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JP7410396B2 - スポット溶接継手の製造方法、スポット溶接装置及びプログラム - Google Patents

スポット溶接継手の製造方法、スポット溶接装置及びプログラム Download PDF

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Description

本発明は、スポット溶接継手の製造方法、スポット溶接装置及びプログラムに関する。
例えば、自動車等の車体には、薄板が最外に位置するように薄板と二枚の厚板からなる3枚の鋼板を重ね合わせて板組を形成し、この板組を一対の電極で挟んでスポット溶接したスポット溶接継手が適用されている。
このようなスポット溶接継手の従来のスポット溶接工程では、水冷された一対の電極から一番離れている場所である板組の総板厚中心部を起点にして溶融が開始される。そのため、板組の総板厚や鋼板の強度にもよるが、総板厚中心部から離れており水冷された一方の電極に近い薄板と厚板との間の境界部を溶融させて該境界部にナゲットを形成するのは一般的に困難とされている。
そこで、薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成するために、次の第一の技術及び第二の技術が提案されている。
すなわち、第一の技術(例えば、特許文献1参照)では、板組を第一電極及び第二電極で挟むと共に、板組の最外に位置して第二電極が当接する薄板に対して加圧部材を当接し、加圧部材によって薄板の側から板組を加圧した状態で、第一電極と第二電極との間を通電する。
この第一の技術では、第二電極と加圧部材との合計加圧力が第一電極の加圧力と均衡するので、第二電極の加圧力が第一電極の加圧力に比して小さくなる。したがって、第二電極が当接した薄板と該薄板に重なる厚板との接触面に作用する力が、残りの厚板同士の接触面に作用する力に比して小さくなるので、薄板と厚板との間の接触抵抗が、残りの厚板間の接触抵抗に比して大きくなる。これにより、薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成できるとしている。
また、第二の技術(例えば、特許文献2参照)では、薄板に当接する第二電極の加圧力を、薄板と反対側の厚板に当接する第一電極の加圧力よりも小さくした状態で、第一電極と第二電極との間を通電する。この第二の技術では、薄板と厚板との間の接触抵抗が、残りの厚板間の接触抵抗に比して大きくなるので、薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成できるとしている。
特開2012-66284号公報 特開2003-251469号公報
しかしながら、上述の第一の技術では、第二電極と共に加圧部材で薄板を加圧するので、加圧部材が必要である。また、上述の第二の技術では、薄板と反対側の厚板に当接する第一電極の加圧力が、薄板に当接する第二電極の加圧力よりも大きくなり、第一電極に当接する厚板が凹形状になるように板組が変形するので、溶接前後で板組の形状が変化する。
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、加圧部材が不要であると共に、溶接前後で板組の形状が変化することを回避しつつ、板組を構成する複数の金属板の間の境界部にナゲットを形成できる、スポット溶接継手の製造方法、スポット溶接装置及びプログラムを提供することにある。
本発明の第一態様は、複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組を、対向する第一電極及び第二電極で挟んでスポット溶接してスポット溶接継手を得る、スポット溶接継手の製造方法において、前記第一電極を前記第二金属板と反対側に配置し、前記第二電極を前記第二金属板の側に配置した状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる第一ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する第二ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる第三ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する第四ステップと、を含むスポット溶接継手の製造方法である。
本発明の第二態様は、複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組をスポット溶接するスポット溶接装置であって、対向する第一電極及び第二電極と、前記第一電極及び前記第二電極が対向する方向に前記第一電極及び前記第二電極を移動させる駆動部と、前記第一電極と前記第二電極との間を通電する電源部と、前記駆動部及び前記電源部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第一電極が前記第二金属板と反対側に配置され、前記第二電極が前記第二金属板の側に配置された状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第一制御部と、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第二制御部と、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電する制御を前記電源部に対して行い、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第三制御部と、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第二制御部による制御のときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第四制御部と、を含むスポット溶接装置である。
本発明の第三態様は、対向する第一電極及び第二電極と、前記第一電極及び前記第二電極が対向する方向に前記第一電極及び前記第二電極を移動させる駆動部と、前記第一電極と前記第二電極との間を通電する電源部と、前記駆動部及び前記電源部を制御する制御部と、を備え、複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組を、前記第一電極及び前記第二電極で挟んでスポット溶接するスポット溶接装置に適用されるプログラムであって、前記制御部としてのコンピュータに、前記第一電極が前記第二金属板と反対側に配置され、前記第二電極が前記第二金属板の側に配置された状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第一ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第二ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電する制御を前記電源部に対して行い、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第三ステップと、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第四ステップと、を実行させるためのプログラムである。
本発明によれば、加圧部材が不要であると共に、溶接前後で板組の形状が変化することを回避しつつ、板組を構成する複数の金属板の間の境界部にナゲットを形成できる。
本発明の一実施形態に係るスポット溶接装置の構成を示す図である。 図1の制御部の構成を示すブロック図である。 図1の制御部の処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法を説明する図である。 本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法の変形例を説明する図である。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るスポット溶接装置10の構成を示す図である。このスポット溶接装置10は、対向する第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んでこの板組70をスポット溶接し、スポット溶接継手80を得る装置である。
溶接対象である板組70は、一例として、二枚の厚板71、72と、この二枚の厚板71、72の各々よりも板厚が薄い薄板73とを含んでいる。二枚の厚板71、72は、一例として、板厚が同じであるが、板厚が異なっていてもよい。この板組70では、薄板73が最外に位置するように二枚の厚板71、72及び薄板73が重ね合わされている。厚板71、72は、「第一金属板」の一例であり、薄板73は、「第二金属板」の一例である。本発明の対象とする金属板の板厚は、0.4mm~4.5mm程度の範囲である。本発明でいう厚板とは、板厚が6.0mm以上のいわゆる厚鋼板を指すのではなく、板組の中で、相対的に板厚が厚い板を厚板と呼ぶ。
二枚の厚板71、72及び薄板73は、一例として、いずれも鋼板である。板組70に使用される鋼板としては、例えば、電気めっき鋼板、溶融めっき鋼板、及び、合金化溶融めっき鋼板等が挙げられる。
なお、板組70は、二枚の厚板71、72及び薄板73に他の鋼板が重ね合わされた積層体でもよい。また、板組70に使用される金属板は、通電可能であれば、鋼板以外でもよい。金属板の材料の種類、形態、機械的特性等は特に限定されない。
また、板組70の板厚比は、特に限定されないが、例えば、4.0以上であると好適である。板厚比とは、板組70を構成する複数の金属板のうち最も薄い金属板の板厚に対する板組70の総板厚の比のことである。
板組70は、水平に配置されることに限定されないが、本実施形態では、一例として、板組70が水平に配置された場合を説明する。この板組70は、複数の拘束部90によって拘束される。複数の拘束部90は、上側の一対の拘束部90と、下側の一対の拘束部90とを含む。上側の一対の拘束部90は、水平方向に並んで配置されている。同様に、下側の一対の拘束部90は、水平方向に並んで配置されている。
なお、板組70は、複数の拘束部90による拘束が必要な大きさのパネル部品でもよいが、例えば自動車用の車体パネル部品のような大きなパネル部品の一部に形成されていてもよい。このように大きなパネル部品の一部に板組70が形成される場合には、板組70の周囲を複数の拘束部90で拘束しなくても、パネル部品の全体が拘束されることにより、板組70を複数の拘束部90で拘束したときと同様の拘束状態で拘束することができる。
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係るスポット溶接装置10は、溶接ガン11と、溶接ロボット12と、電源部13と、制御部14とを備える。
溶接ガン11は、ガン本体21と、電極駆動部22と、第一電極31と、第二電極32とを有する。ガン本体21は、側面視でC字状に形成されている。電極駆動部22は、例えば、サーボモータ機構であり、ガン本体21の上部に固定されている。第一電極31は、可動電極であり、電極駆動部22の可動部に接続されている。第二電極32は、固定電極であり、ガン本体21の下部に固定されている。
第一電極31及び第二電極32は、溶接ガン11の上下方向に対向している。電極駆動部22は、第一電極31及び第二電極32が対向する方向、すなわち溶接ガン11の上下方向に第一電極31を昇降させるように構成されている。第一電極31が昇降することにより、固定された第二電極32に対して第一電極31が溶接ガン11の上下方向に相対的に移動する。第一電極31は、上側の一対の拘束部90の間に配置され、第二電極32は、下側の一対の拘束部90の間に配置される。
溶接ロボット12は、例えば、六軸垂直多関節ロボットである、この溶接ロボット12は、複数の関節23を有するロボットアーム24と、複数の関節23の各々を駆動させる複数の関節駆動部25とを備える。電極駆動部22及び複数の関節駆動部25は、「駆動部」の一例である。
ロボットアーム24の先端部には、溶接ガン11が固定されている。複数の関節駆動部25によって複数の関節23の各々が駆動されることにより、溶接ロボット12は、溶接ガン11を自在に移動させることができるようになっている。この溶接ロボット12の動きにより、後述するように、第一電極31及び第二電極32を含む溶接ガン11の全体が昇降できるようになっている。
電源部13は、例えば、電源回路であり、第一電極31と第二電極32との間を通電するように構成されている。制御部14は、例えば、コンピュータであり、電極駆動部22、複数の関節駆動部25及び電源部13を制御するように構成されている。
図2は、図1の制御部14の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、制御部14は、ハードウェア構成として、プロセッサ41と、メモリ42とを備える。プロセッサ41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成され、メモリ42は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージによって構成される。
メモリ42は、不揮発性記憶部を有しており、この不揮発性記憶部には、後述するスポット溶接継手の製造方法を実行するためのプログラム43が記憶されている。
また、制御部14は、機能的な構成として、第一制御部51と、第二制御部52と、第三制御部53と、第四制御部54と、第五制御部55とを備える。この第一制御部51と、第二制御部52と、第三制御部53と、第四制御部54と、第五制御部55とは、プロセッサ41がプログラム43を実行することにより実現される。この第一制御部51等の機能については、後述するスポット溶接継手の製造方法と併せて説明する。
次に、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法について説明する。
図3は、図1の制御部14の処理の流れを示すフローチャートである。また、図4は、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法を説明する図である。図4において、(A)は第一電極31及び第二電極32の動作を説明する図、(B)は第一電極31及び第二電極32の加圧力、第一電極31と第二電極32との間を通電する電流値、及び、時間の関係を示すグラフである。
本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法は、上述のように拘束された状態の板組70を、対向する第一電極31及び第二電極32で挟んでスポット溶接してスポット溶接継手80を得る方法である。このスポット溶接継手の製造方法は、上述のスポット溶接装置10を用いて実行される。以下の説明において、スポット溶接装置10の構成については、図1、図2を参照することにする。
本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、一例として、第一電極31を厚板71の側(薄板73と反対側)に配置して厚板71に当接させると共に、第二電極32を薄板73の側に配置して第二電極32と薄板73との間にクリアランス92を設けた状態を初期状態とする。
そして、このスポット溶接継手の製造方法は、上述の初期状態から開始される。このスポット溶接継手の製造方法は、以下に順に説明する通り、第一ステップと、第二ステップと、第三ステップと、第四ステップと、第五ステップとを備える。
(第一ステップ)
第一ステップは、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させるステップである。この第一ステップでは、第一制御部51によって電極駆動部22及び複数の関節駆動部25に対する制御が行われる。このとき、第一電極31が降下すると共に、溶接ガン11が降下することにより、第一電極31を板組70に押し付けて、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させる制御が電極駆動部22及び複数の関節駆動部25に対して行われる。
このとき、第一電極31が板組70に押し付けられて、薄板73の側が凸形状になるように板組70が変形することにより、第二電極32が薄板73に当接し、板組70が第一電極31及び第二電極32で挟まれた状態になる。そして、この第一電極31及び第二電極32によって板組70に対する加圧が開始される。この板組70に対する加圧力は、後述する第五ステップが終了するまで略一定に保たれる。
このように、第一電極31を板組70に押し付けて薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させると、厚板71と第一電極31との接触面積が、薄板73と第二電極32との接触面積よりも大きくなる。
この第一ステップでは、厚板71と第一電極31との接触面積をS1とし、薄板73と第二電極32との接触面積をS2とした場合に、接触面積S1と接触面積S2との関係が、一例として、式(1)を満たすように、板組70を変形させる。この理由については、後述する。
0.1<S2/S1<0.9・・・(1)
なお、図4に示される例では、第一電極31を厚板71に当接させると共に、第二電極32と薄板73との間にクリアランス92を設けた状態を初期状態としているが、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態(加圧状態)を初期状態としてもよい。そして、第一ステップでは、電極駆動部22を停止させたまま、複数の関節駆動部25により溶接ガン11を降下させて第一電極31を板組70に押し付けて、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させてもよい。
また、第一ステップでは、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させる際に、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態で、第一電極31及び第二電極32の間を電流値I1で通電してもよい。この場合、板組70を溶接するのではなく、板組70が軟化するように、第一電極31と第二電極32との間を通電する電流値I1が設定される。
このようにすると、板組70を変形させる際に板組70を軟化させることができるので、板組70を容易に変形させることができる。この場合に、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させながら板組70を変形させてもよく、また、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させてから板組70を変形させてもよい。また、好ましくは、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させるが、この板組70を軟化させるための通電は省かれてもよい。
さらに、上記例では、複数の関節駆動部25により複数の関節23を駆動させて溶接ガン11を降下させるが、図4に示されるように、第二電極32と薄板73との間にクリアランス92を設けた状態を初期状態とする場合には、次のようにしてもよい。すなわち、第一ステップにおいて、複数の関節駆動部25を停止させたまま、電極駆動部22により第一電極31を降下させて板組70に押し付けて、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させてもよい。
(第二ステップ)
第二ステップは、厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74を形成するステップである。この第二ステップでは、第一電極31及び第二電極32で板組70が挟まれた状態で、第一電極31と第二電極32との間が通電されるように、第二制御部52によって電源部13に対する制御が行われる。
ここで、第一電極31と第二電極32との間を通電する電流値I2が大きいと、板組70の総板厚中心部を起点にして溶融が開始される。一方、電流値I2が小さいと、第二ステップの段階では薄板73と第二電極32との接触面積が厚板71と第一電極31との接触面積よりも小さいので、薄板73側の電流密度が厚板71側の電流密度よりも高くなり、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74が形成される。
この第二ステップでは、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74が形成されるように、電流値I2が設定される。この電流値I2は、後述する第四ステップで厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成する電流値I4よりも小さい値に設定される。
この第二ステップでは、厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74が形成されればよく、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲットは形成されても形成されなくてもどちらでもよい。
この第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲットを形成する場合には、厚板71と厚板72との間の境界部のナゲットの方が、厚板72と薄板73との間の境界部のナゲット74よりもナゲット径が小さくなるように、電流値I2が設定される。この場合のナゲット径は、各境界部と平行な方向に沿って測定される直径の最大値である。
図4に示される例では、一例として、第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲットが形成されずに、厚板72と薄板73との間の境界部にのみナゲット74が形成される。厚板72及び薄板73のうち板厚が薄い方の板である薄板73の板厚をt(mm)とした場合に、厚板72と薄板73との間の接合強度を確保するためには、ナゲット径が4√t~5√tであるナゲット74を形成することが望ましい。
この第二ステップにおいて、電流値I2は、適正電流範囲内で設定される。適正電流範囲とは、基準値(一般的には4√t)以上のナゲット径を有するナゲットを形成する電流値I4√tと、溶融金属の散り(板組70の内部の溶融金属が外に飛散する現象)が発生しない上限の電流値Imaxとの幅(Imax-I4√t)のことである。
この第二ステップでは、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74を形成するので、電流値I4√tは、基準値以上のナゲット径を有するナゲット74を形成するのに必要な電流値となる。上記条件の電流値I2は、予め実験的に求められる。
ここで、本実施形態では、上述の通り、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74が形成されるようにする。これに対し、参考例として、第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部にもナゲットを形成することにし、このナゲットのナゲット径が、厚板72と薄板73との間の境界部に形成されるナゲット74のナゲット径よりも大きくなるようにすることが考えられる。
しかしながら、この参考例の場合には、次の不都合がある。すなわち、上記参考例では、厚板71及び厚板72のうち板厚が薄い方の厚板(板厚が同じ場合は各厚板)の板厚をtとした場合に、電流値I4√tは、基準値(一般的には4√t)以上のナゲット径を有するナゲットを厚板71と厚板72との間の境界部に形成するのに必要な電流値となる。したがって、この参考例の場合には、電流値I4√tが高くなるため、第二ステップにおける適正電流範囲が狭くなってしまうという不都合がある。
また、第二ステップでは、第一電極31を板組70に押し付けて薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させた状態にあるので、第二電極32の薄板73への加圧力が第一電極31の厚板71への加圧力よりも弱くなる。したがって、仮に、上記参考例の適正電流範囲内で電流値I2を設定すると、電流値I2が上限の電流値Imaxに近くなるため、厚板72と薄板73との間に溶融金属の散りが発生する虞がある。
この点、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74が形成されるようにする。したがって、第二ステップにおける電流値I4√tを、基準値以上のナゲット径を有するナゲット74を形成するのに必要な電流値とすることができるので、電流値I4√tを低くすることができる。したがって、第二ステップにおける適正電流範囲を広くすることができるので、実用性を確保できる。
また、この第二ステップでは、適正電流範囲を広くすることができるので、電流値I2を上限の電流値Imaxよりも十分に低くすることにより、厚板72と薄板73との間に溶融金属の散りが発生することを抑制できる。
なお、第二ステップは、次の観点から、第一ステップの後に実行されることが好ましい。つまり、上述の第一ステップでは、第一電極31及び第二電極32による加圧力に加えて、溶接ロボット12によって溶接ガン11を下降させる力が板組70に与えられる。このため、第二電極32による実加圧力の方が第一電極31による実加圧力よりも弱くなり、板組70の保持が不安定になることが想定される。
仮に、このような第二電極32による実加圧力の方が第一電極31による実加圧力よりも弱い状態で、第一電極31と第二電極32との間を通電すると、厚板72と薄板73との間に溶融金属の散りが発生する虞がある。したがって、第二ステップは、第一ステップの後に実行されることが好ましい。
このように、第二ステップを第一ステップの後に実行すると、第一電極31及び第二電極32から板組70に作用する実加圧力が等しい状態で第一電極31と第二電極32との間を通電できるので、厚板72と薄板73との間に溶融金属の散りが発生することを抑制できる。
(第三ステップ)
第三ステップは、板組70の凸形状が元の形状に戻るように、板組70を変形させるステップである。この第三ステップでは、第一電極31及び第二電極32で板組70が挟まれた状態で、第二ステップのときの電流値I2よりも小さい電流値I3で第一電極31と第二電極32との間が通電されるように、第三制御部53によって電源部13に対する制御が行われる。この第三ステップでは、板組70を溶接するのではなく、板組70が軟化するように、第一電極31と第二電極32との間を通電する電流値I3が設定される。図4では、第三ステップにおいて板組70の軟化された領域が符号70Aで示されている。
また、第三ステップでは、電流値I3で第一電極31及び第二電極32の間を通電しながら、第三制御部53によって複数の関節駆動部25に対する制御が行われる。このとき、第一電極31及び第二電極32を含む溶接ガン11の全体を上昇させることで第二電極32を板組70に押し付けて、板組70の凸形状が元の形状に戻るように板組70を変形させる制御が複数の関節駆動部25に対して行われる。つまり、複数の関節駆動部25が制御されることにより、第一電極31が初期状態と同じ位置になるように溶接ガン11が上昇される。
これにより、板組70の凸形状が元の形状、すなわち一例として平形状に戻される。このとき、板組70を元の形状に完全に戻すことは困難であり、板組70が略平形状になることが想定される。また、厚板71の表面には、第一ステップ及び第二ステップによる第一電極31の圧接痕が残ることが想定される。このため、元の形状には、略平形状である場合、及び、厚板71の表面に第一電極31の圧接痕が残る場合等も含まれる主旨である。なお、板組70の元の形状は、平形状以外でもよく、第三ステップでは、板組70が平形状以外の元の形状に戻されるように変形されてもよい。
このように、板組70の凸形状が元の形状(略元の形状)に戻された状態では、厚板71と第一電極31との接触面積と、薄板73と第二電極32との接触面積とが等しく(略等しく)なる。
この第三ステップでは、板組70を変形させる際に第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させるので、板組70を容易に変形させることができる。
なお、第三ステップでは、上述のように、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させながら板組70を変形させてもよいが、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させてから板組70を変形させてもよい。また、好ましくは、第一電極31及び第二電極32の間を通電して板組70を軟化させるが、この板組70を軟化させるための通電は省かれてもよい。
また、第三ステップでは、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態で溶接ガン11を上昇させることで板組70の凸形状が元の形状に戻るように板組70を変形させるが、次のようにしてもよい。すなわち、電極駆動部22を制御して第一電極31を上昇させ、第一電極31と厚板71との間にクリアランスを設けてから、複数の関節駆動部25を制御して溶接ガン11を上昇させてもよい。そして、これにより、第二電極32を板組70に押し付けて、板組70の凸形状が元の形状に戻るように板組70を変形させてもよい。
(第四ステップ)
第四ステップは、厚板71と厚板72との境界部にナゲット75を形成するステップである。この第四ステップでは、第一電極31及び第二電極32で板組70が挟まれた状態で、第二ステップのときの電流値I2よりも大きい電流値I4で第一電極31と第二電極32との間が通電されるように、第四制御部54によって電源部13に対する制御が行われる。このとき、電流値I4が大きいことと、厚板71と第一電極31との接触面積と薄板73と第二電極32との接触面積とが等しいことにより、厚板72と薄板73との間の境界部よりも、板組70の総板厚中心部に近い厚板71と厚板72との間の境界部に優先的にナゲット75が形成される。
第四ステップでは、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75が形成されるように、第一電極31と第二電極32との間を通電する電流値I4が設定される。
この第四ステップでは、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75が形成されればよく、厚板71と厚板72との間の境界部に形成されたナゲット75は、厚板72と薄板73との間の境界部に形成されたナゲット74と一体化しても、一体化しなくてもどちらでもよい。
この第四ステップでは、厚板71と厚板72との間の境界部のナゲット75の方が、厚板72と薄板73との間の境界部のナゲット74よりもナゲット径が大きくなるように、電流値I4が設定される。この場合のナゲット径は、各境界部と平行な方向に沿って測定される直径の最大値である。
図4に示される例では、一例として、厚板71と厚板72との間の境界部に形成されたナゲット75が、厚板72と薄板73との間の境界部に形成されたナゲット74と一体化されている。厚板71及び厚板72のうち板厚が薄い方の厚板(板厚が同じ場合は各厚板)の板厚をtとした場合に、厚板71と厚板72との間の接合強度を確保するためには、ナゲット径が4√t~5√tであるナゲット75を形成することが望ましい。この第四ステップにおいて、電流値I4は、適正電流範囲内で設定される。
ここで、本実施形態では、上述の通り、第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74が形成されるようにする。これに対し、参考例として、第二ステップにおいて、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成することにし、このナゲット75のナゲット径が、厚板72と薄板73との間の境界部に形成されるナゲット74のナゲット径よりも大きくなるようにすることが考えられる。
しかしながら、この参考例の場合には、次の不都合がある。すなわち、上記参考例では、第二ステップにおいて、薄板73と第二電極32との接触面積が、厚板71と第一電極31との接触面積よりも小さいので、薄板73側の電流密度が厚板71側の電流密度よりも高くなり、厚板71と厚板72との間の境界部の溶融金属が不十分になる。このため、第二ステップで厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成しようとすると、このナゲット75のナゲット径が所望のナゲット径よりも小さくなる虞がある。
この点、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、第一ステップにおいて、薄板73の側が凸形状になるように板組70を変形させた状態とし、その後、第二ステップにおいて、第一電極31及び第二電極32の間を電流値I2で通電して厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74を形成する。そして、その後、第三ステップにおいて、板組70の凸形状を元の形状に戻した状態にしてから、第四ステップにおいて、第一電極31及び第二電極32の間を電流値I4で通電して厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成する。
ここで、第三ステップでは、板組70の凸形状を元の形状に戻した状態にすることにより、厚板71と第一電極31との接触面積と、薄板73と第二電極32との接触面積とが等しくなる。また、第四ステップでは、電流値I4を電流値I2よりも大きくする。これにより、第四ステップでは、厚板72と薄板73との間の境界部よりも、板組70の総板厚中心部に近い厚板71と厚板72との間の境界部に優先的にナゲット75が形成されるので、厚板71と厚板72との間の境界部に形成されるナゲット75のナゲット径を確保できる。
なお、第四ステップは、次の観点から、第三ステップの後に実行されることが好ましい。つまり、上述の第三ステップでは、第一電極31及び第二電極32による加圧力に加えて、溶接ロボット12によって溶接ガン11を上昇させる力が板組70に与えられる。このため、第一電極31による実加圧力の方が第二電極32による実加圧力よりも弱くなり、板組70の保持が不安定になることが想定される。
仮に、このような第一電極31による実加圧力の方が第二電極32による実加圧力よりも弱い状態で、第一電極31と第二電極32との間を通電すると、厚板71と厚板72との間に溶融金属の散りが発生する虞がある。したがって、第四ステップは、第三ステップの後に実行されることが好ましい。
このように、第四ステップを第三ステップの後に実行すると、第一電極31及び第二電極32から板組70に作用する実加圧力が等しい状態で第一電極31と第二電極32との間を通電できるので、厚板71と厚板72との間に溶融金属の散りが発生することを抑制できる。
(第五ステップ)
第五ステップは、ナゲット74及びナゲット75が冷却固化するまで板組70の加圧状態を保持するステップである。この第五ステップでは、ナゲット74及びナゲット75が冷却固化する時間が経過するまで、第一電極31及び第二電極32によって板組70を加圧する制御が第五制御部55によって電極駆動部22に対して行われる。以上の要領で、板組70がスポット溶接され、スポット溶接継手80が得られる。
(作用及び効果)
以上詳述した通り、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、第一ステップにおいて、第一電極31を板組70に押し付けて、第二金属板の側が凸形状になるように板組70を変形させる。続いて、第二ステップにおいて、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態で、第一電極31と第二電極32との間を通電する。
このとき、薄板73と第二電極32との接触面積は、厚板71と第一電極31との接触面積よりも小さいので、薄板73側の電流密度が厚板71側の電流密度よりも高くなり、厚板71と厚板72との間の境界部よりも厚板72と薄板73との間の境界部に優先的にナゲット74を形成することができる。
次いで、第三ステップでは、第二電極32を板組70に押し付けて、凸形状が元の形状に戻るように板組70を変形させる。そして、第四ステップにおいて、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態で、第二ステップのときの電流値I2よりも大きい電流値I4で第一電極31と第二電極32との間を通電する。
このとき、厚板71と第一電極31との接触面積と薄板73と第二電極32との接触面積とが等しいので、厚板72と薄板73との間の境界部よりも、板組70の総板厚中心部に近い厚板71と厚板72との間の境界部に優先的にナゲット75を形成することができる。
しかも、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法では、第二ステップにおいて厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74を形成する際、及び、第四ステップにおいて厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成する際に、板組70に対する加圧力を調整するための加圧部材が不要である。
また、第三ステップでは、第二電極32を板組70に押し付けて、凸形状が元の形状に戻るように板組70を変形させるので、溶接前後で板組70の形状が変化することを回避できる。
このように、本発明の一実施形態に係るスポット溶接継手の製造方法によれば、加圧部材が不要であると共に、溶接前後で板組70の形状が変化することを回避しつつ、厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74を形成できると共に、厚板71と厚板72との間の境界部にナゲット75を形成できる。
(接触面積S1と接触面積S2との関係について)
続いて、上述の第一ステップにおいて、厚板71と第一電極31との接触面積S1と、薄板73と第二電極32との接触面積S2との関係が、式(1)を満たすように、板組70を変形させる理由について説明する。
本発明者らは、一対の厚板71、72と、一対の厚板71、72の各々よりも板厚が薄い薄板73とを含み、薄板73が最外に位置するように一対の厚板71、72及び薄板73が重ね合わされた板組70のスポット溶接について、鋭意検討を行った。その結果、一対の厚板71、72のうち薄板73の側と反対側の厚板71と第一電極31との接触面積S1と、薄板73と第二電極32との接触面積S2との関係について、次の知見を得た。
すなわち、厚板71と第一電極31との接触面積S1と、薄板73と第二電極32との接触面積S2との関係が、S2/S1<0.9であると、第一電極31及び第二電極32で板組70を挟んだ状態で、第一電極31及び第二電極32の間を通電した場合に、厚板72と薄板73との間の境界部にナゲット74を形成できると共に、適正電流範囲を確保できることが明らかになった。
ただし、S2/S1が、小さすぎると、厚板72と薄板73との間に溶融金属の散りが発生しやすくなることが分かり、0.1<S2/S1であると、溶融金属の散りが発生しなくなることが明らかになった。
このように、厚板71と第一電極31との接触面積S1と、薄板73と第二電極32との接触面積S2との関係が、式(1)を満たすと好適であることを発明者らは見出した。
なお、厚板71と第一電極31との接触面積S1と、薄板73と第二電極32との接触面積S2とは、感圧紙を用いて測定することができる。例えば、接触面積S1を測定する場合には、厚板71と第一電極31との間に感圧紙を挟んだ状態で、第一電極31を厚板71に所定の圧力で押し付ける。その後、第一電極31を厚板71から離隔させて感圧紙を回収し、感圧紙の変色箇所の面積を測定すれば、接触面積S1を求めることができる。接触面積S2についても同様である。
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態において、板組70に対する加圧力は、第一電極31及び第二電極32によって板組70に対する加圧が開始されてから、第五ステップが終了するまで略一定に保たれるが、加圧力は、各ステップで異なってもよい。
また、上記実施形態において、第一ステップにおける電流値I1、第二ステップにおける電流値I2、第三ステップにおける電流値I3、及び、第四ステップにおける電流値I4は、それぞれ一定であるが、例えば、図5に示されるように、第一ステップ及び第二ステップでは、電流値が電流値I2に向けて徐々に増加してもよい。同様に、第三ステップ及び第四ステップでは、電流値が電流値I4に向けて徐々に増加してもよい。
このように、第一ステップ及び第二ステップにおいて、電流値が徐々に増加すると、厚板72と薄板73との間の微小な凹凸から溶接を開始できる。同様に、第三ステップ及び第四ステップにおいて、電流値が徐々に増加すると、厚板71と厚板72との間の微小な凹凸から溶接を開始できる。
また、上記実施形態において、スポット溶接装置10は、溶接ガン11を昇降させるために、溶接ロボット12を有しているが、溶接ロボット12以外の駆動装置を有していてもよい。
次に、実施例について説明する。
表1、表2には、実施例の条件が示されている。
発明例1~4は、本実施形態の実施例である。比較例1は、薄板に当接する第二電極の加圧力を、薄板と反対側の厚板に当接する第一電極の加圧力よりも小さくした状態で、第一電極と第二電極との間を通電する実施例である(例えば、特許文献2参照)。この比較例1では、薄板と反対側の厚板に当接する第一電極の加圧力が、薄板に当接する第二電極の加圧力よりも大きくなり、第一電極に当接する厚板が凹形状になるように板組が変形するので、溶接前後で板組の形状が変化する。

その他、各実施例の条件は以下の通りである。
第一電極及び第二電極間の通電パターンについては、図1に示す通りである。
溶接条件は表1、表2及び下記の通りである。
・電源:50ヘルツ商用電源を使用
・溶接機:定置式交流スポット溶接機
・板組:薄鋼板(板厚0.7mm-SCGA270C)/厚めの薄鋼板(板厚1.6mm-SCGA780DP/厚板(板厚2.3mm-SCGA980DP)
・第一電極及び第二電極:DR6φ-40R、電極径φ16mm、Cr-Cu合金製
・加圧力:3.92kN
・スクイズ時間:50cyc
・保持時間:18cyc(第五ステップ)
・板組の拘束条件:板組の板厚方向両側から拘束部で拘束。板組の左右の拘束部間の距離は100mm(この間で板組が自由に板厚方向に変形可能)。
上記条件で実験の結果、溶融金属の散りが発生する直前におけるナゲット径(ナゲットの直径)は表3の通りであった。
実施例における合否の判定基準は、次の通りとする。
・適正電流範囲ΔIが1.5kA以上であれば合格とする。
・溶接前後での板組の形状変化量が0であれば合格とする。
また、本実施形態に対し、板組を変形させずに薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成し、次いで、厚板と厚板との間の境界部にナゲットを形成する実施例を従来例とする。この従来例の条件は、発明例1~4と同様である。
この従来例では、薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成する際に、ナゲットのナゲット径が4√tとなる電流値が8.3kAとなり、溶融金属の散り発生直前の電流値が8.8kAとなった。また、この従来例では、厚板と厚板との間の境界部にナゲットを形成する際に、ナゲット径が4√tとなる電流値が5.8kAとなり、溶融金属の散り発生直前の電流値が8.8kAとなった。
この従来例では、厚板と厚板との間の境界部にナゲットを形成するときの適正電流範囲は8.8kA-5.8kA=3.0kAとなり1.5kA以上を確保できるものの、薄板と厚板との間の境界部にナゲットを形成するときの適正電流範囲ΔIは8.8kA-8.3kA=0.5kAとなり1.5kA未満であるので、この従来例は不合格となった。
また、比較例1は、適正電流範囲ΔIが1.5kA以上となるものの、第二電極に当接する厚板が凹形状になるように板組が変形し、溶接前後で板組の形状が変化するので、この点で不合格とした。
これに対し、発明例1~4は、いずれも適正電流範囲ΔIが1.5kA以上となり、合格であった。また、発明例1~4は、溶接前後での板組の形状変化量が0であるので、合格である。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
10 スポット溶接装置
11 溶接ガン
12 溶接ロボット
13 電源部
14 制御部
21 ガン本体
22 電極駆動部(駆動部の一例)
23 関節
24 ロボットアーム
25 関節駆動部(駆動部の一例)
31 第一電極
32 第二電極
41 プロセッサ
42 メモリ
43 プログラム
51 第一制御部
52 第二制御部
53 第三制御部
54 第四制御部
55 第五制御部
70 板組
71 厚板(第一金属板の一例)
72 厚板(第一金属板の一例)
73 薄板(第二金属板の一例)
74 ナゲット
75 ナゲット
80 スポット溶接継手
90 拘束部
92 クリアランス

Claims (6)

  1. 複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組を、対向する第一電極及び第二電極で挟んでスポット溶接してスポット溶接継手を得る、スポット溶接継手の製造方法において、
    前記第一電極を前記第二金属板と反対側に配置し、前記第二電極を前記第二金属板の側に配置した状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる第一ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する第二ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる第三ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する第四ステップと、
    を含むスポット溶接継手の製造方法。
  2. 前記第一ステップにおいて、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも小さい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記板組を軟化させる、
    請求項1に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  3. 前記第三ステップにおいて、前記第一電極及び前記第二電極で前記板組を挟んだ状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも小さい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記板組を軟化させる、
    請求項1又は請求項2に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  4. 前記第一ステップにおいて、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板の側と反対側の第一金属板と前記第一電極との接触面積S1と、前記第二金属板と前記第二電極との接触面積S2との関係が、式(1)を満たすようにする、
    0.1<S2/S1<0.9・・・(1)
    請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のスポット溶接継手の製造方法。
  5. 複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組をスポット溶接するスポット溶接装置であって、
    対向する第一電極及び第二電極と、
    前記第一電極及び前記第二電極が対向する方向に前記第一電極及び前記第二電極を移動させる駆動部と、
    前記第一電極と前記第二電極との間を通電する電源部と、
    前記駆動部及び前記電源部を制御する制御部と、
    を備え、
    前記制御部は、
    前記第一電極が前記第二金属板と反対側に配置され、前記第二電極が前記第二金属板の側に配置された状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第一制御部と、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第二制御部と、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電する制御を前記電源部に対して行い、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第三制御部と、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第二制御部による制御のときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第四制御部と、
    を含むスポット溶接装置。
  6. 対向する第一電極及び第二電極と、
    前記第一電極及び前記第二電極が対向する方向に前記第一電極及び前記第二電極を移動させる駆動部と、
    前記第一電極と前記第二電極との間を通電する電源部と、
    前記駆動部及び前記電源部を制御する制御部と、
    を備え、
    複数の第一金属板と、前記複数の第一金属板の各々よりも板厚が薄い第二金属板とを含み、前記第二金属板が最外に位置するように前記複数の第一金属板及び前記第二金属板が重ね合わされた板組を、前記第一電極及び前記第二電極で挟んでスポット溶接するスポット溶接装置に適用されるプログラムであって、
    前記制御部としてのコンピュータに、
    前記第一電極が前記第二金属板と反対側に配置され、前記第二電極が前記第二金属板の側に配置された状態で、前記第一電極を前記板組に押し付けて、前記第二金属板の側が凸形状になるように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第一ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板のうち前記第二金属板に重なる第一金属板と前記第二金属板との間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第二ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記板組が軟化するように前記第一電極及び前記第二電極の間を通電する制御を前記電源部に対して行い、前記第二電極を前記板組に押し付けて、前記凸形状が元の形状に戻るように前記板組を変形させる制御を前記駆動部に対して行う第三ステップと、
    前記第一電極及び前記第二電極で前記板組が挟まれた状態で、前記第二ステップのときの電流値よりも大きい電流値で前記第一電極及び前記第二電極の間を通電し、前記複数の第一金属板の間の境界部にナゲットを形成する制御を前記電源部に対して行う第四ステップと、
    を実行させるためのプログラム。
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