【発明の詳細な説明】
抗炎症性CD14ポリペプチド 発明の分野
本発明は一般的には、抗炎症性を有するポリペプチドの分野に関する。CD1
4のアミノ酸7−10がIL−6産生のような細胞中の炎症性応答を生じ得る重
要なドメインを含んでいることは知見されていた。本発明のポリペプチドは、可
溶性形態のCD14のアミノ酸7−10を別のアミノ酸で置換することに基づく
。本発明の他のポリペプチドは、可溶性CD14の最初の14個のアミノ酸を欠
失している。本発明のポリペプチドは、敗血症のような炎症性疾患を治療するた
めに使用され得る。発明の背景
敗血症は、感染または外傷によって引き起こされる命にかかわる身体の異常で
ある。敗血症の症状としては、悪寒、大量の発汗、発熱、衰弱または血圧降下が
あり、次いで、白血球減少、血管内凝固、ショック、成人性呼吸困難症候群、多
臓器不全などを生じ、しばしば死亡することもある。R.Ulevitchら,J.Trauma
30:S189−92(1990)。
すべてのグラム陰性菌の外膜に典型的に存在するリポ多糖(“LPS”、「内
毒素」とも呼ばれる)は、最も研究され最も理解されている敗血症誘発物質に属
する。種々の細菌から得られるLPS分子の正確な化学構造は種特異的に多様で
あろうが、リピドA領域と呼ばれる領域はすべてのLPS分子に共通である。E
.Rietschelら,Handbook of Endotoxins,1
:187−214,eds.R.Proctor および E.Rietsch
el編,Elsevier,Amsterdam(1984)。
敗血症を特徴付けるLPS依存性病態生理学的変化の全部のではないとしても
その多くの原因は、このリピドA領域にある。
グラム陰性敗血症に罹患したヒト患者を死亡させる第一の原因はLPSである
と考えられている。van Deventerら,Lancet,1:605(
1988);Zieglerら,J.Infect.Dis.,136:19−
28(1987)。敗血症及びグラム陰性菌血症に罹患した患者をLPSに対す
るモノクローナル抗体で治療すると、死亡率が低下した。Zieglerら,N .Eng.J.Med.
,324:429(1991)。
グラム陽性菌もまた敗血症の原因となる。Bone,R.C.Arch.In tern.Med.
,154:26−34(1994)。宿主細胞の活性化は、
グラム陽性菌の細胞壁またはペプチドグリカン及びリポテイコ酸のような精製さ
れた細胞成分によって生じる。これらの物質は、LPSによって誘発されるのと
同様のパターンの炎症性応答を誘発する。Chin と Kostura,J. Immunol.
151:5574−5585(1993);Mattsonら
,FEMS Immun.Med.Microbiol.7:281−288(
1993);及びRotta,J.Z.Immunol.Forsch.Bd.
,149:230−244(1975)。LPS及びグラム陽性菌の細胞壁物質
は多形核白血球、内皮細胞及び単球/マクロファージ系の細胞にサイトカインの
ような多様な細胞産生物を速やかに産生させて放出させ、これらの産生物は体液
性及び細胞性の免疫応答及び免疫作用を開始、調節または仲介し得る。
アルファ−カケクチンまたは腫瘍壊死因子(TNF−α)と呼ばれる特定のサ
イトカインは明らかに敗血症ショックの主要な仲介物質である。Beutler
ら,N.Eng.J. Med.
,316:379(1987)。実験用動物及びヒトにLPSを静注す
るとTNF−αの速やかな一過性放出が生じる。Beutlerら,J.Imm unol.
,135:3972(1985);Mathisonら,J.Cli n.Invest.
81:1925(1988)。動物を抗TNF−α抗体によ
って前処理すると、敗血症ショックを変調し得る。Beutlerら,Scie nce
,229:869(1985);Mathisonら,J.C1in.I nvest.
81:1925(1988)。
敗血症誘発物質と結合でき、結合後にいくつかの化学反応を開始する分子受容
体は、敗血症の症状の病因において極めて重要な役割を果たしている。CD14
は、単球及びマクロファージの表面で強力に発現し好中球のような顆粒球の表面
では弱く発現する55−kDの糖タンパク質である。S.M.Goyertら,J.Immunol.
137:3909(1986)。A.Haziotら,J .Immunol.
141:547−552(1988);S.M.Goyer
tら,Science 239:497(1988)。
ヒト及びマウスのCD14のcDNA及び遺伝子はクローニ
ングされ配列決定されている。E.Ferrero と S.M.Goyert
,Nuc.Acids Res.16:4173(1988);S.M.Goy
ertら,Science 239:497(1988);M.Setoguc
hiら,Biochem.Biophys.Acta 1008:213−22
(1989)。CD14は、切断可能なグリコシルホスファチジルイノシトール
尾部〔A.Haziotら,J.Immunol.141:547−552(1
988)〕によって、成熟単球、マクロファージ、顆粒球及び樹枝状細網細胞、
腎の非糸球体内皮、並びに拒絶された肝臓の肝細胞、の外質表面に結合する。
CD14はLPSに結合することによって応答を仲介する。LPSとsCD1
4との複合体は1:1の化学量論を示し(Hailman,E.ら,J.Exp .Med.
179:269−277(1994))、これらの複合体は単球中の
TNF−αの産生(Dentener,M.A.ら,J.Immunol.7:
2885−2891(1993))、星状膠細胞中のIL−6の産生(Frey
,E.ら,J.Exp.Med.176:1665−1671(1992))、
内皮細胞中の接着
分子の産生(Frey,E.ら,J.Exp.Med.176:1665−16
71(1992))、及び、PMN(多形核好中球)中の白血球インテグリンの
活性化(Hailman,E.ら,J.Exp.Med.179:269−27
7(1994)を開始させる。CD14に対するLPSの自発的結合は緩慢であ
るが、LBPによってこの結合が飛躍的に促進され得る。LBPは触媒的に作用
し、1分子のLBPが数百のLPS分子を数百のCD14分子に移動させる。
別の実験は、B.subtilis、S.aureus,及びS.mitus
のようなグラム陽性菌の成分とCD14との相互作用も細胞活性化を誘発するこ
とを示した(Puginら,Immunity 1:509−516(1994
)。更に、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculos is
)の細胞壁に由来のリポアラビノマンナンとCD14との相互作用も細胞活
性化をCD14依存的に誘発する(Zhangら,J.Clin.Invest .
91:2076−2083(1993);Puginら,Immunity
1:509−516(1994))。これらの研究は、CD14が多様な細菌構
造を認識する受容体であることを示唆する。CD
14とこれらの構造との相互作用が宿主の炎症性応答を開始させる。
CD14に対するいくつかの中和モノクローナル抗体(mAbs)はin v
itro及びin vivoでLPSに対する細胞性応答に拮抗することが判明
した(in vitroに関しては、Wright,S.D.ら,Scienc e
249,1431−1433(1990);Hailman,E.ら,J. Exp.Med.
179,269−277(1994);Frey,E.A.ら
,J.Exp.Med.176,1665−1671(1992);Ardit
i,Mら,Infect.Immun.61,3149−3156(1993)
;Wright,S.D.ら,J.Exp.Med.173,1281−128
6(1991);Dentener,M.A.ら,J.Immunol 150
,2885−2891(1993);Grunwald,U.ら,J.Immu nol Methods
155,225−232(1992)参照、in v
ivoに関しては、Leturcq,D.J.ら,Satellite Mee ting of the 3rd Conference of the In ter national Endotoxin Society
22(Abstra
ct)(1994));Wrightら,Science 90:1431−1
433(1990)参照)。追加のin vivoデータでは、CD14中和モ
ノクローナル抗体を注射した動物はLPSに対する反応低下を示し、CD14欠
失マウスはLPSに対して反応しないことが証明された。これらの実験は、LP
Sと膜CD14との相互作用を阻害することによって炎症性サイトカインの放出
を遮断できることを示唆する。
また、CD14が正常血清またはネフローゼ患者の尿から検出される可溶性タ
ンパク質として存在することも判明した。最近の証拠は、sCD14が、内皮細
胞及び上皮細胞のような膜CD14が欠失している細胞中でLPS依存性応答を
生じ得ることを示した。sCD14はこの種の細胞中でLPSと結合するとき、
炎症性サイトカインの放出及び接着分子のアップレギュレーションを促進する。
全血アッセイで高濃度のsCD14が単球からの炎症性サイトカインの放出を
遮断するという注目すべき知見が得られた。このアッセイでsCD14が示した
有利な効果は、マクロファ
ージ及びPMN上のmCD14からLPSを遠ざけるその能力に起因すると推定
される。従って、sCD14は、CD14中和モノクローナル抗体と同様に、m
CD14中のLPSの相互作用を有効に阻止し得るであろう。しかしながら、s
CD14は内皮細胞中で炎症性サイトカインを誘発するという別の特性を有して
おり、この特性が、LPSに媒介される炎症性障害を治療するためのsCD14
の使用を制約している。従って、LPSに結合する能力を維持しながら内皮細胞
を活性化しないsCD14分子が得られるならば、この分子は炎症の治療におい
て卓越した特性を有するに違いない。
モノクローナル抗体はsCD14中の細胞活性化に必要なドメインの同定を補
助する有効なツールとなり得る。本発明者らは、mAb MEM−18及び3C
10がアミノ酸152で切頭(truncated)されたsCD14突然変異
体を認識することを証明し、これらの2つのmAbに対するエピトープが最初の
152個のアミノ酸内部に存在することを示した(Juan,T.S.−C.ら
,J.Biol.Chem.270,1382−1387(1995))。本発
明者らは更に、MEM−18のエピトープがアミノ酸57と64との間に
存在すること、及び、この領域もLPSの結合に必須であることを知見した(J
uan,T.S.−C.ら,J.Biol.Chem.270,5219−52
24(1995))。この領域が欠失すると、MEM−18の結合だけでなくL
PSの結合も途絶した。
mAb 3C10に対するエピトープはCD14の別の機能ドメインを規定す
る。このmAbは、MEM−18の認識領域とは異なる領域を認識すると考えら
れる(Juan,T.S.−C.ら,J.Biol.Chem.270,138
2−1387(1995))。モノクローナル抗体3C10がsCD14に結合
しても、sCD14に対するLPSの結合には影響がない(Juan,T.S.
−C.ら,J.Biol.Chem.270,5219−5224(1995)
)。これは、このエピトープがLPS結合以外の細胞機能に関与するらしいこと
を示唆する。
上述の理由から、本発明の1つの目的は、敗血症のような炎症性疾患の諸症状
の予防を含む有効な処置の方法及び療法を開発することである。また、敗血症の
ような炎症症状に苦しむ恐れのある個体を有効に保護するための方法及び療法を
開発する
ことも本発明の目的の1つである。
本発明の別の目的は、LPS、グラム陰性菌血症、グラム陽性菌細胞成分、グ
ラム陽性菌血症、マイコバクテリアのリポアラビノマンナン、マイコバクテリア
感染症及び/またはCD14によって媒介される疾病の諸症状の予防を含む有効
な処置の方法及び療法を開発することである。このような疾病としては、ARD
S、敗血症ショック、急性膵炎、急性及び慢性の肝不全、腸または肝臓の移植、
炎症性腸疾患、骨髄移植の移植片対宿主病並びに結核がある。発明の概要
本発明の発明者らは、リポ多糖(LPS)に結合でき、その結果として膜CD
14に対するLPSまたはグラム陽性菌細胞成分の結合を阻害し、従ってCD1
4によって仲介される炎症性応答を低下または消去させる一群のポリペプチドを
見出した。本明細書中で使用するLPSの結合阻害なる表現は、グラム陽性菌細
胞成分に対する結合の阻害も意味する。本発明者らはCD14中のLPS結合ド
メインの重要な発見に基づいてこのグループのポリペプチドを設計した。
本発明のポリペプチドは、好ましくは可溶性形態のCD14
の7−10位の天然アミノ酸を、中性アミノ酸好ましくは水素またはC1−C6
のアルキル側鎖を有する中性アミノ酸で置換することに基づく。本発明のポリペ
プチドはまた、図1のアミノ酸15から始まるポリペプチドを包含する。図1を
参照すると、「可溶性」CD14(sCD14)は、1位から6位までのうちの
1つのアミノ酸で始まり152位から348位までのうちの1つのアミノ酸で終
わる配列から選択された分子である。天然型のヒトCD14は、図1のX1−X4
としてGlu−Leu−Asp−Aspを有している。好ましくは、ポリペプチ
ドの7−10位の各々がアラニンで置換されている。
本発明のポリペプチドはLPSに結合でき、その結果として、微生物細胞成分
が膜CD14に結合することを阻止し得る。微生物細胞と膜CD14との相互作
用が阻止されると、炎症、特に敗血症に導く事象のカスケードが抑制または阻止
される。従って、本発明のポリペプチドは抗炎症性を有している
より詳細には、本明細書中で提示された証拠は特に、CD14のアミノ酸7−
10の領域がアラニン残基で置換されたポリペプチドまたは可溶性CD14から
アミノ酸1−14が欠失したポリペプチドはLPSに結合するが、LPSに応答
したサ
イトカインIL−6産生のような、該ポリペプチドに仲介される細胞の炎症性応
答が天然型CD14に比較して実質的に低下していることを示す。
後出の実施例において本発明者らは、sCD14中で一連の部位特異的アラニ
ン置換突然変異体を作製することによって3C10のエピトープを同定する。本
発明者らは、3C10の結合にはアミノ酸7−14の領域が必要であることを示
す。発明者らは更に、アミノ酸7−10にアラニン置換を有するsCD14突然
変異体(sCD14(7ー10)A)を作製することによってこのドメインを特性決定
した。この突然変異体は、LPSを結合することはできたが、LPSに対する細
胞性応答を仲介する能力は低下していた。
本発明のペプチド及びポリペプチドは、(a)標準合成方法、(b)CD14
からの誘導、(c)組換え方法、(d)方法(a)から(c)の組合せまたは(
a)から(c)のいずれか1つ以上と別のポリペプチド製造方法との組合せ、に
よって製造できる。
本発明のポリペプチドは、該ポリペプチドを適当な医薬用担体物質に取込ませ
、ヒト(または他の哺乳動物)のような治療
を要する患者に有効量を投与することによって治療目的または予防目的に使用さ
れ得る。図面の簡単な説明
従って、本発明の多くの別の態様及び利点は、添付図面を参照した以下の詳細
な記載から明らかであろう。
図1は、348個のアミノ酸を有する可溶性ヒトCD14の配列図であり、ア
ミノ酸7−10(X1−X4として示す)は天然型成熟ヒトCD14ではGlu−
Leu−Asp−Aspである。本発明のポリペプチド中のアミノ酸7−10は
本明細書中に記載のアミノ酸のいずれかでよい。
図2は、sCD14アラニン置換突然変異体の配列及び発現を示す。
図3は、sCD14のアラニン置換突然変異体に対するモノクローナル抗体3
C10の結合のBIAcore分析の結果を示す。電気穿孔の4日後にDNA非
含有(MOCK)、sCD141-348またはsCD14突然変異体でトランスフ
ェクトしたCOS−7細胞からならし培地(CM)で収集した。全部のCMにつ
いて、本明細書の実施例の項で記載の手順で抗体3C10に対する結合能力を分
析した。1つの実験を4回反復
して相対応答単位(RRU)を記録し、平均±標準偏差として算出した。
図4は、mAb 3C10が精製sCD14(7-10)Aを認識しないことを示す
。mAb 3C10をセンサチップに固定化する方法は文献に記載されている(
Juan,T.S.−C.ら,J.Biol.Chem.270,1382−1
387(1995))。注射には10μg/mlのsCD141-348またはsC
D14(7-10)Aを使用した。種々の「段階」での溶液の注入をセンサグラムに示
す。「洗浄」は実施例の項に記載のようなHBSバッファを用いる洗浄段階を示
す。実験を3回反復し、1つの実験の結果を示す。
図5は、sCD14(7-10)AにはLPSに対する細胞性応答を生じる能力が欠
損していることを示す。A.sCD14(7-10)Aでは、U373細胞によるIL
−6産生を刺激する能力が低下している。U373細胞をLPS(20ng/m
l)の存在下または非存在下で種々の濃度のsCD141-348またはsCD14( 7-10)A
によって24時間処理した。IL−6のレベルを文献に記載の手順で測定
した(Juan,T.S.−C.ら,J.Biol.Chem.270,138
2−13
87(1995))。提示したデータは、1つの実験を3回反復することによっ
て得られた4つの読取り値の平均±標準偏差である。B.sCD141-348はL
PS及びLBPに対するPMNの応答を仲介するが、sCD14(7-10)Aは仲介
しない。新しく単離したPMNを「スムース(smooth)」LPS(大腸菌
0111:B4 30ng/ml)、rLBP(1μg/ml)、及び、指定濃
度のsCD141-348またはsCD14(7-10)Aと共に37℃で10分間インキュ
ベートした。細胞を洗浄し、フィブリノーゲン被覆ウエルに対する接着量を測定
した(Hailman,E.ら,J.Exp.Med.179,269−277
(1994),25)。誤差線は重複する3つの測定値の標準偏差を示す。
図6は、sCD14(7-10)AがNF−κBを活性化しないことを示す。種々の
処理(レーン1、対照;レーン2、LPS;レーン3、sCD141-348;レー
ン4、sCD141-348とLPS;レーン5、sCD14(7-10)A;レーン6、s
CD14(7-10)AとLPS;レーン7、sCD14Δ(57-64)A;レーン8、sC
D14Δ(57-64)AとLPS)によってU373細胞の全細胞抽出物を採取し、実
施例の項に記載の手順で標識
NF−κBオリゴヌクレオチドにタンパク質を結合させた。4.5%の未変性ポ
リアクリルアミドゲルでNF−κBの複合体を分離した。電気泳動後、ゲルを乾
燥し、X線フィルムに16時間露光した。標識プローブとNF−κBとの複合体
を示す。
図7は、sCD14(7-10)Aが3H−LPSと安定な複合体を形成することを示
す。実施例の項に記載の手順を用い、種々の濃度のsCD141-348(レーン2
−4)またはsCD14(7-10)A(レーン5−7)を3μg/mlの3H−LPS
と共に、16.7nMのrLBPの非存在下(A)または存在下(B)でインキ
ュベートした。レーン1は追加タンパク質の非存在下のLPSを含む。混合物を
4−20%の未変性ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、フルオログラフィー用
に処理した。複合体を形成しないLPSの位置及びLPSとsCD141-348ま
たはsCD14(7-10)Aとの複合体の位置を示す。
図8は、sCD14(7-10)AによるLPS誘発細胞応答の阻害を示す。A.s
CD14(7-10)AによるLPS誘発PMN接着の阻害。ラフ(rough)LP
S(Salmonella minnesota R60,10ng/ml)を
、LBP
及び種々の濃度のsCD141-348またはsCD14(7-10)Aと共に、PMNを添
加する前に37℃で30分間インキュベートした。実施例の項に記載の手順でフ
ィブリノーゲンに対するPMNの接着を測定した。誤差線は、3つの読取り値か
らの標準偏差を示す。B.sCD14(7-10)Aによる全血中のTNF−α産生の
阻害。実施例の項に記載の手順で、250μlの全血を種々の濃度のウシ血清ア
ルブミン、sCD141-348またはsCD14(7-10)Aと共に、0.25ng/m
lのスムースLPS(Salmonella minnesota野生型)の存
在下で37℃で3時間インキュベートし、TNF−α産生を測定した。TNF−
αの産生比率は、外来タンパク質の存在下で産生されたTNF−αを、添加タン
パク質の非存在下で産生されたTNF−αによって除算した比で示される。誤差
線は6つの読取り値で生じた標準偏差である。
図9は、グラム陽性菌細胞成分がsCD14に対する結合に関してLPSと競
合することを示す。3H−LPS(1μg/ml)を加えたsCD14(50μ
g/ml)を単独で(レーン1)、またはLPSと共に(レーン2)またはSt aphylococcus
aureus粗抽出物(SACE)と共に
(レーン3−6)、1mMのEDTAを加えたPBS中で37℃で17時間イン
キュベートした。次いでサンプルを未変性ポリアクリルアミドゲル上で泳動し、
ラジオオートグラフィーによって放射性バンドの位置を測定した。好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は、グラム陽性菌またはグラム陰性菌の細胞成分(例えばグラム陰性菌
由来のLPS)に応答したIL−6産生のような、CD14によって仲介される
炎症性細胞応答に関与するCD14の領域が本発明者らによって発見されたこと
に基づく。これらの発見の裏付けとなる証拠を後出の実施例で詳細に説明する。
図1は、アミノ酸7−10に対応するLPS結合及びIL−6誘発領域を含む
ヒトCD14の配列図を示す。
本発明のポリペプチドは可溶性CD14中の7−10位(両端位置を含む)の
アミノ酸を、天然型分子中のアミノ酸とは異なるアミノ酸で置換するかまたは可
溶性CD14の最初の14個のアミノ酸を欠失させることに基づく。図1を参照
すると、置換アミノ酸を含有するポリペプチド中のアミノ酸7−10はGlu−
Leu−Asp−Aspではない。好ましくは、置換
アミノ酸が中性アミノ酸である。これらの中性アミノ酸の側鎖は好ましくは、水
素及び炭素原子1−6個を有するアルキル基から成るグループから選択され、ア
ルキル基は、ハロゲン(例えばCl、Br、I)、−OH、−CN、−OR(R
=炭素原子数1−6個のアルキル)及び近縁構造(related struc
tures)から選択された1つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
得られるポリペプチドがLPSに結合でき及び/または単球中及びPMN中の炎
症仲介物質の放出を阻害し、同時に内皮細胞及び上皮細胞中の炎症性応答を誘発
する能力の低下(野生型sCD14に比較して)を示す限り、アミノ酸7−10
に置換するアミノ酸の詳細はそれほど重要ではない。可溶性CD14の最初の1
4個のアミノ酸が欠失した本発明のポリペプチドは、sCD14中の152位か
ら348位までのうちの1つのアミノ酸で終止する。好ましい欠失型ペプチドは
、図1のアミノ酸15−152及び15−348である。
(置換アミノ酸以外の)ポリペプチドの残部は、一般に、天然型の可溶性CD
14と等しい。「可溶性CD14(sCD14)」なる用語は、図1の1−6位
から152−348位ま
でのアミノ酸に対応するポリペプチドを意味する。本明細書では常に、本明細書
中で使用したアミノ酸の番号が図1のアミノ酸配列に対応することに留意された
い。例えば、特定の可溶性CD14が図1に示すアミノ酸2−6から開始する場
合であっても、置換されるべきアミノ酸は、図1の完全配列のアミノ酸7−10
に対応するアミノ酸である。
本発明の説明のために、図1に示す分子をsCD14またはsCD141-348
と呼ぶ。可溶性CD14の他の具体例は、図1の番号図に基づく開始アミノ酸と
終止アミノ酸とによって命名し、例えば、sCD141-152;sCD142-152;
sCD1415-152;sCD1415-348などとする。図1のアミノ酸が置換された
ポリペプチドは以下のように命名する。例えば、図1のアミノ酸7−10にアラ
ニンが置換したsCD141-348はsCD141-348(7-10)Aと命名する。この“
A”は、アラニンというアミノ酸を示す1文字コードである。7位及び9−10
位にアラニンを有し8位にグリシンを有するsCD141-348はsCD141-348 (7,9,10)A(8)G
と命名する。
本発明のポリペプチドの幾つかの好ましい特定例を以下に示す。
sCD141-348(7-10)G sCD141-152(7-10)G
sCD141-348(7-10)A sCD141-152(7-10)A
sCD141-348(7-10)V sCD141-152(7-10)V
sCD141-348(7-10)L sCD141-152(7-10)L
sCD141-348(7-10)I sCD141-152(7-10)I
sCD141-348(7-10)P sCD141-152(7-10)P
sCD1415-348 sCD1415-152
本発明はまた、本明細書中に開示されたポリペプチドの生理学的に許容され得
る塩を包含する。また、各ポリペプチド中に1つまたはそれ以上のDまたはLア
ミノ酸が含まれていてもよい。しかしながら、全部のアミノ酸がL配置を有して
いるのが好ましい。
本発明のポリペプチドは、天然型sCD14に比較して、細胞内の炎症性応答
を低下させる能力を有すると期待されている。炎症の低下を便利に測定するため
には、例えば後出の実施例4に記載の方法を用い、このような細胞によるIL−
6の産生を測定する。IL−6は、天然型sCD14に比較して、好ましくは1
/5以下、特に好ましくは1/10以下に減少するであろう。
また、どの場合にも、IL−6(または近縁のサイトカイン)の誘発能力の低
下につながるようなLPS結合が維持されている限り、アミノ酸が化学的に誘導
体化されてもよい。従って、本発明のポリペプチドの「化学的誘導体」なる用語
は、本明細書中で使用した「ポリペプチド」という用語の範囲に包含される。こ
れらの化学的誘導体は、X1−X4のアミノ酸が置換されたポリペプチド部分でな
い追加の化学的部分を含有している。
ポリペプチドの共有結合修飾は本発明の範囲に包含される。このような修飾は
、ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、選択された側鎖または末端残基と反応し
得る有機誘導化剤と反応させることによって分子内に導入し得る。
ヒスチジル残基は、ジエチルピロカーボネートとpH5.5〜7.0で反応さ
せることによって誘導体化する。その理由は、この物質がヒスチジル側鎖に比較
的特異的なためである。パラブロモフェナシルブロミドも有用である。好ましく
はpH6.0の0.1Mカコジル酸ナトリウム中で反応を惹起する。
リシニル及びアミノ末端残基は、無水コハク酸または他の無水カルボン酸と反
応する。これらの物質による誘導体化はリシニル残基の電荷を反転させる効果を
有する。アルファ−アミノ
−含有残基を誘導体化する他の適当な試薬としては、メチルピコリンイミデート
のようなイミドエステル、ピリドキサルホスフェート、ピリドキサル、クロロボ
ロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4ペン
タンジオンがあり、トランスアミナーゼに触媒されるグリオキシレートとの反応
がある。
アルギニル残基は、1種または複数の慣用の試薬との反応によって修飾される
。試薬の例としては、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2
−シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンがある。アルギニン残基の誘導体化の
場合、グアニジン官能基のpKが高いのでアルカリ性条件で反応させる必要があ
る。更に、これらの試薬は、リシンの基及びアルギニンのイプシロン−アミノ基
と反応し得る。
特にチロシル残基自体の修飾は熱心に研究されており、芳香族ジアゾニウム化
合物またはテトラニトロメタンとの反応によってチロシル残基にスペクトルラベ
ルを導入することが特に関心を集めている。O−アセチルチロシル種及び3−ニ
トロ誘導体を夫々形成するために、N−アセチルイミダゾール及びテトラニトロ
メタンが頻用されている。
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、1−シクロヘキシル
−3−(2−モルフォリニル−(4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル
−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカ
ルボジイミド(R′−N−C−N−R′)との反応によって選択的に修飾される
。更に、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンと反応するこ
とによってアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換される。
グルタミニル及びアスパラギニル残基はしばしば脱アミド化されて対応するグ
ルタミル及びアスパルチル残基になる。または、これらの残基を弱酸性条件下で
脱アミド化してもよい。これらの残基のどちらの形態も本発明の範囲内に包含さ
れる。
二価性試薬による誘導体化は、ペプチドまたはそれらの機能性誘導体を水不溶
性支持マトリックスまたは他の高分子担体に架橋させるために有用である。常用
の架橋剤の例としては、1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン
、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば、4−
アジドサリチル酸とのエステル、3,3′−ジチオビス(スクシニミジルプロピ
オネート)のようなジスクシニミジル
エステルを含むホモ二価性イミドエステル、ビス−N−マレイミド−1,8−オ
クタンのような二価性マレイミドがある。メチル−3−〔(p−アジドフェニル
)ジチオ〕プロピオイミデートのような誘導化剤は、光の存在下で架橋構造を形
成し得る光活性化可能な中間体を生じる。または、臭化シアンで活性化された炭
水化物のような反応性の水不溶性マトリックス及び米国特許第3,969,28
7号、第3,691,016号、第4,195,128号、第4,247,64
2号、第4,229,537号及び第4,330,440号の各明細書に記載さ
れている反応性基質がタンパク質固定化のために使用される。
その他の修飾としては、プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリルまたは
トレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、Cysのイオウ原子の酸化、リシ
ン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のアルフア−アミノ基のメチル化(T.E.
Creighton,Proteins:Structure and Mol ecule Properties
,W.H.Freeman & Co.,S
an Francisco,pp.79−86(1983))、N末端アミンの
アセチル化、及び、いくつかの場合には、C末端カルボキシル基のアミド化があ
る。
所望の特性に基づく適当なスクリーニングアッセイでポリペプチド変異体の活
性をスクリーニングする。本明細書中に記載のような適当なバイオアッセイで生
物学的活性をスクリーニングする。例えば、LPSとCD14(または本発明の
ポリペプチド)との結合は、標準的な競合結合アッセイで測定するとよい。細胞
の炎症性応答を低下させる活性は、本明細書中に記載のように細胞(例えばU3
73細胞)によるIL−6産生の低下によって測定し得る。
レドックスもしくは熱安定性、疎水性、タンパク質分解に対する感受性、また
は、担体と共に凝集する傾向もしくはマルチマーとして凝集する傾向のようなポ
リペプチド特性の変化は、平均的な当業者に周知の方法で検定される。
このような誘導体化した部分は、溶解性、吸収、生物学的半減期、などを改善
し得る。または、このような部分は、タンパク質の望ましくない副作用を除去ま
たは軽減し得る。このような作用を仲介し得る部分は例えば、Remingto
nのPharcmaceutical Sciences,16thed.,M
ack Publishing Co.,Easton,Pa(1980)に開
示されている。
本発明のポリペプチドはまた、ポリペプチド、非CDタンパク質、直鎖状ポリ
マー(ポリエチレングリコール、ポリリシン、など)、分枝状ポリマー(例えば
、1981年9月15日発行のDenkenwalterらの米国特許第4,2
89,872号、1993年7月20日発行のTamの米国特許第5,229,
490号、1993年10月28日公表のFrechetらのWO93/212
59参照)、脂質、コレステロール群(例えばステロイド)、または炭水化物も
しくはオリゴ糖のような担体分子に共有結合または非共有結合し得る。
本発明のポリペプチドはLPSに結合する能力を有していると期待されている
。この結合によってLPSはマクロファージの膜CD14(mCD14)に結合
することができなくなり、従って、哺乳動物中で抗炎症性応答が生じる。更に、
本発明のポリペプチドにおいては、内皮細胞及び上皮細胞のようなmCD14欠
失細胞中の炎症性応答をトリガーする能力が低下している。本発明のポリペプチ
ドはまた、炎症の原因となるグラム陽性菌細胞の細胞成分に結合すると予想され
る(これらの細胞成分はLPSと類縁であるが、グラム陽性菌中で細胞に対する
炎症性応答を生じる(1つまたは複数の)構造は未解明で
ある)。LPSに対する「結合」なる用語は、標準的な競合アッセイで、ポリペ
プチドが、1mMと1nMとの間、好ましくは100μMと10nMとの間のL
PSに対するCD14の結合を50%阻害し得ること(IC50値)を意味する。
標準的な結合アッセイは当業界で周知の手順で行う。
本発明のポリペプチドは多様な方法で製造できる。例えば、固相合成技術を使
用し得る。適当な技術は当業界で周知であり、例えば、Merrifield,Chem.Polypeptides,
pp.335−61(Katsoyan
nis と Panayotis編1973):Merrifield,J.A m.Chem.Soc.
,85,2149(1963);Davisら,Bio chem.Int’l
,10,394−414(1985);Stewart
と Young,Solid Phase Peptide Synthesi s
(1969);米国特許第3,941,763号;Finnら,The Pr oteins
,3rd ed.,vol.2,pp.105−253(1976
);及びEricksonら,The Proteins,3rd ed.,v
ol.2,pp.257−527(1976)に記載の技術がある。
更に、組換えDNA技術を用いて形質転換宿主細胞中でポリペプチドを製造す
るのが極めて好ましい。このためには、ポリペプチドをコードする組換えDNA
分子を作製する。このようなDNA分子の作製方法は当業界で周知である。例え
ば、ポリペプチドをコードする配列を適当な制限酵素によってDNAから切り出
すことができる。または、ホスホアミダイト法のような化学的合成技術を用いて
DNA分子を合成できる。また、これらの技術を併用することも可能である。
本発明はまた、適当な宿主中でペプチドを発現し得るベクターを包含する。ベ
クターは、適当な発現調節配列に作動可能に結合されたペプチドをコードするD
NA分子から成る。DNA分子をベクターに挿入する前または挿入後にこの作動
可能調節配列の結合を行う方法は周知である。発現調節配列としては、プロモー
ター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開
始シグナル、終止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、及び
、転写または翻訳の調節に関与する他のシグナルがある。
得られたDNA分子保有ベクターを使用して適当な宿主を形質転換させる。こ
の形質転換は当業界で周知の方法で行うとよ
い。
本発明を実施するために、入手可能な公知の多数の宿主細胞のいずれを使用し
てもよい。特定の宿主の選択は、当業界の技術によって認識されている多数の要
因に依存する。このような要因としては例えば、選択された発現ベクターとの適
合性、DNA分子によってコードされているペプチドのベクターに対する毒性、
形質転換の速度、ペプチドの回収容易性、発現特性、生体安全性及び経費がある
。特定のDNA配列の発現に必ずしも全部の宿主が同等に有効であるとは限らな
いことを理解してこれらの要因の均衡を図る必要がある。
これらの一般指針に適う有用な微生物宿主としては、細菌(例えば大腸菌種)
、酵母(例えばSaccharomyces種)、及び他の菌類、昆虫、植物、
哺乳動物(ヒトを含む)の培養細胞、または当業界で公知の他の宿主がある。
次に、所望のペプチドが発現するように形質転換宿主を慣用の発酵条件下で培
養する。このような発酵条件も当業界で周知である。
最後に、培養物からポリペプチドを精製する。これらの精製方法も当業界で周
知である。
本発明のポリペプチドは、LPS/グラム陽性菌細胞成分との結合が必要であ
るような多数の状況のいずれにおいても使用できる。例えば、炎症性腸疾患、急
性及び慢性の肝不全、移植片対宿主病(骨髄移植)、腸または肝臓の移植、AR
DS、急性膵炎及び結核に対して治療的及び予防的にポリペプチドを使用し得る
。特に好ましい標的疾患は敗血症ショックである。
新規なポリペプチドは、ヒトを含む哺乳動物の敗血症ショックの予防または治
療のために体重1kgあたり約0.1〜100mgの用量、好ましくは約1〜5
0mg/kgのレベルで有効であり、この量を例えば1日用量を基準として分割
用量で投与してもよい。ポリペプチドは、敗血症ショックの原因となるような生
物に接触するかもしれない患者または接触した患者に予防的に投与されてもよく
、または、上記と同じ用量の使用によるLPS(細菌性内毒素)を解毒するため
に、内毒素汚染のin vivo;in vitroの解毒または予防を所望の
結果を達成するために有効なレベルで行ってもよい。その量は、約1モルの内毒
素に1モルのポリペプチドが結合するという前提に基づいて常用の実験手順に基
づいて決定し得る。特定のポリペプチドの特定の用量は、特定の用途または疾病
の重
篤度及び宿主の体調などに依存して本明細書中で特定した範囲内または範囲外で
変更し得る。当業者は標準手順を用いて適正用量を確認し得るであろう。
本発明の医薬組成物は予定の目的を果たす任意の手段によって投与され得る。
例えば、皮下、静脈内、皮膚内、筋肉内、腹腔内、莢膜内、経皮、または口腔内
などの経路で投与し得る。代替的にまたは同時に、経口または直腸経路で投与し
てもよい。医薬組成物は、全量(bolus)注入または長時間の漸次的潅流に
よって非経口投与されてもよい。
これらの医薬組成物はポリペプチドに加えて医薬上許容され得る適当な担体を
含有し得、担体は有効成分を医薬として使用できる製剤に容易に加工するための
助剤及び賦形剤から成る。製剤、特に、錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤のような経
口投与でき且つ好ましい投与形態で使用できる製剤、座剤のような直腸投与でき
る製剤、並びに、注射によってもしくは経口的に投与できる適当な溶液剤は、好
ましくは約0.1〜約99%、より好ましくは約25〜85%の(1種以上の)
活性化合物を賦形剤と共に含有している。
適当な賦形剤としては特に、糖、例えばラクトース、スクロ
ース、マンニトールもしくはソルビトールのような充填剤;セルロース調製物、
及び/またはリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウムのようなリン酸カ
ルシウム;トウモロコシ澱粉、コムギ澱粉、コメ澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチ
ン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/またはポリビニルピロリド
ンを用いて調製される澱粉ペーストのような結合剤がある。所望の場合、上記澱
粉、カルボキシメチル澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギ
ン酸もしくはアルギン酸ナトリウムなどの塩のような崩壊剤を添加してもよい。
本発明組成物中で使用できる助剤としては、シリカ、タルク、ステアリン酸もし
くはその塩のような滑沢剤及び流動調整剤、並びに、Triton及び/または
ポリエチレングリコールのような界面活性剤がある。
本明細書に含まれる教示に基づいて本発明の教示を特定の課題または状況に応
用することは当業者の能力の範囲内にあることは理解されよう。本発明物質の実
施例を以下に説明する。
実施例
材料及び方法 試薬
組換え可溶性CD14(rsCD14)及び組換えLBP(rLBP)は、Ha
ilman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994)に記載の通り、構築し、精製した
。全ての精製タンパク質の濃度は、製造業者の説明書の通りにミクロBCAプロ
テインキット(Pierce,Rockford,IL)により測定した。完全長のrsCD14
は成熟タンパク質の位置348で終るので(Hailman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-
277(1994))、本明細書でそれをsCD141-348という。抗CD14mAb 3C
10は、American Type Culture Collection(ATCC TIB 228)からの
細胞系列のならし培地からプロテインG上のクロマトグラフィーによって精製し
た。ウサギポリクローナル抗ヒトCD14抗血清は、Juan,T.S.-C.ら、J.Biol.C
hem.270,1382-1387(1995)に記載の通り調製した。ラフLPS(Salmonella min nesota
R60又はRe595)及びスムースLPS(E.coli 0111:B4又はSalmonellamin nesota
野生型)は、LIST Biological Laboratories
(Campbell,CA)から購入した。DNA操作用酵素は、Boehringer Mannheim(In
dianapolis,IN)から購入した。部位特異的変異誘発
sCD14の9種のアラニン置換変異体を本研究で使用した。図2は、各変異
体の名称と置換されたアミノ酸残基を要約する。トランスフォーマー部位特異的
変異誘発キット(Clontech,Palo Alto,CA)を以前に記載された(Juan,T.S.-C
.ら、J.Biol.Chem.270,5219-5224(1995))通りに使用して、哺乳動物発現ベク
ター中にクローン化された、sCD14のアラニン置換変異体をコードするcD
NAを作製した。各変異体のために使用したプライマーは以下の通り:
COS−7細胞におけるsCD14変異タンパク質の一過性発現
sCD14変異タンパク質を発現させるために、sCD14変異体cDNAを
含む哺乳動物発現ベクターを、COS−7(ATCC CRL 1651)細胞に
エレクトロポレーションで導入した。エレクトロポレーションの条件及びトラン
スフェクトされたCOS−7細胞からの血清を含まないCMの作製は、Juan,T.S
.-C.ら、J.Biol.Chem.270,1382-1387(1995)に記載の通りであった。変異sCD
14の発現を、抗CD14ポリクローナル抗体を用い、ウエスタンブロットで分
析した。sCD14変異体と3C10mAbの相互作用のBIAcore分析
中和モノクローナル抗体3C10によるsCD14変異体タンパク質の認識を
、BIAcoreバイオセンサー装
置で実験した。装置、CM5センサーチップ、及びアミン結合キットは、Pharma
cia Biosensor(Piscataway,NJ)から購入した。要約すれば、mAb 3C10
(20mM酢酸ナトリウム(pH3.4)中200μg/mL)を、製造業者の
説明書の通り、アミン結合によってCM5センサーチップに固定化した。それか
ら、3C10を固定化したフローセルを、以下のステップで詳述の溶液と順次イ
ンキュベートした:ステップ1、COS−7 CM、2分間及びステップ2、H
BS緩衝液[10mM N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N′−2−エタ
ンスルホン酸、pH7.5、0.15M NaCl、3.4mM EDTA、0
.005%(v/v)界面活性剤P20(Pharmacia Biosensor)]、2分間。
再生のためには、10mM HCl溶液を2分間注入した。注入は5μL/分の
流速で行った。COS−7 CM中のsCD14変異体の、固定化3C10への
結合を定量化するために、相対的応答ユニット(RRU)を計算した。CM注入
及び2分間洗浄後に記録された応答ユニット(RU)から、CM注入直前に記録
されたRUを差し引くことにより、RRUを得た。sCD14(7-10)Aの精製
sCD14(7-10)AをコードするcDNAを含む発現ベクターを、Hailman,E.
ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994)に記載の通りジヒドロ葉酸還元酵素欠損チ
ャイニーズハムスター巣(CHO)細胞に安定にトランスフェトした。無血清培
地中で単一のクローンを生育させ、sCD14(7-10)Aを含むCMを産生させた
。セファロース4B(Pharmacia,Piscataway,NJ)に結合した抗CD14ポリク
ローナル抗体を用いて免疫アフィニティクロマトグラフィーを行ったことを除い
て、正確にJuan,T.S.-C.ら、J.Biol.Chem.270,5219-5224(1995)に記載の通り
に、変異タンパク質を精製した。サンプルの純度を、SDS−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、次に銀染色又はクーマシーブルー染色で
チェックした。変化したアミノ酸配列は、N−末端配列決定で証明した。U373バイオアッセイ
U373細胞(ATCC HTB17,Rockville,MD)の生育、精製sCD1
4調製物による活性化、及びIL−6の定量は、Juan,T.S.-C.ら、J.Biol.Chem
.270,1382-1387(1995)に記載の通り正確に行った。要約すれ
ば、sCD141-348又はsCD14(7-10)AとLPSの混合物を、血清無しの培
地中のU373細胞単層に加え、24時間インキュベートした。それから、上清
のIL−6をELISAで測定した。多形核白血球(PMN)接着アッセイ
フィブリノーゲンでコートされたプレートにPMNを接着させうるrLBPと
sCD14(7-10)A又はsCD141-348の能力を、以前に確立されたプロトコル
(Hailman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994);Juan,T.S.-C. ら、J.Biol.
Chem. 270,1382-1387(1995))により評価した。要約すると、PMNを、LP
S、rLBP、及びsCD14(7-10)A又はsCD141-348と10分間インキュ
ベートし、洗浄し、フィブリノーゲンでコートされた表面への接着をHailman,E
.ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994);Juan,T.S.-C.ら、J.Biol.Chem.270,
1382-1387(1995)に記載の通り測定した。このプロトコルでスムースLPSを使
用したとき、接着は完全にsCD141-348に依存する(Juan,T.S.-C.ら、J.Bi
ol.Chem.270,1382-1387(1995))。
LPSに結合し、LPS仲介のPMN接着を阻害する、高濃度でのsCD14(7-10)A
又はsCD141-348の能力も評価した。この実験で、PMN添加前に、
ラフLPS(Salmonella minnesota R60、10ng/ml)をrLBP(1μg
/mL)と示した濃度のsCD14(7-10)A又はsCD141-348と37℃で30
分間インキュベートした。PMNの接着は、上記の通り測定した。電気泳動移動度シフトアッセイ
U373細胞からの細胞まるごとの抽出液を調製し、転写因子NF−κBの活
性化を評価した。刺激1日前に、密度100万細胞/ウエルで、6穴プレートに
細胞を接種した。刺激のために、精製sCD141-348、sCD14Δ(57-64)(
Juan,T.S.-C.ら、J.Biol.Chem.270,5219-5224(1995))、又はsCD14(7-10 )A
を、最終濃度20ng/mlで、Re595 LPS20ng/mlの存在下
又は不存在下で20時間にわたって加えた。細胞を1×PBS(GIBCO-BRL)で
2度洗浄し、1%トライトンX−100(Sigma)を補充した溶解緩衝液(20
mM HEPES,pH7.9、20%グリセロール、0.1M KCl、1mM
EDTA、0.5mM ジチオトレイト
ール、1mM Pefabloc(Boehrinqer Mannheim)、5μg/mL ロイペ
プチン、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、2μg/mLアプロチニン)2
00μL中にかきとった。粗抽出液を微量遠心分離チューブに移し、細胞破片を
14、000×g、4℃、10分の遠心分離で分離した。抽出液を素早く液体窒
素で凍結し、−80℃で保存した。細胞まるごとの抽出液のタンパク質濃度をミ
クロBCAアッセイで測定したが、それは1.5−2μg/μLであった。
NF−κB複合体を試験するために、電気泳動移動度シフトアッセイを行った
。2種のオリゴヌクレオチド:
をアニールし、ヒト免疫不全ウイルスロングターミナルリピートプロモーター(
Nabel,G.及びBaltimore,D.Nature 326,711-713(1987))のNF−κB結合部位
を含む二本鎖DNAを産生させた。それから、このアニールさせたDNAフラグ
メントを、クレノーフラグメント( Boehrinqer Mannheim)とα−32PdCTP
(Amersham,Arlinqton Heiqhts,IL)で充填し、こ
れを、濃度50,000cpm/レーン(約25fmole)でプローブとして
使用した。結合のために、細胞まるごとの抽出液4μLを、5×結合緩衝液(1
50mM Tris−HCl,pH8.0、40mM MgCl2、5mM DTT
、10%グリセロール)4μL、(ポリdI−dC):(ポリdI−dC)(ph
armacia,piscataway,NJ)2.5μg、放射性標識DNAプローブ、及び溶解緩
衝液適当量(最終容量を20μL/反応にする)とインキュベートした。反応液
を30℃水浴で30分間インキュベートし、複合体を、0.5×TBE(50m
M Tris−HCl、pH8.0、45mMホウ酸、5mM EDTA)を使用
する未変性4.5%ポリアクリルアミドゲル(30mA、2時間)で分離した。
その後、ゲルを80℃で1時間真空乾燥し、コダックX線フィルムに20時間露
光した。。競合実験で、放射性プローブの添加前に、100倍モル過剰の非標識
NF−κBプローブを10分間プレインキュベートした。未変性PAGEアッセイ
精製sCD14調製物のLPS結合を直接評価するために、sCD141-348
又はsCD14(7-10)Aを種々の
濃度(0,101,303,909nM)で、E.coli K12株LCD25から
調製した3H−LPS(List Biological Laboratories)3μg/mLと、16
.7nM rLBPの存在下又は非存在下でインキュベートした。反応液を37
℃で30分間インキュベートし、それから未変性の4−20%ポリアクリルアミ
ドゲルで電気泳動した。ゲルを、以前にHailman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-27
7(1994)に記載された通りにフルオログラフィー用に調製した。全血におけるLPS誘導TNF−α産生の阻害
LPSに結合し、全血中でTNF−α産生を阻害する、sCD14の能力につ
いては、Haziot,A.ら、J.Immunol 152,5868-5876(1994)に記載されている。簡
単に説明すれば、種々の濃度の、50μL RPMI培地(GIBCO-BRL,Gaithersb
urg,MD)中に希釈した、ウシ血清アルブミン(Miles,New Haven,CT)、sC
D141-348又はsCD14(7-10)Aを、抗凝固剤としてヘパリンを使用して、2
50μLの新鮮採取血液に加えた。スムースLPS(Salmonella minnesota 野
生型)を、最終濃度0.25ng/mLで加えた。反応液を、37℃で3時間イ
ンキ
ュベートし、16,000×gで2分の遠心分離で上清を得た。上清のTNF−
α濃度を、製造業者が指示したように、Quantikine TNF−α ELISAキッ
ト(R&DSystems,Minneapolis,MN)を用いてアッセイした。
実施例1 アミノ酸7〜10又は11〜14のアラニン置換は、中和mAb 3C10とC D14への結合を完全に妨げる
3C10は、CD14のN末端152アミノ酸を認識するmAbである(Juan
,T.S.-C.ら、J.Biol.Chem.270,1382-1387(1995))。3C10は、sCD141- 348
の活性を中和することを以前の実験は示した(Wright,S.D.ら、Science 249
,1431-1433(1990);Hailman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994);Frey,E.A
.ら、J.Exp.Med.176,1665-1671(1992);Wright,S.D.ら、J.Exp.Med.173,128
1-1286(1991))。sCD14活性の中和がN末端152アミノ酸内のエピトープ
の結合によることを証明するために、3C10は、sCD141-348又はsCD
141-152によって仲介される、U373細胞のIL−6産生を阻害することを
本発明者らは証明した(データは示さず)。
mAb3C10に対するエピトープを調べるために、一連のアラニン置換変異
体を部位特異的変異誘発で産生させた(図2)。種々のsCD14変異体をコー
ドするcDNA配列を含むプラスミドをCOS−7細胞にトランスフェクトし、
これらの細胞からのCMを、sCD14変異タンパク質の発現についてウエスタ
ンブロットで試験した。sCD14(18-21)Aを除く全てのsCD14変異体は、
COS−7細胞で発現分泌された(図2)。その後、BIAcore分析(図3
)を用い、3C10に結合する変異体sCD14を含むCMの能力を試験した。
sCD14(7-10)A又はsCD14(11-14)Aを含むCMは、3C10に結合しな
いことが知見された。これらのデータは、アミノ酸7〜14の領域は、3C10
を認識するのに関与することを示唆する。
実施例2 sCD14(7-10)Aの精製及び特性決定
中和mAb 3C10はアミノ酸7〜14を認識するので、本発明者らは、C
D14のこの領域は、CD14の生物活性に重要な役割を果たしうるということ
を結論した。この領域の役割の理解の助けとするために、sCD14(7
-10)Aを発現する安定なCHO細胞系を作製し、この細胞系の無血清CMから変
異体タンパク質を精製した。還元SDS−PAGEで分析すると、精製sCD1
4(7-10)Aは見掛けの分子量55,000の位置に移動した(データは示さず)
。N末端配列決定により、アミノ酸7〜10はアラニン残基で置換されているこ
とを確認した。
実施例3 mAb 3C10は、精製sCD14(7-10)Aを認識しない
BIAcoreリアルタイム分析を再度使用して、mAb 3C10が精製s
CD14(7-10)Aに結合できるかどうかを測定した。図4は、sCD141-348は
固定化3C10を認識し、洗浄後2分で1800RUの増加を引起す(T=30
0でのHCl注入前のセンサーグラムのRUとT=0のsCD141-348の注入
前のそれを比較)ことを示し、以前の観察を確認した(Juan,T.S.-C.ら、J.Biol
.Chem.270,1382-1387(1995))。しかし、精製sCD14(7-10)Aは、3C10
を認識できず、ウシ血清アルブミンなどの無関連タンパク質を注入したときに観
察されるRU変化と同様なほんのわずかのRU変化を引
起したにすぎず(T=750の第2の洗浄後のセンサーグラムのRUを、T=0
のsCD141-348の注入前のそれと比較)、アミノ酸7〜10はmAb 3C
10結合に必要であることを示した。
実施例4 sCD14(7-10)Aは、LPSに対する細胞応答を仲介する能力の低下を示す
sCD14の7〜10の残基を変異させた結果を評価するために、2種の以前
に記載されたアッセイを使用し(Hailman,E.ら、J.Exp.Med.179,269-277(1994
);Juan,T.S.-C. ら、J.Biol.Chem. 270,1382-1387(1995);Frey,E.A.ら、J.
Exp.Med.176,1665-1671(1992))、sCD14(7-10)A生物活性を測定した。最
初に、LPSに対するU373細胞の応答を可能とするsCD14(7-10)Aの能
力を試験した。LPSの存在下、5ng/mLの小さい濃度のsCD141-348
の添加は、強いIL−6産生を可能とした(図5A)。対照的に、sCD14(7 -10)A
は、応答させる能力が大きく低下し、sCD141-348の応答と同様の応答
をさせるために、約10倍のタンパク質を必要とした(図5A)。
また、sCD14(7-10)Aが、PMNのフィブリノーゲンへのLPS誘発接着
を可能とするかどうかを試験した。図5Bは、sCD141-348の100ng/
mLが、スムースLPSとrLBPに対するPMNの強い接着応答を可能とした
ことを示す。しかし、10,000ng/mLのsCD14(7-10)Aを加えたと
きでさえ、非常にわずかの応答しか見られなかった。これらの知見は、アミノ酸
7〜10の領域はsCD14の生物活性に必要であることを確認する。
実施例5 sCD14(7-10)Aは、LPS存在下で転写因子NF−κBを活性化する能力の 低下を示す
細胞のLPS及びsCD14仲介活性化には、NF−κBなどの転写因子の活
性化を含むことが示されている(Sen,R.及び Baltimore,D.Cell 47,921-928(
1986); Lee,J.D.ら、J.Exp.Med.175,1697ー1705(1992); Baqasra,D.ら、Pr
oc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89,6285-6289(1992))。sCD14(7-10)Aの変異が
下流へのシグナル伝達に影響を与えるかどうかを評価するために、野生型又は変
異型sCD14で処理し
たU373細胞でのNF−κB活性化を試験した。LPS又はsCD14の非存
在下、U373細胞は、標識NF−κBプローブと複合体を形成する内因性NF
−κBを有する(複合体1、図6、レーン1)。LPSのみ又はsCD141-34 8
のみによる刺激は、NF−κB複合体1のわずかの増大及び新しいNF−κB
複合体のわずかの誘導を引起したが(複合体2、図6、レーン2及び3)、sC
D141-348とLPSの添加は、NF−κBの両方の複合体を大きく誘導した(
図6、レーン1と4を比較)。複合体1と2の両方はNF−κB特異的である。
何故ならば、U373細胞抽出液と共にプレインキュベートした100倍過剰の
非標識NF−κBオリゴヌクレオチドが両方の複合体の形成を阻止したからであ
る(データ示さず)。sCD14(7-10)AとLPSによるU373細胞の刺激は
、ゲル走査による定量でほんの5%のNF−κB活性化を引起した(図6、レー
ン6)。比較すると、LPSに結合しない変異体(sCD14Δ57-64)[註:
Δ57−64はアミノ酸57−64の欠失を意味する]によるU373細胞の刺
激では、LPSの存在下でさえ、NF−κB複合体を活性化できなかった(図6
、レーン8)。これらのデー
タは、sCD14(7-10)Aの欠陥が転写因子NF−κBのレベルで観察されるこ
とを示す。NF−κBの活性化はシグナル伝達における初期の事象なので(Gril
li,M.ら、Int.Rev.Cytol.143,1-62(1993)、これらのデータは、sCD14(7- 10)A
はシグナル伝達ができないことを示唆する。
実施例6 sCD14(7-10)AはLPSとの安定な複合体を形成する
sCD14(7-10)Aによるシグナル伝達の低下は、LPSとの結合における欠
陥に起因し得る。sCD14(7-10)AがLPSと正常に結合するか否かを直接評
価するために、sCD141-348又はsCD14(7-10)Aと3H−LPSとの安定
な複合体の検出に未変性PAGEアッセイを用いた。既に報告されている〔Ha
ilman,E.ら,J.Exp.Med.179,269−277(1994
)〕ように、sCD141-348とLPSとの安定な複合体の形成は、インキュベ
ーションの30分後に確認され(図7A)、rLBPを加えると、複合体の形成
に必要なsCD41-348の濃度が低下した(図7Bのレーン2
と図7Aのレーン2を比較されたい)。これは、rLBPがLPSのsCD14
への移動を促進するという上記所見〔Hailman,E.ら,前掲〕と一致す
る。興味深いことには、sCD14(7-10)AもrLBPの不在下に3H−LPSと
の安定な複合体を形成することができ、この複合体の形成もrLBPによって促
進された(図7Bのレーン5と図7Aのレーン5を比較されたい)。これらのデ
ータは、sCD14(7-10)AとLPSとの結合がin vitroでLBPによ
って促進されたり、LBPとは無関係に行われたりし得ることを裏付けるもので
あり、sCD14(7-10)Aの生物学的活性の低下は、LPSと結合し得ないため
ではないことを示唆している。
実施例7 高濃度のsCD14によるLPS誘発細胞応答の阻害
sCD14(7-10)AがLPSと結合し得ることをさらに確証するために、高濃
度のsCD14がLPS仲介による細胞の活性化を阻止する2種の細胞ベースア
ッセイを用いた。最初のアッセイでは、LPSにより誘発されるPMNのフィブ
リノーゲンへの接着を阻害するsCD141- 348
又はsCD14(7-10)Aの能力をテストした(図8A)。この実験では、一定
濃度のLPSとrLBPを増大量(1→100μg/ml)のsCD141-348
又はsCD14(7-10)Aと共にインキュベートした。どちらのタンパク質もLP
Sを中和し、LPSにより誘発されるPMNの接着を阻害し得た。
バキュロウイルス中で発現させた組換えsCD14について示されたように〔
Haziot,A.ら,J.Immunol.152,5868−5876(1
994)〕、全血アッセイでLPSが仲介するTNF−αの産生をsCD14(7 -10)A
が阻害し得るか否かも調べた。全血アッセイにおいて、増大量のsCD1
41-348又はsCD14(7-10)Aを加えるとTNF−αの産生が阻害された(図8
B)が、ウシ血清アルブミンを加えてもTNF−αの産生は阻害されず、これは
上記所見(Haziot,A.ら,前掲)を裏付けるものである。これらのデー
タは、sCD14(7-10)AがLPSともsCD141-348とも相互作用することを
立証している。
実施例1から7の考察
上記実施例において、mAb 3C10を中和するエピトープは、sCD14
の7〜14のアミノ酸領域にマッピングした。この領域でのアラニン残基の置換
により、3C10とsCD14との結合が阻止された。これらのデータは、3C
10エピトープがsCD14の最初の152アミノ酸内に位置し、残基57〜6
4のMEM−18のエピトープとは異なるという本発明者の先の知見〔Juan
,T.S.−C.ら,J.Biol.Chem.270,1382−1387(
1995);Juan,T.S.−C.ら,J.Bjol.Chem.270,
5219−5224(1995)〕と一致する。3C10エピトープがCD14
の機能にどのように貢献しているかを理解する助けとするために、sCD14(7 -10)A
を精製し、このタンパク質の細胞活性化能が非常に低いことを証明した。
該タンパク質がNF−κBの活性化を促進し得ないということは、sCD14(7 -10)A
がLPS仲介のシグナル伝達を支持し得ないことを示唆している。
sCD14(7-10)Aのシグナル伝達における欠陥は、該タンパタ質がLPSと
適切に結合し得ないとか、LBPと相互作用し得ないからではないと考えられる
。ゲル移動
(図7A)及び2種の細胞ベースアッセイ(図8)で調べたように、sCD14(7-10)A
はLPSと正常に結合し、rLBPはLPSのsCD14(7-10)Aへの移
動を促進する(図7B)。これらのデータは、3C10がsCD14とLPSと
の複合体に正常に結合するという本発明者の先の所見(Juan,T.S.−C
.ら,前掲)を裏付けるものである。これらの実験では、他の報告〔Wrigh
t,S.D.ら,Science 249:1431−1433(1990);
Viriyakosol,S.及びKirkland,T.N.,J.Biol
.Chem.270,361−368(1995)〕において測定されたLPS
−LBP複合体と細胞表面CD14との結合ではなく、LPSとsCD14(7-1 0)A
との直接結合を測定した。
sCD14(7-10)AはLPSと正常に結合するので、sCD14(7-10)Aのシグ
ナル伝達の欠陥は細胞膜にはっきり表れると考えられる。本発明者〔Frey,
E.A.ら,J.Exp.Med.176,1665−1671(1992)〕
及び他の研究者〔Pugin,J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A.,90,
2744−2748(1993);Haziot,A.ら,J.Immunol
.151,1500−1507(1993);Arditi,M.ら,Infe
ct.Immun.61,3149−3156(1993)〕は、LPS及び/
又はCD14と相互作用し且つシグナルを細胞質に伝達する膜貫通タンパク質の
存在を仮定した。従って、sCD14とこの膜貫通成分との相互作用には残基7
〜10が不可欠であると考えられる。あるいは、sCD14(7-10)Aは、細胞の
脂質二重層へのLPSの輸送に欠陥を有し得る。最近、本発明者は、sCD14
がLPSをHDL粒子〔Wurfel,M.M.ら,J.Exp.Med.18
1:1743−1754(1995)〕及びリン脂質小胞(Wurfel,M.
M.及びS.D.W.,原稿準備中)に迅速に行き来させることを証明し、従っ
て、結合したLPSを細胞形質膜へ輸送させるには残基7〜10が不可欠である
と考えられる。
実施例8 グラム陽性菌細胞成分はsCD14との結合に関してLPSと競合する
図9は、S.aureus(SACE)のフェノール抽出物中に存在するグラ
ム陽性菌分子がsCD14に結合し、結合部位に対してLPSと競合し得ること
を証明している。他のデータ(示さず)は、SACEがCD14依存的に細胞を
強く刺激することを示している。現在CD14上に規定されている結合部位は、
グラム陰性菌によって開始される応答だけでなくグラム陽性菌によって開始され
る応答にも関与し得る。略号の説明
上記実施例の項に用いられている略号は、BCIP:5−ブロモ−4−クロロ
−3−インドリルホスフェート−トルイジン塩;BPI:殺菌性/透過性増強タ
ンパク質;CHO:チャイニーズハムスター卵巣;CD:円二色性;CM:なら
し培地;HBSS:ハンクス平衡塩類溶液;IL−6:インターロイキン−6;
LALF:リムルス(Limulus)抗LPS因子;LBP:LPS結合タン
パク質;LPS:リポ多糖;NBT:p−ニトロブルーテトラゾリウムクロリド
;PAGE:ポリアクリルアミドゲル電気泳動;PBS:リン酸緩衝塩水;PM
N:多形核白血球;r:組換え体;RU:応答単位;sCD14:可溶性CD
14;ELTSA:酵素結合イムノソルベントアッセイである。
ここで本発明の説明を終えるが、当業者には、本明細書に記載されている本発
明の思想及び範囲を逸脱せずに多くの改変及び変更が可能であることは明らかで
あろう。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,SZ,U
G),AM,AT,AU,BB,BG,BR,BY,C
A,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,FI
,GB,GE,HU,IS,JP,KE,KG,KP,
KR,KZ,LK,LR,LT,LU,LV,MD,M
G,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO
,RU,SD,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,
TT,UA,UG,UZ,VN
(72)発明者 ジユアン,シヤオ・チー
アメリカ合衆国、カリフオルニア・93021、
ムーアパーク、ブロードビユー・ドライ
ブ・11373
(72)発明者 ライケンスタイン,ヘンリー・エス
アメリカ合衆国、カリフオルニア・73004、
ベンチユラ、リユーサーン・ストリート・
9586
(72)発明者 ライト,サミユエル・デイー
アメリカ合衆国、ニユー・ヨーク・10538、
ラーチモント、ブライアー・クローズ・2