以下では、図面を参照しながら本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
本実施形態に係る合成構造は、一例として、地下躯体に設けられる。地下躯体は、既設の本線シールドトンネルに新設の支線シールドトンネルを合流させるために、本線シールドトンネルと支線シールドトンネルとの合流領域に本線シールドトンネル及び支線シールドトンネルの双方を囲む大断面トンネルを構成する。本実施形態に係る合成構造の構築方法は、一例として、当該地下躯体の施工に用いられる。しかしながら、本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法の適用対象は、地下躯体の施工、すなわち大断面トンネルの構築以外にも適用可能である。
図1、図2及び図3は、本実施形態に係る合成構造が例示的に適用される地下構造物1を示している。図1~図3に示されるように、地下構造物1は、本線シールドトンネル2と支線シールドトンネル3との合流領域において本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲む大断面トンネルである。地下構造物1の内部には、地下構造物1の軸方向に延びる地下空洞4が形成されている。地下構造物1は、複数のシールドトンネル11が連結されて形成された外郭躯体12(地下躯体)を備える。
シールドトンネル11は、シールド掘進工法又はシールド推進工法によって施工された外郭躯体である。例えば、シールドトンネル11では、シールド掘進機が地中を掘進しながら当該シールド掘進機の後方でトンネルの壁面となるセグメントが組み立てられる。シールド掘進機は推進管から推力を得て推進し、推進管が組み立てられてトンネル覆工体又はトンネル躯体が構築されることによってシールドトンネル11が延伸する。
シールド掘進機を掘進して組み立てられたセグメント、及び推進に伴って組み立てられた推進管は、シールドトンネル11の外殻11Aとなる。地下構造物1では、地下構造物1の一方の端部1aと他方の端部1bとの間において、軸方向に延びる複数のシールドトンネル11が、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように、そして大断面トンネルの周方向に沿って並ぶように配置される。
複数のシールドトンネル11は、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14を含む。複数のシールドトンネル11の一部が先行シールドトンネル13であり、複数のシールドトンネル11の残部が後行シールドトンネル14である。先行シールドトンネル13は円筒状に延びる第1外殻躯体であり、後行シールドトンネル14は円筒状に延びる第2外殻躯体である。以下の説明では、先行シールドトンネル13の外殻11Aを先行外殻13Aと称し、後行シールドトンネル14の外殻11Aを後行外殻14Aと称することがある。先行外殻13A及び後行外殻14Aは、例えば、複数のセグメント30(図4又は図5参照)によって構築される。
先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14のそれぞれは、一方の端部1aから他方の端部1bまで延在している。後行シールドトンネル14は、先行シールドトンネル13が設けられた後に構築されるシールドトンネルである。後行シールドトンネル14は、一対の先行シールドトンネル13の間に配置されている。先行シールドトンネル13の先行外殻13Aの一部が切削された状態で当該切削された部分に後行シールドトンネル14が入り込んでいる。
互いに隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線と後行シールドトンネル14の中心軸線との間隔は一方の端部1aから他方の端部1bに向かうに従って狭くなっている。地下空洞4は本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の外形に沿って延びており、地下空洞4の断面積は一方の端部1aから他方の端部1bに向かうに従って小さくなっている。地下空洞4の断面積が一方の端部1aから他方の端部1bに向かって小さくなるように、端部1bに近づくに従って先行シールドトンネル13に対する後行シールドトンネル14の入り込み具合が大きくなっている。
後行シールドトンネル14は、端部1aから延びる第1後行シールドトンネル141と、第1後行シールドトンネル141の先端と端部1bとの間に配置された第2後行シールドトンネル142とを含む。第1後行シールドトンネル141は先行シールドトンネル13と同径のシールドトンネルであり、第2後行シールドトンネル142は第1後行シールドトンネル141よりも小径のシールドトンネルである。1本の後行シールドトンネル14のうち端部1a側の部分が大径の第1後行シールドトンネル141となり、端部1b側の部分が小径の第2後行シールドトンネル142となる。
先行シールドトンネル13同士の間隔は、一方の端部1a側よりも他方の端部1b側の方が狭い。このため、端部1aから端部1bまでの全域において後行シールドトンネル14が同径である場合、先行シールドトンネル13に後行シールドトンネル14が入り込む量が過大となる。しかしながら、本実施形態では、端部1a側に大径の第1後行シールドトンネル141が配置され、端部1b側に小径の第2後行シールドトンネル142が配置されることにより、先行シールドトンネル13に対する後行シールドトンネル14の入り込みの量を小さくし、後行シールドトンネル14の構築のときの先行シールドトンネル13の切削量を低減可能である。
具体例として、シールドトンネル11は、18本の先行シールドトンネル13と、18本の後行シールドトンネル14とを備える。このように、先行シールドトンネル13の本数と後行シールドトンネル14の本数とは互いに同一である。地下構造物1は、端部1a側の第1領域A1と、端部1b側の第2領域A2とに分けられている。第1領域A1の先行シールドトンネル13の径は、第2領域A2の先行シールドトンネル13の径と同一である。
後行シールドトンネル14は、第1領域A1に配置される大径の第1後行シールドトンネル141と、第2領域A2に配置される第2後行シールドトンネル142とを含む。先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14は大断面トンネルの周方向に沿って交互に配置されている。すなわち、一対の先行シールドトンネル13の間に後行シールドトンネル14が配置されている。
外郭躯体12は、地下空洞4の外郭を構成する断面円形状の躯体である。外郭躯体12は、互いに隣り合うシールドトンネル11を連結している。外郭躯体12は、先行シールドトンネル13と、後行シールドトンネル14と、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14に配置された鋼板コンクリート構造物70(図7参照)とを含む。鋼板コンクリート構造物70を構成するコンクリートであって先行シールドトンネル13に打設されたコンクリートと後行シールドトンネル14に打設されたコンクリートとは、後行シールドトンネル14の後行外殻14Aの一部に形成された開口を通じて一体化されている。
図4及び図5に示されるように、外殻11Aは、大断面トンネルの周方向に沿って組み立てられた複数のセグメント30が軸方向に沿って連結されることで構築される。外殻11Aを構成するセグメント30は、主桁31と、継手板32と、スキンプレート33とを備える。主桁31は、シールドトンネル11の周方向に延びる部材であり、シールドトンネル11の軸方向に所定の長さを有する。主桁31は、例えば、型鋼等の鋼材によって構成されており、外殻11Aの構造物として機能する。
継手板32は、シールドトンネル11の軸方向に延びる部材であり、シールドトンネル11の軸方向に所定の長さを有する。互いに隣り合う一対のセグメント30の各継手板32は、互いに接続可能とされている。周方向に並ぶように複数のセグメント30が接続されてセグメントリングとなる。継手板32は、例えば、板状の鋼材によって構成されている。スキンプレート33は、シールドトンネル11の外周面を構成する部材である。スキンプレート33は、主桁31の外周側に連結されて、シールドトンネル11と地山とを区分している。
セグメントリングの主桁31と当該セグメントリングに隣接するセグメントリングの主桁31とは互いに接続されている。軸方向に沿うように複数のセグメントが互いに接続されてシールドトンネル11が構成される。主桁31と隣り合う主桁31との接続、及び継手板32と隣り合う継手板32との接続は、例えば、ボルト締めにより行われる。スキンプレート33は、例えば、円弧状断面を有する曲板状の鋼材によって構成されており、外殻11Aと地山とを区分する隔壁として機能する。
図6に示されるように、先行シールドトンネル13の先行外殻13Aでは、主桁31から継手板32及びスキンプレート33が取り外されて開口34が形成されている。
<鋼板コンクリート構造物>
次に、参考形態に係る鋼板コンクリート構造物70について図7を参照しながら説明する。鋼板コンクリート構造物70は、本開示に係る合成構造の一例である。本開示において、参考形態は、あくまで参考とされる形態であって、発明の範囲等を限定するものではない。鋼板コンクリート構造物70は、鋼材構造体71とコンクリート62とを含む。参考形態に係る鋼板コンクリート構造物70は、例えば、SC構造である。本開示において、SC構造には、SRC構造(鉄骨鉄筋コンクリート構造)が含まれてもよい。鋼材構造体71は、外郭躯体12を構成する円弧状の構造体である。鋼材構造体71は、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の内部に配置されており、且つコンクリート62に埋設されている。鋼板コンクリート構造物70は地中の土圧を受けて円弧の内方に外力が作用する。
鋼板コンクリート構造物70は、外郭躯体12の内部に配置された支持ユニット40に力学的に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。鋼板コンクリート構造物70では、例えば、外郭主桁、配力鋼材、及びせん断補強鋼材を含む鋼材構造体71が配置され、発生断面力に抵抗を生じさせる。鋼板コンクリート構造物70が鉄筋構造ではない鋼材構造体71を備える場合、コンクリート62の充填可能な空間が増加してコンクリート62の充填性が増加するので、密実なコンクリート62の打設が可能となる。
図8に示されるように、鋼材構造体71は、先行鋼材部81と連結鋼材90とを含む。先行鋼材部81は、先行シールドトンネル13に配置されている。先行鋼材部81は外側先行型鋼82B及び内側先行型鋼82Aを第1型鋼として含む。外側先行型鋼82B及び内側先行型鋼82Aは、先行外殻13Aの径方向LRに沿って互いに離間するように配置されている。一対の外側先行型鋼82Bは、先行外殻13Aの延在方向LA(軸方向)に沿って互いに離間して配置されている。延在方向LAに沿って互いに隣接する一対の外側先行型鋼82Bは、外側先行配力鋼材83Bによって互いに連結されている。内側先行型鋼82Aの構成も同様である。延在方向LAに沿って並ぶ一対の内側先行型鋼82Aは、内側先行配力鋼材83Aを介して互いに連結されている。更に、先行鋼材部81は、外側先行型鋼82Bと内側先行型鋼82Aとに連結された先行せん断補強鋼材84を含む。
連結鋼材90の一部は後行シールドトンネル14に配置されており、連結鋼材90の残部は後行シールドトンネル14と先行シールドトンネル13との境界部分に配置されている。連結鋼材90は、一方の先行外殻13Aに配置された先行鋼材部81を、後行外殻14Aを挟んで、他方の先行外殻13Aに配置された先行鋼材部81に連結する。
連結鋼材90は、後行シールドトンネル14に配置された後行鋼材部91と連結鋼材部95とを含む。後行鋼材部91は外側後行型鋼92B及び内側後行型鋼92Aを第1型鋼として含む。外側後行型鋼92B及び内側後行型鋼92Aは、径方向LRに沿って互いに離間するように配置されている。一対の外側後行型鋼92Bが延在方向LAに沿って互いに離間するように配置されている。
延在方向LAに沿って並ぶ一対の外側後行型鋼92Bは、外側後行配力鋼材93Bを介して互いに連結されている。延在方向LAに沿って並ぶ一対の内側後行型鋼92Aは内側後行配力鋼材93Aを介して互いに連結されている。更に、後行鋼材部91は、外側後行型鋼92B及び内側後行型鋼92Aを互いに連結する後行せん断補強鋼材94を含む。
一対の連結鋼材部95のそれぞれは外側連結型鋼96Bと内側連結型鋼96Aを第2型鋼として含む。外側連結型鋼96Bは外側後行型鋼92Bの端部を外側先行型鋼82Bの端部に接続する。外側連結型鋼96B(第2型鋼)、外側後行型鋼92B及び外側先行型鋼82B(第1型鋼)が互いに連結された構造物が外側外郭主桁73Bを構成する。
外側外郭主桁73Bは型鋼によって構成されている。外側外郭主桁73Bの型鋼としては、例えば、H型鋼、I型鋼、T型鋼、山型鋼、平鋼、溝型鋼、又はZ型鋼が用いられる。外側外郭主桁73Bは、平板部分を有する鋼材によって構成されている。外側外郭主桁73Bは、付加的な要素として、鉄筋を含んでもよい。先行鋼材部81、後行鋼材部91及び連結鋼材部95が型鋼である場合、強度を高めつつ接続及び接合を容易に行うことができる。一例として、先行鋼材部81、後行鋼材部91及び連結鋼材部95がH型鋼で構成される場合、鉄筋の場合と比較して、接続及び接合の作業を更に容易に行うことができる。
一般的に、外側連結型鋼96B(第2型鋼)と外側後行型鋼92B(第1型鋼)との接続部位は、例えば、機械的接合により接続及び接合され、機械的接合としては、一部にボルト接合又はねじ接合がなされることがある。ボルト接合又はねじ接合に加えて添接板によって接続されることもある。一般的な手法として、一部が溶接(冶金的接合)により接合及び接続されることもある。これらのいずれか一つ又は複数の手法が選択されることにより鋼材同士の接続が行われることもある。
しかしながら、後述する実施形態に係る鋼板コンクリート構造物100(合成構造)のように、外側連結型鋼96B(第2型鋼)と外側後行型鋼92B及び外側先行型鋼82B(第1型鋼)との接続は、コンクリートを介して実現されてもよく、この場合、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の間の力の伝達を効率よく行うことができる。
内側連結型鋼96Aは、内側後行型鋼92Aの端部を内側先行型鋼82Aの端部に接続する。内側連結型鋼96A(第2型鋼)、内側後行型鋼92A及び内側先行型鋼82A(第1型鋼)が互いに連結された構造物が内側外郭主桁73Aを構成する。内側連結型鋼96Aと内側後行型鋼92Aとの接続部位、及び、内側連結型鋼96Aと内側先行型鋼82Aとの接続部位は、機械的に互いに接続されることがある。
これらの接続部位も、外側連結型鋼96Bと外側後行型鋼92Bとの接続部位、及び、外側連結型鋼96Bと外側先行型鋼82Bとの接続部位と同様、ボルト接合、ねじ接合、ボルト及び/又はねじと添接板との併用、等の形態により、接続及び接合が実現されうる。しかしながら、後述する鋼板コンクリート構造物100のように、内側連結型鋼96A(第2型鋼)と、内側後行型鋼92A及び内側先行型鋼82A(第1型鋼)との接続はコンクリートを介してなされてもよい。
連結鋼材部95は、外側連結配力鋼材97Bと、内側連結配力鋼材97Aと、連結せん断補強鋼材98とを含む。外側連結配力鋼材97Bは、延在方向LAに延びると共に一対の外側連結型鋼96Bのそれぞれに連結されている。内側連結配力鋼材97Aも同様に延在方向LAに延びると共に一対の内側連結型鋼96Aのそれぞれに連結されている。連結せん断補強鋼材98は、内側連結型鋼96Aと外側連結型鋼96Bとを互いに連結している。
なお、先行せん断補強鋼材84、後行せん断補強鋼材94及び連結せん断補強鋼材98のそれぞれは、不要な場合には省略することも可能である。先行せん断補強鋼材84、後行せん断補強鋼材94及び連結せん断補強鋼材98の数、配置場所及び配置態様は、図8の例に限られず適宜変更可能である。
図2、図3及び後に詳述する図35に示されるように、地下構造物1の端部1aには、外郭躯体12の一側面を封止(止水)する一方側褄壁15が構築されており、地下構造物1の端部1bには、外郭躯体12の他側面を封止(止水)する他方側褄壁16が構築されている。一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部の土砂が掘削撤去されることで地下構造物1の内部に地下空洞4が形成されている。
次に、前述した地下構造物1の一部となる外郭躯体12の構築方法について説明する。外郭躯体12の構築方法は、発信基地構築工程(S1)と、先行シールドトンネル13を構築する第1外殻躯体構築工程(S2)と、先行シールドトンネル13の一部を切削しながら後行シールドトンネル14を構築する第2外殻躯体構築工程(S3)と、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の内部空間にコンクリートを打設して外郭躯体12を構築する外郭躯体構築工程(S4)と、褄壁構築工程(S5)と、掘削工程(S6)とを備える。
<発進基地構築工程(S1)>
発進基地構築工程(S1)では、図9及び図10に示されるように、シールドトンネル11を延伸させるための発進基地21を構築する。発進基地21は、支線シールドトンネル3から支線シールドトンネル3の径方向外側に延びる発進坑口22と、本線シールドトンネル2及び支線シールドトンネル3の双方を囲むように発進坑口22から延びる円周シールドトンネル23とを備える。発進坑口22はシールド掘進機によって施工することが可能であり、円周シールドトンネル23は円周シールド掘進機によって施工することが可能である。
<第1外殻躯体構築工程(S2)>
先行シールドトンネル構築工程である第1外殻躯体構築工程(S2)では、図11に示されるように、地下構造物1の施工予定領域である一方の端部1aと他方の端部1bとの間において軸方向に延伸する複数の先行シールドトンネル13を周方向に所定間隔で並ぶように構築する。なお、互いに隣り合う先行シールドトンネル13が構築されていれば、全ての先行シールドトンネル13の延伸が終了する前に後述する第2外殻躯体構築工程(S3)を開始し、一対の先行シールドトンネル13の間に後行シールドトンネル14を延伸してもよい。
例えば、第1外殻躯体構築工程(S2)は、先行シールドトンネル延伸工程(S21)と第1隔壁設置工程(S22)とを含む。
先行シールドトンネル延伸工程(S21)では、図11、図12及び図13に示されるように、端部1aに施工された発進基地21から端部1bまで先行シールドトンネル13を延伸する。具体的には、18本の先行シールドトンネル13を発進基地21から端部1bまで延伸する。このとき、互いに隣り合う先行シールドトンネル13を同時に延伸せずに、一方の先行シールドトンネル13を延伸した後に他方の先行シールドトンネル13を延伸してもよい。先行シールドトンネル13の掘進には、2機以上のシールド掘進機が用いられてもよい。2機以上のシールド掘進機が用いられる場合、複数の先行シールドトンネル13を同時並行で延伸することが可能となる。
先行シールドトンネル延伸工程(S21)では、一方の端部1aから他方の端部1bに向かうに従い、互いに隣り合う先行シールドトンネル13の中心軸線が近接していくように先行シールドトンネル13を延伸する。先行シールドトンネル13は、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機等により切削可能な部分を含む必要がある。このため、先行シールドトンネル13の先行外殻13Aのうち少なくとも後行シールドトンネル14の延伸により切削される部分のセグメント又は推進管は、切削可能なものとする。切削可能なセグメント又は推進管としては、例えば、繊維強化樹脂製の切削可能セグメント又は切削可能推進管が用いられる。
図14に示されるように、先行シールドトンネル13のうち第2外殻躯体構築工程(S3)で切削する領域を切削予定領域13E及び切削予定領域13Fとする。切削予定領域13E及び切削予定領域13Fは、先行シールドトンネル13の両側のそれぞれに形成される。先行外殻13Aの内部領域のうち、外郭躯体構築工程(S4)でコンクリートを打設する領域を外郭躯体予定領域13Bとする。外郭躯体予定領域13Bの一端は切削予定領域13Eと重なり、外郭躯体予定領域13Bの他端は切削予定領域13Fと重なる。
先行外殻13Aの内部領域のうち、切削予定領域13E、切削予定領域13F又は外郭躯体予定領域13B以外の領域であって、外郭躯体予定領域13Bに対して外郭躯体12の内周側に位置する領域を内周側領域13Cとする。また、先行外殻13Aの内部領域のうち、切削予定領域13E、切削予定領域13F又は外郭躯体予定領域13B以外の領域であって、外郭躯体予定領域13Bに対して外郭躯体12の外周側に位置する領域を外周側領域13Dとする。
第1隔壁設置工程(S22)では、図15及び図16に示されるように、後行シールドトンネル14を延伸するシールド掘進機が掘進できるように、先行シールドトンネル13の内部の充填を行う。先行シールドトンネル13の内部の充填としては、支持ユニット40を配置すると共に、コンクリート及び切削可能充填材を打設(充填)することで外郭躯体予定領域13Bに、外郭躯体予定領域13Bを複数に区分する隔壁を設置する。支持ユニット40は、外郭躯体予定領域13Bに配置される。なお、支持ユニット40の構成については後に詳述する。
先行シールドトンネル13の内部に位置するコンクリート打設領域50Aとコンクリート打設領域50Bにコンクリートが打設される。コンクリート打設領域50Aは、例えば、前述した内周側領域13Cである。コンクリート打設領域50Bは、例えば、前述した外周側領域13Dである。コンクリート打設領域50A,50Bは、後行シールドトンネル14(後行外殻14A)の掘削時にコンクリートが切削されないように切削予定領域13E,13Fの周辺を除外して設定される。すなわち、切削予定領域13E,13Fの周辺にはコンクリートが打設されない。
切削可能充填材は、切削可能充填材領域51Aと切削可能充填材領域51Bとに打設される。切削可能充填材領域51Aは、例えば切削予定領域13Eであって、先行外殻13A、支持ユニット40及びコンクリート打設領域50A,50Bに囲まれた領域である。切削可能充填材領域51Bは、例えば、切削予定領域13Fであって、先行外殻13A、支持ユニット40及びコンクリート打設領域50A,50Bに囲まれた領域である。切削可能充填材領域51A,51Bは、後行シールドトンネル14(後行外殻14A)の掘削時の掘削誤差を許容するために、切削予定領域13E,13Fより大きく設定されてもよい。
図23に示されるように、第2外殻躯体構築工程(S3)で先行シールドトンネル13が切削されると、先行外殻13Aを支持する主桁31(図4又は図5参照)も切削され、先行外殻13Aが第1先行外殻部13AAと第2先行外殻部13ABとに分離される。外郭躯体予定領域13Bにはコンクリートは打設されていない。このため、主桁31は、第1先行外殻部13AAと第2先行外殻部13ABとが互いに対向する方向に作用する土圧を支持することができない。そこで、支持ユニット40が外郭躯体予定領域13Bに配置されることにより、第2外殻躯体構築工程(S3)で先行シールドトンネル13が切削されたときに、土圧、又は切削時の衝撃による荷重に起因する先行シールドトンネル13の変形を抑制することが可能となる。
図17及び図18に示されるように、支持ユニット40は、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bと、第1支柱42A及び第2支柱42Bと、内周側支持桁43A及び外周側支持桁43Bと、内周側遮蔽板44A及び外周側遮蔽板44Bとを備える。第1隔壁41Aは、外郭躯体予定領域13Bを、切削予定領域13Eを含む側部13Gと切削予定領域13Eを含まない中央部13Jとに区分する。このため、第1隔壁41Aは、外郭躯体予定領域13Bを外郭躯体予定領域13Bの周方向において複数に区分する隔壁17となる。
第2隔壁41Bは、外郭躯体予定領域13Bを、切削予定領域13Fを含む側部13Hと切削予定領域13Fを含まない中央部13Jとに区分する。このため、第2隔壁41Bは、外郭躯体予定領域13Bを外郭躯体予定領域13Bの周方向において複数に区分する隔壁17となる。第1隔壁41Aにより区分される側部13Gは、第1隔壁41Aの第2隔壁41Bとは反対側の領域である。第2隔壁41Bにより区分される側部13Hは、第2隔壁41Bの第1隔壁41Aとは反対側の領域である。第1隔壁41A及び第2隔壁41Bにより区分される中央部13Jは、先行シールドトンネル13の径方向中央に位置する領域であって、第1隔壁41Aと第2隔壁41Bの間の領域である。
具体的には、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bは、鉄板により構成されており、第1隔壁41Aと第2隔壁41Bとは、外郭躯体予定領域13Bの周方向に沿って対向するように配置される。複数枚の第1隔壁41A及び第2隔壁41Bが先行シールドトンネル13の軸方向に沿って配置される。
第1支柱42Aは、第1隔壁41Aを支持すると共に先行外殻13Aを径方向に沿って支持する。第2支柱42Bは、第2隔壁41Bを支持すると共に先行外殻13Aを径方向に沿って支持する。具体的には、第1支柱42A及び第2支柱42Bのそれぞれは、H型鋼等の鋼材によって構成されており、第1支柱42Aと第2支柱42Bとは外郭躯体予定領域13Bの周方向に沿って並列するように配置される。第1支柱42A及び第2支柱42Bは、第2外殻躯体構築工程(S3)で分離される第1先行外殻部13AAと第2先行外殻部13ABとが互いに対向する方向(コンクリート打設領域50Aとコンクリート打設領域50Bが互いに対向する方向)に向けられる。
第1支柱42Aには第1隔壁41Aが着脱可能に接続され、第2支柱42Bには第2隔壁41Bが着脱可能に接続される。第1支柱42A及び第2支柱42Bのそれぞれに対する第1隔壁41A及び第2隔壁41Bのそれぞれの接続は、例えば、ボルト締めによって行われる。複数本の第1支柱42A及び第2支柱42Bは、先行シールドトンネル13の軸方向に沿って配置される。
内周側支持桁43Aは、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50A側を支える。外周側支持桁43Bは、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50B側を支える。具体的には、内周側支持桁43A及び外周側支持桁43Bのそれぞれは、H型鋼等の鋼材によって構成されており、内周側支持桁43A及び外周側支持桁43Bのそれぞれは外郭躯体予定領域13Bの周方向に沿って延びるように配置される。
内周側支持桁43Aは、外郭躯体予定領域13Bの周方向に沿って第1支柱42Aと第2支柱42Bに架け渡され、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50A側において結合される。外周側支持桁43Bは、外郭躯体予定領域13Bの周方向に沿って第1支柱42Aと第2支柱42Bに架け渡され、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50B側において結合される。
内周側遮蔽板44Aは、支持ユニット40のコンクリート打設領域50A側の遮蔽を行う。外周側遮蔽板44Bは、支持ユニット40のコンクリート打設領域50B側の遮蔽を行う。具体的には、内周側遮蔽板44A及び外周側遮蔽板44Bは、鉄板によって構成されており、外郭躯体予定領域13Bの径方向に沿って互いに対向するように配置される。内周側遮蔽板44Aは、外郭躯体予定領域13Bの軸方向に沿うと共に第1支柱42A及び第2支柱42Bに架け渡され、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50A側に結合される。
外周側遮蔽板44Bは、外郭躯体予定領域13Bの軸方向に沿うと共に第1支柱42A及び第2支柱42Bに架け渡され、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50B側に結合される。そして、複数枚の内周側遮蔽板44A及び外周側遮蔽板44Bが先行シールドトンネル13の軸方向に沿って配置される。
以上のように構成される支持ユニット40では、第1支柱42A及び第2支柱42Bと、内周側支持桁43A及び外周側支持桁43Bとが井桁状の枠体を構成する。支持ユニット40の内部に、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bと、内周側遮蔽板44A及び外周側遮蔽板44Bとに囲まれた内部空間45が形成される。内部空間45は、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bによって区分される中央部13Jを含む。第1隔壁41A、第2隔壁41B、内周側遮蔽板44A及び外周側遮蔽板44Bは、内部空間45の隔壁となっているため、先行シールドトンネル13の内部に打設されるコンクリート及び切削可能充填材は内部空間45に入り込まない。このため、内部空間45は、空洞である状態が維持される。
先行外殻13Aの内部において、第1支柱42A及び第2支柱42Bの一端と第1先行外殻部13AAとの間のコンクリート打設領域50Aにコンクリートが打設されると共に、第1支柱42A及び第2支柱42Bの他端と第2先行外殻部13ABとの間のコンクリート打設領域50Bにコンクリートが打設される。そして、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50A側が内周側遮蔽板44Aを介してコンクリート打設領域50Aに打設されたコンクリートに接続され、第1支柱42A及び第2支柱42Bのコンクリート打設領域50B側が外周側遮蔽板44Bを介してコンクリート打設領域50Bに打設されたコンクリートに接続される。これにより、第1支柱42A及び第2支柱42Bは、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bを支持すると共に、先行外殻13Aの第1先行外殻部13AA及び第2先行外殻部13ABを先行外殻13Aの径方向内側から支持する。
更に、支持ユニット40は、腹起し鋼材47A,47Bと横つなぎ鋼材48A,48Bとを有する。一対の腹起し鋼材47Aが、外郭躯体12の内周側に配置されると共に先行シールドトンネル13の軸方向に延びている。一対の腹起し鋼材47Aは、第1支柱42Aの内周側、及び第2支柱42Bの内周側のそれぞれに設けられている。
一対の腹起し鋼材47Bは、外郭躯体12の外周側に配置されると共に、先行シールドトンネル13の軸方向に延びている。一対の腹起し鋼材47Bは、第1支柱42Aの外周側、及び第2支柱42Bの外周側のそれぞれに設けられている。横つなぎ鋼材48Aは一対の腹起し鋼材47Aの間に架け渡されており、横つなぎ鋼材48Bは一対の腹起し鋼材47Bの間に架け渡されている。
支持ユニット40には、鋼材構造体71を構成する先行鋼材部81が配置されている。先行鋼材部81は、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bの間、すなわち内部空間45に配置されている。先行鋼材部81が支持ユニット40に配置されるタイミングは特に限定されない。例えば、先行鋼材部81は、支持ユニット40の構成部品に対して工場で予め取り付けられていてもよい。この場合、支持ユニット40及び先行鋼材部81が一体化された構造物が先行シールドトンネル13の内部に設けられる。
一方、支持ユニット40と先行鋼材部81とは、別部品として先行シールドトンネル13の内部に搬送されてもよい。この場合、先に支持ユニット40が構築され、その後、先行鋼材部81が配置される。以上のように、第1隔壁設置工程(S22)では、支持ユニット40及び先行鋼材部81が設けられる。よって、先行シールドトンネル構築工程は、鋼材構造体71を構成する先行鋼材部81を配置する工程を含む。
先行シールドトンネル13の延伸が終了すると、シールド掘進機の残置物を先行シールドトンネル13の先端に残置し、シールド掘削機の回収物を先行シールドトンネル13から発進基地21に回収する。シールド掘削機の回収物は、例えば、カッターモータ、シールドジャッキ及び電装品を含む。シールド掘進機のうち、カッター部分及び外周鋼殻部分等、シールド掘進機の外郭をなして土砂の流入を防止する機能を有する部分は、地中に残置物として残置される。
そして、先行シールドトンネル13の先端から端部1aに向かって順に先行シールドトンネル13の内部を充填していく。このとき、図19に示されるように、先行シールドトンネル13を先行シールドトンネル13の軸方向に沿って並ぶ複数の軸領域部C(C1、C2、C3・・・)に区切り、充填対象の軸領域部Cの端部1a側に隔壁18を設置する。隔壁18は、先行シールドトンネル13の内部領域(外郭躯体予定領域13B)を複数の軸領域部Cに区切る隔壁となる。そして、軸領域部Cに支持ユニット40の配置、並びに、コンクリート及び切削可能充填材の打設を行う。
支持ユニット40の配置、並びに、コンクリート及び切削可能充填材の打設の順序は、特に限定されず、施工性の観点から適宜選択される。これらの工程の一部が同時並行で行われてもよい。なお、コンクリート打設領域50A,50B及び切削可能充填材領域51A,51Bにコンクリート及び切削可能充填材を打設するために、支持ユニット40と先行外殻13Aとの間に型枠が配置される。
<第2外殻躯体構築工程(S3)>
第2外殻躯体構築工程(S3)では、図20、図21及び図22に示されるように、先行シールドトンネル13を切削しながら、端部1aに施工された発進基地21から端部1bまで後行シールドトンネル14を延伸する。そして、地下構造物1の施工予定領域の端部1aと端部1bとの間において、軸方向に延伸する複数の後行シールドトンネル14を大断面トンネルの周方向に沿って並ぶように構築する。
具体的には、第2外殻躯体構築工程(S3)では、18本の後行シールドトンネル14を、外郭躯体予定領域において、発進基地21から端部1bまで延伸する。シールドトンネル上部の土砂が緩みやすい傾向がある場合には、上部を後からシールドトンネルで延伸するように、下方に配置される後行シールドトンネル14から順に延伸してもよい。また、先行シールドトンネル13の延伸と同様に、後行シールドトンネル14の掘進には、2機以上のシールド掘進機を用いてもよい。2機以上のシールド掘進機を用いることにより、複数の後行シールドトンネル14を同時並行で延伸できる。
第2外殻躯体構築工程(S3)では、一方の端部1aから他方の端部1bに向かうに従って、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14のそれぞれの中心軸線が近接していくように後行シールドトンネル14を延伸する。これにより、地下空洞の断面積を端部1aから端部1bに向かうに従って小さくすることができる。第2外殻躯体構築工程(S3)では、端部1aから端部1bまでの全域において、先行シールドトンネル13に後行シールドトンネル14が入り込むように、先行シールドトンネル13の一部が切削されて後行シールドトンネル14を延伸する。
先行シールドトンネル13の一部を切削すると、先行外殻13Aを支持する主桁31(図4又は図5参照)が切削されて、図23に示されるように、先行外殻13Aが第1先行外殻部13AAと第2先行外殻部13ABとに分離される。第1先行外殻部13AAと第2先行外殻部13ABとの間に配置された支持ユニット40は、コンクリート打設領域50A,50Bに打設されたコンクリートを介して第1先行外殻部13AA及び第2先行外殻部13ABを内側から支持している。このため、第2外殻躯体構築工程(S3)において先行シールドトンネル13の一部を切削しても、先行シールドトンネル13は崩れない。
第2外殻躯体構築工程(S3)は、図20に示されるように、第1領域A1の後行シールドトンネル14として、端部1aから第1後行シールドトンネル141を延伸する第1後行シールドトンネル構築工程(S31)と、第2領域A2の後行シールドトンネル14として、第1後行シールドトンネル141から端部1bに向かって第2後行シールドトンネル142を延伸する第2後行シールドトンネル構築工程(S32)とを含む。
第1後行シールドトンネル構築工程(S31)では端部1aから第1後行シールドトンネル141を延伸し、第2後行シールドトンネル構築工程(S32)では第1後行シールドトンネル141の先端から端部1bまで第2後行シールドトンネル142を延伸する。これにより、端部1aから端部1bに至る1本の後行シールドトンネル14が延伸される。
第1後行シールドトンネル141及び第2後行シールドトンネル142の延伸では、例えば、親子シールド機(親子シールド掘進機)が用いられる。この場合、第1後行シールドトンネル141及び第2後行シールドトンネル142の延伸を容易に行うことができる。すなわち、第1後行シールドトンネル構築工程(S31)では、親シールド機によって第1後行シールドトンネル141を延伸し、その後、子シールド機を発進させ当該子シールド機によって第1後行シールドトンネル141の先端から第2後行シールドトンネル142を延伸する。
なお、参考形態としては、端部1bに発進基地21に対応する到達基地(内部空洞)が構築されていない。しかしながら、端部1bに発進基地21に対応する到達基地が構築されていてもよい。この場合、端部1bに到達したシールド掘進機を端部1bから端部1aに向けて掘進してもよい。すなわち、シールド掘進機を端部1bから端部1aに移動させる必要がなくなる。
端部1bに発進基地21に対応する到達基地が構築されている場合には、第2後行シールドトンネル構築工程(S32)において、端部1bの到達基地から第1後行シールドトンネル141の先端に向けて第2後行シールドトンネル142を延伸させてもよい。この場合、第1後行シールドトンネル141の延伸が終了する前に第2後行シールドトンネル142の延伸を開始することができる。
図24に示されるように、後行シールドトンネル14の内部に、止水鉄板99A,99Bを配置すると共に後行鋼材部91を配置する(S33)。なお、これらの部材の配置のときには、支保工のように一時的に配置される要素が用いられてもよい。そして、図25に示されるように、充填材領域60A,60Bに充填材を充填する。この充填材は、切削可能な充填材(例えばエアモルタル)であってもよい。
第1外殻躯体構築工程(S2)における先行シールドトンネル13の構築により、先行シールドトンネル13の内部の外郭躯体予定領域13Bには、支持ユニット40が配置されていると共に切削可能充填材が打設されている。更に、先行シールドトンネル13の内部には先行鋼材部81が配置されている。
第2外殻躯体構築工程(S3)における後行シールドトンネル14の構築により、互いに隣り合う先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とが重なる部分が形成される。この重なる部分において後行シールドトンネル14の後行外殻14Aが先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とを隔てている。更に、後行シールドトンネル14の内部には、後行鋼材部91及び止水鉄板99A,99Bが配置されている。
<外殻躯体構築工程(S4)>
外殻躯体構築工程(S4)では、後行シールドトンネル14の一部を撤去して先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の内部空間を連通する連通工程(S41)を行う。次に、先行鋼材部81同士を連結鋼材90で連結する連結工程(S42)を行う。そして、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の内部空間にコンクリートを打設して外郭躯体12を構築する打設工程(S43)を行う。
図26に示されるように、外殻躯体構築工程(S4)では、外郭躯体予定領域13Bを複数の周領域部B(B1,B2,B3・・・)に区分する。複数の周領域部Bにおいて、下方の周領域部Bから順に、連通工程(S41)、連結工程(S42)及び打設工程(S43)を行う。すなわち、周領域部B1→周領域部B2及び周領域部B3→周領域部B4及び周領域部B5→周領域部B6の順に、連通工程(S41)、連結工程(S42)及び打設工程(S43)を行う。
図27に示されるように、外殻躯体構築工程(S4)では、外郭躯体予定領域13Bの軸方向における端部1bの軸領域部Cから順に、連通工程(S41)、連結工程(S42)及び打設工程(S43)を行う。すなわち、軸領域部C1→軸領域部C2→軸領域部C3→・・・の順に、連通工程(S41)、連結工程(S42)及び打設工程(S43)を行う。
図28に示されるように、外郭躯体予定領域13Bを、複数の周領域部Bに区分すると共に複数の軸領域部Cに区分する。これにより、外郭躯体予定領域13Bは、外郭躯体予定領域13Bの周方向、及び外郭躯体予定領域13Bの軸方向の2軸方向において、複数の施工領域に区分される。そして、複数の周領域部B、及び複数の軸領域部Cに区分された複数の施工領域において、下方の施工領域から順に、かつ外郭躯体予定領域13Bの軸方向における一方の施工領域から順に、連通工程(S41)、連結工程(S42)及び打設工程(D43)を行う。このとき、上下に隣接する一対の施工領域の間では、連通工程(S41)と打設工程(S43)を行うことが好ましい。更に、外郭躯体予定領域13Bの軸方向に隣接する一対の施工領域の間では、連通工程(S41)と打設工程(S43)を行うことが好ましい。
連通工程(S41)では、図29に示されるように、後行シールドトンネル14の後行外殻14Aの一部を撤去して、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とを連通させる。具体的には、図5及び図6に示されるように、先行外殻13A及び後行外殻14Aが重なり合う部分において、主桁31は残置しておき、継手板32及びスキンプレート33を取り外す。
継手板32及びスキンプレート33の取り外しは、後行シールドトンネル14側から行われる。これにより、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14を互いに連通する開口34が形成される。なお、上記の例では、主桁31を残置し、継手板32及びスキンプレート33を撤去したが、主桁31を取り外して撤去しつつ継手板32を残置してもよい。先行外殻13Aと後行外殻14Aとの一体化を図る観点では、スキンプレート33は取り外して撤去されることが好ましい。
外郭躯体予定領域13Bの周方向における施工領域Dの中央部では、図29に示されるように、先行シールドトンネル13の内部の切削可能充填材領域51A,51Bに打設された切削可能充填材を撤去する。切削可能充填材の撤去は、例えば、シールド掘進機のカッターにより開口34に相当する部分の切削可能充填材を切削することによって行われる。このときの切削屑は、シールド掘進機による掘削残土と共に先行シールドトンネル13から排出される。
そして、支持ユニット40の第1隔壁41A及び第2隔壁41Bを撤去する。支持ユニット40の内部空間45は空洞になっているため、第1隔壁41A及び第2隔壁41Bが撤去されることにより、先行シールドトンネル13の外郭躯体予定領域13Bが後行シールドトンネル14の内部空間と連通する。このとき、第1支柱42A及び第2支柱42Bを撤去しない。よって、第1支柱42A及び第2支柱42Bが第1先行外殻部13AA及び第2先行外殻部13ABを内周側から支持しているので、先行シールドトンネル13の変形を抑止することができる。
外郭躯体予定領域13Bの周方向における施工領域Dの両端部では、図30に示されるように、切削可能充填材領域51A及び切削可能充填材領域51Bのいずれか一方に打設された切削可能充填材を撤去する。連結工程(S42)では、図31に示されるように、一方の先行鋼材部81が他方の先行鋼材部81に連結される。具体的には、連結鋼材90の一方の端部が先行鋼材部81の先行接手部に連結される。そして、連結鋼材90の他方の端部が後行鋼材部91の後行接手部に連結される。このとき、必要に応じて連結せん断補強鋼材98が配置されてもよい。
打設工程(断面S43)では、図32及び図33に示されるように、先行シールドトンネル13と後行シールドトンネル14とにコンクリート62を打設して先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の一体化を行う。具体的には、外郭躯体予定領域13Bの軸方向における施工領域Dの端部に隔壁19を設置する第2隔壁設置工程を行う。第2隔壁設置工程では、外郭躯体予定領域13Bの軸方向における施工領域Dの端部に隔壁19を設置する。このとき、外郭躯体予定領域13Bにおいては、隔壁19として、第1隔壁設置工程で設置した隔壁18を用いてもよい。この場合、施工領域Dは、外郭躯体予定領域13Bを周方向に区分する隔壁17(図18参照)と、外郭躯体予定領域13Bを軸方向に区分する隔壁19と、によって囲まれた状態となる。
施工領域Dを囲む隔壁17及び隔壁19を型枠として先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の内部空間(外郭躯体予定領域13B)にコンクリート62を打設する。先行シールドトンネル13に打設されたコンクリート62と、後行シールドトンネル14に打設されたコンクリート62とが一体化されると共に、架け渡された鋼材構造体71をコンクリート62が巻き込むことによって鋼材構造体71も一体化され、強固な外郭躯体12が構築される。
なお、外殻躯体構築工程(S4)では、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14に地下水が入り込まないように、凍結工法によって先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の周囲を凍結止水してもよい。この場合、外郭躯体予定領域13Bの軸方向における一部又は全部に凍土が造成される。また、施工性の観点から、外郭躯体予定領域13Bを(例えば軸方向に沿って)複数のグループに区分し、この区分したグループごとに凍土を造成してもよい。凍土を造成するグループとしては、1つの軸領域部Cに対応するものであってもよいが、施工性の観点から、複数の軸領域部Cに対応するものであってもよい。
<褄壁構築工程(S5)>
褄壁構築工程では、図34に示されるように、地下構造物1の端部1aに外郭躯体12の一方側の側面を封止(止水)する一方側褄壁15を構築し、地下構造物1の端部1bに外郭躯体12の他方側の側面を封止(止水)する他方側褄壁16を構築する。一方側褄壁15及び他方側褄壁16の構築は、例えば、地下構造物1の一方の端部1a及び他方の端部1bが凍結止水され、一方側褄壁15及び他方側褄壁16を構築する領域が掘削されて鉄筋コンクリートが打設されることによって行われる。
<掘削工程(S36)>
掘削工程(S6)では、図35に示されるように、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削して地下空洞4を形成する。具体的には、一方側褄壁15及び他方側褄壁16に挟まれた外郭躯体12の内周側領域の一部又は全部を掘削し、掘削した土砂を排出することにより、外郭躯体12の内周側に地下空洞4を形成する。このとき、掘削した土砂は、本線シールドトンネル2又は支線シールドトンネル3から排出される。
以上のように構成された地下構造物1では、図7及び図8に示されるように、先行外殻13Aの内部に先行鋼材部81が配置されている。先行鋼材部81は、当該先行外殻13Aに隣接する先行外殻13Aに配置された先行鋼材部81に連結鋼材90を介して連結されている。先行外殻13Aの内部及び後行外殻14Aの内部にコンクリート62が打設されることにより、先行鋼材部81及び連結鋼材90を含む鋼材構造体71が埋め込まれる。従って、シールドトンネル毎にコンクリートが打設される場合と比較して、外郭躯体12に形成される打ち継ぎ目を少なくすることができるので工数及び工費を低減することができる。
連結鋼材90は、後行外殻14Aの内部に配置された後行鋼材部91と、後行鋼材部91の端部を先行鋼材部81に連結する一対の連結鋼材部95とを有する。これにより、連結鋼材90によって先行鋼材部81同士を強固に連結することが可能となる。
先行鋼材部81は、先行外殻13Aの径方向に沿って互いに離間して配置された外側先行型鋼82B及び内側先行型鋼82Aを含む。後行鋼材部91は、後行外殻14Aの径方向に沿って互いに離間して配置された外側後行型鋼92B及び内側後行型鋼92Aを含む。連結鋼材部95は、内側後行型鋼92Aの端部を内側先行型鋼82Aの端部に接続する内側連結型鋼96Aと、外側後行型鋼92Bの端部を外側先行型鋼82Bの端部に接続する外側連結型鋼96Bとを含む。これにより、鋼材構造体71とコンクリート62とを含んで構成される合成構造の一種である鋼板コンクリート構造物70の強度を高めることができる。
以上で説明した内容は本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法の一例であって、本開示に係る合成構造は、前述した構造の一部に対して形状、大きさ、数、材料及び配置態様が変更されたものであってもよい。本開示に係る合成構造の構築方法の工程は、前述した各工程に限られず、工程の内容及び順序は適宜変更可能である。
以下では、本開示の実施形態に係る合成構造、及び合成構造の構築方法について説明する。なお、本実施形態に係る合成構造、及び合成構造の構築方法は、一部の構成、及び一部の工程が前述した参考形態と同一であるため、前述した参考形態と同一の構成については重複を回避するため説明を適宜省略する。
図36及び図37に示されるように、本実施形態に係る合成構造である鋼板コンクリート構造物100は、先行シールドトンネル13の先行外殻13Aの内部に配置された先行鋼材部111と、後行シールドトンネル14の後行外殻14Aの内部に配置された後行鋼材部112と、先行鋼材部111及び後行鋼材部112を互いに連結する連結鋼材部120と、コンクリート62とを備える。
先行鋼材部111、後行鋼材部112及び連結鋼材部120によって前述した参考形態に係る鋼材構造体71に相当する鋼材構造体が構成される。当該鋼材構造体にコンクリート62が巻き込まれ打設されて硬化することによって鋼板コンクリート構造物100が構成される。先行鋼材部111は、先行シールドトンネル13の軸方向LAに延びる先行配力鋼材111b1(図38参照)及び径方向LRに延びる先行配力鋼材111b2の組み合わせである先行配力鋼材111b(包囲鋼材)と、周方向LCに延びる複数の先行型鋼111c(第1型鋼)と、複数の支保工111dと、軸方向LAに延びる補強鋼材111f、とを含んでいる。複数の先行配力鋼材111bは周方向LCに沿って並ぶように配置されている。各先行配力鋼材111bのうち、径方向LRに延びる先行配力鋼材111b2は、先行シールドトンネル13の軸方向LAに沿って並んでいる。先行型鋼111cは、先行シールドトンネル113の軸方向LAに所定の厚みを有し、軸方向LAの厚みに対して径方向LRの厚みが大きく、径方向LRに幅広な板状とされており、複数の先行型鋼111cが先行シールドトンネル13の軸方向LAに沿って並ぶように配置されている。先行配力鋼材111b1は径方向LRに所定の厚みを有し、径方向LRの厚みに対して周方向LCの厚みが大きく、周方向LCに幅広な板状である。また、先行配力鋼材111b2は軸方向LAに所定の厚みを有し、軸方向LAの厚みに対して周方向LCの厚みが大きく、周方向LCに幅広な板状である。先行配力鋼材111bは型鋼であり、平鋼又はL型鋼であることが好ましい。一例として、先行配力鋼材111bの数は9本である。
先行型鋼111cは、複数の先行配力鋼材111bが並べて配置された区間を通じて周方向LCに延在しており、複数の先行配力鋼材111bを跨ぐように配置されている。外郭躯体12の径方向外側及び径方向内側のそれぞれに一対の先行型鋼111cが設けられており、外郭躯体12の径方向に沿って並ぶ一対の先行型鋼111cの間を先行配力鋼材111bが跨いでいる。先行型鋼111cは、例えば、先行シールドトンネル13の軸方向LAに厚みを有する板状とされている。複数の先行型鋼111cが先行シールドトンネル13の軸方向LAに沿って並ぶように配置されており、例えば、7枚の先行型鋼111cが周方向LCに沿って延びている。先行型鋼111cは、設計上、鋼板コンクリート構造物100に作用する曲げ応力に対して配置される鋼材である。一方、先行配力鋼材111bは、設計上、鋼板コンクリート構造物100に作用するせん断応力に対して配置される鋼材である。
支保工111dは、例えば、H型鋼であり、外郭躯体12の径方向LRに沿って延びている。例えば、先行外殻13Aの径方向LRに沿って見たときに複数の支保工111dは格子状に配列されており、先行シールドトンネル13の軸方向LAに沿って複数の支保工111dが並んでいる。また、周方向LCに沿って複数の支保工111dが並んでいてもよく、支保工111dの数は一例として8である。
補強鋼材111fは、例えば、先行シールドトンネル13の軸方向LAに延在している。補強鋼材111fは、一例として、H型鋼である。先行鋼材部111は複数の補強鋼材111fを備え、複数の補強鋼材111fは周方向LCに沿って並ぶように配置される。
後行鋼材部112は、後行シールドトンネル14の軸方向LA及び径方向LRに延びる複数の後行配力鋼材112b(包囲鋼材)と、周方向LCに延びる複数の後行型鋼112c(第1型鋼)と、軸方向LAに延びる補強鋼材112hとを含んでいる。後行配力鋼材112bは、先行配力鋼材111bと同様、軸方向LAに延びる後行配力鋼材112b1(図38参照)、及び径方向LRに延びる後行配力鋼材112b2を含む。複数の後行配力鋼材112bは周方向LCに沿って並ぶように配置されており、各後行配力鋼材112bは後行シールドトンネル14の軸方向に沿って直線状に延在している。後行型鋼112cの数は、例えば9である。
後行型鋼112cは、複数の後行配力鋼材112bが並べて配置された区間を通じて周方向LCに延在しており、複数の後行配力鋼材112bを跨ぐように配置されている。外郭躯体12の径方向LRに沿って並ぶように一対の後行型鋼112cが設けられており、一対の後行型鋼112cの間を後行配力鋼材112bが延在している。後行型鋼112cは、後行シールドトンネル14の軸方向LAに所定の厚みを有し、先行型鋼111cと同様に軸方向LAに対して径方向LRに幅広な板状とされており、複数の後行型鋼112cが後行シールドトンネル14の軸方向に沿って並ぶように配置されている。一例として、後行型鋼112cの数は7である。後行配力鋼材112b1は、先行配力鋼材111b1と同様に周方向LCに幅広な板状である。また、後行配力鋼材112b2は、先行配力鋼材111b2と同様に周方向LCに幅広な板状である。後行型鋼112c、及び、後行配力鋼材112bの設計上の目的は、先行型鋼111cと先行配力鋼材111bと同様である。後行配力鋼材112bは型鋼であり、平鋼又はL型鋼であることが好ましい。
連結鋼材部120は、先行鋼材部111と後行鋼材部112とを連結する鋼材である。連結鋼材部120は、先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14の間の境界部分に設けられる。連結鋼材部120は、先行配力鋼材111b及び後行配力鋼材112bに沿って延びる複数の第1配力鋼材121bと、周方向LCに延びる複数の連結型鋼121c(第2型鋼)と、複数の第1配力鋼材121bの周方向LCの両端側のそれぞれに位置する複数の第2配力鋼材121fとを含んでいる。
複数(例えば2本)の第1配力鋼材121bは、周方向LCに沿って並ぶように配置されており、各第1配力鋼材121bは直線状に延在している。複数(例えば2本)の第2配力鋼材121fは周方向LCの両側から第1配力鋼材121bを挟み込むように配置されており、各第2配力鋼材121fは、第1配力鋼材121bに沿って直線状に延びている。
連結型鋼121cは、複数の第1配力鋼材121bの間、及び複数の第2配力鋼材121fが配置された区間を通じて周方向LCに延在しており、第1配力鋼材121b及び第2配力鋼材121fを跨ぐように配置されている。径方向LRに沿って並ぶように一対の連結型鋼121cが設けられており、一対の連結型鋼121cの間を第1配力鋼材121b及び第2配力鋼材121fのそれぞれが延在している。連結型鋼121cは、軸方向LAに所定の厚みを有し、先行型鋼111c及び後行型鋼112cと同様に軸方向LAに対して径方向LRに幅広な板状とされており、周方向LCに延びる複数の連結型鋼121cが軸方向LAに沿って並ぶように配置されている。例えば、連結型鋼121cの数は7である。
先行鋼材部111と後行鋼材部112のそれぞれと、連結鋼材部120には、更に補強鋼材130が設けられており、各補強鋼材130は先行シールドトンネル13及び後行シールドトンネル14のそれぞれの軸方向LAに沿って延在している。補強鋼材130は、軸方向LAに所定の間隔で配置された先行型鋼111c及び連結型鋼121c、又は、後行型鋼112c及び連結型鋼121cに跨って、架け渡されて配置されている。径方向LRに沿って一対の補強鋼材130が並ぶように設けられており、径方向LRに沿って並ぶ一対の補強鋼材130の組が周方向LCに沿って並んでいる。補強鋼材130は、径方向LRに沿って並ぶ一対の先行型鋼111c(又は後行型鋼112c)の内側において先行型鋼111c(又は後行型鋼112c)に接して設けられており、且つ周方向LCに沿って並ぶ一対の先行配力鋼材111b(後行配力鋼材112b)の間に設けられている。補強鋼材130は、先行型鋼111c(又は後行型鋼112c)及び連結型鋼121cに作用する力を分散し補強する目的を有する。
本実施形態に係る合成構造の要部を以下で詳細に説明する。図38に示されるように、径方向LRから見て、鋼板コンクリート構造物100は、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)、先行型鋼111c、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)、後行型鋼112c、連結型鋼121c及びコンクリート62を備える。図39は、図38のA-A線断面図である。図39に示されるように、軸方向LAから見て、径方向LRに所定の間隔を隔てた一対の先行型鋼111c及び一対の後行型鋼112cが周方向LCに延びている。また、径方向LRに所定の間隔を隔てた一対の連結型鋼121cが周方向LCに沿って延びると共に、軸方向LAに離間した位置に配置されている。一対の先行型鋼111c、一対の後行型鋼112c、及び一対の連結型鋼121cの径方向LRの所定の間隔は略同一である。
図38及び図39に示されるように、先行型鋼111c及び連結型鋼121cは、軸方向LAに交互に設けられており、互いに離間するように配置される。後行型鋼112c及び連結型鋼121cも上記同様、軸方向LAに交互に設けられており、互いに離間するように配置される。周方向LCに沿って連結型鋼121cは、先行型鋼111c及び後行型鋼112cを跨ぐように配置される。
鋼板コンクリート構造物100は、先行型鋼111cの一部と連結型鋼121cの一部とが周方向LCに沿って重複した重複部分XA,XBを有する。すなわち、先行型鋼111cは、軸方向LAに沿って見たときに、連結型鋼121cと重複し、周方向LCに沿って延びる重複部分XAを有する。連結型鋼121cは、軸方向LAに沿って見たときに、先行型鋼111cと重複し、周方向LCに沿って延びる重複部分XBを有する。連結型鋼121cは、周方向LCの一方の端部側に先行型鋼111cとの重複部分XBを有し、周方向LCの他方の端部側に後行型鋼112cとの重複部分XBを有する。後行型鋼112cは、先行型鋼111cと同様、連結型鋼121cと重複する重複部分XAを有する。
鋼板コンクリート構造物100は、先行型鋼111cの重複部分XAに、先行型鋼111cが延在する方向に交差し、軸方向LAに突出する突出部111g(第1突出部)を備える。突出部111gは、周方向LCに延在し軸方向LAに所定の間隔で離間して並ぶ一対の連結型鋼121cに対向して連結型鋼121cの両側に張り出すように設けられる。突出部111gは、例えば、先行型鋼111cの端部に固定された支圧板(第1支圧板)であり、周方向LCへの引張力に抵抗する部位に相当する。突出部111gの形状は、板状以外の形状であってもよく、適宜変更可能である。後行型鋼112cの重複部分XAにも突出部111gと同様の突出部112gが設けられる。
鋼板コンクリート構造物100は、連結型鋼121cの重複部分XBに、連結型鋼121cが延在する方向に交差し軸方向LAに突出する突出部121g(第2突出部)を備える。突出部121gは、前述と同様、例えば支圧板(第2支圧板)であってもよい。突出部121gは、例えば、連結型鋼121cの延在する周方向LCの一端側及び他端側のそれぞれに設けられる。連結型鋼121cの一端側の突出部121gは、周方向LCに延在し軸方向LAに所定の間隔で離間して並ぶ一対の先行型鋼111cに対向して設けられる。連結型鋼121cの他端側の突出部121gは、周方向LCに延在し軸方向LAに所定の間隔で離間して並ぶ一対の後行型鋼112cに対向して設けられる。
鋼板コンクリート構造物100において、コンクリート62はまだ固まらない状態で、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)、先行型鋼111c、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)、後行型鋼112c及び連結型鋼121cを埋設して打設されその後硬化する。例えば、前述した重複部分XA,XBを含む重複領域ZAは、現場において打設される場所打ちコンクリート部である。また、重複領域ZA以外の領域ZBのコンクリート62は、予め工場で製造されたプレキャスト部材であるプレキャストコンクリート部ZBが含まれてもよい。この場合、図40に示されるように、プレキャストコンクリート部ZBのプレキャストコンクリートPが、例えば、連結鋼材部120を構成する連結型鋼121cを含めて予め工場で製造される。
図38及び図39に示される第1の特徴的部分は、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)は、例えば、重複部分XA,XBにおいて少なくとも先行型鋼111c及び連結型鋼121cを囲むように包囲する包囲鋼材であり、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)は重複部分XA,XBにおいて少なくとも後行型鋼112c及び連結型鋼121cを囲む包囲鋼材である。具体的には、径方向LRに離間する一対の先行配力鋼材111b1と軸方向LAに離間する一対の先行配力鋼材111b2により、先行型鋼111c及び連結型鋼121cを囲う。また、径方向LRに離間する一対の後行配力鋼材112b1と軸方向LAに離間する一対の後行配力鋼材112b2により、後行型鋼112c及び連結型鋼121cを囲う。
ここで、「囲む」及び「包囲」は、全周を囲んだり覆ったりする場合に限られず、一部を囲ったり覆ったりする場合も含む。すなわち、「囲む」及び「包囲」は、少なくとも一部を囲んだり覆ったりすることを示している。更に、囲んだり覆ったりする方向は、全方向からに限られず、一部の方向からであってもよい。2方向又は3方向から囲まれたり覆われたりする態様であってもよいが、3方向から囲まれる等していることが好ましい。従って、軸方向LAから囲む(挟む)態様、及び径方向LRから囲む(挟む)態様、も含まれる。基本的には、全周において囲われる必要はないが、軸方向LA及び径方向LRをそれぞれ3方向から囲われている。具体的に3方向とは、径方向LRにおける2方向及び軸方向LAにおける1方向(片方向)、又は、径方向LRにおける1方向(片方向)及び軸方向LAにおける2方向である。
また、3方向で、径方向LRにおける2方向及び軸方向LAにおける1方向である場合は、軸方向LAにおける1方向の配力鋼材(111b2,112b2)は、径方向LRに離間して配置された一対の先行型鋼111c(後行型鋼112c)又は連結型鋼121cに亘って延在していることが好ましく、配力鋼材(111b1,112b1)は先行型鋼111c(後行型鋼112c)と連結型鋼121cに亘って架け渡されている必要がある。
3方向で、径方向LRにおける1方向及び軸方向LAにおける2方向である場合も同様に、径方向LRにおける1方向の配力鋼材(111b1,112b1)は、先行型鋼111c(後行型鋼112c)と連結型鋼121cに亘って架け渡されていることが必要で、配力鋼材(111b1,112b1)は先行型鋼111c(後行型鋼112c)と連結型鋼121cに亘って架け渡されていることが好ましい。
図38及び図41(a)に示されるように、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)は、軸方向LAに延在する一対の先行配力鋼材111b1と、径方向LRに延在する一対の先行配力鋼材111b2とからなる断面矩形状を呈しており、少なくとも一つの先行型鋼111c、及び少なくとも一つの連結型鋼121cを囲んだ状態でコンクリート62に埋設されている。なお、図38及び図41(a)の例では、周方向LCに並行に(軸方向LAに所定の間隔で)複数(3つ)の先行型鋼111cと複数(2つ)の連結型鋼121cが交互に配置され、更にそれらが、径方向LRに離間してそれぞれ一対(一組)配置されている。
このように、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)で少なくとも一つの先行型鋼111cと一つの連結型鋼121cを囲み、更に先行配力鋼材111b(111b1,111b2)の内外のコンクリート62に埋設されることによって強固な鋼板コンクリート構造物100が得られる。なお、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)、後行型鋼112c及び連結型鋼121cの構成も図41(a)に示される構成と同様である。更に、図41(b)に示されるように、後行配力鋼材112bが四方から後行型鋼112c及び連結型鋼121cを囲む構造であってもよい。
図41(b)に示される形態では、複数の後行型鋼112c及び複数の連結型鋼121cが後行配力鋼材112b(112b1,112b2)により4方向から囲われているが、いずれかの3方向から囲まれる等していてもよい。以上のように、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)及び後行配力鋼材112b(112b1,112b2)が、先行型鋼111c及び後行型鋼112cのそれぞれと、連結型鋼121cとを囲む(挟む)ことによって、より強固な鋼板コンクリート構造物100が得られる。なお、先行配力鋼材111b1と先行配力鋼材111b2は溶接等により連結される。また、先行配力鋼材(111b1,111b2)と型鋼(111c,121c)は同様に溶接等により連結される。溶接等により剛結されることで、作用するモーメント力を伝達することができる。なお、後行配力鋼材112b1、112b2についても同様である。その他の剛結の方法として、機械的接合により接続及び接合され、機械的接合としては、一部にボルト接合又はねじ接合がなされることがある。ボルト接合又はねじ接合に加えて添接板によって接続されてもよい。その中で一般的な手法として、一部が溶接(冶金的接合)により接合及び接続される。これらのいずれか一つ又は複数の手法が選択されることにより鋼材同士の接続が行われる。
図38及び図39に示される第2の特徴的部分は、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)のうち、径方向LRに延在する先行配力鋼材111b1は、例えば、重複部分XA,XBにおいて少なくとも先行型鋼111c及び連結型鋼121cに接していて、例えば溶接により連結されている。具体的には、先行配力鋼材111b1は、径方向LRに離間する一対(一組)の先行型鋼111c及び径方向LRに離間する一対(一組)の連結型鋼121cに亘り架け渡され各々に溶接等により連結される。溶接等により剛結されることにより作用するモーメント力を伝達できる点で結束線による連結より好ましい。
また、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)のうち、径方向LRに延在する後行配力鋼材112b2は、例えば、重複部分XA,XBにおいて少なくとも後行型鋼112c及び連結型鋼121cに接していて、例えば溶接により連結されている。また、先行配力鋼材111b2は、径方向LRに離間する一対(一組)の先行型鋼111c及び径方向LRに離間する一対(一組)の連結型鋼121cに亘り架け渡され各々に溶接等により連結される。
鋼板コンクリート構造物100が径方向LRから力を受けた場合に、径方向LRに延在する配力鋼材(111b2,112b2)は、周方向LCに延在する先行型鋼111c(後行型鋼112c)及び連結型鋼121cが周方向LCにずれてコンクリート62と一体性が阻害され破壊されることを抑制する。また、径方向LRに離間する一対(一組)の先行型鋼111c(後行型鋼112c)、又は一対(一組)の連結型鋼121cが径方向LRに離れてコンクリート62と一体性が阻害されて破壊されることを抑制する。周方向のずれを抑制する点においては、径方向LRに延在する配力鋼材(111b2,112b2)は軸方向LAに幅広な板状であってもよい。
更に、先行配力鋼材111b(111b1,111b2)のうち、軸方向LAに延在する先行配力鋼材111b1を備えることが好ましい。先行配力鋼材111b1は、先行型鋼111c又は先行配力鋼材111b2に溶接等により剛結されることにより、先行型鋼111cに連結される。一方、後行配力鋼材112b(112b1,112b2)のうち、軸方向LAに延在する後行配力鋼材112b1を備えることが好ましい。後行配力鋼材112b1は、後行型鋼112c又は後行配力鋼材112b2に溶接等により剛結されることにより、後行型鋼112cに連結される。その他の剛結の方法として、機械的接合により接続及び接合され、機械的接合としては、一部にボルト接合又はねじ接合がなされることがある。ボルト接合又はねじ接合に加えて添接板によって接続されてもよい。その中で一般的な手法として、一部が溶接(冶金的接合)により接合及び接続される。これらのいずれか一つ又は複数の手法が選択されることにより鋼材同士の接続が行われる。
以上のように、径方向LRに延在する先行配力鋼材111b2(後行配力鋼材112b2)が、周方向LCに延在する先行型鋼111c(後行型鋼112c)に連結されていること等により、内外のコンクリート62に埋設された鋼板コンクリート構造物100はより強固になる。
以上のように構成される鋼板コンクリート構造物100の構築方法について説明する。なお、鋼板コンクリート構造物100の構築方法は、前述した発信基地構築工程(S1)、第1外殻躯体構築工程(S2)、第2外殻躯体構築工程(S3)、外郭躯体構築工程(S4)、褄壁構築工程(S5)及び掘削工程(S6)と重複する内容を含むため、以下では重複しない内容についてのみ説明する。
図42及び図43に示されるように、例えば、先行鋼材部111及び後行鋼材部112を予め工場等において製造し、先行シールドトンネル13の内部に先行鋼材部111を配置し、後行シールドトンネル14の内部に後行鋼材部112を配置する。このとき、先行型鋼111c及び後行型鋼112cがそれぞれの延在方向である周方向LCに沿って一直線上に並ぶように先行鋼材部111及び後行鋼材部112を配置する(第1型鋼を配置する工程)。
そして、軸方向LAから見て先行鋼材部111と後行鋼材部112とを架け渡すように連結鋼材部120を配置する(第2型鋼を配置する工程)。このとき、図38に示されるように、連結型鋼121cが軸方向LAに離間して配置された一対の先行型鋼111cの間、及び軸方向LAに離間して配置された一対の後行型鋼112cの間に位置するように連結鋼材部120を配置する。すなわち、軸方向LAから見た場合における連結型鋼121cの一部の周方向LCの位置が、先行型鋼111c(後行型鋼112c)の一部の周方向LCの位置と重複するように、連結型鋼121cを配置する。
そして、先行型鋼111c及び連結型鋼121cを囲む先行配力鋼材111b(111b1,111b2)を配置すると共に、後行型鋼112c及び連結型鋼121cを囲む後行配力鋼材112b(112b1,112b2)を配置する(包囲鋼材を配置する工程)。その後、先行型鋼111c(後行型鋼112c)の一部と連結型鋼121cの一部とを含む重複領域ZAをコンクリート62で埋設する。具体的には、先行型鋼111c、後行型鋼112c及び連結型鋼121cの周囲に型枠を設置して当該型枠の内部にまだ固まらないコンクリート62を打設し、その後、コンクリート62が硬化した後に鋼板コンクリート構造物100が完成する。なお、前述したように、重複領域ZA以外の連結型鋼121cを有する連結鋼材部120の部分については、プレキャストコンクリート部ZB(図40参照)が含まれていてもよく、この場合、現場におけるコンクリート62の打設量を低減させることが可能となる。
次に、本実施形態に係る合成構造(例えば鋼板コンクリート構造物100)、及び合成構造の構築方法の作用効果について説明する。本実施形態に係る合成構造では、コンクリート62の内部に周方向LC(第1方向)に延びる先行型鋼111c及び連結型鋼121cが埋設されている。連結型鋼121cは先行型鋼111cから離間した位置に配置されており、先行型鋼111c及び連結型鋼121cは周方向LCに交差(例えば、鉛直)する軸方向LA(第2方向)に離間して並ぶように配置されている。このように、連結型鋼121cが先行型鋼111cから離間して配置されることにより、連結型鋼121cと先行型鋼111cとの間に所謂遊びとなる空間を形成でき、先行型鋼111c又は連結型鋼121cに設置の誤差や製造の誤差等が生じても当該空間で誤差を吸収することができる。なお、先行型鋼111cと連結型鋼121cとの間隔は、板状(ウェブ状)の鋼材からなる先行型鋼111c(連結型鋼121c)の板厚に対して、上限は、好ましくは15倍以内、更に好ましくは10倍以内である。一方、下限は、好ましくは3倍以上、更に好ましくは6倍以上である。
また、先行型鋼111cの一部の周方向LCの位置は、連結型鋼121cの一部の周方向LCの位置とは軸方向LAから見て重複している。すなわち、周方向LCにおいて、先行型鋼111cの一部が連結型鋼121cの一部と重複している。従って、先行型鋼111cの一部は連結型鋼121cの一部とコンクリート62を介して周方向LCと交差する軸方向LAに対向するので、先行型鋼111cに付与された力をコンクリート62を介して連結型鋼121cに伝達させることができる。
また、先行型鋼111cの連結型鋼121cとの重複部分XAには突出部111gが設けられており、連結型鋼121cの先行型鋼111cとの重複部分XBには突出部121gが設けられている。従って、先行型鋼111c又は連結型鋼121cに周方向LCへの引張力が作用したときに、突出部111g及び突出部121gによって当該引張力に抵抗することができる。よって、先行型鋼111c及び連結型鋼121cを含む部材の強度を高めることができる。なお、突出部111g及び突出部121gの軸方向LAの突出長は、板状(ウェブ状)の鋼材からなる先行型鋼111c(連結型鋼121c)の板厚に対して、下限は、好ましくは1倍以上、更に好ましくは2倍以上である。一方、上限は、好ましくは5倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
本実施形態に係る合成構造は、周方向LC(第1方向)及び軸方向LA(第2方向)に交差する径方向LR(第3方向)に互いに離間した一対(一組)の先行型鋼111cと、径方向LRに互いに離間した一対(一組)の連結型鋼121cと、を備えてもよい。この場合、径方向LRに並ぶ一対(一組)の先行型鋼111c、及び径方向LRに並ぶ一対(一組)の連結型鋼121cを備えることにより、合成構造の強度を高めることができる。
更に、本実施形態に係る合成構造では、周方向LCに延びる一対の先行型鋼111cと、各先行型鋼111cに対して軸方向LAに離間すると共に周方向LCに延びる一対の連結型鋼121cと、一対の先行型鋼111c、及び、一対の連結型鋼121cのそれぞれを径方向LRに架け渡す先行配力鋼材111b2とを備える。一対の先行型鋼111cの一部、一対の連結型鋼121cの一部、及び、一対の先行配力鋼材111b2は、周方向LCに重複する重複部分を有し、当該重複部分はコンクリート62に埋設されている。従って、周方向LCへの引張力が働いたときの抵抗力を高めることができ、部材の強度を高めることができる。
本実施形態に係る合成構造は、先行型鋼111cと連結型鋼121cに架け渡され、先行型鋼111c及び連結型鋼121cを連結する先行配力鋼材111b1を備えてもよい。この場合、当該重複部分に先行配力鋼材111b1が更に設けられるので、部材の強度を一層高めることができる。
本実施形態に係る合成構造は、先行型鋼111c及び連結型鋼121cに隣接して先行型鋼111c及び連結型鋼121cの間で軸方向LAに延びる先行配力鋼材111b1(第3型鋼)と、周方向LC及び軸方向LAに交差する径方向LRに並ぶ一対(一組)の先行型鋼111c、又は径方向LRに並ぶ一対(一組)の連結型鋼121cの間で径方向LRに延びる先行配力鋼材111b2(第4型鋼)と、を備え、先行配力鋼材111b1と先行配力鋼材111b2が互いに、例えば隅肉溶接等により連結してもよい。連結の態様は、例えば、溶接による接合が挙げられる。この場合、先行型鋼111cと連結型鋼121cとを接続する先行配力鋼材111b1と、一対(一組)の先行型鋼111c同士、又は一対(一組)の連結型鋼121c同士を接続する先行配力鋼材111b2とを備え、先行配力鋼材111b1と先行配力鋼材111b2とが互いに溶接等により強固に連結するので、先行配力鋼材111b1と先行配力鋼材111b2は先行型鋼111c及び連結型鋼121cを包囲し合成構造の強度をより高めることが可能となる。
後行配力鋼材112b(112b1,112b2)と後行型鋼112cと連結型鋼121cとの配置関係も同様であり、同様の配置関係からも同様の作用効果が得られる。
本実施形態に係る合成構造は、重複部分XA,XBにおいて先行型鋼111c及び連結型鋼121cを囲む先行配力鋼材111b(111b1,111b2)を備えてもよい。この場合、重複部分XA,XBにおいて、先行型鋼111c及び連結型鋼121cが先行配力鋼材111b(111b1,111b2)によって包囲される。従って、先行型鋼111c及び連結型鋼121cが互いに重複している重複部分XA,XBの強度を高めることができる。後行配力鋼材112b(112b1,112b2)からも先行配力鋼材111b(111b1,111b2)と同様の作用効果が得られる。
前述したように、先行型鋼111cは突出部111gを備え、連結型鋼121cは突出部121gを備え、突出部111gは先行型鋼111cの周方向LCの端部に取り付けられた第1支圧板であってもよい。また、突出部121gは連結型鋼121cの周方向LCの端部に取り付けられた第2支圧板であってもよい。この場合、先行型鋼111cの端部に設けられた支圧板である突出部111g、又は連結型鋼121cの端部に設けられた支圧板である突出部121gにより、周方向LCへの引張に対する強度をより高めることができる。第1支圧板(突出部111g)及び第2支圧板(突出部121g)の軸方向LAにおける全幅は、先行型鋼111c(連結型鋼121c)に対し、下限は、好ましくは1倍以上、更に好ましくは2倍以上である。一方、上限は、好ましくは5倍以下、更に好ましくは3倍以下である。
先行型鋼111cの重複部分XA、及び連結型鋼121cの重複部分XBを含む重複領域ZAは、現場において打設された場所打ちコンクリート部であってもよく、重複領域ZA以外の部分には、予め工場において製造されたプレキャストコンクリート部ZBが含まれてもよい。この場合、先行型鋼111cの重複部分XA、及び連結型鋼121cの重複部分XBを含む重複領域ZAを場所打ちしつつ、重複領域ZA以外の部分を予め工場で製造することができる。従って、場所打ちコンクリート部以外の部分を予め製造されたものとすることができるので、合成構造の構築作業を効率よく行うことができる。
本実施形態に係る合成構造の構築方法では、先行型鋼111c(後行型鋼112c)から離間した位置に連結型鋼121cが配置される。連結型鋼121cは、連結型鋼121cの一部の周方向LCの位置が、先行型鋼111c(後行型鋼112c)の周方向LCの位置と重複するように配置される。よって、周方向LCにおいて、先行型鋼111c(後行型鋼112c)の一部が連結型鋼121cの一部に重複するように連結型鋼121cの配置が行われる。
そして、先行型鋼111cの一部と連結型鋼121cの一部とを含む重複領域ZAがコンクリート62で埋設される。従って、コンクリート62の埋設後には、先行型鋼111cの一部は連結型鋼121cの一部とコンクリート62を介して対向しているので、先行型鋼111cに付与された力をコンクリート62を介して連結型鋼121cに伝達させることができる。
また、周方向LCにおいて先行型鋼111c及び連結型鋼121cが互いに重複している重複領域ZAにおいて、先行型鋼111c及び連結型鋼121cが先行配力鋼材111b(111b1,111b2)によって包囲される。従って、先行型鋼111c及び連結型鋼121cが互いに重複している重複領域ZAの強度を高めることができる。後行配力鋼材112b(112b1,112b2)からも同様の効果が得られる。
以上、本実施形態に係る鋼板コンクリート構造物100を合成構造の一例として説明した。しかしながら、合成構造の各部の形状、大きさ、材料、数及び配置態様は、前述した種々の形態の内容に限られず適宜変更可能である。以下では、変形例に係る鋼板コンクリート構造物150について図44及び図45を参照しながら説明する。なお、鋼板コンクリート構造物150を含む後述する各変形例の構成は、前述した実施形態と重複する部分が多いため、重複する部分の説明を適宜省略する。
図44及び図45に示されるように、鋼板コンクリート構造物150は、前述した先行型鋼111c、後行型鋼112c及び連結型鋼121cに代えて、突起付きの先行型鋼151c、後行型鋼152c及び連結型鋼161cを備える。先行型鋼151cは、連結型鋼161cとの重複部分XAに第1突起151gを第1突出部として備える。後行型鋼152cは、重複部分XAに上記同様の第1突起152gを備える。また、連結型鋼161cは、先行型鋼151cとの重複部分XBに第2突起161gを第2突出部として備える。
先行型鋼151cは、例えば、複数の第1突起151gを備え、複数の第1突起151gのそれぞれが延在方向LAに突出している。複数の第1突起151gは、例えば、周方向LCに沿って等間隔に配置されており、第1突起151gと先行配力鋼材111bとは周方向LCに沿って交互に配置されている。後行型鋼152cにおける第1突起152gの数及び配置態様は、第1突起151gの数及び配置態様と同様である。
連結型鋼161cは、例えば、複数の第2突起161gを備え、複数の第2突起161gのそれぞれが延在方向LAに突出している。複数の先行型鋼151cの間に位置する複数の第2突起161g、及び複数の後行型鋼152cの間に位置する複数の第2突起161gは、例えば、周方向LCに沿って等間隔に設けられている。各第2突起161gの周方向LCの位置は、例えば、第1突起151gの周方向LCの位置、又は第1突起152gの周方向LCの位置と同一である。この場合、第1突起151g及び第2突起161gが延在方向LAに沿って交互に設けられる。また、第1突起152g及び第2突起161gが延在方向LAに沿って交互に設けられる。
以上、変形例に係る鋼板コンクリート構造物150では、第1突出部は延在方向LAに突出する第1突起151g,152gを含んでおり、第2突出部は延在方向LAに突出する第2突起161gを含んでいる。よって、延在方向LAに突出する第1突起151g,152g、及び延在方向LAに突出する第2突起161gにより、周方向LCへの引張に対する強度を高めることができる。
続いて、更なる変形例に係る鋼板コンクリート構造物170について図46及び図47を参照しながら説明する。図46及び図47に示されるように、鋼板コンクリート構造物170は、前述した突出部111g及び第1突起151gの双方を備える先行型鋼171cと、突出部112g及び第1突起152gの双方を備える後行型鋼172cと、突出部121g及び第2突起161gの双方を備える連結型鋼181cと、を有する。
この鋼板コンクリート構造物170では、第1突出部として突出部111g(突出部112g)及び第1突起151g(第1突起152g)を含み、第2突出部として突出部121g及び第2突起161gを含む。従って、これらの突出部及び突起によって、周方向LCへの引張に対する強度を更に高めることができる。
以上、本開示に係る合成構造の参考形態、実施形態及び変形例を含む種々の形態について説明した。しかしながら、本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法は、前述した参考形態、実施形態及び変形例の一部が組み合わされた構造であってもよい。本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法は、前述した種々の形態から適宜変形可能であり、更に、前述の形態以外の種々の現場に適用させることも可能である。
例えば、前述の種々の形態では、発信基地構築工程(S1)、第1外殻躯体構築工程(S2)、第2外殻躯体構築工程(S3)、外郭躯体構築工程(S4)、褄壁構築工程(S5)及び掘削工程(S6)を含む構築方法について例示した。しかしながら、発信基地構築工程(S1)、第1外殻躯体構築工程(S2)、第2外殻躯体構築工程(S3)、外郭躯体構築工程(S4)、褄壁構築工程(S5)及び掘削工程(S6)のそれぞれの工程の内容及び順序は、前述した例に限られず適宜変更可能である。
また、前述の形態では、大断面トンネルを構築する現場に本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法を適用させた例について説明した。しかしながら、本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法は、大断面トンネルを構築する現場に限られず、種々の現場に適用可能である。例えば、道路橋等の橋梁構造(スラブ構造)、梁同士を連結する連結構造、柱同士を連結する連結構造、又はボックスカルバートにおける連結構造に適用させることも可能である。すなわち、互いに対向する一対(一組)の第1型鋼及び第2型鋼を備え、第1型鋼及び第2型鋼を埋設するコンクリートが設けられる構造であれば、本開示に係る合成構造、及び合成構造の構築方法を適用させることが可能である。