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JP4190005B2 - 結合性分子の選択方法 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、特定の結合活性を有する結合性分子の選択方法に関する。
背景技術
多くの結合性分子が、物質の検出や同定、あるいは精製のためのツールとして利用されている。また単に物質に結合するのみならず、物質の活性を制御する作用を有する結合性分子も公知である。たとえば、酵素蛋白質に結合して、その活性を上昇させたり、あるいは阻害する作用を有する抗体が知られている。このような抗体は、酵素蛋白質の機能解析などに用いることができる。またその酵素が疾患に関連している場合には、抗体によって疾患の治療効果を期待することもできる。
更に病原体や毒素などの病原因子に対する抗体は、その病原性を中和する作用を利用して疾病の治療に用いることができる。病原因子の病原性を中和する作用を有する抗体は、中和抗体と呼ばれている。ウイルス粒子の表面や、ウイルス感染細胞の表面抗原を認識して結合する抗体は、ウイルス性疾患の治療や感染予防に有用である。中和抗体は、さまざまな機序により中和作用を発現する。
中和とは、ある物質が感染力・毒性・酵素活性などの生物学的活性をもつ場合に、ある結合性分子がこの物質に結合することにより、その活性を消失あるいは弱めることをいう。このように、物質に結合してその活性を中和する結合性分子は、特に中和物質とも呼ばれる。
哺乳動物の免疫機構を利用して体内に中和物質を誘導する方法として、ワクチン療法を挙げることができる。ジェンナーの種痘法発見を端緒として、多くの感染源に対するワクチン療法が開発され、人類の福祉にこれまで大きく貢献した。ワクチンとは、病原性微生物や病原性の原因となる分子そのもの、あるいはその病原性を弱めたものであって、生体に投与することによって、中和抗体等を誘導しうるものを言う。病原性微生物には、ウイルスや細菌などを示すことができる。また病原性の原因となる分子には、病原菌が産生する毒素等が含まれる。ワクチンを、あらかじめ対象とする個体に注射し、免疫系に中和物質すなわち抗体を産生させる行為がワクチン療法の主な目的の一つである。
ワクチン療法は、生物が有する免疫機構の働きを利用している。免疫機構は、1度経験した感染源に対しては、2度目の感染時には非常に迅速に、かつ大規模に働く。すなわち中和物質が迅速にかつ大量に誘導される。その結果、感染が成立しなかったり、あるいは感染が生じたとしても症状が軽くなる効果を期待できる。この現象は細胞生物学的には、抗体のクラススイッチや突然変異による活性の上昇、感染源の抗原に特異的なメモリーB細胞あるいはT細胞の出現などで説明されている。
ワクチン療法の中でも、たとえばポリオウイルスや天然痘ウイルスに対するワクチン療法は、予防効果が高いとされている。これらのウイルスは変異の頻度が低いため、いったんワクチン療法を確立することができれば、ワクチン療法を施した個体は終生免疫を獲得する。その結果、ワクチン療法の効果を終生にわたって期待することができる。
一方、ワクチン療法が効果的であることは知られていながら、十分な予防効果を達成するのが難しいとされているウイルスも存在する。たとえばインフルエンザウイルスは、ウイルスの変異の頻度が高いため、ウイルスの流行に適合したワクチンを選択しなければ、十分な予防効果を達成できない可能性がある。
インフルエンザウイルスワクチンに関しては、ハイリスクグループにおける接種率が欧州各国の大半の50%以上に比較して、本邦では1%以下と非常に低い。ハイリスクグループとは老人や入院中の人など抵抗力が弱って感染が起りやすい状態にある人を指す。
当初日本では、インフルエンザを社会に拡大させる学童を重視し、学童中心にインフルエンザワクチンを接種していた。その後、接種群と非接種群で学童の欠席率に大きな違いがないというデータが提出され、ワクチンの有効性が疑問視されたという経緯がある。しかし、ハイリスクグループにおけるワクチンの効果(たとえば重篤化を防ぐ効果等)は明らかであり日本でもワクチン接種が見直されつつある。
しかしながら、ワクチンを接種した場合でも、免疫系はその働きを開始して抗体を産生するまでに2週間程度の時間を要する。抗体ができるまでの期間に重篤化してしまう場合にはこのワクチン療法は無効である。従ってワクチン療法はあくまで予防的な側面が大きい。
ワクチン療法が間に合わない場合に、血清療法が実施されてきた。血清療法においては、ウマなどの人間以外の動物に作らせた抗体(中和物質)が点滴等で患者に直接与えられる。たとえば、蛇毒に対する中和抗体の投与は、毒蛇による咬傷の治療方法として定着している。インフルエンザなどの病原性ウイルスに対しても、血清療法を適用することは可能である。実際、AIDSウイルス(HIV)やB型肝炎ウイルス(HBV)に対する血清療法は、感染後の治療方法の一つとして確立されている。しかし血清療法には、他の動物種の抗体を注入することで、その抗体そのものに対する免疫反応が起ってしまうという問題点がある。この現象は、血清病と呼ばれている。
血清病を防ぐために、現在では分子細胞生物学的な技術が応用されつつある。まず、基盤技術としてモノクローナル抗体の実用化があった。抗原物質で免疫した動物の脾臓には抗原と結合する抗体を産生するBリンパ球は多数存在する。一つのB細胞は、1種類の抗体分子のみを産生する。したがってB細胞をクローン化することができれば、必要な反応性を有する抗体分子を産生するB細胞を得ることができる。
しかしB細胞を試験管内で長期間維持培養し続けることは困難である。そこで永代培養が可能なように株化した腫瘍細胞と抗体産生細胞を融合することにより、抗体を産生し永代培養可能な細胞を作製するというアイデアが生まれ、方法として確立した。このようにして確立した融合株(ハイブリドーマ)は1個の抗体産生細胞と1個の腫瘍細胞に由来するので産生される抗体は1種類であり、モノクローナル抗体と呼ばれる。細胞融合法によるモノクローナル抗体の作成技術は、ケラーとミルスタインにより1975年に開発された。モノクローナル抗体は、均一な抗体分子の集合体であることから、交叉反応を生じにくい特異性に優れた抗体として利用されている。しかしこの方法にも次のような問題点が指摘されている。
(1)抗原物質として必要充分量の精製標品を有している必要があること
(2)その物質が免疫される動物に対して免疫原性を示す必要があること
(3)モノクローナル抗体を得るまでに多大な労力と日数を要すること
(4)ヒト抗体を細胞融合法によって得ることは現状では困難である
ヒトへの投与を可能とするために、モノクローナル抗体からキメラ抗体のアイデアが生まれた。キメラ抗体は動物由来の抗体のFc部分をヒトの抗体に変換したもので、これは抗体の遺伝子同士を結合させる手法で実現される。抗体分子の抗原性は主にFc部分に依存しているので、Fc部分をヒト抗体に由来する構造とすれば、ヒトにおける血清病の問題を避けられると考えられた。コンピュータを用いて抗体の立体構造を計算し、立体構造の変化による活性の変化を小さくする、キメラ抗体の設計技術も開発されている。
また、ヒトの抗体を産生するマウスが開発されている。このマウスにはヒトの抗体遺伝子が移植されていて、このマウスに免疫原を注射することにより、望みの活性をもつヒト型抗体が得られるという。
しかし、これらの方法によっては解決が困難な多くの課題が今なお存在することもことも事実である。たとえば、多種類の抗原に対する抗体を短期間に得ること、あるいは特殊な構造をしたエピトープに特異的に結合する抗体を選択的に得ること、といった要求には、これらの方法では応えることはできない。
実際にインフルエンザウイルスの場合では、ウイルスが頻繁に遺伝子変異を起こすことが知られており、中和抗体を分子生物学的に仮に作製したとしても、1種類の抗体では変異した部分を認識できず中和できない新たなウイルスが必ず出現して無力となる。このため、1年ごとに流行予測に合わせて何種類かの抗体の混合物を準備することが必要となるが、ヒト型抗体・キメラ抗体では、作製に数ヶ月から数年を要することになるので現実的には対応不可能と言ってよい。そこで、中和抗体の作製対象は、細胞表面のレセプターなど変異が少なく、また医薬品としての市場規模の大きいものに絞られているのが現状である。
発明の開示
本発明は、目的とする物質に対して結合活性を有する結合性分子を、容易に、かつ迅速に選択することができる方法の提供を課題とする。
本発明者らは、この課題に対してファージディスプレイ法を用いて、解決を図ることを模索してきた。ファージディスプレイ法を用いた方法では、短期間に多種類の抗原に対する抗体を得ることが可能である。
次に、開発したライブラリーの性能を最大限に引き出すためには一方でスクリーニング方法を工夫することが重要である。たとえば中和物質のスクリーニングは、以下の2段階で実施される。
1)物質と結合性分子との結合力を指標として第1回目のスクリーニングを実施する。
2)1)で結合活性を有するものについて、中和活性を試験する。
抗体ライブラリーの規模(種類)は、たとえば1011種類と天文学的な大きさを有する。1つ1つのクローンの中和活性を直接調べることは事実上不可能である。また、結合力の無いクローンは事実上中和活性も無いと見なしてよい。そこで、まずは結合力を指標とする第1回目のスクリーニングが有効である。
通常1回目のスクリーニングは、何らかの担体に中和の対象となる物質(被中和物質)を結合しておき、溶液中の中和物質のライブラリーを接触させる工程を含む。担体の形状は、ビーズ状や、試験管様の容器の内表面などのように任意である。
このとき被中和物質は高純度に精製されていることが必要である。なぜならば、不純物が多い場合には不純物の方が優先的に担体に結合してしまうために、スクリーニング以前に担体表面上の被中和物質の密度が低下して効率的なスクリーニングを妨げるからである。
また、担体表面に被中和物質を直接結合させると、担体表面における官能基の性質によっては、被中和物質の立体構造が変わったり、結合すべき部位(エピトープ)が構造的に隠されてしまう場合がある。
たとえばインフルエンザウイルスの場合では、インフルエンザウイルスに対する中和抗体のターゲットとしてはHA蛋白質が適当であることはこれまでに知られていた。しかし、蛋白質の豊富な鶏卵からウイルスを精製するため、不純物が混入しやすい。また、インフルエンザウイルス自体も、数種類の蛋白質からなっている。そのため何度も繰り返してカラムを通すなどの工夫をしても、HA蛋白質の高純度精製は困難である。特にインフルエンザウイルス遺伝子と結合しているNP蛋白質の混入が避けられない。ワクチンとしては、この純度でも十分である。しかし、NP蛋白質は非常に高い抗原性を持っており、ファージディスプレイ法によって選択される抗体の多くはNP蛋白質に対する結合親和性を有する。
ファージライブラリーからHA蛋白質に結合する抗体を選択するためには、NP蛋白質を含まないように高度に精製したHA蛋白質を用いる必要があった。しかしHA蛋白質を高度に精製することはコスト的にも高く、工程的にも煩雑となる。そこで、中和抗体を得るための簡便なスクリーニング方法が要求されていた。
本発明者らは、結合すべき物質を高度に精製することなく、結合性分子をスクリーニングすることができる方法を探索した。その結果、結合すべき物質に親和性リンカーを導入し、この親和性リンカーを利用して結合すべき物質を捕捉することによって、前記課題を達成できることを見出し本発明を完成した。すなわち本発明は、以下の結合性分子の選択方法、およびそのためのキット、あるいはその成果物に関する。
〔1〕次の工程を含む、特定の結合活性を有する結合性分子の選択方法。
a)目的とする結合対象物質に親和性リンカーを結合させる工程
b)結合性分子を提示したrgdpライブラリーを結合対象物質と接触させ、結合性分子と結合対象物質との複合体を形成させる工程、および
c)親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナーを親和性リンカーと結合させて、b)で形成した複合体を回収する工程
〔2〕結合対象物質に特異的に親和性リンカーを結合させる工程を含む、〔1〕に記載の方法。
〔3〕結合対象物質と共存する可能性のある物質と、結合対象物質とを識別可能とするマーカーを結合対象物質が有しており、当該マーカーに親和性リンカーを導入する〔1〕に記載の方法。
〔4〕識別可能なマーカーが糖鎖であり、該糖鎖に親和性リンカーを結合させる工程を含む、〔3〕に記載の方法。
〔5〕結合対象物質が、インフルエンザウイルスのHA蛋白質であり、HA蛋白質の糖鎖をマーカーとして親和性リンカーを結合させる工程を含む、〔4〕に記載の方法。
〔6〕親和性リンカーと結合パートナーの組み合せが、ビオチン−アビジンおよび/またはストレプトアビジン、レクチン−糖、プロテインAおよび/またはプロテインG−イムノグロブリン定常領域、およびTagペプチド配列−Tag抗体からなる群から選択されたいずれかの組み合せである〔1〕に記載の方法。
〔7〕結合性分子が抗体可変領域である〔1〕に記載の方法。
〔8〕可変領域を構成する軽鎖が、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子である〔7〕に記載の方法。
〔9〕rgdpライブラリーがファージライブラリーである〔1〕に記載の方法。
〔10〕次の工程を含む、特定の結合活性を有する結合性分子の選択方法。
d)〔1〕に記載の方法によって選択された結合性分子を提示した遺伝的表示パッケージを増幅する工程、
e)増幅した遺伝的表示パッケージを新たなrgdpライブラリーとして〔1〕に記載の方法を繰り返す工程
〔11〕〔1〕に記載の方法によって選択することができる結合性分子。
〔12〕次の工程を含む、中和活性を有する結合性分子の選択方法。
1)中和すべき物質を特定の物質として用い、〔1〕に記載の方法によって、中和すべき物質に対する結合活性を有する結合性分子を選択する工程、および 2)選択された結合性分子の中和活性を評価し、中和活性を有する結合性分子を選択する工程、
〔13〕〔12〕に記載の方法によって選択することができる中和活性を有する結合性分子。
〔14〕以下の工程を含む、中和抗体の製造方法。
1)結合性分子として抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーを用い、〔12〕に記載の方法によって中和活性を有する抗体可変領域を選択する工程、
2)工程1)で選択された抗体可変領域を提示した遺伝的表示パッケージが有する抗体可変領域をコードする遺伝子と、抗体定常領域をコードする遺伝子を融合させる工程、および
3)工程2)で得られた融合遺伝子を発現させて、中和活性を有する抗体分子を得る工程
〔15〕〔14〕に記載の方法によって得ることができる、中和活性を有する抗体分子。
〔16〕次の要素を含む、結合性分子の選択用キット。
A)結合対象物質のマーカーに親和性リンカーを結合させるための手段;ここでマーカーとは、目的とする結合対象物質と共存する可能性のある物質と、結合対象物質とを識別可能とする、結合対象物質が有するマーカーをいう
B)前記親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナー、および
C)結合性分子を提示したrgdpライブラリー
〔17〕結合性分子を提示したrgdpライブラリーが、抗体可変領域を提示したrgdpライブラリーである〔16〕に記載のキット。
〔18〕可変領域を構成する軽鎖が、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子である〔17〕に記載のキット。
あるいは本発明は、〔14〕に記載の方法によって得ることができる、中和活性を有する抗体分子を投与する工程を含む、中和すべき物質の活性を中和する方法に関する。
本発明において、結合性分子とは、他の物質に対して結合活性を有する物質をいう。結合性分子は、任意の物質からなることができ、その結合特性も制限されない。好ましくは結合性分子は、蛋白質からなり、通常は結合活性は特異的である。ここで特異的な結合活性とは、特定の構造を認識して結合することを言う。したがって、異なる分子であっても、部分的に同じ構造を有する物質に対しては、共通の結合性分子が結合する場合がある。
本発明においては、結合性分子に対して結合対象物質という用語を用いる。結合対象物質は、結合性分子の結合相手である。結合対象物質は、任意の物質であることができる。したがって本発明においては、結合親和性を有する異なる分子のペアを構成する各分子が、結合性分子と結合対象物質となる。ペアのうち、いずれかの分子が結合性分子となることができる。そして他方の分子が、結合対象物質である。
本発明における結合対象物質は、その物質に結合する結合性分子の取得を目的とする物質である。これに対して、結合性分子は、目的の物質(すなわち結合対象物質)に対する結合親和性を有する分子を意味する。
本発明において、結合性分子および結合対象物質となることができる異なる分子のペアは制限されない。具体的には、たとえば次のような物質の組み合せを示すことができる。
抗原−抗体
酵素−酵素阻害物質
生理活性物質−細胞表面受容体
シグナル伝達因子−シグナル伝達物質
更に本発明においては、中和物質という用語を用いる。結合性分子のうち、特に病原性因子の病原性を抑制する活性を有するものを、本発明においては特に中和物質と言う。本発明における病原性因子には、生物に対して何らかの影響を与える生物性の、あるいは非生物性の因子が含まれる。具体的には、たとえば、病原性の微生物、毒素、アレルゲン、あるいは内分泌かく乱物質等を、病原性因子として示すことができる。中和物質は、たとえばこれら病原性因子の細胞への結合阻害を通じて、中和作用を発現することができる。あるいは、中和物質が抗体である場合には、オプソニン効果等を通じて中和作用がもたらされる。
更に本発明は、親和性リンカーを用いる。親和性リンカーは、特定の物質に対する結合親和性を有し、かつ他の分子に親和性リンカーを導入することによって当該分子に結合親和性を付与することができる物質を言う。本発明の親和性リンカーは、結合対象物質に導入可能なものであれば、任意の化合物を用いることができる。好ましくは、結合対象物質に特異的に導入することができる化合物を用いる。特異的な導入とは、当該結合対象物質に共存する可能性のある物質には導入されず、目的とする結合対象物質に選択的に導入できることを言う。結合対象物質に選択的に導入しうる化合物として、結合対象物質が有する識別マーカーに導入することができる化合物を示すことができる。
識別マーカーとは、結合対象物質と共存化合物とを識別することができるマーカーを言う。識別マーカーは、たとえば結合対象物質のみが有する特異な構造であったり、あるいは特異的なアミノ酸配列であることができる。より具体的には、インフルエンザウイルスのHA蛋白質が有する糖鎖構造は、識別マーカーとして有用である。糖鎖には、ビオチン−LC−ヒドラジド等の親和性リンカーを化学的に導入することができる。このとき、HA蛋白質に共存する物質が糖鎖構造を持たなければ、結果としてHA蛋白質に選択的にビオチンを導入することができる。
また本発明の親和性リンカーには、ある程度の長さのアームを有する化合物を用いるのが望ましい。一定の長さのアームを有する親和性リンカーを利用することにより、結合対象物質を親和性リンカーを介して固相に捕捉したときに、結合対象物質と固相表面との距離を維持することができる。その結果、結合対象物質の立体構造が維持される。立体構造の維持は、結合対象物質の立体構造を認識する結合性分子の選択において、有利である。本発明において、親和性リンカーのアーム(腕)の望ましい長さはたとえば、9オングストローム(C−C結合の約6倍の長さ)以上、通常15−50オングストローム、あるいは20−30オングストロームを示すことができる。たとえば官能基とスペーサー分子(アーム部分)を付加したビオチンが市販されており、そのアームの長さは約9.6〜43.4オングストロームである。つまり、スペーサー分子を付加したビオチンは、分子の大きさの点でも、親和性リンカーとして望ましい特徴を備えていると言うことができる。
本発明において、親和性リンカーが結合親和性を有する物質を、結合パートナーと言う。本発明においては、前記結合性分子/結合対象物質という結合親和性物質のペアに加えて、ここに述べた親和性リンカー/結合パートナーという結合親和性物質のペアを利用する。これらの用語は、各物質の物質としての特徴を制限しない。しかし各物質が果たす役割によって明確に使い分けられる。本発明において、親和性リンカーおよび結合パートナーとなることができる異なる分子のペアは制限されない。具体的には、たとえば次のような物質の組み合せを示すことができる。
ビオチン−アビジンおよび/またはストレプトアビジン、
レクチン−糖、
プロテインAおよび/またはプロテインG−イムノグロブリン定常領域
Tagペプチド配列−Tag抗体
本発明において結合性分子は、ファージによって提示されたライブラリーとして存在する。このライブラリーから、目的とする結合対象物質に結合する活性を有する結合性分子を選択することが本発明の目的となる。最も一般的なファージライブラリーは、抗体の可変領域を提示した抗体ライブラリーである。抗体ライブラリーから、目的とする物質に結合活性を有する抗体を選択するには、目的とする物質を高度に精製しなければならないことは既に述べた。しかし高度に精製された物質を要求する限り、精製が困難な物質に対して結合性を有する結合性分子の選択は、物質の精製度に依存することになる。
本発明者らは、結合性物質に親和性リンカーを導入し、この親和性リンカーを利用して結合性物質に結合する結合性分子を選択すれば、結合対象物質の精製度に依存せず、結合性分子の選択を行えるのではないかと考えた。すなわち本発明は、以下の工程を含む結合性分子の選択方法に関する。
a)目的とする結合対象物質に親和性リンカーを結合させる工程
b)結合性分子を提示したファージライブラリーを結合対象物質と接触させ、結合性分子と結合対象物質との複合体を形成させる工程、および
c)親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナーを親和性リンカーと結合させて、b)で形成した複合体を回収する工程
本発明においては、親和性リンカーを結合した結合対象物質に、結合性分子を提示したファージライブラリーを接触させる。このとき、結合対象物質は、親和性リンカーを利用して固相に捕捉させておいても良い。あるいは、ファージライブラリーとの接触の後に、親和性リンカーを固相に捕捉することもできる。親和性リンカーを固相に捕捉するためには、通常、親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナーを結合した固相が用いられる。固相として磁性粒子を用いることにより、捕捉した成分を磁石を使って液相から容易に分離することができる。
あるいは[結合パートナー]−[親和性リンカー]−[結合対象物質]−[結合性分子]の4つの成分からなる複合体自身が沈殿として分離できる場合には、必ずしも固相は必要としない。たとえば結合対象物質の分子量が十分に大きい場合、また1分子の結合パートナーに複数分子の親和性リンカーが結合する場合、更には1分子の結合対象物質に、複数分子の結合性分子が結合するような場合には、複合体の分子量が大きくなり沈殿を生成する可能性が高い。
以上のようにして、固相への捕捉や、沈殿として回収された複合体に含まれる結合性分子を選択することにより、本発明に基づく結合性分子の選択方法が実施される。本発明の結合性分子の選択方法は、複数回繰り返すこともできる。すなわち、1回目の選択方法で回収される結合性分子を保持したファージを増幅し、更に同じ選択方法を繰り返すことができる。こうして、本発明の結合性分子の選択方法を繰り返すことにより、結合活性に優れる結合性分子を濃縮することができる。
あるいは、最初の選択工程にのみ本発明を利用し、次のサイクルからは精製度の低い結合対象物質を用いて、結合性分子の選択を行うこともできる。本発明によれば、1回の選択で、目的とする結合活性を有する結合性分子を濃縮することができる。この目的とする活性を有する結合性分子が濃縮されたライブラリーを用いれば、2回目以降の選択には、精製度の低い結合対象物質を用いたとしても、結合対象物質が含まれてさえいれば、目的とする結合性分子が濃縮される可能性が高い。また、本発明の選択方法と、精製度の低い結合対象物質を用いた選択方法を、適宜組み合せて、選択を重ねることもできる。
本発明の結合性分子の選択方法において、ファージライブラリーは、結合対象物質に対する結合活性が期待できる分子種であれば、任意の結合性分子を提示したファージライブラリーを用いることができる。ファージライブラリーに提示される結合性分子としては、抗体可変領域、細胞表面受容体、あるいはランダムペプチド配列等が挙げられる。本発明において、特に望ましい結合性分子は抗体可変領域である。中でも、可変領域を構成する軽鎖が、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子を有するファージライブラリーは、本発明における理想的なファージライブラリーである。
本発明者らは、公知の抗体レパートリーから必要な抗体をスクリーニングすることを妨げている要因について研究を重ねた。本発明者らは、抗体活性の維持に果たす軽鎖の役割に着目した。そして、まず、抗体分子に機能的なコンフォーメーションを与えることができる軽鎖をスクリーニングする方法を確立した。
更に本発明者らは、こうして選択された軽鎖可変領域遺伝子の構造を丹念に解析することによって、限られた構造の軽鎖可変領域遺伝子のみを利用することによって、機能的なコンフォーメーションを維持した抗体分子を高い割合で含む抗体ライブラリーの構築が可能となることを見出した。
本発明者らの知見によれば、重鎖と機能的なコンフォーメーションを再構成しうる軽鎖の構造は、現実には限られた範囲に収束する。この知見に基づいて、本発明者らは、機能的な抗体分子を構成する軽鎖の構造が、一定のレパートリーに集約されることを明らかにし、これをライブラリーの調製に応用した。
機能的なコンフォーメーションを再構成できる軽鎖の選択と、この軽鎖を用いた抗体可変領域を提示するファージライブラリーの構築方法を以下に示す。このようなファージライブラリーは公知である(第23回日本分子生物学会プログラム・講演要旨集3PB−175「人工抗体ライブラリーからの水痘・帯状疱疹ウイルス中和抗体の単離」,2000年11月25日発行)
本発明において、イムノグロブリンとは、動物種やクラスを問わず、重鎖と軽鎖とで構成される全てのイムノグロブリン分子を意味する。また、抗原との結合が可能な領域のみからなる断片や、あるいはイムノグロブリンを構成する領域が異なる動物種からなるキメラ抗体であることもできる。哺乳動物の重鎖可変領域をコードする遺伝子は、一般に遺伝子の構造的な特徴に基づいていくつかのVHファミリーに分類されている。たとえば、ヒトではVH1〜VH7の7つのファミリーに分類されている。各ファミリーは、ファミリー内で保存性の高い塩基配列を含み、この保存性の高さを利用して各ファミリー用のPCRプライマーが提案されている。軽鎖可変領域も、重鎖と同様に構造的な特徴に基づいてファミリーに分類することができる。
重鎖可変領域をコードする遺伝子は、V(Variable)、D(Diversity)、およびJ(Junction)の3つの遺伝子群から構成される。V、D、そしてJの各遺伝子群が、それぞれ複数の遺伝子からなっており、それらがランダムに組み合わさり、更に変異が加わることによって抗体の多様性が生まれる。これに対して、軽鎖可変領域を構成しているのは、V、およびJの2つの遺伝子群である。軽鎖可変領域においても重鎖可変領域と同様に、複数の遺伝子群の組み合わせと変異によって多様性がもたらされている。
本明細書では、用語「ライブラリー」を用いる。ライブラリーは、多様なレパートリーからなる構成要素を含む集合体を意味する。遺伝子は遺伝子ライブラリーを、抗体分子は抗体ライブラリーを、あるいはファージやファージミドはファージライブラリーをそれぞれ構成する。ファージが内部に保持した抗体遺伝子を表面に発現している場合には、遺伝子ライブラリーであると同時に抗体ライブラリーでもある。
更に本明細書においては、用語「rgdpライブラリー」(replicable genetic display package library;複製可能な遺伝的表示パッケージのライブラリー)を用いる。rgdpライブラリーとは、すなわち、遺伝子を保持するとともに、その遺伝子の発現生成物を表面に提示したもので構成されるライブラリーを呼ぶ。前記ファージライブラリーが、抗体タンパク質を表面に発現している場合には、rgdpライブラリーに含まれる。rgdpライブラリーには、ファージライブラリーのほか、外来タンパク質をその表面に発現している形質転換細胞やリボゾームからなるライブラリーを示すことができる。
また本発明においては、用語「コンフォーメーション(conformation)」を用いる。イムノグロブリンが、重鎖と軽鎖の会合(holding)によって構成されることは既に述べた。この会合の結果として生じる重鎖と軽鎖の結合物の構造が、コンフォーメーションである。コンフォーメーションは、一般的に定常領域における−SS−結合によって成立する。このとき、常に抗原との結合活性を獲得するとは限らない。本発明において、あるイムノグロブリンが抗原との結合活性を持つとき、そのイムノグロブリンのコンフォーメーションが機能的(functional)であると言う。そして、ある軽鎖との組み合わせにおいて機能的なコンフォーメーションを与える重鎖が、他の軽鎖との組み合わせによっても機能的なコンフォーメーションを与えるとき、両者の結合を特に再構成(re−holding)と呼ぶ。
再構成を構成する他の軽鎖とは、いったん別々のクローンとして単離された同一の細胞に由来する軽鎖を含む。また、本発明におけるコンフォーメーションの再構成とは、あくまでもイムノグロブリンの抗原との結合に必要な領域における再構成を意味する。したがって、定常領域の有無に関わらず、可変領域における分子構造がイムノグロブリンとして再構成されていれば、機能的なコンフォーメーションを再構成したと見なす。更に、軽鎖や重鎖をコードする遺伝子への人為的な塩基配列やファージの構成タンパク質の融合などを伴う場合であっても、可変領域における再構成が達成されている限り、本発明においては機能的なコンフォーメーションを再構成したと見なす。より具体的には、本発明における分子構造の再構成とは、たとえば重鎖可変領域と軽鎖可変領域とが異なるタンパク質として翻訳された場合には、定常領域において形成される−SS−結合によって重鎖可変領域と軽鎖可変領域とがイムノグロブリンの可変領域を構成することと言い換えることができる。
ところでsingle chain Fv抗体(scFv)のように、人工的なリンカーによって重鎖と軽鎖がはじめから結合されている抗体分子も存在する。この種の特殊な抗体においては、コンフォーメーションは−SS−結合ではなく、ペプチド結合によって構成される場合がある。したがってscFv抗体においては、定常領域を介することなくコンフォーメーションが再構成される。
本発明に用いる抗体可変領域を提示したファージライブラリーは、まず機能的なイムノグロブリンを再構成することができる軽鎖をコードする遺伝子を選択し、次にこの軽鎖可変領域遺伝子に重鎖をコードする遺伝子のライブラリーを組み合わせることによって調製される。軽鎖可変領域遺伝子の選択は、以下の工程によって行うことができる。
a)軽鎖可変領域をコードする、1つまたは複数の遺伝子を取得する工程、
b)軽鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成することが確認されているイムノグロブリン重鎖可変領域をコードする遺伝子を取得する工程、
c)工程a)によって得られた軽鎖可変領域をコードする遺伝子の任意の1つを選択し、工程b)で取得した重鎖可変領域をコードする遺伝子とイムノグロブリンの機能的なコンフォーメーションを再構成が可能な条件下でタンパク質に翻訳する工程、
d)工程c)において翻訳されたタンパク質の抗原結合部位の形成を検出する工程、および
e)抗原結合部位の形成が検出されたタンパク質を構成する軽鎖可変領域をコードする遺伝子を選択する工程
本発明において、軽鎖可変領域あるいは重鎖可変領域とは、少なくとも抗原との結合に必要な領域を含む任意の領域とすることができる。言いかえれば、3つのCDRとそれを保持するフレーム(FR)で構成される領域を含む任意の領域を本発明の可変領域として用いることができる。したがって、たとえば定常領域をも含む断片であっても、抗原との結合に必要な領域を含んでおれば、本発明の可変領域として利用することができる。抗体の可変領域としてしばしば用いられる、FabやFab’は、もともとイムノグロブリンの酵素的な切断によって得られる断片に対して与えられた名称である。本発明においては、Fabを可変領域を特定するための用語として理解すべきではない。
前記の軽鎖可変領域遺伝子の選択方法において、対象となる軽鎖可変領域遺伝子は、任意の抗体産生細胞より得ることができる。抗体産生細胞としては、たとえば、末梢血リンパ球や脾細胞等を挙げることができる。軽鎖可変領域遺伝子の単離にはRT−PCRを利用するのが有利である。たとえばヒトの場合、VLJL遺伝子を増幅することができるプライマーが明らかにされている(特表平3−502801あるいは特表平4−500607。また、MRC社はホームページ[「V−base」:http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ok.htmlでプライマーを公開している)。したがって、これらのプライマーを用いてRT−PCRを行えば、工程a)に必要な軽鎖可変領域をコードする遺伝子を得ることができる。得られた遺伝子を工程c)に用いる。
次に工程b)において、軽鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成することが確認されているイムノグロブリン重鎖可変領域をコードする遺伝子を取得する。このとき取得する重鎖可変領域は、工程a)で得た軽鎖可変領域と同じ動物種に由来し、かつ軽鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成することができるものであれば、抗原結合特異性などは任意であって良い。このような重鎖可変領域をコードする遺伝子は、たとえば、抗体活性を持つことが明らかなイムノグロブリン分子をコードする遺伝子から得ることができる。工程b)の重鎖可変領域としては、κ鎖およびλ鎖との再構成が可能なものを用意するのが望ましい。このような重鎖可変領域としては、実際に軽鎖との会合効率を確認して、最も効率の高い重鎖可変領域を選ぶのが望ましい。たとえば、重鎖に対応する各種クローンについて、軽鎖との会合効率を検討したところ、次のような構造を持つVH3−4が最も会合の効率が高かったことから、VH3−4(配列番号:1)を選択した。VH3−4は、以下に示す構造を持っている。
Figure 0004190005
続いて工程c)において、工程a)によって得られた軽鎖可変領域をコードする遺伝子の任意の1つと工程b)で得た重鎖可変領域をコードする遺伝子とを、イムノグロブリンの機能的なコンフォーメーションを再構成が可能な条件下でタンパク質に翻訳する。工程b)では、機能的なコンフォーメーションを構成しうる重鎖可変領域をコードする遺伝子を選択しているので、工程c)においてはイムノグロブリン分子の可変領域としての構造を再構成しているものは、機能的なコンフォーメーションを再構成したと見なすことができる。なお、ここでいうイムノグロブリン分子とは、イムノグロブリンにおける抗原との結合に必須の部分を含む限り、あらゆる構成であることができる。したがって、定常領域の有無に関わらず、抗原結合部位を再構成しているものは、イムノグロブリン分子として再構成されたと見なすことができる。
工程c)におけるイムノグロブリンの再構成が可能な条件下とは、−SS−結合によって重鎖可変領域と軽鎖可変領域の会合(holding)が可能となる条件を意味する。より具体的には、たとえば前述のように大腸菌のペリプラズムなど生体内の還元環境でのFabタンパク質の発現は、イムノグロブリンの再構成が可能な条件と言える。抗体のコンフォメーション形成に必要な還元的微小環境としては、ヒトなどの哺乳動物細胞では小胞体などのオルガネラを挙げることもできる。更に、重鎖と軽鎖の可変領域が人工的なアミノ酸配列(リンカー)で結合されたscFvタイプの抗体であれば、イムノグロブリンとしての再構成に必ずしも還元的な環境を必要としない場合もある。
工程c)における軽鎖可変領域と重鎖可変領域の発現には、外来遺伝子を表面に発現するファージを用いるのが有利である。例えば繊維状ファージは、その表面にcp3やcp8などのファージの構成タンパク質との融合タンパク質として外来遺伝子にコードされるタンパク質を発現する。
さて、通常ファージライブラリーのスクリーニングは、ファージを粒子として回収するステップを含む。したがって、たとえば外来遺伝子をファージミドとして感染させた場合には、ヘルパーファージを感染させることによりファージ粒子として回収される。ところが本発明者らは、cp3との融合タンパク質としてFab遺伝子を挿入したファージミドを感染させた大腸菌をヘルパーファージを加えないで培養すると、その培養上清中に、Fabとcp3の融合タンパク質が分泌されることを見出した。ファージミドを感染させた大腸菌によって分泌されるFabとcp3の融合タンパク質は、20時間の培養後でさえ微量ではあったが、軽鎖を選択するには十分な量であった。したがって、軽鎖可変領域遺伝子の選択方法のための試料としては、ファージミドを感染させた宿主微生物の培養上清を利用することもできる。ヘルパーファージを感染させてファージ粒子として回収する工程を不要とするこの方法は、実験操作上、きわめて簡便である。
この方法に基づいてファージミドを感染させた宿主微生物の培養上清をスクリーニングのための試料とするためには、宿主微生物において動作可能なプロモーターと、シグナル配列とを備えたベクターを用いる。たとえば大腸菌を宿主とする場合には、シグナル配列としてpelB配列などを挿入した繊維状ファージ用のファージミドベクターを利用することができる。
もしも軽鎖可変領域が重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションを再構成しうるものであれば、イムノグロブリンの可変領域が形成される。この可変領域の形成を検出することによって、選択すべき軽鎖可変領域を知ることができる。可変領域の形成は例えば、イムノアッセイの原理を利用して検出することができる。すなわち、κ鎖(あるいはλ鎖)に対する抗体を固相化抗体としてコートしたプレートに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の発現生成物を含む試料を加えて、軽鎖可変領域をプレート上に捕捉する。もしも重鎖可変領域が軽鎖可変領域と会合していれば、重鎖可変領域は軽鎖可変領域とともにプレート上に捕捉されるはずである。次いで重鎖やFabに対する標識抗体を加えれば、両者が会合できたときに限り、標識抗体がプレート上に捕捉されることになる。適当な時間インキュベーションしてプレートを洗浄し、標識抗体を検出すれば、機能的なコンフォーメーションを構成する軽鎖可変領域を検出することができる。標識抗体と固相化抗体は、逆の組合せとすることもできる。あるいは、重鎖可変領域を予めビオチン化しておき、標識アビジンによって検出することもできる。前述のとおり、ここで検出に用いる試料は、ファージミドを感染させた大腸菌の培養上清を用いることができることを我々は見出している。
こうして重鎖可変領域との会合が確認された軽鎖可変領域を、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションが可能な軽鎖可変領域として選択することができる。軽鎖可変領域をコードする遺伝子がファージライブラリーとして保持されている場合には、ファージを回収することによって軽鎖可変領域の遺伝子を選択することができる。
以上に述べた過程を経て得られた軽鎖可変領域遺伝子は、重鎖可変領域との再構成が可能であるのみならず、スクリーニングに利用した発現系における発現が証明されたものとなる。たとえばファージによる発現を利用した場合には、大腸菌において十分な発現が見られるものが選択される。したがって、哺乳動物細胞では発現するものの、大腸菌では発現量が少なくなる遺伝子をこの段階で除くことができる。このような特徴は、本発明における軽鎖可変領域遺伝子の選択方法において期待することができる新規な利点である。これに対して従来の抗体ライブラリーの作製技術においては、軽鎖の選択工程を含まないため、発現レベルが不充分な軽鎖遺伝子の混入を防ぐことはできなかった。
選択された軽鎖可変領域をコードする遺伝子は、そのまま遺伝子ライブラリーの調製に用いることができる。しかしこの段階では、選択した軽鎖可変領域遺伝子の間に重複が存在している可能性がある。したがって、好ましくは軽鎖可変領域遺伝子の構造を解析し、重複を除いた上で、遺伝子ライブラリーの調製に用いる。遺伝子の重複は、たとえば次のような方法によって除くことができる。
まず前記工程d)の後に、あるいは先だって軽鎖可変領域遺伝子の塩基配列を決定し、その塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を推定する。推定されたアミノ酸配列を比較し、同じアミノ酸配列をコードする遺伝子は除く。この段階で更に、欠損(deletion)のチェックも行うのが望ましい。このため、塩基配列の決定を行って読みとり枠のずれているものを除いた。
なお、遺伝子の取捨選択は、実際には、類似の遺伝子をグルーピングし、各グループから代表的な配列を選択することになる。このとき、選択された遺伝子を偏りなくカバーできるように、そしてVL−JL結合点のズレに関しても天然に存在する抗体で見られる分布を損なわないように選択する。実際には、遺伝子のデータベースから実際の抗体で使用されている軽鎖可変領域遺伝子をリストアップし、結合点のズレに関して集計した結果を元に分布を決定した。
以上の結果を総合したところ、本発明者らの解析結果によれば、ヒトのイムノグロブリンの場合、このような選択方法に基づいて選択される代表的な軽鎖可変領域のレパートリーサイズは、κ鎖で101、並びにλ鎖でも99である。
つまり、ヒトの機能的なイムノグロブリンを代表しうる軽鎖可変領域のレパートリーサイズは、せいぜい200にすぎないことが明らかとなったのである。なお、本発明者らが明らかにしたおよそ100というレパートリーサイズを、限定的に解釈すべきではない。すなわち、本発明の選択方法に基づいて、たとえばヒトの軽鎖可変領域遺伝子を選択するときに選択すべき軽鎖可変領域遺伝子の数は、必ずしも100になるとは限らない。あくまでも、得られたアミノ酸配列に基づいて、ここに述べた選択方法を実施することによって選択された軽鎖の遺伝子を以降の工程に用いることが重要である。
更にスクリーニングによって得られたファージ抗体のVL遺伝子を分類した結果、VL遺伝子の使用は特定の遺伝子に偏っていることがわかった。この結果から、イムノグロブリンのコンフォーメーションを再構成しうる軽鎖を多く含むセットを揃えることにより、機能的なイムノグロブリンの割合の高い良質なライブラリーを作製できることが示された。
ここで、生体内における抗体の多様性を維持するには、アミノ酸配列の解析の対象をできるだけ大きく取ることが望ましい。
1人のヒトの軽鎖を構成するゲノム遺伝子は、36種類のVl、7種類のJl、37種類のVk、そして4種類のJkで構成される。V遺伝子とJ遺伝子の組み合わせによって軽鎖遺伝子が作られるので、単純計算では36×7=252と37×4=148の和、つまり400種類となる。加えて、遺伝子の結合の際にその結合点のアミノ酸の数には、変異が伴う。つまり、前述のように抗体遺伝子の再構成に特有の現象により、平均±1アミノ酸程度(最大で±5アミノ酸程度)の多様性が生まれる。この組み合わせから更に不要な遺伝子は削除されて、個人の抗体遺伝子のレパートリーとなる。さらに、個人によって遺伝子は少しずつ異なっている(これを多型;polymorphismという)。全人類が持っている抗体遺伝子の種類を調べ尽くすことは現実的ではないが、総計して1000種類程度であると推定される。これらのことから、1人のヒトがあらゆる抗原に対応する抗体のセットを作ることができるとすれば、理論的には好ましくは400種類以上1000種類程度までのアミノ酸配列について本発明による解析方法を実施することによって、軽鎖可変領域遺伝子のレパートリーを十分に再現することができることになる。
本発明者らがヒトにおいて明らかにしたこのような軽鎖のレパートリーサイズ(200種類)は、約1000種類のアミノ酸配列の解析の結果得られた数字である。したがって、理論的には、あらゆる抗体セットにおいて機能的なコンフォーメーションを再構成することができる軽鎖可変領域が選択されていると言うことができる。実験的にも、本発明による200種類と言う軽鎖可変領域遺伝子のレパートリーサイズは、生体内における抗体の多様性をin vitroで再現するのに十分有効であることを示すことができた。しかし、より多くの塩基配列を決定し、そのアミノ酸配列についても解析を行えば、レパートリーサイズが大きくなる可能性は否定できない。
そこで、本発明によって選択された軽鎖可変領域ライブラリーのレパートリーサイズを、軽鎖遺伝子ライブラリーとの混合によって補うことができる。すなわち、軽鎖可変領域についても重鎖と同じく選択をかけない全ての軽鎖遺伝子(VLライブラリーと呼ぶ)を用いてライブラリーを作製するのである。こうして作製したVLライブラリーを200種の軽鎖可変領域のみを用いたライブラリー(KL200ライブラリーと呼ぶ)と混合することによって、相補的に欠点を補うライブラリーとすることができる。各ライブラリーは以下に述べる特徴を持つ。
KL200ライブラリーは、重鎖とのコンフォメーション形成が確認されている。ただし数を限定したために、特定の特異性を持つクローンを形成するのに必要な軽鎖が除外されている可能性も否定できない。
VLライブラリーは、独立クローン数が10に達しているため必要なクローンはもらしていない。しかし発現と重鎖とのコンフォメーション形成率はKL200ライブラリーに比較して低い。
なお、本発明において、アミノ酸配列の解析結果に基づいて分類した各グループから、いずれの遺伝子を選択するかは本来任意である。したがって、重鎖との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖をコードする遺伝子の構造をここに明らかにすることには大きな意味はない。重要なのは、このような選択方法によって、重鎖とともに機能的なコンフォーメーションを再構成することができる軽鎖の選択工程を実施することである。いずれにせよ、このような操作を通じて、ヒトであれば、101種類のκ鎖遺伝子ライブラリーと、99種類のλ鎖遺伝子ライブラリーからなる軽鎖可変領域遺伝子ライブラリーが得られることになる。
さて、本発明において選択された軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリーは、後に述べるように重鎖可変領域をコードする遺伝子を組み合わせることによってイムノグロブリンの遺伝子ライブラリーを与える。したがって、本発明によって選択された軽鎖可変領域の遺伝子ライブラリーは、イムノグロブリンの遺伝子ライブラリー調製用のライブラリーとして有用である。すなわち本発明は、少なくともイムノグロブリンの軽鎖可変領域をコードする遺伝子からなる遺伝子ライブラリーであって、イムノグロブリンの重鎖と機能的なコンフォーメーションを再構成できない軽鎖可変領域をコードする遺伝子が実質的に排除されている遺伝子ライブラリーに関する。
本発明において、イムノグロブリンの重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成できない軽鎖可変領域をコードする遺伝子とは、先に述べた軽鎖可変領域の選択方法によって排除することができる。重鎖可変領域と機能的なコンフォーメーションを再構成できない軽鎖可変領域をコードする遺伝子を、本発明においてはdefective遺伝子と呼ぶ。本発明においてdefective遺伝子が実質的に排除されたライブラリーとは、defective遺伝子の完全な排除までも要求するものではない。たとえばdefective遺伝子が混入したライブラリーであっても、免疫学的な反応に基づく抗体のスクリーニングを妨げない範囲であれば、defective遺伝子が実質的に排除されたライブラリーと言うことができる。
抗体のスクリーニングを妨げない範囲とは、ライブラリーに占めるdefective遺伝子の割合が、たとえば0−50%、望ましくは0−25%であることを意味する。defective遺伝子の割合は低いほどスクリーニングの効率が高まり、有用なクローンをスクリーニングの過程で失う危険性が低くなることは言うまでも無い。しかし発明者らが試作したライブラリーにおいて、defectiveな遺伝子を50%含むと考えられるVLライブラリーをdefectiveな遺伝子を完璧に排除したKL200ライブラリーに様々な割合で混合したところ、50%までの混合では有効なスクリーニングができることを確認している。この事実により、defectiveな遺伝子の割合がより好ましくは25%以下であれば、defective遺伝子が実質的に排除されていると言うことができる。
前記の軽鎖のみからなるライブラリーは、重鎖の可変領域をコードする遺伝子ライブラリーを組み合わせるための材料として有用である。このようなライブラリーとしては、たとえばファージのcp3をコードする遺伝子にdefective遺伝子が実質的に排除された軽鎖ライブラリーを組み込むとともに、重鎖の可変領域を挿入するためのクローニングサイトを設けたファージライブラリーを挙げることができる。一般にファージライブラリーは、ファージの宿主微生物に対する感染性を損なうことがないように、ファージミド上に外来遺伝子を保持させ、これをヘルパーファージを用いてファージ化する方法が用いられる。本発明のファージライブラリーも、ファージミド上に構築することができる。すなわち、宿主において機能するプロモーターの制御下に、シグナル配列と連結した前記軽鎖可変領域をコードする遺伝子と、重鎖可変領域をコードする遺伝子のクローニングサイトを設ける。重鎖可変領域遺伝子のためのクローニングサイトは、目的とする遺伝子に見出される頻度の低い制限酵素とするのが有利である。本発明に用いるファージライブラリーは、ファージミドのみならずファージのゲノムを利用することもできる。クローニングサイトを付加したプライマーによって重鎖可変領域遺伝子をPCRによって合成し、ファージライブラリーに挿入すればイムノグロブリンの可変領域を発現するファージライブラリーを完成することができる。
あるいは、defective遺伝子が実質的に排除された軽鎖ライブラリーを大腸菌用の発現ベクターに組み込んで、大腸菌に形質転換することによって軽鎖可変領域ライブラリー分泌発現株とすることもできる。この大腸菌に、PCRによって得た重鎖可変領域を組み込んだファージを感染させれば、Fabをその表面に再構成したファージ粒子を得ることができる。重鎖可変領域遺伝子を様々な免疫履歴を持つ個体から選択することによって、目的とする抗体に合った抗体ライブラリーを得ることができる。
このような方法に基づいて、ファージライブラリー作成用キットを提供することができる。このキットは、defective遺伝子が実質的に排除された軽鎖ライブラリーと、重鎖可変領域遺伝子増幅用のプライマーとからなる。使用者は、重鎖可変領域遺伝子増幅用のプライマーを用いて、目的とする抗体に合った免疫履歴を持つ遺伝子ソースからPCR生成物を得ることができる。たとえば、がんの宿主からは、腫瘍関連抗原を認識する抗体ポピュレーションに富むライブラリーが期待できる。
こうして選択された軽鎖可変領域遺伝子を利用し、目的とするライブラリーを調製する。本発明に用いるライブラリーは、以下の工程を含む、イムノグロブリンの軽鎖可変領域遺伝子と重鎖可変領域遺伝子の組み合わせからなる遺伝子ライブラリーの調製方法により調製することができる。
a)軽鎖可変領域遺伝子として、重鎖可変領域遺伝子の発現産物との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子をコードするものを選択し、
b)工程a)によって得られる軽鎖可変領域遺伝子の集合である遺伝子のライブラリーを調製し、
c)工程b)のライブラリーに重鎖をコードする遺伝子のライブラリーを組み合わせる
工程a)の軽鎖の選択工程は、先に述べたとおりである。先に得られた軽鎖をコードする遺伝子を集めて、工程b)のライブラリーとすることができる。軽鎖可変領域遺伝子が繊維状ファージに保持されている場合には、このファージを増殖させ、回収してライブラリーとすることができる。次いで工程c)として、前記軽鎖の遺伝子ライブラリーに重鎖の遺伝子ライブラリーを組み合わせる。重鎖可変領域遺伝子を、末梢血リンパ球や脾細胞のような抗体産生細胞より取得する方法は公知である。たとえばヒトのイムノグロブリンは、VH1〜VH7の7つのVHファミリーからなる。
各ファミリーの遺伝子を増幅することができるプライマーは公知である(Campbell,M.J.,Zelenetz,A.D.,Levy,S.& Levy,R.(1992).Use of family−specific primers for PCR amplification of the human heavy chain variable gene repertoire.Mol.Immunol.,29,193−203.また、MRC社はホームページ「V−base」:http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ok.htmlでプライマーを公開している)。したがって、このようなプライマーに基づいてRT−PCRを行えば、各ファミリー毎に重鎖可変領域遺伝子を増幅することができる。
増幅生成物として得られた重鎖可変領域遺伝子は、適当なベクターに挿入することによって遺伝子ライブラリーとすることができる。このとき、VHファミリー毎に重鎖可変領域遺伝子ライブラリーを調製し、生体内における各ファミリーの構成割合に応じて混合することによって、本発明に用いる遺伝子ライブラリーをより生体内の抗体レパートリーに近い状態にすることができる。具体的には、たとえばヒトの場合、各ポピュレーションはおよそ次のような割合で存在することが明らかにされている。生体における抗体レパートリーを模倣することによって、スクリーニングを通じて必要なクローンを失う機会を少なくすることができる。
VH1:25%
VH2: 6.6%
VH3:40%
VH4:19%
VH5: 5%
VH6: 3.8%
VH7: 1.2%
以下に重鎖可変領域遺伝子の取得について、より具体的に述べる。7種のVHファミリー毎にプライマーを設定し、6個のJH遺伝子に共通に働くプライマーと組み合わせてRT−PCRを行う。ヒトの各VHファミリーをファミリーごとに幅広く増幅することができるプライマーは公知である(Marks JD et al.J.Mol.Biol.(1991)222,581−597あるいはCampbell,M.J.,Zelenetz,A.D.,Levy,S.& Levy,R.(1992).Use of family−specific primers for PCR amplification of the human heavy chain variable gene repertoire.Mol.Immunol.,29,193−203.また、MRC社はホームページ「V−base」:http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ok.htmlでプライマーを公開している)。用いたプライマーによって各ファミリーがきちんと増幅されているかどうかを確認する。すなわち、増幅されたVHDJH構造を有するバンドについて各ファミリー毎に数10種のクローンを得て塩基配列を決定し、どの重鎖可変領域遺伝子が増幅されているかを解析する。もしも増幅されていない遺伝子が存在する場合には更に新しくプライマーを設計し、追加する。たとえば、それまでに報告されているプライマーでは増幅することができなかった遺伝子の増幅を可能とする新たなプライマーが報告されている。
in frameでVHDJH構造を持つクローンについては、適当なベクターに組み込んで大腸菌中での発現と軽鎖可変領域遺伝子との会合−folding−を解析する。もしどこかの段階が正しく起こらないクローンが存在すればその理由を推定し、ライブラリー全体の中でそのクローンの占める率を推定する。
個体のイムノグロブリンのポピュレーションは、免疫履歴によって影響を受けている。したがって、なるべく多数の個体の免疫的経歴を反映できるように、多様なB細胞から重鎖可変領域遺伝子を調製するようにする。実際には、臍帯血、扁桃、末梢血、あるいは骨髄等、入手可能な重鎖可変領域遺伝子ソースの種類を増やす。
更に、免疫原(自己の抗原も含む)と一度も接触していないnaiveなB細胞集団からB細胞を調製することも重要である。なぜならば、自己の成分と反応するクローンは免疫系の成熟時に排除されるからである。自己抗原に対する抗体レパートリーをも含む遺伝子ライブラリーとするには、nativeなB細胞は重要である。そして混合に際してはリンパ球数とクローン数が比例するように心がける。最終的には10オーダー(10〜1010)の独立したVHDJHライブラリーを作製する。
このような操作は、次のような意義を持つ。抗体の抗原結合面を構成するアミノ酸配列は、軽鎖CDR1、CDR2、CDR3、重鎖CDR1、CDR2についてはゲノム上に存在する遺伝子によって規定されており(進化的な選別も含めて)、その多様性の総数は1万種程度である。その上に重鎖CDR3の極端に高い多様性が上積みされる。そこで抗体ライブラリーとしてはこの1万種の多様性はできる限り一様に偏り無い形で含んだ上で、重鎖CDR3(これは個々人、個々のB細胞でランダムなプロセスで作られている)についてはなるべく広範囲にライブラリー化される必要がある。上記の方法はこの要求を満たしている。
以上のような解析を通じて、本発明者らは、CDRの中にシステイン残基を含む場合には、VH遺伝子の発現が正しく起こらなかった等の知見を得た。また、作製した重鎖可変領域ライブラリーに関して、その70%以上が大腸菌中での発現と重鎖可変領域ドメインとの会合−folding−が正しく起きていることが確認できた。
あるいは免疫履歴を逆用し、重鎖可変領域遺伝子のソースを選択することによって、あるていどライブラリーを特徴付けることができる。たとえばある感染症の既往歴を持つ場合には、その病原体に対して親和性の高いイムノグロブリンを得られる可能性が高まる。あるいはがん患者の抗体産生細胞を重鎖可変領域遺伝子のソースとすることにより、腫瘍抗原を認識するイムノグロブリンを得ることもできる。
更に、VH遺伝子に対して人為的な変異を加えることによって、ライブラリーの多様性を高めることができる。人為的な変異を与える方法としては、error−prone PCR(Winter,G.et.al.,Annu.Rev.Immunol.,12,433−455,1994)が公知である。前記ライブラリーにおいては、軽鎖可変領域におけるdefective遺伝子が実質的に排除されているため、重鎖可変領域遺伝子の多様性は、そのままライブラリーの多様性として反映される。したがって、公知のerror−prone PCRを適用した場合であっても、はるかに高度な多様化を達成することができる。error−prone PCRは、以下のように行うことができる。
error−prone PCRは、無作為に点突然変異を導入する方法として用いられる手法である。具体的には、PCRに使用するDNAポリメラーゼの以下の生化学的性質を用いる。
(1)Taq DNA polymeraseは通常Mg2+イオン存在下で用いられるが、Mn2+イオンの存在下では塩基の取り込みに誤りを起こしやすくなる。
(2)PCR反応時に塩基の供給源としてdATP,dCTP,dTTP,dGTPを通常は等量で混合するが、この濃度を突然変異を起こしやすいように変更する。
(3)上述の塩基の供給源としてdITPを混合する。dITPはTaq DNA polymeraseによってDNA鎖にとりこまれると塩基イノシンを形成する。イノシンはどの塩基とも塩基対を形成しないので、PCR反応が進行するとイノシンに相補的な塩基の部分には無作為の塩基が挿入される。
以上のような3つの条件の相乗的効果により、突然変異が無作為に導入される。具体的には、たとえば7.5mM MgCl、0.5mM MnCl、0.2mM dATP/dGTP、1.0mM dCTP/dTTP、0.1−1.0mM dITPのような条件で反応を行う。実際には、実験の目的に合わせて更に濃度条件などを調整する。温度などの反応条件は通常のPCRと同様に設定する。
上記の遺伝子ライブラリーの調製には、公知のベクターを用いることができる。本発明に用いることができるベクターとしては、たとえば先に調製した軽鎖可変領域遺伝子ライブラリーを保持したファージライブラリーを示すことができる。すなわち、ファージミドが保持している軽鎖可変領域遺伝子の上流に重鎖可変領域遺伝子を挿入するのである(Gene 194(1997)35−46 Iba Y et al)。重鎖可変領域と軽鎖可変領域を同時に表面に発現するファージライブラリーを用いれば、本発明の選択方法に利用可能なライブラリーとすることができる。すなわち、前記遺伝子ライブラリーをファージライブラリーとして構成することによって、rgdpライブラリーとすることができる。遺伝子ライブラリーは、ファージのみならず、リボゾームや大腸菌鞭毛タンパク質の融合タンパク質として外来遺伝子を発現するシステムを用いることによってrgdpライブラリーとすることができる。
代表的なrgdpライブラリーとして、ファージライブラリーが挙げられる。上記の抗体ライブラリーに基づくファージライブラリーは、次のようにして得ることができる。ファージ表面に外来タンパク質を発現させるには、一般にファージミドとヘルパーファージが用いられる。例えば、pTZ19R(ファルマシア製)などのファージミドベクターが市販されている。ファージミドには、cp3やcp8等のファージの構成タンパク質をコードする遺伝子に、発現させたい外来タンパク質をコードする遺伝子を連結する。
ファージミドは、大腸菌などの宿主に感染させることによって増幅できる。しかしこの状態ではファージ粒子として回収することはできない。いわば、一般の遺伝子ライブラリーと同じ状態にある。ファージミドが保持する外来タンパク質を表面に提示したファージ粒子とするには、ファージミドを感染させた宿主にヘルパーファージを重感染させる。たとえばファージミドベクターpTZ19Rは、ヘルパーファージM13K07の重感染によってファージ粒子として回収することができる。このとき利用されるファージミドのcp3タンパク質が外来タンパク質と融合されていれば、完成するファージの表面には外来タンパク質が提示されることになる。
市販のファージミドに抗体の遺伝子のクローニングに好適な制限酵素サイトを導入しておけば、本発明による軽鎖可変領域遺伝子ライブラリーを重鎖可変領域遺伝子ライブラリーとともに組み込むことができる。ファージミドベクターpTZ19Rに適当な制限酵素サイトを導入し、PCRで増幅した抗体遺伝子ライブラリーを組み込む方法が公知である(Gene 194,35−46,1997)。以下に述べる実施例においては、ファージミドベクターのシグナル配列PelBの下流にSfiIサイトとAscIサイトを導入した。一方、軽鎖可変領域遺伝子の増幅には、同じサイトを導入したプライマーを用いる。PCRの増幅生成物を当該制限酵素で消化してこのサイトに組み込むことにより、PelBの下流に抗体可変領域遺伝子が挿入され、更にその下流に位置するcp3との融合タンパク質をコードするファージミドベクター(図1のpFCAH9−E8d)とすることができる。
あるいは、重鎖可変領域遺伝子を細菌宿主発現用のベクターに挿入することもできる。この場合には、ベクターを細菌に形質転換することによって重鎖可変領域遺伝子を発現させる。得られた形質転換細胞に、更に軽鎖可変領域遺伝子を保持したファージライブラリーを感染させることにより、結果的に本発明のための遺伝子ライブラリーが完成する。大腸菌の形質転換用ベクターとしては、pFK等を示すことができる。なお細菌に形質転換するには、重鎖可変領域遺伝子を適当な分泌シグナルの下流に連結することによって、重鎖可変領域タンパク質をペリプラズムに分泌させることができる。pFKは、分泌シグナルとしてpelBを備えたベクターである。
本発明によって選択された結合性分子は、結合対象物質に対する結合活性に優れる。したがって本発明によって選択される結合性分子のうち、病原因子を結合対象物質として選択された結合性分子には、中和活性を期待することができる。つまり、本発明によって選択された結合性分子の中和活性を確認すれば、中和物質を選択することができる。すなわち本発明は、以下の工程を含む中和物質の選択方法に関する。
1)中和すべき物質を特定の物質として用い、本発明の方法によって、中和すべき物質に対する結合活性を有する結合性分子を選択する工程、および
2)選択された結合性分子の中和活性を評価し、中和活性を有する結合性分子を選択する工程、
本発明において、結合性分子の中和活性を評価し、中和活性を有する結合性分子を選択する工程は、病原性因子に対する結合性分子の中和活性の評価に基づいて行われる。病原性因子の中和活性の評価方法は公知である。たとえばウイルスや毒素の場合、結合性分子を添加しない対照と比較して、培養細胞に対するウイルスや毒素の影響を結合性分子の添加によって抑制することができれば、その結合性分子が中和活性を有することがわかる。評価の結果、中和活性を有すると判断された結合性分子は、中和物質として有用である。
本発明によって選択された中和活性を有する結合性分子は、そのまま、あるいはより安全な投与形態に改変して、病原性因子の中和に利用することができる。たとえば抗体可変領域であれば、選択されたファージクローンが保持した可変領域をコードする遺伝子を回収し、Fab、あるいはキメラ抗体として発現可能なベクターに組み込む。中和抗体としての作用を期待する場合には、Fc部分を備えたキメラ抗体とするのが望ましい。あるいは、当該可変領域を構成するCDRを、ヒトイムノグロブリンのCDR領域に組み込んでヒト化抗体とする技術も公知である。いずれにせよ、Fc部分を備える完全なイムノグロブリン分子とすることで、正常なイムノグロブリンが生体内において有している異物除去機能を模倣させることができる。
イムノグロブリンは、公知の方法によって生体に投与することができる。より具体的には、静注などによって血中に投与することにより、その中和作用を生体に導入することができる。イムノグロブリン製剤の投与量は、投与対象者の性別、体格、症状、年齢などの条件を考慮して、当業者が適切な量を選択することができる。具体的には、体重1kg当たり、たとえば2〜400mg/回、通常3〜200mg/回が投与される。
本発明に基づく、中和活性を有する結合性分子の選択方法は、あらゆる病原性因子に対して応用することができる。本発明によって中和活性を有する結合性分子を選択することができる病原因子として、たとえば以下の病原性因子を示すことができる。これらの病原性因子を結合対象物質として利用することにより、本発明に基づいて中和活性を有する結合性分子を選択することができる。
ウイルス:
インフルエンザウイルス
水痘ウイルス
HIV(AIDS)
HCV(C型肝炎)
HBV(B型肝炎)
麻疹ウイルス
病原細菌:
病原性大腸菌
黄色ブドウ球菌
腸球菌
病原毒素:
ベロ毒素
ハブ毒素
以下に、結合対象物質としてインフルエンザウイルスの赤血球凝集素(HA蛋白質)を例に、本発明に基づく結合性分子、並びに中和物質の選択方法の原理を説明する。HA蛋白質は赤血球を凝集する機能を有する蛋白質(ヘマグルチニン;HA)で、ノイラミニダーゼ(NA)と共にインフルエンザウイルス粒子の表面に存在する外殻スパイク蛋白質である。現在、インフルエンザウイルスの感染予防方法としては、不活化インフルエンザワクチンの接種が最も一般的である。一般にインフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを鶏卵に接種し、その漿尿液中に蓄積するウイルス粒子を原料として製造される。漿尿液から回収し、濃縮したウイルス粒子をホリマリン等で不活化したウイルス全粒子ワクチンや、ウイルス粒子を分解したHA蛋白質画分を利用したHAサブユニットワクチン等が製造されている。
A型には15種類のHA亜型(H1〜H15)があるが、HA蛋白質は変異を起こしやすく、同一亜型内であっても多少の変異が見られる。このような変異は、抗原ドリフトと呼ばれている。インフルエンザワクチンが最も有効に機能するためには、ワクチンとして用いたウイルスのHA蛋白質の抗原性が流行ウイルスの抗原性と一致することが重要である。つまり、HA蛋白質の抗原性に応じた中和抗体の存在が、インフルエンザウイルスの感染予防には重要である。
発明者らは、細胞あるいはウイルスなどの外表面に存在している糖鎖に注目した。哺乳動物細胞では、蛋白質合成後ゴルジ体という細胞内小器官において、蛋白質に糖鎖が付加される。糖鎖は一定のアミノ酸配列に対して付加される。例えば、アスパラギンに対する糖鎖付加であれば、[Asn−X−Ser/Thr]というモチーフのAsnに糖鎖が付加される。
この糖鎖の付加は蛋白質を細胞表面へ送るシグナルとなっている。したがって細胞表面の蛋白質は糖鎖が付加されているものが多い。ウイルスもそのシステムを利用し、糖鎖の付加した外被蛋白質を宿主細胞表面に送り、発芽して成熟ウイルスを形成する。従って、ウイルス表面も糖鎖の付加した蛋白質が数多く見られることとなる。
インフルエンザウイルスの粗精製物に関しては、表面蛋白質であるHA蛋白質が糖鎖の修飾を受けている。また、粗精製HA蛋白質中の、HA蛋白質以外の主要な蛋白質成分であるNPに関しては、糖鎖は付加されていない。本発明者らは、粗精製HAタンパク質の糖鎖にビオチンを化学的に結合したのち、ファージ抗体ライブラリーと反応させ、ビオチン化HAタンパク質と結合した抗体をストレプトアビジンマグネットビーズを用いてストレプトアビジンマグネットビーズ−ビオチン化HAタンパク質−抗体という複合体の形で回収した。このとき、糖鎖がついていないNPはビオチンが結合していないので、ストレプトアビジンマグネットビーズに吸着されないため、NPに結合していた抗体は回収されない。
このようにして、粗精製HAタンパク質中に多量に混入しているNPに反応する抗体を有効に除くことができた。あるいは、この操作だけでHAタンパク質と結合する抗体が得られることも考えられる。
また、HAの場合、糖鎖の修飾は活性に関係のない部分にも生じており、HAは活性に係わらない部分を介してビオチンというスペーサー(間隔)で担体に結合することとなる。このため、HA蛋白質は立体構造が担体による影響を受けること無く保持されスクリーニングに好適な環境となる。
本発明の方法は、インフルエンザウイルス以外にも適用することができる。たとえば次のような病原ウイルスの糖蛋白質は、それぞれ感染において重要な役割を果たしている。つまりいずれの蛋白質抗原も中和抗体の標的とすべき蛋白質である。したがって、上記の方法を応用して本発明に基づく中和抗体の選択と製造が可能である。
−HIVのgp120(HIV/エイズウイルス)
−HTLV−1のgp46(成人T細胞性白血病ウイルス)
−HBVのHBs蛋白質(B型肝炎ウイルス)
−HCVのE1,E2(C型肝炎ウイルス)
また、哺乳動物細胞表面の蛋白質においても糖鎖を通じてビオチン化し、その後界面活性剤などを利用して溶解して、アビジンビーズもしくはストレプトアビジンビーズを用いて精製することによって、細胞膜表面の蛋白質のみを特異的にスクリーニングすることが可能である。あるいは糖鎖が付加されている毒素あるい蛋白質などの中和物質を得るためにも応用可能である。
糖鎖にビオチンを付加する具体的な方法としては、biotin−LC−hydrazide(ビオチン−LC−ヒドラジド)を用いることができる。この試薬は市販されており、またキットも市販されているので購入することにより実施可能である。
中和物質の標的となるのは、ほとんどといって良いほど、細胞表面の蛋白質である。細胞表面の物質を選択的にスクリーニングすることができる本発明はその意味でも有力な方法であると考えられる。
更に本発明は、本発明の結合性分子の選択方法に用いられる各要素を予め組み合せたキットを提供する。すなわち本発明は、次の要素を含む、結合性分子の選択用キットに関する。
A)結合対象物質のマーカーに親和性リンカーを結合させるための手段;ここでマーカーとは、目的とする結合対象物質を共存する可能性のある物質と識別可能なマーカーを言う
B)前記親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナー、および
C)結合性分子を提示したrgdpライブラリー
本発明のキットを構成する各要素としては、具体的には先に述べたとおりのものを用いることができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
1.インフルエンザワクチンのビオチン化
HA抗原90μg相当分(インフルエンザワクチン1999年1mL)を、0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)で4℃一晩透析し、0.2mLの20mM NaIO in 0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を添加し、暗所で30分攪拌して、糖鎖部分の酸化を行った。次に、1.5Mグリセロールin 0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)を10μL添加し、5分反応させ、酸化反応を停止させた。再度、0.1M酢酸ナトリウムバッファー(pH5.5)で4℃一晩透析し、50mM EZ−LinkTMBiotin−LC−Hydrazide(ピアス社製cat No.21340)を100μL添加し、室温で2時間攪拌させながら反応させたのち、PBSバッファーに対して4℃で一晩透析した。これらの操作により、糖蛋白質の糖鎖部分へ選択的にビオチンを結合することができる。これによって得られたビオチン化インフルエンザワクチンを以下のスクリーニングに使用した。
スクリーニングのために、以下2から4のようにして、軽鎖可変領域遺伝子として、重鎖可変領域遺伝子の発現産物との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子を含む抗体ファージライブラリーを調製した。この抗体ファージライブラリーは、生体内のイムノグロブリン遺伝子のポピュレーションを忠実に再現している。したがって、理論的には、生体において産生される可能性のあるあらゆる抗体を、このライブラリーから選択することができる。
2.ライブラリー作製用ファージミドベクターの作製
2−1 重鎖および軽鎖の組合せライブラリーを作製するためのベクターの作製。
図1に概念的に示すように、pTZ19Rファージミドベクター(ファルマシア)にM13ファージのpelB(シグナル配列)、His6タグ配列、M13ファージのcp3タンパク質(Δcp3(198aa−406aa)N端欠失キャプシドタンパク質3)配列、およびproteinAのアミノ酸配列をコードするDNAを適当な制限酵素部位で組み込みベクターpFCAH9−E8dを作成した(GENE 194(1997)35−46 Iba Y et al参照)。軽鎖λ5,λ6遺伝子に存在するBstPIでその遺伝子が切断されることを避けるためにpFCAH9−E8dはXhoI部位が設けられている。pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を図2に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図3〜図5に示した。
このベクターの所定の位置に重鎖と軽鎖の遺伝子を挿入することにより、実際の抗体タンパク質発現ベクターが完成することとなる。完成したベクターによって発現される抗体の形状はFab型であり、重鎖軽鎖はN末の可変領域に続いて定常領域CH1,CLをそれぞれ有している。定常領域同士の−SS−結合によって、重鎖と軽鎖は結合されることになる。軽鎖定常領域CL遺伝子は前述のcp3遺伝子と結合されており、結果として発現タンパク質はFab−cp3の形状となる。
具体的には、以下のような操作を行った。
用いたプライマー:
Figure 0004190005
Figure 0004190005
Figure 0004190005
pFCAH3−E8T 重鎖部分の作製
1)pAALFabを鋳型にして527−599を用いたPCR,547−590を用いたPCRを行いDNA断片を作製した。
2)544−545,546−547,548−549にてPCRを行いDNA断片を作製した
3)1)2)を混合し527,590によるPCRを行い、これをpAALFabのHindIII−SmaI siteにクローニングした
pFCAH3−E8T軽鎖部分
4)542−562,561−613を用いたPCRを行いDNA断片を作製した
5)538−539,542−543にてPCRを行いDNA断片を作製した
6)4)5)を混合し538,562によるPCRを行い、これをpAALFabのSacI−NheI siteにクローニングした
pFCAH9−E8d
6)VH stuffer部分の作製
pFCAH3−E8TをXbaI,EcoRIにて消化、klenow fragmentを作用させて平滑末端に変えた後self ligationさせてVH部分のstufferを作製した。
7)VH stuffer部分の作製
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−600にてPCR。6)のHindIII−XhoI siteにクローニングした。
8)これをKpnIにて消化、self ligationさせてVL部分のstufferを作製
9)SfiI,NcoI,SpeI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−663にてPCR。1)のHindIII−SacI siteにクローニングした。
10)AscI siteの導入
pFCAH3−E8Tを鋳型にして527−LCP3ASCにてPCRし、それをSacI完全消化、SalI部分消化した2)にクローニングした。
11)gammaCH1部分をヒト遺伝子に変換
ヒトgammaCH1部分にはBstPI siteが存在するためこれをなくす設計でクローニングを行った。扁桃cDNAを鋳型にしてhCH1Bst−hCH1midS,hCH1midAS−hCH1H6にてPCRしたのち、これを混合してhCH1Bst−hCH16SmaにてPCRし、そのDNA断片を3)のBstPI−Sma siteにクローニングした。
12)Xho siteの導入
11)を鋳型に702−663にてPCRを行い、これを11)のBstPI−SacI siteにクローニングした。
2−2 重鎖可変領域を一時的にクローニングするためのベクターの作製
公知の手法(GENE 194(1997)35−46 Iba Y et al参照)に従って、まずpAALFabベクター(図1)を作製した。pAALFabベクターのXbaIからEcoRIの間を欠落させ、新たに制限酵素切断部位Kpn I,Sfi I,Nco I,Spe Iを付加して、pFCAH3−E8Tを経て、VH(重鎖可変領域)をクローニング可能としたベクターpscFvCA−E8VHd(図1)を作製し、重鎖可変領域を一時的にクローニングするためのベクターとした。pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を図6に、制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を図7〜図8に示した。
具体的には
Figure 0004190005
primer610とprimer611をアニールさせ、それをpFCAH3−E8TのBstPI−SacI siteにクローニングしてsingle chainの作製を行なった。さらに、primer527とprimer619にてPCRを行い、これをさらにHindIII−PstI siteにクローニングし、SfiI,NcoI siteへ導入した。
3.イムノグロブリン軽鎖ライブラリーの作製
3−1 PCRを用いたイムノグロブリン軽鎖遺伝子の単離
骨髄細胞(検体No.59)4×10cells、および臍帯血と末梢血のリンパ球から、市販のキット(Pharmacia Biotech社製 QuickPrep Micro mRNA Purification Kit)を用いて、2.6μgのmRNAを得た。このmRNAからcDNAを作製した。cDNAは、GibcoBRL社製SuperScript Preamplification Systemによって作製した。プライマーには、オリゴdTを用いた。得られたcDNAを鋳型にして、軽鎖遺伝子の取得用5’プライマー(κ1〜κ6、λ1〜λ6)と3’プライマー(hCKASCプライマーまたはhCLASCプライマー)を用いて、PCRを行った。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μlのTEバッファーに懸濁した。用いたプライマーの塩基配列とPCRの条件は以下のとおりである。軽鎖遺伝子取得用プライマーの塩基配列中、下線部はSfiIサイト、AscIサイトを示す。
5’−プライマーκ1〜κ6
Figure 0004190005
Figure 0004190005
5’−プライマーλ1〜λ6
Figure 0004190005
Figure 0004190005
PCRの条件
Figure 0004190005
3−2 ライブラリー作製に適した軽鎖を選択して軽鎖遺伝子ライブラリーを作製する方法
3−2−1 軽鎖遺伝子のファージミドへの組込み
1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
37℃で1時間、50℃で1時間反応後、そのうち10μl分をアガロース電気泳動し、600bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpFCAH9−E8d(図2)をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
Figure 0004190005
3−2−2 ファージミドの大腸菌への導入
得られたligated DNAを用いて以下のように大腸菌DH12Sを形質転換した。即ち、ligated DNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μlに溶解した。そのうち、1.5μlをコンピテントセルDH12S(GIBCOBRL製)20μlに懸濁し、以下の条件でエレクトロポレーションを行った。
エレクトロポレーター
Figure 0004190005
Figure 0004190005
3−2−3 ファージミドで形質転換した大腸菌からのFab−cp3型抗体培地中への分泌
形質転換した上記の大腸菌を形質転換用培地(SOB)2mlに植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mlアンピシリン含有2×TY培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でincubateし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、軽鎖遺伝子の塩基配列を調べた。
SOB培地:950mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後250mMのKCl溶液10mLを加え、5N NaOHでpH7.0に調製した。精製水を加えて1000mLに調整した後、オートクレーブで20分間滅菌し、使用直前に滅菌した2MのMgClを5mL加えた。
Figure 0004190005
2×YT培地:900mLの精製水に次の成分を加えて振とうし、完全に溶解した後5NNaOHでpHを7.0に調製し、精製水を加えて1000mLとした。オートクレーブで20分間滅菌して使用した。
Figure 0004190005
その他の試薬は以下から購入した。
メーカー 品名
シグマ アンピシリンナトリウム
和光純薬 フェノール
シグマ BSA
DIFCO 2×YT培地
和光純薬 カナマイシン硫酸塩
ナカライテスク ポリエチレングリコール6000
ナカライテスク Tween20
片山化学 NaCl
和光純薬 IPTG
和光純薬 スキムミルク
和光純薬 アジ化ナトリウム
和光純薬 トリエチルアミン
和光純薬 過酸化水素
和光純薬 OPD錠
和光純薬 エタノール
κ1、κ2、κ3、κ4、κ5、およびκ6、並びにλ1、λ2、λ3a、λ3b、λ4、λ5、λ6、λ7、λ8、λ9、およびλ10の全てについて以上の操作を行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。続いてκ1、κ2などの各グループのクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合した。これら軽鎖の各グループは、それぞれ実際の生体内でどのような割合で発現しているのかが既に知られている。PCR法で増幅してベクターに組み込んだこれらの遺伝子クローンを、in vivo)での使用頻度に近い比率になるように混合しVLライブラリーとした。VLライブラリーにおける各familyの構成比率を以下に示す。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
Figure 0004190005
次に、VLライブラリーから無作為に選んだ約1000個の軽鎖遺伝子の塩基配列を確認した。すなわち、蛍光プライマーhuCH1J(5’−ATTAATAAGAGCTATCCCGG−3’/配列番号:45)を用い、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって塩基配列を決定した。得られた塩基配列を比較して重複するクローンを除いた。更にデータベースと照合し、deletionが無いと確認されたクローンについて、予め発現することがわかっている重鎖遺伝子のクローンの一つVH3−4と組み合わせて、発現実験を行った。操作は以下のとおりである。VH3−4のアミノ酸配列を配列番号:1に示した。
まずVH3−4をHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。一方、deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンについてもHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製し、VH3−4の重鎖遺伝子とライゲーションすることにより、組み合わせた。得られたligated DNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。生えてきたコロニーを試験管にいれた培地にうえ、IPTGで発現を誘導することにより、Fab−cp3型の抗体分子を培養上清中に発現させた。20時間程度の培養により、ヘルパーファージの感染無しでもFab−cp3型の抗体分子が培養上清に発現される。この培養上清を用いて以下のようなELISAを行った。
3−2−4 ELISA法による重鎖と軽鎖の正しい発現と会合の検定
1)抗体結合96wellマイクロタイタープレートの作製
抗κ抗体(MBL code No.159)を0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1%NaNで1.25μg/mlで希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加した。4℃で一晩静置することにより、ウエルに抗κ抗体を吸着させた。反応液を捨て、5%BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1%NaNを200μLずつマイクロタイタープレートに添加し、37℃で2時間静置することにより、非特異的な吸着を防ぐためにブロッキングした。
次に、非特異的活性吸収済の抗λ抗体(MBL code No.159)を0.01Mナトリウムリン酸緩衝液pH8.0,0.1%NaNで2.5μg/mlに希釈し、100μLずつマイクロタイタープレートに添加し氷室で一晩静置した。反応液を捨て、5%BSA in 0.01Mナトリウム−リン酸緩衝液pH8.0,0.1%NaNを200μLずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で2時間静置し、非特異的な結合を防ぐためにブロッキングを行った。
2)1次反応
positive contorolとして、ヒトFab(10μg/ml)を、negative controlとして、PBS/0.1%NaNをそれぞれ100μlずつマイクロタイタープレートに添加した。IPTGでFab−cp3型の抗体分子の発現を誘導した培養上清の原液を100μlずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
3)2次反応
1次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaNで希釈した抗Fd抗体(1μg/ml)を100μlずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
4)3次反応
2次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いでPBS/0.1%NaNで希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒツジIgG抗体(4000倍希釈)を100μlずつマイクロタイタープレートに添加し37℃で1時間反応させた。
5)発色反応および吸光度測定
3次反応を終了したマイクロタイタープレートを0.05%Tween20−PBSで5回洗浄した。次いで発色基質溶液(SIGMA 1040 phosphatase substrate tablets 1粒あたり5mlの50mMジエタノールアミンPH9.8に溶解したもの)を100μlずつマイクロタイタープレートに添加した。室温で反応させ、405nmの吸光度が0.5以上になったと思われる時点で、停止液を添加し、プレートリーダー(タイターテック マルチスキャンMCC)で吸光度測定した。
このELISAで陽性(吸光度0.5以上)となったクローンは、Fab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているとし、κ鎖遺伝子、λ鎖遺伝子それぞれ反応性の高いものから100個ずつ選択した。両者を混合してFab−cp3型の抗体分子の発現と会合がうまく行われているクローンを集めたライブラリーKL200とした。
4.軽鎖遺伝子ライブラリーと重鎖遺伝子ライブラリーの組み合わせライブラリーの作製
4−1−1 PCRを用いたイムノグロブリン重鎖遺伝子の単離
3−1と同様の手順を用いて臍帯血、骨髄液、および末梢血のリンパ球、並びに扁桃からhuman μ primer(以下に示すプライマーの634)あるいはrandom hexamerを用いてcDNAを調製し、このcDNAを鋳型にして、以下に示すヒト抗体重鎖遺伝子の取得用5’プライマー(VH1〜VH7)と3’プライマー(human JHプライマー4種を等量混合したもの、以下に示すプライマーの697〜700)、または、human μ プライマー(以下に示すプライマーの634)を用いて、PCRを行った。表中、下線をつけた部分はSfiIサイトを示す。hVH2aはgerm line VH2 familyに対応していないため、新たにVH2a−2を設計した。またhVH4aではVH4ファミリー全体に対応していないため、新たにhVH4a−2を設計した。VH5aもgerm line VH5 subfamilyに対応していなかったため新たにVH5a−2を設計した。またVH7に対応するprimerとしてhVH7を設計した。これらについても遺伝子増幅を行い、pscFvCA−E8VHd(0−2)に組み込み、その塩基配列を決定することによって、どのような遺伝子が増幅されたのかを確認した。hVH5a−2についてはhVH1aと配列が酷似しているため、hVH1aで増幅させたものと同様の遺伝子産物が得られることが予想されるためこれについては使用しなかった。PCR産物は、フェノール処理後、エタノール沈殿して10μLのTEバッファーに懸濁した。
Figure 0004190005
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4−1−2 重鎖遺伝子ライブラリーの作製
4−1−1で得たPCR産物を以下の条件で制限酵素処理した。
Figure 0004190005
37℃で2時間反応後、そのうち10μL分をアガロース電気泳動し、400bp付近のバンドを切り出して、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。PCR産物と同様に制限酵素処理したpscFvCA−E8VHd(図1)をジーンクリーンIIキットで精製し、制限酵素処理したPCR産物と以下の条件で16℃で4時間〜一晩反応させることによりライゲーションした。
Figure 0004190005
4−1−3 ファージミドの大腸菌への導入
得られたDNAを大腸菌DH12Sに形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)3μLに溶解する。そのうち、1.5μLをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、エレクトロポレーション法により形質転換した。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
形質転換用培地(SOB)2mlに上記操作の終了した形質転換大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mlアンピシリン含有2×YT培地で培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーを楊枝でつついて分離し、それぞれプラスミドを調製し、重鎖遺伝子の塩基配列を調べた。VH1〜VH7の全てについてこれらのことを行い、目的のクローンが得られているかどうか確認した。これらの各グループ(ファミリー)のクローンをin vivoでの使用頻度に近い比率になるように混合してVHライブラリーとした。VHライブラリーにおける各ファミリーの構成比率を以下に示す。
Figure 0004190005
4−2 組み合わせ遺伝子ライブラリーの作製
VHライブラリー200μgを下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、重鎖遺伝子を切り出して、ジーンクリーンIIキットで精製した。
Figure 0004190005
deletionが無いと確認された軽鎖遺伝子クローンKL200、およびVLライブラリーの挿入されたベクターpFCAH9−E8dについても下記条件でHindIIIとXhoIで消化し、軽鎖遺伝子を含む断片を、ジーンクリーンIIキットで精製した。
Figure 0004190005
次に、VH遺伝子ライブラリー断片と軽鎖遺伝子の挿入されたpFCAH9−E8dベクターを、次の条件下、16℃で一晩反応させてライゲーションした。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
反応の終了したDNAを用いて大腸菌DH12Sを形質転換した。具体的にはDNAを一旦エタノール沈殿し、1/5TE(TEを滅菌済MilliQで5倍希釈したもの)30μLに溶解した。これをコンピテントセルDH12S(GIBCO BRL製)500μLに懸濁し、エレクトロポレーションを行った。
Figure 0004190005
形質転換用培地(SOB)12mlに上記操作の終了した大腸菌を植え、37℃で1時間振盪培養したあと、一部を寒天培地(Ampプレート)にまき、残りは、0.1%グルコース、100μg/mlアンピシリン含有2×YT培地500mlで培養し、グリセリンストックした。寒天培地は30℃でインキュベートし、生えてきたコロニーの数から得られたクローンの数を推定した。それぞれ5×1010クローンが得られた。
扁桃mRNAよりrandam hexamerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせたライブラリーをAIMS1とした。(1.28×1010の独立したクローン)
臍帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman μ Primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをpscFvCA−E8VHdベクターにクローニングし、KL200と組み合わせた遺伝子ライブラリーをAIMS2とした.(3.20×1010の独立したクローン)
臍帯血、骨髄液、末梢血、扁桃mRNAよりhuman μ Primerにて合成したcDNAをもとに得た各VH familyをVL libraryと組み合わせたライブラリーをAIMS3とした。(4.50×1010の独立したクローン)
更に(AIMS1+AIMS2):AIMS3=1:1で混合し、1×1011の独立したクローンからなるファージ抗体ライブラリーとした(AIMS4と呼ぶ)。
4−3 組み合わせ遺伝子ライブラリーによるファージライブラリーの作製
4−3−1 ファージライブラリーの調製
1%グルコース及び100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT培地300mLを入れた5リットルのフラスコにAIMS4懸濁液を2.5mLを加え、37℃で振とう培養し1時間おきに波長600nmにおける吸光度を測定しながら、吸光度が1.0になるまで増殖させた。培養液にヘルパーファージ液(M13KO7)をフラスコ当たり12mL加えてヘルパーファージを感染させ、37℃で2時間培養し、ヘルパーファージ感染済みDH12Sとした。
3リットルのフラスコ24本に2×YT培地600mLと100μg/mLのアンピシリン1.2mL、50μg/mLのカナマイシン0.8mL、ヘルパーファージ感染済みDH12S 200mLを加えて37℃で2時間毎に波長600nmの吸光度を測定しながら振とう培養した。アンピシリンは、測定毎に200μg/mLとなるよう追加した。培養は波長600nmにおける吸光度が1.3になるまで行った。
菌体は4℃で8000rpm、10分間遠心し、上清を集めた。上清に20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 4Lを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心、沈殿を1LのPBSで溶かし、20%のポリエチレングリコール/2.5M NaCl 200mLを加えて約20分間静かに攪拌した後、4℃で8000rpm、20分間遠心した。上清を捨ててさらに4℃で8000rpm、3分間遠心して沈殿を回収した。沈殿は0.05%NaNを加えたPBSで溶解し、4℃で1000rpm、15分間遠心し、上清を回収した後、4℃で8000rpm、3分間さらに遠心して上清を回収した。
回収したファージ溶液の力価は以下のようにチェックした。すなわち、ファージ溶液をPBSで10、10、10希釈し、その10μLをDH12S 990μLに感染させ、37℃で1時間培養した。これをLBGAプレートに100μL播いて30℃で18時間培養した。コロニーの数をカウントすることにより希釈前の原液の力価を算出した。ファージ溶液原液を2%スキムミルク及び0.05%NaNを含むPBSに2×1014/mlになるよう懸濁した。
4−3−2 Fab−cp3を表面に発現しているファージを濃縮する方法
以上のようにして調製したライブラリーには、Fab−cp3をその表面に発現しているファージを選択的に濃縮し、ヘルパーファージやFab−cp3の発現していないファージの混入割合を減少させるための工夫が施されている。すなわち上記ライブラリーを構成するファージが発現する重鎖のC末端には、His6ペプチド(ヒスチジンタグ)が付加されている。ヒスチジンタグを発現したファージは、ニッケルイオンなどに吸着することを利用して容易に回収することができる。具体的にはニッケルイオンが付加されたゲル(Ni−NTAアガロース等)を用いる。操作は以下のとおりである。
Ni−NTAアガロースを2%スキムミルク及び0.1%Tween20を含むPBS(以下ブロッキング緩衝液)で室温で30分ブロッキングした。次に、重鎖にHis−Tagが付加されていないFabを表面に発現しているファージ(pFCA−E9HLφ;ファージHis−)と重鎖にHis−Tagが付加されているFabを表面に発現しているファージ(pFCAH6−D1.3HLφ;ファージHis+)をファージHis−:ファージHis+=100:1となるようにブロッキング緩衝液中で混合した。これらの合計1×1010CFUのファージ溶液250μLをNi−NTAアガロースと混合し、室温1時間反応させた。Ni−NTAアガロースをブロッキング緩衝液で洗浄し、次いで0.5Mイミダゾール(pH7.55)500μLを加えてNi−NTAアガロースに結合していたファージを溶出した。
溶出したファージを回収し、回収したクローンを調べてみたところ、23クローン中15クローンがファージHis+であった(表4)。このことはNi−NTAアガロースにより、His6ペプチドが付加されたファージが53倍に濃縮されたことを示している。
この操作を加えることにより、ライブラリーの性能を向上させ、あるいはスクリーニングの能率を上昇させることが可能であることが示された。
Figure 0004190005
5.ビオチン化インフルエンザワクチンを用いた抗NP抗体の除去
NPタンパクには糖が結合していないが、HAタンパクには糖が結合していることを利用し、1.でHA蛋白質の糖鎖部分をビオチン化した。このビオチン化抗原に抗体ファージを結合させ、ストレプトアビジンマグネティックビーズで、ビオチン化抗原−抗体ファージ複合体を回収すると、ビオチン化されていないNPタンパクに結合した抗体ファージは回収されてこない。すなわち、この操作で、抗NP抗体が除去され、抗HA抗体が選択的に濃縮される。
5−1 1.で得たビオチン化インフルエンザワクチンの1/10量(ビオチン化されているのはほとんどHA抗原のみであるので、ビオチン化HA抗原9μg相当分)と4−2.の抗体ファージライブラリー1.0×1014cfuを2%スキムミルク共存下、全量5mLになるように調製し、タンパク質の非特異吸着が少ない試験管であるミニソープチューブ(Nunc社製)2本に2.5mLずつ入れ、ローテーターを用いて室温2時間反応させた。抗体ファージライブラリーとしては、4−2に述べたAIMS4を用いた。AIMS4は、4−2で調製した抗体ファージライブラリーの中でも、特に大きなレパートリーサイズを有するライブラリーである。
この反応液に、2%スキムミルクでプレブロックしたストレプトアビジンビーズ0.3mg(プロメガ社製)を懸濁し、ローテーターを用いてさらに室温で20分反応させた。磁石でマグネットビーズを引き寄せておいて、上清を除くという方法で、0.1%Tween20含有PBSを用いて15回洗浄し、さらにPBSで1回洗浄した。これに、チューブ1本当たり1mLの0.1M トリエチルアミン(pH12.3)を加え、室温で10分攪拌し、溶出した抗体ファージ液をチューブ1本当たり0.25mL 1M Tris−HCl pH6.8で中和した。
回収した液は(ファージの大腸菌への感染)(ヘルパーファージの感染)(ファージの回収)の処理を行い、含まれているファージを精製・増幅した。
5−2 ファージの大腸菌への感染
大腸菌(DH12S)を2×YT培地50mLで培養し、波長600nmの吸光度が0.5になるよう増殖させ、上記で乖離させたファージ液を加えて37℃で1時間振とう培養した。
5−3 ヘルパーファージの感染
2)の培養液52.5mLに、2×YT培地434.5mL、40%グルコース12.5mL、および100mg/mLアンピシリン0.5mLを加えて37℃で波長600nmにおける吸光度が0.5になるまで培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心して菌体を沈殿させ、回収して100mg/mLアンピシリン0.15mLを加えた2×YT培地150mLに懸濁した。これにヘルパーファージM13K07を1/100量(1.5mL)加え、37℃で1時間振とう培養した。
培養液を予め37℃に暖めた培地(2×YT培地に100μg/mLアンピシリンと70μg/mLのカナマイシンを加えた液)450mLに加えて37℃で一晩培養した。
5−4 ファージの回収
3)の培養液を4℃で7000rpm、10分間遠心し、その上清に2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて室温で20分間静置した後、4℃で8000rpm、15分間遠心して沈殿を回収し、培養液の1/10量の滅菌PBSを加えて溶解し、再度2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて4℃で10000rpm、20分間遠心して上清を捨て、さらにスピンダウンして4℃で10000rpm、2分間遠心した。これに0.05%のNaNを加えたPBSを培養液の1/100量加えて沈殿を溶解し、抗体ファージを回収した。
得られた抗体ファージ4×1012cfuを用いて、5−1から5−4の操作を同様に行い、抗NP抗体を除去した抗体ファージを得た。
6.抗NP抗体を除去した抗体ファージを用いたスクリーニング
6−1 スクリーニング用試験管の作製
インフルエンザワクチン(1999年)1mLにPBS 2mLを加えて3mLに調製し、試験管(マキシソープチューブ)1本(Nunc社製)に添加して4℃で18時間インキュベートして、試験管内表面へ抗原を吸着させた。吸着後、抗原溶液を捨て、2%スキムミルク含有PBS溶液3mLずつを加えて室温で1時間反応させ、ファージ抗体が非特異的に試験管に結合することを防ぐためにブロッキングを行った。
6−2 スクリーニング操作
2.で得られた抗体ファージを2%スキムミルク含有PBSになるよう溶解して1×1014cfu/3mLに調製し、この液を6−1で作製した抗原結合マキシソープチューブ1本に添加して室温で2時間反応させた後、PBSで8回洗浄した。
続いて抗原結合マキシソープチューブに結合したファージを以下のように回収した。すなわち、0.1Mトリエチルアミン(pH12.3)を3mL添加し、ローテーターを用いて室温で20分間反応させ乖離させた後、1M Tris−HCl緩衝液(pH6.8)1mLを加えて中和し、この液を回収した。
6−3 回収したファージの増幅
回収した液は(ファージの大腸菌への感染)(ヘルパーファージの感染)(ファージの回収)の処理を行い、含まれているファージを精製・増幅した。
1)ファージの大腸菌への感染
大腸菌(DH12S)を2×YT培地50mLで培養し、波長600nmの吸光度が0.5になるよう増殖させ、3−2で乖離させたファージ液を加えて37℃で1時間振とう培養した。
2)ヘルパーファージの感染
1)の培養液54mLに、2×YT培地433mL、40%グルコース12.5mL、および100mg/mLアンピシリン0.5mLを加えて37℃で波長600nmにおける吸光度が0.5になるまで培養した後、4℃、5000rpmで10分間遠心して菌体を沈殿させ、回収して100mg/mLアンピシリン0.15mLを加えた2×YT培地150mLに懸濁した。これにヘルパーファージM13K07を1/100量(1.5mL)加え、37℃で1時間振とう培養した。
培養液を予め37℃に暖めた培地(2×YT培地に100μg/mLアンピシリンと70μg/mLのカナマイシンを加えた液)450mLに加えて37℃で一晩培養した。
3)ファージの回収
2)の培養液を4℃で8000rpm、10分間遠心し、その上清に2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて室温で20分間静置した後、4℃で8000rpm、15分間遠心して沈殿を回収し、培養液の1/10量の滅菌PBSを加えて溶解し、再度2.5Mの塩化ナトリウムを加えた20%のポリエチレングリコールを1/5量加えて4℃で10000rpm、20分間遠心して上清を捨て、さらにスピンダウンして4℃で10000rpm、2分間遠心した。これに0.05%のNaNを加えたPBSを培養液の1/100量加えて沈殿を溶解し、抗体ファージを回収した。
6−4 増幅したファージによる再スクリーニング
増幅したファージを用いて6−2と同様に抗原結合試験管を用いてスクリーニングを繰り返した。スクリーニングでの洗浄は、非特異に吸着したファージを乖離し、結合力の高いファージを選択する上で重要なステップであることから、2回目、3回目のスクリーニングにおける洗浄条件はPBSで16回にした。
6−5 ファージのスクリーニングの評価法
6−4の方法でスクリーニングを繰り返すとき、(抗原吸着済試験管に投入したファージの総数)÷(抗原吸着済試験管から回収したファージの総数)が前回のスクリーニングに比べて明らかに小さくなれば、目的の抗体を提示しているファージが濃縮されつつあると推測できる。溶液に含まれるファージ数の計算は以下のように行った。
1)ファージの希釈系列を以下のように作製した。
[1]1×10−2希釈:ファージ液10μL+PBS990μL
[2]1×10−4希釈:[1]の希釈液10μL+PBS990μL
[3]1×10−6希釈:[2]の希釈液10μL+PBS990μL
[4]1×10−8希釈:[3]の希釈液10μL+PBS990μL
[5]1×10−9希釈:[4]の希釈液100μL+PBS900μL
[6]1×10−10希釈:[5]の希釈液100μL+PBS900μL
[4]、[5]、および[6]の希釈系列10μLにDH12S 990μLを加えたものを作り、37℃で1時間感染させ、これをLBGAプレートに100μLまいて30℃で18〜24時間培養し、コロニーを計数した。上記希釈系列のうち、通常[4]のプレートが50個以上のプラークを作る。mL当たりのファージ数は[4]のプレートのプラーク数に基づいて、以下のように算出される。
原液のファージ数=(コロニー数/プレート)×(1×10)×10cfu/mL
また、回収されたファージ数も同様に計算し、本抗原に対する抗体を提示するファージの数をスクリーニングごとに求めたところ、表5のようになった。したがって、スクリーニングによって目的の抗体を呈示しているファージクローンが濃縮されていることが予測された。
Figure 0004190005
7.スクリーニングによって得られた抗体の抗原結合活性の測定
以上のスクリーニングによって選択された抗体について、抗原結合活性(アフィニティー)の測定を行った。アフィニティーの測定には、ファージ型の抗体ではなく、Fab−cp3型抗体をサンプルとして用いた。測定方法は、96ウェルマイクロタイタープレートを用いたELISA法とした。Fab−cp3型抗体の発現誘導法については8.で述べる。
まずELISA用のプレートを以下のように調製した。インフルエンザワクチン(1999年)をPBSで15倍希釈し、96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社製Maxisorp)の各ウェルに100μL添加して4℃で18時間結合させたのち、5%BSA(ブロッキング液)を各ウェルに200μL添加して37℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング液を捨てた後、PBSで1回洗浄して、アフィニティーの測定に用いた。8.の手順で採取した培養上清を各ウェルに100μL加え、25℃1時間反応させた。反応後、PBSで4回洗浄し、250倍希釈したペルオキシダーゼ標識抗cp3抗体((株)医学生物学研究所製)を100μL加えて25℃で1時間反応させた。再度PBSで4回洗浄し、オルトフェニレンジアミンと過酸化水素の溶液100μLを加えて暫時反応させた後、2N硫酸100μLを加えて反応を停止し、波長492nmにおける吸光度を測定した。その結果88クローン中73クローンに結合活性が確認された(図9)。
更にこれら73クローンのうち、33クローンについて中和活性を調べたところ、表6のように22クローンに中和活性があった。中和活性測定方法については、9.で述べる。この段階では、まだ塩基配列を確認していないので、これらのクローンの中には同じクローンが存在する可能性がある。中和活性の測定と平行して、これらのクローンの塩基配列を決定して照合したところ(10.に示す)、当然のことながら同じクローンは同程度のアフィニティーを示し、中和活性のあるなしも一致していたことが確認された。
Figure 0004190005
8.Fab−cp3型抗体の発現誘導
ファージの感染した大腸菌を1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YTで30℃18時間培養した後、0.1%グルコースと100μg/mLのアンピシリンを加えた2×YT 1.5mLに上記培養液を5μL加えて30℃で4時間培養した。このときの大腸菌の濃度は波長600nmの吸光度を測定するとき、約0.5であった。
これに1mMになるようIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を加えてさらに30℃で18時間培養した後、培養液1.5mLをエッペンドルフチューブにとり、10000rpm、4℃で5分間遠心してその培養上清をとり、0.22μmフィルターで滅菌処理したものを検体とした。
Fab−cp3型抗体が発現しているか否かは7.で示したELISA法で確認した。
9.インフルエンザウイルス中和活性測定方法
MDCK細胞を96ウェル平底プレート(コーニング社cat#3596)の各ウェルに(約10cells/well)分注し、COインキュベータにてウェルの底にモノレイヤーシートを形成するように37℃で培養した。次の日0.2%BSA(fraction V,Sigma Chemical Co.)を含むMEM培地により96ウェル丸底プレートの各ウェル内に試験する各抗体を4倍希釈して入れた。0.2%BSAを含むMEM培地により希釈したインフルエンザウイルス液(4×10FFU/mL)25μLと、希釈した抗体あるいはコントロールの溶液25μLを混合し、37℃60分反応させた。
それらの混合液を先に述べた96穴プレート中のMDCK細胞に25μL添加し、37℃60分保温することにより、ウイルスを細胞に吸着させた。
吸着後PBSで洗浄し100μL/wellの0.5%トラガントガム(tragacanth gum)と5μg/mLのトリプシンを含むMEM培地を添加し、さらに37℃24時間培養した。
培養後、PBSでウェルを洗浄した後、100%エタノールをウェルに添加し、室温10分処理し、ウェルをヘアドライヤーで乾燥させた。PAP染色後フォーカスを計数した。
抗体の中和能の強さは、何も入れない場合(陽性コントロール)からのフォーカスの減少率を算出した後結果のみ示した。
10.モノクローナル抗体の同定
7.で抗原結合活性を示したクローンを選択し、LBGA中で30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてファージミドを精製した。これを用いて、その遺伝子の配列を確認した。配列は、H鎖については、蛍光プライマーT7(アロカ社製)を用いて、L鎖については、蛍光プライマーhuCH1J(5’−ATTAATAAGAGCTATCCCGG−3’/配列番号:45、アロカ社製)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって決定した。結果を表7にまとめた。その結果、2種類のクローンが得られていたことがわかった。また、このうちの1種であるタイプ14が中和活性を示していたことがわかった(H鎖/配列番号:61(塩基配列)、配列番号:62(アミノ酸配列);L鎖/配列番号:63(塩基配列)、配列番号:64(アミノ酸配列))。
Figure 0004190005
11.IgGコンストラクションベクターの作製
Fab型抗体から可変領域(V領域)遺伝子を遺伝子組換により移すだけで、IgG型抗体が産生できるようなベクター(IgGコンストラクションベクター)の作製をまず実施した(図10参照)。
11−1 BLUESCRIPT M13+からのXhoI部位の除去
BLUESCRIPT M13+(Stratagene社製)には、あとの操作に不都合となるXho
I部位が存在するため、まずその除去を行った。
BLUESCRIPT M13+2μg(10μL)と、10×H buffer 10μL,DW79μL,XhoI(10u/μL、宝酒造社製)1μLを混合し、37℃2時間反応させて、切断した。フェノール−クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿して、DW38μLに溶解し、10×klenow buffer(添付バッファー)5μL,dNTPmix(宝酒造社製)5μL,klenow flagment(5u/μL、宝酒造社製)2μLを添加して37℃で15分反応させることにより、XhoI切断により生じた突出末端を埋めた。
フェノール−クロロホルム処理を行い、エタノール沈殿して濃縮し、5μLの1/10TEに溶解した。これに、10×ligation buffer(添付バッファー)2μL,10mM ATP2μL,DW10μL,T4 DNA ligase(宝酒造社製)1μLを加えて混合し、16℃で18時間インキュベートした。エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分をコンピテントセルElectroMAXTM DH12S(GIBCO BRL製)20μLに懸濁し、以下の条件でエレクトロポレーションを行うことにより、形質転換した。
Figure 0004190005
得られた形質転換体12個について、LBGA中で30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてプラスミドを抽出し、配列を確認した。配列は、蛍光プライマーT3(アロカ社製)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって決定した。その結果、いずれも同じように、XhoI部位が除去されていた。このうちのひとつ(No.1)を400mLの培養液からアルカリ法にて調製し、CsCl密度勾配超遠心法で精製して、220μg得た。これを、BLUESCRIPT M13+ΔXhoとした。
11−2 BLUESCRIPT M13+AscNheの作製
11−1で得られたBLUESCRIPT M13+ΔXhoのEcoRI部位に、AscI部位とNheI部位を導入し、EcoRI部位を削除する作業を行った。まず、BLUESCRIPT M13+ΔXho 2μg(10μL)と、10×H buffer 10μL,DW78μL,EcoRI(12u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、アガロースゲル電気泳動して目的の断片(3kb)を回収し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。エタノール沈殿して濃縮し、10μLの1/10TEに溶解した。次に、AscFプライマー(0.2nmol/μL,5’−AATTGGCGCGCCGATTTCGGATCCCAAGTTGCTAGC−3’/配列番号:65)1μLとNheRプライマー(0.2nmol/μL,5’−AATTGCTAGCAACTTGGGATCCGAAATCGGCGCGCC−3’/配列番号:66)1μLを混合した後DW8μLを加え10μLとして、95℃5分、60℃5分、25℃と温度を下げて、アニールさせた。このアニール産物5μLとBLUESCRIPT M13+ΔXho EcoRI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、11−1と同様にして塩基配列を決定した。その結果、No.3,7,8,11が向きも正しく目的の断片を有していた。このうち、No.3をBLUESCRIPT M13+AscNheと名づけた。
11−3 リーダーペプチド部分の作製
H鎖用リーダーペプチドとL鎖用リーダーペプチドを合成し、BLUESCRIPT M13+AscNheに組み込んだ。
11−3−1 H鎖用リーダーペプチド断片(NN断片)の作製とBLUESCRIPT M13+AscNheへの組み込み
まず、BLUESCRIPT M13+AscNhe 2μg(10μL)と、10×M buffer 10μL,DW78μL,NheI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。続いて、これに10×H buffer 10μL,10×BSA 10μL,DW68μL,NotI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して目的の断片(3.0kb)を回収し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。エタノール沈殿して濃縮し、10μLの1/10TEに溶解した。
次に、NNFプライマー(0.2nmol/μL,5’−GCCGCAACTGCTAGCAGCCACCATGAAACACCTGTGGTTCTTCCTCCTACTAGTGGCAGCTCCCGGTCACCGTCTCGAGTGCCTCAAATGAGCGGCCGCGGCCGGA−3’/配列番号:67)1μLとNNRプライマー(0.2nmol/μL,5’−TCCGGCCGCGGCCGCTCATTTGAGGCACTCGAGACGGTGACCGGGAGCTGCCACTAGTAGGAGGAAGAACCACAGGTGTTTCATGGTGGCTGCTAGCAGTTGCGGC−3’/配列番号:68)1μLを混合した後DW8μLを加え10μLとして、95℃5分、60℃5分、25℃と温度を下げて、アニールさせた。
このアニール産物10μLを10%アクリルアミド電気泳動後、エチレンブロマイド染色10分行ったのち、水でゆすぎ、紫外線下(366nm)で撮影後、該当部分(106bp)付近を切り出した。これを500μLのTEに入れ、ローテーターにて一晩回転攪拌して溶出した。フェノール・クロロホルム処理後、2本に分け、20mg/mlグリコーゲン(ロシュ社製cat.No.901393)を0.5μLずつ、3M 酢酸ナトリウムpH5.2を25μLずつ、エタノールを600μLずつ添加し、よく混合して−20℃に3時間おいて沈殿させた後TE 10μlに懸濁した。
これに、10×M buffer 10μL,DW78μL,NheI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、先ほどと同様にグリコーゲン・エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。続いて、これに10×H buffer 10μL,10×BSA 10μL,DW68μL,NotI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、グリコーゲン・エタノール沈殿して濃縮し、5μLの1/10TEに懸濁した。これに、BLUESCRIPT M13+−AscNhe NheI−NotI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。
エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、11−1と同様にして塩基配列を決定した。その結果、No.1,2,4,5,7,8,9,10,11が正しく目的の断片を有していた。このうち、No.1をBLUESCRIPT−NNと名づけた。
11−3−2 L鎖用リーダーペプチド断片(SA断片)の作製とBLUESCRIPT−NNへの組み込み
まず、BLUESCRIPT−NN 2μg(10μL)と、10×H buffer 10μL,DW78μL,SalI(12u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。続いて、これに10×NEB4 buffer(AscIに添付)10μL,DW78μL,AscI(10u/μL;NEB社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して目的の断片(3.0kb)を回収し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製した。
回収した断片をエタノール沈殿して濃縮し、10μLの1/10TEに溶解した。次に、SAFプライマー(0.2nmol/μL,5’−GAATGTATTGTCGACGCCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTACTCTGGCTCCGCGGTGCCAGATGTTCGGCGCGCCAGCCATTC−3’/配列番号:69)1μLとSARプライマー(0.2nmol/μL,5’−GAATGGCTGGCGCGCCGAACATCTGGCACCGCGGAGCCAGAGTAGCAGGAGCCCCAGGAGCTGAGCGGGGACCCTCATGTCCATGGTGGCGTCGACAATACATTC−3’/配列番号:70)1μLを混合した後DW8μLを加え10μLとして、95℃5分、60℃5分、25℃と温度を下げて、アニールさせた。
このアニール産物10μLを10%アクリルアミド電気泳動後、エチレンブロマイド染色10分行ったのち、水でゆすぎ、紫外線下(366nm)で撮影後、該当部分(105bp)付近を切り出した。これを500μLのTEに入れ、ローテーターにて一晩回転攪拌して溶出した。フェノール・クロロホルム処理後、2本に分け、20mg/mlグリコーゲン(ロシュ社製cat.No.901393)を0.5μLずつ、3M 酢酸ナトリウム pH5.2を25μLずつ、エタノールを600μLずつ添加し、よく混合して−20℃に3時間おいて沈殿させた後TE 10μlに懸濁した。
これに、10×H buffer 10μL,DW78μL,SalI(12u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、先ほどと同様にグリコーゲン・エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。続いて、これに10×NEB4 buffer(AscIに添付)10μL,DW78μL,AscI(10u/μL;NEB社製)2μLを混合し、グリコーゲン・エタノール沈殿して濃縮し、5μLの1/10TEに懸濁した。
これに、BLUESCRIPT−NN SalI−AscI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。
得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、11−1と同様にして塩基配列を決定した。その結果、No.2,3,4,5,6,8,9,10,11,12が正しく目的の断片を有していた。このうち、No.2をBLUESCRIPT−SANNと名づけた。
11−4 プロモーター部位の作製とBLUESCRIPT−SANNへの組み込み
CMV(サイトメガロウィルス)のプロモーターは、強いプロモーター活性を持つことが知られているが、H鎖遺伝子のクローニングの際用いるSpeI部位が存在する。そこで、SpeI部位を欠失させてプロモーター部位を得るために、2段階に分けてPCRを行った。
まず、SpeI部位の上流側をBamHI部位とはさむ形でPCRし、SpeI部位の下流側をNheI部位とはさむ形でPCRした。富山医科薬科大学医学部ウィルス学講座教授の白木先生より供与されたサイトメガロウィルスDNA1μg(5μL)、BS’Fプライマー(100pmol/μL,5’−CCCTCGACGGATCCGAGCTTGGCCATTGCATACGTTGT−3’/配列番号:71)1μL、BS’Rプライマー(100pmol/μL,5’−ATTACTATTAATAACTAGCCAATAATCAAT−3’/配列番号:72)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW68μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。
次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で130bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE20μlに懸濁した(BS’断片)。
同様にして、サイトメガロウィルスDNA1μg(5μL)、S’NFプライマー(100pmol/μL,5’−CCATGTTGACATTGATTATTGGCTAGTTAT−3’/配列番号:73)1μL、S’NRプライマー(100pmol/μL,5’−GAGCTTAAGCTAGCCGGAGCTGGATCGGTCCGGTGTCT−3’/配列番号:74)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW68μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で690bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 20μlに懸濁した(S’N断片)。
次に、BS’断片3μL、S’N断片3μL、BS’Fプライマー(100pmol/μL,5’−CCCTCGACGGATCCGAGCTTGGCCATTGCATACGTTGT−3’/配列番号:71)1μL、S’NRプライマー(100pmol/μL,5’−GAGCTTAAGCTAGCCGGAGCTGGATCGGTCCGGTGTCT−3’/配列番号:74)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW67μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で780bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 10μlに懸濁した。
これに、10×M buffer 10μL,DW78μL,NheI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。
続いて、これに10×K buffer 10μL,DW78μL,BamHI(15u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して760bp付近のバンド切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、5μLの1/10TEに溶解した(BNプロモーター断片)。
BLUESCRIPT−SANN 2μg(10μL)、10×M buffer 10μL,DW78μL,NheI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。
続いて、これに10×K buffer 10μL,DW78μL,BamHI(15u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して3.1kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、10μLの1/10TEに溶解した。BNプロモーター断片5μL、BLUESCRIPT−SANN BamHI−NheI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。
エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、11−1と同様にして塩基配列を決定した。その結果、No.1,2,3,5,8,9,10,12が正しく目的の断片を有していた。このうち、No.1をBLUESCRIPT−SAPNNと名づけた。
11−5 ターミネーター部位の作製とBLUESCRIPT−SAPNNへの組み込み
ウサギgenomic DNA5μg(5μL)、ABFプライマー(100pmol/μL,5’−GTAAATGAGGCGCGCCGGCCGAATTCACTCCTCAGGTGCAGGCTGC−3’/配列番号:75)1μL、ABRプライマー(100pmol/μL,5’−CCAAGCTCGGATCCGTCGAGGGATCTCCATAAGAGAAG−3’/配列番号:76)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW68μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で470bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 10μlに懸濁した。これに、10×NEB4 buffer 10μL,DW78μL,AscI(10u/μL;NEB社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。
続いて、これに10×K buffer 10μL,DW78μL,BamHI(15u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して450bp付近のバンド切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、5μLの1/10TEに溶解した(ABターミネーター断片)。
BLUESCRIPT−SAPNN 2μg(10μL)、10×NEB4 buffer 10μL,DW78μL,AscI(10u/μL;NEB社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮し、10μLのTEに溶解した。
続いて、これに10×K buffer 10μL,DW78μL,BamHI(15u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して3.9kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、10μLの1/10TEに溶解した。
ABターミネーター断片5μL、BLUESCRIPT−SAPNN AscI−BamHI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。
得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、11−1と同様にして塩基配列を決定した。その結果、No.1,3,5,9,10が正しく目的の断片を有していた。このうち、No.1をBLUESCRIPT−SATPNNと名づけた。
11−6 H鎖定常領域の作製とBLUESCRIPT−SATPNNへの組み込み(IgGコンストラクションベクターの完成)
ヒト扁桃組織のリンパ球から、市販のキット(Pharmacia Biotech社製 QuickPrep Micro mRNA Purification Kit)を用いて、1.6μgのmRNAを得た。このmRNAからcDNAを作製した(220μL分)。cDNAは、GibcoBRL社製SuperScript Preamplification Systemによって作製した。プライマーには、ランダムヘキサマーを用いた。得られたcDNAのうち2μL、XNFプライマー(100pmol/μL,5’−CACCGTCTCGAGCGCCTCCACCAAGGGCCCATCG−3’/配列番号:77)1μL、XNRプライマー(100pmol/μL,5’−AGCCGGATCGCGGCCGCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAG−3’/配列番号:78)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW71μL、KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。
次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を30サイクル繰り返した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、1.0kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 10μlに懸濁した。(CH領域断片)。
このCH領域断片には、L鎖をクローニングするためのSacII部位を含んでいるので、これを除く作業を行った。
まず、SacII部位の上流側をXhoI部位とはさむ形でPCRし、SacII部位の下流側をNotI部位とはさむ形でPCRした。上記で得られたCH領域断片1μL、XS’Fプライマー(100pmol/μL,5’−GGCACCACGGTCACCGTCTCGAGCGCCTCCACC−3’/配列番号:79)1μL、XS’Rプライマー(100pmol/μL,5’−CTGCTCCTCACGCGGCTTTGTCTT−3’/配列番号:80)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW72μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で560bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 20μlに懸濁した(XS’断片)。同様にして、CH領域断片1μL、S’NotFプライマー(100pmol/μL,5’−AAGACAAAGCCGCGTGAGGAGCAG−3’/配列番号:81)1μL、S’NotRプライマー(100pmol/μL,5’−AGTGAATT GCGGCCGCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAGGCTCTTCTGCGTGTAGTGGTTGTGCAGAGCCTC−3’/配列番号:82)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW72μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で600bp付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 20μlに懸濁した(S’Not断片)。
次に、XS’断片3μL、S’Not断片3μL、XS’Fプライマー(100pmol/μL)1μL、S’NotRプライマー(100pmol/μL)1μL、10×buffer #1(KODに添付)10μL,dNTPmix(KODに添付)10μL、25mM MgCl 4μL、DW67μL,KOD polymerase(2.5u/μL;東洋紡社製)1μLを氷上で混合し、ミネラルオイルを2滴添加して、94℃で2分保温した。次いで、94℃で1分、55℃で2分、72℃で1分を25サイクル繰り返した。
得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認後、紫外線下(366nm)で1.0kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、TE 10μlに懸濁した。
これに、10×H buffer 10μL、10×BSA 10μL、DW66μL、XhoI(10u/μL;宝酒造社製)2μL、NotI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して1.0kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、5μLの1/10TEに溶解した(CH領域ΔSac断片)。
BLUESCRIPT−SATPNN 2μg(10μL)、10×H buffer 10μL、10×BSA 10μL、DW66μL、XhoI(10ul/μL;宝酒造社製)2μL、NotI(10u/μL;宝酒造社製)2μLを混合し、37℃で2時間インキュベートしたのち、エタノール沈殿して濃縮しアガロースゲル電気泳動して4.3kb付近のバンドを切り出し、ジーンクリーンIIキット(フナコシ株式会社)で精製して、エタノール沈殿後、10μLの1/10TEに溶解した。
CH領域ΔSac断片5μL、BLUESCRIPT−SATPNN XhoI−NotI断片2μL,10×ligation buffer 2μL,10mM ATP 2μL,DW8μL,T4 DNA ligase 1μLを加えて混合し、16℃で16時間インキュベートした。
エタノール沈殿して3μLの1/5TEに溶解し、その半分を用いて11−1と同様にしてDH12Sを形質転換した。得られた形質転換体12個から11−1と同様にしてプラスミドを抽出し、蛍光プライマーCMVF(5’−CTTTCCAAAATGTCGTAACAACTC−3’/配列番号:83、アロカ社製)を用いて、また、逆方向から蛍光プライマーT7(アロカ社製)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって塩基配列を決定した。その結果、No.1,2,4,5,9,12が正しく目的の断片を有していた。このうち、No.1のプラスミドを400mLの培養液からアルカリ法にて調製し、CsCl密度勾配超遠心法で精製して、200μg得た。これをIgGコンストラクションベクターと名づけ、以下のIgG化の実験に用いた(配列番号:84、図11)。
12.中和活性を示すクローンのIgG化
上記7.の過程で中和活性を有していたFab抗体をIgGに遺伝子変換することを試みた。Fab抗体としては、タイプ14のうちの1つであるクローンB14を用いた。IgG型にすることにより、オプソニン効果などの免疫反応を引き起こすことによりより有効にインフルエンザウイルスが中和できることが期待できる。
また、ファージ由来のタンパク質であるcp3分子をはずすことで、抗体そのものに対する免疫反応を減少させることができる。すなわち、IgG化を実施することにより、より実用に促した形態の中和物質が得られることとなる(図12)。
12−1 具体的な工程
12−1−1 PCR法による遺伝子の増幅と制限酵素部位設定
Fab遺伝子であるB14の配列中にクローニングする際必要な制限酵素配列が無いことを調べたところ、VH、VLCL内とも該当する制限酵素部位は無かった。次にB14遺伝子をテンプレートとし、重鎖と軽鎖の両端にクローニングに用いる制限酵素部位を付けるプライマーを用いPCR法にて増幅させ、フラグメント(fragment)を取得した(図13)。
プライマー名称とその配列:
Figure 0004190005
PCR反応は、以下の条件で行った。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
上記を95℃3分で、インキュベート後、94℃2分、55℃2分、74℃2分を15サイクル反応させた。
次に、PCR反応生成物を0.8%アガロースゲル100V定電圧電気泳動し、紫外線下(366nm)で必要な遺伝子部分があるゲルを切り出し(重鎖:約400bp;軽鎖:約600bpのバンド)、suprec−01(Takara9040)に入れ、−80℃で15分おいた後、37℃15分処理、遠心分離を15,000rpm室温5分行った。TE50μL加えもう一度遠心し、溶出物をフェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿後、TE 20μlに懸濁したのち、DAPIでDNA量をチェックした。(B14h 10ng/μL,B14L 12.5ng/μL)
12−1−2 抗体発現カセットベクターの作製
次に、下記の条件で、37℃2時間反応させ、IgG1 constructionベクターと重鎖のフラグメントをSpeI−XhoIにて切断し、重鎖をIgG construction vectorにクローニングする準備を行った。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
それぞれ0.8%アガロースゲル100V定電圧電気泳動し、紫外線下(366nm)で必要な遺伝子部分があるゲルを切り出し、suprec−01(Takara9040)にいれ、−80℃で15分おいた後、37℃15分処理、遠心分離を15,000rpm室温5分行った。TE50μL加えもう一度遠心し、溶出物をフェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿後、TE20μLに懸濁した。DAPIでDNA量をチェックした。
精製したベクターおよびインサートDNAは、ベクターDNAが100ng/μL、インサートDNAは0.5pmol/μLの濃度に調整し以下の条件でライゲーションを行った。
Figure 0004190005
15℃16時間反応後、エタノール沈殿を行い緩衝液を除き、ミリQ水5μLに懸濁した。このうち1μLをElectroMAX DH12S cells(GIBCO:18312−017)にエレクトロポレーション(electroporation)し、全量をLBGAプレートにまき、30℃で18時間培養した。
プレートよりコロニーを選択し、TYGA培地2mL 30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてプラスミドを精製した。
突然変異をチェックするためのDNA配列解析は、カスタムプライマー241 CMVF IDR800蛍光プライマー(5’CTTTCCAAAATgTCgTAACAACTC3’/配列番号:89)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって実施し、正しい配列のクローン(B14VH)について以下の工程を実施した。
軽鎖についても、ベクターに入れる操作を上記と同様に実施した。
Figure 0004190005
上記の条件で37℃2時間培養後、それぞれ精製したベクターおよびインサートDNAをベクターDNAは100ng/μL、インサートDNAは0.5pmol/μLに調整し、ライゲーションを以下の条件で行った。
Figure 0004190005
15℃16時間反応後エタノール沈殿し、ミリQ水5μLに懸濁した。このうち1μLをElectroMAX DH12S cells(GIBCO:18312−017)にエレクトロポレーションし、全量をLBGAプレートにまき、30℃18時間培養した。プレートよりコロニーを選択し、TYGA培地2mL 30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてプラスミドを精製した。突然変異を調べるためのシークエンス解析は、T3 IRD800蛍光プライマー(アロカ社製)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって実施し、正しい配列のクローン(B14VHVLCL)について次の段階へ進んだ。
12−1−3 発現ベクターの加工
今回発現ベクターとしてpCMV−Script(stratagene社:SC212220;CMVプロモーターによって哺乳動物細胞(mammalian cell)での目的蛋白質の産生に適する)を採用した。
しかしながら、購入時のマルチクローニングサイト(以下MCS)の状態では、IgG1遺伝子準備ベクターからSalI−NotIで切り出した抗体発現カセットがライゲーションできない。そこで、合成DNA(サワデー社合成)を既存のMCSに入れ替えた。
*合成DNAの名称と配列
Figure 0004190005
具体的には100μMのCMKM−SacIF−KSを10μL、100μMのCMKM−KpnIRを10μL、計20μLを95℃5分加熱後、電源を切り20分放置した。10%アクリルアミド電気泳動をして、エチレンブロマイド染色10分後水でゆすぎ、紫外線下(366nm)で撮影後、該当部分(68bp)付近を切り出した。これをTEに入れローテーターで回転攪拌して一晩溶出した。フェノール・クロロホルム処理、グリコゲン・エタノール沈殿の後TE20μLに懸濁した。DAPIにてDNA量を確認した。
合成した新たなMCSとベクターを以下の条件で切断し、新たなMCSとベクターをつなぎあわせることで発現ベクターを完成させた。
新MCSの切断:
Figure 0004190005
上記の条件で、37℃2時間インキュベート後、フェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿し、TE10μLに懸濁して、これをインサートとした。
ベクターの切断:
Figure 0004190005
上記の条件で、37℃2時間インキュベート後、それぞれ0.8%アガロースゲル100V定電圧電気泳動し、紫外線下(366nm)で4.3kb付近のバンドを切り出し、suprec−01(Takara9040)にいれ、−80℃で15分おいた後、37℃15分処理、遠心分離を15,000rpm室温5分行った。TE50μLを加えてもう一度遠心し、溶出物をフェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿後、TE20μLに懸濁した。DAPIでDNA量を確認した。
精製したベクターおよびインサートDNAをベクターDNAが100ng/μL、インサートDNAが0.5pmol/μLの濃度に調整し、以下の条件でライゲーションを行った。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
15℃16時間反応後、エタノール沈殿後、ミリQ水5μLに懸濁した。このうち0.1〜1μLをElectroMAX DH12S cells(GIBCO:18312−017)にエレクトロポレーションし、全量をLBGAプレートにまき、30℃18時間培養した。プレートよりコロニーを選択し、TYGA培地2mL 30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてプラスミドを精製した。遺伝子配列決定は前記と同様に行った。
完成したベクターはCsClによる超遠心法にて、391.2μg得られた(pCMV−Script Sal−Not Lot.010306)。
12−1−4 抗体発現カセットの発現ベクターへの組み込み
以下の条件で、37℃2時間反応させ抗体発現カセットベクターからIgG遺伝子を切り出した。
Figure 0004190005
反応後フェノール、クロロホルム処理を行い、グリコーゲン・エタノール沈殿を行った後乾燥させた。
抗体発現カセット(約4.5kb)とベクター部分(約4.3kb)の分子量がほぼ同じことから、電気泳動後、切り出す際にベクター部分が混入する可能性が高い。これを防ぐため、PvuI処理またはFspI処理してベクター部分を切断後、泳動することで切り出しを容易にできた。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
上記の条件で、37℃6時間反応後、0.8%アガロースゲルで100V定電圧電気泳動し、紫外線下(366nm)で抗体発現カセット(約4.5kb)があるゲルを切り出し、suprec−01(Takara9040)にいれ、−80℃で15分おいた後37℃15分インキュベートし、遠心分離を15,000rpm 室温5分行った。TE50μL加えもう一度遠心し、溶出物をフェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿後、TE20μLに懸濁した。
DAPIでDNA量をチェックした。これが抗体発現カセットとなり、このカセットをタンパク発現ベクターにライゲーションした。
まず、pCMV−Script vectorをSalI−NotIで切断した。
Figure 0004190005
37℃2時間インキュベーション後、0.8%アガロースゲル100V定電圧電気泳動し、紫外線下(366nm)で4.3kb付近のバンドを切り出し、suprec−01(Takara9040)にいれ、−80℃で15分おいた後、37℃15分処理、遠心分離を15,000rpm室温5分行った。TE50μL加えもう一度遠心し、溶出物をフェノール、クロロホルム処理、エタノール沈殿後、TE20μLに懸濁した。DAPIでDNA量をチェックした。精製したベクターおよびインサートDNAをベクターDNAが100ng/μL、インサートDNAが0.5pmol/μLに調整して以下の条件でライゲーションを行った。
Figure 0004190005
Figure 0004190005
15℃16時間反応後、エタノール沈殿後、ミリQ水5μLに懸濁した。このうち0.1〜1μLをElectroMAX DH12S cells(GIBCO:18312−017)にエレクトロポレーションし、全量をLBGAプレートにまき、30℃18時間培養した。プレートよりコロニーを選択し、TYGA培地2mL 30℃18時間培養した後、倉敷紡績社製DNA分離装置PI−50を用いてプラスミドを精製した。シークエンス解析は、T3およびT7蛍光プライマー(アロカ社製)を用いて、サーモシークエンスキット(アマシャム・ファルマシア製)とアロカ社製L1−COR4200L(S)−2を使用したジデオキシ法によって決定した。
配列の正しいクローンについて、プラスミドをCsClによる超遠心法にて大量抽出し、300.0μgのプラスミドが得られた(B14pCMV−Script)。これを用いて、真核細胞(CHO−K1細胞)にトランスフェクション、発現させた。
12−1−5 CHO−K1細胞のトランスフェクション
上記細胞にてIgG1型の抗体を発現させるためにプラスミドDNAをGenePORTER Reagent(Gene Therapy Systems社:T201007)を使用してトランスフェクションした。具体的な順序は以下の手順で実施した。
1)60mmプレートにCHO−K1細胞を、5×10cells/mLになるようにトランスフェクションの前日から準備[培地:α−MEM(Invitrogen:12561−056)+10%FCS(エキテック社:268−1)]
2)プラスミドDNA(B14pCMV−Script)6μgを1mLの無血清培地(Serum Free Medium−以下SFMと略す−(Invtrogen:12052−098 CHO−S−SFMII))に溶かし、0.22μmのフィルターをかけて、GenePORTER Reagent 30μLを1mLのSFMに溶かした。
3)SFMに溶かしたプラスミドDNAとGenePORTER Reagentをすばやく混ぜ、室温30分静置した。
4)細胞をSFM 1mLで2回洗い、プラスミドDNA−GenePORTER mixture(Transfection Medium)を細胞の入ったプレートにゆっくり加え、インキュベーター内37℃5時間培養した。
5)Transfection Mediumを吸引し、αMEM 10%FCSで2回洗った後、αMEM 10%FCSを5mL加え、インキュベーター内37℃48時間培養した。
6)αMEM 10%FCS+700μg/mL G418(Sigma:G7034)の培地10mLに置き換え、セレクションを開始した(以後の培地はαMEM 10%FCS+700μg/mL G418を使用)。
7)37℃48時間培養後、細胞をPBS 10mLにて洗浄し、0.25%Trypsin−EDTA(Sigma T4049)にてプレートより剥離、回収し細胞数を測定した。その結果を元にlimiting dilutionを0.5〜1.0cell/well 96well 2platesの条件で行った。
8)10日間培養後、各ウェルの培養上清を用いて、抗原結合性についてのELISAを行った。ELISAの抗原としては、インフルエンザHAワクチン(1999年)をPBSで15倍希釈し、100μL/wellの割合でマイクロタイタープレート(Maxisoap microcup)の各ウェルに入れ、室温で一晩静置した。抗原の希釈液を捨て、200μLの5%BSA/PBSをウエルに入れて37℃、1.5時間ブロッキングした。
このウエルに培養上清100μLを加え、37℃で1時間反応させた。更に100μLのPOD標識 抗ヒトIgG(H+L鎖、医学生物学研究所製 No.206、2,500倍希釈)を加え、室温で1時間反応させた。反応後、抗体溶液を捨て、PBSで4回洗浄した後に100μLの基質溶液(オルトフェニレンジアミンと過酸化水素の溶液)を加えて室温で20分反応後、100μLの反応停止液(1.5Nリン酸)を添加した。PODによって生成する色素を492nmで測定した。
結合活性の高いクローンを選択「2E4」、細胞を剥離し、αMEM+10%FCS+700μg/mL G418培地3mlに懸濁、6ウェルプレートにて培養を継続した。コンフルエント後、細胞を剥離し、αMEM+10%FCS+700μg/mL G418培地150mLに懸濁、25cmディッシュ6枚に25mLづつ撒き、約2日間培養を続けた。各ディッシュの上清を除き、無血清状態に慣れさせる目的で、αMEM+10%FCS+700μg/mL G418培地とSFM+500μg/mL G418培地を半量づつ混合した培地にて24時間培養した。
各ディッシュの上清を除き、PBSにてディッシュ上の細胞を2回洗浄後、SFM+500μg/mL G418培地を25mLづつ加える。48時間ごとに培養上清を回収、新しいSFM+500μg/mL G418培地添加を続けて行った。
最終的に1000mLの培養上清が得られ、精製直前に遠心を行って沈殿物を除いたものを以下の精製に用いた。
12−1−6 培養上清からの発現タンパク(IgG)の精製
Protein G Sepharose 4 Fast Flow(amersham pharmacia biotech:17−0618−01)1mLをカラムにつめ、5mLの結合バッファー(20nMリン酸ナトリウム,pH7.0)を流速1滴/2秒で送液し平衡化した。培養上清1000mLをアプライ、流速1滴/2秒で送液し、発現タンパク(IgG)をカラムに結合させた。
5mLの結合バッファを流速1滴/2秒で送液し、非吸着成分を洗浄後、5mLの溶出バッファー(0.1M グリシン−HCl,pH2.7)を流速1滴/秒で送液、溶出液を0.5mLづつ1.5mLチューブに回収した。回収チューブにはあらかじめ中和バッファー(1.0M Tris−HCl,pH9.0)50μLを添加、回収と同時に中和した。各溶出液をSDS PAGEにて泳動、クマシー染色にてタンパクが溶出されたチューブを確認し、これを透析チューブに集め、PBSにて1晩透析、0.22μmフィルター滅菌をかけた。O.D.280nm測定:0.334、SDS−PAGE泳動、クマシー染色で濃度、純度を確認した。約172μg/mLが1.5mL得られた(2E4)。
また、この濃度を基準とした段階希釈による抗原結合性の変化も確認した(図14)。
これについて、前記のように中和活性測定を実施した。
産業上の利用の可能性
本発明は、任意の結合対象物質に結合する結合性分子を、ファージライブラリーから選択することができる方法を提供する。本発明では、選択に用いる結合対象物質が、必ずしも高度に精製された状態でなくても、目的とする結合性分子を効率的に取得することができる。特に望ましい態様においては、粗精製状態の結合対象物質を用いて、目的とする結合性分子を簡単に選択することができる。
公知の方法においては、ファージライブラリーからの選択には高度に精製された結合対象物質が多量に必要であった。したがって、精製が難しい結合性物質を利用して、ファージライブラリーから結合性分子を選択するには、時間と費用の消費が避けられなかった。本発明によれば、結合性物質の精製工程を簡略化できることから、ウイルス抗原のような精製が困難な結合性物質に対する結合性分子であっても、容易に選択することができる。つまり本発明によって、ファージライブラリーから、任意の結合性分子を取得することが可能となった。
本発明による結合性分子の選択方法は、従来の方法では取得が難しかった、ウイルス等に対する結合活性を有する結合性分子の効率的な選択を可能とした。ウイルスに対する結合性分子には、中和物質としての作用を期待することができる。中和物質は、病原性因子の病原性を中和し、疾患の治療や予防に用いることができる。つまり本発明は、ファージライブラリーからの中和物質の取得を実現したと言って良い。したがって本発明は、各種の疾患の治療や予防に有用な中和物質の探索に貢献する。
インフルエンザやHIVのような変異の激しいウイルスに対する中和物質の取得は、一般には困難である。しかし本発明においては、中和物質を容易に選択できる。更に、本発明者らが構築した人工抗体ファージライブラリーは、抗体のin vivoにおける多様性を忠実に再現した抗体ライブラリーである。したがって両者を組み合せることによって、変異の激しいウイルスに対しても、迅速に中和活性を有する結合性分子を選択することができる。このように、本発明を利用することによって、有用な中和物質を容易に選択することが可能となった。
本発明によって、インフルエンザやHIV等の変異の激しいウイルスに対しても、迅速に中和活性を有する結合性分子を提供することができる。本発明によって得ることができる中和活性を有する結合性分子は、ウイルスの治療や予防に有用である。ウイルス感染症には、ワクチンによる予防が最も効果的な対策とされてきた。ウイルスを対象とする血清療法は知られていたが、ヒト以外の動物に由来する抗血清を利用する場合には、常に血清病の危険が伴っていた。
本発明によれば、ファージライブラリーに提示された結合性分子の中から、目的とする活性を有するものを迅速に選択できる。更に選択されたファージクローンからは、必要な活性を有する結合性分子をコードする遺伝子を取得することができる。この遺伝子を利用すれば、ヒトへの安全な投与が可能な製剤を容易に調製することができる。その結果、中和活性を有する結合性分子を利用した治療用の製剤を迅速に提供することができる。このことは、ウイルスに対するより安全な血清治療を可能とすることを意味している。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、本発明による可変領域ライブラリーの作製に用いた各種のベクターの構造を模式的に示す図である。
1)pAALFab:D1.3 mutation用ベクター。
2)pFCAH3−E8T:E8発現用ベクター。pAALFabをもとに、制限酵素サイトを改変した。新たにPstI、XbaI、およびKpnIサイトを付加し、EcoRI、およびXhoIサイトの位置を変更した。
3)pFvCA−E8VHd:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8Tをもとに、制限酵素サイトを改変した。XbaI−EcoRI間を欠落させ、新たにKpnI、SfiI、NcoI、およびSpeIサイトを付加した。重鎖可変領域遺伝子をSfiI−XhoIサイトにクローニング可能。
4)pFCAH9−E8d:重鎖可変領域遺伝子クローニング用ベクター。pFCAH3−E8T、およびpFvCA−E8VHdをもとにDNA配列を改変した。マウスγCH1をヒトγCH1で置きかえた。新たに、SfiI、NcoI、およびAscIサイトを付加した。軽鎖可変領域をSfiI−AscIサイトにクローニング可能。
図2は、pFCAH9−E8dのインサートの塩基配列を示す図である。
図3は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)である。
図4は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)である。
図5は、pFCAH9−E8dのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(3)である。
図6は、pscFvCA−E8VHdのインサートの塩基配列を示す図である。
図7は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(1)である。
図8は、pscFvCA−E8VHdのインサートの制限酵素サイトと塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を示す図(2)である。
図9は、ELISA法による結合活性の確認を示す図である。
図10は、IgGコンストラクションベクターの構築を示す図である。
図11は、SacII−AscI間でVL−CL遺伝子を組み込み、SpeI−XhoI間でVH遺伝子を組み込むことを示す図である。
図12は、IgG1コンストラクションベクターを用いた中和抗体のFab−cp3 formからIgG formへの変換の概念図である。
図13は、PCRによる遺伝子増幅ならびに制限酵素部位設定を示す図である。
図14は、Protein G精製B14−2E4抗体段階希釈の結果を示す図である。

Claims (12)

  1. a)目的とする結合対象物質に親和性リンカーを結合させる工程
    b)結合性分子を提示したrgdpライブラリーを結合対象物質と接触させ、結合性分子と結合対象物質との複合体を形成させる工程、および
    c)親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナーを親和性リンカーと結合させて、b)で形成した複合体を回収する工程、
    を含む、特定の結合活性を有する結合性分子の選択方法であって、該結合対象物質がインフルエンザウイルスのHA蛋白質であり、結合対象物質と共存する可能性のある物質と結合対象物質とを識別可能とするマーカーとしてのHA蛋白質の糖鎖を該結合対象物質が有しており、該糖鎖に親和性リンカーが結合している、前記方法。
  2. 結合対象物質に特異的に親和性リンカーを結合させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 親和性リンカーと結合パートナーの組み合せが、ビオチン−アビジンおよび/またはストレプトアビジン、レクチン−糖、プロテインAおよび/またはプロテインG−イムノグロブリン定常領域、およびTagペプチド配列−Tag抗体からなる群から選択されたいずれかの組み合せである請求項1に記載の方法。
  4. 結合性分子が抗体可変領域である請求項1に記載の方法。
  5. 可変領域を構成する軽鎖が、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子である請求項に記載の方法。
  6. rgdpライブラリーがファージライブラリーである請求項1に記載の方法。
  7. 次の工程を含む、特定の結合活性を有する結合性分子の選択方法。
    d)請求項1に記載の方法によって選択された結合性分子を提示した遺伝的表示パッケージを増幅する工程、
    e)増幅した遺伝的表示パッケージを新たなrgdpライブラリーとして請求項1に記載の方法を繰り返す工程
  8. 次の工程を含む、中和活性を有する結合性分子の選択方法。
    1)中和すべき物質を特定の物質として用い、請求項1に記載の方法によって、中和すべき物質に対する結合活性を有する結合性分子を選択する工程、および
    2)選択された結合性分子の中和活性を評価し、中和活性を有する結合性分子を選択する工程
  9. 以下の工程を含む、中和抗体の製造方法。
    1)結合性分子として抗体の可変領域を提示したrgdpライブラリーを用い、請求項に記載の方法によって中和活性を有する抗体可変領域を選択する工程、
    2)工程1)で選択された抗体可変領域を提示した遺伝的表示パッケージが有する抗体可変領域をコードする遺伝子と、抗体定常領域をコードする遺伝子を融合させる工程、および
    3)工程2)で得られた融合遺伝子を発現させて、中和活性を有する抗体分子を得る工程
  10. 次の要素を含む、請求項1に記載の方法に用いるための、結合性分子の選択用キット。
    A)結合対象物質のマーカーに親和性リンカーを結合させるための手段;ここでマーカーとは、目的とする結合対象物質と共存する可能性のある物質と、結合対象物質とを識別可能とする、結合対象物質が有するマーカーをいう
    B)前記親和性リンカーとの親和性を有する結合パートナー、および
    C)結合性分子を提示したrgdpライブラリー
  11. 結合性分子を提示したrgdpライブラリーが、抗体可変領域を提示したrgdpライブラリーである請求項10に記載のキット。
  12. 可変領域を構成する軽鎖が、重鎖可変領域との機能的なコンフォーメーションの再構成が可能な軽鎖分子である請求項11に記載のキット。
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