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JP7518331B2 - 菓子パン用油脂組成物 - Google Patents

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本発明は、特定の菓子パンにて、成形時の作業性が低下せず、焼成後のボリュームが良好で、歯切れよい食感となる菓子パン用油脂組成物に関する。
イースト発酵させて作られるパン生地の製造で油脂は重要な役割を担う。用途別に大別すると、折込用油脂、練り込み用油脂に分けられる。そのうち、練り込み用油脂は、パン生地中の、小麦たんぱく質が均一で網目状につながってできたグルテンに沿って伸びることで、グルテンの伸展性向上に寄与し、パンの老化を抑制や、ボリューム向上に寄与する。
練り込み用油脂の配合量はパンの種類によって異なり、食パンの場合、一般的に穀粉100質量部に対して油脂は8質量部以下である。菓子パンの場合、穀粉100質量部に対して油脂は10質量部以上25質量部以下配合する。市場ニーズの多様化に伴い、歯切れよい食感の要望は高まっている。菓子パンにおいて、歯切れ感を特に向上させたい場合、油脂を25質量部以上配合することがある。パン製造工程には、ミキシングと言われる、油脂と小麦粉と水、そしてその他原料とを混合する工程があり、油脂を25質量部以上配合した場合、油脂の分散が不十分となり、グルテンは不均一でつながりの弱い状態になる。グルテンは菓子パンの形を保つのに必須な成分ということが知られており、不均一でつながりの弱い状態に変化したグルテンでは、菓子パンの形を十分に保つことができず、結果、菓子パンのボリュームが低下してしまう。また、油脂の分散が不十分となるため、焼成前の生地にて、成形時にべたついて作業性が低下する。
イースト発酵させて作られるパンに一般的に用いられる糖類はパンに甘さとしっとり感を与える目的で配合する。糖類の配合量はパンの種類によって異なり、菓子パンの場合10~25質量部である。近年、嗜好の多様化にともない、より甘くてしっとりとしている菓子パンが求められるようになった。しかし、パンをより甘くてしっとりさせるために糖類を25質量部以上配合すると、糖類がイーストの発酵を阻害して、菓子パンのボリュームが低下する場合があった。
このように油脂を多く含み、歯切れ良い食感の菓子パンにおいて、成形時の作業性を低下させず、ボリュームを向上させることは困難であり、糖類が25質量部以上では一層困難だった。
油脂を多く含むバラエティブレッドに関する技術が特許文献1に開示されている。しかしながら特許文献1に記載の技術は、35℃における固体脂含量の記載がなく、特許文献1での油脂組成では、本明細書で規定する35℃における固体脂含量を下回ることが、その組成から推測できる。また、油脂を多く含む場合に課題となる、焼成前生地の成形時のべたつき改善について記述はなく、課題の解決には至っていない。特許文献2には、糖類を多く含む菓子パンでも、原料を多段階に分けて穀粉生地と混合することで、発酵障害を引き起さず、菓子パンのボリューム低下を抑える方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の技術は、油脂を25質量部以上含んだ場合の、菓子パンの焼成前生地の成形時のべたつき改善や、ボリューム向上について記述がなく、課題解決には至らない。
以上のように、従来の技術では、油脂を多く含み、歯切れ良い食感の菓子パンにおいて、成形時の作業性を低下させず、菓子パンのボリュームを向上させることができなかった。
特開2014-093968号公報 特開2014-187882号公報
本発明は、穀粉100質量部に対して油脂を25~50質量部含有する菓子パンでも、成形時の作業性が低下せず、歯切れとボリュームが良好となる菓子パン用油脂組成物およびそれを含む菓子パン用穀粉生地、および菓子パンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、35℃と25℃の固体脂含量が特定範囲である油脂組成物を含有する菓子パンが上記課題を解決することの知見を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の発明である。
〔1〕穀粉100質量部に対して、油脂を25~50質量部含有する菓子パンにおいて用いられる菓子パン用油脂組成物であって、35℃の固体脂含量が5~15%、25℃の固体脂含量が10~30%である菓子パン用油脂組成物。
〔2〕穀粉100質量部に対して、〔1〕に記載の菓子パン用油脂組成物を、油脂の含有量として25~50質量部含有する菓子パン用穀粉生地。
〔3〕穀粉100質量部に対して、上白糖、グルコース及び水あめのうち1種類以上を25~50質量部含む、〔2〕に記載の菓子パン用穀粉生地。
〔4〕〔2〕又は〔3〕に記載の菓子パン用穀粉生地を焼成してなる菓子パンの製造方法。
本発明により、焼成前の生地にて成形時の作業性を低下させず、菓子パンの歯切れとボリュームを向上させることのできる菓子パン用油脂組成物およびそれを含む菓子パン用穀粉生地、および菓子パンの製造方法を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
〔菓子パン用油脂組成物〕
本発明の菓子パン用油脂組成物は、穀粉100質量部に対して、油脂を25~50質量部含有する菓子パンにおいて用いられる菓子パン用油脂組成物であって、35℃の固体脂含量が5~15%、25℃の固体脂含量が10~30%であることを特徴とする。35℃及び25℃における固体脂含量をこの範囲に調整することにより、焼成前の生地にて成形時の作業性を低下させず、菓子パンのボリュームを向上させることができる。
この理由について考察すると、25℃は油脂を生地に分散させる工程、及び焼成前の生地の形を整える成形工程の温度とみなすことができる。25℃における固体脂含量が10~30%であれば、25℃の雰囲気下のパン生地の硬さより若干硬い油脂物性となる。油脂を分散させる工程は、混合機械によって強制的に行うため、その工程により、油脂が適度に柔らかくなる。適度に柔らかくなった油脂は、生地への分散性が良好となり、グルテン膜に沿って伸びることができる。その結果、グルテンが均一な状態で形成される。菓子パン用穀粉生地において、油脂を良好に分散でき、均一でつながりのよいグルテンに改質できれば、良好なボリュームの菓子パンとなる。また、焼成前生地の成形時のべたつきが少なく、作業性の低下もない。25℃の固体脂含量が10%未満の場合、油脂が柔らかくなりすぎてしまい、成形時に生地はべたついてしまう。25℃の固体脂含量が30%を超える場合、油脂が硬いため、生地への分散性が悪くなる。その結果、グルテンは不均一でつながりの弱い状態となるため、菓子パンのボリュームは低下する。また、分散しきれず、塊として残った油脂の影響で、成形時に生地はべたついてしまう。
また、35℃は、パン生地の発酵初期過程の温度とみなすことができる。固体脂含量が5~15%であれば、35℃の雰囲気下のパン生地の硬さより、やや柔らかく、また35℃下でも油脂は可塑状となり、グルテンに沿って薄く層状に伸びた油脂が、発酵時に発生する二酸化炭素ガスを保持する。糖の影響でイーストの発酵阻害が起き、発生する二酸化炭素ガス量が少なくなっても、しっかり二酸化炭素ガスを保持することで、菓子パンのボリュームが良好となる。35℃の固体脂含量が5%未満の場合、油脂の可塑性はなくなり、発酵時に発生する二酸化炭素ガスを十分に保持することができず、菓子パンはボリュームが低下する。35℃の固体脂含量が15%を超える場合、油脂のそのものの硬さが影響して、発酵過程で十分に生地が伸びることが出来ず、結果として、菓子パンのボリュームが低下する。
本発明の菓子パン用油脂組成物において、25℃における固体脂含量は10~30%であるが、その下限値は、好ましくは15%以上であり、より好ましくは20%以上であり、特に好ましくは25%以上である。
また、35℃における固体脂含量は5~15%であるが、その下限値は、好ましくは10%以上である。
35℃における固体脂含量が5~15%、25℃における固体脂含量が10~30%となる油脂組成としては、パーム油、ナタネ油、大豆油等の天然の植物油、牛脂、豚脂、魚油等の天然の動物油、またはこれらの硬化油、極度硬化油、分別油、エステル交換油を使用し、目的に応じて組み合わせて用いることができる。
本発明の油脂において、エステル交換油を含有することが好ましく、エステル交換油の使用は、固体脂含量を任意に調整することができるため、本発明の課題に解決に有用である。また、エステル交換油の原料は、例えば、菜種油、大豆油、パームオレインなどの液状油(20℃)、パーム油、ヤシ油、パーム核油などの天然の可塑性油脂、菜種極度硬化油、ハイオレイン菜種極度硬化油、パーム極度硬化油、ヤシ極度硬化油、パーム核極度硬化油などの極度硬化油を任意に組み合わせて用いることができる。これらの原料を使用することによって、任意の固体脂含量に調整できるため、本発明の課題解決に有用である。一般的に用いられるエステル交換の方法は、例えば、混合油に触媒としてナトリウムメトキシド等のアルカリ触媒、またはリパーゼ等の酵素を用いて反応させる方法が挙げられる。エステル交換は、位置特異的なエステル交換であっても、ランダムエステル交換であってもよいが、ランダムエステル交換が好ましい。
固体脂含量の測定は、基準油脂分析試験法「2.2.9 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定する。測定装置は、「SFC-2000R」(アステック株式会社製)を使用し、本発明における固体脂含量は、この測定装置を用いて測定する。
それ以外の成分として、レシチン、乳化剤、酸化防止剤、動植物蛋白、油溶性フレーバー等、製パン油脂組成物用に一般的に使用される油溶性成分を含有することができる。また、油脂(油相部)以外にも、水(水相部)を含有してもよい。例えば、油相部100質量部に対して、水相部を10~20質量部含有することができる。さらには、水以外の水溶性成分として、乳、乳製品、澱粉、糖類、塩類、増粘多糖類、酸味料、酵素、pH調整剤等の安定剤、香辛料、呈味素材、HLB8~14の水溶性の乳化剤、水溶性酸化防止剤、水溶性フレーバー等、製パン用に一般的に使用される水溶性成分を含有することができる。
菓子パン用油脂組成物の製造方法としては、油脂原料を分散させ、温度(70℃~80℃)でプロペラ攪拌等にて10分間以上加熱攪拌し、均一に溶解する。その後、コンビネーター、リアクテーター等の急冷練り合わせ機、あるいは冷却機能を有す均質機等を用いて15℃~25℃まで降温し、菓子パン用油脂組成物を得る。
〔菓子パン用穀粉生地〕
本発明の菓子パン用穀粉生地は、上記菓子パン用油脂組成物を含有することを特徴とする。本発明の菓子パン用穀粉生地は、穀粉100質量部に対して、前記の菓子パン用油脂組成物を油脂の含有量として25~50質量部含有する。好ましくは30~40質量部である。菓子パン用油脂組成物の含有量が25質量部未満であると、十分な歯切れ感が得られず、50質量部を越えると、歯切れ感は良好になるものの、菓子パンの形が保たれずボリュームは低下する。
本発明の菓子パン用穀粉生地に用いる原料としては、主原料の穀粉として小麦粉の他にイースト、イーストフード、乳化剤、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油糖)、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー等が挙げられる。本発明の菓子パン用油脂組成物は小麦粉を用いる種々の食品に添加し、パン類等のベーカリー製品に利用することができる。
本発明の菓子パン用穀粉生地は、糖類を含有することが好ましく、更には、上白糖、グルコース及び水あめのうち1種以上を含有することが好ましい。糖類を含有することにより、パンに甘さとしっとり感を与えることができる。
また、糖類の含有量は、特に制限されないが、穀粉100質量部に対して、25~50質量部であることが好ましい。糖類の含有量をこの範囲に調整することにより、しっかりとした甘さとしっとり感を付与することができる。さらには、糖類の含有量を増加することにより、成型時の作業性が低下したり、菓子パンのボリュームが低下したりするなどの課題があることから、糖類が25質量部以上含有する場合には、本発明の菓子パン用油脂組成物の成型時の作業性を向上し、菓子パンのボリュームを向上するという効果をより一層発揮することができる。
菓子パン用穀粉生地の製造方法は、スクラッチ製法、ベイクオフ製法、QBD製法などの通常の製パン工程を適用することができる。
菓子パン用油脂組成物を添加後から発酵までの温度は、20~30℃であることが好ましく、発酵時は30~40℃であることが好ましい。
菓子パン用油脂組成物を添加後の温度を20~30℃に調整することより、菓子パン用油脂組成物中の油脂の硬さと生地の硬さが同等となるため、生地への油脂の分散性が良好となり、グルテン膜に沿って油脂が伸びることができる。これにより、グルテンが改質され、良好なボリュームの菓子パンとなる。
また、発酵時の温度を30~40℃に調整することにより、油脂が可塑状となり、グルテンに沿って薄く層状に伸びた油脂が、発酵時に発生する二酸化炭素ガスを保持する。そのため、糖類の含有量が高く、イーストの発酵が阻害される場合でも、二酸化炭素ガスが十分に保持され、菓子パンのボリュームを向上することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の配合量と配合割合は質量基準である。
[菓子パン用油脂組成物の製造]
(実施例1)
油相部としてエステル交換油(A)15kg(15質量%)、エステル交換油(B)6kg(6質量%)、パーム油9kg(9質量%)、菜種油70kg(70質量%)を混合し、70℃~80℃まで加温しプロペラ攪拌機(スリーワンモーターBLh600 新東科学製)にて10分間以上加熱攪拌し、均一に溶解した。油相部に使用した油脂原料は全て日油(株)製であり、その油脂混合液を、リアクテーター(本多交易製)を用いて15℃~20℃まで急冷し、菓子パン用油脂組成物を試作した。
(実施例2~10、比較例1~9)
実施例2~10、比較例1~9については、表1、2の配合比率に従い、上述と同様の製造方法で製造した。
(エステル交換油の製造)
エステル交換油Aは、ハイエルシン菜種極度硬化油0.375kg、ヤシ極度硬化油1.125kg、パームオレイン油8.5kgを混合し、エステル交換反応することにより得た。
エステル交換油Bは、パーム核油極度硬化油2.7kg、パーム極度硬化油3.3kgを混合し、エステル交換反応することにより得た。
なお、エステル交換反応は、ナトリウムメトキシドを用いたランダムエステル交換反応で行った。
[菓子パンの製造]
(中種生地製造)
強力粉(品名:オーション 日清製粉製)700g、全卵60g、イーストフード(品名:Cオリエンタルイースト オリエンタル酵母製)0.1g、イースト(品名:USイースト オリエンタル酵母製)4g、水400gを上述したミキサー(型番 AM-20 愛工社製)にて低速2分間中速2分間捏ね上げ、できた生地をドウコンディショナー(型番:KM-62DX 協同電熱製作所製)にて28℃ 2時間発酵させた。
(本捏生地製造)
発酵させた中種生地と、さらに強力粉300g、上白糖280g(対粉28質量部)、脱脂粉乳30g、食塩10g、水あめ100g(対粉10質量部)、イースト10g、水120gを投入しミキサーにて低速2分間中速4分間高速1分間捏ね上げ、ここで菓子パン用油脂組成物300g(対粉30質量部)投入し、さらに低速3分間中速4分間高速1分間捏ね上げ、捏ね上げ温度28℃の生地を得た。上述したドウコンディショナーにて40分間静置させた後、20gに分割し、さらに同装置にて20分間静置させた後、スティック状に成形した。成形された生地を天板に並べて、ドウコンディショナーにて、温度33℃、湿度75%の条件下で、60分間最終発酵を行った。最終発酵後、焼成オーブン(PRINCE PJB2-222B フジサワマルゼン製)にて上火220℃、下火160℃で7分間焼成し、長径約10cm、短径約3cmのスティック状小型ロールパンを得た。その後、室温(25℃ 開放状態)にて放冷しポリエチレン袋に入れ密閉保管した。
(菓子パンの評価)
実施例および比較例の菓子パン用油脂組成物を用いた菓子パンについて、成形時の生地のべたつき、及び焼成後1日間、25℃密閉状態で保管したパンの歯切れ感とボリュームを評価した。これらの評価方法を以下に示す。
(成形時の生地のべたつき)
本捏生地捏製造と同様の方法で、生地を捏ね上げ、上述のドウコンディショナーにて40分間静置させた後、生地20gを分割し、直径5cmの玉状にして、再び発酵装置にて20分間静置し、サンプルを得た。生地の作業性は、生地表面のべたつきを評価した。べたつきの測定には(株)山電製RHEONERIIを用いた。直径5cmの玉状生地を測定台に置き、平板型プランジャーにて5mm/secで歪率50%の条件にて圧縮・緩和した時の付着性荷重(N)を測定し、その値を‘生地のべたつき’とした。得られた測定値は、比較例3の測定値を100とした相対値で示し、以下の基準で評価した。
<基準>
◎:相対値が95未満である。
○:相対値が95以上100未満である。
△:相対値が100以上105未満である。
×:相対値が105以上である。
(歯切れ)
パンの歯切れ感の測定には(株)山電製RHEONERIIを用いた。長径を2分割するようにパンを切断し、切断部位から3cmの幅で再度パンを切断し、3cm幅の輪切りのパンを用意した。その輪切りのパンを、外皮表面が上になるように測定台に置き、刃型プランジャーにて5mm/secで圧縮し刃が貫通するのに必要な破断荷重値(N)を測定した。測定される破断荷重値(N)をパンの‘歯切れ’とした。得られた測定値は、比較例7の測定値を100とした相対値で示し、以下の基準で評価した。
<基準>
◎:相対値が95未満である。
○:相対値が95以上100未満である。
△:相対値が100以上105未満である。
×:相対値が105以上である。
(ボリューム)
パンの比容積の測定には(株)アステックス製Selnac-WinVM2100Aレーザー体積計測機を用いた。パンの容積(cc)を測定し、容積をパンの重量で割ることで比容積(cc/g)とした。得られた測定値は、比較例3の測定値を100とした相対値で示し、以下の基準で評価した。
<基準>
◎:相対値が106以上である。
○:相対値が103以上106未満である。
△:相対値が100以上103未満である。
×:相対値が100未満である。
表1を見ると、本発明の菓子パン用油脂組成物の実施例1~10では菓子パン生地の成形時にべたつきはなく、ボリュームが良好で歯切れ良い菓子パンになることが分かる。
表2を見ると、35℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の下限を外れた場合、発酵時に発生する二酸化炭素ガスを十分に保持できないため、菓子パンの、ボリュームは低下する。また35℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の上限を外れた場合、油脂の硬さが影響して、発酵過程で生地が十分に伸びることができず、菓子パンのボリュームは低下する(比較例1、2)。25℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の下限に外れた場合、油脂そのものが柔らかく、成形時の生地はべたつきやすくなる。また25℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の上限に外れた場合、油脂そのものが硬くて生地への分散性が悪くなり、グルテンは不均一でつながりの弱い状態に変化するため、菓子パンのボリュームは低下する(比較例3、5)。25℃、35℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の下限に外れた場合、油脂そのものが柔らかく、成形時の生地はべたつきやすくなる。また、発酵時に発生する二酸化炭素ガスを十分に保持することができないため、菓子パンのボリュームは低下する(比較例4、9)。25℃、35℃の固体脂含量が本発明で規定する範囲の上限に外れた場合、油脂の分散が不十分となるため、グルテンは不均一でつながりの弱い状態となり、菓子パンのボリュームは低下する。さらに、油脂そのものの硬さが影響して、発酵過程で十分に生地が伸びず、菓子パンのボリュームは一層低下する(比較例6)。油脂の配合率が対粉25%以上50%未満を下限に外れて満たさない場合、歯切れ感の劣る菓子パンとなり、上限に外れて満たさない場合、菓子パンのボリュームが低下する(比較例7、8)。

Claims (4)

  1. 穀粉100質量部に対して、油脂を25~50質量部、糖類を25~50質量部含有する菓子パンにおいて用いられる菓子パン用油脂組成物であって、35℃の固体脂含量が10~15%、25℃の固体脂含量が27~30%である菓子パン用油脂組成物(ただし、ヨウ素価51のパーム油35%、ヨウ素価35のパーム中融点部20%、以下のエステル交換油脂A18%、以下のエステル交換油脂B25%、及び大豆極度硬化油2%からなる油相を含む油脂組成物を除く。
    エステル交換油脂A:炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が68%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が11%であるパーム核油75%、及び、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が0%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が99%であるパーム極度硬化油25%からなり、炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が51%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が33%である油脂配合物に対して、ランダムエステル交換反応を行うことにより得られた、融点が32℃であるエステル交換油脂。
    エステル交換油脂B:ヨウ素価60のパーム軟部油100%からなる油脂配合物に対して、ランダムエステル交換反応を行うことにより得られた、融点が34℃であるエステル交換油脂。
    また、構成脂肪酸中にトランス型のモノエン酸を5~100モル%含むモノグリセライド、及び糊剤を含む、油中水型乳化油脂組成物を除く。)。
  2. 穀粉100質量部に対して、請求項1記載の菓子パン用油脂組成物を、油脂の含有量として25~50質量部含有する菓子パン用穀粉生地。
  3. 穀粉100質量部に対して、上白糖、グルコース及び水あめのうち1種類以上を25~50質量部含む、請求項2に記載の菓子パン用穀粉生地。
  4. 請求項2又は3に記載の菓子パン用穀粉生地を焼成してなる菓子パンの製造方法。
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