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JPWO2019130923A1 - リチウムイオン伝導体材料およびその合成方法ならびに二次電池 - Google Patents

リチウムイオン伝導体材料およびその合成方法ならびに二次電池 Download PDF

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Abstract

本発明に係るリチウムイオン伝導体材料は、組成式:M0.5−xLiyTa1−zTizO3で表記されるリチウムイオン伝導体材料であって、前記Mで表記される元素がSrおよびLaのうち少なくともSrを含む場合において、前記xはx=0.03〜0.05の範囲にあり、且つ、前記xとyが(y−x)<0.5を満足する。このような組成のペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料は、室温において極めて高いバルクイオン伝導度を示す。

Description

本発明は、二次電池等の製造に好適なリチウムイオン伝導体材料に関する。
リチウム(Li)イオン電池の電解質として、安全性に優れ、薄膜成型が容易な無機Li固体電解質(Liイオン伝導体)が切望されており、斯かる電解質を用いた全固体電池の実用化に向けた研究開発が進んでいる。
酸化物系Liイオン伝導体の中で、ぺロブスカイト型Liイオン伝導体は極めて高いイオン伝導性を示し、室温でのイオン伝導度は10−5〜10−3Scm−1に達することから、多くの研究がなされてきている。
ペロブスカイト型酸化物ABOは、酸素が頂点共有したBO八面体骨格の隙間にA原子が占有したものと考えることができるが、ぺロブスカイト型酸化物では、立方晶となる物質は殆どなく、AおよびBサイトを占有する元素によって、BO八面体のチルト(傾き)や格子歪に違いが生じ、それに伴い、物性も大きく変化する。また、ぺロブスカイト型酸化物は、A、BおよびOサイトにおいて大量の欠陥を許容でき、ぺロブスカイト型Liイオン伝導体の高いイオン伝導性は、元素置換によって生じる外因性欠陥に起因するものと考えられている。
一般に、ぺロブスカイト型酸化物中のLiはBサイトを占めることが多いが、本発明のぺロブスカイト型Liイオン伝導体中のLiはBサイトに位置しない。粉末中性子線回折実験や分子動力学シミュレーションの結果から、LiイオンはBO八面体骨格の隙間(Aサイト空間と呼ぶ)には位置するが、Aサイト空間の中で通常Aイオンが占める位置(Aサイト)からずれた位置に存在することが明らかになっている。したがって、Aサイトを含むAサイト空間には、Laなどの骨格イオン、Liイオン、Aサイト空孔が存在している。LiイオンおよびLaなどの骨格イオンは静電反発のため単位格子内のAサイトを含むAサイト空間に2つ以上存在できず、Liイオンは、Aサイト空孔を介して拡散する。
ところで、特許第5727092号明細書(特許文献1)には、高いリチウムイオン伝導性を持ち、大気中で固相反応によって容易に得ることが可能なペロブスカイト化合物の代表的なものとして知られるLa0.67-XLi3XTiO3が抱える問題点を解決課題とする、室温でのリチウムイオン伝導性が高い固体電解質材料が提案されている。
特許第5727092号明細書
本発明は、従来のものよりも更に高い室温におけるイオン伝導度を示すリチウムイオン伝導体材料、および、これを用いた二次電池を提供する。
上記課題を解決するために、本発明に係るリチウムイオン伝導体材料は、組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるリチウムイオン伝導体材料であって、前記MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含み、前記xはx=0.03〜0.05の範囲にあり、且つ、前記xとyが(y−x)<0.5を満足する、ことを特徴とする。
好ましい態様においては、前記リチウムイオン伝導体材料をICP分析して得られるLiの含有量を前記yの値に換算した値が、y=0.35〜0.39である。
また、ある態様のものでは、前記zは、z=0.290〜0.340の範囲にある。
本発明に係るリチウムイオン伝導体材料の合成方法は、組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるリチウムイオン伝導体材料を合成する方法であって、前記MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含み、Liを前記yの値に対して5〜14%の範囲で過剰に調整した原料組成物を焼成して、前記組成のリチウムイオン伝導体材料を合成する、ことを特徴とする。
本発明に係る二次電池は、正極材料、負極材料、電解質材料の何れかの材料として、上述の本発明に係るリチウムイオン伝導体材料を含む。
本発明においては、組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるリチウムイオン伝導体材料(MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含む)において、xをx=0.03〜0.05の範囲に設定し、xとyが(y−x)<0.5を満足するように材料設計したことにより、室温におけるバルクイオン伝導度が非常に高い値を示すペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料が得られる。
本発明に係るSr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料を用いて、電子伝導の寄与の程度を確認すべく行った直流電気伝導度測定の結果を示す図である。 本発明に係るSr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料からの粉末X線回折パターンである。 本発明に係るSr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料を固体電解質として用いて組み立てた二次電池の充放電特性を示す図である。 図3に示した充放電特性を測定した際の二次電池の構成概念図である。
以下に、図面を参照しながら、本発明に係るペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料について説明する。なお、以降の説明においては、Mで表記される元素はSrであるものとして説明するが、Srの一部がLaで置換されていてもよい。つまり、本発明において、Mで表記される元素は、SrおよびLaのうち少なくともSrを含むものであればよい。
[組成と室温におけるイオン伝導度]
本発明者らは、組成式(一般式)がM0.5−xLiTa1−zTiで表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料の室温におけるイオン伝導性を、組成を種々に変えた試料で調べた。
表1は、上記組成式で表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料のイオン伝導度、バルクのイオン伝導度、活性化エネルギー、および格子定数を調べた結果の一部を纏めたものである。なお、この表に示した試料は、Mで表記される元素はSrであり、上記yが0.3(すなわち、Bサイトを占めるTaとTiの比が0.7:0.3)で、上記xの値を0.03〜0.10の範囲で変えたものである。また、格子定数は、Si(純度99.999%以上)を内部標準として粉末X線回折法により求めた値である。
Figure 2019130923
300Kにおけるバルク部分及び試料全体のイオン伝導度は、ペレット状試料の両面を、短絡しないように0.2M酢酸リチウム溶液で覆い、さらにステンレス製の板で挟み込み、交流インピーダンス測定により求めた。周波数は5Hzから13MHzとした。測定結果から得られたコールコールプロットから、粒内の抵抗と粒界部分の抵抗値を算出し、以下の式(1)および式(2)に従ってバルク部分および試料全体のイオン伝導度を求めた。
Figure 2019130923
Figure 2019130923
ここで、Rbは粒内の抵抗値、Rgbは粒界の抵抗値、lはペレットの厚さ、Sはペレットの面積である。
また、室温におけるバルク部分のイオン伝導度は、以下のように金電極を用いた場合についても求め、上述した方法により求めた値と一致することを確認した。このとき、ペレット状試料の側面をマスキングして、両面に金をスパッタ法により成膜し、イオンブロッキング電極を構成した。この試料を真空乾燥したのち、300Kの温度と225Kから270Kまでの温度範囲において交流インピーダンス測定を行った。周波数は5Hzから13MHzとした。測定結果から得られたコールコールプロットから、粒内の抵抗値を算出し、上式(1)よりバルクのイオン伝導度を求めた。
また、バルク部分のイオン伝導度の活性化エネルギーEは225Kから270Kまでの温度範囲で測定したイオン伝導度から、下式(3)を使って求めた。なお、式中、Tは絶対温度(K)、Aは頻度因子、kはボルツマン定数(8.6173 x 10-5 eV K-1)である。
Figure 2019130923
表1に示したように、本発明者らの調べた範囲では、上記xの値が0.03〜0.10の範囲にあるものは、1.00 mS cm-1を超える高いバルクのイオン伝導度を示し、特に、上記xの値が0.03〜0.05の範囲にあり、且つ、xとyが(y−x)<0.5を満足するものは、1.30 mS cm-1を超える極めて高いバルクのイオン伝導度を示していた。特に、x=0.042のものでは、そのバルクのイオン伝導度は1.83 mS cm-1にも及んでおり、活性化エネルギーの極小値(0.290eV)を示している。
つまり、組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料であって、前記MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含み、前記xはx=0.03〜0.05の範囲にあり、且つ、前記xとyが(y−x)<0.5を満足するペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料は、室温において極めて高いバルクイオン伝導度を示すことが明らかとなった。そして、このようなペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料を、正極材料、負極材料、電解質材料の何れかの材料として含む二次電池は、従来にない優れた性能を示すことが明らかである。
なお、AサイトにおけるSrの占有率は(0.5−x)で与えられるから、xの値が0.03〜0.10の範囲にあることはAサイトにおけるMで表記される元素(表1に示した例ではSr)の占有率が0.40〜0.47の範囲にあることを意味し、xの値が0.03〜0.05の範囲にあることはAサイトにおけるMで表記される元素(表1に示した例ではSr)の占有率が0.45〜0.47の範囲にあることを意味する。
ここで、上記一般式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるLi組成を表すy値は、名目値ではなく、ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料をICP分析して得られるLiの含有量を前記yの値に換算した値である。Liは合成プロセス中に消失し易く、一般に、合成後の材料中のLi含有量は仕込み量を下回ることとなる。
そこで、本発明者らは、名目値としてのLi組成に対し、どの程度過剰にLiを仕込んで合成を行うと、高いバルクイオン伝導度のペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料が得られるかについて実験を行った。なお、ICP分析に用いた試料溶液は、下記の手順で調製した。先ず、約1.00mgの試料粉末を、0.3mLの濃フッ酸(約30M)と、同じく0.3mLの濃硝酸(約15M)と共に、テフロン製の容器に封入した。それを約170℃に加熱し、さらに超音波振動を加えることで完全に溶解させた。このようにして得られた溶液を、蒸留水で100mLまで希釈し、測定に用いた。
表2は、名目値としてのLi組成(ynominal)を0.384とし、その名目値に対して過剰に仕込んだLi量(Li仕込過剰量)を5〜20%とした際に得られたペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料中のICP分析で得られたLi含有量(y)を、試料全体のイオン伝導度、バルクのイオン伝導度、活性化エネルギー、および格子定数とともに纏めた表である。
Figure 2019130923
この表に示した結果によれば、名目値としてのLi組成が0.384の場合、10〜14%程度過剰にLiを仕込んだ場合に、概ね名目値に近いLi含有量のものが得られている。そして、ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料をICP分析して得られるLiの含有量を前記yの値に換算した値が、y=0.35〜0.39の範囲にあるものは、1.7mS cm-1を上回る極めて高いバルクのイオン伝導度を示している。
この結果により、上述したペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料をICP分析して得られるLiの含有量を上記y値に換算した値が、y=0.35〜0.39であるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料は、室温において極めて高いバルクイオン伝導度を示すことが明らかとなった。
また、Mで表記される元素がSrおよびLaのうち少なくともSrを含む場合の組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料を合成する方法において、Liを前記yの値に対して5〜14%の範囲で過剰に調整した原料組成物を焼成して合成すると、室温において極めて高いバルクイオン伝導度を示すペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料が得られることが分かる。
表3は、名目値としてのLi組成(ynominal)を0.374〜0.417の範囲で変え、その名目値に対する仕込み過剰量を5%とし、Ti含有量(組成比:z)を0.290〜0.333の範囲で変化させて得られたペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料中の試料全体のイオン伝導度、バルクイオン伝導度、活性化エネルギー、および格子定数を纏めた表である。
Figure 2019130923
この表に示した結果によれば、Ti含有量zがz=0.290〜0.340の範囲にあるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料は、1.5mS cm-1を上回る極めて高いバルクイオン伝導度を示している。
[リチウムイオン伝導体材料中の電子伝導]
図1は、本発明に係るSr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料を用いて、電子伝導の寄与の程度を確認すべく行った直流電気伝導度測定の結果を示す図である。この際、イオン伝導度の測定と同様にペレット状試料の両面に金電極を施した後、測定を行なった。ペレットの厚さは0.847mm、電極の面積は7,548mmである。なお、上記組成式中のLi含有量を示す0.384の値は名目値であり、当該材料を合成するに際しては、Li原料を10%過剰に仕込み、1300℃で12時間の処理を行っている。
この測定結果によれば、上記材料中での電子伝導度σ(DC)は1.0×10−8Scm-1であり、イオン伝導度σall(AC)の値である1.1×10−3Scm-1の0.001%程度の値となっている。つまり、本発明に係るペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料中では、電子伝導の寄与は無視でき、電気伝導のすべてがイオン伝導によるものとして取り扱ってよい。
[粉末X線回折パターン]
図2は、上記本発明に係るSr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料からの、粉末X線回折パターンである。
なお、「ペロブスカイト型」とは、ペロブスカイト型の結晶構造を有していることを意味しており、この結晶構造は立方晶系の結晶構造とは限らない。また、本発明に係るペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料は、粉体(多結晶)としての利用はもとより、単結晶としての利用も可能であることは言うまでもない。
[二次電池用固体電解質としての利用]
図3は、本発明に係るペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料を固体電解質として用いて組み立てた二次電池の充放電特性を示す図であり、図4は、図3に示した充放電特性を測定した際の二次電池の構成概念図である。
具体的には、Sr0.458Li0.384Ta0.7Ti0.3で表記されるペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料をペレット10とし、このペレット10の片面にパルスレーザーデポジション(PLD)法を用いて正極材料であるLiCoOの薄膜20を形成し、500℃で熱処理した後、X線回折法により菱面体晶のLiCoOの生成を確認した。その後、LiCoOの薄膜20の上にAuの蒸着膜30を形成し、400℃で熱処理した。
SUS製の二極式セル中に、負極であるリチウム金属膜40、1MのLiPF エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(30:70vol/vol%)溶液を含浸させたポリプロピレン製セパレータ50、LiCoO薄膜20とAu蒸着膜30を形成した上述のペレット10、およびAu蒸着膜30に対向させたAlメッシュ60を図4に示したように配置して二次電池を組み立て、リチウム金属膜40とAlメッシュ60を電極として充放電装置70を接続した。
この二次電池の充放電を、充電容量を140mAh/gとして30℃において繰り返した結果が図3である。図3に示した結果から、本発明に係るペロブスカイト型のリチウムイオン伝導体材料が、リチウム二次電池の固体電解質として十分に機能することが理解できる。
本発明は、室温で高いイオン伝導度を示すペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料を提供する。
10 ペロブスカイト型リチウムイオン伝導体材料ペレット
20 LiCoO薄膜
30 Au蒸着膜
40 リチウム金属膜
50 ポリプロピレン製セパレータ
60 Alメッシュ
70 充放電装置

Claims (5)

  1. 組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるリチウムイオン伝導体材料であって、前記MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含み、前記xはx=0.03〜0.05の範囲にあり、且つ、前記xとyが(y−x)<0.5を満足する、リチウムイオン伝導体材料。
  2. 前記リチウムイオン伝導体材料をICP分析して得られるLiの含有量を前記yの値に換算した値が、y=0.35〜0.39である、請求項1に記載のリチウムイオン伝導体材料。
  3. 前記zは、z=0.290〜0.340の範囲にある、請求項1または2に記載のリチウムイオン伝導体材料。
  4. 組成式:M0.5−xLiTa1−zTiで表記されるリチウムイオン伝導体材料を合成する方法であって、
    前記MはSrおよびLaのうち少なくともSrを含み、
    Liを前記yの値に対して5〜14%の範囲で過剰に調整した原料組成物を焼成して、前記組成のリチウムイオン伝導体材料を合成する方法。
  5. 正極材料、負極材料、電解質材料の何れかの材料として、請求項1または2に記載のリチウムイオン伝導体材料を含む、二次電池。

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