JPH022653B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は内燃機関用のピストンリング、特にテ
ーパフエイス形ピストンリング（以下、テーパリ
ングと略称する）の製造方法に関する。

（従来の技術） 近年の高速内燃機関に於いてはシリンダとの摺
動面に微小な傾斜をもたせたテーパリングがその
性能上の理由から要求されるようになつた。

すなわち外周面にテーパをつけてシリンダとの
摺動面の当り面積を少なくしたことによつて面圧
が高まり、運転初期におけるなじみ性を向上さ
せ、短時間でオイル消費、ブローバイを安定させ
ることができるようになつた。さらにテーパリン
グはピストンの上昇行程においてすべり面に適正
な油膜を形成しやすく、下降行程では余分なオイ
ルをかき下げる効果がある。

またテーパリングはそのテーパの起点、すなわ
ち外周面の下端のコーナー部を鋭角のままで残す
とコーナー欠けが発生するか、あるいはシリンダ
内壁に条痕を付けるので好ましくなく、特に硬質
クロムメツキを施したものにおいては一層深い条
痕を付けるので、コーナー部に通常0.2mm程度の
面取りを施すことが行なわれている。

この下端コーナー部の面取り寸法はブローバイ
をさらに減少させるためには微小であることが必
要であるが、特にコーナー部を挾む外周面と下面
において0.1mm以下の微小な面取りを形成するた
めの製造方法として以下に挙げる方法があつた。

） 外周面において、バイト等による切削加工
により面取りを行なつた後、メツキ等の耐摩耗
層を形成し、しかる後テーパ面を形成するため
の研削加工を行なう（第１図イ〜ハ）。

） 前記した）の方法で十分に小さな面取り
が得られない場合は）の工程に続いてさらに
リング下面の研削を行なつて微小な面取りを形
成する。

） メツキ等の耐摩耗層を形成した後、テーパ
研削により下端のコーナー部を鋭角にし、しか
るのち微小な面取り研削を行なう（第２図イ〜
ハ）。

（発明が解決しようとする問題点） 以上に述べた従来方法においては以下のような
問題点がある。すなわち、）の方法では耐摩耗
層の形成厚さとテーパ研削量を一定にすることが
困難であり、最終仕上げ寸法にばらつきが出やす
い。）の方法では工数が多くなり、量産に向か
ない。また）の方法では最終の面取り研削のみ
で目標とする微小な面取り寸法を実現することは
困難であり工数も多くなる。

以上に鑑みて本発明は、テーパリング下端のコ
ーナー部において微小な面取り、特に0.1mm以下
の面取りを形成するための効果的な製造方法を提
供することを目的とするものである。

（問題点を解決するための手段） 前記の目的を可能にする本発明にかかるピスト
ンリングの製造方法は、リング外周面において上
端と下端のコーナー部に上下非対称で上端よりも
下端の方が小さい面取りが形成される如く切削等
の機械加工を行なう第１工程と、該外周面に耐摩
耗層を形成する第２工程と、該外周面をテーパ形
状にするとともに下端のコーナー部を鋭角にする
如く研削加工を行なう第３工程と、該外周面にバ
フ研摩を施すことによつて下端のコーナー部に微
小な面取りを形成する第４工程からなることを特
徴とする。

また、必要に応じてバフ研摩の後、さらにラツ
ピング仕上げを行なう。

以下、本発明を図面を参照して詳述する。

まず第３図に示すように、リング１０の外周面
１２において上端と下端のコーナー部１４，１６
に上下非対称で上端コーナー部１４よりも下端コ
ーナー部１６の方が小さい面取りが形成される如
くバイト１８等により切削加工を行なうが、この
面取りは引き続いて行なわれる工程で硬質クロム
メツキ等の耐摩耗層を形成する際の付着状態を良
好にするとともに、メツキ後のばらしを容易にす
るためのものである。上下非対称の面取り量は耐
摩耗層の厚さと後のテーパ研削、及び微小面取り
の大きさを考慮して注意深く設定されるが、おお
むね上端コーナー部１４に対して下端コーナー部
１６が1/3〜1/2の大きさにするのが適当である。

次に第４図に示すように、硬質クロムメツキ等
の耐摩耗層２０を形成した後、外周面下端のコー
ナー部１６を鋭角にする研削加工によりテーパ形
状とする。

最後に第５図に示すように、外周面１２にバフ
２２を当てて研摩することによつて外周面下端の
コーナー部１６に微小な面取りを形成する。弾性
があり、精密な研摩能力のあるバフ２２を当てる
ことによりバフ２２は図示するようにリングの下
面に回り込み、コーナー部１６を挾む外周面と下
面において鋭角項点より各々0.1mm以下の微小な
丸みのある面取りが形成される。

また必要に応じてバフ研摩の後、リングの真円
当たりを良くするために通常のラツピング仕上げ
を行なう。

（実施例） 第３図に示した方法により、リング径137mm、
軸方向幅3.5mm、半径方向幅5.4mmの鋳鉄製ピスト
ンリング素材において、バイト切削によりリング
外周面の上端に0.35mm、下端に曲率半径0.15mmの
面取りを形成した。

次に外周面に厚さ0.23mmの硬質クロムメツキ層
を形成した後、第４図に示した方法により外周面
の上端で0.13mm、下端で0.09mm切削して傾斜角度
50分のテーパ面を形成するとともに下端のコーナ
ー部を鋭角にした。

次に第６図に示すように、各々の間にワツシヤ
ー２４，２４，…を挾んで研摩盤のセンター間に
セツトされた20本のリング１０，１０，…の外周
面に、回転軸にセツトしたバフ２２を当てて両者
を反対方向に回転すると同時に、バフ２２を回転
軸方向に送り移動させることによつてリング外周
面下端のコーナー部に外周面において鋭角項点よ
り0.07mm、下面において鋭角項点より0.05mmが除
去された曲面取りを形成した。

最後にラツピングによる仕上げ研摩を行なうこ
とにより、外周面における除去部分が外周面にお
いて交差角項点より0.04mm、下面において交差角
項点より0.03mmの面取りが形成された。

バフ研摩の条件は以下の通りであつた。

ワーク回転数：330rpm バフ回転数：1500rpm バフ送り移動速度：10mm/s バフ材：酸化アルミニウムを含浸させた市販の
不織布 （発明の効果） 以上述べたように、本発明の方法はテーパリン
グの外周面下端コーナー部の面取りに際して、弾
性があつて精密な研摩能力のあるバフ研摩を用い
たことにより微小な面取りを可能にしたものであ
り、大量生産にも適した方法である。本発明によ
つて製造されるテーパリングは特に、外周下端の
面取り部分からの燃焼ガスの吹き抜けを低減する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図と第２図は従来のテーパリングの製造方
法を示したものである。第３図〜第６図は本発明
の製造方法を工程順に示したものである。 符号の説明 １０……ピストンリング、１２…
…外周面、１６……下端コーナー部、２２……バ
フ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ テーパ形状の当り面を有するピストンリング
   の製造方法であつて、外周面において上端と下端
   のコーナー部に上下非対称で上端よりも下端の方
   が小さい面取りが形成される如く切削等の機械加
   工を行なう第１工程と、該外周面に耐摩耗層を形
   成する第２工程と、該外周面をテーパ形状にする
   とともに下端のコーナー部を鋭角にする如く研削
   加工を行なう第３工程と、該外周面にバフ研摩を
   施すことによつて下端のコーナー部に微小な面取
   りを形成する第４工程からなることを特徴とする
   ピストンリングの製造方法。 ２ 前記の第４工程の後、さらに外周面にラツピ
   ング仕上げを行なうことを特徴とする特許請求の
   範囲第１項記載のピストンリングの製造方法。 ３ 前記の第４工程において外周面下端のコーナ
   ー部に形成する微小な面取りは、コーナー部を挾
   む外周面と下面において鋭角項点より各々0.1mm
   以下の曲面取りであることを特徴とする特許請求
   の範囲第１項記載のピストンリングの製造方法。