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JPH09156964A - 光吸収性反射防止体 - Google Patents

光吸収性反射防止体

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Publication number
JPH09156964A
JPH09156964A JP7324886A JP32488695A JPH09156964A JP H09156964 A JPH09156964 A JP H09156964A JP 7324886 A JP7324886 A JP 7324886A JP 32488695 A JP32488695 A JP 32488695A JP H09156964 A JPH09156964 A JP H09156964A
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film
light
antireflection
absorbing
thickness
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JP7324886A
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Takuji Oyama
卓司 尾山
Yoshihito Katayama
佳人 片山
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Asahi Glass Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】適度な光吸収率と反射防止性能とを有し、耐熱
性にも優れる光吸収性反射防止体を低コストで生産す
る。 【解決手段】基板10上に基板10側から、光吸収膜1
1と、シリカ膜13とを順に形成してなる光吸収性反射
防止体において、光吸収膜11の膜厚が5〜25nmで
あり、かつ、シリカ膜13の膜厚が70〜110nmで
あることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光吸収性反射防止
体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピュータの急速な広がりとと
もに、端末オペレータの作業環境を改善するために、デ
ィスプレイ表面の反射低減やCRT(陰極線管)表面の
帯電防止が要求されつつある。また、最近では、さら
に、コントラスト向上のためにパネルガラスの透過率を
低下させたり、人体に影響を及ぼす極低周波の電磁波を
遮蔽することが求められてきている。
【0003】これらの要求に応えるための方法として、
(1)パネル表面に導電性の反射防止膜を設ける、
(2)CRTなどの表示画面用フェイスプレート表面に
導電性反射防止膜を設け、これをパネル表面に樹脂で貼
り付ける、(3)両面に導電性反射防止膜を設けたフィ
ルタガラスをブラウン管の前面に設置する、などの方法
が採られている。
【0004】このうち(2)、(3)の場合には、真空
蒸着法により多層に反射防止膜を形成するのが一般的で
ある。具体的な膜構成の例としては、例えば特開昭60
−168102号公報に示されたものなどが挙げられ
る。該公報には、低屈折率誘電体膜、高屈折率誘電体
膜、高屈折率導電膜、を組み合わせて反射防止膜を構成
することが記載されている。これらの膜構成による多層
反射防止膜を表面にコーティングすることにより、表面
の視感反射率を0.3%以下、表面のシート抵抗を1k
Ω/□以下とすることができ、かつ上記の電磁波遮蔽効
果を付与できる。
【0005】また、コントラストを上げるための方法と
して、吸収膜をその構成の一部に使用することが有効で
あることが知られている。例えば、特開昭64−707
01号公報には、ガラス基体上に膜厚4nmのステンレ
ス膜、膜厚29nmの酸化チタン膜、膜厚95nmのシ
リカ膜を順次、真空蒸着法により形成した例が示されて
おり、この構成の多層吸収性反射防止膜を表面にコーテ
ィングすることにより、表面の視感反射率を0.3%以
下、表面のシート抵抗値を1kΩ/□以下となしうる。
また、同時に可視光透過率を数十%低下させ、高コント
ラスト化を達成できる。
【0006】一方、(1)の方法については、(a)パ
ネルにコーティングを施した後ブラウン管に成形する場
合と、(b)ブラウン管を成形した後表面コーティング
を行う場合とがあるが、いずれの場合もスピンコーティ
ングなどのいわゆる湿式法によっているのが現状であ
る。
【0007】これは、上述の真空蒸着法などのいわゆる
乾式法では、(a)の場合には成膜後のブラウン管成形
工程における熱処理により、膜特性が変化し、所期の性
能が得られないという問題があり、また、(b)の場合
にはブラウン管全体を真空槽に設置する必要があるため
体積的かつ重量的な制限があるうえ、取り扱いが難しい
という問題があったためである。
【0008】また、乾式法の代表的な成膜法であるスパ
ッタリング法においては、反射防止膜を構成するために
必須の低屈折率材料であるSiO2 の高速安定成膜に難
点があり、大面積の反射防止膜を工業的に生産する技術
は確立されていなかったのが現状であった。
【0009】しかし、最近では、前述したような要求特
性の高度化に伴い、湿式法による表面処理では次のよう
な問題が生じはじめている。すなわち、(1)湿式法で
は膜厚の制御が乾式法に比べ難しく、反射防止性能のよ
い3層以上の多層膜構成となると再現性や均一性が問題
となる、(2)湿式法で実現されているシート抵抗値の
下限はこれまでのところ103 kΩ/□程度までであ
り、帯電防止には充分であるが電磁波遮蔽に要求される
1kΩ/□は困難である、(3)反射防止性能を損なわ
ずに吸収性を付与することが難しい、などである。
【0010】一方、蒸着法では上述の膜特性の熱安定性
の他に、成膜コストが湿式法に比べかなり高くなる問題
があり、より安価な成膜方法の実現が求められていた。
【0011】これらの背景から、最近になって安定かつ
高速にSiO2 をスパッタリング法により形成する方法
の開発が盛んに行われた結果、いくつかの方法が実現さ
れつつある。例えば、米国特許4445997号明細書
に見られるMMRS(metal mode reactive sputtering)
や、米国特許4851095号明細書のC−Mag(cyl
indrical magnetron) などである。
【0012】この結果、スパッタリング法による反射防
止膜が現実のものになりつつあるが、反射防止膜の構成
については従来、真空蒸着法により形成されていた膜構
成に準ずることが多く、スパッタリング法において特に
有効な膜構成についてはこれまであまり知られていな
い。
【0013】反射防止膜の従来例としては次のようなも
のが知られている。例えば、J.D.Rancourt著「Optical
Thin Films User's Handbook」(McGRAW-HILL,1987)の
128頁には屈折率2.35の基体上に複素屈折率(n
−ik)=2−i2の吸収膜とn=1.65の透明膜
を、この順にそれぞれ、3nm、75.8nm形成した
場合の分光反射曲線が示されている。
【0014】しかし、この場合、提示されているのは理
論的計算値であり、かつ、反射特性は反射防止の基本構
成である透明2層膜が示す、単一波長でのみ反射をゼロ
にする、いわゆる「Vコート」に相当するものとして説
明されているものであり、広範囲の波長領域(例えば5
00〜650nm)において低反射性を示すものではな
かった。
【0015】また、米国特許5091244号明細書に
は、基体側からの入射光(膜面側とは反対側からの入射
光)に対する反射を低減させるための構成として、基体
側から順に遷移金属窒化物膜、透明膜を、それぞれ6〜
9nm、2〜15nmの膜厚で形成することが記載され
ている。
【0016】適当な光学定数を有する吸収膜を薄く形成
した場合、基体側からの反射率が下がることは、例えば
「Thin-Film Optical Filters 」H.A.Macleod,McGRAW-H
ILL,2nd Ed.,pp65-66 (1989)に記されている通りであ
り、該米国特許5091244号明細書は、さらにSi
2 を薄く(2〜15nm)積層している。
【0017】しかし、この構成は、基体側からの反射低
減を目的として設計された膜厚による構成となってい
る。吸収膜を含む多層膜の場合、表裏面の反射は全く異
なるため、基体側からの反射低減のために発明されたこ
の構成では、膜面側からの反射率は可視光領域にわたっ
て約10%であり、低反射性能は全く得られない。
【0018】また、米国特許5091244号明細書に
は、膜面側の反射を低減させる構成として、ガラス/遷
移金属窒化物/透明膜/遷移金属窒化物/透明膜の4層
構成が例示されている。
【0019】しかし、その目的とするところは、可視光
線透過率を50%以下にすることであり、吸収層を2層
に分け、層数を4層以上とすることによってこれを実現
させており、製造コストの点から実用上問題があった。
【0020】以上のように、吸収膜を構成要素として含
み、基本的に2層構成で製造コストが低く、膜面側から
の入射光に対して、広範囲の波長領域において低反射性
を有する膜構成はこれまで知られていなかった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
上述のような欠点を解消しようとするものであり、広範
囲の波長領域における充分な低反射性能と、電磁波遮蔽
に対応可能な充分な低表面抵抗値と、高いコントラスト
を確保するための適度な可視光線吸収率とを有し、か
つ、生産性に優れた安価な光吸収性反射防止体の提供を
目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は、基体上に基体
側から、光吸収膜と、シリカ膜とをこの順に形成してな
る、シリカ膜側からの入射光の反射を低減させる光吸収
性反射防止体において、光吸収膜の幾何学的膜厚が5〜
25nmであり、かつ、シリカ膜の幾何学的膜厚が70
〜110nmであることを特徴とする光吸収性反射防止
体(以下、第1の発明という)を提供する。
【0023】本発明は、また、基体上に基体側から、光
吸収膜と、高屈折率透明膜と、シリカ膜とをこの順に形
成してなる、シリカ膜側からの入射光の反射を低減させ
る光吸収性反射防止体において、光吸収膜の幾何学的膜
厚が15〜30nmであり、高屈折率透明膜の幾何学的
膜厚が10〜40nmであり、かつ、シリカ膜の幾何学
的膜厚が50〜90nmであることを特徴とする光吸収
性反射防止体(以下、第2の発明という)を提供する。
【0024】第1の発明における光吸収膜の幾何学的膜
厚(以下、「幾何学的膜厚」を単に「膜厚」という)
は、低反射を実現させるため5〜25nmであり、か
つ、シリカ膜の膜厚は、やはり反射防止の点から70〜
110nmであることが重要である。いずれかの層の膜
厚がこの範囲を逸脱すると、可視光領域における充分な
反射防止性能が得られなくなる。特に、光吸収膜の膜厚
範囲としては、7〜20nmであることが可視光領域に
わたる低反射性を実現できることから好ましい。
【0025】また、シリカ膜(好ましくは屈折率1.4
6〜1.47のシリカ膜)の膜厚範囲としては、80〜
100nmであることが低反射波長域を可視光領域の中
心部に合わせることができることから好ましい。
【0026】シリカの膜厚は80nm超85nm以下で
あることが特に好ましい。シリカの膜厚が80nm以下
では長波長側の反射率が大きくなる傾向が現れ、85n
mを超えると短波長側の反射率の立ち上がりが長波長側
にずれてくる。
【0027】さらに、耐熱性の観点からは、第1の発明
における光吸収膜の膜厚は、10〜20nmであること
が望ましい。膜厚が10nm未満では、熱処理時の低反
射性能や表面抵抗値の劣化が大きくなり、また、膜厚が
20nmを超えると、耐熱性は向上するが反射防止領域
が狭くなる。
【0028】一方、成膜後の低反射性能の観点からは、
第1の発明における光吸収膜の膜厚は、7〜15nmで
あることが望ましい。膜厚が7nm未満では、長波長側
の反射率が上昇する傾向が顕著となり、また、膜厚が1
5nmを超えると、低反射波長領域が狭くなる。
【0029】また、光吸収膜の膜厚は8nm超13nm
未満であること、特に、8nm超10nm以下であるこ
とが好ましい。光吸収膜の膜厚が8nm以下では、長波
長側の反射率が大きくなる傾向が現れ、13nm以上で
は短波長側の反射率の立ち上がりが長波長側にずれると
ともに、長波長側の反射率の立ち上がりが短波長側にず
れて、低反射領域が狭くなる傾向にある。
【0030】第1の発明の光吸収性反射防止体は優れた
反射防止特性を示すが、前述のようなブラウン管の成形
過程における熱処理工程で特性の劣化が見られる場合が
ある。この特性変化は主に、光吸収膜の酸化によって引
き起こされるものである。
【0031】また、第1層として光吸収膜を形成した
後、第2層のシリカ膜を成膜する際に該光吸収膜が酸化
してしまい、所望の特性が得られない場合がある。
【0032】そこで、該光吸収膜とシリカ膜との間に、
光吸収膜の酸化を防止する層(以下、酸化バリア層とい
う)を挿入することにより、成膜時の酸化を防いだり、
耐熱性を向上させることができる。
【0033】この種の酸化バリア層は、銀膜を使用した
いわゆるLow−Eガラスにおいては広く実施されてい
るものであり、例えば、米国特許4548691号明細
書および特開昭59−165001号公報には、銀膜上
に続いて形成される酸化膜の成膜時に、銀膜が酸化され
ることを防ぐ目的で、バリア層を形成することが示され
ている。このように、このバリア層は、その下に形成さ
れている別の層の酸化を防ぐために形成される薄膜であ
り、光学的には意味を持たないものである。
【0034】この酸化バリア層としては、各種の金属膜
や金属窒化物膜を使用できる。その膜厚は本来の反射防
止性能を損なわないために20nm以下であることが望
ましい。また、この酸化バリア層の膜厚が1nm未満で
あると耐熱性の向上が不充分となる。したがって、1〜
20nmの膜厚の酸化バリア層を挿入すると耐熱性を効
果的に向上させうることから好ましい。
【0035】上述したように、酸化バリア層は、光学的
には意味を持たず、光学的には不必要な層であるため、
この層の挿入により反射防止性能が劣化する場合があ
る。特に、酸化バリア層が光吸収性(例えば光吸収性の
窒化シリコン)である場合は、酸化バリア層の厚みはお
おむね5nm以下にしないと反射防止性能が著しく劣化
してしまう。
【0036】透明な酸化バリア層を用いる場合は、この
層の屈折率により許容される膜厚が異なる。屈折率がお
よそ2.0の材料(例えば窒化シリコンや窒化アルミニ
ウム)を用いた場合に最も許容膜厚が大きくなり、およ
そ20nmまでのバリア層を下層の窒化物層と上層のシ
リカ層との間に、低反射特性を維持しながら挿入するこ
とができる。
【0037】酸化バリア層としては、クロム、モリブデ
ン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタル、亜
鉛、ニッケル、パラジウム、白金、アルミニウム、イン
ジウム、スズおよびシリコンからなる群の少なくとも1
種の金属を主成分とする膜またはこれらの窒化物を主成
分とする膜、あるいは、チタン、ジルコニウムおよびハ
フニウムからなる群の少なくとも1種の金属を主成分と
する膜、を用いると、充分な酸化防止性能の向上と、優
れた反射防止特性の維持を両立させうるので好ましい。
【0038】特に、シリコンを主成分とする膜またはシ
リコンの窒化物を主成分とする膜は、酸化バリア性能に
優れるうえ、シリカ膜を導電性のSiターゲットを用い
て成膜する場合は、ターゲット材料を増やす必要がない
点で、生産上有利である。
【0039】第1の発明における光吸収性反射防止体の
光吸収率は、シリカ膜側から入射する可視光に対して1
0〜35%であることが望ましい。光吸収率がこの範囲
を逸脱する場合は、光吸収膜の膜厚範囲が不適当であ
り、または光吸収膜の光学定数が不適当であり、したが
って、可視光領域における充分な反射防止性能が得られ
なくなる。
【0040】第2の発明における高屈折率透明膜として
は、屈折率が1.7以上の材料を用いることが好まし
い。屈折率が1.7より小さいと、高屈折率透明膜を挿
入したことによる反射防止性能の向上がほとんど見られ
なくなる。具体的な材料としては、例えば、Y23
ZrO2 、ZnO、SnO2 、Ta25 、TiO2
どを使用できる。
【0041】また、ITOなどの透明導電膜も使用でき
る。この場合、表面抵抗は、光吸収膜層とこの透明導電
膜層との並列抵抗で決まるため、光吸収膜、例えば窒化
チタン膜のみで導電性を発現させる場合に比べて低抵抗
化が容易となる。
【0042】第2の発明における光吸収膜の膜厚は、低
反射を実現させるため15〜30nmであり、高屈折率
透明膜の膜厚は10〜40nm、かつ、シリカ膜の膜厚
は、やはり反射防止の点から50〜90nmであること
が重要である。いずれかの層の膜厚がこの範囲を逸脱す
ると、可視光領域における充分な反射防止性能が得られ
なくなる。
【0043】第2の発明の光吸収性反射防止体において
も、酸化バリア層を設けうる。第2の発明の光吸収性反
射防止体においては、光吸収膜と高屈折率透明膜との
間、または、高屈折率透明膜とシリカ膜との間に、膜厚
が1〜20nmの酸化バリア層を形成できる。
【0044】酸化バリア層としては、前述した第1の発
明の光吸収性反射防止体において好ましく用いられる材
料が、同様に好ましく用いられる。
【0045】第2の発明における光吸収性反射防止体の
光吸収率は、シリカ膜側から入射する可視光に対して3
0〜60%であることが望ましい。光吸収率がこの範囲
を逸脱する場合、光吸収膜の膜厚範囲が不適当であり、
または光吸収膜の光学定数が不適当であり、したがっ
て、可視光領域における充分な反射防止性能が得られな
くなる。
【0046】第1および第2の発明における基体として
は、ガラスまたはプラスチックを使用できる。特に、デ
ィスプレイ用の表示面の前面を構成する、ガラス基体、
プラスチック基体、またはプラスチックフィルムである
と、本発明の効果が充分に発揮されるので好ましい。
【0047】ディスプレイの前面に用いられる基体とし
てのガラスとしては、例えば、ブラウン管を構成するパ
ネルガラス自身や、ブラウン管に樹脂で貼り付けて使用
されるフェイスプレートガラス、ブラウン管と操作者と
の間に設置されるフィルタガラスなどが挙げられる。そ
の他、液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネルな
どのフラットディスプレイの前面ガラスなどが挙げられ
る。
【0048】また、ディスプレイの前面に用いられる基
体またはフィルムとしてのプラスチックとしては、例え
ば、1)ブラウン管や前記フラットディスプレイの前面
ガラスに樹脂で貼り付けて使用されるPET(ポリエチ
レンテレフタレート)などの透明なフィルム状プラスチ
ックや、2)ブラウン管と操作者との間に設置されるフ
ィルタ基体としての透明なプラスチックや、3)フラッ
トディスプレイの前面を形成する透明なプラスチック板
などが挙げられる。
【0049】本発明の光吸収性反射防止体を利用した例
を図17に示す。図17の(A)〜(C)は、それぞ
れ、本発明の光吸収性反射防止体をCRT、パネルガラ
ス、およびCRT前面に貼り付けられるプラスチックフ
ィルムに応用した例を示す。
【0050】図17に示すように、観測者側の基体表面
にのみに前記反射防止膜が形成された本発明の光吸収性
反射防止体は、きわめて優れた反射防止特性を有する。
また、電磁波を発生する基体の表面に直接に前記反射防
止膜が形成されているので、電磁波をきわめて有効に遮
蔽できる。
【0051】なお、本発明の光吸収性反射防止体を前記
フィルタガラスに応用する場合は、観測者とは反対側の
基体表面にも反射防止膜を形成するとよい。
【0052】第1および第2の発明における光吸収膜と
しては、その上に形成されるシリカ層との光干渉効果に
より、表面反射率を実質的に低減させる材料を用いる。
【0053】前記光吸収膜としては、チタン、ジルコニ
ウム、およびハフニウムからなる群から選ばれる少なく
とも1種の金属や、該金属の窒化物を主成分とするもの
などが挙げられ、なかでも、チタン、ジルコニウム、お
よびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種
の金属の窒化物を主成分とするものが、可視光領域にお
ける屈折率および消衰係数の分散関係から好ましく、そ
の光学定数の値により、可視光領域での低反射領域が広
がるという特長がある。
【0054】光吸収膜に2種以上の材料を用いる場合、
1)複合材料として用いてもよく、2)異なる材料から
なる膜を合計膜厚が5〜25nmとなるように積層して
用いてもよい。
【0055】さらに、チタンの窒化物を主成分とする膜
は、その光学定数の可視光領域における値がシリカ膜と
よくマッチングして反射率を低減させるとともに、吸収
係数の値が適当で、ほどよい光吸収率を得るための膜厚
が数nm〜数十nmの範囲となるため、生産性の点から
も再現性の点からも特に好ましい。
【0056】光吸収膜として金属の窒化物を主成分とす
るものを用いる場合、前述の酸化バリア層として窒化物
を主成分とする膜を用いると、第1層と酸化バリア層を
同じガス雰囲気中で、スパッタリングにより成膜でき
る。これは、現実のスパッタリングによる成膜設備を想
定した場合には大きな長所となる。
【0057】すなわち、量産性に優れたいわゆるインラ
イン型のスパッタリング装置を考えた場合、これらの光
吸収膜と酸化バリア層とを同一チャンバ(チャンバAと
いう)内で成膜できる。したがって、ガス分離のための
チャンバは、続いて上層に形成されるシリカ膜成膜用の
チャンバとチャンバAとの間にのみ設ければよいことに
なり、きわめて効率的である。
【0058】特に、第1層として窒化チタンを主成分と
する膜を用い、酸化バリア層として窒化シリコンを用い
た場合、窒化チタン膜と最外層のシリカ膜の付着力が向
上する効果も得られる。この場合、両者を同一チャンバ
内で成膜するインライン式スパッタリング法により形成
すると、好適な窒化チタンの得られるスパッタリングガ
ス条件では酸化バリア層の窒化シリコン膜は光吸収性と
なる。なお、付着力向上の効果は同様に得られる。
【0059】第1および第2の発明における光吸収膜、
高屈折率透明膜およびシリカ膜の形成手法としては、一
般的な薄膜形成手段を採用できる。例えば、スパッタリ
ング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法などであ
る。
【0060】特に、DCスパッタリング法は、膜厚の制
御が比較的容易であること、低温基体上に形成しても実
用的な膜強度が得られること、大面積化が容易なこと、
いわゆるインライン型の設備を用いれば積層膜の形成が
容易なこと、などの点から好ましい。また、光吸収膜と
して好ましいチタン、ジルコニウム、ハフニウムの窒化
物が、好ましい光学定数を持つように成膜条件を調整す
ることが比較的容易であることも有利な点である。
【0061】また、インライン型のスパッタリング装置
を用いる場合には、搬送の幅方向の膜厚分布は、マスク
板の設置やカソード磁石の磁場強度分布などによりある
程度調整できる。このため、基体としてディスプレイの
前面に用いられる基体を用いる場合、基体の周辺部の膜
厚を中央部に比べてわずかに厚く設定することが可能と
なる。このような膜厚分布を基体上で持たせることによ
り、中央から画面の周辺部を見る場合に、光の斜め入射
効果により反射色が黄色または赤色にずれる現象を緩和
することができ、実用上好ましい。
【0062】真空蒸着法は基体加熱が必須となること、
大面積化が困難なこと、よい窒化物を得るのが比較的難
しいことなどが欠点であるが、比較的小さい、高温に耐
える基体材料であれば、プロセスとしては従来より最も
完成されている点で有利である。
【0063】CVD法はさらに高温を必要とし、膜厚分
布の点から大面積化が困難であるが、よい窒化物を得る
には優れた方法である。
【0064】ゾルゲル法は、従来の技術の項で述べた湿
式法であり、ブラウン管への表面処理技術としての実績
がある。よい窒化物を得るのは比較的困難であり、1枚
ずつのバッチ処理となるが、設備投資が小さいため少量
生産時にはコスト面で有利となる可能性がある。
【0065】これらの手法を組み合わせても本発明の光
吸収性反射防止膜を形成できる。例えば、第1層の光吸
収膜を、比較的好ましい光学定数の得られやすいスパッ
タリング法により形成した後、高屈折透明膜および/ま
たはシリカ膜を、成膜コストの優れる湿式法のスピンコ
ートにより形成できる。また、同様に、第1層の光吸収
膜をCVD法により形成した後、高屈折透明膜および/
またはシリカ膜を、成膜コストの優れる湿式法のスピン
コートにより形成できる。
【0066】この場合、スピンコート液によっては、第
1層として既に形成されている光吸収膜を侵食する場合
があり、その結果所望の特性が得られない場合がある。
例えば、0.1N塩酸、テトラエトキシシランおよびエ
チルアルコールからなるスピンコート液を用いる場合な
どは、第1層の保護膜として、耐久性の良い酸化膜や窒
化膜をスピンコートの前に形成しておくことが好まし
い。
【0067】以上のように、本発明(第1および第2の
発明)の光吸収性反射防止膜の形成手法としては、各種
の手法およびその組み合わせが考えられるが、本発明は
これらに限定されない。
【0068】チタンの窒化物を主成分とする光吸収膜
(TiN光吸収膜という)としては、金属チタンターゲ
ットを窒素ガスの存在下でDCスパッタリングしたもの
を用いることが、生産性の点から最も好ましい。
【0069】このとき、該TiN光吸収膜の光学定数を
好ましい範囲とするために、スパッタリングガスが窒素
と希ガスを主成分として含んでおり、該窒素の割合が3
〜50体積%、特に5〜20体積%であるようにするこ
とが好ましい。これよりも窒素の割合が少ないと、チタ
ン過剰のTiN光吸収膜となり、低反射波長領域が狭ま
る。また、これよりも窒素の割合が多いと、窒素過剰の
TiN光吸収膜となり、低反射波長領域が狭まるととも
に、TiN光吸収膜の比抵抗が高くなり表面抵抗値が大
きくなる。
【0070】ターゲットに印加する電力は、1W/cm
2 以上の電力密度とすることが好ましい。これは、成膜
速度を工業生産に充分なくらいに速く保つとともに、成
膜中にTiN光吸収膜に取り込まれる不純物の量を低く
保つためである。特に、後述のように、膜中に取り込ま
れる酸素の量を抑制する働きが大きい。
【0071】また、このときターゲットに印加する電力
は10W/cm2 以下の電力密度とすることが好まし
い。これは、適当な光学定数を有するTiN光吸収膜を
得るとともに、ターゲットへの過度の電力投入によるタ
ーゲットまたはカソードの溶解や異常放電の頻発を避け
るためである。すなわち、これ以上の電力を投入する
と、純窒素雰囲気にしてもTiリッチのTiN光吸収膜
となり、所望の組成が得られなくなるとともに、ターゲ
ットおよびその周辺部品が加熱され、アーキングの発生
や場合によっては加熱部位の溶解が起きる危険がある。
【0072】ターゲットやスパッタガスの組成に少量の
不純物を含むことは、最終的に形成された薄膜が実質的
にTiN光吸収膜の光学定数を有する範囲においてはな
んら問題はない。また、ターゲットとして窒化チタンを
主成分とする材料を用いて、スパッタリングによりTi
N光吸収膜を形成してもよい。
【0073】TiN光吸収膜としては、光学定数と比抵
抗の点から、膜中におけるチタンに対する窒素の原子割
合が0.5〜1.5であることが好ましい。0.5より
も小さいと、ややチタン過剰の窒化チタン膜となり、比
抵抗は下がるが、光学定数が不適当となり、反射防止効
果が不充分となる。また、1.5よりも大きいと、窒素
過剰の窒化チタン膜となり、光学定数の変化とともに、
比抵抗が上昇するため、反射率、表面抵抗ともに不充分
となる。
【0074】特に、反射防止の観点からは膜中における
チタンに対する窒素の原子割合が0.75〜1.30で
あることが好ましい。
【0075】一方、酸素の存在により、酸化物である基
板や上層のシリカ膜との付着力が向上する効果が見出さ
れた。したがって、TiN光吸収膜の光学定数が好まし
い範囲に保たれる限りにおいては、TiN光吸収膜中に
酸素が含まれることが好ましい場合もある。
【0076】その場合のTiN光吸収膜としては、光学
定数と比抵抗の点から、膜中におけるチタンに対する酸
素の原子割合が0.5以下であることが好ましい。この
割合が0.5よりも大きいと、酸窒化チタン膜となり、
比抵抗が上昇するとともに、光学定数が不適当となり、
表面抵抗値、反射防止効果ともに不充分となる。
【0077】通常のスパッタリング法によりTiN光吸
収膜を形成する場合、真空槽の残留ガス分などにより膜
中に酸素が混入することが避けられない。膜中の酸素が
TiN光吸収膜の光学特性に及ぼす影響については、こ
れまであまり知られていなかった。特に、本発明におけ
る光吸収層としての性能に及ぼす影響については全く知
られていなかった。
【0078】本発明者らは、TiN光吸収膜の成膜条件
とTiN光吸収膜中の酸素量の関係、および本発明にお
ける光吸収層としての性能との関係について鋭意研究し
た結果、本発明におけるTiN光吸収膜としては、光学
定数の観点から、膜中におけるチタンに対する酸素の原
子割合が0.4以下であることが好ましいことを見出し
た。
【0079】この割合が0.4を超えると、TiNの光
学定数の波長依存性が好ましい範囲からずれる結果、低
反射特性が低下する傾向を示す。また、酸窒化膜となる
ため比抵抗も上昇し、表面抵抗値が電磁波遮蔽に必要な
1kΩ/□を超える傾向を示す。
【0080】本発明者らは、以上のような知見を基にT
iNの成膜法および成膜条件等を選定することにより、
後述する実施例で示すように、上層にシリカ膜が最適の
膜厚で形成された場合の低反射特性として、反射率0.
6%以下を満たす波長領域が少なくとも500〜650
nmという広い範囲であるような積層体を実現するTi
N光吸収膜を形成できた。
【0081】以上述べたように、本発明においては、用
いるTiN光吸収膜の光学定数がある好ましい範囲に保
たれることできわめて優れた低反射特性を有する積層体
が得られる。
【0082】光学定数に関し、以下にさらに詳述する。
【0083】従来より、透明膜を用いた2層の反射防止
膜では、基板の屈折率に応じて、各層の屈折率および膜
厚を選択することにより設計波長における反射率を完全
にゼロとなしうる。しかし、設計波長以外の波長では反
射防止条件がくずれるため、その前後で反射率が大きく
立ち上がる、いわゆる「Vコート」となり、本発明者ら
がめざす広い波長範囲での低反射性は得られない。
【0084】一方、吸収膜を構成要素として用いれば、
単一膜の持つパラメータが、透明膜の(n,d)(n:
屈折率、d:幾何学的膜厚)の2個から(n,k,d)
(k:消衰係数)の3個に増えること、かつ吸収膜では
(n,k)の波長依存性(分散)が大きいことから、理
想的な(n,k)の波長分散を有する吸収膜を予め決め
られた膜厚に形成すれば、その上に積層される透明膜と
合わせたとき、あらゆる波長において反射率を完全にゼ
ロにすることが理論的にはできるはずである。
【0085】ここで本発明者らが行った、理論計算の一
例として下層に15nmの吸収膜、上層にSiO2 を1
00nm積層する場合、可視域全域にわたって反射率を
ゼロにするために必要な(n,k)の分散関係を示した
のが図16である。図16の(A)および(B)は、そ
れぞれ、nと波長との関係、kと波長との関係を示す。
この図に示すような(n,k)を持つ材料を見出すか、
合成すば完全な反射防止膜が2層構成で実現できるわけ
である。しかし、この図からすぐわかるように、kが負
の値を取らねばならない波長域が存在することから、こ
うした材料は実現できない。
【0086】本発明者らは、この理想の(n,k)に近
い光学定数を有する材料を探索した結果、窒化チタン、
窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムが候補となることを
見出した。
【0087】そのうえでさらに、スパッタリング法を用
いて種々の実験を行った結果、特定の材料、特定の成膜
条件、または膜厚を選択することにより、広い波長範囲
においてきわめて優れた低反射特性を有する2層膜構成
が得られることを見出した。
【0088】第1および第2の発明に用いられるシリカ
膜としては、導電性のシリコンターゲットを酸素ガスの
存在下でDCスパッタリングしたものを用いることが、
生産性の点で好ましい。このとき、ターゲットに導電性
を持たせるために少量の不純物を混入させることになる
が、ここでいうシリカ膜とは、これらの場合を含め、一
般に少量の不純物を含んでも、実質的にシリカとほぼ同
じ屈折率を持つ膜を示すと考えるべきである。
【0089】シリコンのDCスパッタリングでは、ター
ゲットのエロージョン(侵食)領域の周縁部に付着した
絶縁性のシリカ膜の帯電によってアーキングが誘発さ
れ、放電が不安定になったり、アークスポットから放出
されたシリコンまたはシリカの粒子が基体に付着して欠
陥となることがある。これを防ぐため、周期的にカソー
ドを正電圧とすることにより、帯電を中和する方法が採
られることが多く、これらの方法により成膜されたシリ
カ膜を用いることは、プロセスの安定性の点からきわめ
て好ましい。シリカの成膜方法としては、RFスパッタ
リングを用いてもよい。
【0090】本発明の光吸収性反射防止膜は優れた反射
防止特性を示すが、可視域の中央部での反射率が特に低
いために、反射色調は青から紫系統となる。シリカの膜
厚が厚くなると青みを増し、逆にシリカの膜厚が薄くな
ると赤みを増す。また、光吸収膜の膜厚が厚くなると色
が濃くなり、逆に光吸収膜の膜厚が薄くなると無色化に
向かう。したがって、用途に応じて適宜膜厚を調整すれ
ばよい。
【0091】本発明においては、その他、界面の付着力
の向上や色調調整のための付加的な薄膜層を適宜設けう
る。
【0092】また、最表面に指紋がついた場合に拭き取
りを容易にするために、最外層の上にフルオロカーボン
を含む撥油性の有機膜を形成することもできる。形成手
法としては、蒸着法や塗布乾燥法などがあり、いずれも
光学的には影響を与えない程度の極薄膜を形成するもの
である。これらの処理を施すことにより、反射防止膜面
が汚れにくく、また、汚れた場合にも容易に拭き取りう
るので好ましい。
【0093】本発明の光吸収性反射防止膜においては、
500〜650nmという広い波長領域において、反射
率が0.6%を超えないように各層の成膜条件および膜
厚を適宜決定して成膜することが好ましい。特に、45
0〜650nmにおいて、反射率が1.0%を超えない
ように各層が形成されていることが好ましい。さらに、
450〜650nmにおいて、反射率が0.6%を超え
ないように各層が形成されていることが好ましい。
【0094】
【作用】本発明の光吸収性反射防止体は、入射光の一部
を吸収し、透過率を減少させるため、ディスプレイの前
面ガラスに適用した場合、表面から入射して表示素子側
表面で反射してくる光線の強度が減少し、表示光とこの
バックグラウンド光との比を大きくしてコントラストを
上げうる。
【0095】本発明における基体、光吸収膜、高屈折率
透明膜、シリカ膜は各界面の反射フレネル係数と、各界
面の間の位相変化量および各層内の振幅減衰量によって
決定される総合反射率が、可視光領域で充分低くなるよ
うに設定されている。
【0096】特に、光吸収膜の光学定数は、通常の透明
膜の可視光域における分散関係(波長依存性)とは異な
る依存性を示す。したがって、適当な分散関係を示す吸
収膜材料を第1層として用いれば、透明膜のみで構成し
た場合に比べて、可視光領域における低反射領域が広が
る。この効果は、チタン、ジルコニウム、およびハフニ
ウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の窒
化物を光吸収膜として用いた場合に顕著である。
【0097】本発明の膜構成により、後述する実施例に
示すように広い波長範囲での低反射特性が実現される原
理についてはまだ未解明の部分も多いが、本発明におけ
る吸収薄膜の光学定数が予想以上に理想的な値に近づい
ているためと考えられる。その原因としては次のような
ことが考えられる。
【0098】1)膜厚が薄いため、現実には均一膜でな
く、面内や厚み方向に光学定数が分布を有し、等価的に
より理想に近い光学定数を示す。
【0099】2)特定の成膜条件により、これまで知ら
れていなかった光学定数の分散(より理想に近い)を有
する膜が得られる。
【0100】3)上層のシリカ膜を形成する過程で、下
層の吸収膜の上部が一部酸化されることにより実質的な
光学定数が(より理想的な値に)変化する。
【0101】本発明によれば、ある好ましい範囲の光学
定数を有するTiN光吸収膜を形成することにより、上
記のような作用を有する、実質的に2層または3層から
なる、きわめて優れた低反射特性を有する光吸収性反射
防止体を実現できる。
【0102】
【実施例】
[例1]真空槽内に、金属チタンと、比抵抗1.2Ω・
cmのN型シリコン(リンドープ単結晶)とをターゲッ
トとしてカソード上に設置し、真空槽を1×10-5To
rrまで排気した。真空槽内に設置したソーダライムガ
ラス基板10上に次のようにして2層膜を形成し、図1
に示すような光吸収性反射防止体を得た。
【0103】放電ガスとしてアルゴンと窒素の混合ガス
(窒素が20体積%)を導入し、圧力が2×10-3To
rrになるようコンダクタンスを調整した。次いでチタ
ンのカソードに負の直流電圧(投入電力密度は約2.0
W/cm2 )を印加し、チタンターゲットのDCスパッ
タリングにより、14nm(幾何学的膜厚、以下の膜厚
も同様)の窒化チタン膜11を成膜した(工程1)。
【0104】次に、ガス導入を停止し、真空槽内を高真
空とした後、放電ガスとしてアルゴンと酸素の混合ガス
(酸素が50体積%)を導入し、圧力が2×10-3To
rrになるようコンダクタンスを調整した。次いでシリ
コンのカソードに図3に示した波形の電圧を印加し、シ
リコンターゲットの間欠DCスパッタリングにより、1
00nmのシリカ膜13(屈折率1.46)を形成した
(工程2)。
【0105】得られた光吸収性反射防止ガラスの分光透
過率を測定した。また、このサンプルの分光反射率を、
ガラス基板の裏面に黒色ラッカーを塗布して裏面反射を
消した状態で膜面側から測定した。得られた分光透過率
の曲線42および分光反射率の曲線41を図4に示す。
【0106】また、工程1の後で窒化チタン膜付きガラ
ス基板を取りだし、窒化チタン膜をESCAで分析した
ところ、原子比は、Ti:N:O=1:0.86:0.
16であった。
【0107】[例2]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次のよ
うにして2層膜を形成した。例1の工程1の放電ガスを
窒素ガス(100%窒素)に代えた以外は例1と同様に
して、14nmの窒化チタン膜を成膜した。次に、例1
の工程2と同様にして、100nmのシリカ膜を形成し
た。
【0108】窒化チタン膜成膜後、例1同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比は、Ti:N:O=1:0.92:0.20であっ
た。
【0109】[例3]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次のよ
うにして2層膜を形成した。例1の工程1の放電ガスを
窒素10体積%のアルゴンと窒素の混合ガスに代え、例
1と同様にして12nmの窒化チタン膜を形成した。次
に、例1の工程2と同様にして、85nmのシリカ膜を
形成した。
【0110】得られた光吸収性反射防止ガラスについ
て、例1と同様にして、分光反射率の曲線61を測定し
た。結果を図6に示す。
【0111】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比はTi:N:O=1:0.95:0.08であっ
た。なお、得られた光吸収性反射防止ガラスについて、
450℃、30分の熱処理を3回施した後の分光反射率
の曲線を図14に示す。
【0112】[例4]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次のよ
うにして2層膜を形成した。例3と同様にして7nmの
窒化チタン膜と、85nmのシリカ膜とを順次形成し
た。
【0113】得られた光吸収性反射防止ガラスについ
て、例1と同様にして、分光反射率の曲線を測定した。
結果を図10に示す。窒化チタン成膜後、例1と同様に
基板を取りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したと
ころ、原子比はTi:N:O=1:0.95:0.09
であった。
【0114】[例5]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次のよ
うにして2層膜を形成した。例1の工程1と同様にして
20nmの窒化チタン膜を形成した。次に、例1の工程
2と同様にして、100nmのシリカ膜を形成した。
【0115】得られた光吸収性反射防止ガラスについ
て、例1と同様にして、分光反射率の曲線を測定した。
結果を図11に示す。窒化チタン成膜後、例1と同様に
基板を取りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したと
ころ、原子比はTi:N:O=1:0.84:0.17
であった。
【0116】[例6]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次のよ
うにして多層膜を形成した。例1の工程1と同様にして
14nmの窒化チタン膜を形成した。
【0117】次に、放電ガスをアルゴン100%に切り
換え、圧力を2×10-3Torrに調整した後、シリコ
ンのカソードに負の直流電圧を印加し、シリコンターゲ
ットのDCスパッタリングにより、酸化バリア膜として
2nmのシリコン膜を形成した。次に、例1の工程2と
同様にして、100nmのシリカ膜を形成した。
【0118】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比はTi:N:O=1:0.88:0.14であっ
た。
【0119】[例7]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrにまで排気し
た。真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次
のようにして多層膜を形成した。
【0120】まず、例3と同様にして、12nmの窒化
チタン膜を形成した。次に、放電ガスを窒素30体積%
のアルゴンと窒素の混合ガスに切り換え、圧力を2×1
-3Torrに調整した後、シリコンのカソードに負の
直流電圧を印加し、シリコンターゲットのDCスパッタ
リングにより、酸化バリア膜として5nmの光吸収性窒
化シリコン膜を形成した。次に、例3と同様にして、そ
の上に85nmのシリカ膜を形成した。
【0121】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタンをESCAで分析したところ、原子
比はTi:N:O=1:0.97:0.06であった。
なお、得られた光吸収性反射防止ガラスについて、45
0℃、30分の熱処理を3回施した後の分光反射率の曲
線を図15に示す。
【0122】[例8]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
放電ガスとして酸素ガスを導入し、圧力を2×10-3
orrに調整した後、チタンのカソードに負の直流電圧
を印加し、チタンターゲットのDCスパッタリングによ
り、真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に3
nmの酸化チタン膜の下地層を形成した。次に、例3と
同様にして12nmの窒化チタン膜と、85nmのシリ
カ膜をこの酸化チタン膜の上に形成した。
【0123】得られた光吸収性反射防止ガラスについ
て、例1と同様にして、分光反射率の曲線71を測定し
た。結果を図7に示す。窒化チタン成膜後、例1と同様
に基板を取りだし、窒化チタン膜をESCAで分析した
ところ、原子比はTi:N:O=1:0.93:0.0
7であった。
【0124】[例9]例1と同様の装置およびターゲッ
トを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気した。
真空槽内に設置したPET基板(ハードコート付き、1
50μm厚)上に次のようにして2層膜を形成した。例
3と同様にして12nmの窒化チタン膜と、85nmの
シリカ膜を形成した。
【0125】得られた光吸収性反射防止膜付きPETに
ついて、例1と同様にして、分光反射率の曲線81を測
定した。結果を図8に示す。窒化チタン成膜後、例1と
同様に基板を取りだし、窒化チタン膜をESCAで分析
したところ、原子比はTi:N:O=1:0.91:
0.11であった。
【0126】[例10]例1と同様の装置およびターゲ
ットを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気し
た。真空槽内に設置したソーダライムガラス基板20上
に次のようにして3層膜を形成し、図2に示すような光
吸収性反射防止体を得た。
【0127】例1の工程1と同様のガスおよび圧力を用
い、チタンのカソードに負の直流電圧を印加し、チタン
ターゲットのDCスパッタリングにより、30nmの窒
化チタン膜21を成膜した。
【0128】次に、ガス導入を停止し、真空槽内を高真
空とした後、例1の工程1と同様のガスおよび圧力を用
い、チタンのカソードに負の直流電圧を印加し、チタン
ターゲットのDCスパッタリングにより、18nmの酸
化チタン膜22(屈折率約2.2)を成膜した。
【0129】次に、導入ガスはそのままで、シリコンの
カソードに図3に示した波形の電圧を印加し、シリコン
ターゲットの間欠DCスパッタリングにより、63nm
のシリカ膜23を形成した。
【0130】窒化チタン膜成膜後、例1同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比は、Ti:N:O=1:0.87:0.14であっ
た。
【0131】[例11]例10における酸化チタン膜の
代わりに、ITO(錫ドープ酸化インジウム)ターゲッ
トを用いてITO膜(屈折率約2.0)を成膜し、ま
た、窒化チタン膜とシリカ膜の膜厚を変えた以外は例1
0と同様にして、3層膜付き光吸収性反射防止体を得
た。
【0132】すなわち、例10と同様にして、まず、2
3nmの窒化チタン膜を成膜し、次に、例10のチタン
のカソードの代わりにITOのカソードを用い、アルゴ
ンと酸素の混合ガス(酸素が1体積%)を放電ガスとし
て用いた以外は同様にしてDCスパッタリングを行い、
22nmのITOの膜を成膜し、最後に59nmのシリ
カ膜を形成した。
【0133】窒化チタン膜成膜後、例1同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比は、Ti:N:O=1:0.86:0.18であっ
た。
【0134】[例12]例10と同様の装置およびター
ゲットを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気し
た。放電ガスとして酸素ガスを導入し、圧力を2×10
-3Torrに調整した後、チタンのカソードに負の直流
電圧を印加し、チタンターゲットのDCスパッタリング
により、真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上
に下地層として3nmの酸化チタン膜を形成した。
【0135】次に、3nmの酸化チタン膜上に、例10
と同様にして30nmの窒化チタン膜と、18nmの酸
化チタン膜および63nmのシリカ膜を、順次形成し
た。
【0136】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比はTi:N:O=1:0.85:0.17であっ
た。
【0137】[例13]例10と同様の装置およびター
ゲットを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気し
た。真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次
のようにして3層膜を形成した。
【0138】まず、例10と同様にして、30nmの窒
化チタン膜を形成した。次に、放電ガスをアルゴン10
0%に切り換え、圧力を2×10-3Torrに調整した
後、シリコンのカソードに負の直流電圧を印加し、シリ
コンターゲットのDCスパッタリングにより、酸化バリ
ア膜として3nmのシリコン膜を形成した。次に、例1
0と同様にして、その上に18nmの酸化チタン膜と6
3nmのシリカ膜を形成した。
【0139】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタンをESCAで分析したところ、原子
比はTi:N:O=1:0.88:0.16であった。
【0140】[例14]例1と同様の装置およびターゲ
ットを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気し
た。真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に、
例3と同様にして9nmの窒化チタン膜と、85nmの
シリカ膜とからなる2層膜をこの順に形成した。窒化チ
タン成膜後、例1と同様に基板を取りだし、窒化チタン
膜をESCAで分析したところ、原子比はTi:N:O
=1:0.94:0.11であった。得られたサンプル
の分光反射率を例1と同様にして測定した。結果を図1
2に示す。
【0141】[例15]例1と同様の装置およびターゲ
ットを用い、真空槽を1×10-5Torrまで排気し
た。真空槽内に設置したソーダライムガラス基板上に次
のようにして2層膜を形成した。
【0142】まず、例3と同様にして窒素10体積%の
アルゴンと窒素の混合ガス雰囲気中で12nmの窒化チ
タン膜を形成したが、この際、チタンターゲットに投入
する電力を、例3の場合の1/4、すなわち投入電力密
度を約0.5W/cm2 とした。次いで、例3と同様に
して102nmのシリカ膜とを形成した。
【0143】窒化チタン成膜後、例1と同様に基板を取
りだし、窒化チタン膜をESCAで分析したところ、原
子比はTi:N:O=1:0.70:0.65であっ
た。
【0144】得られたサンプルの分光反射率を例1と同
様にして測定した。結果を図13に示す。
【0145】[例16(比較例)]例1における窒化チ
タン膜の代わりに、ITOターゲットを用いてITO膜
を成膜し、また、シリカ膜の膜厚を変えた以外は例1と
同様にして、2層膜付き反射防止体を得た。
【0146】すなわち、例1のチタンのカソードの代わ
りにITOのカソードを用い、アルゴンと酸素の混合ガ
ス(酸素が1体積%)を放電ガスとして用いた以外は同
様にしてDCスパッタリングを行い、30nmのITO
の膜を成膜し、次に例1と同様にして110nmのシリ
カ膜を形成した。
【0147】得られたサンプルについて、例1と同様に
して、分光透過率の曲線52および分光反射率の曲線5
1を測定した。結果を図5に示す。
【0148】[例17(比較例)]例1と同様の装置お
よびターゲットを用い、真空槽を1×10-5Torrま
で排気した。真空槽内に設置したソーダライムガラス基
板上に次のようにして2層膜を形成した。例1と同様に
して30nmの窒化チタン膜と、100nmのシリカ膜
とを形成した。
【0149】得られたサンプルについて、例1と同様に
して、分光透過率の曲線92および分光反射率の曲線9
1を測定した。結果を図9に示す。また、窒化チタン成
膜後、例1と同様に基板を取りだし、窒化チタン膜をE
SCAで分析したところ、原子比はTi:N:O=1:
0.87:0.15であった。
【0150】以上の例1〜17により得られた反射防止
ガラスを3cm角に切り出し、膜面の4隅にガラス半田
で電極を形成した。ファン・デア・ポウ法により測定し
た表面抵抗値と、分光曲線から求めた視感反射率および
視感透過率と、シリカ膜側からの入射光に対する光吸収
率(以下、単に光吸収率という)とを表1にまとめて示
す。
【0151】また、同じ光吸収性反射防止ガラスに45
0℃、30分の熱処理を3回施した後の、同様にして測
定した表面抵抗値と、視感反射率、視感透過率、光吸収
率および反射率が0.6%以下の波長範囲を表1に示
す。なお、表1中の「前」、「後」は、それぞれ熱処理
前および熱処理後の意である。
【0152】表1および図4〜15からわかるとおり、
本発明によれば耐熱性に優れた光吸収性反射防止ガラス
を、簡単な膜構成で実現できる。
【0153】透明膜のみで構成した例16(比較例)と
例1の分光反射率曲線を比べると、例1の分光反射率曲
線の方が低反射領域が広く、優れた反射防止特性を示
す。
【0154】また、分光透過率曲線および表1の視感透
過率からわかるとおり、本発明中に用いられる光吸収膜
の方が、透明の反射防止膜に比べ、透過率を減少させう
る。したがって、本発明をCRT等のディスプレイ画面
の前面に設置されるパネルガラス、フェイスプレート、
フィルターガラス等に適用した場合には表示画面のコン
トラストを改善する効果が透明の反射防止膜の場合より
顕著となる。
【0155】また、これらの実施例からわかるとおり、
本発明によれば、光吸収膜の膜厚を好ましい範囲内で選
択することにより、本発明の光吸収性反射防止膜のシリ
カ膜側からの入射光に対する光吸収率を10〜35%の
範囲で調整できる。実施例の分光反射率の図からわかる
とおり、光吸収膜の膜厚を厚くすれば、低反射波長領域
は狭くなるので目的に応じて膜厚を選択すればよい。
【0156】また、例1〜5、14、図4、図6、図1
0および図11と、例17(比較例)および図9との比
較からわかるとおり、窒化チタンの成膜条件および膜厚
とシリカ膜の膜厚を適切に選ぶことにより、反射防止性
能をきわめて優れたものとなしうる。ただし、窒化チタ
ンを薄くして反射防止性能を向上させた場合、耐熱性は
若干低下し、熱処理後の特性変化がやや大きくなる。
【0157】例5からわかるとおり、窒化チタンの膜厚
を厚くすれば、熱処理による特性の変化は薄い場合より
も緩和される。ただし、この場合、熱処理前の視感反射
率は0.12%と低いが、可視光の両端の波長領域での
反射率の上昇が顕著であり、反射色は薄い青紫色となっ
ている。
【0158】例6、7からわかるとおり、窒化チタンの
膜厚を薄くした場合でも、酸化バリア層を窒化チタン膜
の上に形成することにより、耐熱性を著しく向上させう
る。
【0159】例8および図7からわかるとおり、反射色
調整層を膜構成中に挿入することにより反射色調をより
無色に近づけうる。
【0160】例9および図8からわかるとおり、基板と
してプラスチックを用いた場合にも、本発明により、良
好な低反射特性を示す光吸収性反射防止体が得られる。
【0161】なお、以上の例1〜15のサンプルの熱処
理前後において、消しゴムによる耐擦傷テスト(500
g荷重、20往復)を行った結果、いずれの場合も実用
上問題となるような傷は見られなかった。特に、例1〜
9および例14〜15のサンプルの熱処理前後について
行った場合は、全く傷が見られなかった。
【0162】
【表1】
【0163】
【発明の効果】本発明の光吸収性反射防止体に用いられ
る多層膜は、適度な光吸収率と反射防止性能とを有し、
簡単な膜構成でしかも総膜厚をあまり大きくすることな
く実現される。
【0164】また、透過率を低下させることによりコン
トラストを上げることができ、抵抗値が1kΩ/□以下
で、電磁波遮蔽性能を有する光吸収性反射防止体を提供
できる。
【0165】また、本発明は実質的に2層または3層構
成となるため、従来の多層構成の反射防止膜と比べて、
膜界面の数が少なく耐擦傷性等の機械的強度や、耐熱性
に優れている。これは、特に第1の発明である2層膜構
成の場合に顕著である。また、本発明において、成膜方
法としてDCスパッタリングを用いる場合は、プロセス
の安定性や大面積化が容易であることなどの利点があ
り、前記特徴とあわせ、低コストで光吸収性反射防止体
を生産できる。
【0166】また、本発明による光吸収性反射防止体
は、耐熱性に優れ、ブラウン管のパネルガラスに要求さ
れる程度の熱処理には充分耐えられるため、これに限ら
ず、耐熱性の要求される用途への適用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例の模式的断面図。
【図2】本発明の他の例の模式的断面図。
【図3】実施例および比較例において用いられた、シリ
コンターゲットに印加する電圧の時間変動を示すグラ
フ。
【図4】例1の分光反射率および分光透過率を示すグラ
フ。
【図5】例16の分光反射率および分光透過率を示すグ
ラフ。
【図6】例3の分光反射率を示すグラフ。
【図7】例8の分光反射率を示すグラフ。
【図8】例9の分光反射率を示すグラフ。
【図9】例17の分光反射率および分光透過率を示すグ
ラフ。
【図10】例4の分光反射率を示すグラフ。
【図11】例5の分光反射率を示すグラフ。
【図12】例14の分光反射率を示すグラフ。
【図13】例15の分光反射率を示すグラフ。
【図14】例3の熱処理後の分光反射率を示すグラフ。
【図15】例7の熱処理後の分光反射率を示すグラフ。
【図16】計算により求めた、理想的な吸収膜の光学定
数の分散関係を示すグラフ。
【図17】本発明の光吸収性反射防止体を利用した例を
示す図。
【符号の説明】
N :実施例および比較例においてシリコンターゲット
に印加された負の電圧

Claims (24)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基体上に基体側から、光吸収膜と、シリカ
    膜とをこの順に形成してなる、シリカ膜側からの入射光
    の反射を低減させる光吸収性反射防止体において、光吸
    収膜の幾何学的膜厚が5〜25nmであり、かつ、シリ
    カ膜の幾何学的膜厚が70〜110nmであることを特
    徴とする光吸収性反射防止体。
  2. 【請求項2】前記光吸収膜の幾何学的膜厚が7〜20n
    mである請求項1に記載の光吸収性反射防止体。
  3. 【請求項3】前記光吸収膜の幾何学的膜厚が10〜20
    nmである請求項1または2に記載の光吸収性反射防止
    体。
  4. 【請求項4】前記光吸収膜の幾何学的膜厚が7〜15n
    mである請求項1または2に記載の光吸収性反射防止
    体。
  5. 【請求項5】前記シリカ膜の幾何学的膜厚が80〜10
    0nmである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光吸
    収性反射防止体。
  6. 【請求項6】前記光吸収性反射防止体の光吸収率が、シ
    リカ膜側からの入射光に対して10〜35%である請求
    項1〜5のいずれか1項に記載の光吸収性反射防止体。
  7. 【請求項7】前記光吸収膜が、チタン、ジルコニウム、
    およびハフニウムからなる群から選ばれる少なくとも1
    種の金属の窒化物を主成分とする膜である請求項1〜6
    のいずれか1項に記載の光吸収性反射防止体。
  8. 【請求項8】前記光吸収膜がチタンの窒化物を主成分と
    する膜である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光吸
    収性反射防止体。
  9. 【請求項9】前記チタンの窒化物を主成分とする膜が、
    窒素と希ガスとを主成分として含み、該窒素の割合が3
    〜50体積%であるスパッタリングガス雰囲気で、スパ
    ッタリングにより成膜された膜である請求項8に記載の
    光吸収性反射防止体。
  10. 【請求項10】前記チタンの窒化物を主成分とする膜
    が、チタンに対する原子割合が0.5以下の酸素を含む
    膜である請求項8または9に記載の光吸収性反射防止
    体。
  11. 【請求項11】前記光吸収膜と前記シリカ膜との間に、
    幾何学的膜厚が1〜20nmの金属または金属窒化物を
    主成分とする層が形成されている請求項1〜10のいず
    れか1項に記載の光吸収性反射防止体。
  12. 【請求項12】前記金属または金属窒化物を主成分とす
    る層が、シリコンまたはシリコンの窒化物を主成分とす
    る層である請求項11に記載の光吸収性反射防止体。
  13. 【請求項13】前記基体が、ディスプレイ用の表示面の
    前面を構成する、ガラス基体、プラスチック基体または
    プラスチックフィルムである請求項1〜12のいずれか
    1項に記載の光吸収性反射防止体。
  14. 【請求項14】前記光吸収性反射防止体の反射率が、5
    00〜650nmの波長領域において0.6%を超えな
    いものである請求項1〜13のいずれか1項に記載の光
    吸収性反射防止体。
  15. 【請求項15】基体上に基体側から、光吸収膜と、高屈
    折率透明膜と、シリカ膜とをこの順に形成してなる、シ
    リカ膜側からの入射光の反射を低減させる光吸収性反射
    防止体において、光吸収膜の幾何学的膜厚が15〜30
    nmであり、高屈折率透明膜の幾何学的膜厚が10〜4
    0nmであり、かつ、シリカ膜の幾何学的膜厚が50〜
    90nmであることを特徴とする光吸収性反射防止体。
  16. 【請求項16】前記光吸収性反射防止体の光吸収率が、
    シリカ膜側からの入射光に対して30〜60%である請
    求項15に記載の光吸収性反射防止体。
  17. 【請求項17】前記光吸収膜が、チタン、ジルコニウ
    ム、およびハフニウムからなる群から選ばれる少なくと
    も1種の金属の窒化物を主成分とする膜である請求項1
    5または16に記載の光吸収性反射防止体。
  18. 【請求項18】前記光吸収膜がチタンの窒化物を主成分
    とする膜である請求項15〜17のいずれか1項に記載
    の光吸収性反射防止体。
  19. 【請求項19】前記チタンの窒化物を主成分とする膜
    が、窒素と希ガスとを主成分として含み、該窒素の割合
    が3〜50体積%であるスパッタリングガス雰囲気で、
    スパッタリングにより成膜された膜である請求項18に
    記載の光吸収性反射防止体。
  20. 【請求項20】前記チタンの窒化物を主成分とする膜
    が、チタンに対する原子割合が0.5以下の酸素を含む
    膜である請求項18または19に記載の光吸収性反射防
    止体。
  21. 【請求項21】前記光吸収膜と前記高屈折率透明膜との
    間、または、前記高屈折率透明膜とシリカ膜との間に、
    幾何学的膜厚が1〜20nmの金属または金属窒化物を
    主成分とする層が形成されている請求項15〜20のい
    ずれか1項に記載の光吸収性反射防止体。
  22. 【請求項22】前記金属または金属窒化物を主成分とす
    る層が、シリコンまたはシリコンの窒化物を主成分とす
    る層である請求項21に記載の光吸収性反射防止体。
  23. 【請求項23】前記基体が、ディスプレイ用の表示面の
    前面を構成する、ガラス基体、プラスチック基体または
    プラスチックフィルムである請求項15〜22のいずれ
    か1項に記載の光吸収性反射防止体。
  24. 【請求項24】前記光吸収性反射防止体の反射率が、5
    00〜650nmの波長領域において0.6%を超えな
    いものである請求項15〜23のいずれか1項に記載の
    光吸収性反射防止体。
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