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JPH08176302A - ポリアリーレンスルフィドの製造法 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドの製造法

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Publication number
JPH08176302A
JPH08176302A JP6335817A JP33581794A JPH08176302A JP H08176302 A JPH08176302 A JP H08176302A JP 6335817 A JP6335817 A JP 6335817A JP 33581794 A JP33581794 A JP 33581794A JP H08176302 A JPH08176302 A JP H08176302A
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reaction
compound
solvent
pas
dcb
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JP6335817A
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Satoshi Inoue
井上  敏
Osamu Komiyama
治 小味山
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Tonen Chemical Corp
Original Assignee
Tonen Sekiyu Kagaku KK
Tonen Chemical Corp
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Publication date
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い耐熱性と機械的強度に加えて、エポキシ
樹脂等との接着性に優れたPAS樹脂を経済的に製造す
る方法を提供する。 【構成】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化物と
ジハロ芳香族化合物とを反応させてポリアリーレンスル
フィドを製造する方法において、パラジハロ芳香族化合
物、及び反応系内のパラジハロ芳香族化合物の反応率が
0乃至80%未満の時点で仕込ジハロ芳香族化合物の全
量に対して0.5〜10モル%のメタジハロ芳香族化合
物を反応系に添加し、かつ反応中、反応缶の気相部分を
冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮させ、
これを液相に還流せしめることにより得たポリアリーレ
ンスルフィドのスラリーを濾過した後、得られた含溶媒
濾過ケーキを非酸化性ガス雰囲気下150〜250℃の
温度で加熱して溶媒を除去し、次いで水洗浄することを
特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリーレンスルフ
ィド(以下、PASと略すことがある)の製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】PASは耐熱性、成形加工性に優れ、更
には良好な耐薬品性、難燃性、寸法安定性等を有するた
め、電気・電子部品あるいは機械部品等に広く使用され
ている。しかし、PASは他の樹脂との接着性、特にエ
ポキシ樹脂との接着性が比較的悪い。そのため、例えば
エポキシ系接着剤によるPAS同士の接合、PASと他
の材料との接合、あるいはエポキシ樹脂による電気・電
子部品の封止等の際に、PASとエポキシ樹脂との接着
性の悪さが問題となっていた。
【0003】かかる問題に鑑みて、PASとエポキシ樹
脂との接着性を改良する種々の試みがなされている。例
えば、特開平2‐272063号公報にはカルナバワッ
クスを含むポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと
略すことがある)樹脂組成物、特開平4‐275368
号公報には繊維状及び/又は非繊維状充填剤とポリアル
キレンエーテル化合物を配合してなるPPS樹脂組成
物、特開平5‐171041号公報には橋かけポリアク
リル酸塩等の高吸水性樹脂を含むPPS樹脂組成物、特
開平6‐57136号公報には芳香族スルホン化合物、
及び繊維状及び/又は非繊維状充填剤を配合してなるP
PS樹脂組成物、特開平6‐107946号公報には脂
肪族ポリエステル、及び繊維状及び/又は非繊維状充填
剤を配合してなるPPS樹脂組成物、また、特開平6‐
166816号公報にはポリ(エチレンシクロヘキサン
ジメチレンテレフタレート)共重合体を配合してなるP
PS樹脂組成物が夫々開示されている。しかし、上記の
いずれにおいても、PPSより耐熱性の低い物質を添加
するため、樹脂組成物の耐熱性が低下し、更には機械的
強度が著しく低下する樹脂組成物もあった。
【0004】また、特開平4‐198267号公報に
は、カルボキシル基含有PASを含むPAS樹脂組成
物、また特開平5‐25388号公報には、アミノ基含
有PASを含むPAS樹脂組成物が開示されている。し
かし、これらは例えばカルボキシル基又はアミノ基を有
するジクロルベンゼンを共重合させて製造するが、反応
系にこれらのジクロルベンゼンが残存するという製造上
の問題があると共に、得られたPASの接着強度も十分
なものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のPA
Sの持つ高い耐熱性と機械的強度に加えて、エポキシ樹
脂等との接着性にも優れたPAS樹脂を作ることがで
き、しかも溶媒の回収率が高く、水洗浄工程を簡略化で
きるので、生産性高く、かつコスト的に有利に製造する
方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機アミド系
溶媒中でアルカリ金属硫化物とジハロ芳香族化合物とを
反応させてポリアリーレンスルフィドを製造する方法に
おいて、パラジハロ芳香族化合物、及び反応系内のパラ
ジハロ芳香族化合物の反応率が0乃至80%未満の時点
で仕込ジハロ芳香族化合物の全量に対して0.5〜10
モル%のメタジハロ芳香族化合物を反応系に添加し、か
つ反応中、反応缶の気相部分を冷却することにより反応
缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に還流せしめ
ることにより得たポリアリーレンスルフィドのスラリー
を濾過した後、得られた含溶媒濾過ケーキを非酸化性ガ
ス雰囲気下150〜250℃の温度で加熱して溶媒を除
去し、次いで水洗浄することを特徴とするポリアリーレ
ンスルフィドの製造法である。
【0007】本発明において、上記従来技術におけるよ
うな第三の物質又は官能基を加えることを要せずに接着
性が著しく改善されることは、予期せざることであっ
た。
【0008】本発明で添加するパラ及びメタジハロ芳香
族化合物において、メタジハロ芳香族化合物の量の下限
は仕込ジハロ芳香族化合物の全量に対して0.5モル
%、好ましくは1モル%であり、上限は10モル%、好
ましくは5.0モル%である。上記範囲未満では、製造
されたPASの接着性が劣り、上記範囲を超えては、製
造されたPASの融点が著しく低下し、PAS本来の性
質である耐熱性が損なわれ、実用性に問題が生じ好まし
くない。
【0009】メタジハロ芳香族化合物は、反応系内のパ
ラジハロ芳香族化合物の反応率が0乃至80%未満の時
点で添加される。パラジハロ芳香族化合物の反応率が8
0%以上では、製造されたPASの接着性が劣り、また
粘度低下を引起こし、かつメタジハロ芳香族化合物が反
応系に未反応のまま残存するため好ましくない。好まし
くはパラ及びメタジハロ芳香族化合物は、反応系に同時
的に添加される。このように両者を同時的に添加するこ
とにより、PASの接着性を更に良好にすることができ
る。重合反応系に添加するパラ及びメタジハロ芳香族化
合物の合計量は、アルカリ金属硫化物1モルに対して、
好ましくは0.9〜1.1モル、特に好ましくは0.9
6〜1.05モルである。該範囲内で使用することによ
り、高分子量のPASを得ることができる。該添加量が
上記範囲未満では、著しく低分子量のPASしか得られ
ず、またパラ及びメタジハロ芳香族化合物の反応率が低
下し、経済的にも不利である。上記範囲を超えては、解
重合を起こすので好ましくない。メタジハロ芳香族化合
物を反応途中に装入する場合には、例えばメタジハロ芳
香族化合物をそのまま、あるいは有機アミド系溶媒とし
て使用するN‐メチルピロリドン等に溶解して、加圧注
入ポンプを用いて反応缶内に圧入することにより行うこ
とができる。
【0010】本発明の方法において用いられるパラ及び
メタジハロ芳香族化合物は公知である。例えば、特公昭
45‐3368号公報、特開平2‐103232号公報
又は特公平4‐64618号公報記載のものから選ぶこ
とができる。
【0011】パラジハロ芳香族化合物としては、例えば
p‐ジクロルベンゼン、p‐ジブロモベンゼン、1‐ク
ロロ‐4‐ブロモベンゼン等のジハロゲン化ベンゼン、
あるいは2,5‐ジクロルトルエン、2,5‐ジクロル
キシレン、1‐エチル‐2,5‐ジクロルベンゼン、1
‐エチル‐2,5‐ジブロモベンゼン、1‐エチル‐2
‐ブロモ‐5‐クロロベンゼン、1,3,4,6‐テト
ラメチル‐2,5‐ジクロルベンゼン、1‐シクロヘキ
シル‐2,5‐ジクロルベンゼン、1‐フェニル‐2,
5‐ジクロルベンゼン、1‐ベンジル‐2,5‐ジクロ
ルベンゼン、1‐フェニル‐2,5‐ジブロモベンゼ
ン、1‐p‐トルイル‐2,5‐ジクロルベンゼン、1
‐p‐トルイル‐2,5‐ジブロモベンゼン、1‐ヘキ
シル‐2,5‐ジクロルベンゼン等の置換ジハロゲン化
ベンゼン等が挙げられる。上記のうちジハロゲン化ベン
ゼンが好ましく、このうちp‐ジクロルベンゼンが特に
好ましい。また、これらの化合物は、夫々単独で又は混
合物として使用することができる。
【0012】メタジハロ芳香族化合物としては、例えば
m‐ジクロルベンゼン、m‐ジブロモベンゼン、1‐ク
ロロ‐3‐ブロモベンゼン等のジハロゲン化ベンゼン、
あるいは2,4‐ジクロルトルエン、2,4‐ジクロル
キシレン、1‐エチル‐2,4‐ジブロモベンゼン、1
‐エチル‐2‐ブロモ‐4‐クロロベンゼン、1,2,
4,6‐テトラメチル‐3,5‐ジクロルベンゼン、1
‐シクロヘキシル‐2,4‐ジクロルベンゼン、1‐フ
ェニル‐2,4‐ジクロルベンゼン、1‐ベンジル‐
2,4‐ジクロルベンゼン、1‐フェニル‐2,4‐ジ
ブロモベンゼン、1‐p‐トルイル‐2,4‐ジクロル
ベンゼン、1‐p‐トルイル‐2,4‐ジブロモベンゼ
ン、1‐ヘキシル‐2,4‐ジクロルベンゼン等の置換
ジハロゲン化ベンゼン等が挙げられる。上記のうちジハ
ロゲン化ベンゼンが好ましく、このうちm‐ジクロルベ
ンゼンが特に好ましい。これらの化合物は、夫々単独で
又は混合物として使用することができる。
【0013】本発明の反応缶の気相部分を冷却すること
により反応缶内の気相の一部を凝縮させ、これを液相に
還流せしめる方法としては、特開平5‐222196号
公報に記載の方法を使用することができる。
【0014】還流される液体は、水とアミド系溶媒の蒸
気圧差の故に、液相バルクに比較して水含有率が高い。
この水含有率の高い還流液は、反応溶液上部に水含有率
の高い層を形成する。その結果、残存のアルカリ金属硫
化物(例えばNa2 S)、ハロゲン化アルカリ金属(例
えばNaCl)、オリゴマー等が、その層に多く含有さ
れるようになる。従来法においては230℃以上の高温
下で、生成したPASとNa2 S等の原料及び副生成物
とが均一に混じりあった状態では、高分子量のPASが
得られないばかりでなく、せっかく生成したPASの解
重合も生じ、チオフェノールの副生成が認められる。し
かし、本発明では、反応缶の気相部分を積極的に冷却し
て、水分に富む還流液を多量に液相上部に戻してやるこ
とによって上記の不都合な現象が回避でき、反応を阻害
するような因子を真に効率良く除外でき、高分子量PA
Sを得ることができるものと思われる。但し、本発明は
上記現象による効果のみにより限定されるものではな
く、気相部分を冷却することによって生じる種々の影響
によって、高分子量のPASが得られるのである。
【0015】本発明においては、従来法のように反応の
途中で水を添加することを要しない。しかし、水を添加
することを全く排除するものではない。但し、水を添加
する操作を行えば、本発明の利点のいくつかは失われ
る。従って、好ましくは、重合反応系内の全水分量は反
応の間中一定である。
【0016】反応缶の気相部分の冷却は、外部冷却でも
内部冷却でも可能であり、自体公知の冷却手段により行
える。たとえば、反応缶内の上部に設置した内部コイル
に冷媒体を流す方法、反応缶外部の上部に巻きつけた外
部コイルまたはジャケットに冷媒体を流す方法、反応缶
上部に設置したリフラックスコンデンサーを用いる方
法、反応缶外部の上部に水をかける又は気体(空気、窒
素等)を吹き付ける等の方法が考えられるが、結果的に
缶内の還流量を増大させる効果があるものならば、いず
れの方法を用いても良い。外気温度が比較的低いなら
(たとえば常温)、反応缶上部に従来備えられている保
温材を取外すことによって、適切な冷却を行うことも可
能である。外部冷却の場合、反応缶壁面で凝縮した水/
アミド系溶媒混合物は反応缶壁を伝わって液相中に入
る。従って、該水分に富む混合物は、液相上部に溜り、
そこの水分量を比較的高く保つ。内部冷却の場合には、
冷却面で凝縮した混合物が同様に冷却装置表面又は反応
缶壁を伝わって液相中に入る。
【0017】一方、液相バルクの温度は、所定の一定温
度に保たれ、あるいは所定の温度プロフィールに従って
コントロールされる。一定温度とする場合、 230〜275
℃の温度で 0.1〜20時間反応を行うことが好ましい。よ
り好ましくは、 240〜265 ℃の温度で1〜6時間であ
る。より高い分子量のPASを得るには、2段階以上の
反応温度プロフィールを用いることが好ましい。この2
段階操作を行う場合、第1段階は 195〜240 ℃の温度で
行うことが好ましい。温度が低いと反応速度が小さす
ぎ、実用的ではない。 240℃より高いと反応速度が速す
ぎて、十分に高分子量なPASが得られないのみなら
ず、副反応速度が著しく増大する。第1段階の終了は、
重合反応系内ジハロ芳香族化合物残存率が1モル%〜40
モル%、且つ分子量が 3,000〜20,000の範囲内の時点で
行うことが好ましい。より好ましくは、重合反応系内ジ
ハロ芳香族化合物残存率が2モル%〜15モル%、且つ分
子量が 5,000〜15,000の範囲である。残存率が40モル%
を越えると、第2段階の反応で解重合など副反応が生じ
やすく、一方、1モル%未満では、最終的に高分子量P
ASを得難い。その後昇温して、最終段階の反応は、反
応温度 240〜270 ℃の範囲で、1時間〜10時間行うこと
が好ましい。温度が低いと十分に高分子量化したPAS
を得ることができず、また 270℃より高い温度では解重
合等の副反応が生じやすくなり、安定的に高分子量物を
得難くなる。
【0018】実際の操作としては、先ず不活性ガス雰囲
気下で、アミド系溶媒中のアルカリ金属硫化物中の水分
量が所定の量となるよう、必要に応じて脱水または水添
加する。水分量は、好ましくは、アルカリ金属硫化物1
モル当り0.5〜2.5モル、特に0.8〜1.2モル
とする。2.5モルを超えては、反応速度が小さくな
り、しかも反応終了後の濾液中にフェノール等の副生成
物量が増大し、重合度も上がらない。0.5モル未満で
は、反応速度が速すぎ、十分な高分子量の物を得ること
ができないと共に、副反応等の好ましくない反応が生ず
る。
【0019】反応時の気相部分の冷却は、一定温度での
1段反応の場合では、反応開始時から行うことが望まし
いが、少なくとも 250℃以下の昇温途中から行わなけれ
ばならない。多段階反応では、第1段階の反応から冷却
を行うことが望ましいが、遅くとも第1段階反応の終了
後の昇温途中から行うことが好ましい。冷却効果の度合
いは、通常反応缶内圧力が最も適した指標である。圧力
の絶対値については、反応缶の特性、攪拌状態、系内水
分量、ジハロ芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とのモ
ル比等によって異なる。しかし、同一反応条件下で冷却
しない場合に比べて、反応缶圧力が低下すれば、還流液
量が増加して、反応溶液気液界面における温度が低下し
ていることを意味しており、その相対的な低下の度合い
が水分含有量の多い層と、そうでない層との分離の度合
いを示していると考えられる。そこで、冷却は反応缶内
圧が、冷却をしない場合と比較して低くなる程度に行う
のが好ましい。冷却の程度は、都度の使用する装置、運
転条件などに応じて、当業者が適宜設定できる。
【0020】上記の反応条件を種々選択することによ
り、所望の粘度を持つPASを製造することができる。
【0021】ここで使用する有機アミド系溶媒は、PA
S重合のために知られており、たとえばN‐メチルピロ
リドン(NMP)、N,N‐ジメチルホルムアミド、
N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐メチルカプロラク
タム等、及びこれらの混合物を使用でき、NMPが好ま
しい。これらは全て、水よりも低い蒸気圧を持つ。
【0022】本発明で用いられるアルカリ金属硫化物も
公知であり、たとえば、硫化リチウム、硫化ナトリウ
ム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム及び
これらの混合物である。これらの水和物及び水溶液であ
っても良い。又、これらにそれぞれ対応する水硫化物及
び水和物を、それぞれに対応する水酸化物で中和して用
いることができる。安価な硫化ナトリウムが好ましい。
【0023】PASの分子量をより大きくするために、
例えば1,3,5‐トリクロロベンゼン、1,2,4‐
トリクロロベンゼン等のポリハロ化合物を、パラ及びメ
タジハロ芳香族化合物の合計量に対して好ましくは5モ
ル%以下の濃度で使用することもできる。
【0024】また、他の少量添加物として、末端停止
剤、修飾剤としてのモノハロ化物を併用することもでき
る。
【0025】本発明においては、上記工程で得られたP
ASスラリーを濾過した後、得られた含溶媒濾過ケーキ
を非酸化性ガス雰囲気下150〜250℃の温度で加熱
して溶媒を除去し、次いで水洗浄を施す。
【0026】例えば、上記のようにして得られたPAS
スラリーを濾過し、溶媒を含むPASケーキを得る。次
いで、該PASケーキは、ヘリウム、アルゴン、水素、
窒素等の非酸化性ガス気流中、好ましくは窒素ガス気流
中、150〜250℃、好ましくは180〜230℃の
温度で、好ましくは0.5〜20時間、特に好ましくは
1〜10時間加熱される。該加熱は、好ましくは常圧〜
3気圧、特に好ましくは常圧下で行われる。上記の加熱
による溶媒除去を行うことにより、PASの接着強度を
高めることができると共に、従来の水洗浄により溶媒を
除去する方法に比べて、水洗浄等の工程を簡略化でき、
かつ溶媒の回収率を著しく向上せしめることができるた
め、生産性が高くコスト的に有利である。
【0027】水洗浄は、好ましくは上記加熱後の濾過ケ
ーキを水に分散させることにより行われる。例えば、上
記のようにして得られた加熱後のPASケーキを、重量
で好ましくは1〜5倍の水中に投入して、好ましくは常
温〜90℃で、好ましくは5分間〜10時間攪拌混合し
た後、濾過する。該攪拌混合及び濾過操作を好ましくは
2〜10回繰り返すことにより、PASに付着した溶媒
及び副生塩の除去を行って水洗浄を終了する。上記のよ
うにして水洗浄を行うことにより、フィルターケーキに
水を注ぐ洗浄方法に比べて少ない水量で効率的な洗浄が
可能となる。
【0028】本発明の方法により製造されたPASは、
急激な結晶化が進行しないので、成形収縮等によるクラ
ック発生等を抑制することができ、エポキシ樹脂等の熱
可塑性樹脂と高い接着性を有する。従って、電気・電子
部品の封止等の分野において有用である。
【0029】本発明のPASを成形加工する際には、慣
用の添加剤、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウ
ム、シリカ、酸化チタン等の粉末状充填剤、又は炭素繊
維、ガラス繊維、アスベスト繊維、ポリアラミド繊維等
の繊維状充填剤を混入することができる。
【0030】以下、本発明を実施例により更に詳細に説
明するが、本発明はこれら実施例により限定されるもの
ではない。
【0031】
【実施例】実施例において、溶融粘度V6 は、島津製作
所製フローテスターCFT‐500Cを用いて300
℃、荷重20kgf/cm2 、L/D=10で6分間保
持した後に測定した粘度(ポイズ)である。
【0032】DSCにより、結晶化温度Tc 及び融点T
m を測定した。装置としては、セイコー電子製示差走査
熱量計SSC/5200を用い、以下のようにして測定
した。試料10mgを窒素気流中、昇温速度20℃/分
で室温から320℃まで昇温した後、320℃で5分間
保持して溶融した。次いで10℃/分の速度で冷却し
た。このときの発熱ピーク温度を結晶化温度Tc とし
た。再び室温から320℃まで10℃/分の速度で昇温
した時の吸熱ピーク温度を融点Tm とした。
【0033】パラジクロルベンゼン(以下ではp‐DC
Bと略すことがある)及びメタジクロルベンゼン(以下
ではm‐DCBと略すことがある)の反応率は、ガスク
ロマトグラフィーによる測定結果から算出した。ここ
で、各反応率は下記式により求めた。
【0034】
【数1】p‐DCBの反応率(%)=(1−残存p‐D
CB重量/仕込p‐DCB重量)×100
【0035】
【数2】m‐DCBの反応率(%)=(1−残存m‐D
CB重量/仕込m‐DCB重量)×100 接着強度の測定は下記の通りに行った。PPS40重量
部にガラスファイバー(CS 3J‐961S、商標、
日東紡績株式会社製)30重量部及び炭酸カルシウム
(SL‐1000、商標、竹原化学工業株式会社製)3
0重量部を混合した後、二軸異方向回転押出機を用い3
20℃で混練して、ペレットを作成した。得られたペレ
ットから、シリンダー温度320℃、金型温度130℃
に設定した射出成形機により、JIS K6850に従
う試験片を作成した。JIS K6850に準拠し、得
られた試験片をエポキシ樹脂系接着剤[長瀬チバ株式会
社製、主剤(XNR3101、商標)/硬化剤(XNH
3101、商標)=100重量部/33.3重量部]を
用いて90℃、30分の硬化条件で接着した後、引張速
度5mm/分、チャック間距離130mmで引張試験を
行い、接着強度を測定した。但し、実施例5について
は、PPS60重量部に上記ガラスファイバー40重量
部を混合して実施した。
【0036】
【実施例1】150リットルオートクレーブに、フレー
ク状硫化ソーダ(60.4重量%Na2 S)19.38
1kgと、N‐メチル‐2‐ピロリドン(以下ではNM
Pと略すことがある)45.0kgを仕込んだ。窒素気
流下攪拌しながら209℃まで昇温して、水4.640
kgを留出させた(残存する水分量は硫化ソーダ1モル
当り1.12モル)。その後、オートクレーブを密閉し
て180℃まで冷却し、p‐DCB22.185kg、
m‐DCB0.453kg(全DCBに対して2.0モ
ル%)及びNMP18.0kgを仕込んだ。液温150
℃で窒素ガスを用いて1kg/cm2 Gに加圧して昇温
を開始した。液温260℃で3時間攪拌しつつ反応を進
め、オートクレーブ上部を散水することにより冷却し
た。次に降温させると共にオートクレーブ上部の冷却を
止めた。オートクレーブ上部を冷却中、液温が下がらな
いように一定に保持した。反応中の最高圧力は、8.5
2kg/cm2 Gであった。
【0037】得られたスラリーを濾過して溶媒を除去
し、次に含溶媒濾過ケーキを窒素気流中、220℃で約
6時間加熱し溶媒を除去した。次に、得られたPPS粉
末に常法により水洗浄、濾過を7回繰り返した後、12
0℃で約8時間熱風循環乾燥機中で乾燥し、白色粉末状
のポリマーを得た。
【0038】p‐DCBの反応率は98.1%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0039】
【実施例2】p‐DCBを22.525kg、m‐DC
Bを0.113kg(全DCBに対して0.5モル%)
とした以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0040】p‐DCBの反応率は98.4%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0041】
【実施例3】p‐DCBを21.506kg、m‐DC
Bを1.132kg(全DCBに対して5.0モル%)
とした以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0042】p‐DCBの反応率は98.2%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0043】
【実施例4】p‐DCBを20.827kg、m‐DC
Bを1.811kg(全DCBに対して8.0モル%)
とした以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0044】p‐DCBの反応率は98.1%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0045】
【実施例5】p‐DCBを21.609kg、m‐DC
Bを0.441kg(全DCBに対して2.0モル%)
とし、かつ反応を液温220℃で5時間、その後昇温し
て液温260℃で5時間行った以外は、実施例1と同一
の条件で実施した。
【0046】p‐DCBの反応率は99.1%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0047】
【比較例1】m‐DCBは添加せず、p‐DCBを2
2.638kgとした以外は、実施例1と同一の条件で
実施した。
【0048】p‐DCBの反応率は98.4%であっ
た。
【0049】
【比較例2】p‐DCBを22.593kg、m‐DC
Bを0.045kg(全DCBに対して0.2モル%)
とした以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0050】p‐DCBの反応率は98.5%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0051】
【比較例3】p‐DCBを19.921kg、m‐DC
Bを2.717kg(全DCBに対して12モル%)と
した以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0052】p‐DCBの反応率は98.2%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0053】
【比較例4】オートクレーブ上部を冷却しなかった以外
は、実施例5と同一の条件で実施した。反応中の最高圧
力は、10.31kg/cm2 Gであった。
【0054】p‐DCBの反応率は99.1%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0055】
【比較例5】含溶媒濾過ケーキを窒素気流中で加熱処理
しなかった以外は、実施例1と同一の条件で実施した。
【0056】p‐DCBの反応率は98.1%であり、
m‐DCBの反応率は100%であった。
【0057】以上の結果を表1に示す。
【0058】
【表1】 実施例1〜4は、m‐DCBの添加量を本発明の範囲内
で変化させたものである。m‐DCB添加量を増加する
と、接着強度が増加する傾向にある。また、結晶化温度
c 及び融点Tm はいずれも低下した。実施例5は、実
施例1と同一条件下、反応を二段階としたものである。
接着強度は良好で、本発明の効果を十分達成し得るもの
であった。
【0059】一方、比較例1及び2は、夫々実施例1と
同一条件下、m‐DCBを添加しなかったもの及びその
添加量を本発明の範囲未満に低下させたものである。い
ずれの場合おいても、接着強度は著しく低かった。比較
例3は、実施例1と同一条件下、m‐DCBの添加量が
本発明の範囲を超えたものである。V6 、Tc 及びTm
は著しく低く、PAS本来の耐熱性が損なわれており実
用性のないものであった。比較例4は、実施例5と同一
条件下、オートクレーブ上部を冷却しなかったものであ
る。実施例5と比べて、PPSの接着強度は著しく低か
った。比較例5は、実施例1と同一条件下、含溶媒濾過
ケーキを窒素気流中で加熱処理しなかったものである。
実施例1に比べて、PPSの接着強度は著しく低かっ
た。
【0060】
【発明の効果】本発明は、従来のPASの持つ高い耐熱
性と機械的強度に加えて、エポキシ樹脂等との接着性に
も優れたPAS樹脂を製造する方法を提供する。また、
加熱により濾過ケーキ中の溶媒を除去するため、溶媒の
回収率が著しく高く、かつ水洗浄工程を簡略化できる。
従って、生産性が高く、かつコスト的に有利である。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機アミド系溶媒中でアルカリ金属硫化
    物とジハロ芳香族化合物とを反応させてポリアリーレン
    スルフィドを製造する方法において、パラジハロ芳香族
    化合物、及び反応系内のパラジハロ芳香族化合物の反応
    率が0乃至80%未満の時点で仕込ジハロ芳香族化合物
    の全量に対して0.5〜10モル%のメタジハロ芳香族
    化合物を反応系に添加し、かつ反応中、反応缶の気相部
    分を冷却することにより反応缶内の気相の一部を凝縮さ
    せ、これを液相に還流せしめることにより得たポリアリ
    ーレンスルフィドのスラリーを濾過した後、得られた含
    溶媒濾過ケーキを非酸化性ガス雰囲気下150〜250
    ℃の温度で加熱して溶媒を除去し、次いで水洗浄するこ
    とを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造法。
  2. 【請求項2】 パラジハロ芳香族化合物及びメタジハロ
    芳香族化合物を同時的に反応系内に添加する請求項1記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 1.0〜5.0モル%のメタジハロ芳香
    族化合物を添加する請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 濾過ケーキの加熱を、180〜230℃
    で行う請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
  5. 【請求項5】 水洗浄を、加熱後の濾過ケーキを水に分
    散させることにより行う請求項1〜4のいずれか一つに
    記載の方法。
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