JPWO2001096401A1 - 蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法 - Google Patents
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Abstract
蛍光タンパク質を融合し、かつ抗原結合活性のあるscFv抗体の作製方法を提供する。scFv抗体を表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製し、これより特定の抗原を認識する抗体を発現しているクローンを選択する。そして、当該クローンより、scFv抗体遺伝子を取得し、これを発現ベクターに導入する。発現ベクターには予め蛍光タンパク質をコードする遺伝子が組込まれており、宿主内で発現させることにより、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体が産生される。
Description
技術分野
本発明は、蛍光を発することができる抗体の作製方法に関する。詳しくは、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法に関する。
背景技術
抗体のライブラリーの作製方法としてファージディスプレイ法が利用されている。ファージディスプレイ法は、Smithにより1985年(Smith GP Science 1985 228:4075 1315−7)に考案されたもので、M13ファージのような一本鎖環状DNAを持つ線状のバクテリオファージが用いられる。ファージ粒子はDNAの周囲を取り囲んでファージ粒子の大部分を構成するcp8というタンパク質と、ファージが大腸菌に感染する時に機能する5個のcp3と呼ばれるタンパク質などからなっている。このcp3もしくはcp8と融合した形でポリペプチドをコードするように遺伝子を構築し、ファージ粒子表面にそのタンパクを発現させるシステムがファージディスプレイシステムである。他の物質との結合活性を持つタンパク質を表面に保持したファージ粒子は、そのリガンドとの結合活性を利用して濃縮することができる。こうして目的とする結合活性を有するファージ粒子を濃縮する方法は、パニング法と呼ばれている。濃縮されたファージ粒子には、必要な結合活性を持つタンパク質をコードするDNAがパッケージングされている。このように繊維状ファージの利用によって、結合活性に基づくスクリーニングと、DNAのクローニングとをきわめて効率的に行うことができるシステムが実現した(McCafferty J,Griffiths AD,Winter G,Chiswell DJ.Nature.1990 348:630 1552−4.)。
ファージディスプレイ系が抗体に応用され、VHドメインのみ、scFv、Fv、Fab型抗体がcp3又はcp8と融合された形で発現された。抗原と結合するファージ抗体は同時に抗体をコードする遺伝子を含む。即ち、ファージディスプレイシステムでは、特定の抗原に結合可能な抗体分子と、その抗体分子をコードする遺伝子も同時に得られる点に大きな利点がある。しかし、ファージディスプレイ系を用いて作製された初期の抗体ライブラリーから単離された抗体は、抗原結合力の低いものが多かった。結合力を高める試みの一つとして、人為的に遺伝子に変異を与える方法が提案された。Winterらは1994年、単離した全てのVH、VL遺伝子と、JH、JL遺伝子の間にランダムな配列を挿入する半人工的配列を持つ抗体ライブラリーを作製することにより、親和性に優れた抗体の取得を可能とする抗体ライブラリーを得た(Nissim A,Winter G et al.EMBO J.13:3 692−8,1994)。De Kruifらも1995年基本的に同じ原理に基づいて抗体ライブラリーを作製している(de Kruif J,Boel E,Logtenberg T J.Mol.Biol.248:1 97−105,1995)。Vaughanらは、1996年ライブラリーの大きさを拡大することで充分な大きさの抗体レパートリーを確保しようとしている(Vaughan TJ et al.Nat.Biotechnol.14:3 309−14,1996)。また、本発明者らは、生体内における抗体産生過程をできるだけ再現することにより、より多様なレパートリーを有し、かつ機能的なコンフォーメーションを保持した抗体分子を高い割合で含む抗体ライブラリーの提供方法を提案した(特願平12−050543)。
上記のように、ファージディスプレイシステムによれば、抗体分子だけでなく、その抗体分子をコードする遺伝子も同時に得られる。この遺伝子の両端はユニークな制限酵素部位に設計できるため、ファージDNAを単離し、制限酵素処理を行い、続いて、適当な発現ベクターに組み込むといった簡単な操作により、当該遺伝子の発現形態をファージディスプレイ型から別の形態へと変換することができる(Ito,W.,and Kurosawa,Y.:J.Biol.Chem.268:20668−20675,1993)。
一方、蛍光を発することができるタンパク質GFP(green fluorescent protein)が知られ、GFPによる様々なタンパク質の標識化が試みられている。GFPは、特定波長の光の照射により蛍光を発することができるタンパク質分子であり、GFPにより標識化されたタンパク質分子の検出には特別の試薬等を必要としない。したがって、迅速かつ容易に検出ができることはもちろんのこと、生細胞内等においても直接検出することができるといった利点があり、今後の応用が期待されている。なお、GFPと同様に蛍光を発するタンパク質として、RFP(red fluorescent protein)、BFP(blue fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent protein)CFP(cyan fluorecent protein)や、これらの変異体が開発されている(Crameri,A.et al.:Nature Biotechnol.,14:315−319,1996;Yang,T.et al.:J.Biol.Chem.,273:8212−8216,1998;Lybarger,L.et al.:Cytometry,31:147−152,1998)。
抗体分子についてもGFP等による標識化が検討されているが、以下の課題が存在することが指摘されている。
抗体分子の中のS−S結合には、ドメイン内の分子内S−S結合と、H鎖とL鎖の間、あるいはH鎖とH鎖の間の分子間S−S結合の2種類が存在する。バクテリアの細胞質内で発現させた抗体は、抗体の産生に組替え遺伝子技術を応用した当初は、抗原結合活性をあまり示さなかった。というのは、細胞質内の条件では、ポリペプチドの正しいfoldingが起きないうえ、S−S結合が正しく形成されないからである(Boss MA,Kenten JH,Wood CR,Emtage JS.Nucleic Acids Res.12:3791−806,1984.)。これに対して、翻訳されたポリペプチドが膜を通過しペリプラズムへ分泌されるように、pelB配列やompA配列をポリペプチドのN末端側に導入するという試みが行われたが、Fabフラグメント,scFvフラグメントのいずれも抗原との結合が正しく行われるものは得られなかった(Skerra,A.,and Pluckthun,A.:Science 240:1038−1041,1988;Better,M.,Chang,C.P.,Robinson,R.R.,and Horwitz,A.R.:Science 240:1041−1043,1988)。GFPと融合することによって蛍光を発する抗体を創り出すには、抗体が抗原結合活性を得るために必要な条件とGFPが蛍光を発するために必要な条件という相反する両方の条件を満たさなければならない。GFPは、バクテリア内で翻訳された直後の状態では蛍光を発することができない。別の因子は必要としないが、分子内で多段階の化学反応が起きることにより発光中心が形成されることで蛍光を発することができる状態となる(Reid,B.,and Flynn,G.C.:Biochemistry 36:6786−6791,1997)。
一方、最近になって、イントラボディー技術の発展により、抗原結合能を有するscFv抗体を動物細胞の細胞質内でうまく発現させることができるようになってきた。
発明の開示
このような状況において、本発明者らは、scFv抗体に注目し、scFv抗体を蛍光タンパク質分子により標識化することを試みた。その結果、ファージディスプレイシステムを組み合わせて用いた系により、蛍光タンパク質により標識化されたscFv抗体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。本発明の構成は以下の通りである。
〔1〕以下の工程を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法。
1)scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製する工程、
2)前記scFv抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることにより、該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンを選択する工程、
3)工程2)で選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子を取得する工程、
4)工程3)で取得した遺伝子を組込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能な発現ベクターに、該遺伝子を組込む工程、及び
5)工程4)で得られた組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、前記融合タンパク質を発現させる工程。
〔2〕 前記scFv抗体ライブラリーは、重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成するように選択された軽鎖可変領域を少なくとも一部分含んで成る、ことを特徴とする〔1〕に記載のscFv抗体の作製方法。
〔3〕 前記scFv抗体ライブラリーを構成する各ファージクローン表面のscFv抗体は、VH領域、VL領域、リンカー及びCL領域を有する、ことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のscFv抗体の作製方法。
〔4〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP,及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のscFv抗体の作製方法。
〔5〕 〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の方法により作製される、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
〔6〕 VH領域、VL領域、及びリンカーにより構成されるFv領域、CL領域、並びに該FV領域に該CL領域を介して連結される蛍光タンパク質を有してなる、ことを特徴とする蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
〔7〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔6〕に記載のscFv抗体。
〔8〕 〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載のscFv抗体を用いた免疫学的測定方法。
〔9〕 〔1〕に記載の工程1)〜4)により取得される、scFv抗体遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する組換えベクター。
〔10〕 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする〔9〕に記載の組換えベクター。
〔11〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔9〕又は〔10〕のいずれかに記載の組換えベクター。
〔12〕 以下の構造を有する組み換えベクター。
〔13〕 5’側より順に、開始コドン、scFv抗体遺伝子を導入する部位、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する発現ベクター。
〔14〕 前記scFv抗体遺伝子は、VH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする〔13〕に記載の発現ベクター。
〔15〕 前記scFv抗体遺伝子を導入する部位と前記蛍光タンパク質をコードする塩基配列との間にHis−tag、myc−tag、又はHA−tagをコードする塩基配列を有する、ことを特徴とする〔13〕又は〔14〕に記載の発現ベクター。
〔16〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔13〕乃至〔15〕のいずれかに記載の発現ベクター。
〔17〕 scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。
〔18〕 前記scFv抗体はVH領域、VL領域、リンカー、及びCL領域から構成される、ことを特徴とする〔17〕に記載のキット。
〔19〕 scFv抗体遺伝子を有するファージクローン又はファージミドクローンから構成されるscFv抗体遺伝子ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。
〔20〕 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、VL遺伝子、リンカー配列、及びCL遺伝子から構成される、ことを特徴とする〔19〕に記載のキット。
〔21〕 前記ベクターは〔13〕乃至〔16〕のいずれかに記載される発現ベクターである、ことを特徴とする〔17〕乃至〔20〕のいずれかに記載のキット。
発明を実施するための最良の形態
本発明である、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法は、以下の工程を含むものである。
1)scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製する工程、
2)前記scFv抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることにより、該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンを選択する工程、
3)工程2)で選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子を取得する工程、
4)工程3)で取得した遺伝子を組込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能な発現ベクターに、該遺伝子を組込む工程、及び
5)工程4)で得られた組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、前記融合タンパク質を発現させる工程。
本発明において、「scFv抗体」とは、Fv領域、即ち、重鎖可変領域(VH領域)及び軽鎖可変領域(VL領域)を含み、これらがリンカーにより架橋されて構成される抗体である。本明細書においては、VH領域、VL領域、及びリンカーに加えて、軽鎖定常領域(CL領域)を含むものもscFv抗体に含まれるものとする。CL領域を付加することは、本発明の蛍光タンパク質を融合したscFv抗体のコンフォーメーションの安定化の目的で行われる。
また、「scFv抗体遺伝子」とは、VH領域をコードする遺伝子(VH遺伝子)、VL領域をコードする遺伝子(VL遺伝子)、及びリンカー配列から構成される。本発明においては、これらに加えてCL領域をコードする遺伝子(CL遺伝子)を含むものもscFv抗体遺伝子に含まれるものとする。
VH領域とVL領域とを架橋するリンカーには、汎用的なものを用いることができ、例えば、グリシン−セリンからなるペプチドリンカーが用いられる。
本発明において、「ライブラリー」とは、多様な同種の構成要素からなる集合体を意味する。よって、scFv抗体ライブラリーとは、多様なscFv抗体を含有する集合体である。本発明においては、各scFv抗体はファージ表面に発現されている。換言すれば、表面にscFv抗体を発現しているファージクローンの集合によりscFv抗体ライブラリーが形成される。
scFv抗体ライブラリーは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が機能的なコンフォーメーションを再構成するように(もしくは、再構成しているものが大多数を占めるように)作製できれば有効なものとなる。本発明者らは、特願平12−050543において、重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを形成する軽鎖可変領域を選択してライブラリー作製に用いることを提案している。特願平12−050543に提案された方法はscFv抗体ライブラリーにも適用することが可能である。また、scFv抗体ライブラリーは、生体内の多様性を包含するのに十分なクローン数を有することが好ましい。これにより、後述の工程2)において、多種多様な抗原に対して、当該抗原と結合可能なscFv抗体を表面に発現するクローンを選択することが可能となる。また、クローン数は、1×1011以上であることが好ましい。このようなクローン数を有するscFv抗体ライブラリーの調製方法については、後述の実施例において説明する。
本発明におけるscFv抗体ライブラリーは、scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンの集合により構成されるが、かかるscFv抗体ライブラリーはscFv抗体遺伝子を保有するファージミドクローンの集合(以下、「scFv抗体ファージミドライブラリー」という)より調製することができる。なお、本発明において、scFv抗体遺伝子を保有するクローンの集合から構成されるライブラリーをscFv抗体遺伝子ライブラリーと呼ぶ。したがって、scFv抗体ファージミドライブラリーはscFv抗体遺伝子ライブラリーでもある。また、scFv抗体遺伝子を保有するファージミドにより形質転換された大腸菌の集合もscFv抗体遺伝子ライブラリーを構成する。
scFv抗体ファージミドライブラリーを作製するためのファージミドベクターとしては、市販のものを利用することができる(例えば、ファルマシア製 pTZ19R)。ファージミドには、cp3やcp8等のファージの構成タンパク質をコードする遺伝子に、発現させたい外来タンパク質をコードする遺伝子、即ち、scFv抗体遺伝子を連結する。
scFv抗体遺伝子は、上述のようにVH遺伝子、VL遺伝子、及びリンカー配列、又はこれらにCL遺伝子を加えたものから構成されるが、VH遺伝子、VL遺伝子、及びCL遺伝子は、任意の抗体産生細胞より得ることができる。抗体産生細胞としては、例えば、末梢血リンパ球や脾臓細胞等を挙げることができる。それぞれの遺伝子の単離には、公知のプライマーを用いたRT−PCR法を利用することができる。得られた各領域の遺伝子とリンカー配列とを連結することによりscFv抗体遺伝子が構成される。
scFv抗体ファージミドライブラリーからのscFv抗体ライブラリーの調製方法は次のように行うことができる。まず、scFv抗体ファージミドライブラリーを構成する各クローンを宿主にトランスフェクションさせる。次に、この宿主にヘルパーファージを重感染させる。例えば、ファージミドベクターpTZ19Rは、ヘルパーファージM13K07の重感染によってファージ粒子として回収することができる。このとき利用されるファージミドのcp3タンパク質が外来タンパク質すなわちscFv抗体と融合されていれば、完成するファージの表面にはscFv抗体が提示されることとなる。
scFv抗体ライブラリーの作製方法は上述のものに限られるわけではなく、例えば、後述の実施例のように、まず、VH遺伝子、CH遺伝子、VL遺伝子、及びCL遺伝子とから構成されるFab型抗体遺伝子を保有するクローンにより構成されるライブラリー(以下「Fab抗体遺伝子ライブラリー」という)を作成し、各クローンにおけるFab抗体遺伝子をscFv抗体遺伝子に変換することによりscFv抗体を保有するクローンの集合(scFv抗体遺伝子ライブラリー)を得て、これから上述の方法によりscFv抗体ライブラリーを作製することができる。
本発明の工程2)では、scFv抗体ライブラリーを特定の抗原でスクリーニングし、当該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンが選択される。
抗原は、目的に応じて種々のものが用いられる。また、抗原を用いたスクリーニングは以下に示すパニング法により行うことができる。まず、目的とする抗原にscFv抗体ライブラリーを接触させ、この抗原に結合するクローンを回収する。回収したクローンを増幅し、再び目的の抗原と接触させて、結合するクローンを回収する工程を繰り返す。ファージの増幅は、ファージを大腸菌に感染させ、回収することによって行われる。この工程を繰り返すことによって、目的とする反応性を持つscFv抗体をその表面に発現しているファージクローンが濃縮される。抗原との結合性に基づくスクリーニングは、一般にクローンの回収率が上昇するまで行われる。ここで回収率とは、抗原に対して添加したファージクローンの数に対する、抗原への結合性を有するものとして回収されたファージクローンの数の割合である。回収率がその前のスクリーニングに比較して明らかに上昇するとき、目的とする反応性を持つscFv抗体をその表面に発現しているファージクローンが濃縮されつつあることを意味する。
工程3)においては、工程2)により選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子(scFv抗体遺伝子)が取得される。即ち、ファージクローンより、VH領域、VL領域、及びリンカーをコードする遺伝子が切り出される。scFv抗体としてCL領域を含有するものを用いる場合には、VH領域、VL領域、及びリンカーに加えて、CL領域をコードする遺伝子が切り出される。このとき、His,MycなどのTagを含有するものを用いてもよい。
具体的なscFv抗体遺伝子の切り出し方法としては、ファージDNAのscFv抗体遺伝子導入部位、即ち、scFv抗体遺伝子の両端の制限酵素サイトを特異的に切断する制限酵素を用いる。このような切り出しを行うため、scFv抗体ライブラリーを構成する各ファージクローンにおけるscFv遺伝子導入部位を当該制限酵素に対応したユニークな制限酵素サイトにより形成しておく。
工程3)の後に、工程3)で取得したscFv抗体遺伝子の一端又は両端の配列を、該遺伝子のコードするアミノ酸配列が変化しない条件下で異なる塩基配列に変換する工程(工程3−1))を行うことができる。この工程により、scFv抗体遺伝子のコードするアミノ酸配列を変化させることなく、その一端又は両端に所望の制限酵素サイトを形成することができる。これにより、工程3)で切り出されたscFv抗体遺伝子の一端又は両端の塩基配列を、次の工程4)において用いられる発現ベクターの導入部位を形成する制限酵素サイトに対応させることができる。このような工程を行うことにより、発現ベクターの設計の自由度が高くなる。もちろん、予めscFv抗体遺伝子の両端の制限酵素サイトと発現ベクターの導入部位とが対応するように、scFv抗体遺伝子及び発現ベクターを設計することができ、この場合には工程3−1)は不要である。工程3−1)は、適当な合成プライマーを用いたPCRにより行うことができる。この場合、工程3)と同時に工程3−1)を行うことができる。即ち、scFv抗体遺伝子を切り出す際に、scFv抗体遺伝子の一端又は両端の配列を変換する2つのプライマーを用いてPCRを行い、制限酵素サイトの変換されたscFv抗体遺伝子を切り出し、かつ増幅する。
また、scFv抗体遺伝子の末端に適当なリンカーを付加することにより、所望の制限酵素サイトを形成してもよい。
工程4)では、工程3)、又は工程3)及び工程3−1)で取得したscFv抗体遺伝子を発現ベクターに組み込むことが行われる。
発現ベクターはscFv抗体遺伝子を組み込むことによりscFv抗体遺伝子発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なものを用いる。このような発現ベクターとしては、5’側より順に、開始コドン、scFv抗体遺伝子を導入する部位、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有するものが用いられる。また、scFV抗体遺伝子を導入する部位と蛍光タンパク質をコードする塩基配列の間にHis−tag、myc−tag、又はHA−tagなどをコードする塩基配列(以下、「タグ配列」という)を有する発現ベクターを用いることができる。かかるベクターを用いることにより、scFv領域と蛍光タンパク質との間に、タグ配列によりコードされる分子が介在される。これにより、タグ分子の特定物質との親和性を利用してscFv抗体を精製することが可能となる。また、タグ配列を入れる位置はこれに限られるものではなく、scFv抗体遺伝子導入部位の5’上流域、又は蛍光タンパク質をコードする配列の下流域に入れておくこともできる。但し、タグ配列にコードされる分子とscFv抗体とが融合したものとして発現される位置に入れる必要がある。
上記特性を備える発現ベクターは、市販の発現ベクターを周知の遺伝子操作技術を用いて改良することにより作製することができる。なお、形質転換させる宿主に応じて、細菌発現用ベクター、動物細胞発現用ベクターを用いる。大腸菌を宿主とした場合の本発明における発現ベクターとして、例えば、p6×His−GFP(クロンテック製)ベクターの開始コドンとHis−Tag配列の間にAscIサイトを付加したものを用いることができる。
この発現ベクターにおいては、AscIサイトにscFv抗体遺伝子が導入される。このベクターを用いた場合に、後述の工程5)で得られる発現産物では、標識ペプチドであるヒスチジンタグが融合したscFv抗体が発現される。ヒスチジンタグは金属イオンとの結合活性を持つタグであって、例えばニッケルカラムに捕捉することができるため、scFv抗体の精製に利用できる。
同様の目的で、ヒスチジンタグの代わりに、myc−tag、あるいはHA−tag等を用いることもできる。その場合には、ヒスチジンタグの場合と同様に、これらのタグをコードする塩基配列を組込んだ発現ベクターを用いる。また、scFv抗体遺伝子に予めHis−tag等をコードする塩基配列を融合しておき、これを発現ベクターに導入することもできる。この場合には、発現ベクターとしてHis−tag等をコードする塩基配列を有するものを使用する必要はない。
蛍光タンパク質の種類は特に限定されず、公知のものを任意に選択して用いることができる。例えば、GFP、RFP、BFP、YFP、CFPを用いることができ、また、これらの変異体を用いることもできる。変異体としては、例えば、EGFP(enhanced green fluorescent protein)、EBFP(enhanced blue fluorescent protein)、EYFP(enhanced yellow fluorescent protein)が知られている。これらのタンパク質は特定の波長の光を照射することにより照射光と異なる波長の光を発光することができ、目的、条件等に応じて任意に選択して用いることができる。また、これらの蛍光タンパク質は単独で用いられることはもちろんのこと、複数種を任意に選択し、組み合わせて用いることもできる。
上記工程1)〜4)により取得される、scFv抗体遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する組換えベクターは本発明に含まれる。また、工程3)の後に上記工程3−1)をさらに行うことにより取得される組換えベクターも本発明に含まれる。この場合においても、上述のようにscFv抗体遺伝子としてCL遺伝子を含む場合も含まれるものとする。
具体的な組換えベクターとして、次の構成のものを挙げることができる。
本発明における工程5)では、工程4)で得られたscFv抗体遺伝子を有する組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体が発現される。
上記の工程により作製される蛍光タンパク質を融合したscFv抗体は、免疫染色等の免疫学的測定方法に利用できる。本発明のscFv抗体では、蛍光タンパク質が融合しているため、それ自体で蛍光を発することができる。すなわち、従来の抗体を用いたELISA法等においては、標識化された2次抗体を必要とするが、本発明のscFv抗体においてはそれ自体標識化されているため、2次抗体等を必要とせず、測定工程の簡略化が図れる。また、蛍光を発するために特別の基質を必要としないため、例えば、細胞内で発現させ、これを取り出すことなく直接測定することができる。したがって、特定の抗原の細胞内ないし生体内における発現、分布を直接測定することができる。
scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーと、scFv抗体遺伝子を組込むことにより当該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクターとを含ませることにより、scFv抗体作製用キットを構成することができる。scFv抗体ライブラリー、蛍光タンパク質、発現ベクターとしては、それぞれ上述のものを任意に選択して用いることができる。また、scFv抗体としては、VH領域、VL領域、リンカー、及びCL領域から構成されるものも含まれる。
また、scFv抗体遺伝子を有するファージクローン又はファージミドクローンから構成されるscFv抗体遺伝子ライブラリーと、scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクターとを含ませることにより、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キットを構成することができる。この場合において、scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、VL遺伝子、リンカー配列、及びCL遺伝子から構成されるものも含まれる。scFv抗体遺伝子ライブラリーは、公知のファージ又はファージミドを用い、公知の遺伝子操作技術によりscFv抗体遺伝子を導入することにより作製される。また、蛍光タンパク質、発現ベクターとしては、それぞれ上述のものを任意に選択して用いることができる。
[実施例]
本実施例では、scFv抗体ライブラリーを調製するために、まず、VH領域、CH領域、VL領域、及びCL領域とから構成されるFab型抗体遺伝子を含有するクローンの集合からなるFab抗体遺伝子ライブラリーを作製した。そして、Fab抗体遺伝子ライブラリーをscFv型抗体遺伝子を含有するクローンの集合からなるscFv抗体遺伝子ライブラリーに変換し、これよりscFv抗体ライブラリーを調製した。なお、本実施例では、scFv型抗体として、VH領域、リンカー、及びVL領域(scFv)にCL領域が付加した抗体(以下、「scFv−CL抗体」という)を用いた。CL領域を付加した理由は、細胞質内で発現させた場合に安定性の促進が期待されるからである。なお、scFv抗体ライブラリーの調製方法はこれに限定されるものではない。
1.Fab抗体遺伝子ライブラリー作製用ファージミドベクターの作製
1−1 Fab抗体遺伝子ライブラリーを作製するためのベクターの作製
図1に概念的に示すように、pTZ19Rファージミドベクター(ファルマシア)にM13ファージのpelB(シグナル配列)、His6タグ配列、M13ファージのcp3タンパク質(Δcp3(198aa−406aa)N端欠失キャプシドタンパク質3)配列、proteinAタンパク質配列を適当な制限酵素部位で組み込みベクターpFCAH9−E8dを作製した(Iba Y.et al.,Gene 194:35−46,1997.参照)。軽鎖λ5,λ6遺伝子に存在するBstPIでその遺伝子が切断されることを避けるためにpFCAH9−E8dはXhoI部位が設けられている。pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を図2に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図3〜5に示した。
このベクターの所定の位置に重鎖と軽鎖の遺伝子を挿入することにより、実際の抗体タンパク質発現ベクターが完成することとなる。完成したベクターによって発現される抗体の形状はFab型であり、重鎖軽鎖はN末の可変領域に続いて定常領域CH1,CLをそれぞれ有している。定常領域同士の−SS−結合によって、重鎖と軽鎖は結合されることになる。軽鎖定常領域CL遺伝子は前述のcp3遺伝子と結合されており、結果として発現タンパク質はFab−cp3の形状となる。
具体的には、以下のような操作を行った。
用いたプライマー:
pFCAH3−E8T H鎖部分の作製
1)pAALFabを鋳型にして527−599を用いたPCR,547−590を用いたPCRを行いDNA断片を作製した。
2)544−545,546−547,548−549にてPCRを行いDNA断片を作製した
3)1)2)を混合し527,590によるPCRを行い、これをpAALFabのHindIII−SmaI siteにクローニングした
pFCAH3−E8T L鎖部分
4)542−562,561−613を用いたPCRを行いDNA断片を作製した
5)538−539,542−543にてPCRを行いDNA断片を作製した
6)4)5)を混合し538,562によるPCRを行い、これをpAALFabのSacI−NheI siteにクローニングした
pFCAH9−E8d
6)VHstuffer部分の作製
pFCAH3−E8TをXbaI,EcoRIにて消化、klenow fragmentを作用させて平滑末端に変えた後self ligationさせてVH部分のstufferを作製した。
7)VHstuffer部分の作製
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−600にてPCR。6)のHindIII−XhoI siteにクローニングした。
8)これをKpnIにて消化、self ligationさせてVL部分のstufferを作製
9)SfiI,NcoI,SpeI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−663にてPCR。1)のHindIII−SacI siteにクローニングした。
10)AscI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−LCP3ASCにてPCRし、それをSacI完全消化、SalI部分消化した2)にクローニングした。
11)gammaCH1部分をヒト遺伝子に変換
ヒトgammaCH1部分にはBstPI siteが存在するためこれをなくす設計でクローニングを行った。扁桃cDNAを鋳型にしてhCH1Bst−hCH1midS,hCH1midAS−hCH1H6にてPCRしたのち、これを混合してhCH1Bst−hCH16SmaにてPCRし、そのDNA断片を3)のBstPI−Sma siteにクローニングした
12)Xho siteの導入
11)を鋳型に702−663にてPCRを行い、これを11)のBstPI−SacI siteにクローニングした。
1−2 重鎖可変領域(VH)を一時的にクローニングするためのベクターの作製
公知の手法(Iba Y.et al.,Gene 194:35−46,1997.参照)に従って、まずpAALFabベクター(図1の1))を作製した。pAALFabベクターのXbaIからEcoRIの間を欠落させ、新たに制限酵素切断部位Kpn I,Sfi I,Nco I,Spe Iを付加して、pFCAH3−E8Tを経て、VH(重鎖可変領域)をクローニング可能としたベクターpscFvCA−E8VHd(図1の3))を作製し、重鎖可変領域を一時的にクローニングするためのベクターとした。pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を図6に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図7〜8に示した。
具体的には
primer610とprimer611をアニールさせ、それをpFCAH3−E8TのBstPI−SacI siteにクローニングしてsingle chainの作製を行なった。さらに、primer527とprimer619にてPCRを行い、これをさらにHindIII−PstI siteにクローニングし、SfiI,NcoI siteの導入を行った。
2.イムノグロブリン軽鎖ライブラリーの作製
2−1 PCRを用いたイムノグロブリン軽鎖遺伝子の単離
骨髄細胞(検体No.59)4×107cells、および臍帯血と末梢血のリンパ球から、市販のキット(Pharmacia Biotech社製QuickPrep Micro mRNA Purification Kit)を用いて、2.6μgのmRNAを得た。このmRNAからcDNAを作製した。cDNAは、GibcoBRL社製SuperScript Preamplification Systemによって作製した。プライマーには、オリゴdTを用いた。得られたcDNAを鋳型にして、軽鎖遺伝子の取得用5‘プライマー(κ1〜κ6、λ1〜λ6)と3’プライマー(hCKASCプライマーまたはhCLASCプライマー)を用いて、PCRを行った。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。用いたプライマーの塩基配列とPCRの条件は以下のとおりである。軽鎖遺伝子取得用プライマーの塩基配列中、下線部はSfiIサイト、AscIサイトを示す。
5’−プライマーκ1〜κ6
5’−プライマーλ1〜λ6
PCRの条件
cDNA 2μL
10×buffer #1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL)1μL
94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
2−2 ライブラリー作製に適した軽鎖を選択して軽鎖遺伝子ライブラリーを作製する方法
2−2−1 軽鎖遺伝子のファージミドへの組込み
1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×NEB4(AscIに添付) 5μL
10×BSA(SfiIに添付) 5μL
滅菌済MilliQ 28μL
AscI(NEB社 10U/μL) 1μL
SfiI(NEB社 20U/μL) 1μL
37℃で1時間、50℃で1時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、600bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpFCAH9−E8d(図1の4))をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpFCAH9−E8d 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
2−2−2 ファージミドの大腸菌への導入
得られたligated DNAを用いて以下のように大腸菌DH12Sを形質転換した。即ち、ligated DNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解した。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社 Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
2−2−3 ファージミドで形質転換した大腸菌からのFab−cp3型抗体培地中への分泌
形質転換した上記の大腸菌を形質転換用培地(SOB)2mLに植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×TY培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でincubateし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、軽鎖遺伝子の塩基配列を調べた。
SOB培地:950mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後250mMのKCl溶液10mLを加え、5N NaOHでpH7.0に調製した。精製水を加えて1000mLに調整した後、オートクレーブで20分間滅菌し、使用直前に滅菌した2MのMgCl2を5mL加えた。
bacto−tryptone 20g
bacto−yeast extract 5g
NaCl 0.5g
2×YT培地:900mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後5N NaOHでpHを7.0に調製し、精製水を加えて1000mLとした。オートクレーブで20分間滅菌して使用した。
bacto−tryptone 16g
bacto−yeast extract 10g
NaCl 5g
その他の試薬は以下から購入した。
メーカー 品名
シグマ アンピシリンナトリウム
和光純薬 フェノール
シグマ BSA
DIFCO 2×YT培地
和光純薬 カナマイシン硫酸塩
ナカライテスク ポリエチレングリコール6000
ナカライテスク Tween20
片山化学 NaCl
和光純薬 IPTG
和光純薬 スキムミルク
和光純薬 アジ化ナトリウム
和光純薬 トリエチルアミン
和光純薬 過酸化水素
和光純薬 OPD錠
和光純薬 エタノール
κ1、κ2、κ3、κ4、κ5、およびκ6、並びにλ1、λ2、λ3a、λ3b、λ4、λ5、λ6、λ7、λ8、λ9、およびλ10の全てについて以上の操作を行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。続いてκ1、κ2などの各グループのクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合した。これら軽鎖の各グループは、それぞれ実際の生体内でどのような割合で発現しているのかが既に知られている。PCR法で増幅してベクターに組み込んだこれらの遺伝子クローンを、in vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合しVLライブラリーとした。VLライブラリーにおける各familyの構成比率を以下に示す。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
**発表時記載なし。
***プライマーVK6−2で作製したcDNAとプライマーVK6−3で作製したcDNAを等量混合。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
*2 発表時記載なし。
*3 プライマーVL2で作製したcDNA5%とプライマーVL2−2で作製したcDNA10%を混合。
*4 プライマーVL3a−2で作製したcDNA17%とプライマーVL3bで作製したcDNA15%を混合。
*5 プライマーVL4aで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4bで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4cで作製したcDNA0.5%を混合。
*6 プライマーVL5abdeで作製したcDNA0.5%とプライマーVL5cで作製したcDNA0.5%を混合。
次に、VLライブラリーから無作為に選んだ約1000個の軽鎖遺伝子の塩基配列を確認した。すなわち、蛍光プライマーhuCH1J(5’−ATTAATAAGAGCTATCCCGG−3’/配列番号:45)を用い、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって塩基配列を決定した。得られた塩基配列を比較して重複するクローンを除いた。更にデータベースと照合し、deletionが無いと確認されたクローンについて、予め発現することがわかっている重鎖遺伝子のクローンの一つVH3−4と組み合わせて、発現実験を行った。操作は以下のとおりである。VH3−4のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。
まずVH3−4をHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。一方、deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンについてもHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製し、VH3−4の重鎖遺伝子とライゲーションすることにより、組み合わせた。得られたligatedDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。生えてきたコロニーを試験管にいれた培地にうえ、IPTGで発現を誘導することにより、Fab−cp3型の抗体分子を培養上清中に発現させた。20時間程度の培養により、ヘルパーファージの感染無しでもFab−cp3型の抗体分子が培養上清に発現される。この培養上清を用いて以下のようなELISAを行った。
2−2−4 ELISA法による重鎖と軽鎖の正しい発現と会合の検定
1)抗体結合96wellマイクロタイタープレートの作製
抗κ抗体(MBL code No.161)を0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3で1.25μg/mLで希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。4℃で一晩静置することにより、ウェルに抗κ抗体を吸着させた。反応液を捨て、5% BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3を200μLずつマイクロタイタープレートに添加し、37℃で2時間静置することにより、非特異的な吸着を防ぐためのブロッキングを行った。
次に、非特異的活性吸収済の抗λ抗体(MBL code No.159)を0.01Mナトリウムリン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3で2.5μg/mLに希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加し氷室で一晩静置した。反応液を捨て、5% BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3を200μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で2時間静置し、非特異的な結合を防ぐためのブロッキングを行った。
2)1次反応
positive contorolとして)ヒトFab(10μg/mL)を、negative controlとして、PBS/0.1%NaN3をそれぞれ100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。IPTGでFab−cp3型の抗体分子の発現を誘導した培養上清の原液を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
3)2次反応
1次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaN3で希釈した抗Fd抗体(1μg/mL)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
4)3次反応
2次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaN3で希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒツジIgG抗体(4000倍希釈)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
5)発色反応および吸光度測定
3次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いで発色基質溶液(SIGMA 104 phosphatase substrate tablets 1粒あたり5mLの50mMジエタノールアミンPH9.8に溶解したもの)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。室温で反応させ、405nmの吸光度が0.5以上になったと思われる時点で、停止液を添加し、プレートリーダー(タイターテック マルチスキャンMCC)で吸光度測定した。
このELISAで陽性(吸光度0.5以上)となったクローンは、Fab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているとし、κ鎖遺伝子、λ鎖遺伝子それぞれ反応性の高いものから100個ずつ選択した。両者を混合してFab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているクローンのみを集めたライブラリーKL200とした。
3.軽鎖遺伝子ライブラリーと重鎖遺伝子ライブラリーの組み合わせライブラリー(Fab抗体遺伝子ライブラリー)の作製
3−1−1 PCRを用いたイムノグロブリン重鎖遺伝子の単離
2−1と同様の手順を用いて臍帯血、骨髄液、および末梢血のリンパ球、並びに扁桃腺からhuman μ primer(以下に示すプライマーの634)あるいはrandom hexamerを用いてcDNAを調製し、このcDNAを鋳型にして、以下に示すヒト抗体重鎖遺伝子の取得用5’プライマー(VH1〜VH7)と3’プライマー(human JHプライマー4種を等量混合したもの、以下に示すプライマーの697〜700)、または、human μプライマー(以下に示すプライマーの634)を用いて、PCRを行った。表中、下線をつけた部分はSfiIサイトを示す。hVH2aはgerm line VH2 familyに対応していないため、新たにVH2a−2を設計した。またhVH4aではVH4ファミリー全体に対応していないため、新たにhVH4a−2を設計した。VH5aもgerm line VH5 subfamilyに対応していなかったため新たにVH5a−2を設計した。またVH7に対応するprimerとしてhVH7を設計した。これらについても遺伝子増幅を行い、pscFvCA−E8VHdに組み込み、どのような遺伝子がとれたのかを塩基配列決定した。hVH5a−2についてはhVH1aと配列が酷似しているため、hVH1aで増幅させたものと同様の遺伝子産物が得られることが予想されるためこれについては使用しなかった。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。
各VH familyの増幅に使用したprimer
Human VH primer SfiI siteを下線で示す
Human JH primer BstPI,XhoI siteを下線で示す
cDNA 2μL
10×buffer #1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL)1μL
PCR条件:94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
3−1−2 重鎖遺伝子ライブラリーの作製
3−1−1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×K buffer(宝酒造) 5μL
滅菌済MilliQ 33μL
HindIII(宝酒造15U/μL) 1μL
XhoI(宝酒造12U/μL) 1μL
37℃で2時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、400bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpscFvCA−E8VHd(図1の3))をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpscFvCA−E8VHd 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
3−1−3 ファージミドの大腸菌への導入
得られたDNAを大腸菌DH12Sに形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解する。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーション法により形質転換を行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DCvolts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)2mLに上記操作の終了した形質転換大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、重鎖遺伝子の塩基配列を調べた。VH1〜VH7の全てについてこれらのことを行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。これらの各グループ(ファミリー)のクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合してVHライブラリーとした。VHライブラリーにおける各ファミリーの構成比率を以下に示す。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
**実際にはVH1とVH5は同一のプライマーで増幅されるため、分離して集計できない。
***VH4プライマーで作製したcDNAとVH4−2プライマーで作製したcDNAを混合してこの割合とした。
3−2 組み合わせ遺伝子ライブラリーの作製
VHライブラリー200μgを下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。
VHライブラリー200μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済MilliQ 205μL
HindIII(宝酒造40U/μL) 30μL
XhoI(宝酒造50U/μL) 25μL
deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンKL200、およびVLライブラリーの挿入されたベクターpFCAH9−E8dについても下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を含む断片を、ジーンクリーンIIキットで精製した。
KL200またはVLライブラリー
を挿入したpFCAH9−E8d 100μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済Milli−Q 230μL
HindIII(宝酒造40U/μL) 15μL
XhoI(宝酒造50U/μL) 15μL
次に、VH遺伝子ライブラリー断片と軽鎖遺伝子の挿入されたpFCAH9−E8dベクターを、次の条件下、16℃で一晩反応させてライゲーションした。
制限酵素処理した
VHライブラリー断片 10μg 50μL
制限酵素処理したKL200または
VLライブラリーの断片
を含むpFCAH9−E8d 40μg 50μL
10×ligation buffer
(T4 DNA ligaseに添付) 100μL
10mM ATP 100μL
滅菌済MilliQ 670μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)30μL
反応の終了したDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)30μLに溶解した。これをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)500μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)12mLに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地500mLで培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーの数から得られたクローンの数を推定した。それぞれ4.5×1010クローンが得られた。
扁桃mRNAよりrandam hexamerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせたライブラリーをAIMS1とした。(1.28×1010の独立したクローン)
サイ帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman m primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせた遺伝子ライブラリーをAIMS2とした.(3.20×1010の独立したクローン)
サイ帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman μ primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをVL libraryと組み合わせたライブラリーをAIMS3とした。(4.50×1010の独立したクローン)
更に(AIMS1+AIMS2):AIMS3=1:1で混合し、1×1011の独立したクローンからなるライブラリーとした(AIMS4と呼ぶ)。
4.scFv−CL抗体遺伝子ライブラリーの調製
4−1−1 scNcopFCAH9−E8VHdVLdの作製
pFCAH9−E8d 3μg(3μL)(図1の4)を参照)をBstPI(3U/μL)3μL、10×H buffer 5μL、DW39μLと混合し、37℃で2時間、制限酵素処理を行った。処理後、エタノール沈殿して得られた沈殿を10μLのTEバッファーに溶解した。これに、SacI(10U/μL)1μL、10×L buffer 5μL、DW34μLを混合して37℃で2時間、制限酵素処理した後、アガロースゲル電気泳動して、4.7kb断片を回収した。回収物をエタノール沈殿して10μLとした(pFCAH9−E8d BstPI−SacI断片)。
一方、プライマーlinF(100pmol/μL)5μLとプライマーlinR(100pmol/μL)5μLを混合し、94℃で5分加熱した後、80℃5分、70℃5分、室温放置30分によりアニールさせた。このうち、2μLと上記で得られたpFCAH9−E8d BstPI−SacI断片1μL、10×ligation buffer 1.5μL、DW9.5μL、T4DNAligase 1μLを混合し、16℃で16時間反応させた。反応後、エタノール沈殿して3μLに濃縮し、そのうち1.5μLを用いて、大腸菌DH12Sコンピテントセル20μLをエレクトロポレーションにより形質転換した。得られたクローンのプラスミドを抽出し、塩基配列を確認して、scNcopFCAH9−E8VHdVLdと名づけた。図9にscNcopFCAH9−E8VHdVLdの構造を模式的に示した。また、図10〜図12にscNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示した。
4−1−2 scNcopFCAH9−E8VHdVLdへのAIMS−4L鎖の組込み
scNcopFCAH9−E8VHdVLd20μg(20μL)を、10×NEB4 buffer 30μL、10×BSA 30μL、NcoI(10U/μL)10μL、AscI(10U/μL)10μL)と混合して37℃で2時間、制限酵素処理を行った。アガロースゲル電気泳動により、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して10μLとした(scNcopFCAH9−E8VHdVLd NcoI−AscI断片、5μg得られた)。一方、AIMS−4ライブラリープラスミド(AIMS−4ライブラリーを構成するプラスミド)20μg(20μL)を、10×NEB4 buffer 30μl、10×BSA 30μL、NcoI(10U/μL)10μL、AscI(10U/μL)10μL)と混合して37℃で2時間反応させた。アガロースゲル電気泳動して、680bp断片を回収し、エタノール沈殿して10μLとした(AIMS−4ライブラリープラスミドNcoI−AscI断片、1μg得られた)。
scNcopFCAH9−E8VHdVLd NcoI−AscI断片2.5μg(5μL)、AIMS−4ライブラリープラスミドNcoI−AscI断片1μg(10μL)、10×ligation buffer 10μL、DW72μL、T4 DNAligase 3μLを混合し、16℃で16時間反応させた。エタノール沈殿して3μLに濃縮し、そのうち1.5μLを用いて、大腸菌DH12Sコンピテントセル0.2mLをエレクトロポレーションにより形質転換した。エレクトロポレーション後のDH12SをSOC培地に植え、37℃で1時間培養した後、TYGA培地2Lで30℃一晩培養した。一部を寒天培地にまいてクローンの総数を見積もったところ、2.1×108であった。一晩培養した大腸菌からプラスミドを抽出したところ、2mg得られた。これをAIMS−4 VLライブラリープラスミドとした。
4−1−3 AIMS−4 VLライブラリープラスミドへのAIMS−4 H鎖の組込みと形質転換
4−1−2で得られたAIMS−4 VLライブラリープラスミド500μg(200μL)をHindIII(50U/μL)20μL、10×M buffer 40μL、DW 240μLと混合し37℃で2時間、制限酵素処理した後、BAP C75(0.4U/μL)を10μL添加し、37℃で2時間、50℃で15分反応させた。フェノール処理後、エタノール沈殿して、20μL TE bufferに溶解した。これに、XhoI(50U/μL)20μL、10×H buffer 40μL、DW 320μLを混合し、37℃で2時間制限酵素処理した。これをアガロースゲル電気泳動して、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して40μLとした(AIMS−4 VL ライブラリープラスミドXhoI−HindIII BAP断片、220μg得られた)。
一方、AIMS−4ライブラリープラスミド600μg(600μL)を、HindIII(50U/μL)20μL、10×M buffer 80μL、DW 100μLと混合し37℃で2時間切断した。フェノール処理後、エタノール沈殿して、50μL TE bufferに溶解した。これに、XhoI(50U/μL)20μL、10×H buffer 40μL、DW 290μLを混合し、37℃で2時間制限酵素処理した。その後、BAP C75(0.4U/μL)を10μL添加し、37℃で2時間、50℃で15分反応させた。アガロースゲル電気泳動して、0.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して40μLとした(AIMS−4ライブラリープラスミドXhoI BAP−HindIII BAP断片、41μg得られた)。
上記方法により調製したAIMS−4 VLライブラリープラスミドXhoI−HindIII BAP断片50μg(9.1μL)、AIMS−4ライブラリープラスミドXhoI BAP−HindIII BAP断片41μg(40μL)、10×ligation buffer 30μL、DW 195.9μL、及びT4 DNAligase 25μLを混合し、16℃で16時間反応させた。これをアガロースゲル電気泳動して、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して1/10TE bufferで36μLとした(35μg得られた)。これに、10×kination buffer 5μL、10mM ATP 5μL、T4 polynucleotide kinase(10U/μL)4μLを添加し、37℃で1時間反応させた。さらに、10×ligation buffer 1000μL、DW 8750μL、T4 DNAligase 200μLを混合し、16℃で16時間反応させ、セルフライゲーションを行った。1−ブタノールで濃縮後、エタノール沈殿して1/10TEで200μLとし、これを用いて大腸菌DH12Sコンピテントセル5mLをエレクトロポレーションにより形質転換した。エレクトロポレーション後のDH12Sを50mLのSOC培地に植え、37℃で30分培養した後、TYGA培地2Lで30℃一晩培養した。一部を寒天培地にまいてクローンの総数を見積もったところ、1.1×1011であった。このようにして得られたクローンの集合からなるライブラリーをAIMS−5とした。図13のa)に、AIMS−5抗体遺伝子ライブラリーを構成するクローンの基本的な構造を示す。
4−2 scFv−CL抗体遺伝子ライブラリー(AIMS−5)からscFv−CL抗体ファージライブラリーの作製
100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地300mLを入れた5リットルのフラスコ16本にAIMS−5懸濁液を2.5mLを加え、37℃で振とう培養し1時間おきに波長600nmにおける吸光度を測定しながら、吸光度が1.0になるまで増殖させた。培養液にヘルパーファージ液(M13KO7)をフラスコ当たり12mL加えてヘルパーファージを感染させ、37℃で2時間培養し、ヘルパーファージ感染済みDH12Sとした。
5リットルのフラスコ24本に2×YT培地600mLと100μg/mLのアンピシリン0.6mL、50μg/mLのカナマイシン0.8mL、ヘルパーファージ感染済みDH12S200mLを加えて37℃で20時間振とう培養した。
菌体は4℃で8000rpm、10分間遠心し、上清を集めた。上清に20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 4Lを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心、沈殿を1LのPBSで溶かし、20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 200mLを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心した。上清を捨ててさらに4℃で8000rpm、3分間遠心して沈殿を回収した。沈殿は0.05% NaN3を加えたPBSで溶解し、4℃で1000rpm、15分間遠心し、上清を回収した後、4℃で8000rpm、3分間さらに遠心して上清を回収した。
回収したファージ溶液の力価は以下のようにチェックした。すなわち、ファージ溶液をPBSで106、107、108希釈し、その10μLをDH12S 990μLに感染させ、37℃で1時間培養した。これをLBGAプレートに100μL播いて30℃で18時間培養した。コロニーの数をカウントすることにより希釈前の原液の力価を算出した。ファージ溶液原液を2%スキムミルク及び0.05% NaN3を含むPBSに2×1014/mLになるよう懸濁した。5.scFv−CL抗体ライブラリーから特定の抗原に特異的に結合するファージの選択
本実施例では、モデル抗原としてC.elegansの細胞内で発現していると考えられるcDNAである「CC046」の大腸菌での発現産物を用いた。具体的には、CC046のN末端の96アミノ酸に相当する部分(CC046抗原)を用いた。CC046抗原に特異的に結合するファージの選択(スクリーニング)は、以下に示すパニング法によって行った。
5−1 スクリーニング用試験管の作製
CC046抗原をPBSで20μg/mLに調製し、試験管3本(Nunc社製Maxisorp)に3mLずつ添加して4℃で18時間インキュベートして、試験管内表面へ抗原を吸着させた。吸着後、抗原溶液を捨て、2%スキムミルク含有PBS溶液3mLずつを加えて25℃で1時間反応させ、ファージ抗体が非特異的に試験管に結合することを防ぐためにブロッキングを行った。
5−2 スクリーニング操作
作製した抗原吸着済試験管に4で得たAIMS−5ライブラリーを2%スキムミルク、0.1%Tween20含有PBSになるよう溶解して1×1014CFU/9mLに調製し、この液を試験管3本に3mLずつ添加して25℃で2時間反応させた後、0.1%Tween20を加えたPBSで4回、PBSで4回、および滅菌した超純水(MilliQにて作製)で1回洗浄した。
続いて抗原結合試験管に結合したファージを以下のように回収した。すなわち、0.1Mトリエチルアミン(pH12.3)を試験管1本当たり3mL添加し、ローテーターを用いて室温で20分間反応させ乖離させた後、1M Tris−HCl緩衝液(pH6.8)1.1mLを加えて中和し、この液を回収した。
5−3 回収したファージの増幅
回収した液は(ファージの大腸菌への感染)(ヘルパーファージの感染)(ファージの回収)の処理を行い、含まれているファージを精製・増幅した。
1)ファージの大腸菌への感染
大腸菌(DH12S)を2×YT培地50mLで培養し、波長600nmの吸光度が0.5になるよう増殖させ、上記で乖離させたファージ液を加えて37℃で1時間振とう培養した。
2)ヘルパーファージの感染
1)の培養液62.3mLをとり、2×YT培地425mL、40% グルコース12.5mL、および100μg/mLアンピシリン0.5mLを加えて37℃で波長600nmにおける吸光度が0.5になるまで培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心して菌体を沈殿させ、回収して100mg/mLアンピシリン0.3mLを加えた2×YT培地300mLに懸濁した。これに3×1010cfu/mLのヘルパーファージM13K07を1/100量加え、37℃で1時間振とう培養した。
培養液を予め37℃に暖めた培地(2×YT培地に100μg/mLアンピシリンと70μg/mLのカナマイシンを加えた液)900mLに加えて37℃で一晩培養した。
3)ファージの回収
2)の培養液を4℃で7000rpm、10分間遠心し、その上清に2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて室温で20分間静置した後、4℃で8000rpm、15分間遠心して沈殿を回収し、培養液の1/10量の滅菌PBSを加えて溶解し、再度2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて4℃で10000rpm、20分間遠心して上清を捨て、さらにスピンダウンして4℃で10000rpm、2分間遠心した。これに0.05%のNaN3を加えたPBSを培養液の1/100量加えて沈殿を溶解し、ファージを回収した。
5−4 増幅したファージによる再スクリーニング
増幅したファージを用いて5−2と同様に抗原結合試験管を用いてスクリーニングを繰り返した。スクリーニングでの洗浄は、非特異に吸着したファージを乖離し、結合力の高いファージを選択する上で重要なステップであることから、2回目以降のスクリーニングにおける洗浄条件は以下のようにした。
2回目;PBS+0.1% Tween20で6回、PBSで6回、滅菌した超純水で1回
3回目;PBS+0.1% Tween20で13回、PBSで13回、滅菌した超純水で1回
5−5 スクリーニングによって得られた抗体の抗原結合活性(アフィニティー)の測定
本発明者らは、以上のスクリーニングにより得られたファージを大腸菌に感染させ、その後ヘルパーファージを重感染させることなく長時間培養することにより、大腸菌外にcp3融合型scFv−CL抗体が分泌されてくることを発見した。
そこで、ファージによってコードされるscFv−CL抗体の抗原結合活性を、ファージ表面に発現されている抗体ではなく、cp3融合型scFv−CL抗体を用いて行った。具体的な方法は以下のとおりである。
5−5−1 cp3融合型scFv−CL抗体の発現誘導
まず、以上のスクリーニングにより得られたファージを大腸菌DH12Sに感染させた。次に、ファージの感染した大腸菌を、YTGA培地(1%グルコース、100μg/mLのアンピシリン含有2×YT培地)を含む寒天培地にまき、生えてきたコロニーの中から数十個を選択し、1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地3mLにそれぞれのクローンを植え終夜培養した。0.1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地10mLに終夜培養した培養液を100μLを入れ、対数増殖期に達したら、1MのIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を10μL加えてさらに30℃で21時間培養した後、培養液1.5mLをエッペンドルフチューブにとり、4℃で10000r.p.m.5分間遠心してその培養上清をとり、0.1%となるようアジ化ナトリウムを添加して検体とした。
5−5−2 ELISA法による抗原結合活性(アフィニティー)の測定
まず、ELISA用のプレートを以下のように調製した。CC046抗原10μg/mLを96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社製Maxisorp)の各ウェルに100μL添加して4℃で18時間結合させたのち、5%BSA含有リン酸緩衝液(ブロッキング液)を各ウェルに200μL添加して37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液を捨てた後、PBSで1回洗浄してアフィニティーの測定に用いた。
このようにして得られたプレートの各ウェルに、5−5−1で得られた検体を100μLずつ加え、25℃1時間反応させた。反応後、PBSで4回洗浄し、500倍希釈のウサギ抗cp3抗体(MBL製)を100μL加えて25℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、1000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL製)を100μL加えて、25℃で1時間反応させた。再度PBSで4回洗浄し、オルトフェニレンジアミンと過酸化水素の溶液100μLを加えて暫時反応させた後、1.5N リン酸100μLを加えて反応を停止し、波長492nmにおける吸光度を測定した。その結果25クローン中21クローンに活性が確認された。
これら21クローンについてDNA塩基配列を決定したところ、7種類のクローンであることがわかった。DNA塩基配列の解析は、DNAシークエンサー(LI−COR社製)を用いた公知の方法(ジデオキシ法)により行った。
5−5−3 免疫蛍光染色法による各クローンの抗原結合活性の比較
5−5−2で得られた7種類のクローンについて抗原結合活性を免疫蛍光染色法により比較した。免疫染色の材料にはC.elegansの初期胚を用いた。
まず、周知の方法を用いてC.elegansを飼育し、受精卵を得た。受精卵が初期胚にまで成長した後に、スライドグラス上にとり、−20℃に冷却したエタノール中にスライドグラスごと10分間浸した。次に、−20℃に冷却したアセトンに10分間浸した。室温に放置し、アセトンが揮発したらPBSに5分間浸した。次いで、5%スキムミルク含有PBSに1時間浸してブロッキングした。
次に、5−5−2で陽性(活性が認められた)であったサンプル(scFv−CL抗体溶液)の培養上清を5% スキムミルク含有PBSで2倍に希釈し、25μLを上記で準備したC.elegansの結合したスライドグラス上の初期胚に添加し、室温で2時間反応させた。
反応後、抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう2度同じ操作を繰り返した。
次にウサギ抗cp3抗体(cp3タンパク質をウサギに免疫することによって作製)を5%スキムミルク含有PBSで200倍希釈したもの25μLをスライドグラス上の初期胚に添加し、室温で2時間反応させた。反応が終了したら抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう2度同じ操作を繰り返した。
続いて、Cy3標識抗ウサギIgG抗体を5%スキムミルク含有PBSで800倍希釈したもの25μLをスライドグラス上に滴下し、4℃で1晩反応させた。
反応が終了したら、抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう1度同じ操作を繰り返した。
続いて、50mLの洗浄液に1mg/mL DAPIを1μL添加し、この中にスライドグラスを室温で10分間浸した。
液を吸い取った後、封入剤をのせ、カバーグラスをかけて顕微鏡観察した。
5−5−4 ウエスタンブロットによる各クローンの抗原結合活性の比較
以下に示す周知の方法により5−5−2で得られた各クローンの抗原結合活性を比較した。
CC046精製抗原を1レーンあたり100ngまたは10ng分をSDS−PAGEで電気泳動した。SDS−PAGEゲルをメンブレンに転写した。
メンブレンをブロッキングした後、5−5−2で得られた各クローンの培養上清を4倍希釈(5%スキムミルク共存下)にしてメンブレンにのせ、反応させた。
室温で1時間反応後、0.05%Tween20−PBSで3回洗った。洗浄済みのメンブレンに抗cp3抗体(500倍希釈、5%スキムミルク共存下)を添加し、室温で1時間反応させた。反応後0.05%Tween20−PBSで3回洗った。
洗浄済みメンブレンにHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(×1000、MBL code No.458)を添加し、室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20−PBSで3回洗った。
化学発光試薬(Renaissance;Western Blot Chemiluminescence Reagent Plus,NEN Life Science Products,Inc.)にメンブレンを浸し、ラップに包んで、フィルムに露光した。フィルムを現像して結果を評価した。
以上の結果及び5−5−3の結果より、最も抗原結合活性の高いクローンを選択し(クローンCC046N2と呼ぶ)、以降の実験に用いた。
6.cp3融合型scFv−CL抗体からGFP融合型scFv−CL抗体への変換
6−1 GFP融合型scFv−CL抗体発現用ベクターの作製
図13のb)下段に示されるように、p6×His−GFPベクター(クロンテック製)の開始コドンとHis−tag配列の間に、AscIサイトを付加して発現用ベクターpAscHGFPを作製した。
このベクターのAscIサイトにscFv−CL遺伝子を挿入することにより、実際の抗体タンパク質発現用のベクターが完成する(図13のc))。このベクターより発現される抗体はscFv−CL型であり、GFPはHis−tagを介してCL領域に連結することとなる。
AscIサイトを付加する具体的な操作は以下のように行った。p6×His−GFP ベクター(0.1mg/mL)0.5μL,10×LA PCR bufferII 10μL,dNTPmix 16μL,25mM MgCl2 10μL,プライマーGFPAscF(100pmol/μL)1μL,プライマーGFPAscR(100pmol/μL)1μL,LA Taq polymerase(5U/μL)1μL,滅菌水60.5μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で5分保温した。94℃ 1分,55℃ 1分,72℃ 4分を30サイクル繰り返し、さらに72℃,7分インキュベートした。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、フェノール処理、エタノール沈殿して10μLに濃縮した。これに、10×NEB4 buffer 10μL,滅菌水75μL,AscI(10U/L)5μLを加え、37℃で3時間保温した。1/5量をアガロースゲル電気泳動して目的の断片を回収し、エタノール沈殿して濃縮し、30μLのTE bufferに溶解した。これをライゲーション反応に供さず、周知の方法によりセルフライゲーションを起こさせ、環状のプラスミドベクターとすることもできる。
上記と同様の方法により、RFP(Red Fluorescent Protein)融合型scFv−CL抗体を発現させるベクターpAscHRFPを作製することができる。また、これを用いて以下の操作を行えば、RFP融合型のscFv−CL抗体を発現させることができる。
6−2 クローンCC046N2よりscFv−CL抗体遺伝子の増幅
クローンCC046N2を用いてPCR法を行い、scFv−CL抗体遺伝子を増幅した。この際、AscIサイトを含む2つのプライマーを合成し、これらを用いることにより、scFv−CL抗体遺伝子部分にコードされるアミノ酸配列を変化させない条件においてVH遺伝子のN末端のSfiIサイトをAscIサイトに変換した。図13のb)上段に増幅されたscFv−CL抗体遺伝子を模式的に示した。
PCR法に用いたプライマーを以下に示す。なお、小文字部分がAscI部位である。
PCR法の具体的な方法を以下に示す。
クローンCC046N2 0.5μL,10×buffer#1 10μL,dNTPmix 10μL,25mM MgCl2 4μL,プライマーAsc3F(100pmol/μL)1μL,プライマーAscR(100pmol/μL)1μL,KOD polymerase(2.5U/μL)1μL,滅菌水72.5μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で1分保温した。94℃ 1分,55℃ 1分,72℃ 1分を25サイクル繰り返した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、フェノール処理、エタノール沈殿して10μLに濃縮した。
得られたPCR産物は、アガロースゲル電気泳動で確認後フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTE bufferに懸濁した。
6−3 発現ベクターへのscFv−CL抗体遺伝子の導入
6−2で得られたPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物10μL
37℃で3時間反応後、1/2量をアガロースゲル電気泳動して目的の断片を回収し、エタノール沈殿して濃縮し、30μLのTEに溶解した。
他方、同様に発現用ベクターpAscHGFP(図13のb)下段)を制限酵素処理し、ジーンクリーンIIキットで精製した。
次に上記処理をしたPCR産物と発現用ベクターを、16℃、4時間〜一晩、以下の条件下で反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpAscHGFP 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
以上の操作の結果得られたベクター(pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミド)をGFP融合型scFv−CL抗体作製に用いた。pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドのDNA配列及びアミノ酸配列を図14に示した。
7.大腸菌内でのGFP融合型scFv−CL抗体の産生
7−1 pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドの大腸菌への導入
pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはpscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドを1/10量をTE3μLに溶解し、これをコンピテントセルDH12S(GIBCOBRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)2mLに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、TYGA寒天培地上で培養した。形賀転換体24クローンについて大腸菌からプラスミドDNAを周知の方法を用いて調製し、制限酵素PvuIIによって切断し、アガロースゲル電気泳動に供した。その結果(正しい向きの場合は0.3,1.7,4.3kbの長さの断片が得られる)により、挿入されたscFv−CL遺伝子の向きが正しいクローンを選択した。
8.GFP融合型scFv−CL抗体の精製及び解析
8−1 GFP融合型scFv−CL抗体の発現誘導及び精製
まず、7−1によって得られたpscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドをもつ大腸菌を1リットルの100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地に懸濁し、30℃で培養した。大腸菌の濃度を波長600nmの吸光度により測定し、log phaseになったところで、1mMになるようにIPTGを添加し、30℃でさらに21時間培養した。次に、培養液を遠心分離して菌体を回収し、菌体に30mLの50mM Na−リン酸緩衝液/300mM NaCl pH8を加え、超音波処理により菌体を破砕した。破砕液を遠心分離し、その上清30mLを平衡化したNi−NTAアガロースカラム(ゲル容量2.8mL)にアプライした。50mM リン酸ナトリウム/300mM NaCl pH8、250mLでカラムを洗浄した後、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,120,150,200,250mM イミダゾール1mLで溶出した。各溶出フラクションに波長366nmの光を照射し、蛍光を発するフラクション(30−90mM)を選択した。選択したフラクションのタンパク濃度を測定した結果、約200μgのタンパク質が得られていた。この精製タンパク質溶液を用いて以下の解析を行った。
8−2 SDS−PAGEによる精製タンパク質の解析
8−1で得られた精製タンパク質溶液をSDS−PAGEで解析した。なお、比較例として、精製前の菌体破砕液(粗抽出液)を用いた。
SDS−PAGEの結果を図15に示した。図15において、レーン2が精製タンパク質溶液を流したレーンである。また、レーンM及びレーン1には、分子量マーカー及び比較例である精製前の菌体破砕液を泳動した。
図15に示されるように、粗抽出物では夾雑しているタンパク質のため判別できないが、精製タンパク質溶液では濃縮され、予測される位置(矢印で示される位置)にバンドが明らかに検出できた。
8−3 精製タンパク質のELISA法による抗原結合活性(アフィニティー)の測定
8−1で得られた精製タンパク質(GFP融合型scFv−CL抗体)の抗原(CC046)に対する結合活性をELISA法により測定した。具体的な方法及び条件を以下に示す。
まず、ELISA用のプレートを以下のように調製した。抗原20μg/mLを96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社製Maxisorp)の各ウェルに100μL添加して4℃で18時間結合させたのち、5%BSA(ブロッキング液)を各ウェルに200μL添加して37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液を捨てた後、PBSで1回洗浄してアフィニティーの測定に用いた。
このようにして得られたプレートの各ウェルに、8−1で得られた精製タンパク質溶液を倍数希釈したものを100μLずつ加え、37℃1時間反応させた。反応後、PBSで4回洗浄し、5000倍希釈のウサギ抗GFP抗体(MBL社製)100μL加えて37℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、10000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL製)を100μL加えて、37℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、発色基質溶液(OPD)を100μL加え、前に述べたようにプレートリーダーで492nmの吸光度を測定した。
その結果、5−5−3におけるcp3融合型scFv−CL抗体と同等の抗原活性が認められた。
8−4 精製タンパク質溶液を用いた免疫蛍光染色
次に、8−1で得た精製タンパク質溶液に、抗原CC046に特異的に結合し、かつ蛍光を発する抗体分子が存在することを証明するために、様々なステージにおけるC.elegansの胚細胞について免疫蛍光染色を行った。
まず、8−1で得た精製タンパク質溶液(scFv−CL−GFP)を5% スキムミルク含有PBSで1μg/mLに希釈し、25μLを前に述べた要領で準備したC.elegansの結合したスライドグラス上に添加し、4℃で1晩反応させた。
次に抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸し、洗浄液を取り替えてもう1度同じ操作を繰り返した。
50mLの洗浄液に1mg/mL DAPIを1μL添加し、この中にスライドグラスを室温で10分間浸した。
液を吸い取ったのち、封入剤をのせ、カバーグラスをかけて顕微鏡観察した。
このようにして調製したサンプルの染色像の観察には、フィルターセットNo.10(励起フィルターBP450−490、ダイクロイックミラーFT510、バリアフィルターBP515−565)(Zeiss社製)を用いた。尚、DAPIによるDNA染色を同時に行った。
初期胚を観察した結果を図16のaに示す。矢印A示した部分(中心体部分)にGFPによる蛍光が観察される。即ち、はっきりと抗原CC046を認識する分子の存在が確認される。よって、精製タンパク質溶液中に、CC046を特異的に認識し、かつ蛍光を発するGFP融合型scFv−CL抗体の存在が確認された。また、CC046は中心体に局在することがわかる。尚、矢印dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。
また、図16のbは、5−5で得られたクローンより取得したcp3融合型scFv−CL抗体を用いて同様の免疫蛍光染色を行った結果である。この場合には2次抗体として上述のようにウサギ抗cp3抗体を、3次抗体としてCyanin3標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(Jackson Immuno Research Laboratories)を用いた。矢印Bで示した部分に蛍光が観察される。尚、矢印Dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。
図16のaとの比較より、cp3融合型scFv−CL抗体よりもGFP融合型scFv−CL抗体を用いた方が感度及び解像度の点から優れていることがわかった。尚、cp3融合型scFv−CL抗体を用いた場合の染色像の観測には、フィルターセットNo.15(励起フィルターBP456/12、ダイクロイックミラーFT580、バリアフィルターLP590)(Zeiss社製)を用いた。また、GFP融合型の場合と同様にDAPIによるDNA染色を同時に行った。
本実施例の方法では、5.の「ScFv−CL抗体ライブラリーから特定の抗原に特異的に結合するファージの選択」を約2週間で行うことができた。また、6.の「cp3融合型scFv−CL抗体からGFP融合型scFv−CL抗体への変換」から7.の「大腸菌内でのGFP融合型scFv−CL抗体の産生」までを約1週間で行うことができた。したがって、最終形態のGFP融合型scFv−CL抗体を単離するのに1ヶ月を要しないこととなる。このように、本発明の方法によれば極めて短期間で蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体を取得することが可能である。なお、蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体作製に要する期間は、実験環境によってさらに短縮することができるものである。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想定できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
産業上の利用の可能性
本発明により、蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体の新規な作製方法が提供される。本発明の作製方法によれば、極めて短期間で所望の抗体を得ることができる。scFv抗体ライブラリーとして、生体内の多様性を包含するのに十分なクローン数を有するものを用いることにより、多種多様な抗体を認識可能な抗体が得られる。
また、本発明で得られる蛍光タンパク質を融合したscFv型抗体は、特定波長の光の照射によりそれ自体で蛍光を発するため、検出に2次抗体、3次抗体等を必要としない。したがって、本発明で得られる抗体を免疫学的測定方法に利用した場合には、操作工程の簡略化、及び測定時間の短縮化が図れる。また、一般的な酵素免疫測定法では検出(測定)に特別の試薬(基質)を必要とするが、本発明で得られる抗体では特定波長の光の照射のみで検出が可能となるため、生細胞内ないし生体内において直接検出することができる。
また、異なる抗原に対して、異なる蛍光タンパク質を融合した抗体を作製し、これらを同時に用いて免疫染色することにより、同時に多色染色することが可能である。
さらに、イントラボディー技術と組み合わせることにより、生細胞内ないし生体内において特定の機能に関与する抗原分子をリアルタイムに測定することが可能となる。
以上のように、本発明により得られる蛍光タンパクと融合したscFv型抗体は、免疫染色の分野において用途の広い検出試薬に利用できるといえる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施例において、可変領域ライブラリーの作製に用いた各種のベクターの構造を模式的に示す図である。
1)pAALFab:D1.3mutation用ベクター。
2)pFCAH3−E8T:E8発現用ベクター。pAALFabをもとに、制限酵素サイトを改変した。新たにPstI、XbaI、およびKpnIサイトを付加し、EcoRI、およびXhoIサイトの位置を変更した。
3)pFvCA−E8VHd:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8Tをもとに、制限酵素サイトを改変した。XbaI−EcoRI間を欠落させ、新たにKpnI、SfiI、NcoIおよびSpeIサイトを付加した。重鎖可変領域遺伝子をSfiI−XhoIサイトにクローニング可能。
4)pFCAH9−E8d:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8T、およびpFvCA−E8VHdをもとにDNA配列を改変した。マウスγCH1をヒトγCH1で置きかえた。新たに、SfiI、NcoI、およびAscIサイトを付加した。軽鎖可変領域をSfiI−AscIサイトにクローニング可能。
図2は、pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を示す図である。
図3は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図4は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図5は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(3)。
図6は、pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を示す図である。
図7は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図8は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図9は、scFv−CL抗体遺伝子ライブラリーの調製に用いたベクターscNcopFCAH9−E8VHdVLdの構造を模式的に示した図。
図10は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図11は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図12は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(3)。
図13は、本発明の実施例における操作手順を示した図。a)に示すのは、AIMS−5ライブラリーを構成するクローンにおけるcp3融合型scFv−CL抗体の遺伝子の模式図。b)に示すのは、PCRによってscFv−CL抗体のコードされた領域のDNAを増幅し、PCR産物をpAscHGFPベクターに組み込むことを表す模式図。b)の上段にPCR産物(増幅されたscFv−CL抗体遺伝子)、同下段にpAscHGFPベクターが表される。c)に示すのは、b)の操作により得られる、GFP融合型scFv−CL抗体発現用ベクターである。
図14は、scFv(CC046N2)−CL−GFPのDNA配列およびアミノ酸配列。メチオニンを含む3アミノ酸のあとに、VHドメイン−リンカー−Vλドメイン−Cλドメイン−His−tag−GFPという順に並んでいる構造となっている。Vドメインの番号およびCDRの位置については、Kabatの決め方に従った。Vλドメインの10番目のアミノ酸は欠失している。
図15は、大腸菌で発現させたGFP融合型scFv−CL抗体をSDS−PAGEにて解析した結果(ゲル)を示す図である。レーンMは分子量マーカーを、レーン1は粗抽出液を、レーン2は精製タンパク質をそれぞれ流した結果である。染色は、クーマシーブリリアントブルーで行った。矢印は、GFP融合型scFv−CL抗体の位置を示す。
図16は、C.elegansの初期胚を、CC046に特異的な2種類の形態のscFv−CL抗体で染色した図。a)はGFP融合型scFv−CL−GFPで直接染色した図(矢印Aで示した部分にGFPの蛍光が観察される。また、矢印dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される)。b)は、cp3融合型scFv−CL抗体を反応させた後、2次抗体(ウサギ抗cp3抗体)と3次抗体(Cyanin3標識ヤギ抗ウサギIgG抗体)を反応させて検出した図(矢印Bで示した部分にCyanin3の蛍光が観察される。また、矢印Dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。)。
本発明は、蛍光を発することができる抗体の作製方法に関する。詳しくは、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法に関する。
背景技術
抗体のライブラリーの作製方法としてファージディスプレイ法が利用されている。ファージディスプレイ法は、Smithにより1985年(Smith GP Science 1985 228:4075 1315−7)に考案されたもので、M13ファージのような一本鎖環状DNAを持つ線状のバクテリオファージが用いられる。ファージ粒子はDNAの周囲を取り囲んでファージ粒子の大部分を構成するcp8というタンパク質と、ファージが大腸菌に感染する時に機能する5個のcp3と呼ばれるタンパク質などからなっている。このcp3もしくはcp8と融合した形でポリペプチドをコードするように遺伝子を構築し、ファージ粒子表面にそのタンパクを発現させるシステムがファージディスプレイシステムである。他の物質との結合活性を持つタンパク質を表面に保持したファージ粒子は、そのリガンドとの結合活性を利用して濃縮することができる。こうして目的とする結合活性を有するファージ粒子を濃縮する方法は、パニング法と呼ばれている。濃縮されたファージ粒子には、必要な結合活性を持つタンパク質をコードするDNAがパッケージングされている。このように繊維状ファージの利用によって、結合活性に基づくスクリーニングと、DNAのクローニングとをきわめて効率的に行うことができるシステムが実現した(McCafferty J,Griffiths AD,Winter G,Chiswell DJ.Nature.1990 348:630 1552−4.)。
ファージディスプレイ系が抗体に応用され、VHドメインのみ、scFv、Fv、Fab型抗体がcp3又はcp8と融合された形で発現された。抗原と結合するファージ抗体は同時に抗体をコードする遺伝子を含む。即ち、ファージディスプレイシステムでは、特定の抗原に結合可能な抗体分子と、その抗体分子をコードする遺伝子も同時に得られる点に大きな利点がある。しかし、ファージディスプレイ系を用いて作製された初期の抗体ライブラリーから単離された抗体は、抗原結合力の低いものが多かった。結合力を高める試みの一つとして、人為的に遺伝子に変異を与える方法が提案された。Winterらは1994年、単離した全てのVH、VL遺伝子と、JH、JL遺伝子の間にランダムな配列を挿入する半人工的配列を持つ抗体ライブラリーを作製することにより、親和性に優れた抗体の取得を可能とする抗体ライブラリーを得た(Nissim A,Winter G et al.EMBO J.13:3 692−8,1994)。De Kruifらも1995年基本的に同じ原理に基づいて抗体ライブラリーを作製している(de Kruif J,Boel E,Logtenberg T J.Mol.Biol.248:1 97−105,1995)。Vaughanらは、1996年ライブラリーの大きさを拡大することで充分な大きさの抗体レパートリーを確保しようとしている(Vaughan TJ et al.Nat.Biotechnol.14:3 309−14,1996)。また、本発明者らは、生体内における抗体産生過程をできるだけ再現することにより、より多様なレパートリーを有し、かつ機能的なコンフォーメーションを保持した抗体分子を高い割合で含む抗体ライブラリーの提供方法を提案した(特願平12−050543)。
上記のように、ファージディスプレイシステムによれば、抗体分子だけでなく、その抗体分子をコードする遺伝子も同時に得られる。この遺伝子の両端はユニークな制限酵素部位に設計できるため、ファージDNAを単離し、制限酵素処理を行い、続いて、適当な発現ベクターに組み込むといった簡単な操作により、当該遺伝子の発現形態をファージディスプレイ型から別の形態へと変換することができる(Ito,W.,and Kurosawa,Y.:J.Biol.Chem.268:20668−20675,1993)。
一方、蛍光を発することができるタンパク質GFP(green fluorescent protein)が知られ、GFPによる様々なタンパク質の標識化が試みられている。GFPは、特定波長の光の照射により蛍光を発することができるタンパク質分子であり、GFPにより標識化されたタンパク質分子の検出には特別の試薬等を必要としない。したがって、迅速かつ容易に検出ができることはもちろんのこと、生細胞内等においても直接検出することができるといった利点があり、今後の応用が期待されている。なお、GFPと同様に蛍光を発するタンパク質として、RFP(red fluorescent protein)、BFP(blue fluorescent protein)、YFP(yellow fluorescent protein)CFP(cyan fluorecent protein)や、これらの変異体が開発されている(Crameri,A.et al.:Nature Biotechnol.,14:315−319,1996;Yang,T.et al.:J.Biol.Chem.,273:8212−8216,1998;Lybarger,L.et al.:Cytometry,31:147−152,1998)。
抗体分子についてもGFP等による標識化が検討されているが、以下の課題が存在することが指摘されている。
抗体分子の中のS−S結合には、ドメイン内の分子内S−S結合と、H鎖とL鎖の間、あるいはH鎖とH鎖の間の分子間S−S結合の2種類が存在する。バクテリアの細胞質内で発現させた抗体は、抗体の産生に組替え遺伝子技術を応用した当初は、抗原結合活性をあまり示さなかった。というのは、細胞質内の条件では、ポリペプチドの正しいfoldingが起きないうえ、S−S結合が正しく形成されないからである(Boss MA,Kenten JH,Wood CR,Emtage JS.Nucleic Acids Res.12:3791−806,1984.)。これに対して、翻訳されたポリペプチドが膜を通過しペリプラズムへ分泌されるように、pelB配列やompA配列をポリペプチドのN末端側に導入するという試みが行われたが、Fabフラグメント,scFvフラグメントのいずれも抗原との結合が正しく行われるものは得られなかった(Skerra,A.,and Pluckthun,A.:Science 240:1038−1041,1988;Better,M.,Chang,C.P.,Robinson,R.R.,and Horwitz,A.R.:Science 240:1041−1043,1988)。GFPと融合することによって蛍光を発する抗体を創り出すには、抗体が抗原結合活性を得るために必要な条件とGFPが蛍光を発するために必要な条件という相反する両方の条件を満たさなければならない。GFPは、バクテリア内で翻訳された直後の状態では蛍光を発することができない。別の因子は必要としないが、分子内で多段階の化学反応が起きることにより発光中心が形成されることで蛍光を発することができる状態となる(Reid,B.,and Flynn,G.C.:Biochemistry 36:6786−6791,1997)。
一方、最近になって、イントラボディー技術の発展により、抗原結合能を有するscFv抗体を動物細胞の細胞質内でうまく発現させることができるようになってきた。
発明の開示
このような状況において、本発明者らは、scFv抗体に注目し、scFv抗体を蛍光タンパク質分子により標識化することを試みた。その結果、ファージディスプレイシステムを組み合わせて用いた系により、蛍光タンパク質により標識化されたscFv抗体を得ることに成功し、本発明を完成するに至った。本発明の構成は以下の通りである。
〔1〕以下の工程を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法。
1)scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製する工程、
2)前記scFv抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることにより、該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンを選択する工程、
3)工程2)で選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子を取得する工程、
4)工程3)で取得した遺伝子を組込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能な発現ベクターに、該遺伝子を組込む工程、及び
5)工程4)で得られた組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、前記融合タンパク質を発現させる工程。
〔2〕 前記scFv抗体ライブラリーは、重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成するように選択された軽鎖可変領域を少なくとも一部分含んで成る、ことを特徴とする〔1〕に記載のscFv抗体の作製方法。
〔3〕 前記scFv抗体ライブラリーを構成する各ファージクローン表面のscFv抗体は、VH領域、VL領域、リンカー及びCL領域を有する、ことを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載のscFv抗体の作製方法。
〔4〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP,及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のscFv抗体の作製方法。
〔5〕 〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の方法により作製される、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
〔6〕 VH領域、VL領域、及びリンカーにより構成されるFv領域、CL領域、並びに該FV領域に該CL領域を介して連結される蛍光タンパク質を有してなる、ことを特徴とする蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
〔7〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔6〕に記載のscFv抗体。
〔8〕 〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載のscFv抗体を用いた免疫学的測定方法。
〔9〕 〔1〕に記載の工程1)〜4)により取得される、scFv抗体遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する組換えベクター。
〔10〕 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする〔9〕に記載の組換えベクター。
〔11〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔9〕又は〔10〕のいずれかに記載の組換えベクター。
〔12〕 以下の構造を有する組み換えベクター。
〔13〕 5’側より順に、開始コドン、scFv抗体遺伝子を導入する部位、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する発現ベクター。
〔14〕 前記scFv抗体遺伝子は、VH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする〔13〕に記載の発現ベクター。
〔15〕 前記scFv抗体遺伝子を導入する部位と前記蛍光タンパク質をコードする塩基配列との間にHis−tag、myc−tag、又はHA−tagをコードする塩基配列を有する、ことを特徴とする〔13〕又は〔14〕に記載の発現ベクター。
〔16〕 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする〔13〕乃至〔15〕のいずれかに記載の発現ベクター。
〔17〕 scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。
〔18〕 前記scFv抗体はVH領域、VL領域、リンカー、及びCL領域から構成される、ことを特徴とする〔17〕に記載のキット。
〔19〕 scFv抗体遺伝子を有するファージクローン又はファージミドクローンから構成されるscFv抗体遺伝子ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。
〔20〕 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、VL遺伝子、リンカー配列、及びCL遺伝子から構成される、ことを特徴とする〔19〕に記載のキット。
〔21〕 前記ベクターは〔13〕乃至〔16〕のいずれかに記載される発現ベクターである、ことを特徴とする〔17〕乃至〔20〕のいずれかに記載のキット。
発明を実施するための最良の形態
本発明である、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法は、以下の工程を含むものである。
1)scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製する工程、
2)前記scFv抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることにより、該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンを選択する工程、
3)工程2)で選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子を取得する工程、
4)工程3)で取得した遺伝子を組込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能な発現ベクターに、該遺伝子を組込む工程、及び
5)工程4)で得られた組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、前記融合タンパク質を発現させる工程。
本発明において、「scFv抗体」とは、Fv領域、即ち、重鎖可変領域(VH領域)及び軽鎖可変領域(VL領域)を含み、これらがリンカーにより架橋されて構成される抗体である。本明細書においては、VH領域、VL領域、及びリンカーに加えて、軽鎖定常領域(CL領域)を含むものもscFv抗体に含まれるものとする。CL領域を付加することは、本発明の蛍光タンパク質を融合したscFv抗体のコンフォーメーションの安定化の目的で行われる。
また、「scFv抗体遺伝子」とは、VH領域をコードする遺伝子(VH遺伝子)、VL領域をコードする遺伝子(VL遺伝子)、及びリンカー配列から構成される。本発明においては、これらに加えてCL領域をコードする遺伝子(CL遺伝子)を含むものもscFv抗体遺伝子に含まれるものとする。
VH領域とVL領域とを架橋するリンカーには、汎用的なものを用いることができ、例えば、グリシン−セリンからなるペプチドリンカーが用いられる。
本発明において、「ライブラリー」とは、多様な同種の構成要素からなる集合体を意味する。よって、scFv抗体ライブラリーとは、多様なscFv抗体を含有する集合体である。本発明においては、各scFv抗体はファージ表面に発現されている。換言すれば、表面にscFv抗体を発現しているファージクローンの集合によりscFv抗体ライブラリーが形成される。
scFv抗体ライブラリーは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域が機能的なコンフォーメーションを再構成するように(もしくは、再構成しているものが大多数を占めるように)作製できれば有効なものとなる。本発明者らは、特願平12−050543において、重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを形成する軽鎖可変領域を選択してライブラリー作製に用いることを提案している。特願平12−050543に提案された方法はscFv抗体ライブラリーにも適用することが可能である。また、scFv抗体ライブラリーは、生体内の多様性を包含するのに十分なクローン数を有することが好ましい。これにより、後述の工程2)において、多種多様な抗原に対して、当該抗原と結合可能なscFv抗体を表面に発現するクローンを選択することが可能となる。また、クローン数は、1×1011以上であることが好ましい。このようなクローン数を有するscFv抗体ライブラリーの調製方法については、後述の実施例において説明する。
本発明におけるscFv抗体ライブラリーは、scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンの集合により構成されるが、かかるscFv抗体ライブラリーはscFv抗体遺伝子を保有するファージミドクローンの集合(以下、「scFv抗体ファージミドライブラリー」という)より調製することができる。なお、本発明において、scFv抗体遺伝子を保有するクローンの集合から構成されるライブラリーをscFv抗体遺伝子ライブラリーと呼ぶ。したがって、scFv抗体ファージミドライブラリーはscFv抗体遺伝子ライブラリーでもある。また、scFv抗体遺伝子を保有するファージミドにより形質転換された大腸菌の集合もscFv抗体遺伝子ライブラリーを構成する。
scFv抗体ファージミドライブラリーを作製するためのファージミドベクターとしては、市販のものを利用することができる(例えば、ファルマシア製 pTZ19R)。ファージミドには、cp3やcp8等のファージの構成タンパク質をコードする遺伝子に、発現させたい外来タンパク質をコードする遺伝子、即ち、scFv抗体遺伝子を連結する。
scFv抗体遺伝子は、上述のようにVH遺伝子、VL遺伝子、及びリンカー配列、又はこれらにCL遺伝子を加えたものから構成されるが、VH遺伝子、VL遺伝子、及びCL遺伝子は、任意の抗体産生細胞より得ることができる。抗体産生細胞としては、例えば、末梢血リンパ球や脾臓細胞等を挙げることができる。それぞれの遺伝子の単離には、公知のプライマーを用いたRT−PCR法を利用することができる。得られた各領域の遺伝子とリンカー配列とを連結することによりscFv抗体遺伝子が構成される。
scFv抗体ファージミドライブラリーからのscFv抗体ライブラリーの調製方法は次のように行うことができる。まず、scFv抗体ファージミドライブラリーを構成する各クローンを宿主にトランスフェクションさせる。次に、この宿主にヘルパーファージを重感染させる。例えば、ファージミドベクターpTZ19Rは、ヘルパーファージM13K07の重感染によってファージ粒子として回収することができる。このとき利用されるファージミドのcp3タンパク質が外来タンパク質すなわちscFv抗体と融合されていれば、完成するファージの表面にはscFv抗体が提示されることとなる。
scFv抗体ライブラリーの作製方法は上述のものに限られるわけではなく、例えば、後述の実施例のように、まず、VH遺伝子、CH遺伝子、VL遺伝子、及びCL遺伝子とから構成されるFab型抗体遺伝子を保有するクローンにより構成されるライブラリー(以下「Fab抗体遺伝子ライブラリー」という)を作成し、各クローンにおけるFab抗体遺伝子をscFv抗体遺伝子に変換することによりscFv抗体を保有するクローンの集合(scFv抗体遺伝子ライブラリー)を得て、これから上述の方法によりscFv抗体ライブラリーを作製することができる。
本発明の工程2)では、scFv抗体ライブラリーを特定の抗原でスクリーニングし、当該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンが選択される。
抗原は、目的に応じて種々のものが用いられる。また、抗原を用いたスクリーニングは以下に示すパニング法により行うことができる。まず、目的とする抗原にscFv抗体ライブラリーを接触させ、この抗原に結合するクローンを回収する。回収したクローンを増幅し、再び目的の抗原と接触させて、結合するクローンを回収する工程を繰り返す。ファージの増幅は、ファージを大腸菌に感染させ、回収することによって行われる。この工程を繰り返すことによって、目的とする反応性を持つscFv抗体をその表面に発現しているファージクローンが濃縮される。抗原との結合性に基づくスクリーニングは、一般にクローンの回収率が上昇するまで行われる。ここで回収率とは、抗原に対して添加したファージクローンの数に対する、抗原への結合性を有するものとして回収されたファージクローンの数の割合である。回収率がその前のスクリーニングに比較して明らかに上昇するとき、目的とする反応性を持つscFv抗体をその表面に発現しているファージクローンが濃縮されつつあることを意味する。
工程3)においては、工程2)により選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子(scFv抗体遺伝子)が取得される。即ち、ファージクローンより、VH領域、VL領域、及びリンカーをコードする遺伝子が切り出される。scFv抗体としてCL領域を含有するものを用いる場合には、VH領域、VL領域、及びリンカーに加えて、CL領域をコードする遺伝子が切り出される。このとき、His,MycなどのTagを含有するものを用いてもよい。
具体的なscFv抗体遺伝子の切り出し方法としては、ファージDNAのscFv抗体遺伝子導入部位、即ち、scFv抗体遺伝子の両端の制限酵素サイトを特異的に切断する制限酵素を用いる。このような切り出しを行うため、scFv抗体ライブラリーを構成する各ファージクローンにおけるscFv遺伝子導入部位を当該制限酵素に対応したユニークな制限酵素サイトにより形成しておく。
工程3)の後に、工程3)で取得したscFv抗体遺伝子の一端又は両端の配列を、該遺伝子のコードするアミノ酸配列が変化しない条件下で異なる塩基配列に変換する工程(工程3−1))を行うことができる。この工程により、scFv抗体遺伝子のコードするアミノ酸配列を変化させることなく、その一端又は両端に所望の制限酵素サイトを形成することができる。これにより、工程3)で切り出されたscFv抗体遺伝子の一端又は両端の塩基配列を、次の工程4)において用いられる発現ベクターの導入部位を形成する制限酵素サイトに対応させることができる。このような工程を行うことにより、発現ベクターの設計の自由度が高くなる。もちろん、予めscFv抗体遺伝子の両端の制限酵素サイトと発現ベクターの導入部位とが対応するように、scFv抗体遺伝子及び発現ベクターを設計することができ、この場合には工程3−1)は不要である。工程3−1)は、適当な合成プライマーを用いたPCRにより行うことができる。この場合、工程3)と同時に工程3−1)を行うことができる。即ち、scFv抗体遺伝子を切り出す際に、scFv抗体遺伝子の一端又は両端の配列を変換する2つのプライマーを用いてPCRを行い、制限酵素サイトの変換されたscFv抗体遺伝子を切り出し、かつ増幅する。
また、scFv抗体遺伝子の末端に適当なリンカーを付加することにより、所望の制限酵素サイトを形成してもよい。
工程4)では、工程3)、又は工程3)及び工程3−1)で取得したscFv抗体遺伝子を発現ベクターに組み込むことが行われる。
発現ベクターはscFv抗体遺伝子を組み込むことによりscFv抗体遺伝子発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なものを用いる。このような発現ベクターとしては、5’側より順に、開始コドン、scFv抗体遺伝子を導入する部位、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有するものが用いられる。また、scFV抗体遺伝子を導入する部位と蛍光タンパク質をコードする塩基配列の間にHis−tag、myc−tag、又はHA−tagなどをコードする塩基配列(以下、「タグ配列」という)を有する発現ベクターを用いることができる。かかるベクターを用いることにより、scFv領域と蛍光タンパク質との間に、タグ配列によりコードされる分子が介在される。これにより、タグ分子の特定物質との親和性を利用してscFv抗体を精製することが可能となる。また、タグ配列を入れる位置はこれに限られるものではなく、scFv抗体遺伝子導入部位の5’上流域、又は蛍光タンパク質をコードする配列の下流域に入れておくこともできる。但し、タグ配列にコードされる分子とscFv抗体とが融合したものとして発現される位置に入れる必要がある。
上記特性を備える発現ベクターは、市販の発現ベクターを周知の遺伝子操作技術を用いて改良することにより作製することができる。なお、形質転換させる宿主に応じて、細菌発現用ベクター、動物細胞発現用ベクターを用いる。大腸菌を宿主とした場合の本発明における発現ベクターとして、例えば、p6×His−GFP(クロンテック製)ベクターの開始コドンとHis−Tag配列の間にAscIサイトを付加したものを用いることができる。
この発現ベクターにおいては、AscIサイトにscFv抗体遺伝子が導入される。このベクターを用いた場合に、後述の工程5)で得られる発現産物では、標識ペプチドであるヒスチジンタグが融合したscFv抗体が発現される。ヒスチジンタグは金属イオンとの結合活性を持つタグであって、例えばニッケルカラムに捕捉することができるため、scFv抗体の精製に利用できる。
同様の目的で、ヒスチジンタグの代わりに、myc−tag、あるいはHA−tag等を用いることもできる。その場合には、ヒスチジンタグの場合と同様に、これらのタグをコードする塩基配列を組込んだ発現ベクターを用いる。また、scFv抗体遺伝子に予めHis−tag等をコードする塩基配列を融合しておき、これを発現ベクターに導入することもできる。この場合には、発現ベクターとしてHis−tag等をコードする塩基配列を有するものを使用する必要はない。
蛍光タンパク質の種類は特に限定されず、公知のものを任意に選択して用いることができる。例えば、GFP、RFP、BFP、YFP、CFPを用いることができ、また、これらの変異体を用いることもできる。変異体としては、例えば、EGFP(enhanced green fluorescent protein)、EBFP(enhanced blue fluorescent protein)、EYFP(enhanced yellow fluorescent protein)が知られている。これらのタンパク質は特定の波長の光を照射することにより照射光と異なる波長の光を発光することができ、目的、条件等に応じて任意に選択して用いることができる。また、これらの蛍光タンパク質は単独で用いられることはもちろんのこと、複数種を任意に選択し、組み合わせて用いることもできる。
上記工程1)〜4)により取得される、scFv抗体遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する組換えベクターは本発明に含まれる。また、工程3)の後に上記工程3−1)をさらに行うことにより取得される組換えベクターも本発明に含まれる。この場合においても、上述のようにscFv抗体遺伝子としてCL遺伝子を含む場合も含まれるものとする。
具体的な組換えベクターとして、次の構成のものを挙げることができる。
本発明における工程5)では、工程4)で得られたscFv抗体遺伝子を有する組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体が発現される。
上記の工程により作製される蛍光タンパク質を融合したscFv抗体は、免疫染色等の免疫学的測定方法に利用できる。本発明のscFv抗体では、蛍光タンパク質が融合しているため、それ自体で蛍光を発することができる。すなわち、従来の抗体を用いたELISA法等においては、標識化された2次抗体を必要とするが、本発明のscFv抗体においてはそれ自体標識化されているため、2次抗体等を必要とせず、測定工程の簡略化が図れる。また、蛍光を発するために特別の基質を必要としないため、例えば、細胞内で発現させ、これを取り出すことなく直接測定することができる。したがって、特定の抗原の細胞内ないし生体内における発現、分布を直接測定することができる。
scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーと、scFv抗体遺伝子を組込むことにより当該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクターとを含ませることにより、scFv抗体作製用キットを構成することができる。scFv抗体ライブラリー、蛍光タンパク質、発現ベクターとしては、それぞれ上述のものを任意に選択して用いることができる。また、scFv抗体としては、VH領域、VL領域、リンカー、及びCL領域から構成されるものも含まれる。
また、scFv抗体遺伝子を有するファージクローン又はファージミドクローンから構成されるscFv抗体遺伝子ライブラリーと、scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクターとを含ませることにより、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キットを構成することができる。この場合において、scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、VL遺伝子、リンカー配列、及びCL遺伝子から構成されるものも含まれる。scFv抗体遺伝子ライブラリーは、公知のファージ又はファージミドを用い、公知の遺伝子操作技術によりscFv抗体遺伝子を導入することにより作製される。また、蛍光タンパク質、発現ベクターとしては、それぞれ上述のものを任意に選択して用いることができる。
[実施例]
本実施例では、scFv抗体ライブラリーを調製するために、まず、VH領域、CH領域、VL領域、及びCL領域とから構成されるFab型抗体遺伝子を含有するクローンの集合からなるFab抗体遺伝子ライブラリーを作製した。そして、Fab抗体遺伝子ライブラリーをscFv型抗体遺伝子を含有するクローンの集合からなるscFv抗体遺伝子ライブラリーに変換し、これよりscFv抗体ライブラリーを調製した。なお、本実施例では、scFv型抗体として、VH領域、リンカー、及びVL領域(scFv)にCL領域が付加した抗体(以下、「scFv−CL抗体」という)を用いた。CL領域を付加した理由は、細胞質内で発現させた場合に安定性の促進が期待されるからである。なお、scFv抗体ライブラリーの調製方法はこれに限定されるものではない。
1.Fab抗体遺伝子ライブラリー作製用ファージミドベクターの作製
1−1 Fab抗体遺伝子ライブラリーを作製するためのベクターの作製
図1に概念的に示すように、pTZ19Rファージミドベクター(ファルマシア)にM13ファージのpelB(シグナル配列)、His6タグ配列、M13ファージのcp3タンパク質(Δcp3(198aa−406aa)N端欠失キャプシドタンパク質3)配列、proteinAタンパク質配列を適当な制限酵素部位で組み込みベクターpFCAH9−E8dを作製した(Iba Y.et al.,Gene 194:35−46,1997.参照)。軽鎖λ5,λ6遺伝子に存在するBstPIでその遺伝子が切断されることを避けるためにpFCAH9−E8dはXhoI部位が設けられている。pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を図2に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図3〜5に示した。
このベクターの所定の位置に重鎖と軽鎖の遺伝子を挿入することにより、実際の抗体タンパク質発現ベクターが完成することとなる。完成したベクターによって発現される抗体の形状はFab型であり、重鎖軽鎖はN末の可変領域に続いて定常領域CH1,CLをそれぞれ有している。定常領域同士の−SS−結合によって、重鎖と軽鎖は結合されることになる。軽鎖定常領域CL遺伝子は前述のcp3遺伝子と結合されており、結果として発現タンパク質はFab−cp3の形状となる。
具体的には、以下のような操作を行った。
用いたプライマー:
pFCAH3−E8T H鎖部分の作製
1)pAALFabを鋳型にして527−599を用いたPCR,547−590を用いたPCRを行いDNA断片を作製した。
2)544−545,546−547,548−549にてPCRを行いDNA断片を作製した
3)1)2)を混合し527,590によるPCRを行い、これをpAALFabのHindIII−SmaI siteにクローニングした
pFCAH3−E8T L鎖部分
4)542−562,561−613を用いたPCRを行いDNA断片を作製した
5)538−539,542−543にてPCRを行いDNA断片を作製した
6)4)5)を混合し538,562によるPCRを行い、これをpAALFabのSacI−NheI siteにクローニングした
pFCAH9−E8d
6)VHstuffer部分の作製
pFCAH3−E8TをXbaI,EcoRIにて消化、klenow fragmentを作用させて平滑末端に変えた後self ligationさせてVH部分のstufferを作製した。
7)VHstuffer部分の作製
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−600にてPCR。6)のHindIII−XhoI siteにクローニングした。
8)これをKpnIにて消化、self ligationさせてVL部分のstufferを作製
9)SfiI,NcoI,SpeI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−663にてPCR。1)のHindIII−SacI siteにクローニングした。
10)AscI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−LCP3ASCにてPCRし、それをSacI完全消化、SalI部分消化した2)にクローニングした。
11)gammaCH1部分をヒト遺伝子に変換
ヒトgammaCH1部分にはBstPI siteが存在するためこれをなくす設計でクローニングを行った。扁桃cDNAを鋳型にしてhCH1Bst−hCH1midS,hCH1midAS−hCH1H6にてPCRしたのち、これを混合してhCH1Bst−hCH16SmaにてPCRし、そのDNA断片を3)のBstPI−Sma siteにクローニングした
12)Xho siteの導入
11)を鋳型に702−663にてPCRを行い、これを11)のBstPI−SacI siteにクローニングした。
1−2 重鎖可変領域(VH)を一時的にクローニングするためのベクターの作製
公知の手法(Iba Y.et al.,Gene 194:35−46,1997.参照)に従って、まずpAALFabベクター(図1の1))を作製した。pAALFabベクターのXbaIからEcoRIの間を欠落させ、新たに制限酵素切断部位Kpn I,Sfi I,Nco I,Spe Iを付加して、pFCAH3−E8Tを経て、VH(重鎖可変領域)をクローニング可能としたベクターpscFvCA−E8VHd(図1の3))を作製し、重鎖可変領域を一時的にクローニングするためのベクターとした。pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を図6に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図7〜8に示した。
具体的には
primer610とprimer611をアニールさせ、それをpFCAH3−E8TのBstPI−SacI siteにクローニングしてsingle chainの作製を行なった。さらに、primer527とprimer619にてPCRを行い、これをさらにHindIII−PstI siteにクローニングし、SfiI,NcoI siteの導入を行った。
2.イムノグロブリン軽鎖ライブラリーの作製
2−1 PCRを用いたイムノグロブリン軽鎖遺伝子の単離
骨髄細胞(検体No.59)4×107cells、および臍帯血と末梢血のリンパ球から、市販のキット(Pharmacia Biotech社製QuickPrep Micro mRNA Purification Kit)を用いて、2.6μgのmRNAを得た。このmRNAからcDNAを作製した。cDNAは、GibcoBRL社製SuperScript Preamplification Systemによって作製した。プライマーには、オリゴdTを用いた。得られたcDNAを鋳型にして、軽鎖遺伝子の取得用5‘プライマー(κ1〜κ6、λ1〜λ6)と3’プライマー(hCKASCプライマーまたはhCLASCプライマー)を用いて、PCRを行った。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。用いたプライマーの塩基配列とPCRの条件は以下のとおりである。軽鎖遺伝子取得用プライマーの塩基配列中、下線部はSfiIサイト、AscIサイトを示す。
5’−プライマーκ1〜κ6
5’−プライマーλ1〜λ6
PCRの条件
cDNA 2μL
10×buffer #1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL)1μL
94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
2−2 ライブラリー作製に適した軽鎖を選択して軽鎖遺伝子ライブラリーを作製する方法
2−2−1 軽鎖遺伝子のファージミドへの組込み
1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×NEB4(AscIに添付) 5μL
10×BSA(SfiIに添付) 5μL
滅菌済MilliQ 28μL
AscI(NEB社 10U/μL) 1μL
SfiI(NEB社 20U/μL) 1μL
37℃で1時間、50℃で1時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、600bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpFCAH9−E8d(図1の4))をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpFCAH9−E8d 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
2−2−2 ファージミドの大腸菌への導入
得られたligated DNAを用いて以下のように大腸菌DH12Sを形質転換した。即ち、ligated DNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解した。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社 Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
2−2−3 ファージミドで形質転換した大腸菌からのFab−cp3型抗体培地中への分泌
形質転換した上記の大腸菌を形質転換用培地(SOB)2mLに植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×TY培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でincubateし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、軽鎖遺伝子の塩基配列を調べた。
SOB培地:950mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後250mMのKCl溶液10mLを加え、5N NaOHでpH7.0に調製した。精製水を加えて1000mLに調整した後、オートクレーブで20分間滅菌し、使用直前に滅菌した2MのMgCl2を5mL加えた。
bacto−tryptone 20g
bacto−yeast extract 5g
NaCl 0.5g
2×YT培地:900mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後5N NaOHでpHを7.0に調製し、精製水を加えて1000mLとした。オートクレーブで20分間滅菌して使用した。
bacto−tryptone 16g
bacto−yeast extract 10g
NaCl 5g
その他の試薬は以下から購入した。
メーカー 品名
シグマ アンピシリンナトリウム
和光純薬 フェノール
シグマ BSA
DIFCO 2×YT培地
和光純薬 カナマイシン硫酸塩
ナカライテスク ポリエチレングリコール6000
ナカライテスク Tween20
片山化学 NaCl
和光純薬 IPTG
和光純薬 スキムミルク
和光純薬 アジ化ナトリウム
和光純薬 トリエチルアミン
和光純薬 過酸化水素
和光純薬 OPD錠
和光純薬 エタノール
κ1、κ2、κ3、κ4、κ5、およびκ6、並びにλ1、λ2、λ3a、λ3b、λ4、λ5、λ6、λ7、λ8、λ9、およびλ10の全てについて以上の操作を行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。続いてκ1、κ2などの各グループのクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合した。これら軽鎖の各グループは、それぞれ実際の生体内でどのような割合で発現しているのかが既に知られている。PCR法で増幅してベクターに組み込んだこれらの遺伝子クローンを、in vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合しVLライブラリーとした。VLライブラリーにおける各familyの構成比率を以下に示す。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
**発表時記載なし。
***プライマーVK6−2で作製したcDNAとプライマーVK6−3で作製したcDNAを等量混合。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
*2 発表時記載なし。
*3 プライマーVL2で作製したcDNA5%とプライマーVL2−2で作製したcDNA10%を混合。
*4 プライマーVL3a−2で作製したcDNA17%とプライマーVL3bで作製したcDNA15%を混合。
*5 プライマーVL4aで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4bで作製したcDNA0.5%とプライマーVL4cで作製したcDNA0.5%を混合。
*6 プライマーVL5abdeで作製したcDNA0.5%とプライマーVL5cで作製したcDNA0.5%を混合。
次に、VLライブラリーから無作為に選んだ約1000個の軽鎖遺伝子の塩基配列を確認した。すなわち、蛍光プライマーhuCH1J(5’−ATTAATAAGAGCTATCCCGG−3’/配列番号:45)を用い、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって塩基配列を決定した。得られた塩基配列を比較して重複するクローンを除いた。更にデータベースと照合し、deletionが無いと確認されたクローンについて、予め発現することがわかっている重鎖遺伝子のクローンの一つVH3−4と組み合わせて、発現実験を行った。操作は以下のとおりである。VH3−4のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。
まずVH3−4をHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。一方、deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンについてもHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製し、VH3−4の重鎖遺伝子とライゲーションすることにより、組み合わせた。得られたligatedDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。生えてきたコロニーを試験管にいれた培地にうえ、IPTGで発現を誘導することにより、Fab−cp3型の抗体分子を培養上清中に発現させた。20時間程度の培養により、ヘルパーファージの感染無しでもFab−cp3型の抗体分子が培養上清に発現される。この培養上清を用いて以下のようなELISAを行った。
2−2−4 ELISA法による重鎖と軽鎖の正しい発現と会合の検定
1)抗体結合96wellマイクロタイタープレートの作製
抗κ抗体(MBL code No.161)を0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3で1.25μg/mLで希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。4℃で一晩静置することにより、ウェルに抗κ抗体を吸着させた。反応液を捨て、5% BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3を200μLずつマイクロタイタープレートに添加し、37℃で2時間静置することにより、非特異的な吸着を防ぐためのブロッキングを行った。
次に、非特異的活性吸収済の抗λ抗体(MBL code No.159)を0.01Mナトリウムリン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3で2.5μg/mLに希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加し氷室で一晩静置した。反応液を捨て、5% BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1% NaN3を200μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で2時間静置し、非特異的な結合を防ぐためのブロッキングを行った。
2)1次反応
positive contorolとして)ヒトFab(10μg/mL)を、negative controlとして、PBS/0.1%NaN3をそれぞれ100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。IPTGでFab−cp3型の抗体分子の発現を誘導した培養上清の原液を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
3)2次反応
1次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaN3で希釈した抗Fd抗体(1μg/mL)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
4)3次反応
2次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaN3で希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒツジIgG抗体(4000倍希釈)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
5)発色反応および吸光度測定
3次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いで発色基質溶液(SIGMA 104 phosphatase substrate tablets 1粒あたり5mLの50mMジエタノールアミンPH9.8に溶解したもの)を100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。室温で反応させ、405nmの吸光度が0.5以上になったと思われる時点で、停止液を添加し、プレートリーダー(タイターテック マルチスキャンMCC)で吸光度測定した。
このELISAで陽性(吸光度0.5以上)となったクローンは、Fab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているとし、κ鎖遺伝子、λ鎖遺伝子それぞれ反応性の高いものから100個ずつ選択した。両者を混合してFab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているクローンのみを集めたライブラリーKL200とした。
3.軽鎖遺伝子ライブラリーと重鎖遺伝子ライブラリーの組み合わせライブラリー(Fab抗体遺伝子ライブラリー)の作製
3−1−1 PCRを用いたイムノグロブリン重鎖遺伝子の単離
2−1と同様の手順を用いて臍帯血、骨髄液、および末梢血のリンパ球、並びに扁桃腺からhuman μ primer(以下に示すプライマーの634)あるいはrandom hexamerを用いてcDNAを調製し、このcDNAを鋳型にして、以下に示すヒト抗体重鎖遺伝子の取得用5’プライマー(VH1〜VH7)と3’プライマー(human JHプライマー4種を等量混合したもの、以下に示すプライマーの697〜700)、または、human μプライマー(以下に示すプライマーの634)を用いて、PCRを行った。表中、下線をつけた部分はSfiIサイトを示す。hVH2aはgerm line VH2 familyに対応していないため、新たにVH2a−2を設計した。またhVH4aではVH4ファミリー全体に対応していないため、新たにhVH4a−2を設計した。VH5aもgerm line VH5 subfamilyに対応していなかったため新たにVH5a−2を設計した。またVH7に対応するprimerとしてhVH7を設計した。これらについても遺伝子増幅を行い、pscFvCA−E8VHdに組み込み、どのような遺伝子がとれたのかを塩基配列決定した。hVH5a−2についてはhVH1aと配列が酷似しているため、hVH1aで増幅させたものと同様の遺伝子産物が得られることが予想されるためこれについては使用しなかった。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。
各VH familyの増幅に使用したprimer
Human VH primer SfiI siteを下線で示す
Human JH primer BstPI,XhoI siteを下線で示す
cDNA 2μL
10×buffer #1(KODに添付) 10μL
dNTP mix(2.0mM) 10μL
25mM MgCl2 4μL
5’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
3’側プライマー(100pmol/μL) 1μL
滅菌済MilliQ 71μL
KOD DNA polymerase(東洋紡2.5U/μL)1μL
PCR条件:94℃ 1分、55℃ 2分、74℃ 1分を35サイクル
3−1−2 重鎖遺伝子ライブラリーの作製
3−1−1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物 10μL
10×K buffer(宝酒造) 5μL
滅菌済MilliQ 33μL
HindIII(宝酒造15U/μL) 1μL
XhoI(宝酒造12U/μL) 1μL
37℃で2時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、400bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpscFvCA−E8VHd(図1の3))をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpscFvCA−E8VHd 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
3−1−3 ファージミドの大腸菌への導入
得られたDNAを大腸菌DH12Sに形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解する。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーション法により形質転換を行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DCvolts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)2mLに上記操作の終了した形質転換大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、重鎖遺伝子の塩基配列を調べた。VH1〜VH7の全てについてこれらのことを行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。これらの各グループ(ファミリー)のクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合してVHライブラリーとした。VHライブラリーにおける各ファミリーの構成比率を以下に示す。
*Griffith AD et al.EMBO J.(1994)13,3245−60.
**実際にはVH1とVH5は同一のプライマーで増幅されるため、分離して集計できない。
***VH4プライマーで作製したcDNAとVH4−2プライマーで作製したcDNAを混合してこの割合とした。
3−2 組み合わせ遺伝子ライブラリーの作製
VHライブラリー200μgを下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。
VHライブラリー200μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済MilliQ 205μL
HindIII(宝酒造40U/μL) 30μL
XhoI(宝酒造50U/μL) 25μL
deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンKL200、およびVLライブラリーの挿入されたベクターpFCAH9−E8dについても下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を含む断片を、ジーンクリーンIIキットで精製した。
KL200またはVLライブラリー
を挿入したpFCAH9−E8d 100μg 100μL
10×K buffer(宝酒造) 40μL
滅菌済Milli−Q 230μL
HindIII(宝酒造40U/μL) 15μL
XhoI(宝酒造50U/μL) 15μL
次に、VH遺伝子ライブラリー断片と軽鎖遺伝子の挿入されたpFCAH9−E8dベクターを、次の条件下、16℃で一晩反応させてライゲーションした。
制限酵素処理した
VHライブラリー断片 10μg 50μL
制限酵素処理したKL200または
VLライブラリーの断片
を含むpFCAH9−E8d 40μg 50μL
10×ligation buffer
(T4 DNA ligaseに添付) 100μL
10mM ATP 100μL
滅菌済MilliQ 670μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)30μL
反応の終了したDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)30μLに溶解した。これをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)500μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)12mLに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、1%グルコース、100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地500mLで培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーの数から得られたクローンの数を推定した。それぞれ4.5×1010クローンが得られた。
扁桃mRNAよりrandam hexamerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせたライブラリーをAIMS1とした。(1.28×1010の独立したクローン)
サイ帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman m primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせた遺伝子ライブラリーをAIMS2とした.(3.20×1010の独立したクローン)
サイ帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman μ primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをVL libraryと組み合わせたライブラリーをAIMS3とした。(4.50×1010の独立したクローン)
更に(AIMS1+AIMS2):AIMS3=1:1で混合し、1×1011の独立したクローンからなるライブラリーとした(AIMS4と呼ぶ)。
4.scFv−CL抗体遺伝子ライブラリーの調製
4−1−1 scNcopFCAH9−E8VHdVLdの作製
pFCAH9−E8d 3μg(3μL)(図1の4)を参照)をBstPI(3U/μL)3μL、10×H buffer 5μL、DW39μLと混合し、37℃で2時間、制限酵素処理を行った。処理後、エタノール沈殿して得られた沈殿を10μLのTEバッファーに溶解した。これに、SacI(10U/μL)1μL、10×L buffer 5μL、DW34μLを混合して37℃で2時間、制限酵素処理した後、アガロースゲル電気泳動して、4.7kb断片を回収した。回収物をエタノール沈殿して10μLとした(pFCAH9−E8d BstPI−SacI断片)。
一方、プライマーlinF(100pmol/μL)5μLとプライマーlinR(100pmol/μL)5μLを混合し、94℃で5分加熱した後、80℃5分、70℃5分、室温放置30分によりアニールさせた。このうち、2μLと上記で得られたpFCAH9−E8d BstPI−SacI断片1μL、10×ligation buffer 1.5μL、DW9.5μL、T4DNAligase 1μLを混合し、16℃で16時間反応させた。反応後、エタノール沈殿して3μLに濃縮し、そのうち1.5μLを用いて、大腸菌DH12Sコンピテントセル20μLをエレクトロポレーションにより形質転換した。得られたクローンのプラスミドを抽出し、塩基配列を確認して、scNcopFCAH9−E8VHdVLdと名づけた。図9にscNcopFCAH9−E8VHdVLdの構造を模式的に示した。また、図10〜図12にscNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示した。
4−1−2 scNcopFCAH9−E8VHdVLdへのAIMS−4L鎖の組込み
scNcopFCAH9−E8VHdVLd20μg(20μL)を、10×NEB4 buffer 30μL、10×BSA 30μL、NcoI(10U/μL)10μL、AscI(10U/μL)10μL)と混合して37℃で2時間、制限酵素処理を行った。アガロースゲル電気泳動により、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して10μLとした(scNcopFCAH9−E8VHdVLd NcoI−AscI断片、5μg得られた)。一方、AIMS−4ライブラリープラスミド(AIMS−4ライブラリーを構成するプラスミド)20μg(20μL)を、10×NEB4 buffer 30μl、10×BSA 30μL、NcoI(10U/μL)10μL、AscI(10U/μL)10μL)と混合して37℃で2時間反応させた。アガロースゲル電気泳動して、680bp断片を回収し、エタノール沈殿して10μLとした(AIMS−4ライブラリープラスミドNcoI−AscI断片、1μg得られた)。
scNcopFCAH9−E8VHdVLd NcoI−AscI断片2.5μg(5μL)、AIMS−4ライブラリープラスミドNcoI−AscI断片1μg(10μL)、10×ligation buffer 10μL、DW72μL、T4 DNAligase 3μLを混合し、16℃で16時間反応させた。エタノール沈殿して3μLに濃縮し、そのうち1.5μLを用いて、大腸菌DH12Sコンピテントセル0.2mLをエレクトロポレーションにより形質転換した。エレクトロポレーション後のDH12SをSOC培地に植え、37℃で1時間培養した後、TYGA培地2Lで30℃一晩培養した。一部を寒天培地にまいてクローンの総数を見積もったところ、2.1×108であった。一晩培養した大腸菌からプラスミドを抽出したところ、2mg得られた。これをAIMS−4 VLライブラリープラスミドとした。
4−1−3 AIMS−4 VLライブラリープラスミドへのAIMS−4 H鎖の組込みと形質転換
4−1−2で得られたAIMS−4 VLライブラリープラスミド500μg(200μL)をHindIII(50U/μL)20μL、10×M buffer 40μL、DW 240μLと混合し37℃で2時間、制限酵素処理した後、BAP C75(0.4U/μL)を10μL添加し、37℃で2時間、50℃で15分反応させた。フェノール処理後、エタノール沈殿して、20μL TE bufferに溶解した。これに、XhoI(50U/μL)20μL、10×H buffer 40μL、DW 320μLを混合し、37℃で2時間制限酵素処理した。これをアガロースゲル電気泳動して、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して40μLとした(AIMS−4 VL ライブラリープラスミドXhoI−HindIII BAP断片、220μg得られた)。
一方、AIMS−4ライブラリープラスミド600μg(600μL)を、HindIII(50U/μL)20μL、10×M buffer 80μL、DW 100μLと混合し37℃で2時間切断した。フェノール処理後、エタノール沈殿して、50μL TE bufferに溶解した。これに、XhoI(50U/μL)20μL、10×H buffer 40μL、DW 290μLを混合し、37℃で2時間制限酵素処理した。その後、BAP C75(0.4U/μL)を10μL添加し、37℃で2時間、50℃で15分反応させた。アガロースゲル電気泳動して、0.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して40μLとした(AIMS−4ライブラリープラスミドXhoI BAP−HindIII BAP断片、41μg得られた)。
上記方法により調製したAIMS−4 VLライブラリープラスミドXhoI−HindIII BAP断片50μg(9.1μL)、AIMS−4ライブラリープラスミドXhoI BAP−HindIII BAP断片41μg(40μL)、10×ligation buffer 30μL、DW 195.9μL、及びT4 DNAligase 25μLを混合し、16℃で16時間反応させた。これをアガロースゲル電気泳動して、4.5kb断片を回収し、エタノール沈殿して1/10TE bufferで36μLとした(35μg得られた)。これに、10×kination buffer 5μL、10mM ATP 5μL、T4 polynucleotide kinase(10U/μL)4μLを添加し、37℃で1時間反応させた。さらに、10×ligation buffer 1000μL、DW 8750μL、T4 DNAligase 200μLを混合し、16℃で16時間反応させ、セルフライゲーションを行った。1−ブタノールで濃縮後、エタノール沈殿して1/10TEで200μLとし、これを用いて大腸菌DH12Sコンピテントセル5mLをエレクトロポレーションにより形質転換した。エレクトロポレーション後のDH12Sを50mLのSOC培地に植え、37℃で30分培養した後、TYGA培地2Lで30℃一晩培養した。一部を寒天培地にまいてクローンの総数を見積もったところ、1.1×1011であった。このようにして得られたクローンの集合からなるライブラリーをAIMS−5とした。図13のa)に、AIMS−5抗体遺伝子ライブラリーを構成するクローンの基本的な構造を示す。
4−2 scFv−CL抗体遺伝子ライブラリー(AIMS−5)からscFv−CL抗体ファージライブラリーの作製
100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地300mLを入れた5リットルのフラスコ16本にAIMS−5懸濁液を2.5mLを加え、37℃で振とう培養し1時間おきに波長600nmにおける吸光度を測定しながら、吸光度が1.0になるまで増殖させた。培養液にヘルパーファージ液(M13KO7)をフラスコ当たり12mL加えてヘルパーファージを感染させ、37℃で2時間培養し、ヘルパーファージ感染済みDH12Sとした。
5リットルのフラスコ24本に2×YT培地600mLと100μg/mLのアンピシリン0.6mL、50μg/mLのカナマイシン0.8mL、ヘルパーファージ感染済みDH12S200mLを加えて37℃で20時間振とう培養した。
菌体は4℃で8000rpm、10分間遠心し、上清を集めた。上清に20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 4Lを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心、沈殿を1LのPBSで溶かし、20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 200mLを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心した。上清を捨ててさらに4℃で8000rpm、3分間遠心して沈殿を回収した。沈殿は0.05% NaN3を加えたPBSで溶解し、4℃で1000rpm、15分間遠心し、上清を回収した後、4℃で8000rpm、3分間さらに遠心して上清を回収した。
回収したファージ溶液の力価は以下のようにチェックした。すなわち、ファージ溶液をPBSで106、107、108希釈し、その10μLをDH12S 990μLに感染させ、37℃で1時間培養した。これをLBGAプレートに100μL播いて30℃で18時間培養した。コロニーの数をカウントすることにより希釈前の原液の力価を算出した。ファージ溶液原液を2%スキムミルク及び0.05% NaN3を含むPBSに2×1014/mLになるよう懸濁した。5.scFv−CL抗体ライブラリーから特定の抗原に特異的に結合するファージの選択
本実施例では、モデル抗原としてC.elegansの細胞内で発現していると考えられるcDNAである「CC046」の大腸菌での発現産物を用いた。具体的には、CC046のN末端の96アミノ酸に相当する部分(CC046抗原)を用いた。CC046抗原に特異的に結合するファージの選択(スクリーニング)は、以下に示すパニング法によって行った。
5−1 スクリーニング用試験管の作製
CC046抗原をPBSで20μg/mLに調製し、試験管3本(Nunc社製Maxisorp)に3mLずつ添加して4℃で18時間インキュベートして、試験管内表面へ抗原を吸着させた。吸着後、抗原溶液を捨て、2%スキムミルク含有PBS溶液3mLずつを加えて25℃で1時間反応させ、ファージ抗体が非特異的に試験管に結合することを防ぐためにブロッキングを行った。
5−2 スクリーニング操作
作製した抗原吸着済試験管に4で得たAIMS−5ライブラリーを2%スキムミルク、0.1%Tween20含有PBSになるよう溶解して1×1014CFU/9mLに調製し、この液を試験管3本に3mLずつ添加して25℃で2時間反応させた後、0.1%Tween20を加えたPBSで4回、PBSで4回、および滅菌した超純水(MilliQにて作製)で1回洗浄した。
続いて抗原結合試験管に結合したファージを以下のように回収した。すなわち、0.1Mトリエチルアミン(pH12.3)を試験管1本当たり3mL添加し、ローテーターを用いて室温で20分間反応させ乖離させた後、1M Tris−HCl緩衝液(pH6.8)1.1mLを加えて中和し、この液を回収した。
5−3 回収したファージの増幅
回収した液は(ファージの大腸菌への感染)(ヘルパーファージの感染)(ファージの回収)の処理を行い、含まれているファージを精製・増幅した。
1)ファージの大腸菌への感染
大腸菌(DH12S)を2×YT培地50mLで培養し、波長600nmの吸光度が0.5になるよう増殖させ、上記で乖離させたファージ液を加えて37℃で1時間振とう培養した。
2)ヘルパーファージの感染
1)の培養液62.3mLをとり、2×YT培地425mL、40% グルコース12.5mL、および100μg/mLアンピシリン0.5mLを加えて37℃で波長600nmにおける吸光度が0.5になるまで培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心して菌体を沈殿させ、回収して100mg/mLアンピシリン0.3mLを加えた2×YT培地300mLに懸濁した。これに3×1010cfu/mLのヘルパーファージM13K07を1/100量加え、37℃で1時間振とう培養した。
培養液を予め37℃に暖めた培地(2×YT培地に100μg/mLアンピシリンと70μg/mLのカナマイシンを加えた液)900mLに加えて37℃で一晩培養した。
3)ファージの回収
2)の培養液を4℃で7000rpm、10分間遠心し、その上清に2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて室温で20分間静置した後、4℃で8000rpm、15分間遠心して沈殿を回収し、培養液の1/10量の滅菌PBSを加えて溶解し、再度2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて4℃で10000rpm、20分間遠心して上清を捨て、さらにスピンダウンして4℃で10000rpm、2分間遠心した。これに0.05%のNaN3を加えたPBSを培養液の1/100量加えて沈殿を溶解し、ファージを回収した。
5−4 増幅したファージによる再スクリーニング
増幅したファージを用いて5−2と同様に抗原結合試験管を用いてスクリーニングを繰り返した。スクリーニングでの洗浄は、非特異に吸着したファージを乖離し、結合力の高いファージを選択する上で重要なステップであることから、2回目以降のスクリーニングにおける洗浄条件は以下のようにした。
2回目;PBS+0.1% Tween20で6回、PBSで6回、滅菌した超純水で1回
3回目;PBS+0.1% Tween20で13回、PBSで13回、滅菌した超純水で1回
5−5 スクリーニングによって得られた抗体の抗原結合活性(アフィニティー)の測定
本発明者らは、以上のスクリーニングにより得られたファージを大腸菌に感染させ、その後ヘルパーファージを重感染させることなく長時間培養することにより、大腸菌外にcp3融合型scFv−CL抗体が分泌されてくることを発見した。
そこで、ファージによってコードされるscFv−CL抗体の抗原結合活性を、ファージ表面に発現されている抗体ではなく、cp3融合型scFv−CL抗体を用いて行った。具体的な方法は以下のとおりである。
5−5−1 cp3融合型scFv−CL抗体の発現誘導
まず、以上のスクリーニングにより得られたファージを大腸菌DH12Sに感染させた。次に、ファージの感染した大腸菌を、YTGA培地(1%グルコース、100μg/mLのアンピシリン含有2×YT培地)を含む寒天培地にまき、生えてきたコロニーの中から数十個を選択し、1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地3mLにそれぞれのクローンを植え終夜培養した。0.1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地10mLに終夜培養した培養液を100μLを入れ、対数増殖期に達したら、1MのIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を10μL加えてさらに30℃で21時間培養した後、培養液1.5mLをエッペンドルフチューブにとり、4℃で10000r.p.m.5分間遠心してその培養上清をとり、0.1%となるようアジ化ナトリウムを添加して検体とした。
5−5−2 ELISA法による抗原結合活性(アフィニティー)の測定
まず、ELISA用のプレートを以下のように調製した。CC046抗原10μg/mLを96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社製Maxisorp)の各ウェルに100μL添加して4℃で18時間結合させたのち、5%BSA含有リン酸緩衝液(ブロッキング液)を各ウェルに200μL添加して37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液を捨てた後、PBSで1回洗浄してアフィニティーの測定に用いた。
このようにして得られたプレートの各ウェルに、5−5−1で得られた検体を100μLずつ加え、25℃1時間反応させた。反応後、PBSで4回洗浄し、500倍希釈のウサギ抗cp3抗体(MBL製)を100μL加えて25℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、1000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL製)を100μL加えて、25℃で1時間反応させた。再度PBSで4回洗浄し、オルトフェニレンジアミンと過酸化水素の溶液100μLを加えて暫時反応させた後、1.5N リン酸100μLを加えて反応を停止し、波長492nmにおける吸光度を測定した。その結果25クローン中21クローンに活性が確認された。
これら21クローンについてDNA塩基配列を決定したところ、7種類のクローンであることがわかった。DNA塩基配列の解析は、DNAシークエンサー(LI−COR社製)を用いた公知の方法(ジデオキシ法)により行った。
5−5−3 免疫蛍光染色法による各クローンの抗原結合活性の比較
5−5−2で得られた7種類のクローンについて抗原結合活性を免疫蛍光染色法により比較した。免疫染色の材料にはC.elegansの初期胚を用いた。
まず、周知の方法を用いてC.elegansを飼育し、受精卵を得た。受精卵が初期胚にまで成長した後に、スライドグラス上にとり、−20℃に冷却したエタノール中にスライドグラスごと10分間浸した。次に、−20℃に冷却したアセトンに10分間浸した。室温に放置し、アセトンが揮発したらPBSに5分間浸した。次いで、5%スキムミルク含有PBSに1時間浸してブロッキングした。
次に、5−5−2で陽性(活性が認められた)であったサンプル(scFv−CL抗体溶液)の培養上清を5% スキムミルク含有PBSで2倍に希釈し、25μLを上記で準備したC.elegansの結合したスライドグラス上の初期胚に添加し、室温で2時間反応させた。
反応後、抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう2度同じ操作を繰り返した。
次にウサギ抗cp3抗体(cp3タンパク質をウサギに免疫することによって作製)を5%スキムミルク含有PBSで200倍希釈したもの25μLをスライドグラス上の初期胚に添加し、室温で2時間反応させた。反応が終了したら抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう2度同じ操作を繰り返した。
続いて、Cy3標識抗ウサギIgG抗体を5%スキムミルク含有PBSで800倍希釈したもの25μLをスライドグラス上に滴下し、4℃で1晩反応させた。
反応が終了したら、抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸して洗浄を行った。洗浄液を取り替えてもう1度同じ操作を繰り返した。
続いて、50mLの洗浄液に1mg/mL DAPIを1μL添加し、この中にスライドグラスを室温で10分間浸した。
液を吸い取った後、封入剤をのせ、カバーグラスをかけて顕微鏡観察した。
5−5−4 ウエスタンブロットによる各クローンの抗原結合活性の比較
以下に示す周知の方法により5−5−2で得られた各クローンの抗原結合活性を比較した。
CC046精製抗原を1レーンあたり100ngまたは10ng分をSDS−PAGEで電気泳動した。SDS−PAGEゲルをメンブレンに転写した。
メンブレンをブロッキングした後、5−5−2で得られた各クローンの培養上清を4倍希釈(5%スキムミルク共存下)にしてメンブレンにのせ、反応させた。
室温で1時間反応後、0.05%Tween20−PBSで3回洗った。洗浄済みのメンブレンに抗cp3抗体(500倍希釈、5%スキムミルク共存下)を添加し、室温で1時間反応させた。反応後0.05%Tween20−PBSで3回洗った。
洗浄済みメンブレンにHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(×1000、MBL code No.458)を添加し、室温で1時間反応させた。反応後、0.05%Tween20−PBSで3回洗った。
化学発光試薬(Renaissance;Western Blot Chemiluminescence Reagent Plus,NEN Life Science Products,Inc.)にメンブレンを浸し、ラップに包んで、フィルムに露光した。フィルムを現像して結果を評価した。
以上の結果及び5−5−3の結果より、最も抗原結合活性の高いクローンを選択し(クローンCC046N2と呼ぶ)、以降の実験に用いた。
6.cp3融合型scFv−CL抗体からGFP融合型scFv−CL抗体への変換
6−1 GFP融合型scFv−CL抗体発現用ベクターの作製
図13のb)下段に示されるように、p6×His−GFPベクター(クロンテック製)の開始コドンとHis−tag配列の間に、AscIサイトを付加して発現用ベクターpAscHGFPを作製した。
このベクターのAscIサイトにscFv−CL遺伝子を挿入することにより、実際の抗体タンパク質発現用のベクターが完成する(図13のc))。このベクターより発現される抗体はscFv−CL型であり、GFPはHis−tagを介してCL領域に連結することとなる。
AscIサイトを付加する具体的な操作は以下のように行った。p6×His−GFP ベクター(0.1mg/mL)0.5μL,10×LA PCR bufferII 10μL,dNTPmix 16μL,25mM MgCl2 10μL,プライマーGFPAscF(100pmol/μL)1μL,プライマーGFPAscR(100pmol/μL)1μL,LA Taq polymerase(5U/μL)1μL,滅菌水60.5μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で5分保温した。94℃ 1分,55℃ 1分,72℃ 4分を30サイクル繰り返し、さらに72℃,7分インキュベートした。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、フェノール処理、エタノール沈殿して10μLに濃縮した。これに、10×NEB4 buffer 10μL,滅菌水75μL,AscI(10U/L)5μLを加え、37℃で3時間保温した。1/5量をアガロースゲル電気泳動して目的の断片を回収し、エタノール沈殿して濃縮し、30μLのTE bufferに溶解した。これをライゲーション反応に供さず、周知の方法によりセルフライゲーションを起こさせ、環状のプラスミドベクターとすることもできる。
上記と同様の方法により、RFP(Red Fluorescent Protein)融合型scFv−CL抗体を発現させるベクターpAscHRFPを作製することができる。また、これを用いて以下の操作を行えば、RFP融合型のscFv−CL抗体を発現させることができる。
6−2 クローンCC046N2よりscFv−CL抗体遺伝子の増幅
クローンCC046N2を用いてPCR法を行い、scFv−CL抗体遺伝子を増幅した。この際、AscIサイトを含む2つのプライマーを合成し、これらを用いることにより、scFv−CL抗体遺伝子部分にコードされるアミノ酸配列を変化させない条件においてVH遺伝子のN末端のSfiIサイトをAscIサイトに変換した。図13のb)上段に増幅されたscFv−CL抗体遺伝子を模式的に示した。
PCR法に用いたプライマーを以下に示す。なお、小文字部分がAscI部位である。
PCR法の具体的な方法を以下に示す。
クローンCC046N2 0.5μL,10×buffer#1 10μL,dNTPmix 10μL,25mM MgCl2 4μL,プライマーAsc3F(100pmol/μL)1μL,プライマーAscR(100pmol/μL)1μL,KOD polymerase(2.5U/μL)1μL,滅菌水72.5μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で1分保温した。94℃ 1分,55℃ 1分,72℃ 1分を25サイクル繰り返した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、フェノール処理、エタノール沈殿して10μLに濃縮した。
得られたPCR産物は、アガロースゲル電気泳動で確認後フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTE bufferに懸濁した。
6−3 発現ベクターへのscFv−CL抗体遺伝子の導入
6−2で得られたPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
PCR産物10μL
37℃で3時間反応後、1/2量をアガロースゲル電気泳動して目的の断片を回収し、エタノール沈殿して濃縮し、30μLのTEに溶解した。
他方、同様に発現用ベクターpAscHGFP(図13のb)下段)を制限酵素処理し、ジーンクリーンIIキットで精製した。
次に上記処理をしたPCR産物と発現用ベクターを、16℃、4時間〜一晩、以下の条件下で反応させることによりライゲーションした。
制限酵素処理したpAscHGFP 2μL
制限酵素処理したPCR産物 1μL
10×ligation buffer 1.5μL
(T4 DNA ligaseに添付)
10mM ATP 1.5μL
滅菌済MilliQ 8μL
T4 DNA ligase(宝酒造10U/μL)1μL
以上の操作の結果得られたベクター(pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミド)をGFP融合型scFv−CL抗体作製に用いた。pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドのDNA配列及びアミノ酸配列を図14に示した。
7.大腸菌内でのGFP融合型scFv−CL抗体の産生
7−1 pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドの大腸菌への導入
pscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドを用いて、エレクトロポレーションにより大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはpscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドを1/10量をTE3μLに溶解し、これをコンピテントセルDH12S(GIBCOBRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
BRL社Cell−Porator(Cat.series 1600)
設定条件;voltage booster 4kΩ
capacitance 330μF
DC volts LowΩ
charge rate Fast
形質転換用培地(SOB)2mLに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、TYGA寒天培地上で培養した。形賀転換体24クローンについて大腸菌からプラスミドDNAを周知の方法を用いて調製し、制限酵素PvuIIによって切断し、アガロースゲル電気泳動に供した。その結果(正しい向きの場合は0.3,1.7,4.3kbの長さの断片が得られる)により、挿入されたscFv−CL遺伝子の向きが正しいクローンを選択した。
8.GFP融合型scFv−CL抗体の精製及び解析
8−1 GFP融合型scFv−CL抗体の発現誘導及び精製
まず、7−1によって得られたpscFv(CC046N2)−CL−GFPプラスミドをもつ大腸菌を1リットルの100μg/mLアンピシリン含有2×YT培地に懸濁し、30℃で培養した。大腸菌の濃度を波長600nmの吸光度により測定し、log phaseになったところで、1mMになるようにIPTGを添加し、30℃でさらに21時間培養した。次に、培養液を遠心分離して菌体を回収し、菌体に30mLの50mM Na−リン酸緩衝液/300mM NaCl pH8を加え、超音波処理により菌体を破砕した。破砕液を遠心分離し、その上清30mLを平衡化したNi−NTAアガロースカラム(ゲル容量2.8mL)にアプライした。50mM リン酸ナトリウム/300mM NaCl pH8、250mLでカラムを洗浄した後、10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,120,150,200,250mM イミダゾール1mLで溶出した。各溶出フラクションに波長366nmの光を照射し、蛍光を発するフラクション(30−90mM)を選択した。選択したフラクションのタンパク濃度を測定した結果、約200μgのタンパク質が得られていた。この精製タンパク質溶液を用いて以下の解析を行った。
8−2 SDS−PAGEによる精製タンパク質の解析
8−1で得られた精製タンパク質溶液をSDS−PAGEで解析した。なお、比較例として、精製前の菌体破砕液(粗抽出液)を用いた。
SDS−PAGEの結果を図15に示した。図15において、レーン2が精製タンパク質溶液を流したレーンである。また、レーンM及びレーン1には、分子量マーカー及び比較例である精製前の菌体破砕液を泳動した。
図15に示されるように、粗抽出物では夾雑しているタンパク質のため判別できないが、精製タンパク質溶液では濃縮され、予測される位置(矢印で示される位置)にバンドが明らかに検出できた。
8−3 精製タンパク質のELISA法による抗原結合活性(アフィニティー)の測定
8−1で得られた精製タンパク質(GFP融合型scFv−CL抗体)の抗原(CC046)に対する結合活性をELISA法により測定した。具体的な方法及び条件を以下に示す。
まず、ELISA用のプレートを以下のように調製した。抗原20μg/mLを96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社製Maxisorp)の各ウェルに100μL添加して4℃で18時間結合させたのち、5%BSA(ブロッキング液)を各ウェルに200μL添加して37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液を捨てた後、PBSで1回洗浄してアフィニティーの測定に用いた。
このようにして得られたプレートの各ウェルに、8−1で得られた精製タンパク質溶液を倍数希釈したものを100μLずつ加え、37℃1時間反応させた。反応後、PBSで4回洗浄し、5000倍希釈のウサギ抗GFP抗体(MBL社製)100μL加えて37℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、10000倍希釈したHRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(MBL製)を100μL加えて、37℃で1時間反応させた。各ウェルをPBSで4回洗浄した後、発色基質溶液(OPD)を100μL加え、前に述べたようにプレートリーダーで492nmの吸光度を測定した。
その結果、5−5−3におけるcp3融合型scFv−CL抗体と同等の抗原活性が認められた。
8−4 精製タンパク質溶液を用いた免疫蛍光染色
次に、8−1で得た精製タンパク質溶液に、抗原CC046に特異的に結合し、かつ蛍光を発する抗体分子が存在することを証明するために、様々なステージにおけるC.elegansの胚細胞について免疫蛍光染色を行った。
まず、8−1で得た精製タンパク質溶液(scFv−CL−GFP)を5% スキムミルク含有PBSで1μg/mLに希釈し、25μLを前に述べた要領で準備したC.elegansの結合したスライドグラス上に添加し、4℃で1晩反応させた。
次に抗体液をスライドグラスから除き、洗浄液(0.1M Tris−HCl pH7.5,0.2M NaCl,0.1% Tween)中に室温で10分間浸し、洗浄液を取り替えてもう1度同じ操作を繰り返した。
50mLの洗浄液に1mg/mL DAPIを1μL添加し、この中にスライドグラスを室温で10分間浸した。
液を吸い取ったのち、封入剤をのせ、カバーグラスをかけて顕微鏡観察した。
このようにして調製したサンプルの染色像の観察には、フィルターセットNo.10(励起フィルターBP450−490、ダイクロイックミラーFT510、バリアフィルターBP515−565)(Zeiss社製)を用いた。尚、DAPIによるDNA染色を同時に行った。
初期胚を観察した結果を図16のaに示す。矢印A示した部分(中心体部分)にGFPによる蛍光が観察される。即ち、はっきりと抗原CC046を認識する分子の存在が確認される。よって、精製タンパク質溶液中に、CC046を特異的に認識し、かつ蛍光を発するGFP融合型scFv−CL抗体の存在が確認された。また、CC046は中心体に局在することがわかる。尚、矢印dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。
また、図16のbは、5−5で得られたクローンより取得したcp3融合型scFv−CL抗体を用いて同様の免疫蛍光染色を行った結果である。この場合には2次抗体として上述のようにウサギ抗cp3抗体を、3次抗体としてCyanin3標識ヤギ抗ウサギIgG抗体(Jackson Immuno Research Laboratories)を用いた。矢印Bで示した部分に蛍光が観察される。尚、矢印Dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。
図16のaとの比較より、cp3融合型scFv−CL抗体よりもGFP融合型scFv−CL抗体を用いた方が感度及び解像度の点から優れていることがわかった。尚、cp3融合型scFv−CL抗体を用いた場合の染色像の観測には、フィルターセットNo.15(励起フィルターBP456/12、ダイクロイックミラーFT580、バリアフィルターLP590)(Zeiss社製)を用いた。また、GFP融合型の場合と同様にDAPIによるDNA染色を同時に行った。
本実施例の方法では、5.の「ScFv−CL抗体ライブラリーから特定の抗原に特異的に結合するファージの選択」を約2週間で行うことができた。また、6.の「cp3融合型scFv−CL抗体からGFP融合型scFv−CL抗体への変換」から7.の「大腸菌内でのGFP融合型scFv−CL抗体の産生」までを約1週間で行うことができた。したがって、最終形態のGFP融合型scFv−CL抗体を単離するのに1ヶ月を要しないこととなる。このように、本発明の方法によれば極めて短期間で蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体を取得することが可能である。なお、蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体作製に要する期間は、実験環境によってさらに短縮することができるものである。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想定できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
産業上の利用の可能性
本発明により、蛍光タンパク質を融合したscFv型の抗体の新規な作製方法が提供される。本発明の作製方法によれば、極めて短期間で所望の抗体を得ることができる。scFv抗体ライブラリーとして、生体内の多様性を包含するのに十分なクローン数を有するものを用いることにより、多種多様な抗体を認識可能な抗体が得られる。
また、本発明で得られる蛍光タンパク質を融合したscFv型抗体は、特定波長の光の照射によりそれ自体で蛍光を発するため、検出に2次抗体、3次抗体等を必要としない。したがって、本発明で得られる抗体を免疫学的測定方法に利用した場合には、操作工程の簡略化、及び測定時間の短縮化が図れる。また、一般的な酵素免疫測定法では検出(測定)に特別の試薬(基質)を必要とするが、本発明で得られる抗体では特定波長の光の照射のみで検出が可能となるため、生細胞内ないし生体内において直接検出することができる。
また、異なる抗原に対して、異なる蛍光タンパク質を融合した抗体を作製し、これらを同時に用いて免疫染色することにより、同時に多色染色することが可能である。
さらに、イントラボディー技術と組み合わせることにより、生細胞内ないし生体内において特定の機能に関与する抗原分子をリアルタイムに測定することが可能となる。
以上のように、本発明により得られる蛍光タンパクと融合したscFv型抗体は、免疫染色の分野において用途の広い検出試薬に利用できるといえる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施例において、可変領域ライブラリーの作製に用いた各種のベクターの構造を模式的に示す図である。
1)pAALFab:D1.3mutation用ベクター。
2)pFCAH3−E8T:E8発現用ベクター。pAALFabをもとに、制限酵素サイトを改変した。新たにPstI、XbaI、およびKpnIサイトを付加し、EcoRI、およびXhoIサイトの位置を変更した。
3)pFvCA−E8VHd:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8Tをもとに、制限酵素サイトを改変した。XbaI−EcoRI間を欠落させ、新たにKpnI、SfiI、NcoIおよびSpeIサイトを付加した。重鎖可変領域遺伝子をSfiI−XhoIサイトにクローニング可能。
4)pFCAH9−E8d:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8T、およびpFvCA−E8VHdをもとにDNA配列を改変した。マウスγCH1をヒトγCH1で置きかえた。新たに、SfiI、NcoI、およびAscIサイトを付加した。軽鎖可変領域をSfiI−AscIサイトにクローニング可能。
図2は、pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を示す図である。
図3は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図4は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図5は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(3)。
図6は、pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を示す図である。
図7は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図8は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図9は、scFv−CL抗体遺伝子ライブラリーの調製に用いたベクターscNcopFCAH9−E8VHdVLdの構造を模式的に示した図。
図10は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(1)。
図11は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(2)。
図12は、scNcopFCAH9−E8VHdVLdのインサート部の塩基配列及びそれにコードされるアミノ酸配列を示す図(3)。
図13は、本発明の実施例における操作手順を示した図。a)に示すのは、AIMS−5ライブラリーを構成するクローンにおけるcp3融合型scFv−CL抗体の遺伝子の模式図。b)に示すのは、PCRによってscFv−CL抗体のコードされた領域のDNAを増幅し、PCR産物をpAscHGFPベクターに組み込むことを表す模式図。b)の上段にPCR産物(増幅されたscFv−CL抗体遺伝子)、同下段にpAscHGFPベクターが表される。c)に示すのは、b)の操作により得られる、GFP融合型scFv−CL抗体発現用ベクターである。
図14は、scFv(CC046N2)−CL−GFPのDNA配列およびアミノ酸配列。メチオニンを含む3アミノ酸のあとに、VHドメイン−リンカー−Vλドメイン−Cλドメイン−His−tag−GFPという順に並んでいる構造となっている。Vドメインの番号およびCDRの位置については、Kabatの決め方に従った。Vλドメインの10番目のアミノ酸は欠失している。
図15は、大腸菌で発現させたGFP融合型scFv−CL抗体をSDS−PAGEにて解析した結果(ゲル)を示す図である。レーンMは分子量マーカーを、レーン1は粗抽出液を、レーン2は精製タンパク質をそれぞれ流した結果である。染色は、クーマシーブリリアントブルーで行った。矢印は、GFP融合型scFv−CL抗体の位置を示す。
図16は、C.elegansの初期胚を、CC046に特異的な2種類の形態のscFv−CL抗体で染色した図。a)はGFP融合型scFv−CL−GFPで直接染色した図(矢印Aで示した部分にGFPの蛍光が観察される。また、矢印dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される)。b)は、cp3融合型scFv−CL抗体を反応させた後、2次抗体(ウサギ抗cp3抗体)と3次抗体(Cyanin3標識ヤギ抗ウサギIgG抗体)を反応させて検出した図(矢印Bで示した部分にCyanin3の蛍光が観察される。また、矢印Dで示した部分にはDAPIによる蛍光が観察される。)。
Claims (21)
- 以下の工程を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体の作製方法。
1)scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリーを調製する工程、
2)前記scFv抗体ライブラリーを抗原でスクリーニングすることにより、該抗原に結合可能なscFv抗体を発現しているファージクローンを選択する工程、
3)工程2)で選択したファージクローンより、scFv抗体をコードする遺伝子を取得する工程、
4)工程3)で取得した遺伝子を組込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能な発現ベクターに、該遺伝子を組込む工程、及び
5)工程4)で得られた組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、前記融合タンパク質を発現させる工程。 - 前記scFv抗体ライブラリーは、重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成するように選択された軽鎖可変領域を少なくとも一部分含んで成る、ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載のscFv抗体の作製方法。
- 前記scFv抗体ライブラリーを構成する各ファージクローン表面のscFv抗体は、VH領域、VL領域、リンカー及びCL領域を有する、ことを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項に記載のscFv抗体の作製方法。
- 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のscFv抗体の作製方法。
- 請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載の方法により作製される、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
- VH領域、VL領域、及びリンカーにより構成されるFv領域、CL領域、並びに該Fv領域に該CL領域を介して連結される蛍光タンパク質を有してなる、ことを特徴とする蛍光タンパク質を融合したscFv抗体。
- 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする請求の範囲第6項に記載のscFv抗体。
- 請求の範囲第5項乃至第7項のいずれかに記載のscFv抗体を用いた免疫学的測定方法。
- 請求の範囲第1項に記載の工程1)〜4)により取得される、scFv抗体遺伝子、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する組換えベクター。
- 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする、請求の範囲第9項に記載の組換えベクター。
- 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする請求の範囲第9項又は第10項に記載の組換えベクター。
- 5’側より順に、開始コドン、scFv抗体遺伝子を導入する部位、及び蛍光タンパク質をコードする塩基配列を有する発現ベクター。
- 前記scFv抗体遺伝子は、VH遺伝子、リンカー配列、VL遺伝子、及びCL遺伝子からなる、ことを特徴とする請求の範囲第13項に記載の発現ベクター。
- 前記scFv抗体遺伝子を導入する部位と前記蛍光タンパク質をコードする塩基配列との間にHis−tag、myc−tag、又はHA−tagをコードする塩基配列を有する、ことを特徴とする請求の範囲第13項又は第14項に記載の発現ベクター。
- 前記蛍光タンパク質は、GFP、RFP、BFP、YFP、CFP及びこれらの変異体の中から選択される1又は2以上の蛍光タンパク質である、ことを特徴とする請求の範囲第13項乃至第15項のいずれかに記載の発現ベクター。
- scFv抗体をその表面に発現しているファージクローンにより構成されるscFv抗体ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。 - 前記scFv抗体はVH領域、VL領域、リンカー、及びCL領域から構成される、ことを特徴とする請求の範囲第17項に記載のキット。
- scFv抗体遺伝子を有するファージクローン又はファージミドクローンから構成されるscFv抗体遺伝子ライブラリー、及び
scFv抗体遺伝子を組み込むことにより該遺伝子の発現産物と蛍光タンパク質との融合タンパク質を発現可能なベクター、を含む、蛍光タンパク質を融合したscFv抗体作製用キット。 - 前記scFv抗体遺伝子はVH遺伝子、VL遺伝子、リンカー配列、及びCL遺伝子から構成される、ことを特徴とする請求の範囲第19項に記載のキット。
- 前記ベクターは請求の範囲第13項乃至第16項のいずれかに記載される発現ベクターである、ことを特徴とする請求の範囲第17項乃至第20項のいずれかに記載のキット。
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