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JPWO2010050358A1 - シンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法 - Google Patents

シンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法 Download PDF

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JPWO2010050358A1
JPWO2010050358A1 JP2010535748A JP2010535748A JPWO2010050358A1 JP WO2010050358 A1 JPWO2010050358 A1 JP WO2010050358A1 JP 2010535748 A JP2010535748 A JP 2010535748A JP 2010535748 A JP2010535748 A JP 2010535748A JP WO2010050358 A1 JPWO2010050358 A1 JP WO2010050358A1
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惠民 笠井
康史 永田
康史 永田
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寛 伊佐
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誠 飯島
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Abstract

感度ムラおよび鮮鋭性ムラが改善された放射線画像が得られるシンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法を提供する。本発明のシンチレータパネルは、支持体上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とする。

Description

本発明は、発光特性および鮮鋭性のムラが改善された放射線画像が得られるシンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法に関する。
従来、X線画像のような放射線画像は医療現場において病状の診断に広く用いられている。特に、増感紙−フィルム系による放射線画像は、長い歴史のなかで高感度化と高画質化が図られた結果、高い信頼性と優れたコストパフォーマンスを併せ持った撮像システムとして、今なお、世界中の医療現場で用いられている。
しかしながら、これら画像情報はいわゆるアナログ画像情報であって、近年発展を続けているデジタル画像情報のような、自由な画像処理や瞬時の電送が出来ない。
そして、近年ではコンピューテッドラジオグラフィ(computed radiography:CR)やフラットパネル型の放射線ディテクタ(flat panel detector:FPD)等に代表されるデジタル方式の放射線画像検出装置が登場している。これらは、デジタルの放射線画像が直接得られ、陰極管や液晶パネル等の画像表示装置に画像を直接表示することが可能なので、必ずしも写真フィルム上への画像形成が必要なものではない。その結果、これらのデジタル方式のX線画像検出装置は、銀塩写真方式による画像形成の必要性を低減させ、病院や診療所での診断作業の利便性を大幅に向上させている。
X線画像のデジタル技術の一つとしてコンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)が現在医療現場で受け入れられている。しかしながら、鮮鋭性が十分でなく空間分解能も不十分であり、スクリーン・フィルムシステムの画質レベルには到達していない。そして、更に新たなデジタルX線画像技術として、例えば雑誌Physics Today,1997年11月号24頁のジョン・ローランズ論文“Amorphous Semiconductor Usher in Digital X−ray Imaging”や、雑誌SPIEの1997年32巻2頁のエル・イー・アントヌクの論文“Development of aHigh Resolution,Active Matrix,Flat−Panel Imager with Enhanced Fill Factor”等に記載された、薄膜トランジスタ(TFT)を用いた平板X線検出装置(FPD)が開発されている。
放射線を可視光に変換するために、放射線により発光する特性を有するX線蛍光体で作られたシンチレータが使用されるが、低線量の撮影においてのSN比を向上するためには、発光効率の高いシンチレータを使用することが必要になってくる。一般にシンチレータの発光効率は、蛍光体層の厚さ、蛍光体のX線吸収係数によって決まるが、蛍光体層の厚さを厚くすればするほど、蛍光体層内での発光光の散乱が発生し、鮮鋭性は低下する。そのため、画質に必要な鮮鋭性を決めると、層厚が決定する。
なかでもヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光に対する変換率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能である(特許文献1参照)。
しかし、ヨウ化セシウム(CsI)のみでは発光効率が低いために、ヨウ化セシウム(CsI)とヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものを、蒸着を用いて支持体(基板)上にナトリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Na)として堆積、又近年では、ヨウ化セシウム(CsI)とヨウ化タリウム(TlI)を任意のモル比で混合したしたものを、蒸着を用いて支持体(基板)上にタリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)として堆積したものに、200〜500℃の温度で熱処理を行うことで可視変換効率を向上させ、X線蛍光体として使用している(例えば特許文献2参照)。
しかし、賦活剤はヨウ化セシウムと結晶構造が違うため、濃度が高くなると柱状結晶構造が乱れて鮮鋭性が劣化するため、賦活剤濃度が不均一なほど感度ムラだけでなく鮮鋭性にもムラが現れるという問題があった。
また、特許文献3には、蛍光体層の柱状結晶性を高めるために、気相堆積法により、蛍光体の母体からなる柱状結晶構造を形成し、次いで該柱状結晶構造の上に該蛍光体からなる柱状結晶構造を積層する(母体柱状結晶上に蛍光体の柱状結晶を一対一で対応させて成長させる)ことによって蛍光体層を形成する工程を含む放射線像変換パネルの製造方法が記載されている。しかし、当該発明は実質的に輝尽性蛍光体に関するものであり、また得られた蛍光体層において、母体柱状結晶と蛍光体の柱状結晶はところどころ融着していて、鮮鋭性のムラは、むしろ悪化していた。
特開昭63−215987号公報 特公昭54−35060号公報 特開2003−50298号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、感度ムラおよび鮮鋭性ムラが改善された放射線画像が得られるシンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法を提供することである。
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.支持体上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とするシンチレータパネル。
2.前記1に記載のシンチレータパネルの製造方法であって、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を前記支持体回転機構に設置して、当該支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
3.前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする前記2に記載のシンチレータパネルの製造方法。
4.前記1に記載のシンチレータパネルと2次元状に複数の受光画素が配置された受光素子とを具備したことを特徴とする放射線検出装置。
5.基板上に形成された光電変換素子と、前記光電変換素子上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有する放射線検出装置であって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とする放射線検出装置。
6.前記5に記載の放射線検出装置の製造方法であって、真空容器内に蒸発源及び基板回転機構を有する蒸着装置を用いて、基板を前記基板回転機構に設置して、当該基板を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする放射線検出装置の製造方法。
7.前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする前記6に記載の放射線検出装置の製造方法。
本発明の上記手段により、感度ムラおよび鮮鋭性ムラが改善された放射線画像が得られるシンチレータパネル、放射線検出装置及びそれらの製造方法を提供することができる。
シンチレータパネル製造装置の模式図。 放射線検出装置の概略構成を示す一部破断斜視図。 撮像パネルの拡大断面図。
本発明のシンチレータパネルは、支持体上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とする。
請求項1から請求項7までの請求項に係る発明は、蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であるという点で、共通の技術的特徴を有する。
本発明のシンチレータパネルの製造方法としては、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を前記支持体回転機構に設置して、当該支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。さらに、前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。
本発明のシンチレータパネルは、当該シンチレータパネルと2次元状に複数の受光画素が配置された受光素子とを具備した放射線検出装置に好適に用いることができる。
本発明には、上記シンチレータパネルと共通する技術的特徴を有する、次のような放射線検出装置も含まれる。
すなわち、基板上に形成された光電変換素子と、前記光電変換素子上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有する放射線検出装置であって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とする放射線検出装置。当該放射線検出装置の製造方法としては、上記シンチレータパネルと同様に、真空容器内に蒸発源及び基板回転機構を有する蒸着装置を用いて、基板を前記基板回転機構に設置して、当該基板を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。更に、前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための最良の形態・態様について詳細な説明をする。
(シンチレータパネル及び放射線検出装置の構成)
本発明のシンチレータパネル及び放射線検出装置は、支持体(基板)上に母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有することを特徴とするが、当該蛍光体層の外に、目的に応じて、後述するような各種機能層を設けた構成とすることが好ましい。
また、本発明の放射線検出装置は、第1の支持体(基板)上に反射層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けてなるシンチレータパネルに、第2の支持体(基板)上にフォトセンサとTFT(Thin Film Transistor)又はCCD(Charge Coupled Devices)からなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部(以下「平面受光素子」ともいう。)を設けてなる光電変換パネルを接着あるいは密着させることで放射線検出装置としてもよいし、支持体(基板)上に平面受光素子を形成した後、直接あるいは反射層、保護層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けることで放射線検出装置としても良い。
以下、典型的例として、主にシンチレータパネルを形成する場合の各種構成層及び構成要素等について説明するが、支持体(基板)上に平面受光素子を形成した後、直接的に蛍光体層を設けることで放射線検出装置とする場合も、基本的には同様である。
(蛍光体層:シンチレータ層)
本発明に係る蛍光体層(「シンチレータ層」ともいう。)は、ヨウ化セシウム(CsI)を母体成分として、タリウム(Tl)を賦活剤成分とする蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層であることを特徴とする。
蛍光体層を形成する材料としては、種々の蛍光体材料が知られているが、ヨウ化セシウム(CsI)は、X線から可視光に対する変換率が比較的高く、蒸着によって容易に蛍光体を柱状結晶構造に形成出来るため、光ガイド効果により結晶内での発光光の散乱が抑えられ、蛍光体層の厚さを厚くすることが可能であることから、本発明においては、当該ヨウ化セシウム(CsI)を主成分とすることを特徴とする。
但し、CsIのみでは発光効率が低いために、各種の賦活剤が添加される。例えば、特公昭54−35060号公報の如く、CsIとヨウ化ナトリウム(NaI)を任意のモル比で混合したものが挙げられる。また、例えば特開2001−59899号公報に開示されているようなCsIを蒸着で、タリウム(Tl)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)、リチウム(Li)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、ナトリウム(Na)などの賦活物質を含有するCsIが好ましい。
本発明においては、特に賦活剤成分として、タリウム(Tl)を含有することを要する。
なお、本発明においては、特に、1種類以上のタリウム化合物を含む添加剤とヨウ化セシウムとを原材料とすることが好ましい。すなわち、タリウム賦活ヨウ化セシウム(CsI:Tl)は400nmから750nmまでの広い発光波長をもつことから好ましい。
本発明に係る1種類以上のタリウム化合物を含有する添加剤のタリウム化合物としては、種々のタリウム化合物(+Iと+IIIの酸化数の化合物)を使用することができる。
本発明において、好ましいタリウム化合物は、沃化タリウム(TlI)である。
また、本発明に係るタリウム化合物の融点は、400〜700℃の範囲内にあることが好ましい。700℃以内を超えると、柱状結晶内での添加剤が不均一に存在してしまい、発光効率が低下する。なお、本発明での融点とは、常温常圧下における融点である。
本発明に係る蛍光体層において、当該添加剤の含有量は目的性能等に応じて、最適量にすることが望ましいが、ヨウ化セシウムの含有量に対して、0.001mol%〜50mol%、更に0.1〜10.0mol%であることが好ましい。
ここで、ヨウ化セシウムに対し、添加剤が0.001mol%以上であると、ヨウ化セシウム単独使用で得られる発光輝度の向上がみられ、目的とする発光輝度を得る点で好ましい。また、50mol%以下であるとヨウ化セシウムの性質・機能を保持することができて好ましい。
なお、蛍光体層(シンチレータ層)の厚さは、100〜800μmであることが好ましく、120〜700μmであることが、輝度と鮮鋭性の特性をバランスよく得られる点からより好ましい。
本発明に係る蛍光体柱状結晶は、気相堆積法により形成することを要する。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法その他を用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
本発明に係る蛍光体層は、母体成分CsIと賦活剤成分Tlとからなり、蛍光体層面内の賦活剤成分Tl濃度の変動係数が40%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。
なお、本願において、当該蛍光体層面内における賦活剤成分Tl濃度の変動係数の求め方は、次のようにして行う:得られた蛍光体層のうち、得られた任意の30箇所から蛍光体を0.2gずつ採取してICP測定し、30箇所で求められたTl濃度についての標準偏差を求め、相対標準偏差を30箇所における賦活剤濃度の平均で除して、下記式(2)で示される変動係数を求めた。
変動係数=面内の賦活剤成分Tl濃度の標準偏差/賦活剤成分Tl濃度の平均
本発明においては、蛍光体柱状結晶が、ヨウ化セシウム(CsI)を主成分として含有すること、また、前記蛍光体柱状結晶が、ヨウ化セシウムとタリウムを含む添加剤とを原材料として形成されることを要する。
さらには、本発明に係る蛍光体柱状結晶が、その根元部分にタリウムを含まない層を有するものであることが好ましい。このような結晶は、基本的には、次のようにして作製することができる。すなわち、例えば、支持体上にCsIのみを所望の厚さになるまで蒸着させ蛍光体(CsI)結晶を形成した後、当該形成された結晶の上にヨウ化セシウムとタリウムを含む添加剤(例えばCsI:0.003Tl)を所望の厚さになるまで蒸着(気相堆積)させて蛍光体柱状結晶(蛍光体層)を形成する。
なお、本願において、「根元部分」とは、気相堆積法により蛍光体柱状結晶を形成する過程において、初期に形成された部分であって、蛍光体層中の蛍光体柱状結晶の平均長さの50%未満の結晶部分をいう。
また、「タリウムを含まない層」とは、上記のような方法によって形成された蛍光体柱状結晶のうちにタリウムを実質的に含まない結晶部分をいう。つまり、ヨウ化セシウムのみから構成されていてもよいが、蛍光体層における賦活剤タリウムの含有率(質量%)よりも少量であれば、根元部分の質量に対して0.1質量%未満のタリウム等の賦活剤あるいは他の不純物、添加物が含まれていてもよい。
なお、当該「タリウムを含まない層」は、蛍光体層中の蛍光体柱状結晶の平均長さ(縦方向の長さ)の50%未満の結晶部分のいずれかの箇所に形成すればよい。好ましくは、当該平均長さの30%以下、更には、10%以下の部分に形成することが好ましい。
(反射層)
本発明においては、支持体(基板)上には反射層(「金属反射層」ともいう。)を設けることが好ましい、蛍光体(シンチレータ)から発した光を反射して、光の取り出し効率を高めるためのものである。当該反射層は、Al,Ag,Cr,Cu,Ni,Ti,Mg,Rh,Pt及びAuからなる元素群の中から選ばれるいずれかの元素を含む材料により形成されることが好ましい。
特に、上記の元素からなる金属薄膜、例えば、Ag膜、Al膜などを用いることが好ましい。また、このような金属薄膜を2層以上形成するようにしても良い。なお、反射層の厚さは、0.005〜0.3μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
本発明に係る反射層の形成方法は既知のいかなる方法でも構わないが、例えば、上記原材料を使用したスパッタ処理が挙げられる。
(金属保護層)
本発明に係るシンチレータパネルにおいては、上記反射層の上に金属保護層をもうけてもよい。
金属保護層は、溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい。ガラス転位点が30〜100℃のポリマーであることが蒸着結晶と支持体(基板)との膜付の点で好ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
金属保護層の膜厚としては接着性の点で0.1μm以上が好ましく、金属保護層表面の平滑性確保の点で3.0μm以下が好ましい。より好ましくは金属保護層の厚さが0.2〜2.5μmの範囲である。
金属保護層作製に用いる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル、及びそれらの混合物を挙げることができる。
(下引層)
本発明においては、支持体(基板)と蛍光体層の間、又は反射層と蛍光体層の間に膜付の観点から、下引き層を設けることが好ましい。当該下引層は、高分子結合材(バインダー)、分散剤等を含有することが好ましい。なお、下引層の厚さは、鮮鋭性の観点から、0.5〜4μmが好ましい。
以下、下引層の構成要素について説明する。
〈高分子結合材〉
本発明に係る下引層は、溶剤に溶解又は分散した高分子結合材(以下「バインダー」ともいう。)を塗布、乾燥して形成することが好ましい。高分子結合材としては、具体的には、ポリウレタン、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられる。なかでもポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースを使用することが好ましい。
本発明に係る高分子結合材としては、特に蛍光体層との密着の点でポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、ニトロセルロースなどが好ましい。また、ガラス転位温度(Tg)が30〜100℃のポリマーであることが、蒸着結晶と支持体(基板)との膜付の点で好ましい。この観点からは、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
下引層の調製に用いることができる溶剤としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエステル、エチレングリコールモノメチルエステルなどのエーテル及びそれらの混合物を挙げることができる。
なお、本発明に係る下引層には、蛍光体(シンチレータ)が発光する光の散乱の防止し、鮮鋭性等を向上させるために顔料や染料を含有させても良い。
(保護層)
本発明に係る保護層は、蛍光体層の保護を主眼とするものである。すなわち、ヨウ化セシウム(CsI)は、吸湿性が高く露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまうため、これを防止することを主眼とする。
当該保護層は、種々の材料を用いて形成することができる。例えば、CVD法によりポリパラキシリレン膜を形成する。即ち、蛍光体(シンチレータ)及び支持体(基板)の表面全体にポリパラキシリレン膜を形成し、保護層とすることができる。
また、別の態様の保護層として、蛍光体層上に高分子フィルムを設けることもできる。なお、高分子フィルムの材料としては、後述する支持体(基板)材料としての高分子フィルムと同様のフィルムを用いることができる。
上記高分子フィルムの厚さは、空隙部の形成性、蛍光体層の保護性、鮮鋭性、防湿性、作業性等を考慮し、12〜120μmが好ましく、更には20〜80μmが好ましい。また、ヘイズ率は、鮮鋭性、放射線画像ムラ、製造安定性及び作業性等を考慮し、3から40%が好ましく、更には3〜10%が好ましい。ヘイズ率は、例えば、日本電色工業株式会社NDH5000Wにより測定できる。必要とするヘイズ率は、市販されている高分子フィルムから適宜選択し、容易に入手することが可能である。
保護フィルムの光透過率は、光電変換効率、蛍光体(シンチレータ)発光波長等を考慮し、550nmで70%以上あることが好ましいが、99%以上の光透過率のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に99〜70%が好ましい。
保護フィルムの透湿度は、蛍光体層の保護性、潮解性等を考慮し50g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には10g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましいが、0.01g/m・day(40℃・90%RH)以下の透湿度のフィルムは工業的に入手が困難であるため実質的に、0.01g/m・day(40℃・90%RH)以上、50g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましく、更には0.1g/m・day(40℃・90%RH)以上、10g/m・day(40℃・90%RH)(JIS Z0208に準じて測定)以下が好ましい。
(支持体:基板)
本発明においては、支持体(「基板」ともいう。)としては、石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート、炭素繊維強化シート、高分子フィルムなどが好ましい。
高分子フィルムとしては、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PEN)フィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミド(PI)フィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)を用いることができる。特に、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが、ヨウ化セシウムを原材料として気相法にて蛍光体柱状結晶を形成する場合に、好適である。
なお、本発明に係る支持体(基板)としての高分子フィルムは、厚さ50〜500μmであること、更に可とう性を有する高分子フィルムであることが好ましい。
ここで、「可とう性を有する支持体(基板)」とは、120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmである支持体(基板)をいい、かかる支持体(基板)としてポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
なお、「弾性率」とは、引張試験機を用い、JIS C 2318に準拠したサンプルの標線が示すひずみと、それに対応する応力が直線的な関係を示す領域において、ひずみ量に対する応力の傾きを求めたものである。これがヤング率と呼ばれる値であり、本発明では、かかるヤング率を弾性率と定義する。
本発明に用いられる支持体(基板)は、上記のように120℃での弾性率(E120)が1000〜6000N/mmであることが好ましい。より好ましくは1200〜5000N/mmである。
具体的には、ポリエチレンナフタレート(E120=4100N/mm)、ポリエチレンテレフタレート(E120=1500N/mm)、ポリブチレンナフタレート(E120=1600N/mm)、ポリカーボネート(E120=1700N/mm)、シンジオタクチックポリスチレン(E120=2200N/mm)、ポリエーテルイミド(E120=1900N/mm)、ポリアリレート(E120=1700N/mm)、ポリスルホン(E120=1800N/mm)、ポリエーテルスルホン(E120=1700N/mm)等からなる高分子フィルムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく積層あるいは混合して用いてもよい。中でも、特に好ましい高分子フィルムとしては、上述のように、ポリイミド又はポリエチレンナフタレートを含有する高分子フィルムが好ましい。
なお、シンチレータパネルと平面受光素子面を貼り合せる際に、支持体(基板)の変形や蒸着時の反りなどの影響を受け、フラットパネルディテクタの受光面内で均一な画質特性が得られないという点に関して、当該支持体(基板)を、厚さ50〜500μmの高分子フィルムとすることでシンチレータパネルが平面受光素子面形状に合った形状に変形し、フラットパネルディテクタの受光面全体で均一な鮮鋭性が得られる。
また、支持体は、その表面を平滑な面とするために樹脂層を有していてもよい。樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンフタレート、パラフィン、グラファイトなどの化合物を含有することが好ましく、その膜厚は、約5μm〜50μmであることが好ましい。この樹脂層は、支持体の表面に設けてもよく、裏面に設けてもよい。
また、支持体の表面に接着層を設ける手段としては、貼合法、塗設法などの手段がある。このうち貼合法は加熱、加圧ローラを用いて行い、加熱条件は約80〜150℃、加圧条件は4.90×10〜2.94×10N/cm、搬送速度は0.1〜2.0m/sが好ましい。
(シンチレータパネルの製造方法)
本発明に係るシンチレータパネルの製造方法は、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を前記支持体回転機構に設置して、当該支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成する態様の製造方法であることが好ましい。
以下、本発明の実施形態について、図1を参照しながら説明する。
〈シンチレータパネルの製造装置〉
図1は、本発明に係るシンチレータパネルの製造装置1の概略構成図である。図1に示すように、シンチレータパネルの製造装置1は真空容器2を備えており、真空容器2には真空容器2の内部の排気及び大気の導入を行う真空ポンプ3が備えられている。
真空容器2の内部の上面付近には、支持体4を保持する支持体ホルダ5が設けられている。
支持体4の表面には、蛍光体層が気相堆積法によって形成される。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法その他を用いることができるが、本発明では特に蒸着法が好ましい。
支持体ホルダ5は、支持体4のうち前記蛍光体層を形成する面が真空容器2の底面に対向し、かつ、真空容器2の底面と平行となるように支持体4を保持する構成となっている。
また、支持体ホルダ5には、支持体4を加熱する加熱ヒータ(図示せず。)を備えることが好ましい。この加熱ヒータで支持体4を加熱することによって、支持体4の支持体ホルダ5に対する密着性の強化や、前記蛍光体層の膜質調整を行う。また、支持体4の表面の吸着物を離脱・除去し、支持体4の表面と前記蛍光体との間に不純物層が発生することを防止する。
また、加熱手段として温媒又は熱媒を循環させるための機構(図示せず。)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体4の温度を50〜150℃といった比較的低温に保持して蒸着する場合に適している。
また、加熱手段としてハロゲンランプ(図示せず。)を有していてもよい。この手段は蛍光体の蒸着時における支持体4の温度を150℃以上といった比較的高温に保持して蒸着する場合に適している。
さらに、支持体ホルダ5には、支持体4を水平方向に回転させる支持体回転機構6が設けられている。支持体回転機構6は、支持体ホルダ5を支持すると共に支持体4を回転させる支持体回転軸7及び真空容器2の外部に配置されて支持体回転軸7の駆動源となるモータ(図示せず)から構成されている。
また、真空容器2の内部の底面付近には、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上の互いに向かい合う位置に蒸発源8a,8bが配置されている。この場合において、支持体4と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、支持体4に垂直な中心線と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。
なお、本発明に係るシンチレータパネル製造装置においては3個以上の多数の蒸発源を設けることも可能であり、各々の蒸発源は等間隔に配置してもよく、間隔を変えて配置してもよい。また、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の半径は任意に定めることができる。
蒸発源8a,8bは、前記蛍光体を収容して抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いたアルミナ製のるつぼから構成しても良いし、ボートや、高融点金属からなるヒータから構成しても良い。また、前記蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でも良いが、本発明では比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から直接電流を流し抵抗加熱する方法や、周りのヒーターでるつぼを間接的に抵抗加熱する方法が好ましい。また、蒸発源8a,8bは分子源エピタキシャル法による分子線源でも良い。
また、蒸発源8a,8bと支持体4との間には、蒸発源8a,8bから支持体4に至る空間を遮断するシャッタ9が水平方向に開閉自在に設けられており、このシャッタ9によって、蒸発源8a,8bにおいて前記蛍光体の表面に付着した目的物以外の物質が蒸着の初期段階で蒸発し、支持体4に付着するのを防ぐことができるようになっている。
〈シンチレータパネルの製造方法〉
次に、上述のシンチレータパネル製造装置1を用いた本発明のシンチレータパネルの製造方法について説明する。
まず、支持体ホルダ5に支持体4を取付ける。また、真空容器2の底面付近において、支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に蒸発源8a,8bを配置する。この場合において、支持体4と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。また、支持体4に垂直な中心線と蒸発源8a,8bとの間隔は100〜1500mmとされるのが好ましく、より好ましくは200〜1000mmである。
次いで、真空容器2の内部を真空排気し、所望の真空度に調整する。その後、支持体回転機構6により支持体ホルダ5を蒸発源8a,8bに対して回転させ、蒸着可能な真空度に真空容器2が達したら、加熱した蒸発源8a,8bから前記蛍光体を蒸発させて、支持体4の表面に前記蛍光体を所望の厚さに成長させる。
なお、支持体4の表面に前記蛍光体を成長させる工程を複数回に分けて行って前記蛍光体層を形成することも可能である。
また、蒸着法においては、蒸着時、必要に応じて、被蒸着体(支持体4、保護層又は中間層)を冷却あるいは加熱しても良い。
さらに、蒸着終了後、前記蛍光体層を加熱処理しても良い。また、蒸着法においては必要に応じてO、Hなどのガスを導入して蒸着する反応性蒸着を行っても良い。
形成する前記蛍光体層の膜厚は、放射線画像変換パネルの使用目的により、また前記蛍光体の種類により異なるが、本発明の効果を得る観点から50〜2000μmであり、好ましくは50〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜800μmである。
また、前記蛍光体層が形成される支持体4の温度は、室温(rt)〜300℃に設定することが好ましく、さらに好ましくは50〜250℃である。
以上のようにして前記蛍光体層を形成した後、必要に応じて、前記蛍光体層の支持体4とは反対の側の面に、物理的にあるいは化学的に前記蛍光体層を保護するための保護層を設けてもよい。保護層は、保護層用の塗布液を前記蛍光体層の表面に直接塗布して形成してもよく、また、予め別途形成した保護層を前記蛍光体層に接着してもよい。これらの保護層の層厚は0.1〜2000μmが好ましい。
また、保護層は蒸着法、スパッタリング法などにより、SiC、SiO、SiN、Alなどの無機物質を積層して形成してもよい。
本発明においては、保護層の外に、上記の各種機能層を設けることが好ましい。
以上のシンチレータパネルの製造装置1又は製造方法によれば、複数の蒸発源8a,8bを設けることによって蒸発源8a,8bの蒸気流が重なり合う部分が整流化され、支持体4の表面に蒸着する前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。このとき、多数の蒸発源を設けるほど多くの箇所で蒸気流が整流化されるため、より広範囲において前記蛍光体の結晶性を均一にすることができる。また、蒸発源8a,8bを支持体4に垂直な中心線を中心とした円の円周上に配置することによって、蒸気流の整流化によって結晶性が均一になるという作用を、支持体4の表面において等方的に得ることができる。
また、支持体回転機構6によって支持体4を回転しながら前記蛍光体の蒸着を行うことによって、支持体4の表面に均一に前記蛍光体を蒸着させることができる。
以上述べたように本発明に係るシンチレータパネル製造装置1又は製造方法によれば、支持体4の表面において、前記蛍光体の結晶性が均一となるように前記蛍光体層を成長させることによって、前記蛍光体層の感度ムラを低下させ、本発明に係るシンチレータパネルを用いた放射線画像変換パネルから得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
また、支持体4に蒸着する前記蛍光体の入射角を所定の範囲に制限して蛍光体の入射角のばらつきを防ぐことによって、蛍光体の結晶性をより均一にして、放射線画像変換パネルから得られる放射線画像の鮮鋭性を向上させることができる。
なお、以上は支持体ホルダ5が支持体回転機構6を備える場合について説明したが、本発明は必ずしもこれに限らず、支持体ホルダ5が支持体4を保持して静止した状態で蒸着を行う場合や、支持体4を蒸発源8a,8bに対して水平方向に移動させることによって蒸発源8a,8bからの前記蛍光体を蒸着させる場合などにおいても適用可能である。
(放射線検出装置)
本発明の放射線検出装置(「放射線検出器」「放射線画像検出器」、「放射線フラットパネルディテクタ」ともいう。)は、第1の支持体(基板)上に反射層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けてなるシンチレータパネルに、第2の支持体(基板)上にフォトセンサとTFT(Thin Film Transistor)又はCCD(Charge Coupled Devices)からなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部(「平面受光素子」)を設けてなる光電変換パネルを接着あるいは密着させることで放射線検出装置としてもよいし、支持体(基板)上にフォトセンサとTFT又はCCDからなる画素を2次元状に配置した光電変換素子部を形成した後、直接あるいは反射層、保護層等の機能層を介して気相堆積法により蛍光体層を設けることで放射線検出装置としても良い。
すなわち、本発明の放射線検出装置は、基本的構成として、蛍光体層と2次元状に複数の受光画素が配置された受光素子(以下「平面受光素子」という。)を備えた態様の放射線検出装置であることを要する。これにより、平面受光素子面が蛍光体層からの発光を電荷に変換することで画像をデジタルデータ化することが可能となる。
なお、本発明に係る平面受光素子の表面平均粗さ(Ra)は、0.001〜0.5μmであることが好ましい。このため、ガラス表面に受光素子を形成後、表面にポリエステルやアクリルと言った有機樹脂膜を形成し、フォトエッチング法により表面粗さを制御することにより当該要件を満たすように調整することが好ましい。平面受光素子の表面平均粗さ(Ra)は0.001〜0.1μmであることが好ましく、0.001〜0.05μmであることがより好ましい。
本発明の放射線画像変換パネルは、シンチレータパネルが、平面受光素子に弾力部材(例えば、スポンジ、バネ等)により押しつけられ密着している態様であることが好ましい。また、シンチレータパネルが、当該シンチレータパネルと前記平面受光素子との間隙の気体の減圧により、当該平面受光素子に密着し、かつ周辺を密着シール部材でシールされている態様であることも好ましい。当該密着シール部材が、紫外線硬化型樹脂であることが好ましい。
更に、当該シンチレータパネルがシンチレータ層を有し、かつ当該シンチレータ層が平面受光素子に直接的に密着している態様であることも好ましい。
紫外線硬化型樹脂としては特に制限はなく、従来から使用されているものの中から、適宜選択して用いることができる。この紫外線硬化型樹脂は、光重合性プレポリマー、または光重合性モノマー、光重合開始剤や光増感剤を含有するものである。
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等が挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また,光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、プレポリマーとしてウレタンアクリレート系、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類等が挙げられる。また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
以下に、上記シンチレータパネル10の一適用例として、図2及び図3を参照しながら、当該シンチレータパネル10を具備した放射線検出装置100の構成について説明する。なお、図2は放射線検出装置100の概略構成を示す一部破断斜視図である。また、図3は撮像パネル51の拡大断面図である。
図2に示す通り、放射線検出装置100には、撮像パネル51、放射線検出装置100の動作を制御する制御部52、書き換え可能な専用メモリ(例えばフラッシュメモリ)等を用いて撮像パネル51から出力された画像信号を記憶する記憶手段であるメモリ部53、撮像パネル51を駆動して画像信号を得るために必要とされる電力を供給する電力供給手段である電源部54、等が筐体55の内部に設けられている。筐体55には必要に応じて放射線検出装置100から外部に通信を行うための通信用のコネクタ56、放射線検出装置100の動作を切り換えるための操作部57、放射線画像の撮影準備の完了やメモリ部53に所定量の画像信号が書き込まれたことを示す表示部58、等が設けられている。
ここで、放射線検出装置100に電源部54を設けるとともに放射線画像の画像信号を記憶するメモリ部53を設け、コネクタ56を介して放射線検出装置100を着脱自在にすれば、放射線検出装置100を持ち運びできる可搬構造とすることができる。
図3に示すように、撮像パネル51は、シンチレータパネル10と、シンチレータパネル10からの電磁波を吸収して画像信号を出力する出力基板20と、から構成されている。
シンチレータパネル10は、放射線照射面側に配置されており、入射した放射線の強度に応じた電磁波を発光するように構成されている。
出力基板20は、シンチレータパネル10の放射線照射面と反対側の面に設けられており、用シンチレータパネル10側から順に、隔膜20a、光電変換素子20b、画像信号出力層20c及び基板20dを備えている。
隔膜20aは、シンチレータパネル10と他の層を分離するためのものである。
光電変換素子20bは、透明電極21と、透明電極21を透過して入光した電磁波により励起されて電荷を発生する電荷発生層22と、透明電極21に対しての対極になる対電極23とから構成されており、隔膜20a側から順に透明電極21、電荷発生層22、対電極23が配置される。
透明電極21とは、光電変換される電磁波を透過させる電極であり、例えばインジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnOなどの導電性透明材料を用いて形成される。
電荷発生層22は、透明電極21の一面側に薄膜状に形成されており、光電変換可能な化合物として光によって電荷分離する有機化合物を含有するものであり、電荷を発生し得る電子供与体及び電子受容体としての導電性化合物をそれぞれ含有している。電荷発生層22では、電磁波が入射されると、電子供与体は励起されて電子を放出し、放出された電子は電子受容体に移動して、電荷発生層22内に電荷、すなわち、正孔と電子のキャリアが発生するようになっている。
ここで、電子供与体としての導電性化合物としては、p型導電性高分子化合物が挙げられ、p型導電性高分子化合物としては、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフルオレン、ポリ(p−フェニレン)又はポリアニリンの基本骨格を持つものが好ましい。
また、電子受容体としての導電性化合物としては、n型導電性高分子化合物が挙げられ、n型導電性高分子化合物としては、ポリピリジンの基本骨格を持つものが好ましく、特にポリ(p−ピリジルビニレン)の基本骨格を持つものが好ましい。
電荷発生層22の膜厚は、光吸収量を確保するといった観点から、10nm以上(特に100nm以上)が好ましく、また電気抵抗が大きくなりすぎないといった観点から、1μm以下(特に300nm以下)が好ましい。
対電極23は、電荷発生層22の電磁波が入光される側の面と反対側に配置されている。対電極23は、例えば、金、銀、アルミニウム、クロムなどの一般の金属電極や、透明電極21の中から選択して用いることが可能であるが、良好な特性を得るためには仕事関数の小さい(4.5eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするのが好ましい。
また、電荷発生層22を挟む各電極(透明電極21及び対電極23)との間には、電荷発生層22とこれら電極が反応しないように緩衝地帯として作用させるためのバッファー層を設けてもよい。バッファー層は、例えば、フッ化リチウム及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホナート)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル[1,10]フェナントロリンなどを用いて形成される。
画像信号出力層20cは、光電変換素子20bで得られた電荷の蓄積および蓄積された電荷に基づく信号の出力を行うものであり、光電変換素子20bで生成された電荷を画素毎に蓄積する電荷蓄積素子であるコンデンサ24と、蓄積された電荷を信号として出力する画像信号出力素子であるトランジスタ25とを用いて構成されている。
トランジスタ25は、例えばTFT(薄膜トランジスタ)を用いるものとする。このTFTは、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のものでも、有機半導体を用いたものでもよく、好ましくはプラスチックフィルム上に形成されたTFTである。プラスチックフィルム上に形成されたTFTとしては、アモルファスシリコン系のものが知られているが、その他、米国Alien Technology社が開発しているFSA(Fluidic Self Assembly)技術、即ち、単結晶シリコンで作製した微小CMOS(Nanoblocks)をエンボス加工したプラスチックフィルム上に配列させることで、フレキシブルなプラスチックフィルム上にTFTを形成するものとしても良い。さらに、Science,283,822(1999)やAppl.Phys.Lett,771488(1998)、Nature,403,521(2000)等の文献に記載されているような有機半導体を用いたTFTであってもよい。
このように、トランジスタ25としては、上記FSA技術で作製したTFT及び有機半導体を用いたTFTが好ましく、特に好ましいものは有機半導体を用いたTFTである。この有機半導体を用いてTFTを構成すれば、シリコンを用いてTFTを構成する場合のように真空蒸着装置等の設備が不要となり、印刷技術やインクジェット技術を活用してTFTを形成できるので、製造コストが安価となる。さらに、加工温度を低くできることから熱に弱いプラスチック基板上にも形成できる。
トランジスタ25には、光電変換素子20bで発生した電荷を蓄積するとともに、コンデンサ24の一方の電極となる収集電極(図示せず)が電気的に接続されている。コンデンサ24には光電変換素子20bで生成された電荷が蓄積されるとともに、この蓄積された電荷はトランジスタ25を駆動することで読み出される。すなわちトランジスタ25を駆動させることで放射線画像の画素毎の信号を出力させることができる。
基板20dは、撮像パネル51の支持体として機能するものであり、基板1と同様の素材で構成することが可能である。
次に、放射線検出装置100の作用について説明する。
まず、放射線検出装置100に対し入射された放射線は、撮像パネル51のシンチレータパネル10側から基板20d側に向けて放射線を入射する。
すると、シンチレータパネル10に入射された放射線は、シンチレータパネル10中のシンチレータ層5が放射線のエネルギーを吸収し、その強度に応じた電磁波を発光する。発光された電磁波のうち、出力基板20に入光される電磁波は、出力基板20の隔膜20a、透明電極21を貫通し、電荷発生層22に到達する。そして、電荷発生層22において電磁波は吸収され、その強度に応じて正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
その後、発生した電荷は、電源部54によるバイアス電圧の印加により生じる内部電界により正孔と電子はそれぞれ異なる電極(透明電極膜及び導電層)へ運ばれ、光電流が流れる。
その後、対電極23側に運ばれた正孔は画像信号出力層20cのコンデンサ24に蓄積される。蓄積された正孔はコンデンサ24に接続されているトランジスタ25を駆動させると、画像信号を出力すると共に、出力された画像信号はメモリ部53に記憶される。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれに限定されるものではない。
図1に示す製造装置を使用して以下の方法によりシンチレータパネルを得た。
[比較例1]
(シンチレータパネルパネルの作製)
ポリイミド樹脂シートからなる支持体の片面に蛍光体原料1(CsI:0.003Tl)、及び蛍光体原料2(CsI:0.003Tl)を蒸着させて蛍光体層を形成した。すなわち、まず、支持体回転機構を備えた支持体ホルダに支持体を設置した。次に、上記蛍光体原料を蒸着材料として蒸発源るつぼに入れ、それぞれ1個(合計2個)の蒸発源るつぼを真空容器の内部の底面付近であって、支持体に垂直な中心線(回転軸)を中心とした円の円周上に配置した。このとき、支持体と蒸発源との間隔を400mmに調節すると共に、支持体に垂直な中心線(回転軸)と蒸発源との間隔を400mmに調節した。続いて真空容器の内部を一旦排気し、Arガスを導入して0.1Paに真空度を調整した後、10rpmの速度で支持体を回転させながら支持体の温度を30℃に保持した。次いで、抵抗加熱によりるつぼ内を所定の温度に上昇させて支持体を回転させた状態で蛍光体1を蒸着開始し、蛍光体層の膜厚が30μmとなったところで蒸着を終了させた。支持体(基板)温度を200℃まで上昇させた後、次いで蛍光体2を蒸着し、蛍光体層の膜厚が450μmとなったところで蒸着を終了させた。次いで、乾燥空気内で蛍光体層を保護層袋に入れ、蛍光体層が密封された構造のシンチレータパネルを得た。
[実施例1]
比較例1のうち、蛍光体原料1をTlのみにして、シンチレータパネルを得た。
[実施例2]
実施例1のうち、蛍光体原料2を2個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着して、シンチレータパネルを得た。
[実施例3]
実施例1のうち、蛍光体原料1を2個の蒸発源ルツボに等分して蒸着を蒸着開始し、蛍光体層の膜厚が30μmとなったところで蒸着を終了させた。支持体(基板)温度を200℃まで上昇させた後、次いで蛍光体2を4個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着し、蛍光体層の膜厚が450μmとなったところで蒸着を終了させた。次いで、乾燥空気内で蛍光体層を保護層袋に入れ、蛍光体層が密封された構造のシンチレータパネルを得た。
[実施例4]
実施例3のうち、蛍光体原料2を8個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着して、シンチレータパネルを得た。
次に、以上のようにして得られたシンチレータパネルについて下記のような評価を行った。
[実施例5]
実施例4のうち、蛍光体原料1の蒸着を膜厚が100μmとなったところで蒸着を終了させ、蛍光体原料2の蒸着を膜厚が450μとなったところで蒸着を終了させ、シンチレータパネルを得た。
[実施例6]
実施例4のうち、蛍光体原料1の蒸着を膜厚が200μmとなったところで蒸着を終了させ、蛍光体原料2の蒸着を膜厚が450μmとなったところで蒸着を終了させ、シンチレータパネルを得た。
[実施例13]
実施例3のうち、蛍光体原料2を16個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着して、シンチレータパネルを得た。
[実施例14]
実施例3のうち、蛍光体原料2を24個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着して、シンチレータパネルを得た。
[実施例15]
実施例3のうち、蛍光体原料2を32個の蒸発源ルツボに等分して同一円周上に配置した上で同時に蒸着して、シンチレータパネルを得た。
次に、以上のようにして得られたシンチレータパネルについて下記のような評価を行った。
<賦活剤濃度の変動係数>
当該蛍光体層面内における賦活剤成分Tl濃度の変動係数の求め方は、次のようにして行う:得られた蛍光体層のうち、得られた任意の30箇所から蛍光体を0.2gずつ採取してICP測定し、30箇所で求められたTl濃度についての標準偏差を求め、相対標準偏差を30箇所における賦活剤濃度の平均で除して、下記式(2)で示される変動係数を求めた。
変動係数=面内の賦活剤成分Tl濃度の標準偏差/賦活剤成分Tl濃度の平均
[評価]
以上のようにして得られた放射線画像変換パネル、PaxScan2520(Varian社製FPD)にセットし下記のような評価を行った。
<輝度>
電圧80kVpのX線を試料の裏面(シンチレータ層が形成されていない面)から照射し、画像データを、シンチレータを配置したFPDで検出し、画像の平均シグナル値を発光輝度とした。そして、比較例1−1の放射線変換パネルの輝度を100とした、相対値で表示した。この値が高いほど輝度が高く優れていることを示す。
次に、得られたシンチレータパネルの蛍光体層面内の任意の10箇所について輝度を測定し、MAX値およびMIN値を用いて下記の式より輝度分布を算出した。
輝度分布=(MAX−MIN)/(MAX+MIN)×2[%]
<鮮鋭性>
(鮮鋭性の評価)
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線をFPDの放射線入射面側に照射し、画像データを検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して、当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。そして、比較例1−1の放射線変換パネルのMTFを100とした、相対値で表示した。この値が高いほど鮮鋭性に優れていることを示す。MTFはModulation Transfer Functionの略号を示す。
次に、得られたシンチレータパネルの蛍光体層面内の任意の10箇所についてMTFを測定し、MAX値およびMIN値を用いて下記の式よりMTF分布を算出した。
MTF分布=(MAX−MIN)/(MAX+MIN)×2[%]
表1に示した結果から明らかなように、Tl濃度の面内変動係数が40%以下、となる本発明に係るシンチレータパネル(実施例1〜6、13〜15)はいずれも、輝度分布およびMTF分布が良化している。
一方、Tl濃度の面内変動係数が40%より大となる従来のシンチレータパネル(比較例1)は、輝度分布およびMTF分布が悪かった。このことから、Tl濃度の面内変動係数は、40%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下であることが分かる。
[比較例2]
ガラス基板上に複数のフォトダイオードと複数のTFT素子を形成し、全体をエポキシ樹脂からなる保護層で被覆した。前記保護層上に、比較例1と同様にしてシンチレータ層を形成した。その後、シンチレータ層上にポリパラキシリレンからなる耐湿保護層(20μm)、アルミニウムからなる反射層(20nm)、エポキシ樹脂からなる保護層(100μm)を積層し、放射線検出装置を得た。
[実施例7〜12、16〜18]
放射線検出装置(比較例2)のシンチレータ層を実施例1〜6、13〜15で用いたシンチレータ層に変更することで放射線検出装置(実施例7〜12、16〜18)を得た。
得られた放射線検出装置について比較例1と同様な評価を行った。
結果を、表1に示す。
表1に示した結果から明らかなように、Tl濃度の面内変動係数が40%以下、となる本発明に係るシンチレータ層を有する放射線検出装置(実施例7〜12、16〜18)はいずれも、輝度分布およびMTF分布が良化している。
一方、Tl濃度の面内変動係数が40%より大となる従来のシンチレータ層を有する放射線検出装置(比較例2)は、輝度分布およびMTF分布が悪かった。このことから、Tl濃度の面内変動係数は、40%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下であることが分かる。
1 シンチレータパネルの製造装置
2 真空容器
3 真空ポンプ
4 支持体
5 支持体ホルダ
6 支持体回転機構
7 支持体回転軸
8 蒸発源
9 シャッタ
1x 基板
2x 中間層
3x 反射層
4x 保護層
5x シンチレータ層
6x 耐湿保護層
51 撮像パネル
10 放射線シンチレータ
100 放射線画像検出器

Claims (7)

  1. 支持体上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有するシンチレータパネルであって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とするシンチレータパネル。
  2. 請求項1に記載のシンチレータパネルの製造方法であって、真空容器内に蒸発源及び支持体回転機構を有する蒸着装置を用いて、支持体を前記支持体回転機構に設置して、当該支持体を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
  3. 前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする請求項2に記載のシンチレータパネルの製造方法。
  4. 請求項1に記載のシンチレータパネルと2次元状に複数の受光画素が配置された受光素子とを具備したことを特徴とする放射線検出装置。
  5. 基板上に形成された光電変換素子と、前記光電変換素子上に気相堆積法により形成された蛍光体柱状結晶を含有する蛍光体層を有する放射線検出装置であって、当該蛍光体柱状結晶が、母体成分:ヨウ化セシウム(CsI)と賦活剤成分:タリウム(Tl)とから形成され、その根元部分にタリウムを含まない層を有し、かつ、当該蛍光体層面内のタリウムの濃度の変動係数が40%以下であることを特徴とする放射線検出装置。
  6. 請求項5に記載の放射線検出装置の製造方法であって、真空容器内に蒸発源及び基板回転機構を有する蒸着装置を用いて、基板を前記基板回転機構に設置して、当該基板を回転しながら蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする放射線検出装置の製造方法。
  7. 前記真空容器内に複数の蒸発源を配置し、これら蒸発源に入れた2種以上の異なる組成の蛍光体材料を蒸着する工程を含む気相堆積法により、蛍光体層を形成することを特徴とする請求項6に記載の放射線検出装置の製造方法。
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