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JPWO2018105722A1 - 植物共生微生物群の選抜方法、及び微生物混合物 - Google Patents

植物共生微生物群の選抜方法、及び微生物混合物 Download PDF

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JPWO2018105722A1
JPWO2018105722A1 JP2018555076A JP2018555076A JPWO2018105722A1 JP WO2018105722 A1 JPWO2018105722 A1 JP WO2018105722A1 JP 2018555076 A JP2018555076 A JP 2018555076A JP 2018555076 A JP2018555076 A JP 2018555076A JP WO2018105722 A1 JPWO2018105722 A1 JP WO2018105722A1
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Abstract

本発明は、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の選抜方法、及び当該方法を用いて自然界から選抜された、植物体と共生して環境ストレス及び/又は病害ストレスの下での植物体の生育を可能とする微生物混合物を提供する。すなわち、1又は複数の植物体を、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下、微生物混合物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する第1選抜工程と、を有する、植物共生微生物群の選抜方法である。

Description

本発明は、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の選抜方法、当該方法を用いて自然界から選抜された、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とする微生物混合物、及び当該方法を用いて自然界から選抜された、植物体と共生して高浸透圧ストレス下での植物体の生育を可能とする微生物混合物に関する。
本願は、2016年12月8日に出願された米国特許出願62/431443号、2016年12月15日に出願された米国特許出願62/434427号、2017年1月23日に出願された米国特許出願62/449118号、2017年1月23日に出願された米国特許出願62/449122号、及び2017年4月21日に出願された米国特許出願62/488069号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
微生物の中には、植物と共生し、その生育を助ける働きをするものがある。例えば、マメ科植物の根に共生する根粒菌は、大気中の窒素を植物が利用可能な窒素化合物に変換する。この根粒菌による窒素固定により、マメ科植物は肥料分の少ない土壌でも生育が可能となる。近年、植物体の免疫を高めたり、生育を促進したり、栄養素の欠乏を補ったり、様々な環境ストレスに対する耐性を高めたりする作用を有する共生微生物があることがわかってきた。そこで、このような共生微生物を利用し、必須栄養素が欠乏している土壌や塩濃度の高い土壌等の厳しい環境下でも植物の生育を可能にしようという試みがなされている。
土壌等の自然界には数多の微生物が存在しており、植物と共生可能な有用な微生物も多く存在していることが期待される。しかしながら、多くの微生物は、汎用されている培地等では培養が困難な、いわゆる難培養性微生物であるため、一般的に行われている平板培養法によっては、自然界の極一部の微生物しか分離できず、その有用性を調べることができない。そこで、難培養性微生物を自然界から分離する方法として、例えば、特許文献1には、自然界から抽出された微生物を無菌ウキクサ(Spirodela polyrrhiza)の根に付着させ、当該無菌ウキクサと共に液体培地にて培養する方法が開示されている。ウキクサ科植物を微生物培養のための支持体として用いることにより、自然界から採取された試料から直接、平板培養法により微生物を分離する従来の方法では分離取得できなかった微生物も取得できる。
特開2009−195124号公報
自然界から植物の生育に有用な微生物を見つけるためには、従来は、まず、自然界から微生物を単離した後、有用か否かを調べる方法により行われる。例えば、特定の環境ストレス下での植物体の生育を可能とする共生微生物を見つける場合には、自然界から単離された微生物を植物体に接種し、環境ストレス下で一定期間生育させる。生育できた植物体から微生物を回収することにより、目的の有用共生微生物が得られる。
しかしながら、微生物の中には、特定の微生物混合物の状態ではじめて有用性を発揮するものがあるが、多数の微生物の組み合わせをそれぞれ実験して有用性を調べるのは労力が多く非常に困難である。また、有用性を発揮するための必要な微生物が全て単離できていない場合もある。
上記現状に鑑み、本発明は、環境ストレス(非生物学的ストレス)及び/又は病害ストレス(生物学的ストレス)の下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の選抜方法、当該方法を用いて自然界から選抜された、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とする微生物混合物、及び当該方法を用いて自然界から選抜された、植物体と共生して乾燥ストレス下での植物体の生育を可能とする微生物混合物を提供することを目的とする。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法、植物体の生育方法、及び微生物混合物は、下記[1]〜[22]である。
[1] 1又は複数の植物体を、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下、微生物混合物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する第1選抜工程、
を有する、植物共生微生物群の選抜方法。
[2] 前記第1選抜工程の後、下記(1)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す、前記[1]の植物共生微生物群の選抜方法:
前記第1選抜工程の後、
(1) 1又は複数の植物体を、前記ストレス下、前記選抜された微生物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程。
[3] 前記工程(1)における前記ストレスの強度を、前記サイクルを繰り返すごとに順次強くする、前記[2]の植物共生微生物群の選抜方法。
[4] 前記サイクルを2回以上繰り返す場合に、前記工程(1)における前記ストレスの種類を、前記サイクルを繰り返すごとに順次追加する、前記[2]又は[3]の植物共生微生物群の選抜方法。
[5] 前記第1選抜工程の後、前記選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する第1培養工程と、
を有する、前記[1]の植物共生微生物群の選抜方法。
[6] 前記第1培養工程の後、下記(1’)工程及び(2’)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す、前記[5]の植物共生微生物群の選抜方法。
(1’)1又は複数の植物体を、前記ストレス下、前記植物共生微生物群の培養物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程と、
(2’)前記(1’)工程において選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する工程。
[7] 前記(1’)工程における前記ストレスの強度を、前記サイクルを繰り返すごとに順次強くする、前記[6]の植物共生微生物群の選抜方法。
[8] 前記サイクルを2回以上繰り返す場合に、前記(1’)工程における前記ストレスの種類を、前記サイクルを繰り返すごとに順次追加する、前記[6]又は[7]の植物共生微生物群の選抜方法。
[9] 前記ストレスの強度が、無菌状態では植物体の生育率が50%未満となる強度である、前記[1]〜[8]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法。
[10] 前記第1選抜工程、前記(1)工程、又は前記(1’)工程において、前記微生物を含む溶液に、植物体の根を浸漬させる、前記[2]又は[6]の植物共生微生物群の選抜方法。
[11] 前記環境ストレスが、塩ストレス、乾燥ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、又は高温ストレスであり、前記病害ストレスが、病原菌によるストレス又は病害虫によるストレスである、前記[1]〜[10]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法。
[12] 前記環境ストレスが、塩ストレス、高浸透圧ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、及び高温ストレスからなる群より選択される2種以上である、前記[1]〜[10]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法。
[13] 前記第1選抜工程において、植物体の少なくとも一部を浸漬させる溶液中の微生物が、自然界から採取された1種又は2種以上の試料から抽出された微生物である、前記[1]〜[12]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法。
[14] 前記試料が土壌である、前記[13]の植物共生微生物群の選抜方法。
[15] 前記[1]〜[14]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群を根に付着させた状態で、前記ストレス下で植物体を生育させる生育工程と、
を有する、植物体の生育方法。
[16] 前記生育工程が、
無菌状態で水耕栽培した後、根に前記植物共生微生物群を付着させた植物体を、土壌へ移植し、前記ストレス下で生育させる工程である、前記[15]の植物体の生育方法。
[17] 前記[1]〜[16]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群。
[18] 前記[1]〜[16]のいずれかの植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群から単離された1種以上の微生物。
[19] 配列番号1で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-1株と、
配列番号2で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-2株と、
配列番号3で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-3株と
を含有し、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とする、微生物混合物。
[20] Bacillus pumilus CRCO-1株の存在比率が70〜90%であり、Bacillus pumilus CRCO-2株の存在比率が5〜20%であり、Bacillus pumilus CRCO-3株の存在比率が1〜15%である、前記[19]の微生物混合物。
[21] 配列番号6で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-4株と、
配列番号7で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-5株と、
を含有する、植物体と共生して高浸透圧ストレス下での植物体の生育を可能とする、微生物混合物。
[22] Bacillus cereus CRCO-4株の存在比率が80〜95%であり、Bacillus cereus CRCO-5株の存在比率が5〜20%である、前記[21]の微生物混合物。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法により、植物体に共生し、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群を、集団として選抜することができる。
また、本発明に係る微生物混合物は、共生する植物体の耐塩性又は高浸透圧耐性を向上させることができるため、当該微生物混合物を植物体に接種させて共生させることにより、高塩濃度環境下又は乾燥環境下における生育性を高めることができる。
参考例1において、種子3を播種した状態のポット1(左図)と、植物体4が成長した状態のポット1(右図)を模式的に示した図である。
<植物共生微生物群の選抜方法>
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法は、1又は複数の植物体を、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下、微生物混合物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する第1選抜工程を有する。本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法では、予め単離された複数の微生物を組み合わせて植物体に接種して、ストレス下における植物体の生育を可能にする組み合わせを見つける方法とは異なり、複数種類の微生物の混合物から、ストレス下における植物体の生育を可能にする組み合わせからなる共生微生物群を直接回収するため、有用な共生微生物群を比較的容易に選抜することができる。
前記第1選抜工程において植物体に接種させる微生物混合物を構成する微生物は、特に限定されるものではなく、自然界から採取された試料から抽出された微生物であってもよく、人工的な環境から採取された試料から抽出された微生物であってもよい。本発明においては、植物体に接種させる微生物は、自然界から採取された試料から抽出された微生物であることが好ましい。自然界から採取された試料としては、例えば、森林、湿地帯、平原、耕作地、水田等の土壌;海、河川、湖沼、温泉等の水や底泥;又は、動植物等が挙げられる。人工的な環境から採取された試料としては、例えば、食品工場、下水道処理施設、ごみ処理施設、病院等から採取された試料が挙げられる。これらの試料からの微生物の抽出は、常法により行うことができる。
本発明において植物体に接種させる微生物混合物は、1種類の試料から抽出された微生物の混合物であってもよく、2種類以上の試料から抽出された微生物の混合物であってもよい。本発明においては、試料から抽出された微生物を溶液に懸濁させた状態で植物体に接種させるため、2種類以上の試料から抽出された微生物を1度の操作でまとめて植物体に接触させることができる。例えば、5種類の土壌を試料とする場合に、土壌ごとに微生物を抽出して懸濁液を調製し、それぞれを別個に植物体に接触させてもよく、土壌ごとに抽出した微生物を1の溶液に懸濁して、同時に植物体に接触させてもよく、土壌を予め混合し、土壌混合物から微生物を抽出して懸濁液を調製し、当該懸濁液を植物体に接触させてもよい。複数種類の試料に由来する微生物を混合した状態で植物体に接触させることにより、植物共生微生物群の選抜に要する労力を抑えることができ、より共生効果の高い微生物群が得られやすくなることが期待できる。
前記第1選抜工程において植物体に接種させる微生物は、既に単離されている微生物に対して変異処理が施された微生物であってもよい。変異処理としては、例えば、紫外線やX線、ガンマ線等のエネルギー線による処理や、エチルメタンスルホネート(EMS)、N−メチル−N−ニトロソグアニジン(NTG)、亜硝酸等の変異原による処理等が挙げられる。本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を用いることにより、変異処理が施された微生物から有用な植物共生微生物群を容易に選抜することができる。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法においては、植物体を浸漬させる溶液(以下、「浸漬用溶液」ということがある。)に微生物混合物を含有させる。植物体への微生物混合物の接種を、平板培地等の固体培地中ではなく、微生物の移動の自由度が高い水性媒体中で行うことにより、様々な組み合わせの微生物群が形成されやすくなる結果、ストレス下での植物体の生育を可能とする有用な微生物群が植物体中又はその表面に共生しやすくなる。なお、「微生物群」は、2種以上の微生物からなる群を意味する。本発明において選抜される植物共生微生物群は、属種の異なる2種以上の微生物からなる群であってもよく、同一の種に属する2種以上の株からなる微生物群であってもよい。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法においては、植物体に微生物を接種させるために、植物体の少なくとも一部分を、微生物混合物を含む浸漬用溶液に浸漬させる。浸漬用溶液に浸漬させる植物体の部分は、浸漬させた状態の植物体が、環境ストレス及び病害ストレスがない状態であれば生育可能な部分であればよく、例えば、根、茎、葉、地下茎等のいずれの部分であってもよい。
本発明においては、植物体の生育に対する影響が比較的少ないことから、植物体の根のみを、微生物混合物を含む浸漬用溶液に浸漬させることが好ましい。この場合、浸漬用溶液は、根から接種させる各種栄養分を含有する液肥であることが好ましい。例えば、植物体の根の付け根部分を、ロックウール、寒天培地、土壌等の固体支持体で支持させ、根の下の部分を液肥に浸漬させる水耕栽培容器を使用し、液肥に微生物混合物を含有させることにより、根の部分のみを微生物混合物を含む浸漬用溶液に浸漬させた状態で植物体を生育させることができる。使用する液肥の組成は、生育させる植物体の生物種に応じて適宜調節することができる。例えば、MS(Murashige-Skoog)培地、B5(Gamborg's B5)培地、White培地、又はこれらの改変培地等を用いることができる。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法において用いられる植物体の生物種は、特に限定されるものではなく、どのような種類の植物であっても用いることができる。特に、有用な共生微生物群は、植物の種類によって異なる可能性が高いため、目的のストレス下での生育を可能にしたい植物を用いることが好ましい。例えば、塩害のひどい地域において栽培したい作物がある場合には、当該作物を用いて本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を行う。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法において用いられる植物体は、無菌的に栽培されたものであることが好ましい。例えば、滅菌処理した種子を無菌的な環境下で栽培された植物体を用いることにより、植物体からの微生物の持ち込みを防止することができる。種子の滅菌処理は、次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸漬させる方法や、塩素ガスを用いる方法等の常法により行うことができる。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法においては、一の微生物を含有させた浸漬用溶液(一の容器に入れた微生物を含有させた浸漬用溶液)に、1本の植物体を浸漬させてもよいが、複数の植物体を浸漬させることが好ましい。複数の植物体に、微生物の移動自由度が高い状態で同時に接種させることにより、微生物が植物体と共生する機会が増え、有用な微生物群の選抜を効率よく行うことができる。本発明においては、一の浸漬用溶液に浸漬させる植物体の数は、8以上が好ましく、24以上がより好ましく、48以上がさらに好ましく、96以上がよりさらに好ましい。用いる植物体が、水生植物や水耕栽培可能な植物の場合には、充分量の浸漬用溶液に多数の植物体の根を浸漬させることができるため、共生微生物群の選抜をより効率よく行うことができる。
本発明及び本願明細書において、環境ストレスとは、植物が外界から受ける様々なストレスを意味する。環境ストレスとしては、例えば、塩ストレス(高すぎる塩濃度によるストレス)、乾燥ストレス(高浸透圧ストレス)、栄養ストレス(必要な栄養素の欠乏や過多によるストレス)、低温ストレス(凍結ストレスを含む。)、及び高温ストレス等が挙げられる。栄養ストレスとしては、例えば、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫黄(S)等の植物の生育に必須の栄養成分の欠乏によるストレスが挙げられる。その他の環境ストレスとしては、例えば、主に酸性土壌で問題になるアルミニウムストレスをはじめとする有毒物質の存在によるストレスが挙げられる。また、本発明及び本願明細書において、病害ストレスとしては、例えば、病原菌、病害虫等による生物的ストレスが挙げられる。
例えば、微生物混合物を含む浸漬用溶液の塩濃度を高くすることにより、生育させる植物体に塩ストレスをかけることができる。同様に、当該浸漬用溶液のアルミニウムイオン濃度を高くすることにより、生育させる植物体にアルミニウムストレスをかけることができる。また、乾燥ストレスは主に乾燥による高浸透圧状態により引き起こされるため、当該浸漬用溶液のポリエチレングリコール(PEG)、マンニトール、スクロース等の濃度を高くして高浸透圧状態で植物体を生育することにより、乾燥ストレスをかけることができる。逆に、当該浸漬用溶液から必須栄養成分の含有量を低減させる、又は含有させないことにより、生育させる植物体に栄養欠乏ストレスをかけることができる。その他、植物体の生育を行う環境温度を制御することにより、生育させる植物体に低温ストレスや高温ストレスをかけることができる。また、植物体に感染させる病原菌や病害虫の量を多くすることにより、病害ストレスの強度を強めることもできる。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法において、生育させる植物体にかけるストレスは、1種類のみであってもよく、2種類以上を組み合わせてもよい。例えば、PEG等の濃度と塩濃度の両方を高めた浸漬用溶液を使用することにより、植物体に塩ストレスと乾燥ストレスを同時にかけることができ、植物体に耐塩性と乾燥ストレス耐性の両方を付与できる共生微生物群を選抜することができる。ストレスの組み合わせは特に限定されるものではなく、2種類以上の環境ストレスを組み合わせてもよく、環境ストレスと病害ストレスを組み合わせてもよい。
ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群を効率よく選抜するために、環境ストレスや病害ストレスの強度は、無菌的な条件では植物体の正常な生育ができずに枯れてしまうなど、表現型に対して何等かの影響がでる程度の強度であることが好ましく、無菌的な条件では植物体の生育自体が困難な強度であることがより好ましい。より具体的には、ストレスの強度を、無菌状態では同じ生物種の植物体の生育率が0%以上50%未満となる強度とすることが好ましく、0%以上30%以下となる強度とすることがより好ましい。ストレスの強度をこのような範囲にすることにより、共生により目的のストレス耐性を付与できる共生微生物群の選抜をより効率よく行うことができる。
環境ストレス及び/又は病害ストレスの下、微生物混合物を含む浸漬用溶液に浸漬させた状態で一定期間生育させることにより、微生物を適切な組み合わせで植物体に共生させる。生育させる期間は特に限定されるものではなく、ストレスの影響が植物体にあらわれるために充分な期間であればよく、植物体の種類やストレスの種類等を考慮して適宜決定することができる。例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を使用する場合、ストレス下での生育期間を3日〜1ヶ月、好ましくは7〜21日間とすることができる。
ストレス下では、無菌状態の植物体は正常には生育できないが、植物体に適切な共生微生物群が形成されると、それらの微生物の働きにより、当該植物体は生育し易くなる。つまり、ストレス下、微生物混合物を含む浸漬用溶液に浸漬させた状態で一定期間生育させた場合に、生育が可能となっている植物体や他の植物体よりも明らかにストレスの影響が小さい植物体には、当該ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群が共生している。そこで、一定期間生育後に生育している植物体に付着している微生物を回収し、これらをストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する。植物体からの微生物の回収は、常法により行うことができる。また、生育している植物体からの微生物の回収は、植物体ごとにそれぞれ別個に回収してもよく、全て纏めて回収してもよい。
前記第1選抜工程により選抜された植物共生微生物群は、取扱い性に優れることから、一般的に微生物の培養に用いられる微生物培養用培地中で培養可能なものが好ましい。当該微生物培養用培地としては、例えば、LB(Luria-Bertani)培地、TBS(Tryptic Soy Broth)培地、麦芽エキス培地、オートミール培地、YM(Yeast Malt peptone)培地、YPD(Yeast Peptone D-Glucose)培地、NB(nutrient broth)培地、R2A培地、PGY培地、GYMP培地(グルコース 1%、酵母エキス 0.5%、麦芽エキス 0.3%、ペプトン 0.5%、pH6.0)、MRS(de Man-Rogosa-Sharpe)培地、PSA(Potato Sucrose Agar)培地、SWS(Seawater Starch Agar)培地等が挙げられる。
また、ストレス下で植物体に共生させる選抜工程を繰り返すことにより、選抜される植物共生微生物群の構成する微生物の種類や存在比をより最適化することができ、ストレス下での植物体の生育を助ける共生効果がより優れた植物共生微生物群を選抜することができる。具体的には、前記第1選抜工程の後、下記(1)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す。
(1)1又は複数の植物体を、ストレス下、前記選抜された微生物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程。
前記サイクルを1回のみ行う場合、工程(1)における「選抜された微生物」は、前記第1選抜工程において選抜された植物共生微生物群である。前記サイクルを2回(2ラウンド)以上繰り返す場合には、工程(1)における「選抜された微生物」は、前回のラウンドの工程(1)において選抜された植物共生微生物群である。例えば、前記サイクルを3回繰り返す場合には、1ラウンド目の工程(1)における「選抜された微生物」は第1選抜工程において選抜された植物共生微生物群であり、2ラウンド目の工程(1)における「選抜された微生物」は1ラウンド目の工程(1)において選抜された植物共生微生物群であり、3ラウンド目の工程(1)における「選抜された微生物」は2ラウンド目の工程(1)において選抜された植物共生微生物群である。
前記第1選抜工程において選抜された微生物は、通常は複数の種類の微生物からなる混合物である。当該微生物に含まれている微生物の多くは同定されていないか、難培養性微生物であり、培養可能な微生物培養用培地の種類は不明である。このため、当該微生物を1種類の微生物培養用培地で培養した場合には、当該培地の栄養組成が不適切な微生物が脱落してしまう結果、得られた培養物から、目的のストレス下での植物体の生育を可能とする能力が損なわれてしまう場合が多い。そこで、本発明では、第1培養工程として、第1選抜工程の後、選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製することが好ましい。すなわち、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法は、前記第1選抜工程の後、前記選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する第1培養工程と、を有することが好ましい。栄養組成の異なる複数の微生物培養用培地で培養し、各微生物培養用培地で増殖させた微生物を全て混合した微生物混合物を選抜された植物共生微生物群の培養物とすることにより、選抜された微生物群を構成する1種又は2種以上の微生物が培養工程で脱落してしまうリスクを顕著に低減させることができる。前記第1選抜工程の後、前記第1培養工程とを有することにより、植物体に共生し、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群を、集団として選抜し、かつ効率的に増殖させることができる。
培養工程において、選抜工程で選抜された植物共生微生物群を培養するための微生物培養用培地としては、一般的に微生物の培養に用いられる微生物培養用培地の中から適宜選択して用いることができる。当該微生物培養用培地としては、前記と同様の培地を用いることができる。一般的に微生物の培養に用いられる微生物培養用培地を用いることにより、選抜された微生物群を構成する微生物として、一般的に微生物の培養に用いられる微生物培養用培地中で培養可能なものがより選択的に選抜されるため、目的のストレス下での植物体の生育を可能とする能力を備える植物共生微生物群のうち、より取扱い性に優れる植物共生微生物群を選抜できる。
また、培養後、微生物の増殖が確認された場合であっても、前記第1選抜工程において選抜された微生物混合物に含まれていた微生物のうち、ストレス下での植物体の生育を可能とするために必要な全ての種類の微生物が、前記第1培養工程において培養可能であったかどうかを確認するために、再度、選抜工程を行うことが好ましい。具体的には、複数の微生物培養用培地中で一定期間培養された微生物を全て混合した微生物混合物を植物体に接種させ、この接種させた植物体が、前記第1選抜工程と同様の条件で生育可能かどうかを確認する。すなわち、1又は複数の植物体を、環境ストレス下、複数の微生物培養用培地から得られた培養物を混合した微生物混合物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させる。当該植物体が生育した場合には、培養工程において使用した複数の微生物培養用培地により、目的の植物共生微生物群を構成する微生物の全てが培養可能であるといえる。生育している植物体に付着している微生物は回収され、ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜される。
また、ストレス下で植物体に共生させる選抜工程とその後の培養工程とを繰り返すことにより、選抜される植物共生微生物群の構成する微生物の種類や存在比をより最適化することができ、ストレス下での植物体の生育を助ける共生効果がより優れた植物共生微生物群を選抜することができる。具体的には、前記第1培養工程の後、下記(1’)工程及び(2’)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す。
(1’)1又は複数の植物体を、前記ストレス下、前記植物共生微生物群の培養物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程と、
(2’)前記(1’)工程において選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する工程。
前記サイクルを1回のみ行う場合、(1’)工程における「植物共生微生物群の培養物」は、前記第1培養工程において調製された植物共生微生物群の培養物である。前記サイクルを2回(2ラウンド)以上繰り返す場合には、(1’)工程における「植物共生微生物群の培養物」は、前回のラウンドの(2’)工程において調製された植物共生微生物群の培養物である。例えば、前記サイクルを3回繰り返す場合には、1ラウンド目の(1’)工程における「植物共生微生物群の培養物」は、前記第1培養工程において調製された植物共生微生物群の培養物であり、2ラウンド目の(1’)工程における「植物共生微生物群の培養物」は1ラウンド目の(2’)工程において調製された植物共生微生物群の培養物であり、3ラウンド目の(1’)工程における「植物共生微生物群の培養物」は2ラウンド目の(2’)工程において調製された植物共生微生物群の培養物である。
前記(1)工程又は前記(1’)工程において、使用する植物体の種類や数、微生物を含む浸漬用溶液に浸漬させる植物体中の部位、ストレスの種類、植物体を生育させる期間や条件等は、前記第1選抜工程と同様にして行うことができる。また、前記(2’)工程において複数種類の微生物培養用培地で増殖させた場合、微生物培養用培地の種類ごとにそれぞれ別の浸漬用溶液に含有させて植物体に共生させてもよく、複数種類の微生物培養用培地で増殖させた微生物を一の浸漬用溶液に含有させて植物体に共生させてもよい。
前記(1)工程又は前記(1’)工程において、植物体を生育させる際のストレスの強度は、前記第1選抜工程と同じとしてもよいが、前記第1選抜工程よりも強くすることが好ましい。同様に、前記サイクルを2回(2ラウンド)以上繰り返す場合には、工程(1)又は(1’)工程におけるストレスの強度を、前記サイクルを繰り返すごとに順次強くすることが好ましい。特定のストレス強度のストレス下での生育を可能とする植物共生微生物群の選抜を目的とする場合に、前記第1選抜工程を当該目的のストレス強度で行う場合よりも、前記第1選抜工程のストレス強度は比較的弱くし、前記サイクルを繰り返して最終的に所望のストレス強度で選抜工程を行うようにするほうが、目的のストレス下での生育を可能とする植物共生微生物群をより効率よく選抜することができる。例えば、最終的に2質量%食塩濃度の塩ストレス下での生育を可能とする植物共生微生物群の選抜を目的とする場合、前記第1選抜工程を1質量%の塩ストレス下で行い、次いで、1ラウンド目のサイクルにおける前記工程(1)又は前記(1’)工程を1.5質量%の塩ストレス下で行い、2ラウンド目のサイクルにおける前記工程(1)又は前記(1’)工程を2.0質量%の塩ストレス下で行うことによって、効率よく目的の植物共生微生物群を選抜できる。
前記サイクルは、(1)工程に加えて、又は(1’)工程及び(2’)工程に加えて、他の工程を有していてもよい。例えば、前記(1)工程又は前記(1’)工程の前に、前回のラウンドで選抜された微生物を洗浄する工程を有していてもよい。微生物の洗浄に用いる溶液は特に限定されるものではなく、前記(1)工程又は前記(1’)工程において培養に用いる培養液であってもよく、リン酸ナトリウム緩衝液等のような緩衝液であってもよい。
前記(1)工程を含むサイクルを繰り返す場合、又は前記(1’)工程及び(2’)工程を含むサイクルを繰り返す場合には、各サイクルにおいて植物体に与えるストレスの種類を変えたり、ストレスを追加してもよい。例えば、1回目のサイクルでは塩ストレスをかけ、その後の2回目のサイクルでは乾燥ストレスをかけてもよい。また、1回目のサイクルでは塩ストレスをかけ、その後の2回目のサイクルでは塩ストレスと乾燥ストレスの両方をかけてもよい。複数のストレスを同時に、又はサイクルごとにそれぞれかけることにより、複数のストレスに対する耐性を付与できる植物共生微生物群を選抜できる。
複数のストレスに対する耐性を付与できる植物共生微生物群は、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を、ストレスの種類を変えて重ねて実施することにより選抜することもできる。例えば、塩ストレスと乾燥ストレスの両方に対して耐性を付与できる植物共生微生物群は、次のようにして選抜できる。まず、塩濃度を高めた浸漬用溶液を用いて本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を行い、耐塩性を付与できる植物共生微生物群を選抜する。次いで、選抜された植物共生微生物群を付着させた植物体に対して、PEG等の濃度と塩濃度の両方を高めた浸漬用溶液を用いて本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を行うことによって、耐塩性と乾燥ストレス耐性の両方を付与できる共生微生物群を選抜することができる。最初の塩ストレスのみの下で植物体に接触させる微生物混合物と、その後に行う塩ストレスと乾燥ストレスの両方の下で植物体に接触させる微生物混合物は、同じものであってもよく、別の試料から抽出された微生物混合物であってもよい。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法において、選抜される植物体を、単に生育しているものではなく、特定の表現型を示して生育している植物体としてもよい。例えば、塩ストレス下では、葉が大きくなったり、成熟が早くなったり、果実等の収量が多くなる等の表現型を示す植物体がある。そこで、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法を用いて塩ストレス下での生育を可能とする植物共生微生物群を選抜する際に、前記第1選抜工程、前記(1)工程、又は前記(1’)工程において、目的の表現型を示す植物体のみから微生物を回収することにより、塩ストレス下で当該特定の表現型を示す植物体の生育を可能とする植物共生微生物群を選抜することができる。
本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群を、植物体に共生させることにより、植物体のストレス耐性を顕著に改善することができる。すなわち、選抜された植物共生微生物群を根に付着させた状態で、ストレス下で植物体を生育させることができる。本発明においては、植物体への接触と共生が比較的容易であることから、選抜された植物共生微生物群は、根に付着させることが好ましい。また、植物共生微生物群は、選抜工程で使用した植物体と同種の植物体のみならず、異種の植物体をストレス下で生育させる際に共生させてもよい。また、植物共生微生物群を共生させた後の植物体のストレス下での栽培は、水耕栽培で行ってもよく、土壌等で栽培してもよい。例えば、無菌状態で水耕栽培した後、根に選抜された植物共生微生物群を付着させた植物体を、土壌へ移植し、ストレス下で生育させることができる。
<耐塩性共生微生物群>
本発明に係る第1の微生物混合物は、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とするものであり、配列番号1で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-1株と、配列番号2で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-2株と、配列番号3で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-3株とを含有する。これらの3株を含有する微生物混合物は、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群として、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法により土壌より選抜された。
Bacillus pumilus CRCO-1株とBacillus pumilus CRCO-2株は、16S rDNAの塩基配列のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool) Searchの検索の結果、100%一致した微生物はなく、かつ、Bacillus pumilus(アクセッション番号:KF923448.1)との配列相同性がいずれも99%以上であったことから、いずれもBacillus pumilusの新規株であることが確認された。また、Bacillus pumilus CRCO-3株は、16S rDNAの塩基配列がBacillus pumilus(アクセッション番号:KF923448.1)と100%一致しており、Bacillus pumilusの既知株であることが判明した。Bacillus pumilusは、一般的に土壌に存在している微生物である。なお、Bacillus pumilus CRCO-1株とBacillus pumilus CRCO-2株は、16S rDNAの塩基配列における配列相同性が99%以上であったことから、NCBI(National Center for Biotechnology Information)に登録されたUncultured Bacillus sp.(アクセッション番号:HM152710.1)の近縁種と推察された。なお、当該微生物は難培養性微生物として遺伝子だけが知られていたものである。
本発明に係る第1の微生物混合物におけるBacillus pumilus CRCO-1株とBacillus pumilus CRCO-2株とBacillus pumilus CRCO-3株との存在比(微生物数比)としては、特に限定されるものではない。本発明に係る第1の微生物混合物におけるBacillus pumilus CRCO-1株の存在比としては、70〜90%が好ましく、75〜85%がより好ましい。本発明に係る第1の微生物混合物におけるBacillus pumilus CRCO-2株の存在比としては、5〜20%が好ましく、5〜15%がより好ましい。本発明に係る微生物混合物におけるBacillus pumilus CRCO-3株の存在比としては、1〜15%が好ましく、1〜10%がより好ましい。
本発明に係る第1の微生物混合物は、植物体に共生して耐塩性を高める効果を損なわない範囲において、他の微生物を含有していてもよい。本発明に係る第1の微生物混合物全体に占める、Bacillus pumilus CRCO-1株とBacillus pumilus CRCO-2株とBacillus pumilus CRCO-3株の総和の存在比は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がよりさらに好ましい。本発明に係る第1の微生物混合物としては、Bacillus pumilus CRCO-1株とBacillus pumilus CRCO-2株とBacillus pumilus CRCO-3株のみからなるものが特に好ましい。
<高浸透圧耐性共生微生物群>
本発明に係る第2の微生物混合物は、植物体と共生して高浸透圧ストレス下での植物体の生育を可能とするものであり、配列番号6で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-4株と、配列番号7で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-5株とを含有する。これらの2株を含有する微生物混合物は、植物体と共生して、20%PEGによる高浸透圧ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群として、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法により土壌より選抜された。
Bacillus cereus CRCO-4株とBacillus cereus CRCO-5株は、16S rDNAの塩基配列のBLAST Searchの検索の結果、100%一致した微生物はなく、Bacillus cereusの公知株との配列相同性が99%以上であったことから、いずれもBacillus cereusの新規株と推察される。
本発明に係る第2の微生物混合物におけるBacillus cereus CRCO-4株とBacillus cereus CRCO-5株との存在比(微生物数比)としては、特に限定されるものではない。本発明に係る第2の微生物混合物におけるBacillus cereus CRCO-4株の存在比としては、80〜95%が好ましく、85〜95%がより好ましい。本発明に係る第2の微生物混合物におけるBacillus cereus CRCO-5株の存在比としては、5〜20%が好ましく、5〜15%がより好ましい。
本発明に係る第2の微生物混合物は、植物体に共生して高浸透圧耐性を高める効果を損なわない範囲において、他の微生物を含有していてもよい。本発明に係る第2の微生物混合物全体に占める、Bacillus cereus CRCO-4株とBacillus cereus CRCO-5株の総和の存在比は、50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がよりさらに好ましい。本発明に係る第2の微生物混合物としては、Bacillus cereus CRCO-4株とBacillus cereus CRCO-5株のみからなるものが特に好ましい。
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[参考例1]
シロイヌナズナの塩ストレス耐性を調べた。
<ポットの作成>
天面と底面が開口した円柱状のポットに、スクロース含有MS寒天培地(MS培地に0.5%(w/v)スクロースと0.9%(w/v)アガーを加えた培地)を注入して固めることにより、植物体を育成するためのポットを作製した。当該ポットを、スクロース含有MS培地(MS培地に0.5%(w/v)スクロースを加えた液体培地)を入れた8つの容器にそれぞれ複数個ずつ設置した。
<植物体の水耕栽培>
シロイヌナズナの種子(Col-0)は、LEHLE社(Round Rock, TX, USA)より購入した。種子は、1%次亜塩素酸に浸漬させた状態で1分間撹拌をすることによって表面を滅菌した後、遠心分離処理により次亜塩素酸を除いた。次亜塩素酸処理後の種子は、滅菌水にて3回水洗した後、前記ポットの上部に播種して、4℃で24時間暗所にて保存した。
次いで、各ポットを、底面はスクロース含有MS培地に浸っているが天面は浸っていない状態となるように設置し、各ポットに播種された種子を、25℃、明期16時間と暗期8時間の長日条件のインキュベーター内で14日間育成した。インキュベーター内での育成開始から約3〜4日後に出芽した。図1に、ポットの播種時(左図)と植物体が成長した状態(右図)を模式的に示した。出芽後に、植物の根(4a)は固形培地を貫通して生長し、ポットの底を突き抜けた。
<シロイヌナズナの塩ストレス耐性の確認>
14日間水耕栽培後に、ポットを入れた8つの容器のうち、6つの容器に対して、容器内のスクロース含有MS培地に塩化ナトリウムの最終濃度が0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、又は3.0質量%となるようにそれぞれ滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加した。8つの容器のうちの残りの2つの容器には、塩化ナトリウム水溶液は添加しなかった(塩化ナトリウムの最終濃度が0質量%)。その後、当該ポットを14日間培養した。
この結果、シロイヌナズナの根が浸っているスクロース含有MS培地の塩化ナトリウム濃度が0.5質量%であったポットに栽培した植物体は、塩化ナトリウム濃度が0質量%であったポットに栽培した植物体と同様に、いずれも外観上正常に生育できた。これに対して、根が浸っているスクロース含有MS培地の塩化ナトリウム濃度が1.0質量%以上であったポットでは、一部の植物体しか生育できなかった。具体的には、塩化ナトリウム濃度が1.0質量%では生育できた植物体は25.0%であり、塩化ナトリウム濃度が1.5質量%では生育できた植物体は16.7%であり、塩化ナトリウム濃度が2.0質量%では生育できた植物体は1個もなく、塩化ナトリウム濃度が2.5質量%では生育できた植物体は8.3%であり、塩化ナトリウム濃度が3.0質量%では生育できた植物体は1個もなかった。これらの結果から、シロイヌナズナでは、食塩濃度が1.0質量%以上で塩ストレスがかかることがわかった。
[実施例1]
シロイヌナズナを用い、土壌から抽出された微生物から、耐塩性を高める共生効果を有する植物共生微生物群を選抜した。
<微生物懸濁液の調製>
アメリカ合衆国コロラド州のCoyote Ridge(Fort Collins, CO, USA)にて採取された土壌1gを、緩衝液で懸濁し、十分に撹拌し、微生物懸濁液として用いた。
<植物体の水耕栽培>
参考例1と同様にして、前記ポットを複数個用意し、スクロース含有MS培地(MS培地に0.5%(w/v)スクロースを加えた液体培地)を入れた1つの容器に全て設置した。各ポットは、底面はスクロース含有MS培地に浸っているが天面は浸っていない状態となるように設置した。これらのポットの上部に種子を播種し、25℃、明期16時間と暗期8時間の長日条件のインキュベーター内で14日間育成した。
<塩ストレス及び微生物の接種(第1選抜工程)>
14日間水耕栽培後に、当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、塩化ナトリウムの最終濃度が1質量%となるように滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加し、さらに100μLの微生物懸濁液を添加した。その後、当該ポットを14日間培養した。
<生育している植物体からの微生物の回収>
塩ストレス下での14日間の培養後、生育している植物体の根と地上部(葉と茎)を切断し、根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液とした。
<微生物の培養(第1培養工程)>
20μLの当該微生物回収溶液を2mLの2種類の培地にて、30℃で一晩、振とう培養(200rpm)を行った。培養後の培養液中の微生物数は、いずれも10CFU以上であった。得られた各培養物を混合したものを、微生物混合液とした。
<塩ストレス及び微生物の接種(1ラウンド目の(1)工程)>
前記<植物体の水耕栽培>と同様にして、ポットにて14日間水耕栽培した植物体を用意した。当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、塩化ナトリウムの最終濃度が1.5質量%となるように滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加し、さらに第1培養工程で調製した微生物混合液を100μL添加した。その後、当該ポットを14日間培養した。
塩ストレス下での14日間の培養後、6.3%の植物体が生育しており、33.3%の植物体が死にかけており、60.4%の植物体が死んで(完全に枯れて)いた。
前記第1選抜工程と同様にして、生育している植物体から根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液を調製した。
<微生物の培養(1ラウンド目の(2)工程)>
前記第1培養工程と同様にして、1ラウンド目の(1)工程で調製した微生物回収溶液を2種類の培地にてそれぞれ培養し、得られた各培養物を混合したものを、微生物混合液とした。
<塩ストレス及び微生物の接種(2ラウンド目の(1)工程)>
ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地の塩化ナトリウムの最終濃度を1.5質量%に代えて3.0質量%としたこと、及び当該スクロース含有MS培地に添加する微生物回収液を、第1培養工程で調製した微生物回収溶液に代えて1ラウンド目の(2)工程で調製した微生物混合液を用いた以外は、1ラウンド目の(1)工程と同様にして、ポットにて14日間水耕栽培した植物体を塩ストレス下での14日間の培養し、生育している植物体から根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液を調製した。
塩ストレス下での14日間の培養後、1%の植物体が生育しており、20.8%の植物体が死にかけており、78.1%の植物体が死んでいた。
これらの結果から、食塩濃度が1.5又は3.0質量%の塩ストレス下で生育していた植物体に共生していた微生物混合物により、シロイヌナズナ等の植物の塩ストレス下での植物体の生育が可能となったことが明らかとなった。すなわち、本発明に係る植物共生微生物群の選抜方法により、土壌中の微生物混合物から、塩ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群を選抜でき、構成する微生物を脱落させることなく培養できた。
[実施例2]
実施例1において選抜された塩ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群(微生物混合物)を構成する微生物を同定した。具体的には、選抜された塩ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群(微生物混合物)について、ゲノムDNAを回収し、16S rDNAを同定することにより、当該植物共生菌群を構成する微生物を同定した。
<微生物混合物からゲノムDNAの回収>
前記<生育している植物体からの微生物の回収>と同様にして、食塩濃度が3.0質量%の塩ストレス下で生育していた植物体から根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液を調製した。この微生物回収溶液から菌体を回収し、回収した菌体の一部からゲノムDNAを、GenElute Bacterial Genomic DNA kit(Sigma-Aldrich、St. Louis, MO, USA)を用いて得た。
<16S rDNAの同定>
回収されたゲノムDNAを鋳型とし、フォワードプライマー(5’-AGAGTTTGATCATGGCTCAG-3’、配列番号4)とリバースプライマー(5’-TACGGTTACCTTGTTACGACTT-3’、配列番号5)を用いて、16S rDNAをPCRにより増幅した。PCRの温度条件は、95℃、3分間の加熱工程後、95℃、30秒間の変性工程、50℃、30秒間のアニーリング工程、及び72℃、1分30秒間の伸長工程からなるサイクルを30サイクル行った後、最後に72℃、5分間の伸長反応を加える条件で行った。得られたPCR産物を、1.2%のアガロースゲル電気泳動により確認し、QIAquick gel extraction kit (Quiagen, Germantown, MD, USA)を用いてゲルから抽出した。抽出されたPCR産物を、TOPO-TA cloning kit (Life Technologies, Carlsbad, CA, USA)を用いてプラスミド中に挿入し、大腸菌に形質転換を行った。アンピシリン含有LB平板培地上で一晩培養した大腸菌コロニーをランダムに30個取り、アンピシリン含有LB液体培地に移植して培養した。QIAprep spin miniprep kit (Quiagen)を用いて培養された大腸菌からプラスミドを精製した。精製されたプラスミドに対して、BigDye terminator v3.1 Cycle sequence kit (Life Techonologies)を用いたThermalcycle反応を行い、DNAシークエンサー(ABI 3130xL)にて当該プラスミドに組み込まれた16S rDNAの塩基配列を決定した。
16S rDNAの塩基配列解析の結果、3種類の16S rDNA(CRCO-1株、CRCO-2株、及びCRCO-3株)が同定された。
配列が決定された3種類の16S rDNAの塩基配列についてそれぞれNCBI BLAST検索を行ったところ、3種類のうち、CRCO-1株はUncultured Bacillus sp.(アクセッション番号:HM152710.1)と配列相同性が99.93%、Bacillus pumilus(アクセッション番号:KF923448.1)と配列相同性が99.87%であり、CRCO-2株はUncultured Bacillus sp.(アクセッション番号:HM152710.1)と配列相同性が99.87%、Bacillus pumilus(アクセッション番号:KF923448.1)と配列相同性が99.80%であり、CRCO-3株はBacillus pumilus(アクセッション番号:KF923448.1)と配列相同性が100%であった。これらの結果から、CRCO-1株及びCRCO-2株はBacillus pumilusの新規株であり、CRCO-3株はBacillus pumilusの既知株であることがわかった。つまり、当該植物共生菌群は、Bacillus pumilusの新規株であるCRCO-1株及びCRCO-2株と、Bacillus pumilusの既知株であるCRCO-3株(アクセッション番号:KF923448.1)からなることがわかった。
また、同定した30個の形質転換体に挿入されていた16S rDNAの割合から、これら3種類の微生物の存在比を調べたところ、Bacillus pumilus CRCO-1株は82.1%であり、Bacillus pumilus CRCO-2株は10.7%であり、Bacillus pumilus CRCO-3株は7.1%であった。
<同定した微生物混合物の耐塩性を高める共生効果>
前記<植物体の水耕栽培>と同様にして、ポットにて14日間水耕栽培した植物体を用意した。当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、塩化ナトリウムの最終濃度が3.0質量%となるように滅菌済の5M 塩化ナトリウム水溶液を添加し、さらに前記<微生物混合物からゲノムDNAの回収>において回収した菌体の一部を添加した。その後、当該ポットを14日間培養した。
塩ストレス下での14日間の培養後、3.1%の植物体が死んでおり、15.6%の植物体が死にかけていたが、残りの植物体は生育していた。また、死んだ植物体は、いずれも枯れる際に白い葉となっていた。
[実施例3]
シロイヌナズナを用い、土壌から抽出された微生物から、高浸透圧耐性を高める共生効果を有する植物共生微生物群を選抜した。
<微生物懸濁液の調製>
アメリカ合衆国コロラド州のCoyote Ridge(Fort Collins, CO, USA)にて採取された土壌1gを、緩衝液で懸濁し、十分に撹拌し、微生物懸濁液として用いた。
<植物体の水耕栽培>
参考例1と同様にして、前記ポットを複数個用意し、スクロース含有MS培地(MS培地に0.5%(w/v)スクロースを加えた液体培地)を入れた1つの容器に全て設置した。各ポットは、底面はスクロース含有MS培地に浸っているが天面は浸っていない状態となるように設置した。これらのポットの上部に種子を播種し、25℃、明期16時間と暗期8時間の長日条件のインキュベーター内で14日間育成した。
<高濃度PEGストレス及び微生物の接種(第1選抜工程)>
14日間水耕栽培後に、当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、PEGの最終濃度が20質量%となるように滅菌済の高濃度PEG水溶液を添加し、さらに100μLの微生物懸濁液を添加した。その後、当該ポットを14日間培養した。
<生育している植物体からの微生物の回収>
高濃度PEGストレス下での14日間の培養後、生育している植物体の根と地上部(葉と茎)を切断し、根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液とした。なお、微生物懸濁液を添加せずに高濃度PEGストレス下で14日間培養したシロイヌナズナでは、全ての植物体が死んでしまった。
<微生物の培養(第1培養工程)>
20μLの当該微生物回収溶液を2mLの2種類の培地にて、30℃で一晩、振とう培養(200rpm)を行った。培養後の培養液中の微生物数は、いずれも10CFU以上であった。得られた各培養物を混合したものを、微生物混合液とした。
<高濃度PEGストレス及び微生物の接種(1ラウンド目の(1)工程)>
前記<植物体の水耕栽培>と同様にして、ポットにて14日間水耕栽培した植物体を用意した。当該ポットの底面を浸したスクロース含有MS培地に、PEGの最終濃度が20質量%となるように滅菌済の高濃度PEG水溶液を添加し、さらに第1培養工程で調製した微生物混合液を100μL添加した。その後、当該ポットを14日間培養した。
<微生物混合物からゲノムDNAの回収>
高濃度PEGストレス下での14日間の培養後、前記<生育している植物体からの微生物の回収>と同様にして、高濃度PEGストレス下で生育していた植物体から根を回収し、ホモジナイズして微生物回収溶液を調製した。
この微生物回収溶液から菌体を回収し、回収した菌体の一部からゲノムDNAを、GenElute Bacterial Genomic DNA kit(Sigma-Aldrich、St. Louis, MO, USA)を用いて得た。この微生物回収溶液から、ゲノムDNAを回収し、16S rDNAを同定することにより、高濃度PEGストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生菌群(微生物混合物)を構成する微生物を同定した。
<16S rDNAの同定>
実施例2と同様にして、回収されたゲノムDNAを鋳型として、16S rDNAをPCRにより増幅し、得られたPCR産物の16S rDNAの塩基配列を決定した。この結果、2種類の16S rDNA(CRCO-4株及びCRCO-5株)が同定された。両株の16S rDNAの塩基配列についてそれぞれNCBI BLAST検索を行ったところ、CRCO-4株はBacillus cereus partial 16S rRNA gene, strain M87(アクセッション番号:LN890173)と配列相同性が99.74%であり、CRCO-5株はBacillus cereus partial 16S rRNA gene, strain L68(アクセッション番号:LN890064)と配列相同性が99.61%であった。これらの結果から、CRCO-4株及びCRCO-5株はBacillus cereusであることがわかった。つまり、当該植物共生菌群は、Bacillus cereusの新規株であるCRCO-4株及びCRCO-5株からなることがわかった。
また、同定した30個の形質転換体に挿入されていた16S rDNAの割合から、これら2種類の微生物の存在比を調べたところ、Bacillus cereus CRCO-4株は90%であり、Bacillus cereus CRCO-5株は10%であった。
1…ポット、2…スクロース含有MS寒天培地、3…種子、4…植物体、4a…根。

Claims (22)

  1. 1又は複数の植物体を、環境ストレス及び/又は病害ストレスの下、微生物混合物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する第1選抜工程、
    を有する、植物共生微生物群の選抜方法。
  2. 前記第1選抜工程の後、下記(1)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す、請求項1に記載の植物共生微生物群の選抜方法:
    (1)1又は複数の植物体を、前記ストレス下、前記選抜された微生物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程。
  3. 前記工程(1)における前記ストレスの強度を、前記サイクルを繰り返すごとに順次強くする、請求項2に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  4. 前記サイクルを2回以上繰り返す場合に、前記工程(1)における前記ストレスの種類を、前記サイクルを繰り返すごとに順次追加する、請求項2又は3に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  5. 前記第1選抜工程の後、前記選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する第1培養工程と、
    を有する、請求項1に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  6. 前記第1培養工程の後、下記(1’)工程及び(2’)工程を含むサイクルを少なくとも1回繰り返す、請求項5に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
    (1’)1又は複数の植物体を、前記ストレス下、前記植物共生微生物群の培養物を含む溶液に部分的に浸漬させた状態で一定期間生育させた後、生育している植物体に付着している微生物を回収して、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群として選抜する工程と、
    (2’)前記(1’)工程において選抜された微生物を、2種以上の微生物培養用培地中でそれぞれ一定期間培養した後、各微生物培養用培地から得られた培養物を混合したものを、前記ストレス下での植物体の生育を可能とする植物共生微生物群の培養物として調製する工程。
  7. 前記(1’)工程における前記ストレスの強度を、前記サイクルを繰り返すごとに順次強くする、請求項6に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  8. 前記サイクルを2回以上繰り返す場合に、前記(1’)工程における前記ストレスの種類を、前記サイクルを繰り返すごとに順次追加する、請求項6又は7に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  9. 前記ストレスの強度が、無菌状態では植物体の生育率が50%未満となる強度である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  10. 前記第1選抜工程、前記(1)工程、又は前記(1’)工程において、前記微生物を含む溶液に、植物体の根を浸漬させる、請求項2又は6に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  11. 前記環境ストレスが、塩ストレス、高浸透圧ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、又は高温ストレスであり、前記病害ストレスが、病原菌によるストレス又は病害虫によるストレスである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  12. 前記環境ストレスが、塩ストレス、高浸透圧ストレス、栄養ストレス、低温ストレス、及び高温ストレスからなる群より選択される2種以上である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  13. 前記第1選抜工程において、植物体の少なくとも一部を浸漬させる溶液中の微生物が、自然界から採取された1種又は2種以上の試料から抽出された微生物である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  14. 前記試料が土壌である、請求項13に記載の植物共生微生物群の選抜方法。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群を根に付着させた状態で、前記ストレス下で植物体を生育させる生育工程と、
    を有する、植物体の生育方法。
  16. 前記生育工程が、
    無菌状態で水耕栽培した後、根に前記植物共生微生物群を付着させた植物体を、土壌へ移植し、前記ストレス下で生育させる工程である、請求項15に記載の植物体の生育方法。
  17. 請求項1〜16のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群。
  18. 請求項1〜16のいずれか一項に記載の植物共生微生物群の選抜方法により選抜された植物共生微生物群から単離された1種以上の微生物。
  19. 配列番号1で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-1株と、
    配列番号2で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-2株と、
    配列番号3で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus pumilus CRCO-3株と
    を含有する、植物体と共生して塩ストレス下での植物体の生育を可能とする、微生物混合物。
  20. Bacillus pumilus CRCO-1株の存在比率が70〜90%であり、Bacillus pumilus CRCO-2株の存在比率が5〜20%であり、Bacillus pumilus CRCO-3株の存在比率が1〜15%である、請求項19に記載の微生物混合物。
  21. 配列番号6で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-4株と、
    配列番号7で表される塩基配列からなる16S rDNAを有するBacillus cereus CRCO-5株と、
    を含有する、植物体と共生して高浸透圧ストレス下での植物体の生育を可能とする、微生物混合物。
  22. Bacillus cereus CRCO-4株の存在比率が80〜95%であり、Bacillus cereus CRCO-5株の存在比率が5〜20%である、請求項21に記載の微生物混合物。
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