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JPH08170167A - 耐摩耗性に優れた硬質皮膜および硬質皮膜被覆部材 - Google Patents

耐摩耗性に優れた硬質皮膜および硬質皮膜被覆部材

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JPH08170167A
JPH08170167A JP31100794A JP31100794A JPH08170167A JP H08170167 A JPH08170167 A JP H08170167A JP 31100794 A JP31100794 A JP 31100794A JP 31100794 A JP31100794 A JP 31100794A JP H08170167 A JPH08170167 A JP H08170167A
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JP
Japan
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hard coating
layer
coating film
film
wear resistance
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Yusuke Tanaka
裕介 田中
Yasunori Wada
恭典 和田
Yasuyuki Yamada
保之 山田
Taiji Onishi
泰司 大西
Yasuaki Sugizaki
康昭 杉崎
Masanori Sai
政憲 蔡
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 フライス加工,切削加工,穿孔加工等の加工
に使用される切削工具の表面被覆材、或は金型,軸受
け,ダイス,ロールなど高硬度が要求される耐摩耗部材
の表面被覆材、もしくは成形機用スクリューやシリンダ
等の耐熱・耐食部材の表面被覆材として有用な硬質皮膜
の提供を目的とし、更には該硬質皮膜を被覆することに
よって優れた耐摩耗性を発揮する硬質皮膜被覆部材を提
供する。 【構成】 基材表面に形成される硬質皮膜であって、第
1層および第2層を有し、上記第1層は基材側に形成さ
れて、 (Alx Ti1-x-y Siy )(Cz1-z ) 但し、0.05≦x≦0.75 0.01≦y≦0.1 0≦z≦0.4 で示される化学組成からなり、前記第2層は表面側に積
層されたBNであることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フライス加工,切削加
工,穿孔加工等の加工に使用される切削工具の表面被覆
材、或は金型,軸受け,ダイス,ロールなど高硬度が要
求される耐摩耗部材の表面被覆材、もしくは成形機用ス
クリューやシリンダ等の耐熱・耐食部材の表面被覆材と
して有用な硬質皮膜に関し、更には該硬質皮膜を被覆す
ることによって優れた耐摩耗性を発揮する硬質皮膜被覆
部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高速度工具や超硬合金工具など高い耐摩
耗性が要求される切削工具は、工具の基材表面にTiN
やTiC等の硬質皮膜を形成することにより耐摩耗性の
向上が図られている。
【0003】上記TiNとTiCの耐摩耗性を比較する
と、TiNは高温域における耐酸化性の点でTiCより
優れており、切削時の加工熱や摩擦熱によって生じる工
具すくい面のクレータ摩耗に対して良好な耐摩耗性を発
揮する。しかもTiNは母材との密着性にも優れてい
る。一方TiCはTiNより硬度が高く、被削材と接す
る逃げ面のフランク摩耗に対して高い耐久性を有してい
る。
【0004】しかしながら耐酸化性に優れたTiNであ
っても酸化開始温度はせいぜい600℃程度であり、ま
た高い硬度を有するTiCであってもそのビッカース硬
さはせいぜい2000程度であり、いずれについても耐
摩耗性の一層の改善が望まれていた。
【0005】そこで例えば特開平2−194159に
は、TiNやTiCの耐酸化性や硬度の向上を目的とし
て、Tiの一部をAlに置換したAlとTiの複合窒化
物や複合炭窒化物[以下(Al,Ti)(C,N)と示
す]が開示されており、酸化開始温度は約800℃、ビ
ッカース硬さは2500程度まで改善されている。
【0006】また本発明者らはAlおよびTiとNとの
化合物をベースとして、一部の元素を他の元素と置換す
ることにより、高い硬度と良好な耐酸化性を有して優れ
た耐摩耗性を発揮する硬質皮膜を開発して先に出願を済
ませている。例えば(Al,Ti,Si)(C,N)膜
(特願平6−100154)は、酸化開始温度は約10
00℃であり、ビッカース硬さは3100程度である。
【0007】さらに特開平4−120265号公報に
は、Hv3500以上という高い硬度を有するcBN
(立方晶窒化ホウ素)を、耐摩耗性基材に密着性よく形
成することは困難であるという問題点を解決する技術と
して、基材とcBN皮膜の間にTiNなどの中間層を形
成することによってcBN皮膜を密着性よく被覆する発
明が開示されている。確かにTiNなどからなる中間層
は基材との密着性に優れており、更に上記中間層とcB
N皮膜の密着性も高いので、cBN皮膜が容易に剥離す
ることはない。しかしながら、cBN皮膜はHv350
0以上という高い硬度を有しているにもかかわらず、T
iNなどの中間層の上に形成される場合には中間層の硬
度が低いことからcBN皮膜に期待される程の高い硬度
は得られず、しかも耐酸化性も不充分であった。
【0008】この様な状況のもと、一層の高能率化が要
求されている切削加工などの分野では、より優れた耐摩
耗性を有する硬質皮膜の開発が期待される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした事情
に着目してなされたものであって、これまでに開発して
きた硬質皮膜の優れた特性を生かしつつ、一段と優れた
耐摩耗性を発揮する硬質皮膜を提供することを目的とし
ており、更には高い耐摩耗性が要求される部材に上記硬
質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆部材を提供しようとする
ものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明に係る硬質皮膜とは、基材表面に形成される硬質皮膜
であって、第1層および第2層を有し、上記第1層は基
材側に形成されて、 (Alx Ti1-x-y Siy )(Cz1-z ) 但し、0.05≦x≦0.75 0.01≦y≦0.1 0≦z≦0.4 で示される化学組成からなり、前記第2層は表面側に積
層されたBNであることを要旨とするものである。尚、
上記の変数x,y,zはいずれも、原子量比である。
【0011】上記硬質皮膜の厚さは、第1層および第2
層共に0.1〜20μmにすることが好ましく、上記硬
質皮膜を基材表面に形成すれば耐摩耗性に優れた硬質皮
膜被覆部材を得ることができる。
【0012】
【作用】本発明者らは上記(Al,Ti,Si)(C,
N)系皮膜の耐摩耗性をより一層向上させることを目的
として検討を重ねた結果、上記(Al,Ti,Si)
(C,N)系皮膜の表面にBN膜を保護層として密着性
よく形成することによって、硬質皮膜全体としての硬度
および耐酸化性を高めることができ、硬質皮膜の耐摩耗
性を大幅に向上できることを突き止めた。
【0013】本発明の硬質皮膜が従来の硬質皮膜に比べ
て優れた耐摩耗性を発揮できる様になった理由は十分に
解明されたわけではないが、以下の様に考えられる。即
ち、硬度が高く且つ耐酸化性に優れしかも摩擦係数が小
さいBN膜を、(Al,Ti,Si)(C,N)系皮膜
上に表面層として密着性よく形成することによって、皮
膜全体のビッカース硬さを4000以上と高硬度にする
ことができると共に、その下層の(Al,Ti,Si)
(C,N)系皮膜表面に形成されAl酸化物からなる保
護皮膜を著しく緻密化するためであると考えられる。
【0014】尚、BN皮膜は、(Al,Ti,Si)
(C,N)系皮膜と優れた親和性および反応性を有して
いるので、下地の(Al,Ti,Si)(C,N)系皮
膜に密着性良く形成することができ、しかも(Al,T
i,Si)(C,N)系皮膜と基材との密着性を損なう
こともないので、切削工具やその他の耐摩耗部材の表面
に適用した場合であっても、各界面における剥離の問題
を生ずることが少なく、硬質皮膜の優れた耐摩耗性を十
分に発揮する硬質皮膜被覆部材を得ることができる。
【0015】本発明におけるBN皮膜が下地(Al,T
i,Si)(C,N)系皮膜に密着性良く形成すること
ができる理由については、未解明の部分を残している
が、例えばJOURNAL OF HARD MATERIALS(Vol.2,No.3-4,1
991,P233〜243)によると、cBN−TiAlN複合材料
の界面には、AlN,TiN,TiB2 等の反応層が形
成される様であり、本発明の場合においても(Al,T
i,Si)(C,N)とBNの界面に同様の反応層が形
成され、これによって密着性が著しく高まるものである
と考えている。
【0016】本発明に係る硬質皮膜において、基材上に
形成される第1層は下記の化学組成からなることが必要
である。 (Alx Ti1-x-y Siy )(Cz1-z ) 但し、0.05≦x≦0.75 0.01≦y≦0.1 0≦z≦0.4
【0017】(Alx Ti1-x-y Siy )(Cz
1-z )が優れた耐摩耗性を発揮するには、金属元素の成
分組成Alx Ti1-x-y Siy においてx,yの値は夫
々0.05≦x≦0.75,0.01≦y≦0.1とい
う条件を満足することが必要である。xの値が0.05
未満であるか、またはyの値が0.01未満では十分な
耐酸化性の向上効果を得ることができない。またxの値
が0.75を超えるか、またはyの値が0.1を超える
と皮膜の結晶構造が立方晶から六方晶へ変化してしま
い、皮膜硬さが低下して十分な耐摩耗性が得られない。
なお、xの下限値としては0.25が好ましく、0.5
6以上であることがより望ましい。xの上限値としては
0.7が好ましい。yの好ましい下限値は0.02であ
り、一方yの上限値としては0.08が好ましく、0.
05以下であることがより望ましい。
【0018】また本発明に係る硬質皮膜の第1層は、上
記金属元素の窒化物であっても炭・窒化物であっても優
れた耐摩耗性を発揮する。但し、Cz1-z においてz
の値が0.4を超えると皮膜の耐酸化性が低下してしま
うので、0≦z≦0.4を満足することが望ましい。
尚、zの値が0.2以下であると耐酸化性がより良好と
なる。
【0019】本発明は第2層として形成するBN皮膜の
組成または結晶構造を限定するものではないが、硬度が
Hv3500以上であるcBNや硬質BNを第1層に積
層すれば、高い耐摩耗性が得られるので好ましい。
【0020】次に本発明に係る硬質皮膜の厚さとして
は、第1層および第2層共に、0.1μm以上20μm
以下であることが望まれる。0.1μm未満であると耐
摩耗性が十分発揮できず、一方20μmを超えると衝撃
力によって硬質皮膜にクラックが入ることがあるからで
ある。
【0021】なお、本発明に係る硬質皮膜を切削工具に
被覆する場合には、工具基材本来の切れ刃の特性を生か
しつつ、同時に硬質皮膜の優れた耐摩耗性を発揮させる
ことが望まれる。このような観点から本発明に係る硬質
皮膜の厚さは、第1層および第2層共に、1μm以上と
することが好ましく、2μm以上がより好ましい。また
上限については12μm以下とすることが好ましく、8
μm以下がより望ましい。
【0022】また、本発明は硬質皮膜を被覆する基材の
材質を限定するものではないが、基材表面に密着性よく
被覆して優れた耐摩耗性を発揮させるためには、超硬合
金,高速度工具鋼,ダイス鋼,サーメットまたはセラミ
ック等の硬質物質が適している。
【0023】尚、本発明に係る硬質皮膜を基材表面に被
覆するにあたって、まず第1層の形成方法としては、イ
オンプレーティング法やスパッタリング法等に代表され
るPVD法が挙げられるが、例えばアーク放電式イオン
プレーティング法を採用する場合には以下に例示する方
法を用いればよい。即ち、アーク放電により蒸発源であ
るカソードから金属成分(Al,Ti,Si)をイオン
化させ、N2 雰囲気および/またはCH4 雰囲気中でイ
オンプレーティングすることによって窒化物および/ま
たは炭化物を基材上に形成することができる。更に、目
的とする皮膜組成と同一の金属組成のターゲットを用い
れば、組成のずれを生じることが少なく安定した組成の
皮膜を得ることが容易となる。また基材にバイアス電位
を印加しながらイオンプレーティングを行えば、皮膜の
密着性を一段と高めることができるので好ましい。
【0024】さらに本発明はイオンプレーティング時の
ガス圧も特に限定するものではないが、1×10-3〜5
×10-2Torr程度が好ましく、ガス圧をこの範囲内
に設定すれば耐摩耗性の一段と優れた高結晶性の緻密な
硬質皮膜が得られ易い。
【0025】また本発明はBN皮膜を形成する方法を限
定するものでもなく、前述のイオンプレーティング法や
イオンアシストデポジション法等を用いればよい。イオ
ンプレーティング法を採用する場合には、Bからなるタ
ーゲットを用い、イオン化させたBをN2 雰囲気中で反
応させることによって基材上にBN皮膜を形成すること
ができる。またイオンアシストデポジション法を採用す
る場合には、坩堝に入れたBに電子ビームを同時に照射
してBを蒸発させ窒素イオンを反応させることにより、
基材上にBNを被覆することができる。このとき、基材
にバイアス電位を印加すると、皮膜の密着性を一段と高
めることができるので好ましい。
【0026】以下実施例について説明するが、本発明は
下記の実施例に限定されるものではなく、前・後記の趣
旨に徴して適宜変更することは本発明の技術的範囲に含
まれる。
【0027】
【実施例】実施例1 まず、寸法10mm×25mmの白金箔からなる基材を
イオンプレーティング装置に装着し、以下の方法により
第1層を形成した。上記基材を400℃に加熱した後、
第1層を構成する元素のうちN以外の元素を組成成分と
するカソードを蒸発させると共に、反応ガスとしてN2
ガスを導入して、7×10-3Torrの雰囲気とし、且
つ上記基材に−150Vの電位を印加することによって
表1に示す種々の組成の第1層皮膜を5μm被覆した試
験片を製作した。なお、皮膜の組成は誘導結合型アルゴ
ンプラズマ発光分析法およびオージェ電子分光法により
確認した。
【0028】第2層としてBN皮膜を積層するにあたっ
ては、第1層の皮膜を形成した後、上記イオンプレーテ
ィング装置内の電子ビーム銃を起動し、坩堝に入れたB
に電子ビームを照射してBを蒸発させ、装置内の真空度
が5×10-4TorrになるようにしてBの蒸気に50
0eVの出力で窒素イオンビームをあて反応させると共
に、基材に−150Vの電位を印加することによって3
μmの厚さのBN皮膜を形成した。なお、皮膜の組成は
電子プルーブX線マイクロアナリシスおよびオージェ電
子分光法により確認した。
【0029】この様にして得られた試験片を用いて下記
条件の酸化試験を行ったところ、表1に示す結果を得
た。 (酸化試験の条件) 温度範囲:室温〜1300℃ 昇温速度:10°/min 雰囲気 :乾燥空気、大気圧 空気流量:150cc/min
【0030】
【表1】
【0031】第2層としてBN膜が形成されていない従
来例(No.1)と該従来例の皮膜に第2層としてBN
膜が形成された実施例(No.5)とを比較すると、本
発明に係る硬質皮膜は酸化開始温度が1段と高くなって
いることから耐酸化性が向上していることが分かる。
【0032】No.2は、(Al,Ti,Si)(C,
N)系皮膜を第1層として形成することなく、BN皮膜
が形成された比較例である。基材との密着性が乏しいこ
とからBN皮膜本来の特性を発揮できず、酸化開始温度
が低い。
【0033】No.3,4は、TiNまたは(Al,T
i)Nを第1層として、BNを第2層として形成した従
来例であり、本発明に係る硬質皮膜に比べると耐酸化性
に劣ることが分かる。
【0034】実施例2 基材として超硬チップを用い、皮膜の厚みを各々10μ
mにする以外は、実施例1と同じ方法で試験片を製作し
た。これらの皮膜のマイクロビッカース硬さを荷重10
0gで測定したところ、前記表1に併記する結果が得ら
れた。表1から明らかな様に、従来例(No.1)と該
従来例の皮膜に第2層としてBN膜が形成された実施例
(No.5)とを夫々比較すると、本発明に係る硬質皮
膜はマイクロビッカース硬さが1000以上も高くなっ
ていることから硬度が著しく高くなっていることが分か
る。
【0035】No.2は、(Al,Ti,Si)(C,
N)系皮膜を第1層として形成することなく、BN皮膜
が形成された比較例である。基材との密着性が乏しいこ
とからBN皮膜本来の特性を発揮できず、マイクロビッ
カース硬さが低い。No.3,4は、TiNまたは(A
l,Ti)Nを第1層として、BNを第2層として形成
した従来例であり、本発明に係る硬質皮膜に比べると硬
度が低いことが分かる。
【0036】実施例3 超硬合金を基材として用いて、外径10mmの2枚刃エ
ンドミルを製作し、夫々のエンドミルの刃部表面に基材
と皮膜厚さ以外は実施例1と同じ方法で表2に示す硬質
皮膜を形成した。この場合、皮膜厚さは第1層および第
2層を形成する場合は夫々4μmおよび2μmとし、第
1層または第2層のみ形成する場合は6μmとした。
【0037】得られた表面被覆エンドミルを用いて、下
記の条件により切削試験を行ないエンドミル切れ刃逃げ
面の摩耗量を測定したところ、表2に併記する結果を得
た。 (切削条件) 切削方法:側面切削ダウンカット 被削材 :SKD11(硬さHB219) 切込み :Rd 1mm×Ad 10mm 切削速度:60m/min 送り :0.07mm/tooth(270mm/m
in) 切削油 :エアーブロー 切削長 :50m
【0038】
【表2】
【0039】表2からも明らかな様に、本発明に係る硬
質皮膜被覆エンドミル(No.5)は、従来例(No.
1〜4)と比べて逃げ面摩耗量が小さく耐摩耗性に優れ
ていることが分かる。
【0040】実施例4 基材としてJIS規格SKH51相当の高速度鋼を用い
て、外径10mmのJIS規格ドリルを製作し、これら
を基材として用いる以外は実施例3と同じ方法で、夫々
のドリル刃部表面に表3に示す硬質皮膜を形成した。
【0041】得られた表面被覆ドリルを用いて、下記の
条件により切削試験を行ない切削寿命を調べたところ、
表3に併記する結果を得た。 (切削条件) 切削方法:穴あけ加工、各5本切削 被削材 :S55C(硬さHB220) 切削速度:30m/min 送り :0.2mm/rev 切削長さ:25mm(貫通穴) 切削油 :水溶性エマルジョン型切削油
【0042】
【表3】
【0043】表3からも明らかな様に、本発明に係る硬
質皮膜被覆ドリル(No.5)は、従来例(No.1〜
4)と比べて平均穴あけ個数が多く切削寿命が長いこと
が分かる。
【0044】実施例5 JIS規格SKD61相当の金型材を用いて、寸法40
×20×5mmの基材を製作し、第1層および第2層の
合計の皮膜厚さを10μmとする以外は実施例4と同じ
方法で表4に示す硬質皮膜を形成して試験片とした。
【0045】得られた試験片を用いて、下記の条件で熱
サイクル試験を行ない耐久性を調査したところ、表4に
併記する結果を得た。 (熱サイクル試験条件) 高温槽温度、保持時間:800℃、150秒 低温槽温度、保持時間:水冷、10秒
【0046】
【表4】
【0047】表4からも明らかな様に、本発明に係る硬
質皮膜を被覆した試験片(No.3)は、従来例(N
o.1,2)と比べてクラック発生までのサイクル数が
大きく改善されており、優れた耐熱サイクル性を示して
いる。
【0048】実施例6 超硬チップを基材として用いて、基材の種類が異なるこ
と以外は実施例3と同じ方法で、夫々のチップの刃部表
面に表5に示す硬質皮膜を形成した。得られた表面被覆
チップを用いて、下記の条件により切削試験を行ないチ
ップ切れ刃逃げ面の摩耗量を測定したところ、表5に併
記する結果を得た。 (切削条件) 被削材 :S45C 切削速度:200m/min 送り速度:0.3mm/rev 切込み :2mm 切削油 :乾式 切削時間:40min
【0049】
【表5】
【0050】表5からも明らかな様に、本発明に係る硬
質皮膜被覆チップ(No.5)は、従来例(No.1〜
4)と比べて逃げ面摩耗量が小さく耐摩耗性が優れてい
ることが分かる。
【0051】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、これまでに開発してきた硬質皮膜の優れた特性を生
かしつつ、一段と優れた耐摩耗性を発揮する硬質皮膜を
提供することが可能となり、更には高い耐摩耗性が要求
される部材に上記硬質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆部材
が提供できることとなった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大西 泰司 兵庫県明石市魚住町金ケ崎西大池179番1 株式会社神戸製鋼所明石工場内 (72)発明者 杉崎 康昭 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 蔡 政憲 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材表面に形成される硬質皮膜であっ
    て、 第1層および第2層を有し、 上記第1層は基材側に形成されて、 (Alx Ti1-x-y Siy )(Cz1-z ) 但し、0.05≦x≦0.75 0.01≦y≦0.1 0≦z≦0.4 で示される化学組成からなり、 前記第2層は表面側に積層されたBNであることを特徴
    とする耐摩耗性に優れた硬質皮膜。
  2. 【請求項2】 前記第1層の厚さが、0.1〜20μm
    である請求項1に記載の硬質皮膜。
  3. 【請求項3】 前記第2層の厚さが、0.1〜20μm
    である請求項1または2に記載の硬質皮膜。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の硬質皮
    膜を、基材表面に形成してなることを特徴とする耐摩耗
    性に優れた硬質皮膜被覆部材。
JP31100794A 1994-12-14 1994-12-14 耐摩耗性に優れた硬質皮膜および硬質皮膜被覆部材 Expired - Lifetime JP3822655B2 (ja)

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