JPWO2013069121A1 - 鋼の連続鋳造装置 - Google Patents
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Abstract
この鋼の連続鋳造装置は、一対の長辺壁及び一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と;この鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと;前記各長辺壁の各外側面に沿って配置され、前記鋳型内にある前記溶鋼の上部を攪拌する電磁攪拌装置と;を備える。前記各長辺壁の、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、平面視した場合に前記電磁攪拌装置に向かって凸に湾曲した湾曲部が形成され、かつ前記各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有する。前記湾曲部の内側面を平面視した場合に最も深く窪んだ位置である頂部と前記浸漬ノズルの外周面との間の最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下である。
Description
本発明は、鋳型内に溶鋼を供給して鋳片を製造する鋼の連続鋳造装置に関する。
鋼の連続鋳造において、鋳片の表面性状を改善するために、従来から、鋳型の上部近傍に設置された電磁コイルを有する電磁攪拌装置を用いて、この鋳型内の溶鋼を電磁攪拌することが行われている。
この電磁攪拌では、例えば鋳型をなす一対の長辺壁に沿って電磁攪拌装置が配置される。そして、浸漬ノズルから鋳型内に溶鋼が吐出されると、電磁攪拌装置に電流を供給して、鋳型内の溶鋼の上部分に対して推力が付与される。この推力によって溶鋼が水平面内で攪拌されて、この溶鋼の旋回流が形成される。この旋回流によって、鋳型内上部のメニスカス近傍の介在物、気泡等が、鋳型内の側面に形成された凝固シェルに捕捉されてしまうのを抑制している。
しかしながら、鋳型内に浸漬ノズルが浸漬されているため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域がその他の領域よりも狭くなっている。このため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域では、それ以外の領域に比べると、溶鋼が流れ難くなる。
また、鋳型内の浸漬ノズルの周囲には介在物等が付着して堆積し易い。このように堆積した付着物は、その厚みが数10mmに達する場合もある。このため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域が他の部位よりも狭くなる。そうすると、前記した旋回流の流路が部分的に狭くなり、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域においては、溶鋼が流れ難くなる。
また、鋳型内の浸漬ノズルの周囲には介在物等が付着して堆積し易い。このように堆積した付着物は、その厚みが数10mmに達する場合もある。このため、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域が他の部位よりも狭くなる。そうすると、前記した旋回流の流路が部分的に狭くなり、長辺壁と浸漬ノズルとの間の領域においては、溶鋼が流れ難くなる。
そこで、前記した電磁攪拌装置を用いると共に、炉内側面が平らな平行型の鋳型に代えて、図7に示したような、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105が、各々電磁攪拌装置106、107側に向かって凸に湾曲した、いわゆる異形鋳型を用いることが提案されている(特許文献1)。なお、同図7において長辺壁101、102と電磁攪拌装置106、107との間に配置されているのは、長辺壁101、102を冷却する冷却水の流路(図示せず)が設けられたステンレス鋼製のバックプレート108、109である。
上記異形鋳型によれば、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105が、各々、電磁攪拌装置106、107側に凸に湾曲しているので、浸漬ノズル103と、長辺壁101、102との間の最短水平距離が、従来の平行鋳型よりも長くなり、その分、旋回流110、111の流路を広く確保することができ、溶鋼が流れやすくなっている。
しかしながら、前記した従来技術では、長辺壁101、102における浸漬ノズル103と対向する面104、105を凹状に湾曲させるために、銅製の長辺壁101、102の中央部を削っている。そのため、長辺壁101、102の厚みが、湾曲した面104、105の部分で、極端に薄くなっている。一般に電磁攪拌装置106、107による電磁場は、交流磁場であるから、導体内で磁場が減衰する。従って、これら湾曲した面104、105の部分では、直線状の他の部分よりも磁場の減衰が小さいため、電磁力が強くなり、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の領域の撹拌流の流速が、他の領域よりも速くなる。その結果、撹拌流110、111の流速が部分的に不均一となり、長辺壁101、102における撹拌流110、111の下流側の領域112、113で流れの乱れや停滞域が発生し、介在物、気泡等が凝固シェルに捕捉されやすくなるという問題があった。そのため、期待したほどの鋼の品質の向上が得られなかった。
さらに本発明者らが調べたところ、前記したように単に湾曲した面104、105を形成して撹拌流110、111を流れやすくしただけでは、介在物が、長辺壁101、102の凝固シェルに捕捉されるのを抑制できないことが分かった。すなわち、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の水平距離を長くすれば、気泡の捕捉は抑制できるものの、湾曲した面104、105の部分では、やはり電磁力が強くなり、湾曲した面104、105と浸漬ノズル103との間の領域を流れる撹拌流の流速が、他の領域を流れる攪拌流の流速よりも速くなるため、撹拌流110、111の下流側の領域112、113で流れの乱れや停滞域が発生し、介在物が凝固シェルに捕捉されやすくなるという問題が解決しないことが判明した。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電磁攪拌装置を有する鋼の連続鋳造装置において、異形鋳型であっても、鋳型内の上部の溶鋼の流速を均一なものとし、さらに鋳型内の凹状に湾曲した面と浸漬ノズルとの間の水平距離を適切なものとすることで、鋳造される鋳片の品質を向上させることを目的としている。
前記の目的を達成するため、本発明は、以下の手段を採用した。
(1)すなわち、本発明の一態様に係る鋼の連続鋳造装置は、一対の長辺壁及び一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と;この鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと;前記各長辺壁の各外側面に沿って配置され、前記鋳型内にある前記溶鋼の上部を攪拌する電磁攪拌装置と;を備え、前記各長辺壁の、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、平面視した場合に前記電磁攪拌装置に向かって凸に湾曲した湾曲部が形成され、かつ前記各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有し;前記湾曲部の内側面を平面視した場合に最も深く窪んだ位置である頂部と前記浸漬ノズルの外周面との間の最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下である。
(1)すなわち、本発明の一態様に係る鋼の連続鋳造装置は、一対の長辺壁及び一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と;この鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと;前記各長辺壁の各外側面に沿って配置され、前記鋳型内にある前記溶鋼の上部を攪拌する電磁攪拌装置と;を備え、前記各長辺壁の、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、平面視した場合に前記電磁攪拌装置に向かって凸に湾曲した湾曲部が形成され、かつ前記各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有し;前記湾曲部の内側面を平面視した場合に最も深く窪んだ位置である頂部と前記浸漬ノズルの外周面との間の最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下である。
(2)上記(1)の態様において、前記各電磁攪拌装置の下方に配置された電磁ブレーキ装置をさらに備え;この電磁ブレーキ装置が、平面視した場合に、前記各長辺壁に沿った鋳型幅方向に一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、前記各短辺壁に沿った鋳型厚み方向に付与する;構成を採用してもよい。
また、上記(1)の態様において、前記最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、50mm以上かつ75mm以下であることがより好ましい。
また、上記(1)の態様において、前記最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、50mm以上かつ75mm以下であることがより好ましい。
上記(1)に記載の態様によれば、各長辺壁は、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、前記電磁攪拌装置側に向かって凸に湾曲した湾曲部を有し、かつ各長辺壁はこの湾曲部を含めて一様な厚みを持って構成されているので、電磁攪拌装置により発生される電磁力は、湾曲部及びそれ以外の部分において共に一様なものとなり、その結果、撹拌流の流速を均一なものとすることができる。すなわち、各長辺壁を平面視した場合における前記電磁力の強度分布が、湾曲部及びこの湾曲部以外の部分とで同じとなるので、従来のような、湾曲部に相当する箇所で部分的に電磁力が強まることを防げる。
したがって、従来のような流れの乱れや停滞域の発生を抑えることが可能であり、気泡等が凝固シェルに捕捉されやすくなることを抑制できる。
したがって、従来のような流れの乱れや停滞域の発生を抑えることが可能であり、気泡等が凝固シェルに捕捉されやすくなることを抑制できる。
また、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離は、この連続鋳造装置の高さ方向で見た場合に、前記電磁攪拌装置の下端部の位置から、前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下に設定したので、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の領域においても、溶鋼の円滑でかつ均一な流れを確保することができる。
すなわち、本発明者らが新たに得た知見では、湾曲部の頂部及び浸漬ノズル間の最短水平距離が30mm未満であると、湾曲領域において溶鋼が流れ難くなり、溶鋼中の気泡等が凝固シェルに捕捉され易くなる。一方、前記最短水平距離が80mm超であると、湾曲領域において溶鋼の均一な流れを確保し難くなり、溶鋼の流速が遅い領域では、溶鋼中の介在物が凝固シェルに捕捉され易くなる。
本発明では、このような知見に基づいて、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を30mm以上かつ80mm以下に設定したので、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の湾曲領域において、溶鋼の撹拌流の円滑でかつ均一な流れを確保して、溶鋼中の気泡が凝固シェルに捕捉されることを抑制できる。
また、そのように湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を30mm〜80mmに設定する高さ方向の範囲は、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲までとしている。これは、電磁攪拌装置が発生させる電磁力によって溶鋼の直接撹拌される部分が、電磁攪拌装置の下端部から上端部に対応する部分であるが、実際の操業時においては、電磁攪拌装置の上端部よりも高い位置にメニスカス面が位置することがあるためである。また、一般的に、電磁攪拌装置の上端部よりも高い位置にメニスカス面が位置する場合、その高さは、概ね電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までである。したがって、湾曲部の頂部と浸漬ノズルとの間の最短水平距離を、30mm以上かつ80mm以下に設定する高さ方向の範囲は、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までとしている。
なお、長辺壁が持つ一様な厚みとは、ボルト穴や冷却水溝等が形成されている部分を除き、厚みの変動による溶鋼内への電磁場の浸透度合いの変化が、許容範囲の誤差となる10%未満厚みのことを言う。これについて説明すると、長辺壁の外側から所定の磁束密度を持つ磁場を鋳型内に向かって与えた場合、鋳型の内部に誘起される磁場強度が、長辺壁の厚みの大小に応じて損失を生じる。すなわち、長辺壁の厚みが変わると、鋳型内への磁場の浸透深さが変化する。長辺壁が厚くなると磁場が浸透しにくくなる。よって、前記損失の大きさに伴って鋳型内の磁場強度が変動するが、この変動が長辺壁の壁面に沿った水平方向で見た場合に10%未満となるように、長辺壁の厚みが一様になっている。
また、長辺壁が持つ一様な厚みの高さ方向の範囲は、電磁撹拌装置の作用効果からして、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲であればよい。
なお、「長辺壁が持つ一様な厚み」についてさらに補足説明する。鉛直方向に沿って配置された長辺壁を平面視した場合に、湾曲部の部分における厚みと、この湾曲部以外の隣接部分における厚みとの相対関係が特に重要となる。すなわち、上記(1)における「各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有し」の意味であるが、湾曲部の部分における厚みをt1とし、この湾曲部以外の部分における厚みをt2とした場合に、t1がt2の±10%以内である(0.9×t2≦t1≦1.1×t2である)ことを意味する。なお、t1=t2であることが最も好ましい。
また、長辺壁が持つ一様な厚みの高さ方向の範囲は、電磁撹拌装置の作用効果からして、電磁攪拌装置の下端部から、電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲であればよい。
なお、「長辺壁が持つ一様な厚み」についてさらに補足説明する。鉛直方向に沿って配置された長辺壁を平面視した場合に、湾曲部の部分における厚みと、この湾曲部以外の隣接部分における厚みとの相対関係が特に重要となる。すなわち、上記(1)における「各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有し」の意味であるが、湾曲部の部分における厚みをt1とし、この湾曲部以外の部分における厚みをt2とした場合に、t1がt2の±10%以内である(0.9×t2≦t1≦1.1×t2である)ことを意味する。なお、t1=t2であることが最も好ましい。
また、上記(2)に記載したように、この鋼の連続鋳造装置において、いわゆる電磁ブレーキ装置を電磁攪拌装置と併用してもよい。すなわち、前記電磁攪拌装置の下方に配置され、前記鋳型の長辺壁に沿った鋳型幅方向に一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、前記鋳型の短辺壁に沿った鋳型厚み方向に付与する電磁ブレーキ装置をさらに備えていてもよい。
この場合、浸漬ノズルから吐出される溶鋼中の気泡、介在物の浮上を促進させ、溶鋼内に気泡や介在物が浮遊して、これが鋳造される鋳片内に残留して品質の低下を招く事を抑えることができる。よって、さらに鋳片の品質を向上させることができる。
なお、上記(2)における「一様な磁束密度」について補足説明すると、鋳型を平面視した上で長辺壁に沿った鋳型幅方向での磁束密度分布を見た場合に、電磁ブレーキ装置のコイル部分の長さ寸法内における磁束密度のばらつきが、その平均に対して±30%以内であることを意味する。
この場合、浸漬ノズルから吐出される溶鋼中の気泡、介在物の浮上を促進させ、溶鋼内に気泡や介在物が浮遊して、これが鋳造される鋳片内に残留して品質の低下を招く事を抑えることができる。よって、さらに鋳片の品質を向上させることができる。
なお、上記(2)における「一様な磁束密度」について補足説明すると、鋳型を平面視した上で長辺壁に沿った鋳型幅方向での磁束密度分布を見た場合に、電磁ブレーキ装置のコイル部分の長さ寸法内における磁束密度のばらつきが、その平均に対して±30%以内であることを意味する。
以上説明のように、本発明によれば、鋳造される鋳片に含まれる気泡等を減少させて、その品質を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態にかかる鋼の連続鋳造装置1の鋳型近傍の構成を、平面視で模式的に示した説明図であり、図2は、同じく正面の断面を模式的に示した説明図であり、図3は、同じく側面の断面を模式的に示した説明図である。
連続鋳造装置1は、図1に示すように、例えば、平面視で略長方形の鋳型2を有している。鋳型2は、一対の長辺壁3a、3bと、一対の短辺壁4a、4bとを有している。長辺壁3a、3b、短辺壁4a、4bはいずれも銅板によって構成され、それらの外側には、長辺壁3a、3b、短辺壁4a、4bを補強する非磁性体のオーステナイト系ステンレス製のバックプレート5a、5b、6a、6bが配置されている。すなわち、長辺壁3aの外側にはバックプレート5aが配置され、長辺壁3bの外側にはバックプレート5bが配置され、短辺壁4aの外側にはバックプレート6aが配置され、短辺壁4bの外側にはバックプレート6bが配置されている。
そしてバックプレート5a、5bの外側には、それぞれ電磁コイルを有する電磁撹拌装置7a、7bが配置されている。そして、電磁撹拌装置7a、7bの真下には、電磁ブレーキ装置8a、8bが配置されている。すなわち、バックプレート5aの外側には電磁撹拌装置7a及び電磁ブレーキ装置8aが配置され、なおかつ電磁ブレーキ装置8aが電磁撹拌装置7aの真下に配置されている。また、バックプレート5bの外側には電磁撹拌装置7b及び電磁ブレーキ装置8bが配置され、なおかつ電磁ブレーキ装置8bが電磁撹拌装置7bの真下に配置されている。
そしてバックプレート5a、5bの外側には、それぞれ電磁コイルを有する電磁撹拌装置7a、7bが配置されている。そして、電磁撹拌装置7a、7bの真下には、電磁ブレーキ装置8a、8bが配置されている。すなわち、バックプレート5aの外側には電磁撹拌装置7a及び電磁ブレーキ装置8aが配置され、なおかつ電磁ブレーキ装置8aが電磁撹拌装置7aの真下に配置されている。また、バックプレート5bの外側には電磁撹拌装置7b及び電磁ブレーキ装置8bが配置され、なおかつ電磁ブレーキ装置8bが電磁撹拌装置7bの真下に配置されている。
本実施の形態において、短辺壁4a、4bを平面視した場合の長さ(鋳造厚み)は、例えば50mm〜300mm程度である。この長さは、要求される鋳片幅によって決定され、薄幅鋳片であれば50mm〜80mm程度であり、中厚幅鋳片であれば80mm〜150mm程度であり、通常幅の鋳片であれば150mm〜300mm程度である。なお、長辺壁3a、3bに沿った水平方向(図1〜図3中のX方向)を鋳型幅方向といい、短辺壁4a、4bに沿った水平方向(図1、図3中のY方向)を鋳型厚み方向という。
長辺壁3a、3bを平面視した場合の各内側面の中央部には、電磁撹拌装置7a、7b側に向かって凸に湾曲した湾曲部11a、11bが形成されている。各湾曲部11a、11bは、後述する鋳型2内に設けられた浸漬ノズル21に対向する位置に形成されている。長辺壁3a、3bを平面視した場合におけるそれらの延在方向に沿った厚み分布は、湾曲部11a、11bの部分が、その両隣の直線状の部分と変わることがなく、水平方向に沿って一様な厚みを有するように成型されている。具体的には、たとえばプレス成型等によって、長辺壁3a、3bに、湾曲部11a、11bが形成されている。
さらに詳細に言うと、湾曲部11aは、長辺壁3aの内壁面が前記浸漬ノズル21より離間するよう湾曲した内側面11a1と、長辺壁3aの外壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した外側面11a2とにより形成されている。同様に、湾曲部11bは、長辺壁3bの内壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した内側面11b1と、長辺壁3bの外壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した外側面11b2とにより形成されている。
さらに詳細に言うと、湾曲部11aは、長辺壁3aの内壁面が前記浸漬ノズル21より離間するよう湾曲した内側面11a1と、長辺壁3aの外壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した外側面11a2とにより形成されている。同様に、湾曲部11bは、長辺壁3bの内壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した内側面11b1と、長辺壁3bの外壁面が前記浸漬ノズル21より離間するように湾曲した外側面11b2とにより形成されている。
長辺壁3a、3bが湾曲部11a、11bを含む全ての位置で一様な厚みを持っているため、長辺壁3a、3bの各外側面は、湾曲部11a、11bをなす上記の外側面11a2、11b2において、電磁撹拌装置7a、7b側に向かって凸に湾曲している。
なお、長辺壁3a、3bが持つ一様な厚みについてさらに補足説明すると、これら長辺壁3a、3bを平面視した場合において、湾曲部11a、11bにおける厚みをt1とし、この湾曲部11a、11b以外の両隣部分における厚みをt2とした場合に、t1がt2の±10%以内である(0.9×t2≦t1≦1.1×t2である)ことを意味する。なお、t1=t2であることが最も好ましい。
バックプレート5a、5bには、長辺壁3a、3bの各湾曲部11a、11bの各外側面11a2、11b2がなす湾曲形状と適合するように、その中央内側面が、電磁撹拌装置7a、7b側に向かって凸に湾曲した形状の部分を有している。ただし、バックプレート5a、5bにおける外側面、すなわち電磁撹拌装置7a、7b側を向いた面は、平坦(平面)に成型されている。
なお、長辺壁3a、3bが持つ一様な厚みについてさらに補足説明すると、これら長辺壁3a、3bを平面視した場合において、湾曲部11a、11bにおける厚みをt1とし、この湾曲部11a、11b以外の両隣部分における厚みをt2とした場合に、t1がt2の±10%以内である(0.9×t2≦t1≦1.1×t2である)ことを意味する。なお、t1=t2であることが最も好ましい。
バックプレート5a、5bには、長辺壁3a、3bの各湾曲部11a、11bの各外側面11a2、11b2がなす湾曲形状と適合するように、その中央内側面が、電磁撹拌装置7a、7b側に向かって凸に湾曲した形状の部分を有している。ただし、バックプレート5a、5bにおける外側面、すなわち電磁撹拌装置7a、7b側を向いた面は、平坦(平面)に成型されている。
なお通常、この種のバックプレートには、銅製の長辺壁を冷却するための冷却水流路がその内部に形成されているが、この流路をバックプレート5a、5bに形成するには、たとえばバックプレート5a、5bにおける長辺壁3a、3bと接する側の表面(内側面)に、溝状の流路を形成することで、容易に冷却水流路を形成することが可能である。すなわち、溝状の流路が内側面に形成されたバックプレート5a、5bを、それらの内側面が長辺壁3a、3bの外側面と密着するように重ね合わせて組み付けることで、溝状の流路を容易に形成することができる。
各湾曲部11a、11bは、たとえば図2及び図3に示すように、長辺壁3a、3bの各上端位置から下方に向かって、浸漬ノズル21に対向して形成される。湾曲部11a、11bの各下端位置は、浸漬ノズル21の下端位置と同じ高さでもよく、または、浸漬ノズル21の下端位置より下方になるように形成されていてもよい。湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間の空間(隙間)には、図1に示すように、各々、湾曲領域9a、9bが形成される。
湾曲部11a、11bは、それらの下端に行くにつれて次第に湾曲した部分が消失していく形状(すなわち、湾曲部11a、11bを形成する窪んだ部分が徐々に浅くなって消失していく形状)をなしている。本実施の形態では、図4にも示したように、たとえば長辺壁3aの内側面において、湾曲部11aとそれ以外の平坦部分との境界線は、湾曲部11aの下端部分では長辺壁3aの長さ方向と平行な直線状(図4中のX方向に沿った水平な直線SL)であり、湾曲部11aの両側縁部分では、長辺壁3aの高さ方向と平行な直線状(図4中のZ方向に沿った延長方向の直線VL)をなしている。
図5に示すように、湾曲部11a、11bを、それらの板厚方向に沿った断面で見た場合、それらの湾曲頂部(最も深く窪んだ箇所)と浸漬ノズル21の周面との間の最短水平距離Lは、湾曲部11a、11bの下端に向かうにつれて次第に窪んだ部分の深さが浅くなって消失していくテーパ形状であるため、高さ方向によってその長さが異なっている。本実施の形態では、電磁攪拌装置7a、7bの各下端部の位置から、この電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、前記最短水平距離Lが30mm〜80mmとなるように設定されている。なお、この最短水平距離Lとしては、ここで規定している30mm〜80mmが好ましいが、50mm以上かつ75mm以下であることがより好ましい。
すなわち、これを図5に即して説明すると、湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21の周面との間の最短水平距離Lは、電磁攪拌装置7a、7bの下端部の位置から、電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲Hにおいて、30mm〜80mmとなるように設定されている。図5中のhの長さは、50mmである。
湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21の周面との間の最短水平距離Lとして30mm〜80mmを確保するための、湾曲部11a、11bを形成する窪みの深さDは、長辺壁3a、3bの厚さにもよるが、バックプレート5a、5bの強度を考慮し、また電磁攪拌装置7a、7bが、溶鋼から位置的に遠ざかると電磁力そのものが弱くなってしまうため、全体の厚みを抑える点を考慮して、窪みの深さDを適宜、設定できる。窪みの深さDの上限としては、50mm以下、好ましくは40mm以下が例示できる。一方、窪みの深さDの下限としては、5mm以上、好ましくは10mm以上が例示できる。すなわち、深さDは、5mm以上かつ50mm以下であることが好ましく、10mm以上かつ40mm以下であることがより好ましい。
前記した浸漬ノズル21は、図3に示したように、鋳造時においては、その下部が鋳型2内の溶鋼Mに浸漬する。なお、同図3では、連続鋳造装置1内の構造を明瞭に示すために、溶鋼Mのハッチングを省略している。浸漬ノズル21の側面の下端近傍には、鋳型2内へ斜め下向きに溶鋼を吐出する吐出孔22が2箇所形成されている。これら吐出孔22は、鋳型2の短辺壁4a、4bのそれぞれに対向する位置に形成されている。各吐出孔22から吐出される吐出流23には、ノズル洗浄のために吹き込まれたArガスの気泡や、その他アルミナやスラグ系等の介在物などが含まれている。これら気泡や介在物は、メニスカス24近傍まで浮上する。なお、メニスカス24上には、溶融酸化物を有する溶融パウダー25が図示されない供給機構により供給されている。
鋳型2の内側面には、図3に示すように、溶鋼Mが冷却されて凝固した凝固シェル26が形成される。
電磁撹拌装置7a、7bは、それぞれ、電磁コイルを有し、図示されない電源より供給される交流電力を受けて電磁力を発生し、鋳型2内の上部にある溶鋼Mに対して推力を付与する。そして、この推力を受けた溶鋼Mは、鋳型2内で浸漬ノズル21の周囲を水平に旋回して溶鋼Mを撹拌する撹拌流を発生させる。この攪拌流によって、鋳型2内上部のメニスカス24近傍の介在物、気泡等が、鋳型2内の側面に形成された凝固シェル26により捕捉されてしまうのを抑制している。
電磁攪拌装置7a、7bそれぞれの下方に配置された、電磁石などによって構成される電磁ブレーキ装置8a、8bは、各吐出孔22から吐出された直後の溶鋼Mの吐出流23に対して、鋳型2の長辺壁3a、3bに沿った鋳型幅方向(図1、図2中のX方向)に亘ってほぼ一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、鋳型2の短辺壁4a、4bに沿った鋳型厚み方向(図1、図2中のY方向)に付与することができる。この直流磁界と各吐出孔22から吐出された溶鋼Mの吐出流23とによって、鋳型幅方向(図1、図2中のX方向)に向かう誘導電流が発生し、この誘導電流と前記直流磁界によって、吐出流23の近傍に、この吐出流23と逆向きに向かう対向流が形成される。この対向流によって、吐出流23中の気泡や介在部が、溶鋼M内に深く侵入することを抑制でき、また、これら気泡や介在部の浮上を促進させ、凝固シェル26に捕捉されることを抑えることができる。
なお、上記「一様な磁束密度」について補足説明すると、鋳型2を平面視した上で長辺壁3a、3bに沿った鋳型幅方向での磁束密度分布を見た場合に、電磁ブレーキ装置8a、8bのコイル部分の長さ寸法内における磁束密度のばらつきが、その平均に対して±30%以内であることを意味する。
なお、上記「一様な磁束密度」について補足説明すると、鋳型2を平面視した上で長辺壁3a、3bに沿った鋳型幅方向での磁束密度分布を見た場合に、電磁ブレーキ装置8a、8bのコイル部分の長さ寸法内における磁束密度のばらつきが、その平均に対して±30%以内であることを意味する。
本実施の形態にかかる連続鋳造装置1は、以上のように構成されている。次に、この連続鋳造装置1を用いた、溶鋼Mの連続鋳造方法について説明する。
先ず、浸漬ノズル21内にArガスを吹き込みながら、浸漬ノズル21の各吐出孔22から鋳型2内に溶鋼Mを吐出する。溶鋼Mは斜め下方に向かって吐出され、各吐出孔22から鋳型2の短辺壁4a、4bに向かって吐出流23が形成される。これら吐出流23にはArガスの気泡やその他の介在物が含まれており、これらが鋳型2内の溶鋼M中に浮遊し、やがて、それらと溶鋼Mとの比重差による浮力によって上昇する。
そして、浸漬ノズル21から溶鋼Mを吐出すると同時に、電磁ブレーキ装置8a、8bを作動させても良い。これら電磁ブレーキ装置8a、8bを用いる場合は、溶鋼M内に、吐出流23の流れと逆向きの対向流が形成される。その結果、前記したように、吐出流23内の気泡やその他の介在物が、溶鋼M内に深く侵入することを抑制でき、また浸漬ノズル21の周囲への拡散が抑えられ、浸漬ノズル21近傍から、前記対向流に乗って、メニスカス24近傍まで浮上する。
そして、電磁ブレーキ装置8a、8bの作動と同時に、電磁攪拌装置7a、7bも作動させることで、前記したような、電磁力による電磁攪拌により、鋳型2内のメニスカス24近傍の溶鋼Mに攪拌流が形成される。そして、前記した対向流に乗ってメニスカス24近傍まで浮上した、Arガスの気泡等は、この攪拌流によって旋回し、鋳型2の凝固シェル26に捕捉されることなく、例えば溶融酸化物を有する溶融パウダー25に取り込まれて除去される。
鋳型2の長辺壁3a、3bの各上部中央位置に湾曲部11a、11bが形成されているので、これら湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間に、湾曲領域9a、9bが形成される。この時、長辺壁3a、3bは、この湾曲部11a、11bも含めて、一様な厚みを有しているので、前記した電磁攪拌装置7a、7bにより溶鋼Mに付与される電磁力の磁束密度が、(1)湾曲領域9a、9b内を流れる溶鋼Mにおいても、(2)湾曲領域9a、9b以外の位置で直線的に流れる溶鋼Mにおいても、互いに同程度となる。したがって、溶鋼Mの流れ方向に沿って均一な流速の攪拌流を形成することができるので、長辺壁3a、3bにおける撹拌流の下流側の領域(図7を用いて説明した従来技術における前記領域112、113)で流れの乱れや停滞域が発生することを抑えることができる。したがって、これら停滞域の発生に起因する、気泡等の凝固シェルへの捕捉を抑制することが可能になっている。
なお、長辺壁3a、3bが、湾曲部11a、11bも含めてその各位置で一様な厚みを有しているが、バックプレート5a、5bは、湾曲部11a、11bに対応する部分での厚みが薄くなっており、その分、磁束密度の不均一さが発生する。しかしながら、一般に電磁攪拌の電磁場は交流磁場であるため、導体内で減衰し、特に電気伝導度が高いほど減衰が激しい。そして、この種のバックプレート5a、5bは、非磁性体のオーステナイト系ステンレス製であるため、その電気伝導度は、銅製の長辺壁3a、3bよりもはるかに小さい。したがって、バックプレート5a、5bの厚みが部分的に薄くなっていてもその影響は殆どなく、湾曲領域9a、9b内を流れる溶鋼Mにおいても、均一な磁束密度が得られる。
実際に本発明者らがガウスメータで磁束密度を測定して調べたところ、以下のことが判った。すなわち、連続鋳造装置1の高さ方向に沿って見た場合、電磁攪拌装置7aの高さ中心位置でかつ、窪み深さDが30mmである湾曲部11aの湾曲頂部から、浸漬ノズル21側に向かって10mm寄った地点で、ガウスメータを用いて磁束密度を測定したところ、長辺壁3aの湾曲部11a以外の直線状の部分の磁束密度と比較しても、10%以下の変動しかない事が確認できた。すなわち、連続鋳造装置1の同一高さにおける磁束密度を複数箇所で測定してこれらを比較したところ、湾曲部11aに対応する上記地点における測定値と、湾曲部11aの両脇にある平坦な部分における測定値とでは、10%程度の差しか無いことが確認された。
参考のために言うと、窪み深さDが30mmの湾曲部を、従来技術にあるように、湾曲凹面だけ長辺壁を削って形成し、この湾曲部の厚さが薄くなった場合には、長辺壁の直線状の部分の磁束密度よりも40%程度、その磁束密度が高くなっていることも確認できた。すなわち、図7で示した従来技術の構造と同様に、長辺壁の外側面は平坦なままとし、内側面のみに、上記実施例と同様の湾曲凹面を形成し、磁束密度を計測して同様の評価を行った。その結果、湾曲部に対応する上記地点における測定値が、湾曲部の両脇にある平坦な部分における測定値よりも40%程度高くなっていることが確認された。したがって、本実施形態の効果がかかる点からも確認できる。
参考のために言うと、窪み深さDが30mmの湾曲部を、従来技術にあるように、湾曲凹面だけ長辺壁を削って形成し、この湾曲部の厚さが薄くなった場合には、長辺壁の直線状の部分の磁束密度よりも40%程度、その磁束密度が高くなっていることも確認できた。すなわち、図7で示した従来技術の構造と同様に、長辺壁の外側面は平坦なままとし、内側面のみに、上記実施例と同様の湾曲凹面を形成し、磁束密度を計測して同様の評価を行った。その結果、湾曲部に対応する上記地点における測定値が、湾曲部の両脇にある平坦な部分における測定値よりも40%程度高くなっていることが確認された。したがって、本実施形態の効果がかかる点からも確認できる。
図5を用いて説明すると、本実施の形態では、湾曲部11a、11bの湾曲頂部と浸漬ノズル21との間の最短水平距離Lが、電磁攪拌装置7a、7bの下端部から、電磁攪拌装置7a、7bの上端部よりも50mm高い位置までの範囲Hにおいて、30mm〜80mmとなるように設定されている。この構成によれば、湾曲領域9a、9bを流れる攪拌流の流速を均一にすることができ、溶鋼Mの円滑でかつ均一な流れを確保することができるので、鋳型2内で溶鋼Mを十分に攪拌することが可能になっている。したがって、気泡等が凝固シェル26で捕捉されることを、かかる点からも抑制できる。
さらに、本実施の形態では、電磁ブレーキ装置8a、8bも併用しているので、溶鋼M中の気泡等の介在物の浮上が促進されるともに、周囲への拡散が抑えられており、より一層、気泡等が凝固シェル26で捕捉をされることを抑制できる。
なお、本実施の形態では、湾曲部11a、11bの形状が、図2、図4に示したような、下端に行くにつれて湾曲部11aとその周囲との平坦部分の境界が、湾曲部11aの下端部分では長辺壁3aの長さ方向と平行な直線状(図2、図4の4中のX方向に沿った直線SL)であり、また湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向と平行な直線状(図2、図4中のZ方向に沿った直線VL)となる形状であった。しかしながら、湾曲部11a、11bの形状としては他の形状を採用してもよく、例えば図6に示したような、下端に行くにつれて湾曲部とそれ以外の平坦部分との境界線が、最下端の一点で収束して消失するような、いわゆる逆釣鐘形状の湾曲部11cとしてもよい。すなわち、図6に示すような、長辺壁3aを対向視した場合に下方に向かって先細りとなる半楕円形状の境界線を持つ湾曲部11cを採用しても良い。
以下、本発明の実施例に係る鋼の連続鋳造装置を用いた場合における、溶鋼に含まれるArガス気泡、および介在物を除去する効果について説明する。本実施例を行うに際し、鋼の連続鋳造装置として、先に図1〜図3に示した連続鋳造装置1を用いた。
幅が1200mm、高さが900mm、厚みが250mmの鋳型2内におけるメニスカス24の形成位置に、高さが200mm、推力が100mmFeの電磁攪拌装置7a、7bの各上端位置がメニスカス位置と同じ高さになるようにセットし、メニスカス24から下方に向かって500mm深さ位置で最大磁束密度を発揮するように配置した電磁ブレーキ装置8a、8bを使用した。また、メニスカス24から下方に向かって400mm深さ位置となる溶鋼浸漬部まで、最大外径190mm、内径100mmの浸漬ノズル21を鉛直方向に沿って挿入して鋳造を行った。
本実施例の連続鋳造機1は、曲げ半径7.5m、2.5mの垂直部を有している。この連続鋳造機1を用いて、低炭アルミキルド鋼を鋳造速度2m/分で鋳造した。浸漬ノズル21の吐出孔22は、鋳型2内の空間の短辺壁4a、4bの内側面に対向してかつ吐出角度θ(図2参照)が下向き30度である、孔径が70mmの2孔ノズルを浸漬ノズル21として用いた。
長辺壁3a、3bの厚みは30mm一定とし、通常の長辺銅板が平行な鋳型と、長辺銅板中央部分をプレス成型し、メニスカス24の位置における窪み深さDを、0、5、10、20、30、40、50、55mmとして、バックプレート5a、5bを削り込んだものとした。すなわち、長辺壁3a、3bを製作するに際しては、一様に30mmの厚みを有する長方形の銅板を用意し、この銅板の上辺中央部に対してプレス成形を行い、これにより、メニスカス24の高さ位置における窪み深さDがそれぞれ0、5、10、20、30、40、50、55mmである7種類の長辺壁3a、3bを製作した。なお、窪み深さDが0mmというのは、窪みがない長辺壁を有する鋳型を意味している。
一方、これら7種の長辺壁3a、3bの湾曲部11a、11bの形状(湾曲深さ)に合致するように、湾曲凹部の形状(湾曲深さ)が異なる7種のバックプレート5a、5bを製作した。なお、各バックプレート5a、5bの厚みは80mmとしたが、湾曲凹部が形成された部分ではこれよりも薄くなっている。
長辺壁3a、3bにおける湾曲部11a、11bは、鋳造幅方向の鋳型幅中心から両側に400mmずつの長さで形成し、図2に示したような、下端に行くにつれて湾曲部11a(11b)とそれ以外の平坦部分との境界が、湾曲部11a(11b)の下端部分では長辺壁3aの長さ方向(図2のX方向)と平行な直線状であり、湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向(図2のZ方向)と平行な直線状となる矩形形状とした。このような湾曲部11a、11bを持つ長辺壁3a、3bを、鋳型の一部として用いた。
一方、これら7種の長辺壁3a、3bの湾曲部11a、11bの形状(湾曲深さ)に合致するように、湾曲凹部の形状(湾曲深さ)が異なる7種のバックプレート5a、5bを製作した。なお、各バックプレート5a、5bの厚みは80mmとしたが、湾曲凹部が形成された部分ではこれよりも薄くなっている。
長辺壁3a、3bにおける湾曲部11a、11bは、鋳造幅方向の鋳型幅中心から両側に400mmずつの長さで形成し、図2に示したような、下端に行くにつれて湾曲部11a(11b)とそれ以外の平坦部分との境界が、湾曲部11a(11b)の下端部分では長辺壁3aの長さ方向(図2のX方向)と平行な直線状であり、湾曲部11aの両側部分では、長辺壁3aの高さ方向(図2のZ方向)と平行な直線状となる矩形形状とした。このような湾曲部11a、11bを持つ長辺壁3a、3bを、鋳型の一部として用いた。
鋳片の気泡、介在物欠陥は、鋳片の鋳片表層から50mmの深さまでの部分を観察してカウントした100μm以上の直径を有する気泡及び介在物個数の指数で評価した。表1中のArガス気泡個数指標は、湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間の距離L(図5参照)が25mmでかつ、窪み深さDが0mm、すなわち湾曲部11a、11bを長辺壁3a、3bに形成しない場合のArガス気泡の個数を1とし、これに対する、各条件におけるArガス気泡の個数の比率を示している。
また、介在物個数指標についても、同様に、湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間の距離Lが25mmでかつ、窪み深さDが0mm、すなわち湾曲部11a、11bを長辺壁3a、3bに形成しない場合の介在物の個数を1とし、これに対する、各条件における介在物の個数の比率を示している。なお、表1中の湾曲部と浸漬ノズル間の距離Lは、電磁攪拌装置7a、7bの下端位置での寸法を示している。また、窪み深さDは、上記の通り、メニスカス24がある高さ位置での寸法を示している。
また、介在物個数指標についても、同様に、湾曲部11a、11bと浸漬ノズル21との間の距離Lが25mmでかつ、窪み深さDが0mm、すなわち湾曲部11a、11bを長辺壁3a、3bに形成しない場合の介在物の個数を1とし、これに対する、各条件における介在物の個数の比率を示している。なお、表1中の湾曲部と浸漬ノズル間の距離Lは、電磁攪拌装置7a、7bの下端位置での寸法を示している。また、窪み深さDは、上記の通り、メニスカス24がある高さ位置での寸法を示している。
なお、本発明例の効果を確認するため、まず電磁ブレーキ装置8a、8bは作動させずに、電磁攪拌装置7a、7bのみを作動させた結果を表1に示した。
表1に示す結果によれば、距離Lが25mmである場合には、窪み深さDを5mmにして湾曲部11a、11bを形成しても、窪み深さDが0mmの場合と変わらず、Arガス気泡個数指標と介在物個数指標は共に1のままであり、Arガス気泡と介在物の個数を減少させることができないことが判った。
ただ、距離Lが30mmでは、たとえ窪み深さDが5mmと浅いものであっても、Arガス気泡個数指標が0.6に低減している。
また、距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標は0.2と低いレベルにあり、しかも介在物個数指標も1.3と低いレベルにあるが、距離Lが85mmになると、介在物個数指標が2.0と飛躍的に増大することが分かった。
ただ、距離Lが30mmでは、たとえ窪み深さDが5mmと浅いものであっても、Arガス気泡個数指標が0.6に低減している。
また、距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標は0.2と低いレベルにあり、しかも介在物個数指標も1.3と低いレベルにあるが、距離Lが85mmになると、介在物個数指標が2.0と飛躍的に増大することが分かった。
次に、実施例1と同一条件で、電磁ブレーキ装置8a、8bを作動させて、電磁攪拌装置7a、7bと併用した結果を表2に示した。
表2に示す結果によれば、電磁ブレーキ8a、8bを作動させない場合と同様の傾向がみられた。すなわち、距離Lが25mmである場合には、窪み深さDを5mmにして湾曲部11a、11bを形成しても、Arガス気泡個数指標と介在物個数指標は共に1であり、窪み深さDが0mmの場合と変わらないため、Arガス気泡と介在物の個数を減少させることができない。
一方、距離Lが30mmでは、窪み深さDが5mmであっても、Arガス気泡個数指標が0.5に半減している。
そして、距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標が0.1であり、表1に示した0.2よりもさらに低減している。したがって、電磁ブレーキ装置8a、8bを併用した場合には、Arガス気泡の除去に効果があることが確認できた。ただし、距離Lが85mmになると、Arガス気泡の除去効果は依然として高いものの、介在物個数指標が1.8と飛躍的に増大することが分かった。
一方、距離Lが30mmでは、窪み深さDが5mmであっても、Arガス気泡個数指標が0.5に半減している。
そして、距離Lが80mmでは、Arガス気泡個数指標が0.1であり、表1に示した0.2よりもさらに低減している。したがって、電磁ブレーキ装置8a、8bを併用した場合には、Arガス気泡の除去に効果があることが確認できた。ただし、距離Lが85mmになると、Arガス気泡の除去効果は依然として高いものの、介在物個数指標が1.8と飛躍的に増大することが分かった。
本発明は、鋳型内に溶鋼を供給して鋳片を製造する際に有用である。
1 連続鋳造装置
2 鋳型
3a、3b 長辺壁
4a、4b 短辺壁
5a、5b、6a、6b バックプレート
7a、7b 電磁攪拌装置
8a、8b 電磁ブレーキ装置
9a、9b 湾曲領域
11a、11b、11c 湾曲部
21 浸漬ノズル
22 吐出孔
23 吐出流
24 メニスカス
25 溶融パウダー
26 凝固シェル
M 溶鋼
2 鋳型
3a、3b 長辺壁
4a、4b 短辺壁
5a、5b、6a、6b バックプレート
7a、7b 電磁攪拌装置
8a、8b 電磁ブレーキ装置
9a、9b 湾曲領域
11a、11b、11c 湾曲部
21 浸漬ノズル
22 吐出孔
23 吐出流
24 メニスカス
25 溶融パウダー
26 凝固シェル
M 溶鋼
Claims (2)
- 一対の長辺壁及び一対の短辺壁を備えた溶鋼鋳造用の鋳型と;
この鋳型内に溶鋼を吐出する浸漬ノズルと;
前記各長辺壁の各外側面に沿って配置され、前記鋳型内にある前記溶鋼の上部を攪拌する電磁攪拌装置と;
を備え、
前記各長辺壁の、少なくとも前記浸漬ノズルに対向する位置に、平面視した場合に前記電磁攪拌装置に向かって凸に湾曲した湾曲部が形成され、かつ前記各長辺壁は前記各湾曲部を含めて一様な厚みを有し;
前記湾曲部の内側面を平面視した場合に最も深く窪んだ位置である頂部と前記浸漬ノズルの外周面との間の最短水平距離が、鉛直方向に沿って見た場合の、前記電磁攪拌装置の下端部から前記電磁攪拌装置の上端部よりも50mm高い位置までの範囲において、30mm以上かつ80mm以下である;
ことを特徴とする、鋼の連続鋳造装置。 - 前記各電磁攪拌装置の下方に配置された電磁ブレーキ装置をさらに備え;
この電磁ブレーキ装置が、平面視した場合に、前記各長辺壁に沿った鋳型幅方向に一様な磁束密度分布を有する直流磁界を、前記各短辺壁に沿った鋳型厚み方向に付与する;
ことを特徴とする、請求項1に記載の鋼の連続鋳造装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JPH10193067A (ja) * | 1996-12-27 | 1998-07-28 | Nkk Corp | 鋼の連続鋳造法 |
JP2010110765A (ja) * | 2008-11-04 | 2010-05-20 | Nippon Steel Corp | 鋼の連続鋳造用装置 |
JP5321528B2 (ja) * | 2010-04-22 | 2013-10-23 | 新日鐵住金株式会社 | 鋼の連続鋳造用装置 |
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2011
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