図1から図21を用いて、本発明にかかる乗客誘導システム、および乗客誘導方法の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本システムの流れを説明する図である。まず、本システムは、交通系ICカードデータによる移動または購買等の取引(100)がなされると、移動ログデータ・購買ログデータを生成する(101)。移動ログデータ・購買ログデータ(以下、これらをまとめて移動・購買ログデータと呼ぶこともある。)は、利用者が交通系ICカードを用いて移動したり、物品を購入した際の履歴を保持するデータである。以下では、利用者が移動する場合以外の交通系ICカードの用途として物品を購入する場合を例に説明しているが、この他、利用者がサービスの提供を受けたりチャージする等、利用者が移動以外の様々な行動をする場合についても同様に適用することができる。なお、移動ログデータ・購買ログデータの生成は、本システムが交通系ICカードデータの更新に合わせて順次行っても良いし、一定周期でバッチ処理により生成しても良い。本システムの処理の流れは、事故発生前(120)、事故発生中(130)、事故後(140)の三つに大別される。
事故発生前(120)に、本システムが、移動ログデータ・購買ログデータから、乗客の典型的な移動経路や時間帯を抽出することで、行動パタンデータを生成する(121)。行動パタンデータは、利用者が過去に交通系ICカードを利用してどのようなタイミングで移動したかあるいは物品を購買したか等、その利用者の過去の行動を記録したデータである。また、本システムが、事故発生前(120)に移動ログデータから乗客数を推定することで、混雑率を計算し(122)、データベースに格納する。また、本システムが、交通系ICカードIDとメールアドレス情報を登録し(123)、登録者データを生成する(124)。この登録者データに登録されている利用者が、本システムの利用者となる。
事故発生中(130)には、本システムが、行動パタンデータと事故情報とを取得し(131)、移動ログデータ・購買ログデータから影響を受ける乗客を抽出する(132)。事故情報は、鉄道事業者、発生した事故に関する情報を記録したデータである。鉄道事業者の情報配信指示を受けて(133)、影響を受ける乗客に対して、登録者データを参照することで、迂回経路情報を配信する(134)。迂回経路情報は、利用者それぞれの過去の行動から本システムにより求められた迂回経路を記録した情報である。この時に、迂回経路の混雑率や、事故時の行動パタンデータを生成し(125)、これらの情報から各乗客の事故時の行動パタンに応じた情報を添付する。事故時の行動パタンデータは、過去の事故時における利用者の行動パタンを記録したデータである。
事故後には、本システムが、移動ログデータ・購買ログデータから、事故後の利用者の行動を推定し(141)、事故時の行動パタンデータを更新する(142)。事故時の行動パタンデータを更新することで、情報配信時に精度の良い混雑率や利用者に適切な情報配信が可能になる。
図2は、本システムの全体構成図である。交通機関を利用する乗客(200)は、交通系ICカード(201)や同等の機能を持つ携帯端末(204)を利用し、改札機や車内に設置された読み取り端末(202)を通過する。それらの改札機や車内端末が、交通系ICカード(201)や携帯端末(204)から取得したデータはネットワーク(207)を介して、それぞれの交通事業者が管理するサーバ群(210)へ送信される。本システム(208)は、データサーバ(210)、計算サーバ(230)、情報配信サーバ(250)を有して構成され、交通系ICカード(201)或いは同等の機能を備えている携帯端末(204)の利用データを蓄積し、解析処理を行うものである。なお、交通系ICカード、改札機の機能や構成については、従来から用いられている様々な媒体や機器を利用できるため、ここではその説明を省略する。また、以下では、交通機関として鉄道を前提に説明しているが、バス(203)やタクシー(206)等の他の交通機関の利用者(205)に対しても適用することができる。
交通系ICカード(201)を使用した利用者(200)が改札機(202)を通過すると、交通系ICカードを識別するカードIDと、通過日時などを含む情報が改札機(202)内に蓄積され、同時もしくは1時間おきや1日おきなどのタイミングで必要な情報をデータサーバ(210)へ送られる。本システム(208)は、ネットワーク(273)を介して、利用者(281)と通信することができる。なお、本実施例ではデータサーバ(210)、計算サーバ(230)、情報配信サーバ(250)のサーバ群として説明するが、1つのサーバで全てを実行してもよく、または複数のサーバでこれらサーバ群の機能を並列的に実行できるように構成することも可能である。
データサーバ(210)は、改札機(202)や店舗等に設置されているICカードリーダ端末(不図示)が読み取った利用者のデータをサーバ内のデータベース(211)に記録する。収集、格納するデータには、交通系ICカードデータ(212)、駅やバス停、路線などの基本的なマスタデータ(213)が含まれている。さらに、交通系ICカードデータ(212)を加工した移動・購買ログデータ(214)や、移動ログデータを集計・分析して生成した利用者の典型的な移動データである行動パタンデータ(215)が格納されている。さらに、輸送障害が発生した際に、鉄道事業者などによって入力された事故情報データ(216)や、移動・購買ログデータ(214)から、カードIDごとに分析した事故時の行動パタンデータ(217)が含まれる。
また、事故時の行動パタンをあらかじめ分類した事故時の行動パタンテーブル(218)が含まれている。さらに、本システムの利用者への情報配信内容を記憶する情報配信データ(219)が格納されている。さらに、利用者の交通系ICカードデータ(212)と利用者に情報を送るための交通系ICカードIDとメールアドレスが含まれている登録者データ(220)が格納されている。以下では、上述した各データがHDD(Hard Disk Drive)内のデータベース(211)に記憶されていることとして説明しているが、例えば、CD−ROMドライブ、フラッシュメモリに記憶され、本システムによって読み書きされていてもよく、複数の記録装置に各種プログラム、各種データを分割して記録するようにしてもよい。以下に説明する計算サーバ(230)や情報配信サーバ(250)についても同様である。
計算サーバ(230)は、データサーバ(210)に蓄積されたデータから移動・購買ログを生成する処理、交通機関の混雑率を推定する処理、利用者の移動経路の行動パタンを抽出する処理、輸送障害の影響を受ける乗客を抽出する処理、事故後の行動を判定する処理を主に行う。計算サーバ(230)は、主にネットワークインタフェース(I/F(A))(231)、CPU(232)、メモリ(232)、記憶部(239)を有している。
ネットワークインタフェース(I/F(A))(231)は、ネットワークに接続するためのインタフェースである。データベース(239)には、移動・購買ログ生成プログラム(234)、混雑率推定プログラム(235)、行動パタン抽出プログラム(236)、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)、事故時の行動判定プログラム(238)などのプログラム群と、影響受ける乗客の抽出プログラムによって生成された輸送障害の影響を受ける乗客データ(241)などの計算処理結果などを格納する。
各プログラム群が実行される際は、分析対象となるデータをデータサーバ(210)から読みだして、メモリ(233)へ一時的に格納し、CPU(232)で各プログラム(234、235、236、237、238)をメモリに読み出して実行することにより、各種機能を実現する。これらのプログラムの実行のタイミングは、例えば、リクエストのタイミングやデータサーバ(210)に新規にデータが追加される度に行ってもよいし、またはバッチ処理として、毎日決められた時間に自動的に処理を行っても良い。また、分析対象となるデータがリアルタイムに送信されてくる場合は、プログラム(234、235、236、237、238)は、新規に追加された差分データだけを処理するようにしても良い。
情報配信サーバ(250)は、ネットワークインタフェース(I/F(B))(251)及びCPU(253)とメモリ(254)とデータベース(252)を有している。ネットワークインタフェース(I/F(B))(251)は、ネットワークに接続するためのインタフェースである。データベース(252)は、各種プログラム、各種データを記録するものである。CPU(253)は、計算サーバ(230)と同様に、記録装置(252)に格納されている各種プログラム(シミュレーションプログラム(255)、表示画面生成プログラム(256))、をメモリ(254)に読み出して実行することにより各種機能を、実現する。
本システム(208)では、生成した迂回経路情報や混雑率、シミュレーション結果などの情報はインタフェース(I/F(C))(258)およびネットワーク(270)を介して、事業者(272)へ配信され、情報配信の指示や事故情報の入力、メールの配信数、配信する乗客の条件設定をシステムに送ることができる。また、ネットワーク(273)を介して、迂回経路情報などを利用者(281)へ配信することができ、携帯端末などの情報端末(282)で取得することができる。
図3は、データサーバ(210)内に格納される交通系ICカードデータ(212)の例について示した図である。図3に示すように、交通系ICカードデータ(212)は、移動や購買の履歴を識別するためのログID(301)、交通系ICカードを識別するためのカードID(302)、利用者が通過(入場や出場)した読み取り端末が設置されている駅やバス停を識別するための駅・バス停ID(303)、出発地点において交通手段の利用を開始した日時や購買した日時を示す利用・購買日時(304)、利用した読み取り端末における処理の種類を識別するための利用種別(305)、交通系ICカードデータ(212)を用いて利用者が物品を購入あるいはサービスの提供を受けたときの購買場所ID(306)、移動または物品の購入等をした際の支払額(307)などの情報を含む。図3では、例えば、カードID「1234567」で識別される交通系ICカードを用いて、利用者が駅「10001」の構内に2009年1月1日の12時00分に入場して200円が交通系ICカードから引き落とされ、その記録がログID「87654000」によって識別されるレコードとして格納されていることを示している。また、カードID「1234569」で識別される別のカードの利用者は、2009年1月1日の12時31分に購買場所ID「50001」で識別される店舗で物品の購買やサービスの提供を受け、200円が交通系ICカードから引き落とされたことを示している。このように、交通系ICカードデータ(212)には、利用者が交通系ICカードを用いて行動した際の具体的な内容が対応付けて記憶されている。
図4は、データサーバ(210)内に格納されるマスタデータ(213)の種類とそれぞれのデータ構造の例について示した図である。図4に示すように、マスタデータ(213)には、駅やバス停を識別するための駅・バス停マスタ(410)と、鉄道やバス等の交通機関の路線を識別するための路線マスタ(420)と、鉄道やバス等の交通機関の時刻表のマスタデータである時刻表マスタ(430)と、出発地点から到着地点までの経路を示す経路マスタ(440)と、交通系ICカードを用いて物品を購入したりサービスの提供を受けた際の場所を示す購買場所マスタ(460)とが含まれている。購買場所マスタ(460)以外のマスタデータは、交通機関の運行に関するマスタデータである。
図4に示すように、駅・バス停マスタ(410)は、駅・バス停ID(411)、そのIDで識別される駅・バス停名(412)、その駅・バス停の所有会社(通常は路線の所有会社)(413)、駅・バス停の所在地(414)、その所在地の緯度経度の情報(415)などの情報が対応付けて記憶されている。図4では、例えば、所有会社「○○」によって所有されている駅Aの所在地は、「○○県○○市・・」であり、その緯度や経度は「139.XXX,34.XXX」であることを示している。また、この駅Aは、駅・バス停ID「10001」によって識別されることを示している。
また、路線マスタ(420)は、路線ID(421)、その路線の路線名(422)、その路線を運営している運営会社名(423)、普通列車や路線バスなど、運行される鉄道やバスの種類を示す路線タイプ(424)、その路線タイプの列車の乗車許容人数(425)などの情報が対応付けて記憶されている。図4では、例えば、路線ID「200001」で識別されるX線各停の路線は運営会社「○○」によって運営され、500人まで乗車可能な鉄道普通列車が運行されていることを示している。
また、時刻表マスタ(430)は、路線ID(431)、駅・バス停ID(432)、路線における何番目の停車駅・バス停かを示す順序(433)、駅・バス停を出発する時刻(434)、駅・バス停に到着する時刻(435)、路線の開始地点からの所要時間(436)などの情報が対応付けて記憶されている。図4では、例えば、路線ID「2002」によって識別される路線は、駅・バス停ID「10001」によって識別される駅から次の駅・バス停ID「10002」によって識別される駅の順で列車やバスが運行していることを示している。また、その所要時間は10分であり、12時10分に到着することを示している。なお、最初のレコードは始発駅・バス停のため、次のレコードと同じ出発時刻が記憶されている。
また、経路マスタ(440)は、乗車駅やバス停から降車駅やバス停までの経路を識別するための経路ID(441)、乗車駅・バス停ID(442)、降車駅・バス停ID(443)などの情報が対応付けて記憶されている。また、経路マスタ(440)は、出発地から目的地に到着するまでに乗り換えた回数分の路線ID(444)、乗換乗車駅・バス停ID(445)、乗換降車駅・バス停ID(446)も含まれており、最後に、出発地から目的地に到着するまでに乗車する乗車路線数(447)、出発地から目的地までの標準所要時間(448)、料金(449)などの情報が対応付けて記憶されている。図4では、例えば、経路ID「30002」によって識別される経路では、乗車駅・バス停ID「10001」によって識別される乗車駅・バス停を出発地とし、降車駅・バス停ID「10031」によって識別される降車駅・バス停を目的地とし、出発地から目的地までの間に、まず、路線ID「20002」によって識別される路線に乗り換え、乗換乗車駅・バス停(乗換乗車駅・バス停ID「10002」)から乗換降車駅・バス停(乗換降車駅・バス停ID「20004」)まで移動し、同様に、残り4回の乗り換えをして、目的地に到着する経路であることを示している。また、この経路での出発地から目的地までの標準的な所要時間は42分であり、料金は520円であることを示している。
また、購買場所マスタ(460)は、物品の購入やサービスの提供を受ける場所を示す購買場所ID(461)、その場所にある店舗の店舗名(462)、その店舗の所在地(463)、その所在地の緯度・経度(464)、コンビニや自動販売機などの店舗種別(465)などの情報が対応付けて記憶されている。例えば、図4では、購買場所ID「50001」によって識別される店舗「○○マート」の所在地は、「○○県××市・・」であり、その緯度や経度は「140.XXX,35.XXX」であることを示している。また、この店舗は、コンビニエンスストアであることを示している。なお、マスタデータ(400)に含まれている内容は、例えば、事業者(272)が有する操作端末(271)によって、随時データの追加や修正が行われる。
図5は、データサーバ(210)内に格納される事故時の行動パタンテーブル(218)のデータ構造の例について示した図である。図5に示すように、事故時の行動パタンテーブル(450)には、事故時の行動パタンID(451)、後述する配信情報通りの迂回経路を利用して移動したか、配信情報通りの迂回経路を利用せずに移動したか、タクシーやバス等の他の交通機関を利用して移動したか、駅外で購買行動をしたか、駅付近でそのまま待機したか、駅付近にある店舗で飲食したか等、事故時における利用者の行動をパタン化したときのその行動パタンの内容(452)、移動・購買ログデータ(214)から事故時の行動パタンを判定する判定方法(453)などの情報が対応付けて記憶されている。図5では、例えば、利用者が配信情報によって配信された迂回経路を利用して移動する行動をとった場合には、事故時の行動パタンID「1」で識別されることを示している。また、配信情報と移動・購買ログデータ(214)とを比較し、配信情報に含まれている迂回経路がそのログデータに記録されている場合、利用者はその迂回経路を利用したと判定されることを示している。また、移動・購買ログデータ(214)の出発地と到着地が続いていない場合には、利用者が途中の駅で乗り換えたと判定し、他の交通機関(例えば、鉄道を利用していたのであれば、バスやタクシー、あるいは他の鉄道会社の路線)を利用した行動をとったと判定されたり(事故時の行動パタンID「3」)、移動・購買ログデータ(214)に飲食ログや購買ログがある場合には、駅外の店で商品等を購入したり飲食して待機したと判定される(事故時の行動パタンID「4」、「5」)。さらに、いずれでもない場合には、駅構内でそのまま待機したと判定される(事故時の行動パタンID「6」)ことを示している。
図6は、データサーバ(210)内に格納される移動・購買ログデータ(214)のデータ構造の例について示した図である。移動・購買ログデータ(214)は、移動ログデータ(510)、購買ログデータ(530)を含んでいる。移動ログデータ(510)は、移動ログを識別するログID(511)、移動した利用者のカードID(512)、出発地点において交通手段の利用を開始した日時を示す乗車日時(513)、到着地点において交通手段の利用を終了した日時を示す降車日時(514)、その乗車日時に利用者が乗車した乗車駅・バス停ID(515)、その降車日時に利用者が降車した降車駅・バス停ID(516)、支払い金額(517)が含まれている。また、利用者が交通機関を乗り換えた場合には、さらに、乗り換えた数の路線の経路ID(518)、および上述した各項目と同様の乗車日時(519)、降車日時(520)、乗車駅・バス停ID(521)、降車駅・バス停ID(522)などの情報が対応付けて記憶されている。図6では、例えば、カードID「1234567」で識別される交通系カードの利用者は2013年8月26日の12時30分に「90001」で識別される駅・バス停から乗車し、同日の13時25分に「90002」で識別される駅・バス停で降車し、その利用者の交通系ICカードから200円が引き落とされたことを示している。また、利用者が目的地に到着するまで、同日の12時35分に、経路ID「30003」で識別される経路にある駅・バス停ID「100003」で識別される駅・バス停で乗り換え、さらに同日の12時40分に、駅・バス停ID「100004」で識別される駅・バス停で降車し、さらに同様に経路ID「30001」で識別される経路の交通機関に乗り換えていることを示している(以降の乗り換えについても同様)。なお、図6では、特に示していないが、支払額については、実際には、乗り換えられた経路ごと(例えば、経路ID1、経路ID2ごと)に記憶されている。そして、このレコードのログIDが「70001A」であることを示している。
購買ログデータ(530)は、購買ログを識別するログID(531)、購買した利用者のカードID(532)、購買履歴の日時を示す購買日時(533)、購買時の支払額(534)、購買場所を識別するための購買場所ID(535)などの情報が対応付けて記憶されている。図6では、例えば、カードID「1234567」で識別される交通系カードの利用者は2013年8月26日の12時32分に「50001」で識別される購買場所で買い物をして、その利用者の交通系ICカードから200円が引き落とされたことを示している。そして、このレコードのログIDが「70001B」であることを示している。このことから、カードID「1234567」で識別される交通系カードの利用者は、「90001」で識別される駅・バス停から乗車(駅構内)に入って、その2分後に「50001」で識別される購買場所(例えば、駅構内のコンビニエンスストア)で物品等を購入して乗車したことが分かる。
図7は、データサーバ(210)内に格納される登録者データ(220)のデータ構造の例について示した図である。登録者データ(220)は、本システムの利用者である登録者を識別するための登録者ID(601)、その登録者の交通系ICカードデータ(212)を識別するための交通系ICカードのカードID(602)、輸送障害時に情報を送信する送信先となるメールアドレス(603)などの情報が対応付けて記憶されている。交通系ICカードのカードID(602)は、例えば、交通系ICカードデータ(212)から登録者の情報を抽出するために用いられる。図7では、例えば、登録者ID「100001」の利用者は、交通系カードID「123451」で識別される交通系カードを利用し、メールアドレスは「aaa@abc.com」であることを示している。後述する情報配信データがこのアドレスに配信される。
図8は、データサーバ(210)内に格納される事故情報データ(220)のデータ構造の例について示した図である。事故情報データ(220)は、発生した輸送障害等の事故を識別するための事故ID(701)、その事故が発生した路線ID(702)、事故区間の開始駅・バス停である事故発生区間A(703)、事故区間の終了駅・バス停である事故発生区間B(704)、事故発生時間(705)、運転再開時間(706)が対応付けて記憶されている。図8では、例えば、2013年8月26日の11時00分に、路線ID「1001」で識別される路線のA駅からB駅の間で事故が発生し、運転再開時間として、同日12時30分が見込まれていることを示している。この事故情報データ(220)は、事業者(272)によってあらかじめ設定される。なお、後述するように、事故情報データ(220)と、行動パタンデータ(215)を用いて、輸送障害等の事故の影響を受ける乗客を特定するために、事故情報データに曜日を含んでいてもよい。この場合、事故の発生時間帯と曜日とをキーとして影響のある乗客を特定するので、日々の移動が多く、経路が多岐にわたる利用者が多い場合には、より速やかに影響のある乗客を特定することができる。
図9は、データサーバ(210)内に格納され、事故の影響を受ける乗客データ(218)のデータ構造の例について示した図である。影響を受ける乗客データ(218)は、事故ID(801)、カードID(802)、影響を受ける乗客が事故に遭遇する遭遇予想日時(805)が含まれている。また、輸送障害区間を迂回して目的地へ移動する場合の、迂回経路で乗車した路線の数だけ、路線ID(804)、乗車日時(805)、降車日時(806)、迂回経路で乗車した乗車駅・バス停ID(807)、迂回経路で降車した降車駅・バス停ID(808)が対応付けて記憶されている。図9では、例えば、カードID「10001」の利用者は、2013年8月26日の11時45分に、路線ID「3003」で識別される路線の「10003」で識別される乗車駅・バス停で乗車し、同日12時00分に、「1101」で識別される降車駅・バス停で降車するという迂回経路を利用すればよいことを示している。なお、遭遇予想日時は、後述する図22に示す行動パタンデータ(215)に記録されている出発時刻や到着時刻、図4に示した時刻表マスタ(430)、経路マスタ(440)を参照し、事故情報データ(216)に記録されている事故発生区間で事故に遭遇すると考えられる日時が算出される。なお、図9では、路線IDが事故の影響を受ける乗客データ(218)に含まれているが、実際には、図6の場合と同様に、経路IDが含まれている。
図10は、データサーバ(210)内に格納される事故時の行動パタンデータ(217)のデータ構造の例について示した図である。事故時の行動パタンデータ(217)は、カードID(901)、事故ID(902)、過去の事故時の行動パタンID(903)、カードIDの利用者が事故時に実際に利用した迂回経路(904)が対応付けて記憶されている。なお、実際に利用した迂回経路は、図6に示した移動ログデータ(510)と同様の内容が記憶されている。図10では、例えば、カードID「100001」で識別される交通系ICカードの利用者が、事故ID「20001」で識別される事故に過去に遭遇した際、行動パタンID「1」で識別される行動をとり、その時利用者が事故時に実際に利用した迂回経路(904)(例えば、に示される経路で迂回して移動したことを示している。なお、図10では、直近の行動パタンが保持される前提で説明しているが、利用者の特性等を把握するために、過去に遡って履歴で保持させることとしてもよい。この場合、その利用者がどのような特性(配信情報通りに迂回する人物か否か、あるいは移動は好まず待機する傾向にある人物か等)を見極めることができる。
図11は、データサーバ(210)内に格納される情報配信データ(219)のデータ構造の例について示した図である。情報配信データ(219)は、事故ID(1001)、情報を配信した乗客の登録者ID(1002)、このデータの配信日時(1003)、その登録者の過去の事故時の行動パタンID(1004)が対応付けて記憶されている。また、図9に示した事故の影響を受ける乗客データ(218)と同様に、図22に示す行動パタンデータ(215)から算出された乗車日時(予想乗車日時))、降車日時(予想降車日時)、乗車駅・バス停ID、降車駅・バス停ID、路線ID等、乗車予想日時を出発時間とした迂回経路が含まれている(1005〜1009)。図11では、登録者IDが「100001」である利用者は、事故ID「20001」で識別される事故が過去に発生した際の事故時の行動パタンと、図9と同様の迂回経路についての情報等の情報が、2013年8月26日11時45分に配信されたことを示している。なお、実際にこの配信情報が利用者に配信されるタイミングは、事業者によって適宜定められる。具体的には、後述する事業者の操作端末(271)の画面(図19)で定められたタイミング、配信ボタンを押下したタイミングで配信される。利用者は、配信情報を参照し、自身に相応しい迂回経路を知ることができる。
図12は、交通系ICカードデータ(100)から移動・購買ログデータ(101)を生成し、データサーバ(210)に格納する処理(ログデータ取得処理)の処理手順を説明する図である。ここではデータサーバ(210)への格納処理は毎日、決められた時刻に一回、バッチ処理で行うものとして、説明するがそのタイミングは任意に定めることができる。
まず、計算サーバ(230)の移動・購買ログ生成プログラム(234)は、データサーバ(210)に記憶されている交通系ICカードデータ(212)を読み込む(処理ステップ1100)。次に、移動・購買ログ生成プログラム(234)は、読み込んだ交通系ICカードデータ(212)に含まれているカードIDと利用・購買日時ごとに、レコードをソートする(処理ステップ1101)。
移動・購買ログ生成プログラム(234)は、ソートされた交通系ICカードデータ(212)のレコードを読み込み(処理ステップ1102)、読み込んだレコードの利用種別が購買であるか否かを判定する(処理ステップ1103)。
移動・購買ログ生成プログラム(234)は、読み込んだレコードの利用種別が購買であると判定した場合(処理ステップ1103;Yes)、図6に示した購買ログデータを作成するために、そのレコードの中からカードID、利用・購買日時、支払額、購買場所IDの情報を取得する(処理ステップ1110)。
一方、移動・購買ログ生成プログラム(234)は、読み込んだレコードの利用種別が購買でないと判定した場合(処理ステップ1103;No)、さらに読み込んだレコードの利用種別が入場であるか否かを判定し(処理ステップ1104)、読み込んだレコードの利用種別が入場であると判定した場合(処理ステップ1104;Yes)、そのレコードの中から、カードID、駅・バス停ID、利用・購買日時、支払額を取得する(処理ステップ1105)。
一方、移動・購買ログ生成プログラム(234)は、読み込んだレコードの利用種別が入場でないと判定した場合(処理ステップ1104;No)、読み込んだレコードの利用種別は退場であると判断し、そのレコードの中から、ユーザID、駅・バス停ID、利用・購買日時、支払額を取得する(処理ステップ1106)。
そして、移動・購買ログ生成プログラム(234)は、読み込んだレコードが最後のレコードであるか否かを判定し(処理ステップ1107)、最後のレコードでないと判定した場合(処理ステップ1107;No)、処理ステップ1102に戻る一方、読み込んだレコードが最後のレコードであると判定した場合(処理ステップ1107;Yes)、取得したデータから移動・購買ログデータ(214)を作成し、データサーバに格納する(処理ステップ1108)、処理を終了する(処理ステップ1109)。
このとき、移動・購買ログ生成プログラム(234)は、同じ利用者による移動(すなわち、ある利用者による1回の移動)であるか否かを判定し、1回の移動であると判定した場合、乗車日時および降車日時を1つのレコードに記録する。1回の移動であるか否かの判定は、例えば、乗車日時や降車日時の前後の時間帯で同じカードIDの交通系ICカードデータが記録されているか否かによって判定する。乗車日時や降車日時の前後の時間帯(例えば、1時間)で、同じカードIDのレコードが記録されていない場合には、その前までの同じカードIDのレコードを1つの移動とする。そして、移動ログデータ、購買ログデータのそれぞれについて、レコードが一意となるように、ログIDを定める。この処理が終了すると、行動パタン推定処理(後述)が実行される。
図13は、図6に示した移動ログデータ(510)から行動パタンデータを生成し、データサーバへ格納する処理手順(行動パタン推定処理)の処理手順を説明する図である。
まず、行動パタン抽出プログラム(236)は、図12で生成した移動ログデータを読み込む(処理ステップ1200)。次に、行動パタン抽出プログラム(236)は、その移動ログデータに含まれるカードIDと乗車時間ごとにソートし(処理ステップ1201)、ソートされた移動ログのレコードを一つ読み込む(処理ステップ1202)。
行動パタン抽出プログラム(236)は、レコードに含まれるカードID、経路ID、乗車駅・バス停ID、降車駅・バス停ID、乗車日時、降車日時を取得する(処理ステップ1203)。そして、行動パタン抽出プログラム(236)は、カードIDごとに、経路ID、乗車駅・バス停ID、降車駅・バス停IDの組み合わせが同じレコードを特定し、乗車日時、降車日時と、不図示のカレンダー情報とを比較し、曜日ごとの乗車日時および降車日時の平均値を算出する(処理ステップ1204)。例えば、本システムを実行する対象となる期間のなかで月曜日が複数回含まれている場合には、その複数回の月曜日の乗車日時、降車日時それぞれの平均値を算出し、集計する。また、同じカードIDの利用者が、同じ曜日に異なる経路で移動している場合には、移動ログデータの場合と同様に、そのレコードに順次追加される。なお、カレンダー情報は、本システムで保持していてもよいし、ネットワークを介して広く一般に用いられている情報を読み込んでもよい。
そして、行動パタン抽出プログラム(236)は、読み込んだレコードが最後のレコードであるか否かを判定し(処理ステップ1205)、読み込んだレコードが最後のレコードでなかった場合(処理ステップ1205;No)、処理ステップ1202に戻り、以降の処理を繰り返す。
一方、行動パタン抽出プログラム(236)は、読み込んだレコードが最後のレコードであった場合(処理ステップ1205;Yes)、カードID、曜日、乗車日時、降車日時、乗車駅・バス停ID、降車駅・バス停ID、経路IDを出力した行動パタンデータを作成し、データサーバ(210)のデータベース(211)に格納する(処理ステップ1206)。
図22は、データサーバ(210)内に格納される行動パタンデータ(215)のデータ構造の例について示した図である。図22に示すように、行動パタンデータ(215)は、カードID(2101)、曜日(2102)、乗車日時(2103)、乗車駅・バス停ID(2104)、降車駅・バス停ID(2105)、経路ID(2106)、降車駅・バス停ID(2107)が対応付けて記憶されている。図22では、例えば、カードID「10001」で識別される利用者は、毎週月曜日には、07時00分に、乗車駅・バス停ID「90001」で識別される乗車駅・バス停から乗車し、08時00分に、乗車駅・バス停ID「90011」で識別される乗車駅・バス停で降車するという経路IDが「30001」によって識別される経路で移動していることを示している。なお、この利用者が、月曜日にさらに別の経路で移動している場合には、移動ログデータと同様に、これらの情報がそのレコードに順次追加される。このような処理が行われると、カードIDごと、曜日ごとにレコードが生成され、利用者ごと曜日ごとの行動パタンを把握することができる。続いて、輸送障害等の事故の影響を受ける乗客データ(241)を生成する処理について説明する。
図14は、移動ログから影響を受ける乗客データ(241)を生成し、記憶部へ格納する処理(乗客データ生成処理)の処理手順を説明する図である。以下では、この処理の実行前に、交通機関のある区間において輸送障害等の事故が発生し、図8に示したような事故情報データ(216)が事業者によって、データサーバ(210)に格納された状態にあるものとする。
影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、まず、事故情報データ(216)、行動パタンデータ(215)を読み込む(処理ステップ1300)。影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、次に、行動パタンデータ(215)に含まれるカードIDと乗車日時ごとにソートし(処理ステップ1301)、ソートされた行動パタンデータ(215)のレコードを1つ読み込む(処理ステップ1302)。
影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、行動パタンの経路IDの経路が、事故情報データの事故区間に含まれており、さらに行動パタンデータ(215)の乗車日時から降車日時までの時間帯が、事故情報データ(216)の事故の発生時間から運転再開時間までの時間帯に含まれているか否かを判定する(処理ステップ1303)。
そして、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、その時間帯が、事故情報データ(216)の事故の発生時間から運転再開時間までの時間帯に含まれていると判定した場合(処理ステップ1303;Yes)、事故の影響を受ける乗客としてメモリに保存する(処理ステップ1304)。
一方、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、その時間帯が、事故情報データ(216)の事故の発生時間から運転再開時間までの時間帯に含まれていないと判定した場合(処理ステップ1303;No)、処理ステップ1302に戻って、以降の処理を繰り返す。
そして、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、読み込んだレコードが最後のレコードであるか否かを判定し(処理ステップ1305)、読み込んだレコードが最後のレコードでないと判定した場合(処理ステップ1305;No)、処理ステップ1302に戻って、以降の処理を繰り返す。
一方、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、読み込んだレコードが最後のレコードであると判定した場合(処理ステップ1305;Yes)、事故ID、カードID、乗客が遭遇する予想日時を、事故の影響を受ける乗客データにメモリに記憶した情報を出力する(処理ステップ1306)。その際に、影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、行動パタンデータ(215)から取得した、乗車駅・バス停IDと降車駅・バス停ID、乗車日時、降車日時と、路線マスタ(420)、時刻表マスタ(430)、経路マスタ(440)等の運行スケジュールにかかわる情報とを用いて、発生している輸送障害等の事故区間を迂回して到着できる迂回経路および予想日時を計算し、図9に示したように、その路線ID、乗車日時、降車日時、乗車駅・バス停ID、降車駅・バス停ID等の迂回経路情報を追加する。迂回経路が複数の路線に跨る場合には、行動パタンテーブル(215)の場合と同様に、同じレコードにその情報が追加される。迂回経路の計算は、鉄道・バス路線のネットワークに対して、ダイクストラ法を用いて計算してもよいし、他の方法で計算してもよい。影響を受ける乗客の抽出プログラム(237)は、作成された事故の影響を受ける乗客データ(218)を、データサーバ(210)に格納する。
図15は、移動ログデータから混雑率を作成し、計算サーバの記憶部へ格納する処理(混雑率算出処理)の処理手順を説明する図である。この処理は、図6に示した移動ログデータを参照し、輸送障害等の事故が発生していない状況における混雑率、および事故が発生した状況で利用者が迂回せずに通常の経路で移動する場合の混雑率を推定するものである。本処理は、適宜事業者が指定したタイミング(例えば、事故発生時や事故発生後)で実行することができる。
混雑率推定プログラム(235)は、まず、移動ログデータを読み込む(処理ステップ1400)。移動ログデータは、図6に示したように、出発地(乗車駅・バス停)から目的地(降車駅・バス停)までに乗り換えて乗車した路線の回数分の乗車駅・バス停、降車駅・バス停、乗車日時、降車日時の各情報が含まれている。
次に、混雑率推定プログラム(235)は、移動ログデータを乗り換えごとに分割し、分割した移動ログデータを作成する(処理ステップ1401)。そして、混雑率推定プログラム(235)は、分割した移動ログデータを乗車日時でソートし、キューに入れる(処理ステップ1402)。そして、混雑率推定プログラム(235)は、キューの中で一番乗車日時の早いレコードを取り出す(処理ステップ1403)。
混雑率推定プログラム(235)は、取り出したレコードの乗車駅・バス停と乗車日時をキーとして、時刻表マスタ(430)を参照して乗車可能な路線を特定する(処理ステップ1404)。混雑率推定プログラム(235)は、乗車可能な路線の中で、乗車日時以降の最も早い出発時刻の路線の交通機関を選択する。
混雑率推定プログラム(235)は、選択した交通機関の乗車人数が、路線マスタに含まれる交通機関の乗車許容人数より多いか否かを判定し(処理ステップ1405)、路線マスタに含まれる交通機関の乗車許容人数より多いと判定した場合(処理ステップ1405;Yes)、分割した移動ログデータの乗車日時を、時刻表マスタ(430)に記憶されている次の出発時刻に設定して乗車日時を遅らせてキューに入れる(処理手順1406)。
混雑率推定プログラム(235)は、路線マスタに含まれる交通機関の乗車許容人数より多くないと判定した場合(処理ステップ1405;No)、交通機関の乗車人数を一人増やす(処理ステップ1407)。
そして、混雑率推定プログラム(235)は、キューが空になっているか否かを判定し(処理ステップ1408)、キューが空になっていないと判定した場合(処理ステップ1408;No)、処理ステップ1403に戻り、以降の処理を繰り返す。
一方、混雑率推定プログラム(235)は、キューが空になっていると判定した場合(処理ステップ1408;Yes)、乗車人数を許容人数で除して各時刻における混雑率とし、計算サーバ(230)のデータベース(239)に格納する(処理手順1409)。
図16は、事故時の混雑率を予測し、計算サーバの記憶部へ格納する処理(事故時混雑率算出処理)の処理手順を説明する図である。以下では、図14の場合と同様に、この処理の実行前に、交通機関のある区間において輸送障害等の事故が発生し、事故情報データ(216)が事業者によって、データサーバ(210)に格納された状態にあるものとする。
混雑率推定プログラム(235)は、事故の影響を受ける乗客データ(218)、移動ログデータ、事故時の行動パタンデータ(217)、事故情報データ(216)を読み込む(処理ステップ1500)。そして、混雑率推定プログラム(235)は、事故時の行動パタンデータ(217)の中から、過去に発生した事故時の行動パタンIDと同じように迂回行動を行っている割合を算出し、迂回率を決定する(処理ステップ1501)。例えば、混雑率推定プログラム(235)は、事故時の行動パタンデータ(217)で過去の事故時の行動パタンIDが「1」または「2」となっているレコードのカードIDと同じレコードが事故の影響を受ける乗客データ(218)に含まれる割合を算出し、過去に事故に遭った乗客の中で実際に迂回した乗客の割合を求める。
混雑率推定プログラム(235)は、移動ログデータ、行動パタンデータの移動情報を合わせて、新しい移動ログデータを作成する。この際、移動経路・時間帯が事故情報データの事故区間・時間帯に含まれている場合は、輸送障害区間を迂回する経路を計算し、新しい移動ログ入れる(処理ステップ1502)。迂回経路の計算には、鉄道・バス路線ネットワークに対して、ダイクストラ法を用いて計算してもよいし、他の方法を用いて計算してもよい。新しい移動ログは、出発地から目的地までの乗車した回数分の路線と乗車位置、降車位置、乗車日時、降車日時の情報が含まれている。以降、図15に示した場合と同様の処理を行って、事故時における混雑率を算出する(処理ステップ1503〜1511)。このように、事故時における混雑率を求め、後述するように画面(図18、19)で知らせることにより、利用者にとっては、迂回しつつもより混雑の少ない路線を利用することが可能となり、また、鉄道事業者にとっては、混雑により重ねて事故が発生してしまうことを未然に防止することができる。
図17は、移動・購買ログデータおよび情報配信データから事故時の行動パタンデータを判定する処理(行動パタンデータ作成処理)の処理手順を説明する図である。以下では、図14の場合と同様に、この処理の実行前に、交通機関のある区間において輸送障害等の事故が発生して事故情報データ(216)が事業者によって、データサーバ(210)に格納され、その後事故が収束した状態にあるものとする。
事故時の行動判定プログラム(238)は、まず、移動・購買ログデータ(214)および情報配信データ(219)を読み込む(処理ステップ1600)。事故時の行動判定プログラム(238)は、情報配信データ(219)の登録者IDと同じ値のカードIDの移動・購買ログデータ(214)のレコードを抽出する(処理手順1601)。
事故時の行動判定プログラム(238)は、情報配信された登録者IDを一つ選び、抽出された移動・購買ログデータ(214)のレコードに対して、その登録者IDと同じカードIDのレコードを特定し、さらにその中で事故情報データ(216)に記録されている日時と同じ日時のレコードを特定し、特定したレコード経路と、その登録者IDの情報配信データのレコードとを比較する。そして、事故時の行動判定プログラム(238)は、事故時の行動パタンテーブル(218)を参照して、その登録者が事故時にどの行動パタンをとったのかを判定する(処理手順1603)。例えば、移動ログが配信情報通りの迂回経路だった場合には、配信情報に従って迂回する行動パタン(事故時の行動パタンID「1」)に分類したり、事故情報を配信した直後に、駅の近くで買い物をしている購買ログがあった場合、購買活動をする行動パタンに分類する(事故時の行動パタンID「4」)。他の行動パタンの場合も同様に分類する。情報配信された全ての登録者に対して行動パタン判定をしていない場合は、処理ステップ1602に戻る。情報配信された全ての登録者に対して判定している場合は、各登録者の行動パタンを事故時の行動パタンデータ(217)に出力し、データサーバに格納する(処理ステップ1605)。このとき、既に行動パタンが登録されている場合には、その行動パタンが更新され、その登録者の最新の行動パタンが格納される。
図18は、輸送障害時に登録者に情報(輸送障害情報)を配信するメールの画面例である(1700)。画面は、題名部(1701)と本文部(1711)で構成されている。題名部には、メールの題名を記述する(1701)。この題名は、本システムで予め定められたものである。また、本文部(1711)には、輸送障害等の事故の発生路線や区間、発生時刻の情報や、原因などの情報(事故情報)が記載されている(1702)。また、事故の詳細(事故詳細情報)を説明するウェブサイトのURLを記述してもよい(1703)。これらの情報は、例えば、事故情報については、情報配信サーバ250のCPU253が事故情報データ(216)を参照し、その内容を事故情報として出力し、事故詳細情報については、事故情報に記載された路線についての事故の詳細情報(例えば、事故情報データ(216)に記憶されている運転再開時間)にアクセスするためのURLを事故詳細情報のURLとして出力する。
さらに、輸送障害情報には、情報配信データ(219)に記憶されている迂回経路に関する情報を含んでいる(1712)。情報配信サーバ250のCPU253は、迂回経路に関する情報を出力する際に、併せて、図16で求められた事故時における各交通機関の混雑率を出力する(1707)。例えば、図18では、情報配信サーバ250のCPU253は、図9に示した影響を受ける乗客データ(218)を参照し、ある利用者の迂回経路(A駅からC駅に至る経路)および時刻(A駅の時刻:乗車日時、C駅の時刻:降車日時)を出力するとともに、その際の支払額400円を出力し、このときの予想混雑率20%を併せて出力することを示している。なお、図18では、1つの迂回経路について表示しているが、実際には、複数の迂回経路が候補として出力される。
このとき、情報配信サーバ250のCPU253は、迂回経路を再探索できるように、再探索するためのウェブサイトのURLを記述してもよい(1708)。例えば、情報配信サーバ250のCPU253は、上述したURLのクリックを受け付けると、表示画面生成プログラム(256)を起動し、図21に示す迂回経路の再探索画面(2000)を、利用者の携帯端末(282)の表示部に表示する。
図21は、迂回経路の再探索をするためのウェブサイトの画面例である。迂回経路の再探索画面(2000)は、出発地(2001)と目的地(2002)の入力画面を有している。このとき、表示画面生成プログラム(256)は、出発地と目的地の入力箇所に、その利用者の登録者IDをキーとして図22に示した行動パタンデータ(215)を参照し、同じカードIDのレコードに含まれる乗車駅・バス停、降車駅・バス停を、あらかじめ入力や表示させておいてもよい。
さらに、迂回経路の再探索画面(2000)は、出発時間の入力欄(2003)を有し、検索を開始するボタン(2004)が押下されると、検索が開始される。経路検索結果は、図22に示した行動パタンデータ(215)を参照し、複数の経路が表示されてもよい(2013、2014)。このとき、図18の場合と同様に、出発時間や到着時間の情報(2005)や、料金(2006)、乗り換え回数(2007)、混雑率(2007)などの情報を表示させ、詳しい経路は経路のボタン(2013)が押下されると、図22に示した行動パタンデータ(215)に含まれる具体的な経路を表示させてもよい。
さらに、表示画面生成プログラム(256)は、登録者の事故時の行動パタンデータ(217)から推定された行動タイプに応じて、迂回経路以外の情報を追加して表示させてもよい(1709)。例えば、図5に示した事故時の行動パタンテーブル(218)にその利用者にタクシーの利用履歴があった場合には、駅付近のタクシー会社のURLや電話番号を載せたり、携帯端末(282)がGPS機能を有していれば、最寄りのタクシー会社のURLや電話番号を載せてもかまわない。
さらに、表示画面生成プログラム(256)は、移動を取り止めて出発地へ戻る行動パタンの場合には、現在値や目的値から出発地までの経路を、迂回経路と同様の形式で表示しても良い。さらに、表示画面生成プログラム(256)は、駅付近での購買履歴がある場合には、その店舗を運営する企業のHPにアクセスする等して店舗情報を載せても良い。また、表示画面生成プログラム(256)は、利用者が自ら行動タイプを変更するために、クリック操作等によって、図5に示した事故時の行動パタンテーブルにアクセスし、行動タイプの変更手続きができるURLを記述してもよい(1710)。
図19は、鉄道事業者などのシステムを管理している事業者が、配信人数を決定するための画面例である。表示画面生成プログラム(256)は、図18に示した輸送障害情報の場合と同様に、事故情報データ(216)を参照し、輸送障害の区間や時間を画面上に表示させてもよい(1801、1802)。また、表示画面生成プログラム(256)は、図9に示した影響を受ける乗客データ(218)を参照し、事故IDごとにカードIDをカウントし、影響を受ける人数や影響を受ける乗客数を画面上に表示するとともに、その中で、本システムに登録している利用者の数(登録者数)を、図7に示した登録者データ(220)を参照してカウントし、画面上に表示してもよい(1804)。
また、表示画面生成プログラム(256)は、事故情報データ(216)や本画面に表示させた各項目値を履歴でデータサーバ(210)に記憶されている場合には、その時の事故日時(1806)、事故路線(1807)、時刻間(1808)、システムの登録者数を示す配信数(1809)等、同じ路線や時間帯で発生した過去の履歴を表示し、過去の操作履歴を選択すると同じ操作が自動的に行われるようにしてもよい(1805)。また、操作履歴(1805)を表示する際に、図15に示した混雑率を事故が発生したタイミングおよび事故が発生して収束したタイミングで算出し、これらの値の比から混雑率に対する効果(どの程度混雑が軽減されたのか)を求め、上述した各情報と共に画面上に表示させてもよい(1810)。この場合、効果についても、上述した各情報に対応付けて、履歴で記憶されている。
画面上には、配信人数や配信時刻の入力欄(1811、1812)、配信条件を設定するためのボタンを有していてもよい(1815)。配信人数については、事業者(272)が適宜定めることができるが、例えば、迂回した利用者に対して付加価値を提供する(例えば、移動のための換金ポイントや購買のための換金ポイントを付与する)場合には、その予算に応じて設定し、表示画面生成プログラム(256)が、設定された値を受け付けることとしてもよい。配信条件設定では、登録者データ(220)に利用者の住所が記憶されている場合、あるいは移動・購買ログデータ(214)に記憶されている履歴から、乗車駅・バス停または降車駅・バス停と、地図情報(不図示)を突き合わせ、別画面で、情報配信データ(219)の配信地区を定めてもよい。
また、表示画面生成プログラム(256)は、混雑率の軽減目標などの条件を設定し、条件にあった登録者に対して配信するようにしてもよい。例えば、表示画面生成プログラム(256)は、配信数が1人の場合(すなわち、本システムを利用して経路を迂回する可能性のある人数)における混雑率、配信数が2人の場合における混雑率、と配信数を次第に増やして図16に示した事故時混雑率算出処理を実行してそれぞれの場合における混雑率を求め、その合計値の混雑率が、あらかじめ目標とされた混雑率(例えば、混雑率が15%軽減される値)に達した場合、それまでに算出した登録者(例えば、3000人のうちの1000人)を対象に、情報配信データ(219)を配信してもよい。
また、情報配信データ(219)が配信され、乗客が迂回経路を利用した場合に、表示画面生成プログラム(256)は、混雑率がどれくらい軽減されるか予想混雑率を表示してもよい(1813)。例えば、表示画面生成プログラム(256)は、図10に示した事故時の行動データ(217)を参照し、情報配信データ(219)に含まれる登録者の交通系ICカードのカードIDと同じカードIDのレコードのうち、過去の事故時の行動パタンIDが「1」であるレコードの数をカウントし、その時点で発生している事故の予想混雑率(軽減される混雑率)を求めて、画面上に表示することとしてもよい。
さらに、配信人数などの条件が決定された場合、表示画面生成プログラム(256)は、配信ボタン(1814)の押下を受け付けて、情報配信データ(219)を配信する。または、事業者が配信の必要がないと判断された場合、表示画面生成プログラム(256)は、配信しないボタン(1815)の押下を受け付けて、配信しない決定をすることができるとしてもよい。
図20は、鉄道事業者などのシステムを管理している事業者が、交通機関や乗客の流動のシミュレーション結果を見る画面例である。乗客の流動を見るシミュレーション画面(1900)と輸送障害情報(1901、1902)やメールの配信人数(1903)、迂回経路の利用率(1904)、輸送障害の影響を受けた乗客数(1907)が表示されている。輸送障害情報(1901、1902)やメールの配信人数(1903)については、図19で示した輸送障害の区間や時間(1801、1802)、配信人数(1811)と同様のものである。また、迂回経路の利用率を変更した場合の乗客の流動を見るために、迂回経路の利用率の入力画面があってもよい(1905)。
例えば、図10に示した事故時の行動データ(217)の中で、迂回経路を利用した利用者(例えば、過去の事故時の行動パタンID「1」、「2」)の数の割合が画面上から指定されると、表示画面生成プログラム(256)は、事故時の行動データ(217)の中からランダムに(あるいは経路や地域ごとに)利用者をピックアップし、その利用者が迂回経路によって移動した場合における利用者全体の動きを画面上に表示させてもよい。図20では、図の右上方向の経路に対して、右下に伸びる迂回経路を表示している。この画面では、駅やバス停(1908)の間を電車やバス(1909)が移動していることを示している。表示画面生成プログラム(256)は、ピックアップした利用者の数が多くなればなるほど、画面上の迂回経路を太く表示したり色を変更して、シミュレーションの結果を表示させてもよい。なお、これらの画面は、マウスやキーボードなどの入力インタフェースを用いて操作することが可能で、例えば、ホイールボタンなどでズームイン/ズームアウトを行ったり、マウスで駅やバス停、電車、バスをクリックすると待機人数や乗車人数が表示されても良い。
また、上述した画面上で、表示画面生成プログラム(256)は、情報配信された行動タイプ別の割合を表示してもよい(1908)。行動タイプ別の割合を示す図は、円グラフ以外の図で表示してもよい。例えば、表示画面生成プログラム(256)は、タイプ別割合(1907)を表示する際に、事故IDをキーとして、図10に示した事故時の行動データ(217)を参照し、そのときの事故における利用者の行動パタンがいずれの行動パタンであるかを集約し、画面上に表示させる。
このように、本実施例では上述した各処理を行い、交通系ICカードデータの行動履歴から、利用者の典型的な移動経路や時間帯を推定することで、輸送障害の影響を受ける乗客を特定する。また、本実施例では、迂回経路の情報に加えて、利用者が行う迂回行動以外の情報を学習し、利用者へ配信することにより、迂回経路での混雑を緩和する。また、本実施例では、交通系ICカードデータから生成した移動・購買ログデータを用いて、輸送障害発生前、輸送障害発生中、運転再開後で異なる処理を行う。具体的には、輸送障害発生前には、乗客の行動パタンを推定し、システムの利用者の交通系ICカードデータのIDとメールアドレスを登録する。輸送障害発生中には、事故情報と事前に推定した乗客の行動パタンの推定結果より、輸送障害の影響を受ける乗客を抽出する。また、鉄道事業者の指示に従って、情報の配信を行う。運転再開後には、輸送障害発生中に情報を受け取った乗客の事故時の行動を分析し、事故時の行動データを更新する。したがって、交通系ICカードデータから利用者の行動パタンを分析し、システムに登録している利用者の移動経路情報を自動的に更新することで、利用者の手間を省くことができる。また、利用者の実際の行動を分析し、駅付近の店舗情報やタクシー会社のURLなど乗客の行動を分散化させる情報を追加することで、迂回経路への乗客の集中を軽減し、混雑緩和を達成することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。