以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係り、図1は走行制御システムの全体構成図である。図1,2に示すように、本実施形態における走行制御システム1は、複数の車両にそれぞれ搭載された走行制御装置10と、複数の走行制御装置10が無線通信を介して接続されるネットワーク環境NWに設けられる複数の管制装置100と、を有して構成されている。管制装置100は、例えば、クラウドコンピューティングやエッジコンピューティングによるネットワーク環境、或いは道路付帯設備網によるネットワーク環境のサーバ装置として設けられている。
管制装置100は、各車両の走行制御装置10から送信される道路地図情報を逐次統合して更新し、更新した道路地図情報を各車両に送信する。このため、管制装置100は、道路地図情報統合_ECU101と、送受信機102と、を有して構成されている。
道路地図境情報統合_ECU101は、送受信機102を通じて複数の車両から収集した道路地図情報を統合して、道路上の車両を取り巻く道路地図情報を逐次更新する。道路地図情報は、例えば、ダイナミックマップからなり、主として道路情報を構成する静的情報及び準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報及び動的情報と、の4層の情報を有する。
静的情報は、例えば、道路や道路上の構造物、車線情報、路面情報、恒久的な規制情報等、1ヶ月以内の更新頻度が求められる情報によって構成されている。
準静的情報は、例えば、道路工事やイベント等による交通規制情報、広域気象情報、渋滞予測等、1時間以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
準動的情報は、例えば、観測時点における実際の渋滞状況や走行規制、落下物や障害物等、一時的な走行障害状況、実際の事故状態、狭域気象情報など、1分以内での更新頻度が求められる情報によって構成されている。ここで、本実施形態において、一時的な走行障害状況に関する情報には、例えば、道路上の各地点における緊急ブレーキ(AEB(Autonomous Emergency Braking):衝突被害軽減ブレーキ)制御の作動状況が過去1週間分含まれている。この緊急ブレーキ制御の作動状況には、例えば、制御対象となった障害物の種類(対人、対二輪車、対物(二輪車以外の車両)等)に関する情報、作動距離(作動地点から障害物までの制動距離)等の情報が含まれている。
動的情報は、例えば、移動体の間で送信・交換される情報や現在示されている信号の情報、交差点内の歩行者・二輪車情報、交差点を直進する車両情報等、1秒単位での更新頻度が求められる情報によって構成されている。
このような道路地図情報は、各車両から次の情報を受信するまでの周期で維持・更新され、更新された道路地図情報は送受信機102を通じて各車両に適宜送信される。
走行制御装置10は、車外の走行環境を認識するためのユニットとして、走行環境認識ユニット11及びロケータユニット12を有する。また、走行制御装置10は、走行制御ユニット(以下、「走行_ECU」と称す)22と、エンジン制御ユニット(以下、「E/G_ECU」と称す)23と、パワーステアリング制御ユニット(以下、「PS_ECU」と称す)24と、ブレーキ制御ユニット(以下、「BK_ECU」と称す)25と、を備える。これら各制御ユニット22~25は、走行環境認識ユニット11及びロケータユニット12と共に、CAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
走行環境認識ユニット11は、例えば、車室内前部の上部中央に固定されている。この走行環境認識ユニット11は、メインカメラ11aおよびサブカメラ11bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)11cと、第1の走行環境認識部11dと、を有している。
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、自車両Mの周辺の実空間をセンシングする自律センサであり、例えば、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配置され、自車両Mの前方を異なる視点からステレオ撮像する。
IPU11cは、両カメラ11a,11bで撮像した自車両Mの前方の前方走行環境画像情報を所定に画像処理し、対応する対象の位置のズレ量から求めた距離情報を含む前方走行環境画像情報(距離画像情報)を生成する。
第1の走行環境認識部11dは、IPU11cから受信した距離画像情報などに基づき、自車両Mの周辺の道路を区画する車線区画線を求める。
また、第1の走行環境認識部11dは、自車両が走行する走行路(自車走行レーン)の左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、および左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、および車幅の求め方は種々知られているが、例えば、第1の走行環境認識部11dは、道路曲率を前方走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式などにて左右区画線の曲率を所定区間毎に求める。
また、第1の走行環境認識部11dは、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行い、道路に沿って存在するガードレール、縁石、および、自車両Mの周辺の道路上に存在する歩行者、二輪車、二輪車以外の車両等の立体物の認識を行う。ここで、第1の走行環境認識部11dにおける立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両Mとの相対速度などの認識が行われる。
このように、本実施形態において、第1の走行環境認識部11dは、自車走行路を含む自車両Mの周辺の道路情報と、道路上に存在する走行車両や停止車両等の交通情報と、を含む第1の走行環境情報を認識する。すなわち、第1の走行環境認識部11dは、自律センサにより取得した情報に基づいて自車両周辺の道路情報及び交通情報を含む第1の走行環境情報を認識する第1の走行環境認識手段としての機能を実現する。
さらに、第1の走行環境認識部11dは、認識した第1の走行環境情報に基づいて、自車両Mと衝突する可能性のある障害物の認識を行う。この障害物認識に際し、第1の走行環境認識部11dは、後述するリスクマップ、及び、自車両Mの周辺の交通情報を参照する。ここで、リスクマップとは、例えば、道路上を複数の領域(小領域)に分割し、分割した小領域毎に、歩行者等の障害物の急な飛び出しに対して緊急ブレーキ制御を実行する必要に迫られる可能性(リスク)をマップ化したものである。
そして、第1の走行環境認識部11dは、自車両Mが存在する小領域のリスクが設定値以上であり、且つ、自車走行車線を含む道路の交通量が疎らな状態にあるとき或いは自車走行車線を含む道路に渋滞が発生している場合には、自車走行車線に進入する立体物を障害物として認識する感度を自車走行車線上に存在する離対物を障害物として認識する感度よりも高く設定した上で、障害物認識を行う。
なお、走行環境認識ユニット11における走行環境検出用の自律センサとしては、ステレオカメラに限定されるものではなく、単眼カメラ等を採用することも可能である。また、走行環境検出用の自律センサとしては、ステレオカメラ等に代えて、或いは、ステレオカメラ等と併用して、ミリ波レーダやレーザ・レーダ等のレーダ装置等を採用することも可能である。さらに、各種自律センサによる走行環境の検出範囲は、自車両Mの側方及び後方まで拡張することも可能である。
ロケータユニット12は、道路地図上の自車位置を推定するものであり、自車位置を推定するロケータ演算部13を有している。このロケータ演算部13の入力側には、自車両Mの前後加速度を検出する前後加速度センサ14、前後左右各車輪の回転速度を検出する車輪速センサ15、自車両の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサ16、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機17など、自車両Mの位置(自車位置)を推定するに際して必要とするセンサ類が接続されている。また、ロケータ演算部13には、管制装置100との間で情報の送受信(路車間通信:図2中の一点鎖線参照)を行うとともに、他車両との間で情報の送受信(車車間通信:図2中の二点鎖線参照)を行うための送受信機18が接続されている。
また、ロケータ演算部13には、高精度道路地図データベース19が接続されている。高精度道路地図データベース19は、HDDなどの大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自車両の走行制御を行う際に必要とする情報として、例えば、上述の道路地図情報統合_ECU101において逐次更新される道路地図情報と同様の情報を有する。すなわち、高精度道路地図情報は、主として道路情報を構成する静的情報及び準静的情報と、主として交通情報を構成する準動的情報及び動的情報と、からなる4層の情報を有する。
ロケータ演算部13は、地図情報取得部13aと、自車位置推定部13bと、第2の走行環境認識部13cと、を備えている。
地図情報取得部13aは、例えばドライバが自動運転に際してセットした目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を高精度道路地図データベース19に格納されている地図情報から取得する。
また、地図情報取得部13aは、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ)を自車位置推定部13bへ送信する。自車位置推定部13bは、GNSS受信機17で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置座標を取得する。また、自車位置推定部13bは、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に自車走行路(走行車線)を区画する左右の車線区画線を認識し、道路地図データに記憶されている走行車線中央の道路曲率を取得する。
また、自車位置推定部13bは、トンネル内走行などのようにGNSS受信機17の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境において、車輪速センサ15で検出した車輪速に基づき求めた車速、ジャイロセンサ16で検出した角速度、及び前後加速度センサ14で検出した前後加速度に基づいて自車位置を推定する自律航法に切換えて、道路地図上の自車位置を推定する。
さらに、自車位置推定部13bは、上述のようにGNSS受信機17で受信した測位信号或いはジャイロセンサ16等で検出した情報等に基づいて道路地図上の自車位置を推定すると、推定した道路地図上の自車位置に基づき、自車両Mが走行中の走行路の道路種別等を判定する。
第2の走行環境認識部13cは、送受信機18を通じた外部通信(路車間通信、及び、車車間通信)により取得した道路地図情報を用い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、及び、動的情報についても行われる。これにより、道路地図情報は、車外との通信により取得した道路情報及び交通情報を含んで構成され、道路上を走行する車両等の移動体の情報が略リアルタイムで更新される。
また、第2の走行環境認識部13cは、走行環境認識ユニット11により認識した走行環境情報に基づいて道路地図情報の検証を行い、高精度道路地図データベース19に格納された道路地図情報を最新の状態に更新する。この情報更新は、静的情報のみならず、準静的情報、準動的情報、及び、動的情報についても行われる。これにより、走行環境認識ユニット11により認識した道路上を走行する車両等の移動体の情報については、リアルタイムで更新される。
そして、このように更新された道路地図情報は、送受信機18を通じた路車間通信及び車車間通信により、管制装置100及び自車両Mの周辺車両等に対して送信される。
また、第2の走行環境認識部13cは、更新された道路地図情報のうち、自車位置推定部13bにおいて推定した自車位置を中心とする設定範囲の道路地図情報を、第2の走行環境情報として認識する。ここで、第2の走行環境認識部13cにより認識される第2の走行環境情報の範囲は、第1の走行環境認識部11dにより認識される第1の走行環境情報よりも広域であり、例えば、自車位置を中心とする半径1kmの範囲の道路地図情報が第2の走行環境情報として認識される。
さらに、第2の走行環境認識部13cは、第2の走行環境情報に付随する情報として、リスクマップを生成する。すなわち、第2の走行環境認識部13cは、歩行者等の障害物の急な飛び出しに対して緊急ブレーキ制御を実行する必要に迫られるリスクを、道路上の小領域毎に、予め設定された計算方法により数値化し、多段階に分類したリスクマップを生成する。
このように、本実施形態において、第2の走行環境認識部13cは、自車両Mの車外との通信により取得した自車両Mの周辺の道路情報及び交通情報を含む第2の走行環境情報を認識する第2の走行環境認識手段、リスク算出手段、及び、リスクマップ生成手段としての機能を実現する。
走行環境認識ユニット11の第1の走行環境認識部11dで認識した第1の走行環境情報、及び、ロケータユニット12の第2の走行環境認識部13cで認識した第2の走行環境情報(リスクマップを含む)などは、走行_ECU22により読込まれる。また、走行_ECU22の入力側には、ドライバが自動運転(走行制御制御)のオン/オフ切換等を行うモード切換スイッチ、ドライバによる運転操作量としての操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ、ドライバによる運転操作量としてのブレーキペダルの踏込量を検出するブレーキセンサ、ドライバによる運転操作量としてのアクセルペダルの踏込量を検出するアクセルセンサ、及び、自車両Mに作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ等の各種スイッチ・センサ類が接続されている。
走行_ECU22には、運転モードとして、手動運転モードと、走行制御制御のためのモードである第1の走行制御モード及び第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、モード切換スイッチに対する操作状況等に基づき、走行_ECU22において選択的に切換可能となっている。
ここで、手動運転モードとは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードであり、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両を走行させる運転モードである。
また、第1の走行制御モードも同様に、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を反映しつつ、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)と、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御および車線逸脱抑制(Active Lane Keep Bouncing)制御と、を適宜組み合わせて行うことにより、目標走行経路に沿って自車両Mを走行させる、いわば半自動運転モードである。
また、第2の走行制御モードとは、ドライバによる保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、例えば、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25などの制御を通じて、主として、先行車追従制御と、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御とを適宜組み合わせて行うことにより、目標ルート(ルート地図情報)に従って自車両Mを走行させる自動運転モードである。
退避モードは、例えば、第2の走行制御モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の走行制御モードに遷移できなかった場合)に、自車両を路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。
さらに、走行_ECU22は、上述の各運転モードにおいて、自車両Mと衝突する可能性の高い歩行者等の障害物に対し、適宜、衝突回避制御を行う。この衝突回避制御は、障害物に対する緊急ブレーキを伴う制御である。すなわち、走行_ECU22は、例えば、自車両Mの前方に障害物が存在するとき、自車両Mの直近の障害物に対する衝突予測時間TTC(:Time To Collision)を算出する。そして、走行_ECU22は、算出した衝突予測時間TTCが設定閾値TTCth未満となったとき、当該障害物に対する緊急ブレーキを作動させる。ここで、衝突予測時間TTCとは、自車両Mと障害物との相対距離を、自車両Mと障害物との相対速度で除算した値である。
この衝突回避制御に際し、走行_ECU22は、リスクマップ、及び、自車両Mの周辺の交通情報を参照する。すなわち、走行_ECU22は、自車両Mが存在するリスクマップ上の領域(小領域)のリスクを参照する。また、走行_ECU22は、自車両Mの周辺の交通情報を参照する。
そして、走行_ECU22は、自車両Mが存在する小領域のリスクが設定値以上であり、且つ、自車走行車線を含む道路の交通量が疎らな状態にあるとき或いは自車走行車線を含む道路に渋滞が発生している場合には、緊急ブレーキ制御による障害物との衝突回避を確実なものとするため、歩行者等の急な飛び出しに備えて自車速を設定車速以下に抑制することも可能である。
このように、本実施形態において、走行_ECU22は、走行制御手段としての機能を実現する。
E/G_ECU23の出力側には、スロットルアクチュエータ27が接続されている。このスロットルアクチュエータ27は、エンジンのスロットルボディに設けられている電子制御スロットルのスロットル弁を開閉動作させるものであり、E/G_ECU23からの駆動信号によりスロットル弁を開閉動作させて吸入空気流量を調整することで、所望のエンジン出力を発生させる。
PS_ECU24の出力側には、電動パワステモータ28が接続されている。この電動パワステモータ28は、ステアリング機構にモータの回転力で操舵トルクを付与するものであり、自動運転では、PS_ECU24からの駆動信号により電動パワステモータ28を制御動作させることで、現在の走行車線の走行を維持させる車線中央維持制御、および自車両を隣接車線へ移動させる車線変更制御(追越制御などのための車線変更制御)が実行される。
BK_ECU25の出力側には、ブレーキアクチュエータ29が接続されている。このブレーキアクチュエータ29は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整するもので、BK_ECU25からの駆動信号によりブレーキアクチュエータ29が駆動されると、ブレーキホイールシリンダにより各車輪に対してブレーキ力が発生し、強制的に減速される。
次に、上述の第2の走行環境認識部13cにおいて行われるリスクマップの生成について、図3に示すリスクマップ生成ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、第2の走行環境認識部13cにおいて、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、第2の走行環境認識部13cは、ステップS101において、道路地図情報からリスクマップの生成領域を抽出する。すなわち、第2の走行環境認識部13cは、例えば、自車位置を中心とする半径1Kmの範囲の道路地図情報をリスクマップ生成領域として抽出する。
ステップS102に進むと、第2の走行環境認識部13cは、ステップS101で抽出したリスクマップ生成領域内に含まれる道路を予め設定された距離毎に分割する複数の領域(小領域)を設定する。
続くステップS103において、第2の走行環境認識部13cは、後述するリスクレベルの設定が全ての小領域に対して行われたか否かを調べる。
そして、リスクレベルの設定が行われていない小領域が存在すると判定した場合、第2の走行環境認識部13cは、ステップS104に進み、現在設定されている小領域の中から、リスクレベルが未設定の小領域を選択する。
ステップS104からステップS105に進むと、第2の走行環境認識部13cは、現在選択されている小領域について、緊急ブレーキ制御を実行する必要に迫られるリスクを算出する。
このリスクの算出は、例えば、図6に示すマップを参照して行われる。すなわち、第2の走行環境認識部13cは、道路地図情報の道路情報に基づき、現在選択されている小領域が、幹線道路、一般道、或いは、繁華街に存在する道路のうちの何れに該当するかの分類を行う。すなわち、一般に、歩行者等が飛び出すリスクは、道路種別によって異なる。例えば、一般道は、一般に、幹線道路に比べ、道幅が狭く車線数も少ないため、歩行者等が道路を横断することが容易であり、歩行者等が小領域内に飛び出すリスクが高くなる。また、繁華街に存在する道路は、一般に、人通りが多く、道幅も一般道に比べて狭いため、歩行者等が道路を横断することがさらに容易となり、歩行者等が小領域内に飛び出すリスクがさらに高くなる。そこで、第2の走行環境認識部13cは、リスクの算出に際し、小領域が存在する道路の種別を分類する。なお、道路種別については、さらに細分化することも可能である。
また、第2の走行環境認識部13cは、道路種別についての分類を行った後、予め設定されたパラメータに対する係数を設定する。このパラメータとしては、例えば、図6に示すように、小領域内における緊急ブレーキの作動履歴、横断歩道や交差点の有無、イベント・工事等の有無、歩行者・二輪車等の交通量、及び、時間帯等が設定されている。
すなわち、第2の走行環境認識部13cは、例えば、小領域内における過去1週間以内の緊急ブレーキ制御の作動状態に応じた係数を設定する。具体的には、第2の走行環境認識部13cは、小領域内において、対人・対二輪車(自転車、自動二輪車等)に対する緊急ブレーキ制御が行われているとき、緊急ブレーキ制御の作動状態に応じた係数として、「k1(m/x)」を設定する。ここで、k1は予め設定された定数、mは緊急ブレーキ制御の作動回数、xは緊急ブレーキ制御による作動距離の平均値である。また、対物(四輪車等の車両)に対する緊急ブレーキ制御が行われているとき、及び、緊急ブレーキ制御が行われていないとき、緊急ブレーキ制御の作動状態に応じた係数として、「1」を設定する。
また、第2の走行環境認識部13cは、小領域の周辺における横断歩道・交差点の有無に応じた係数として、道路種別毎に設定された「1」または「2」を設定する。
また、第2の走行環境認識部13cは、小領域の周辺においてイベント・工事等があるとき、イベント・工事等の有無に応じた係数として、予め設定された定数「k2」を設定する。一方、第2の走行環境認識部13cは、小領域の周辺においてイベント・工事等がないとき、イベント・工事等の有無に応じた係数として、「1」を設定する。
また、第2の走行環境認識部13cは、小領域の周辺における歩行者・二輪車の交通量に応じた係数として、「n」を設定する。この係数「n」は、歩行者・二輪車の交通量について予め設定された基準値に対し、現在の交通量がどの程度の倍率であるかを示す値である。
また、第2の走行環境認識部13cは、現在の時間帯(昼間であるか夜間であるか)に対する係数として、道路種別毎に設定された「1」または「2」を設定する。
このように各パラメータに対する係数を設定すると、第2の走行環境認識部13cは、例えば、予め設定されたリスクの基準値に各係数を乗算することにより、小領域のリスクを算出する。
ステップS105からステップS106に進むと、第2の走行環境認識部13cは、現在選択されている小領域のリスクに応じてリスクレベルを設定した後、ステップS103に戻る。すなわち、本実施形態において、第2の走行環境認識部13cは、ステップS105で算出したリスクに応じて、小領域のリスクレベルをリスクレベル1からリスクレベル4の何れかに分類する。
そして、ステップS103において、全ての小領域についてリスクレベルの設定が行われたと判定した場合、第2の走行環境認識部13cは、ルーチンを抜ける。
これにより、例えば、図7,8に示すように、ステップS101において抽出したリスクマップ生成領域について、道路上の各小領域を多段階のリスクレベルに分類したリスクマップが生成される。なお、図7,8では、抽出したリスクマップ生成領域内に含まれる全ての道路について、小領域毎にリスクレベルを分類した一例について説明したが、例えば、自車両Mの進行方向の前方に存在する道路についてのみ、小領域を設定してリスクレベルの分類を行うことも可能である。
次に、第1の走行環境情報に基づく障害物の認識制御について、図4に示す障害物認識制御ルーチンに従って説明する。このルーチンは、第1の走行環境認識部11dにおいて、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、第1の走行環境認識部11dは、ステップS201において、リスクマップを参照し、自車両Mが現在走行中の小領域のリスクレベルを読み込む。
続くステップS202において、第1の走行環境認識部11dは、自車両Mが現在走行中の小領域のリスクレベルが閾値以上(例えば、リスクレベル3以上)であるか否かを調べる。
そして、ステップS202において、小領域のリスクレベルが閾値未満であると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、ステップS207に進む。
一方、ステップS202において、小領域のリスクレベルが閾値以上であると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、ステップS203に進み、自車両Mの周辺の設定範囲内において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にあるか否かを調べる。ここで、自車走行車線を含む道路とは、自車走行路のみならず、自車走行路に併設された各車線を含む概念であり、自車両Mの進行方向に順方向の車線のみならず対向車線を含む概念である。また、交通量が疎らな状態とは、例えば、車両と車両の間隔が所定間隔以上離れている状態にあることをいう。また、自車走行路を含む道路上の交通量が疎らな状態とは、例えば、自車走行路を含む道路上の各車線のうちの少なくとも何れか1つの交通量が疎らな状態にあることをいう。この道路上の交通量が疎らな状態にあるか否かの判定は、自車走行路を含む道路上の全ての車線を認識可能である場合(例えば、図9参照)には、基本的には、自律センサによって認識した第1の走行環境情報に基づいて行うことが可能である。但し、中央分離帯の街路樹等によって自律センサでは全ての車線を認識できない場合(例えば、図10参照)には、車外との通信に基づいて認識される第2の走行環境情報を一部代用することも可能である。
そして、ステップS203において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にあると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、歩行者等がタイミングを見計らって道路を横断する可能性があると判定して、ステップS205に進む。
一方、ステップS203において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にないと判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、ステップS204に進み、自車両Mの周辺の設定範囲内において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生しているか否かを調べる。ここで、渋滞が発生している状態とは、例えば、複数の車両が設定間隔以下で車列をなしており、且つ、これらの車両が停止または設定者測位かの極低速で走行している状態をいう。また、自車走行路を含む道路上に渋滞が発生している状態とは、例えば、自車走行路を含む道路上の各車線のうちの少なくとも何れか1つで渋滞が発生していることをいう。この道路上に渋滞が発生しているか否かの判定は、自車走行路を含む道路上の全ての車線を認識可能である場合(例えば、図9参照)には、基本的には、自律センサによって認識した第1の走行環境情報に基づいて行うことが可能である。但し、街路樹等によって自律センサでは全ての車線を認識できない場合(例えば、図10参照)には、車外との通信に基づいて認識される第2の走行環境情報を一部代用することも可能である。
そして、ステップS204において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生していないと判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、ステップS207に進む。
一方、ステップS204において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生していると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、歩行者等が車両と車両の間をすり抜けて道路を横断する可能性があると判定して、ステップS205に進む。
ステップS203或いはステップS204からステップS205に進むと、第1の走行環境認識部11dは、自車走行路の両側の領域を歩行者等の立体物を注視するための注視領域として設定する。この場合において、例えば、図9に示すように、自車走行路上の路側寄りに駐車車両等が存在する場合、第1の走行環境認識部11dは、当該駐車車両等を含む領域を注視領域として設定する。
続くステップS206において、第1の走行環境認識部11dは、注視領域から自車走行路に進入する立体物を障害物として認識する感度を、もともと自車走行車線上に存在する立体物を障害物として認識する感度よりも相対的に高くなるように変更する。
すなわち、立体物を認識してから当該立体物の移動速度や移動方向等を算出するまでには、所定フレームの間の変化を追跡する必要がある。このため、当該立体物を緊急ブレーキ制御の対象となる障害物として認識するためには所定の時間を要する。特に、例えば、図9,10に示すように、障害物となりうる歩行者等が停車車両や街路樹等の陰に隠れている場合には、事前に歩行者等の立体物を認識しておくことが困難であるため、当該歩行者等の立体物を障害物として認識するためには所定の時間を要する。その一方で、リスクレベルの高い小領域では、歩行者等の急な飛び出し等にも直ちに対応する必要があるため、注視領域に存在する立体物については可能な限り早期に障害物として認識できるようにすることが望ましい。そこで、第1の走行環境認識部11dは、注視領域における障害物の認識感度を高めるべく、注視領域において今まで存在しなかった立体物が突然認識された場合、或いは、注視領域において認識されていた立体物の自車走行車線方向への急激な変化による画像の乱れ(例えば、立体物の輪郭を構成するエッジの乱れ)が生じた場合等については、これらの立体物の移動速度等を算出することなく、直ちに障害物として認識できるようにする。
ステップS202、ステップS204、或いは、ステップS206からステップS207に進むと、第1の走行環境認識部11dは、緊急ブレーキ制御の対象となりうる障害物候補の抽出を行う。すなわち、第1の走行環境認識部11dは、自車走行路上の前方に存在する各立体物の移動速度及び移動方向を参照し、各立体物の中から自車両Mと衝突する可能性のある立体物を障害物候補として抽出する。また、第1の走行環境認識部11dは、注視領域において停車車両や街路樹等の物陰から突然出現した(認識された)立体物、及び、注視領域において既に認識されている立体物のうち動きに急激な変化が生じた立体物を障害物候補として抽出する。
続くステップS208において、第1の走行環境認識部11dは、ステップS207において障害物候補が抽出されているか否かを調べる。
そして、ステップS208において、障害物候補が抽出されていないと判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、そのままルーチンを抜ける。
一方、ステップS208において、障害物候補が抽出されていると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、ステップS209に進み、抽出されている立体物候補のうち、自車両Mに直近の障害物候補を障害物として認識した後、ルーチンを抜ける。
次に、上述の走行_ECU22において行われる障害物との衝突回避制御について、図5に示す衝突回避制御ルーチンに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU22において設定時間毎に繰り返し実行されるものである。ルーチンがスタートすると、走行_ECU22は、ステップS301において、リスクマップを参照し、自車両Mが現在走行中の小領域のリスクレベルを読み込む。
続くステップS302において、走行_ECU22は、自車両Mが現在走行中の小領域のリスクレベルが閾値以上(例えば、リスクレベル3以上)であるか否かを調べる。
そして、ステップS302において、小領域のリスクレベルが閾値未満であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS306に進む。
一方、ステップS302において、小領域のリスクレベルが閾値以上であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS303に進み、自車両Mの周辺の設定範囲内において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にあるか否かを調べる。
そして、ステップS303において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にあると判定した場合、第1の走行環境認識部11dは、歩行者等がタイミングを見計らって道路を横断する可能性があると判定して、ステップS305に進む。
一方、ステップS303において、自車走行車線を含む道路上の交通量が疎らな状態にないと判定した場合、走行_ECU22は、ステップS304に進み、自車両Mの周辺の設定範囲内において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生しているか否かを調べる。
そして、ステップS304において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生していないと判定した場合、走行_ECU22は、ステップS306に進む。
一方、ステップS304において、自車走行車線を含む道路上に渋滞が発生していると判定した場合、走行_ECU22は、歩行者等が車両と車両の間をすり抜けて道路を横断する可能性があると判定して、ステップS305に進む。
ステップS303或いはステップS304からステップS305に進むと、走行_ECU22は、自車両Mの目標車速を予め設定された車速以下に制限する。ここで、目標車速を制限するための設定車速は、歩行者等の急な飛び出しに備えて自車速を予め抑制するためのものであり、例えば、道路種別毎に異なる車速が設定されている。
ステップS302、ステップS304、或いは、ステップS305からステップS306に進むと、走行_ECU22は、上述のステップS209において障害物が認識されているか否かを調べる。
そして、ステップS306において、障害物が認識されていないと判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
一方、ステップS306において、障害物が認識されていると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS307に進み、障害物に対する衝突予測時間TTCが予め設定された閾値TTCth未満であるか否かを調べる。
そして、ステップS307において、衝突予測時間TTCが閾値TTCth以上であると判定した場合、走行_ECU22は、そのままルーチンを抜ける。
一方、ステップS307において、衝突予測時間TTCが閾値TTCth未満であると判定した場合、走行_ECU22は、ステップS308に進み、自車両Mの後方設定距離以内に後続車が存在するか否かを調べる。
そして、ステップS308において、後続車が存在しないと判定した場合、走行_ECU22は、障害物に対する緊急ブレーキを実行した後、ルーチンを抜ける。
一方、ステップS308において、後続車が存在すると判定した場合、走行_ECU22は、後続車の追突を回避するため、緊急ブレーキを実行することなくルーチンを抜ける。
このような実施形態によれば、走行環境認識ユニット11において自律センサにより取得した情報に基づいて第1の走行環境情報を認識すると共に、認識した第1の走行環境情報に基づいて自車両と衝突する可能性が高い障害物を認識し、ロケータユニット12おいて車外との通信により取得した情報を含む第2の走行環境情報を認識すると共に、第2の走行環境情報に基づき、緊急ブレーキ制御を実行する必要に迫られる道路上のリスクを算出し、走行_ECU22において障害物との衝突を回避するための緊急ブレーキ制御を行う走行制御装置10において、走行環境認識ユニット11は、リスクが設定値以上である領域を自車両が走行中であり、且つ、自車走行車線を含む道路の交通量が疎らな状態にあるとき或いは自車走行車線を含む道路に渋滞が発生しているとき、自車走行車線に進入する立体物を障害物として認識する感度を自車走行車線上に存在する立体物を障害物として認識する感度よりも高くすることにより、不要な緊急ブレーキ制御の作動を抑制しつつ、障害物の急な飛び出しに対しても的確に緊急ブレーキ制御を作動させることができる。
すなわち、歩行者等の急な飛び出しにより緊急ブレーキを作動させるリスクが高い領域を自車両Mが走行している場合において、自車走行車線を含む道路の交通量が疎ら或いは自車走行車線を含む道路が渋滞しており、歩行者等が道路を横切る可能性が高いと判断される場合には、自車走行車線に進入する歩行者等の立体物を障害物として認識する感度が高く変更される。これにより、特定の状況に限り、路側や隣接車線から自車走行路内に飛び出すことが見込まれる歩行者等の立体物を緊急ブレーキ制御の対象となりうる障害物として早期に認識することができるので、不要な緊急ブレーキ制御の作動を抑制しつつ、障害物の急な飛び出しに対しても的確に緊急ブレーキ制御を作動させることができる。
この場合において、走行_ECU22は、リスクが設定値以上である領域を自車両が走行中であり、且つ、自車走行車線を含む道路の交通量が疎らな状態にあるとき或いは自車走行車線を含む道路に渋滞が発生しているとき、自車速を設定車速以下に抑制することにより、歩行者等の急な飛び出しを予測して緊急ブレーキ制御に有効な車速まで自車速を抑制することができ、より効果的に緊急ブレーキ制御を作動させることができる。
ところで、リスクマップの生成は、管制装置100において生成することも可能である。すなわち、管制装置100の道路地図情報統合_ECU101は、第2の走行環境認識部13cと同様の処理により、道路地図情報に基づくリスクマップを生成することも可能である。この場合、道路地図情報統合_ECU101は、例えば、管制装置100が管轄する全ての道路についてリスクマップを生成する。このように生成されたリスクマップは、道路地図情報とともに、送受信機102を通じて送受信可能である。これにより、走行制御装置10は、送受信機18を通じて、例えば、自車位置を中心とする設定範囲(例えば、半径1Kmの範囲)のリスクマップを逐次受信することが可能となっている。
ここで、上述の実施形態において、走行環境認識ユニット11、ロケータユニット12、走行_ECU22、E/G_ECU23、PS_ECU24、BK_ECU25、及び、道路地図情報統合_ECU101は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。