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JPWO2013125453A1 - 表面実装型led用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

表面実装型led用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

本発明は、共重合ポリエステル樹脂(A)、酸化チタン(B)、繊維状強化材及び針状強化材からなる群より選択される少なくとも1種の強化材(C)、及び非繊維状又は非針状充填材(D)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して酸化チタン(B)0.5〜100質量部、強化材(C)0〜100質量部、及び非繊維状又は非針状充填材(D)0〜50質量部の割合で含有するポリエステル樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分を構成成分とし、融点が280℃以上である、表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物であって、耐熱性、射出成形時の成形性、低吸水性、表面反射率に優れる表面実装型LED用反射板に好適なポリエステル樹脂組成物を提供することができる。

Description

本発明は、成形性、流動性、寸法安定性、低吸水性、ハンダ耐熱性、表面反射率等に優れる表面実装型LED用反射板に使用するのに好適なポリエステル樹脂組成物に関する。さらには、本発明は、金/錫ハンダ耐熱性、耐光性、低吸水性に優れる表面実装型LED用反射板に使用するのに好適なLED用ポリエステル樹脂組成物に関する。
近年、LED(発光ダイオード)は、低消費電力、長寿命、高輝度、小型化可能などの特徴を活用して、照明器具、光学素子、携帯電話、液晶ディスプレイ用バックライト、自動車コンソールパネル、信号機、表示板などに応用されている。また、意匠性、携帯性を重視する用途では、軽薄短小化を実現するために表面実装技術が使用されている。
表面実装型LEDは一般に、発光するLEDチップ、リード線、ケースを兼ねた反射板、封止樹脂から構成されているが、電子基板上に実装された部品全体を非鉛化ハンダで接合するために、各部品がハンダ付けリフロー温度260℃に耐えられる材料で形成されることが必要である。材料の融点(融解ピーク温度)としては、280℃以上が必要とされる。特に反射板に関しては、これら耐熱性に加え、光を効率的に取り出すための表面反射率、熱や紫外線に対する耐久性が求められる。かかる観点から、セラミックや半芳香族ポリアミド、液晶ポリマー、熱硬化性シリコーン等の種々の耐熱プラスチック材料が検討されており、なかでも、半芳香族ポリアミドやポリエステルに酸化チタン等の高屈折フィラーを分散させた樹脂は量産性、耐熱性、表面反射率などのバランスが良く、最も汎用的に使用されている。最近では、LEDの汎用化にともない、反射板には加工性や信頼性のさらなる向上が必要となっており、長期の耐熱着色性、耐光性の向上が求められている。
LED反射板用のポリエステル樹脂組成物としては、例えば特許文献1〜2が提案されている。
特許文献1,2では、(a)i)テレフタル酸残基70〜100モル%;ii)炭素数20以下の芳香族ジカルボン酸残基0〜30モル%;及びiii)炭素数16以下の脂肪族ジカルボン酸残基0〜10モル%を含むジカルボン酸成分;並びに(b)i)2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール残基1〜99モル%;及びii)1,4−シクロヘキサンジメタノール残基1〜99モル%を含むグリコール成分(ここでジカルボン酸成分の総モル%は100モル%であり、グリコール成分の総モル%は100モル%である)が開示されているが、機械物性が良好傾向にあるものの、成形性、耐光性に問題がある。また、特許文献3では(A)ポリエステル樹脂100質量部に対し、(B)アニオン部分がホスフィン酸のカルシウム塩又はアルミニウム塩であるホスフィン酸塩2〜50質量部、(C)二酸化チタン0.5〜30質量部、及び(D)極性基を有するポリオレフィン樹脂0.01〜3質量部を配合したことを特徴とする、半導体発光素子を光源とする照明装置反射板用難燃性ポリエステル樹脂組成物が開示されているが、金/錫ハンダ耐熱性、耐熱性、耐光性に問題がある。また、特許文献4では、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部、焙焼工程を含む製法で得られた酸化チタン97〜85質量%を酸化アルミニウム(水和物を含む)3〜15質量%(両者を合わせて100質量%とする。)で表面処理してなる酸化チタン粒子8〜42質量部、ガラス繊維25〜50質量部、およびその他の無機充填材0〜8質量部からなり、二軸混練機を使用して、前記ガラス繊維の少なくとも一部を、二軸混練機のシリンダーの全長に対して30%以上下流側の位置から供給する工程を含む溶融混練工程を経て得られる樹脂組成物が開示されているが、耐熱性、耐光性に問題がある。
また、特許文献5では、不飽和ポリエステル樹脂、重合開始剤、無機充填剤、白色顔料、離型剤、及び補強材を少なくとも含む乾式不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、前記組成物全体量に対して14〜40質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計が、前記組成物全体量に対して44〜74質量%の範囲内であり、前記無機充填剤と前記白色顔料の配合量の合計に占める前記白色顔料の割合が30質量%以上であり、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和アルキッド樹脂と架橋剤が混合されたものであることを特徴とするLEDリフレクター用不飽和ポリエステル樹脂組成物が開示されているが、成形性、耐光性に問題がある。また、これまで表面実装型LED用反射板としては、各種ポリアミドが使用されてきたが、耐熱着色性、耐光性、吸水性に問題があった。
以上のように、従来提案されているポリエステルやポリアミドでは、耐熱着色性、耐光性、成形性に課題を抱えながら使用している実情がある。
さらに、近年では、照明用途への展開も積極的に行われている。照明用途への展開を考えた場合、コストダウンやハイパワー化、寿命の向上、長期信頼性の向上がさらに求められている。そのため、信頼性の向上策として、リードフレームとLEDチップの接合には、従来のエポキシ樹脂/銀ペーストではなく、劣化が少なく、熱伝導率の高い金/錫共晶ハンダが使用されつつある。しかしながら、金/錫共晶ハンダの加工には、280℃以上290℃未満の温度がかかるため、使用される樹脂には、工程に耐えるために290℃以上の融点が求められる。また、金/錫共晶ハンダの加工時においても、樹脂中の水分による成型品の表面に膨れ(ブリスター)の発生を防ぐために、樹脂には低吸水であることが求められる。
以上の通り、表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物としては、必要とされる融点(融解ピーク温度)が280℃以上、好ましくは290℃以上と高く、かつ芳香環濃度が高いことが好ましい。しかしながら、これらを満足した表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物は、これまで報告されていない。
特表2008−544030号公報 特表2008−544031号公報 特開2010−270177号公報 特開2008−231368号公報 特許4844699号公報
本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み創案されたものであり、その目的は、射出成形時の成形性、流動性、寸法安定性、低吸水性、ハンダ耐熱性、表面反射率、耐光性に優れる表面実装型LED用反射板に使用するのに好適なポリエステル樹脂組成物を提供することにある。さらには、本発明の目的は、長期的な信頼性を確保すべく、金/錫共晶ハンダ工程が適応可能な高融点、ハンダ工程での水分による成型品の膨らみ低減のための低吸水性、屋外使用や長期使用時の耐光性を達成した表面実装型LED用反射板に使用するのに好適なポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために、LED反射板としての特性を満たしながら射出成形やリフローハンダ工程を有利に行うことができ、さらには、金/錫共晶ハンダ耐熱性、低吸水性、耐光性にも優れたポリエステルの組成を鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の構成を有するものである。
(1)共重合ポリエステル樹脂(A)、酸化チタン(B)、繊維状強化材及び針状強化材からなる群より選択される少なくとも1種の強化材(C)、及び非繊維状又は非針状充填材(D)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して酸化チタン(B)0.5〜100質量部、強化材(C)0〜100質量部、及び非繊維状又は非針状充填材(D)0〜50質量部の割合で含有するポリエステル樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分を構成成分とし、融点が280℃以上であることを特徴とする表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物。
(2)共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分の30モル%以上が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸であることを特徴とする(1)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(3)共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するその他のジカルボン酸が、テレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のポリエステル樹脂組成物。
(4)共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分の30〜90モル%が4,4’−ビフェニルジカルボン酸であり、その他のジカルボン酸がテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、グリコール成分がエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(5)非繊維状又は非針状充填材(D)がタルクであり、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してタルク0.1〜5質量部の割合で含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(6)ハンダリフロー耐熱温度が260℃以上であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(7)ハンダリフロー耐熱温度が280℃以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(8)ポリエステル樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)の差が40℃以下であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とする表面実装型LED用反射板。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、高い耐熱性、低い吸水性に加えて、射出成形時の成形性やハンダ耐熱性など加工性に優れる特定の共重合ポリエステル樹脂を使用しているので、全ての必要な特性を高度に満足する表面実装型LED用反射板を工業的に有利に製造することができる。
また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、主成分の共重合ポリエステル樹脂が280℃以上の高融点で耐熱性にも優れるため、金/錫共晶ハンダ工程にも適応可能であり、さらには、芳香環濃度が高いので、耐熱性、強靭性、耐光性に優れるとともに、封止材との密着性にも優れるなどの特徴を示すことができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、表面実装型LED用反射板に使用することを意図するものである。表面実装型LEDには、プリント配線板を用いたチップLED型、リードフレームを用いたガルウィング型、PLCC型などが挙げられるが、本発明のポリエステル樹脂組成物はこれらの全ての反射板を射出成形により製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、共重合ポリエステル樹脂(A)、酸化チタン(B)、繊維状強化材及び針状強化材からなる群より選択される少なくとも1種の強化材(C)、及び非繊維状又は非針状充填材(D)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して酸化チタン(B)0.5〜100質量部、強化材(C)0〜100質量部、及び非繊維状又は非針状充填材(D)0〜50質量部の割合で含有するポリエステル樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分を構成成分とし、融点が280℃以上である、表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物である。
共重合ポリエステル樹脂(A)は、高い信頼性を付与するために、高融点、低吸水性に加えて、優れた耐UV性を実現するために配合されるものであり、共重合ポリエステル樹脂(A)が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分を構成成分とし、融点が280℃以上であることを特徴とする。共重合ポリエステル樹脂(A)は、下記の構成を有することにより、融点を280℃以上にすることができる。共重合ポリエステル樹脂(A)の融点は、好ましくは290℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは310℃以上である。共重合ポリエステル樹脂(A)の融点の上限は特に設定しないが、使用できる原料成分の制限より、340℃以下である。融点は、下記実施例の項に記載された方法で測定される。
共重合ポリエステル樹脂(A)は、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が全酸成分の30モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは4,4’−ビフェニルジカルボン酸が50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、特に好ましくは63モル%以上、最も好ましくは70モル%以上である。4,4’−ビフェニルジカルボン酸が全酸成分の30モル%未満では、成形性、ハンダ耐熱性、耐光性が低下する傾向にある。4,4’−ビフェニルジカルボン酸は、全酸成分の90モル%以下であることが好ましい。90モル%を超えると、ポリエステル樹脂の融点が高くなり過ぎ、重合条件の設定が難しくなる傾向にある。
その他のジカルボン酸とは、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などが挙げられ、これらの中では、重合性、コスト、耐熱性の点からテレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、またはこれらの混合物が好ましい。また、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸などの多価カルボン酸及びその無水物を併用しても構わない。共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する酸成分としては、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸の合計で、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましく、97モル%以上が特に好ましく、100モル%であっても構わない。
また、共重合ポリエステル樹脂(A)のグリコ−ル成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールなどが挙げられる。これらの中では、耐熱性、重合性、成形、コストなどからエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールから選ばれる一種または二種以上の混合物が好ましい。更に好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールから選ばれる一種以上である。なお、グリコール成分にエチレングリコールを用いた場合、共重合ポリエステル樹脂(A)の製造時に、ジエチレングリコールが副生し、共重合成分となることがある。この場合、副生するジエチレングリコールは、製造条件にもよるが共重合ポリエステル樹脂に組み込まれるエチレングリコールに対して1〜5モル%程度である。また、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価ポリオールを併用しても構わない。
共重合ポリエステル樹脂(A)のグリコ−ル成分として全量、エチレングリコールを用いる場合、酸成分として4,4’−ビフェニルジカルボン酸を63モル%以上とすることが好ましく、70モル%以上とすることがより好ましい。また、この場合、より望ましい高融点を達成するためには、酸成分として4,4’−ビフェニルジカルボン酸を75モル%以上とすることがさらに好ましく、80モル%以上とすることが特に好ましい。
また、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸、5−[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等の金属塩、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキサンジオール等の金属塩などのスルホン酸金属塩基を含有するジカルボン酸またはジオールを全酸成分または全ジオール成分の20モル%以下の範囲で使用してもよい。
共重合ポリエステル樹脂(A)を製造するに際に使用する触媒として、特に限定がされないが、Ge、Sb、Ti、Al、MnまたはMgの化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が用いられることが好ましい。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリー等として反応系に添加される。
また、安定剤として、燐酸、ポリ燐酸やトリメチルフォスフェート等の燐酸エステル類、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物を使用するのが好ましい。
共重合ポリエステル樹脂(A)の酸価としては、1〜40eq/tonであることが好ましい。酸価が40eq/tonを超えると、耐光性が低下する傾向にある。また、酸価が1eq/ton未満では、重縮合反応性が低下して生産性が悪くなる傾向にある。
共重合ポリエステル樹脂(A)の極限粘度(IV)は、0.10〜0.70dl/gであることが好ましく、より好ましくは0.20〜0.65dl/g、さらに好ましくは0.25〜0.60dl/gである。
共重合ポリエステル樹脂(A)は、本発明のポリエステル樹脂組成物において25〜90質量%、好ましくは40〜75質量%の割合で存在する。共重合ポリエステル樹脂(A)の割合が上記下限未満であると、機械的強度が低くなり、上記上限を超えると、酸化チタン(B)や強化材(C)の配合量が不足し、所望の効果が得られにくくなる。
酸化チタン(B)は、反射板の表面反射率を高めるために配合されるものであり、例えば硫酸法や塩素法により作製されたルチル型およびアナターゼ型の二酸化チタン(TiO)、一酸化チタン(TiO)、三酸化二チタン(Ti)などが挙げられるが、特にルチル型の二酸化チタン(TiO)が好ましく使用される。酸化チタン(B)の平均粒径は、一般に0.05〜2.0μm、好ましくは0.15〜0.5μmの範囲であり、1種で使用しても良いし、異なる粒径を有する酸化チタンを組み合わせて使用しても良い。酸化チタン成分濃度としては、90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上である。また、酸化チタン(B)は、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、ジルコニア等の金属酸化物、カップリング剤、有機酸、有機多価アルコール、シロキサン等で表面処理を施されたものを使用することができる。
酸化チタン(B)の割合は、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.5〜100質量部、好ましくは10〜80質量部である。酸化チタン(B)の割合が上記下限未満であると、表面反射率が低下し、上記上限を超えると、物性の大幅な低下や流動性が低下するなど成形加工性が低下するおそれがある。
強化材(C)は、ポリエステル樹脂組成物の成形性と成形品の強度を向上するために配合されるものであり、繊維状強化材及び針状強化材から選択される少なくとも1種を使用する。繊維状強化材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維、金属繊維などが挙げられ、針状強化材としては、例えばチタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、ワラストナイトなどが挙げられる。ガラス繊維としては、0.1mm〜100mmの長さを有するチョップドストランドまたは連続フィラメント繊維を使用することが可能である。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。円形断面ガラス繊維の直径は20μm以下、好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、物性面や流動性より非円形断面のガラス繊維が好ましい。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円形、略長円形、略繭形であるものをも含み、偏平度が1.5〜8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1〜20μm、長径2〜100μm程度である。また、ガラス繊維は繊維束となって、繊維長1〜20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。さらには、ポリエステル樹脂組成物の表面反射率を高めるためには、共重合ポリエステル樹脂との屈折率差が大きいことが好ましいため、ガラス組成の変更や表面処理により、屈折率を高めたものを使用することが好ましい。
強化材(C)の割合は、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0〜100質量部、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜60質量部である。強化材(C)は必須成分ではないが、その割合が5質量部以上であると、成形品の機械的強度が向上して好ましい。強化材(C)の割合が上記上限を超えると、表面反射率、成形加工性が低下する傾向がある。
非繊維状又は非針状充填材(D)としては、目的別には強化用フィラーや導電性フィラー、磁性フィラー、難燃フィラー、熱伝導フィラー、熱黄変抑制用フィラーなどが挙げられ、具体的にはガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン、シリカ、タルク、カオリン、マイカ、アルミナ、ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉄、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、赤燐、炭酸カルシウム、酢酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ホウ酸亜鉛、硫酸バリウム、および針状ではないワラストナイト、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等が挙げられる。これら充填材は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。これらの中では、タルクが結晶化を速める効果を有し、成形性が向上することから好ましい。充填材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能であるが、樹脂組成物の機械的強度の観点から、0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。タルクを使用する場合、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましく、より好ましくは、0.5〜3質量部である。また、繊維状強化材、充填材は共重合ポリエステル樹脂との親和性を向上させるため、有機処理やカップリング剤処理したものを使用するか、または溶融コンパウンド時にカップリング剤と併用することが好ましく、カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤のいずれを使用しても良いが、その中でも、特にアミノシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤が好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物には、従来のLED反射板用ポリエステル樹脂組成物の各種添加剤を使用することができる。添加剤としては、安定剤、衝撃改良材、難燃剤、離型剤、摺動性改良材、着色剤、蛍光増白剤、可塑剤、結晶核剤、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
安定剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などの有機系酸化防止剤や熱安定剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、イミダゾール系等の光安定剤や紫外線吸収剤、金属不活性化剤、銅化合物などが挙げられる。銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、塩化第二銅、臭化第二銅、ヨウ化第二銅、燐酸第二銅、ピロリン酸第二銅、硫化銅、硝酸銅、酢酸銅などの有機カルボン酸の銅塩などを用いることができる。さらに銅化合物以外の構成成分としては、ハロゲン化アルカリ金属化合物を含有することが好ましく、ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。これら添加剤は、1種のみの単独使用だけではなく、数種を組み合わせて用いても良い。安定剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大5質量部を添加することが可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物には、共重合ポリエステル樹脂(A)とは異なる熱可塑性樹脂を添加しても良い。例えば、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素樹脂、アラミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリサルホン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、溶融混練により、溶融状態でブレンドすることも可能であるが、熱可塑性樹脂を繊維状、粒子状にし、本発明のポリアミド樹脂組成物に分散しても良い。熱可塑性樹脂の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能である。
衝撃改良剤としては、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、アクリル酸エステル共重合体等のビニルポリマー系樹脂、ポリブチレンテレフタレートまたはポリブチレンナフタレートをハードセグメントとし、ポリテトラメチレングリコールまたはポリカプロラクトンまたはポリカーボネートジオールをソフトセグメントとしたポリエステルブロック共重合体、ナイロンエラストマー、ウレタンエラストマー、アクリルエラストマー、シリコンゴム、フッ素系ゴム、異なる2種のポリマーより構成されたコアシェル構造を有するポリマー粒子などが挙げられる。衝撃改良剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大30質量部を添加することが可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物に対して、共重合ポリエステル樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂および耐衝撃改良材を添加する場合にはポリエステルと反応可能な反応性基が共重合されていることが好ましく、反応性基としてはポリエステル樹脂の末端基である水酸基及び/又はカルボキシル基と反応しうる基である。具体的には酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、アミノ基、イソシアネート基等が例示されるが、それらの中でもエポキシ基、イソシアネート基が最も反応性に優れている。このようにポリエステル樹脂と反応する反応性基を有する熱可塑性樹脂はポリエステル中に微分散し、微分散するがゆえに粒子間の距離が短くなり耐衝撃性が大幅に改良されるという報告もある。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤と難燃助剤の組み合わせが良く、ハロゲン系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノール型エポキシ系重合体、臭素化スチレン無水マレイン酸重合体、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、デカブロモジフェニルエーテル、デカブロモビフェニル、臭素化ポリカーボネート、パークロロシクロペンタデカン及び臭素化架橋芳香族重合体等が好ましく、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、モンモリロナイトなどの層状ケイ酸塩、フッ素系ポリマー、シリコーンなどが挙げられる。中でも、熱安定性の面より、ハロゲン系難燃剤としては、ジブロムポリスチレン、難燃助剤としては、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、錫酸亜鉛のいずれかとの組み合わせが好ましい。また、非ハロゲン系難燃剤としては、メラミンシアヌレート、赤リン、ホスフィン酸の金属塩、含窒素リン酸系の化合物が挙げられる。特に、ホスフィン酸金属塩と含窒素リン酸系化合物との組み合わせが好ましく、含窒素リン酸系化合物としては、メラミンまたは、メラム、メレム、メロンのようなメラミンの縮合物とポリリン酸の反応生成物またはそれらの混合物を含む。その他難燃剤、難燃助剤としては、これら難燃剤の使用の際、金型等の金属腐食防止として、ハイドロタルサイト系化合物やアルカリ化合物の添加が好ましい。難燃剤の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して最大50質量部を添加することが可能である。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコーン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸などが挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミドなどが挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。離型材の添加量は最適な量を選択すれば良いが、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して最大5質量部を添加することが可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、DSC測定において融解ピーク温度(Tm)が280℃以上であることが好ましく、より好ましくは、290℃以上、更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは310℃以上、最も好ましくは320℃以上である。本発明のポリエステル樹脂組成物のTmの上限は、次の理由により340℃以下であることが好ましい。Tmが上記上限を超える場合、本発明のポリエステル樹脂組成物を射出成形する際に必要となる加工温度が極めて高くなるため、加工時にポリエステル樹脂組成物が分解し、目的の物性や外観が得られない場合がある。逆に、Tmが上記下限未満の場合、結晶化速度が遅くなり、いずれも成形が困難になる場合があり、さらには、ハンダ耐熱性の低下を招く恐れがある。Tmが310℃以上であると、280℃のリフローハンダ耐熱性を満足し、金/錫共晶ハンダ工程にも適応可能になるので好ましい。
さらに、本発明のポリエステル樹脂組成物は、DSC測定において融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が40℃以下であることが好ましく、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。降温結晶化温度(Tc2)とは、DSC測定に於いて、共重合ポリエステル樹脂の融点より10℃以上高い温度から降温させた際に、結晶化し始める温度である。融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)は、下記実施例の項に記載された方法で測定される。融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が40℃以下では、容易に結晶化が進行し、寸法安定性や物性などを十分に発揮することができる。一方、融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)差が40℃を超える場合、LED用反射板は射出成形の短いサイクルで成形するため、十分に結晶化が進まないことがあり、離型不足等の成形難を引き起こしたり、十分に結晶化が終了していないため、後工程の加熱時に変形や結晶収縮が発生し、封止材やリードフレームから剥離する問題が発生し、信頼性に欠ける。
本発明における共重合ポリエステル樹脂(A)は、高融点や成形性に加え、低吸水性や流動性のバランスに優れ、さらには耐光性に優れる。このため、かかる共重合ポリエステル樹脂(A)から得られる本発明のポリエステル樹脂組成物は、表面実装型LEDの反射板の成形においては、280℃以上の高融点、低吸水であることに加え、薄肉、ハイサイクルな成形が可能である。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、上述の各構成成分を従来公知の方法で配合することにより製造されることができる。例えば、共重合ポリエステル樹脂(A)の重縮合反応時に各成分を添加したり、共重合ポリエステル樹脂(A)とその他の成分をドライブレンドしたり、または、二軸スクリュー型の押出機を用いて各構成成分を溶融混練する方法を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、以下の方法によって測定したものである。
(1)共重合ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中、30℃での溶液粘度から求めた。
(2)酸価
共重合ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに加熱溶解した後、0.1NのNaOHのメタノール/ベンジルアルコール(1/9容積比)の溶液を使用して滴定して求めた。
(3)共重合ポリエステル樹脂の融点、および樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm)、降温結晶化温度(Tc2)
セイコ−電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定した。昇温速度20℃/分で昇温し、330℃で3分間保持したのち、330℃から130℃までを10℃/分で降温した。昇温時に観察される融解ピ−クの頂点温度を融点・Tm、降温時に観察される結晶化ピ−クの頂点温度を降温結晶化温度(Tc2)とした。
(4)成形性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は120℃に設定し、フィルムゲートを有する縦100mm、横100mm、厚み1mmtの平板作成用金型を使用し、射出成形を実施した。射出速度50mm/秒、保圧30MPa、射出時間10秒、冷却時間10秒で成型を行い、成形性の良悪は以下のような評価を行った。
○:問題なく成型品が得られる。
△:時々スプルーが金型に残る。
×:離型性が不十分であり、成型品が金型に貼り付いたり変形する。
(5)ハンダ耐熱性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、長さ127mm、幅12.6mm、厚み0.8mmtのUL燃焼試験用テストピースを射出成形し、試験片を作製した。試験片は85℃、85%RH(相対湿度)の雰囲気中に72時間放置した。試験片はエアリフロー炉中(エイテック製 AIS−20−82C)、室温から150℃まで60秒かけて昇温させ予備加熱を行った後、190℃まで0.5℃/分の昇温速度でプレヒートを実施した。その後、100℃/分の速度で所定の設定温度まで昇温し、所定の温度で10秒間保持した後、冷却を行った。設定温度は240℃から5℃おきに増加させ、表面の膨れや変形が発生しなかった最高の設定温度をリフロー耐熱温度とし、ハンダ耐熱性の指標として用いた。
◎:リフロー耐熱温度が280℃以上
○:リフロー耐熱温度が260℃以上280℃未満
×:リフロー耐熱温度が260℃未満
(6)拡散反射率
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片を用いて、日立製作所製の自記分光光度計「U3500」に同社製の積分球を設置し、350nmから800nmの波長の反射率を測定した。反射率の比較には460nmの波長における拡散反射率を求めた。リファレンスには硫酸バリウムを用いた。
(7)飽和吸水率
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み1mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片を80℃熱水中に50時間浸漬させ、飽和吸水時及び乾燥時の重量から以下の式より飽和吸水率を求めた。
飽和吸水率(%)={(飽和吸水時の重量−乾燥時の重量)/乾燥時の重量}×100
(8)流動性
東芝機械製射出成形機IS−100を用い、シリンダー温度は330℃、金型温度は120℃に設定し、射出圧設定値40%、射出速度設定値40%、計量35mm、射出時間6秒、冷却時間10秒の条件で、幅1mm、厚み0.5mmの流動長測定用金型で射出成形し、評価用試験片を作製した。流動性の評価として、この試験片の流動長さ(mm)を測定した。
(9)シリコーン密着性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片の片面に、シリコーン封止材(信越シリコーン社製、ASP−1110、封止材硬度D60)をコーティング厚み約100μmになるようにコーティングし、100℃×1時間のプレヒーティング後、150℃×4時間の硬化処理をして試験片の片面に封止材皮膜を形成させた。
次いで、試験片上の封止材皮膜に対して、JIS K5400に基づく碁盤目試験(1mm幅クロスカット100マス)で密着性を評価した。
○:剥離マス目数10以下
×:剥離試験前のマス目形成時に剥離あり
(10)耐光性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片について、超促進耐候試験機「アイスーパーUVテスターSUV−F11」を用い、63℃50%RHの環境下、50mW/cmの照度でUV照射を実施した。試験片の波長460nmの光反射率を、照射前と照射60時間後に測定した。照射前試験片の光反射率に対する、照射後試験片の光反射率の保持率を下記の基準で評価した。
○:保持率90%以上
△:保持率90%未満〜85%以上
×:保持率85%未満
(11)耐熱黄変性
東芝機械製射出成形機EC−100を用い、シリンダー温度は樹脂の融点+20℃、金型温度は140℃に設定し、縦100mm、横100mm、厚み2mmの平板を射出成形し、評価用試験片を作製した。この試験片を用いて、熱風乾燥機にて150℃で2時間処理して、目視にて黄変性を確認した。
○:変化なし
△:若干黄変する
×:黄変する
<合成例1>
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルを3542g、高純度ジメチルテレフタル酸を1409g、酸成分の3倍モル量のエチレングリコール、酢酸マンガン2g、二酸化ゲルマニウム0.86gを仕込みエステル交換後、60分間かけて300℃まで昇温しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに310℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られた共重合ポリエステルの極限粘度は、0.60dl/g、樹脂組成は、H−NMR測定により、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が65モル%、テレフタル酸が35モル%、エチレングリコールが98.2モル%、ジエチレングリコールが1.8モル%であった。得られた共重合ポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
(合成例2〜7)
使用する原料の量や種類を変更する以外は、合成例1の共重合ポリエステル樹脂の重合と同様にして、各共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた各共重合ポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。なお、ジエチレングリコールは、エチレングリコールが縮合して副生したものである。
(合成例8)
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジメチルを3542g、高純度ジメチルテレフタル酸を1400g、酸成分の3倍モル量のエチレングリコール、酢酸マンガン2g、二酸化ゲルマニウム0.86gを仕込みエステル交換後、高純度テレフタル酸を8g添加して、60分間かけて300℃まで昇温後しつつ、反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに310℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られた共重合ポリエステルの極限粘度は、0.60dl/g、樹脂組成は、H−NMR測定により、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が65モル%、テレフタル酸が35モル%、エチレングリコールが98.2モル%、ジエチレングリコールが1.8モル%であった。得られた共重合ポリエステル樹脂の特性値などを表1に示す。
(比較合成例1)
攪拌機付き20リッターステンレス製オートクレーブに、高純度テレフタル酸とその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下250℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を行い、エステル化率が約95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物に重合触媒として、二酸化ゲルマニウム(Geとして100ppm)を加え、次いで、窒素雰囲気下、常圧にて250℃で10分間攪拌した。その後、60分間かけて280℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として、さらに280℃、13.3Paで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを水中にストランド状に吐出して冷却後、カッターで切断して長さ約3mm、直径約2mmのシリンダー形状のペレットを得た。得られたPETのIVは0.61dl/gで、樹脂組成は、H−NMR測定により、テレフタル酸が100モル%、エチレングリコールが98.0モル%、ジエチレングリコールが2.0モル%であった。得られたポリエステル樹脂の特性値などを表2に示す。
(比較合成例2〜4)
使用する原料の種類を変更する以外は、比較合成例1のポリエステル樹脂の重合と同様にして、各ポリエステル樹脂を得た。得られた各ポリエステル樹脂の特性値などを表2に示す。
(比較合成例5:ポリアミド樹脂)
テレフタル酸3272.9g(19.70モル)、1,9−ノナンジアミン2849.2g(18.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン316.58g(2.0モル)、安息香酸73.27g(0.60モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物6.5g(原料に対して0.1重量%)および蒸留水6リットルを内容積20リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間撹拌し、2時間かけて内部温度を210℃に昇温した。この時、オートクレーブは22kg/cmまで昇圧した。そのまま1時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を22kg/cmに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を10kg/cmまで下げ、更に1時間反応させて、極限粘度[η]が0.25dl/gのプレポリマーを得た。これを、100℃、減圧下で12時間乾燥し、2mm以下の大きさまで粉砕した。これを230℃、0.1mmHg下にて、10時間固相重合し、融点が310℃、極限粘度[η]が1.33dl/g、末端の封止率が90%である白色のポリアミドを得た。
(実施例1〜11、比較例1〜5)
表3、4に記載の成分と質量割合で、コペリオン(株)製二軸押出機STS−35を用いて、樹脂の融点+15℃で溶融混練し、実施例1〜11、比較例1〜5のポリエステル樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物を得た。表3、4中、共重合ポリエステル樹脂以外の使用材料は以下の通りである。
酸化チタン(B):石原産業(株)製 タイペークCR−60、ルチル型TiO、平均粒径0.2μm
強化材(C):ガラス繊維(日東紡績(株)製、CS−3J−324)、針状ワラスト((株)NYCO製、NYGLOS8)
充填材(D):タルク(林化成(株)製 ミクロンホワイト5000A)
離型剤:ステアリン酸マグネシウム
安定剤:ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャリティーケミカルズ製、イルガノックス1010)
実施例1〜11、比較例1〜5で得られたポリエステル樹脂組成物、ポリアミド樹脂組成物を各種特性の評価に供した。その結果を表3、4に示す。
表3から、ポリエステル樹脂組成物のDSCによる融解ピーク温度が280℃以上の場合は、リフローハンダ工程に適応可能であり、さらに融解ピーク温度が310℃を超える場合は、リフロー耐熱温度が280℃以上であることから、金/錫共晶ハンダ工程にも適応可能なハンダ耐熱性を示すとともに、LED用途で重要な特性である封止材との密着性、表面反射率に優れ、さらには成形性、流動性、寸法安定性、低吸水性、耐光性にも優れるという、格別な効果が確認できた。一方、表4から、比較例では、これら特性を全て満足させることはできなかった。比較例5のポリアミド樹脂は高融点であるが、アミド構造に起因する吸水性のため、リフロー耐熱温度が280℃以上を満足できなかった。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、耐熱性、成形性、流動性、低吸水性に優れるのみならず、LED用途での封止材との密着性に優れ、さらには耐光性にも優れる特定の共重合ポリエステル樹脂を使用しているので、必要な特性を高度に満足しながら、表面実装型LED用反射板を工業的に有利に製造することができる。

Claims (9)

  1. 共重合ポリエステル樹脂(A)、酸化チタン(B)、繊維状強化材及び針状強化材からなる群より選択される少なくとも1種の強化材(C)、及び非繊維状又は非針状充填材(D)を含有し、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対して酸化チタン(B)0.5〜100質量部、強化材(C)0〜100質量部、及び非繊維状又は非針状充填材(D)0〜50質量部の割合で含有するポリエステル樹脂組成物であって、共重合ポリエステル樹脂(A)が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸とその他のジカルボン酸からなる酸成分とグリコール成分を構成成分とし、融点が280℃以上であることを特徴とする表面実装型LED用反射板に使用するポリエステル樹脂組成物。
  2. 共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分の30モル%以上が、4,4’−ビフェニルジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
  3. 共重合ポリエステル樹脂(A)を構成するその他のジカルボン酸が、テレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
  4. 共重合ポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分の30〜90モル%が4,4’−ビフェニルジカルボン酸であり、その他のジカルボン酸がテレフタル酸及び/又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、グリコール成分がエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオールから選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  5. 非繊維状又は非針状充填材(D)がタルクであり、共重合ポリエステル樹脂(A)100質量部に対してタルク0.1〜5質量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  6. ハンダリフロー耐熱温度が260℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  7. ハンダリフロー耐熱温度が280℃以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  8. ポリエステル樹脂組成物の融解ピーク温度(Tm)と降温結晶化温度(Tc2)の差が、40℃以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を用いて成形して得られることを特徴とする表面実装型LED用反射板。
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