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JPH06272000A - 成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製造方法

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JPH06272000A
JPH06272000A JP5081298A JP8129893A JPH06272000A JP H06272000 A JPH06272000 A JP H06272000A JP 5081298 A JP5081298 A JP 5081298A JP 8129893 A JP8129893 A JP 8129893A JP H06272000 A JPH06272000 A JP H06272000A
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treatment
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cooling
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JP5081298A
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Iwao Shu
岩 朱
Mamoru Matsuo
守 松尾
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Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 自動車用ボディシート等に使用される成形加
工用Al合金板として、成形性、焼付硬化性に優れ、か
つ室温での経時変化の少ない板の製造方法を提供する。 【構成】 Mg0.3〜1.5%、Si0.5〜2.5
%を必須とし、必要に応じてCu,Zn,Mn,Cr,
Zr,V,Fe,Tiを少量含有するAl合金鋳塊を均
質化処理、熱間圧延、冷間圧延した後、480℃以上で
溶体化処理して100℃/min 以上の冷却速度で150
〜300℃に冷却し、その温度で1〜600秒保持処理
して100℃/min 以上で140℃以下に冷却する(請
求項1)か、または前記と同じ溶体化処理後、100℃
以上の冷却速度で150℃以下に冷却して72時間以内
に改めて150〜300℃に600秒以内再加熱した
後、140℃以下に100℃/min 以上で冷却(請求項
2)し、その後72時間以内に最終熱処理として、50
×140℃×0.5〜50時間の安定化処理を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車のボディシー
トや部品、各種機械器具、家電部品等の素材として、成
形加工および塗装焼付を施して使用されるアルミニウム
合金板の製造方法に関するものであり、特に成形性が良
好であるとともに、塗装焼付後の強度が高く、かつ室温
での経時変化が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のボディシートには、従来は主と
して冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車
体軽量化の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用す
ることが進められている。自動車のボディシートはプレ
ス加工を施して使用するところから、成形加工性が優れ
ていること、また成形加工時におけるリューダースマー
クが発生しないことが要求され、また高強度を有するこ
とも必須であって、特に塗装焼付を施すことから、塗装
焼付後に高強度が得られることが要求される。
【0003】従来このような自動車用ボディシート向け
のアルミニウム合金としては、時効性を有するJIS
6000番系合金、すなわちAl−Mg−Si系合金が
主として使用されている。この時効性Al−Mg−Si
系合金では、塗装焼付前の成形加工時においては比較的
強度が低く、成形性が優れており、一方塗装焼付時の加
熱によって時効されて塗装焼付後の強度が高くなる利点
を有するほか、リューダースマークが発生しない等の利
点を有する。
【0004】ところで塗装焼付時における時効硬化を期
待したAl−Mg−Si合金板の製造方法としては、鋳
塊を均質化熱処理した後、熱間圧延および冷間圧延を行
なって所定の板厚とし、かつ必要に応じて熱間圧延と冷
間圧延との間あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍
を行ない、冷間圧延後に溶体化処理を行なって焼入れる
のが通常である。しかしながらこのような従来の一般的
な製造方法では、最近の自動車用ボディシートに要求さ
れる特性を充分に満足させることは困難である。
【0005】すなわち、最近ではコストの一層の低減の
ためにさらに薄肉化することが強く要求されており、そ
のため薄肉でも充分な強度が得られるように、一層の高
強度化が求められているが、この点で従来の一般的な製
造方法によって得られたAl−Mg−Si系合金板では
不充分であった。
【0006】また塗装焼付については、省エネルギおよ
び生産性の向上、さらには高温に曝されることが好まし
くない樹脂等の材料との併用などの点から、従来よりも
焼付温度を低温化し、また焼付時間も短時間化する傾向
が強まっている。そのため従来の一般的な製法により得
られたAl−Mg−Si系合金板では、塗装焼付時の硬
化(焼付硬化)が不足し、塗装焼付後に充分な高強度が
得難くなる問題が生じていた。
【0007】そこで最近ではAl−Mg−Si系合金に
ついて、板の製造方法に検討を加えて、前述のような問
題を解決することが試みられており、その代表的な例と
して、特開平4−210456号公報で提案されている
方法がある。この提案の方法は、溶体化処理後の焼入れ
のための冷却過程中途において50〜130℃の温度域
で1〜48時間の保持を行ない、さらにその後改めて1
40〜180℃の範囲内の温度で3〜10分間の低温加
熱処理を行なうものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の特開平4−210
456号の提案の方法によれば、従来の一般的なAl−
Mg−Si系合金板製造方法と比較すれば、素材の高強
度化および塗装焼付後の高強度化についてある程度有効
と考えられるが、満足できる程度には至っていないのが
実情である。
【0009】また塗装焼付時において大きな強度上昇を
図るべく、時効硬化性を強めれば、板の製造後、長期間
放置してから成形加工、塗装焼付に供した場合、成形加
工前の放置期間中に自然時効(室温時効)が進行して板
が硬化し、成形性が悪化してしまう問題がある。前述の
提案の方法ではその点について充分な考慮がなされてい
ないのが実情である。
【0010】さらに前述の提案の方法では、最終低温加
熱処理を140〜180℃×3〜10分としており、こ
の場合バッチ式の焼鈍を適用しようとすれば保持時間が
短過ぎ、一方連続方式の焼鈍を適用しようとすれば逆に
保持時間が長過ぎ、いずれの場合も生産しにくいという
問題もある。
【0011】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、良好な成形加工性を有すると同時に、焼付硬
化性が優れていて、塗装焼付時における強度上昇が高
く、しかも板製造後の室温での経時的な変化が少なく、
長期間放置した場合でも自然時効による硬化に起因する
成形性の低下が少ない成形加工用アルミニウム合金板の
製造方法を提供することを目的とするもてのある。
【0012】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するべく本発明者等が実験・検討を重ねた結果、Al−
Mg−Si系合金についてその成分組成を適切に選択す
ると同時に、板製造プロセス中において、溶体化処理後
に適切な熱処理を行なうことによって、前述の課題を解
決し得ることを見出し、この発明をなすに至った。
【0013】具体的には、請求項1の発明の成形加工用
アルミニウム合金板の製造方法は、Mg0.3〜1.5
%、Si0.5〜2.5%を含有し、さらに必要に応じ
てCu0.03〜1.2%、Zn0.03〜1.5%、
Mn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4%、Z
r0.03〜0.4%、V0.03〜0.4%、Fe
0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%のうち
から選ばれた1種または2種以上を含有し、残部がAl
および不可避的不純物よりなる合金を素材とし、鋳塊に
均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧延を行な
って所要の板厚の圧延板とし、その圧延板に対し、48
0℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100℃/
min 以上の冷却速度で150〜300℃の範囲内の温度
まで冷却し、続いてその150〜300℃の範囲内の温
度で1〜600秒保持する熱処理を行なった後、100
℃/min 以上の冷却速度で140℃以下の温度まで冷却
し、その後72時間以内に、50〜140℃の範囲内の
温度で0.5〜50時間保持する安定化処理を行なうこ
とを特徴とするものである。
【0014】また請求項2の発明の成形加工用アルミニ
ウム合金板の製造方法は、請求項1と同様な成分組成の
合金を素材とし、480℃以上の温度での溶体化処理ま
でを請求項1と同様なプロセスで行ない、溶体化処理後
100℃/min 以上の冷却速度で150℃以下の温度域
まで冷却し、続いて72時間以内に、150〜300℃
の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは600秒以
内の保持の熱処理を行なった後、100℃/min 以上の
冷却速度で140℃以下の温度まで冷却し、その後72
時間以内に、請求項1の発明と同様な安定化処理を行な
うものである。
【0015】
【作用】先ずこの発明の製造方法で用いる合金の成分組
成限定理由について説明する。
【0016】Mg:Mgはこの発明で対象としている系
の合金で基本となる合金元素であって、Siと共同して
強度向上に寄与する。Mg量が0.3%未満では塗装焼
付時に析出硬化によって強度向上に寄与するMg2 Si
の生成量が少なくなるため、充分な強度が得られず、一
方1.5%を越えれば成形性が低下するから、Mg量は
0.3〜1.5%の範囲内とした。
【0017】Si:Siもこの発明の系の合金で基本と
なる合金元素であって、Mgと共同して強度向上に寄与
する。またSiは、鋳造時に金属Siの晶出物として生
成され、その金属Si粒子の周囲が加工によって変形さ
れて、溶体化処理の際に再結晶核の生成サイトとなるた
め、結晶粒の微細化にも寄与する。Siが0.5%未満
では上記の効果が充分に得られず、一方2.5%を越え
れば粗大Siが生じて合金の靭性低下を招く。したがっ
てSiは0.5〜2.5%の範囲内とした。
【0018】Cu,Zn,Mn,Cr,Zr,V,T
i,Fe:これらは絶対的な必須元素ではないが、強度
向上や結晶粒微細化のために必要に応じて1種または2
種以上添加される。これらのうち、Cuは強度向上に有
効な元素であるが、Cu量が0.03%未満ではその効
果が充分に得られず、一方1.2%を越えれば耐食性が
低下するから、Cuを添加する場合のCu量は0.03
〜1.2%の範囲内とした。またZnは合金の時効性の
向上を通じて強度向上に寄与する元素であり、その含有
量が0.03%未満では上記の効果が不充分であり、一
方1.5%を越えれば成形性および耐食性が低下するか
ら、Znを添加する場合のZn量は0.03〜1.5%
の範囲内とした。さらにMn,Cr,Zr,Vはいずれ
も強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に効果
がある元素であり、いずれも含有量が0.03%未満で
は上記の効果が充分に得られず、一方それぞれ0.4%
を越えれば、上記の効果が飽和するばかりでなく、巨大
金属間化合物が生成されて成形性に悪影響を及ぼすおそ
れがあり、したがってMn,Cr,Zr,Vはいずれも
0.03〜0.4%の範囲内とした。またTiも強度向
上と鋳塊組織の微細化に有効な元素であり、その含有量
が0.005%未満では充分な効果が得られず、一方
0.2%を越えればTi添加の効果が飽和するばかりで
なく、巨大晶出物が生じるおそれがあるから、Tiは
0.005〜0.2%の範囲内とした。そしてまたFe
も強度向上と結晶粒微細化に有効な元素であり、その含
有量が0.03%未満では充分な効果が得られず、一方
0.5%を越えれば成形性が低下するおそれがあり、し
たがってFeは0.03〜0.5%の範囲内とした。な
お0.03%未満のFeは、通常のアルミ地金を用いれ
ば不可避的に含有される。なおこれらのCu,Zn,M
n,Cr,Zr,V,Ti,Feの範囲は、積極的な添
加元素としてこれらの元素を含む場合について示したも
のであり、いずれもその下限値よりも少ない量を不純物
として含有していることは特に支障ない。
【0019】以上の各元素のほかは、基本的にはAlお
よび不可避的不純物とすれば良い。但し、一般にMgを
含有する系の合金においては溶湯の酸化防止のために微
量のBeを添加することがあり、この発明の合金の場合
も0.0001〜0.01%程度のBeの添加は許容さ
れる。また一般に結晶粒微細化のために前述のTiと同
時にBを添加することもあり、この発明の場合もTiと
ともに500ppm 以下のBを添加することは許容され
る。
【0020】次にこの発明の方法における製造プロセス
について説明する。
【0021】溶体化処理前までの工程すなわち所要の製
品板厚の圧延板とするまでの工程は、従来の一般的なJ
IS 6000番系のAl−Mg−Si系合金と同様で
あれば良い。すなわち、DC鋳造法等によって鋳造した
後、常法に従って均質化処理(均熱処理)を施し、さら
に熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚とすれ
ば良く、また熱間圧延と冷間圧延との間、あるいは冷間
圧延の中途において必要に応じて中間焼鈍を行なっても
良い。
【0022】溶体化処理は、Mg2 Si等をマトリック
スに固溶させ、これにより焼付硬化性を付与して塗装焼
付後の強度向上を図るために必要な工程であり、また再
結晶させて良好な成形性を得るための工程でもある。溶
体化処理温度が480℃未満ではMg2 Siの固溶量が
少なく、充分な焼付硬化性が得られない。溶体化処理温
度の上限は特に規定しないが、共晶融解の発生のおそれ
や再結晶粒粗大化等を考慮して、通常は580℃以下と
することが望ましい。また溶体化処理の時間も特に限定
しないが、通常は120分以内とする。 溶体化処理後
には、100℃/min 以上の冷却速度で、請求項1の発
明方法の場合は150〜300℃の範囲内の温度まで、
請求項2の発明の方法場合は150℃以下の温度域まで
冷却(焼入れ)する。ここで、溶体化処理後の冷却速度
が100℃/min 未満では、冷却中にMg2 Siが多量
に析出してしまい、成形性が低下すると同時に、焼付硬
化性が低下して塗装焼付時の充分な強度向上が望めなく
なる。
【0023】溶体化処理後、最終の安定化処理までのプ
ロセスは、請求項1の発明の方法と請求項2の発明の方
法とで異なる。
【0024】すなわち請求項1の発明の方法の場合は、
図1に示すように、480℃以上の温度での溶体化処理
の後、100℃/min 以上の冷却速度で150〜300
℃の範囲内の温度に冷却し、続いてその150〜300
℃の範囲内の温度で1〜600秒保持する熱処理(以下
この熱処理を便宜上、保持処理と記す)を行ない、その
後100℃/min 以上の冷却速度で140℃以下の温度
まで冷却する。
【0025】一方請求項2の発明の方法の場合は、図2
に示すように、480℃以上の温度での溶体化処理の
後、100℃/min 以上の冷却速度で150℃以下の温
度まで冷却し、続いて72時間以内に改めて150〜3
00℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは60
0秒以内で保持する熱処理(以下この熱処理を便宜上、
再加熱処理と記す)を施し、その後100℃/min 以上
の冷却速度で140℃以下の温度まで冷却する。
【0026】上述のような請求項1の発明の方法におけ
る保持処理あるいは請求項2の発明の方法における再加
熱処理は、その後の安定化処理とともに、板製造後の自
然時効による経時変化を少なくすると同時に焼付硬化性
を良好にするために必要な処理である。すなわち、保持
処理もしくは再加熱処理によって安定なクラスターが形
成されやすくなり、そのため板製造後の室温での経時変
化が少なくなるとともに、塗装焼付でのG.P.ゾーン
が細かくなり、焼付硬化性が向上する。
【0027】ここで、請求項1の発明の方法における保
持処理もしくは請求項2の発明の方法における再加熱処
理の温度が150℃より低ければ上述の効果が得られ
ず、一方300℃を越えればクラスターの安定性が低下
し、逆に板製造後の室温での経時変化が生じやすくなる
とともに、焼付硬化性が低下する。また請求項1の発明
の方法における保持処理の時間が1秒未満では上述の効
果が充分に得られず、一方600秒を越えれば時効によ
って成形性が低下してしまう。一方請求項2の発明の方
法における再加熱処理は、150〜300℃の範囲内の
温度に到達すれば保持なしで直ちに冷却しても前述の効
果が得られるが、600秒を越えれば前記同様に時効に
よって成形性が低下してしまう。さらに上記の保持処理
もしくは再加熱処理後の140℃以下の温度への冷却速
度が100℃/min 未満では、冷却中に時効によって成
形性が低下してしまう。
【0028】また請求項2の発明の方法においては、溶
体化処理後150℃以下の温度に冷却してから再加熱処
理を行なうまでの時間は72時間以内とする必要があ
り、この時間(放置時間)が72時間を越えれば、自然
時効により成形加工前の素材の強度が高くなり、成形性
が低下してしまう。
【0029】以上のように保持処理もしくは再加熱処理
を行なって100℃/min 以上の冷却速度で140℃以
下に冷却した後には、請求項1の発明の方法、請求項2
の発明の方法のいずれの場合も、72時間以内に安定化
処理を行なう。このような安定化処理までの時間(放置
時間)が72時間を越えれば、自然時効により成形加工
前の素材の強度が高くなり、成形性が低下してしまう。
【0030】安定化処理は、最終的にクラスターの安定
性を向上させ、板製造後の経時変化を抑制して、良好な
成形加工性を確保するとともに充分な焼付硬化性を得る
ために必要な工程であり、この安定化処理は、50〜1
40℃の範囲内の温度に0.5〜50時間保持の条件と
する必要がある。安定化処理の温度が50℃未満では上
記の効果が充分に得られず、一方140℃を越えれば時
効によって素材強度が高くなり、成形性が低下してしま
う。また安定化処理における50〜140℃の範囲内の
温度での保持時間が0.5時間未満では、その後の室温
での経時変化が速くなって成形性と焼付硬化性が悪くな
り、一方50時間を越えれば、時効によって素材強度が
高くなり、成形性が低下してしまうとともに、生産性も
阻害される。
【0031】以上のようにこの発明の製造方法では、合
金の成分組成を適切に調整するとともに、製造プロセス
中において、480℃以上の温度での溶体化処理後の冷
却(焼入れ)過程で特定の条件での保持処理を行なう
(請求項1の発明の方法)か、または溶体化処理後の冷
却の後に改めて特定の条件での再加熱処理を施し(請求
項2の発明の方法)、その後72時間以内に特定の条件
の安定化処理を施すことにより、板製造後の室温での経
時変化、すなわち室温での自然時効の進行を阻止するこ
とが可能となり、その結果、板製造後に長期間放置され
てから成形加工、塗装焼付を施す場合でも、良好な成形
性、優れた焼付硬化性を充分に確保することが可能とな
ったのである。
【0032】
【実施例】表1に示す本発明成分組成範囲内のA1〜A
6の合金、および本発明成分範囲外のB1〜B3の合金
について、それぞれ常法に従ってDC鋳造法により鋳造
し、得られた鋳塊に530℃×10hrの均質化処理を施
してから、常法に従って熱間圧延および冷間圧延を行な
って厚さ1mmの圧延板とした。次いで各圧延板に対し、
540℃×10sec の溶体化処理を行なってから、10
0℃/min 以上の冷却速度で冷却し、請求項1の発明の
方法にしたがって冷却途中で保持処理を行なうか、また
は請求項2の発明の方法にしたがって150℃以下に冷
却してから再加熱処理を行ない、さらに安定化処理を行
なった。詳細な条件を表2中に示す。なお表2におい
て、製造番号1〜3および10はいずれも請求項1の発
明の方法にしたがって冷却途中で保持処理を行なった
例、また製造番号4〜6および11,12はいずれも請
求項2の発明の方法にしたがって再加熱処理を行なった
例を示す。一方製造番号7,9は、請求項1の発明の方
法に対する比較例、製造番号8は請求項2の発明の方法
に対する比較例である。なおまた、保持処理もしくは再
加熱処理後の冷却は、いずれも100℃/min 以上の冷
却速度で室温まで行ない、また安定化処理までの放置も
室温とした。
【0033】以上のようにして最終熱処理を行なって得
られた板を、さらに室温に1日もしくは60日放置した
各板について、それぞれ175℃×30分の加熱の塗装
焼付処理を施し、かつその焼付前の機械的特性および成
形性と、焼付後の機械的特性を調べた。その結果を表3
に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】製造番号1〜6は、いずれも合金の成分組
成がこの発明で規定する範囲内でかつ製造条件もこの発
明で規定する条件を満たしたものであるが、これらの場
合は、いずれも塗装焼付前の伸びおよびエリクセン値が
充分に高くて成形性が優れ、かつ焼付硬化性が高くて塗
装焼付時に大きな強度上昇が生じており、特に板製造後
60日室温に放置した場合においても、伸びおよびエリ
クセン値の低下が少なくて成形性が低下せず、かつ充分
な焼付硬化性を示した。
【0038】これに対し製造番号7〜9は、合金の成分
組成はこの発明で規定する範囲内であるが、製造条件が
この発明で規定する条件を満たさなかったものである。
そして特に製造番号7(合金記号A2)は、最終の安定
化処理の時間がこの発明で規定する時間より短かったも
のであるが、この場合には同じ合金(A2)を用いた本
発明例(製造番号2)と比較して、焼付硬化性が劣り、
特に60日放置後の成形性、焼付硬化性が劣っていた。
また製造番号8(合金記号A3)は、溶体化処理−冷却
後の再加熱処理における温度が高過ぎ、かつ再加熱処理
後の放置時間が長過ぎたものであるが、この場合には同
じ合金(A3)を用いた本発明例(製造番号3)と比較
して、素材強度が高過ぎて成形性に劣り、特に60日放
置後において成形性が劣るとともに焼付硬化性も充分で
はなかった。さらに製造番号9(合金記号A4)は、溶
体化処理後冷却途中での保持処理における保持温度が低
過ぎるとともに保持時間が長過ぎたものであり、この場
合には同じ合金(A4)を用いた本発明例(製造番号
4)と比較して、充分な焼付硬化性が得られなかった。
【0039】一方製造番号10〜12はいずれも成分組
成がこの発明で規定する範囲を外れた合金について、こ
の発明で規定する範囲内の条件のプロセスを適用したも
のであるが、この場合にはいずれも素材強度が低いばか
りでなく、焼付硬化性も低く、塗装焼付後の強度も充分
に得られなかった。
【0040】
【発明の効果】この発明の成形加工用アルミニウム合金
板の製造方法によれば、成形性が優れるとともに素材強
度が高いばかりでなく、焼付硬化性が優れていて、塗装
焼付後の強度が著しく高く、しかも室温での経時変化が
少なくて、板製造後に室温で長期間放置した場合にも成
形性の低下が少ないとともに焼付硬化性の低下も少な
い、安定な成形加工用アルミニウム合金板を得ることが
でき、したがって自動車用ボディシート、家電部品、各
種機械器具部品、そのほか成形加工および塗装焼付を施
して用いる用途のアルミニウム合金板の製造に最適であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の発明の方法における溶体化処理後の
プロセスを説明するための線図である。
【図2】請求項2の発明の方法における溶体化処理後の
プロセスを説明するための線図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.3〜1.5%(重量%、以下同
    じ)、Si0.5〜2.5%を含有し、さらに必要に応
    じてCu0.03〜1.2%、Zn0.03〜1.5
    %、Mn0.03〜0.4%、Cr0.03〜0.4
    %、Zr0.03〜0.4%、V0.03〜0.4%、
    Fe0.03〜0.5%、Ti0.005〜0.2%の
    うちから選ばれた1種または2種以上を含有し、残部が
    Alおよび不可避的不純物よりなる合金を素材とし、鋳
    塊に均質化処理を施した後、熱間圧延および冷間圧延を
    行なって所要の板厚の圧延板とし、その圧延板に対し、
    480℃以上の温度で溶体化処理を行なってから100
    ℃/min 以上の冷却速度で150〜300℃の範囲内の
    温度まで冷却し、続いてその150〜300℃の範囲内
    の温度で1〜600秒保持する熱処理を行なった後、1
    00℃/min 以上の冷却速度で140℃以下の温度まで
    冷却し、その後72時間以内に、50〜140℃の範囲
    内の温度で0.5〜50時間保持する安定化処理を行な
    うことを特徴とする、室温での経時変化が少なくかつ成
    形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合金板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 Mg0.3〜1.5%、Si0.5〜
    2.5%を含有し、さらに必要に応じてCu0.03〜
    1.2%、Zn0.03〜1.5%、Mn0.03〜
    0.4%、Cr0.03〜0.4%、Zr0.03〜
    0.4%、V0.03〜0.4%、Fe0.03〜0.
    5%、Ti0.005〜0.2%のうちから選ばれた1
    種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的
    不純物よりなる合金を素材とし、鋳塊に均質化処理を施
    した後、熱間圧延および冷間圧延を行なって所要の板厚
    の圧延板とし、その圧延板に対し、480℃以上の温度
    で溶体化処理を行なってから100℃/min 以上の冷却
    速度で150℃以下の温度域まで冷却し、続いて72時
    間以内に、150〜300℃の範囲内の温度に加熱して
    保持なしもしくは600秒以内の保持の熱処理を行なっ
    た後、100℃/min 以上の冷却速度で140℃以下の
    温度まで冷却し、その後72時間以内に、50〜140
    ℃の範囲内の温度で0.5〜50時間保持する安定化処
    理を行なうことを特徴とする、室温での経時変化が少な
    くかつ成形性および焼付硬化性に優れたアルミニウム合
    金板の製造方法。
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