５３ｂとを起立方向、あるいは倒伏方向に動作させて、可動クッション部Ｍを昇降及び傾斜させる部分である。即ち、モータ５６が正転方向に回転することで、前記駆動部はクロスリンク５３を起立させる方向に動作する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが着座位置から上昇し、その可動クッション部Ｍが上限位置まで上昇する過程で乗降口３側に所定角度で傾斜するようになる。また、モータ５６が逆転方向に回転することにより、前記駆動部はクロスリンク５３を倒伏させる方向に動作する。これにより、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが下降して元の着座位置まで戻される。

　モータ５６は、図２８に示す電気回路によって駆動されるように構成されている。
　即ち、前記電気回路は、乗員が操作する操作スイッチ５７と、運転席側のドア５が所定角度（例えば、約30°）を超えて開方向に水平回動したときにオン動作するドアスイッチＬＳ等により構成されている。なお、シートクッション４０には、体重検知センサ等も設けられており、体重に応じてドアスイッチＬＳのオン動作角度を調整できるように構成されている。
　操作スイッチ５７は、図２９に示すように、ドア５の室内側で、窓Ｗの下側に設けられたアームレスト５ａの上面前側に取付けられている。これにより、乗員が降車する際、前記ドア５を開方向に所定角度（約30°）だけ水平回動した状態で、乗員が上体を乗降口３の外に出し、前傾姿勢で前記操作スイッチ５７にさわれるようになる。

　操作スイッチ５７は、図２８に示すように、上昇、下降、及び停止の三方向に切換え可能に構成されており、例えば、バネ力で常に停止位置に保持されている。前記停止位置では、上昇側の接点と下降側の接点とが共に開放されている（オフ状態）。この状態から操作スイッチ５７がバネ力に抗して上昇方向に押し操作されると、押し操作されている間、図２８に示すように、上昇側の接点が閉じられる（上昇側オン）。また、操作スイッチ５７がバネ力に抗して下降方向に押し操作されると、押し操作されている間、下降側の接点が閉じられる（下降側オン）。
　操作スイッチ５７は、図２８に示すように、ドアスイッチＬＳを介してモータ５６に接続されている。このため、運転席側のドア５が所定角度（例えば、約30°）を超えて開放されてドアスイッチＬＳがオンし、かつ操作スイッチ５７が上昇側オン、あるいは下降側オンのときに、モータ５６に対して給電が行われる。
　なお、操作スイッチ５７が上昇側オン、あるいは下降側オンのときでも、ドア５が所定角度（例えば、約30°）を超えて開放されていない状態では、ドアスイッチＬＳがオフのため、モータ５６に対する給電は行われない。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の動作について＞
　車両用シート１０（運転席）に着座している乗員が降車する場合には、先ず、図３０に示すように、ドア５を開き、身体を右側に向けて、乗降口３から脚部を車外に出すようにする。この状態で、ドア５は約30°以上水平回動して半開状態に保持されている。次に、乗員が上体を乗降口３から外に出し、操作スイッチ５７を上昇方向に押し操作する。前述のように、操作スイッチ５７は、ドア５のアームレスト５ａの上面に取付けられているため、操作スイッチ５７を操作する際に乗員は前傾姿勢になる。このようにして、操作スイッチ５７が上昇方向に押し操作されると、クッション傾斜機構５０のモータ５６に対して給電が行われ、そのモータ５６が正転方向に回転してクロスリンク５３が起立方向に動作する。この結果、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上昇し、乗員の臀部が可動クッション部Ｍによって押上げられる。このとき、乗員は前傾姿勢で操作スイッチ５７を押し操作しているため、乗員の臀部が可動クッション部Ｍによって押上げられても（図３１参照）、乗員の頭部が乗降口３の天井部分に当たることはない。そして、図３１に示すように、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上限位置まで上昇し、さらに乗降口３側が低く、室内側が高くなるように傾斜した状態で、モータ５６が停止する。この状態で、乗員は中腰の姿勢となり、膝が伸びるため立ち上がりが楽になる。これにより、体力が低下した乗員であっても自身の力で降車できるようになる。
　なお、この状態から可動クッション部Ｍを元の着座位置まで下降させるには、ドア５を開いたままで操作スイッチ５７を下降方向に押し操作する。

＜本実施形態に係る車両用シート１０の長所について＞
　本実施形態に係る車両用シート１０によると、クッション傾斜機構５０のモータ５６の操作スイッチ５７は、降車時に開かれるドア５の室内側であって、かつドア５が開方向に所定位置まで回動させられた状態で乗員が前傾姿勢でさわれる位置に配置されている。このため、降車時に、乗員はドア５を開けた後、上体を自然に車両の外側に出し、前傾姿勢で操作スイッチ５７を操作するようになる。そして、乗員が操作スイッチ５７を操作することでクッション傾斜機構５０が動作し、シートクッション４０の可動クッション部Ｍが上昇するようになる。即ち、乗員は前傾姿勢の状態で可動クッション部Ｍにより臀部が押上げられるため、前かがみの姿勢で立ち上がるようになる。これにより、乗員が頭部を乗降口３の天井部分に当てるようなことがなくなる。
　また、操作スイッチ５７は操作されている間だけオンし、その操作スイッチ５７がオンしている間だけモータ５６に対する給電が可能なように構成されている。このため、乗員は可動クッション部Ｍが上昇する間、常に、操作スイッチ５７を操作することで前傾姿勢を保持するようになる。この結果、乗員の頭部が乗降口３の天井部分に当たり難くなる。
　また、ドア５が開方向に所定位置まで回動していない状態では、操作スイッチ５７がオンしていても、モータ５６に対する給電が行われないように構成されている。このため、乗員が運転中に誤って操作スイッチ５７にさわっても可動クッション部Ｍが上昇するような不具合はない。

＜変更例＞
　ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、シートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させ、乗降口３側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるクッション傾斜機構５０を例示した。しかし、シートクッション４０を前向き位置から水平回動させて乗降口３側を向け、そのシートクッション４０の可動クッション部Ｍを上昇させながら前側（乗降口３側）が低くなるように傾斜させる構成とすることも可能である。
　また、本実施形態では、操作スイッチ５７をドア５のアームレスト５ａの位置に配置する例を示したが、操作スイッチ５７をドア５の開放レバーの近傍に設けることも可能である。
　また、本実施形態では、シートクッション４０を可動クッション部Ｍと固定クッション部Ｓとから構成し、可動クッション部Ｍをクッション傾斜機構５０で昇降させる例を示した。しかし、例えば、シートクッション４０を全体的にクッション傾斜機構５０により昇降させる構成でも可能である。
　また、クロスリンク５３を使用したクッション傾斜機構５０を例示したが、クロスリンク５３の代わりにボールネジ＆ナット機構、エアシリンダ等を利用したクッション傾斜機構を使用することも可能である。
　また、乗降口３の天井部分に乗員の頭部の接近を検知するセンサ、例えば、光電センサと光源とを設け、乗員の頭部が天井部分の近傍で光を遮ることを光電センサが検出したときに、クッション傾斜機構５０が可動クッション部Ｍの上昇を停止させるようにすることも可能である。
　また、車両用シート１０を運転席として使用し、運転席側のドア５に操作スイッチ５７を設ける例を示したが、運転席以外の座席に本発明に係る車両用シート１０を適用することも可能である。

＜クレーム案＞
［クレーム１］　シートクッションと、前記シートクッションの少なくとも一部を上昇させられるように構成されたクッション傾斜機構とを備え、前記シートクッションに着座している乗員が降車時に前記シートクッションの上昇による押上げ力を受けられるように構成された車両用シートであって、
　前記クッション傾斜機構の駆動部の操作スイッチは、前記降車時に開かれるドアの室内側であって、そのドアの窓の下側に配置されており、前記ドアが開かれた状態でその操作スイッチが操作されることで、前記駆動部が動作するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
［クレーム２］　クレーム１に記載された車両用シートであって、
　前記駆動部はモータを備えており、
　前記操作スイッチは操作されている間だけオンし、その操作スイッチがオンしている間だけ前記モータに対する給電が可能なように構成されていることを特徴とする車両用シート。
［クレーム３］　クレーム１又はクレーム２のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記ドアが開方向に所定位置まで回動していない状態では、前記操作スイッチがオンしていても、前記モータに対する給電が行われないように構成されていることを特徴とする車両用シート。

２０・・・前後スライド機構
２５・・・昇降機構
３１・・・シートフレーム（支持部材）
３５・・・シートバック
４０・・・シートクッション
４１・・・クッション前部
４２・・・クッション中央部
４４・・・右サイド部
４４ｃ・・中央部（サイドサポート部）
５０・・・クッション傾斜機構
５３・・・クロスリンク
５３ａ・・第１リンク
５３ｂ・・第２リンク
５６・・・駆動部
６０・・・クッション傾斜機構
６０ｃ・・連結機構
６０ｚ・・駆動部
Ｆ・・・・車室フロア
Ｍ・・・・可動クッション部
Ｓ・・・・固定クッション部

Claims

固定クッション部と可動クッション部とからなり、前記可動クッション部が固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜可能に構成されたシートクッションと、
　前記シートクッションの下に設けられており、前記可動クッション部を固定クッション部に対して上昇させつつ、傾斜させるクッション傾斜機構とを備えることを特徴とする車両用シート。
請求項１に記載された車両用シートであって、
　前記可動クッション部が傾斜するときに、その可動クッション部の乗降側に位置するサイドサポート部も一体となって傾斜することを特徴とする車両用シート。
請求項１又は請求項２のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記クッション傾斜機構は、前記シートクッションの下で倒伏位置から起立位置まで回動可能に構成された第１リンクと、その第１リンクと交差するように連結されて、前記第１リンクとほぼ対称に動作可能に構成された第２リンクと、前記第１リンク、第２リンクを倒伏位置から起立位置まで回動させられるように構成された駆動部とを備えており、
　前記第１リンク、第２リンクが倒伏位置から起立位置まで回動することで、前記シートクッションの可動クッション部が前記固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜させられることを特徴とする車両用シート。
請求項１又は請求項２のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記クッション傾斜機構は、前記シートクッションの可動クッション部を上下回動可能な状態で支持部材に連結する連結機構と、その連結機構の回動中心回りに前記可動クッション部を上下回動させる駆動部とを備えており、
　前記可動クッション部が前記連結機構の回動中心回りに上方に回動することで、その可動クッション部が前記固定クッション部に対して上昇しつつ、乗降側が低くなるように傾斜するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１から請求項４のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記シートクッションを支持するシートフレームを車室フロアに沿ってスライドさせるスライド機構と、前記シートフレームを前記車室フロアに対して昇降させるフレーム昇降機構とを備えていることを特徴とする車両用シート。
請求項１から請求項５のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記乗降口のドアが開いている状態で、上昇スイッチが操作されたときに前記クッション傾斜機構がシートクッションの可動クッション部を上昇させる方向に動作することを特徴とする車両用シート。
請求項１に記載された車両用シートであって、
　前記クッション傾斜機構は、前記シートクッションの下側で可動部を水平方向に往復移動させられるように構成された駆動機構と、
　前記可動部が前記駆動機構の働きで一定方向に移動することにより、その移動量に応じて前記シートクッションの可動クッション部を傾斜させられるように構成されたリンク機構と、
を有することを特徴とする車両用シート。
請求項７に記載された車両用シートであって、
　前記シートクッションを車両の乗降口側に水平回転させる回転機構を備えていることを特徴とする車両用シート。
請求項７に記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部を車両の乗降口側に傾斜させられるように構成されており、
　さらに、前記可動クッション部、前記リンク機構及び前記駆動機構を車両の乗降口側に水平スライドさせるスライド機構を備えていることを特徴とする車両用シート。
請求項７から請求項９のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の途中位置をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、その水平支持部に近い方の前記クッション支持部材の一端と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする車両用シート。
請求項７から請求項９のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記リンク機構は、前記シートクッションの可動クッション部に沿って形成され、その可動クッション部と一体化されたクッション支持部材と、前記クッション支持部材の一端をそのクッション支持部材の上下回転の中心として水平に支持する水平支持部と、前記クッション支持部材の途中位置と前記駆動機構の可動部とを上下回転可能な状態で連結するリンクとを備えていることを特徴とする車両用シート。
請求項１から請求項１１のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記固定クッション部に対する前記可動クッション部の上昇により、前記可動クッション部と前記固定クッション部との境界位置においてその可動クッション部の下端と前記固定クッション部の着座面との間に形成される開放部分を塞ぐ閉鎖部材を備えることを特徴とする車両用シート。
請求項１２に記載された車両用シートであって、
　前記閉鎖部材は、前記可動クッション部の境界位置側面の下端から下方に突出する塀状の板部と、
　前記板部の下端縁と前記固定クッション部の境界位置側面との間の開放部分を塞ぐ変形自在なシート状部材とから構成されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１３に記載された車両用シートであって、
　前記シート状部材は、前記板部に連結されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１３又は請求項１４のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記シート状部材の基端部が前記可動クッション部に設けられた板部の下端縁に連結され、あるいは前記板部の内側で可動クッション部に連結され、そのシート状部材の先端部が前記固定クッション部の境界位置側面に連結されて、前記可動クッション部が上昇する過程で前記シート状部材が展開される構成であり、
　前記可動クッションが乗降位置にある状態で、前記可動クッションの着座面から前記板部と前記シート状部材との連結位置、あるいは前記板部の下端縁までの高さ寸法は、その連結位置、あるいは前記板部の下端縁から前記固定クッション部の着座面までの高さ寸法よりも大きく設定されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１２から請求項１５のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記固定クッション部の境界位置側面は、上方を指向するように傾斜しており、前記可動クッション部の境界位置側面は、下方を指向するように傾斜しており、
　前記可動クッション部が着座位置にある状態で、前記可動クッション部の境界位置側面が前記固定クッション部の境界位置側面と面接触するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１から請求項１６のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記クッション傾斜機構の駆動部の操作スイッチは、前記降車時に開かれるドアの室内側であって、そのドアの窓の下側に配置されており、前記ドアが開かれた状態でその操作スイッチが操作されることで、前記駆動部が動作するように構成されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１７に記載された車両用シートであって、
　前記駆動部はモータを備えており、
　前記操作スイッチは操作されている間だけオンし、その操作スイッチがオンしている間だけ前記モータに対する給電が可能なように構成されていることを特徴とする車両用シート。
請求項１７又は請求項１８のいずれかに記載された車両用シートであって、
　前記ドアが開方向に所定位置まで回動していない状態では、前記操作スイッチがオンしていても、前記モータに対する給電が行われないように構成されていることを特徴とする車両用シート。