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JP5679849B2 - 地下構造物 - Google Patents

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Description

本発明は、地下構造物に関する。
開削工法によって地下構造物を構築する場合に、山留め支保工を兼ねる上部躯体(頂版、中床版、梁など)を構築した後、当該上部躯体の下側の地盤を掘り下げ、その後、側壁や底版等の下部躯体を構築する逆巻工法(逆打ち工法)を採用する場合がある(例えば、特許文献1,2参照)。
逆巻工法(逆打ち工法)は、地下での躯体施工と並行して地上での躯体施工を進める場合のほか、供用中の道路や鉄道の直下に地下構造物を構築する場合などに採用される。
特開2001−193082号公報 特開平11−6164号公報
逆巻工法では、上部躯体を支持する既設杭(本設杭、仮設杭等)が配設されている状態で、下部躯体を構築する場合がある。
このような条件下では、下部躯体をコンクリート構造(RC構造やSRC構造など)とし、コンクリートを場所打ちすることで、現場の状況に柔軟に対応できるようするのが一般的である。
逆巻工法(逆打ち工法)では、山留め支保工を兼ねるコンクリート躯体の下方において、側壁や床版の鉄筋・型枠を組み立てる必要があるところ、資材搬入口の位置や大きさが制限されているうえに、山留め支保工の下方においては、山留め支保工の存在によって作業空頭が制限されていて、大型の揚重機械を使用できないことから、鉄筋・型枠の組立作業に手間を要する虞がある。
また、既設杭との干渉部では、既設杭を避けて下部躯体に必要な鉄筋量の鉄筋を配筋する必要があり、既設杭の周囲の鉄筋が密となることから、その配筋作業に手間が係る。
一方、下部躯体の構築にセグメント(プレキャスト部材)を採用すると、既設杭との干渉部には、セグメントを配設することができない。この場合には、杭を一時的に盛り替えてセグメントを配置した後、杭を復旧する工法が採用されるが、施工に手間がかかり、早期施工化および工費削減の妨げとなる。
このような観点から、本発明は、逆巻工法により地下構造物を構築する場合において、工期短縮および工事費の低減化を図ることを可能とした地下構造物を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、上部に形成された上部躯体と、前記上部躯体の下側に形成された下部躯体と、前記下部躯体を貫通する既設杭とを有する地下構造物であって、前記下部躯体は、複数のセグメントピースを並設し、隣接する前記セグメントピース同士を接合することで形成されており、前記既設杭の位置に対応するセグメントピースは、前記既設杭を挟むように突き合された二つのピース部材を接合することにより形成されており、少なくとも一方の前記ピース部材には、他方の前記ピース部材側の端部に凹部が形成されていて、当該ピース部材同士を突き合わせたときに前記既設杭を挿通する開口部が形成されることを特徴としている。
かかる地下構造物によれば、既設杭を盛り替えることなくセグメントを設置することができるため、下部躯体の施工を短期かつ安価に行うことができる。
なお、前記ピース部材は、底部に設けられたスキンプレートと、一対の主桁と、当該一対の主桁の間に設けられた縦リブと、を備えていて、前記二つのピース部材は、互いの前記主桁同士を接合することで接合されていてもよい。
さらに、前記開口部が前記一対の主桁の間に形成されていてもよい。
また、地下構造物が、前記既設杭の周囲を囲うように前記開口部に配筋された補強鉄筋と、前記補強鉄筋を巻き込むように前記開口部に打設されたコンクリート硬化体とを備えており、さらに、前記ピース部材に、前記凹部の内面に沿って定着部が形成されていて、前記補強鉄筋が前記定着部に固定されていれば、開口部における水圧や地盤反力等の外圧をコンクリート硬化体により受け持つことが可能となる。また、定着部を介してセグメントとコンクリート硬化体との一体化を簡易に行うことができる。
また、前記補強鉄筋は、端部にネジ切りが施されており、前記定着部にナットを介して螺着されていれば、セグメントとコンクリート硬化体との一体化を簡易に行うことができる。
前記ピース部材同士が、引張接合方式によるボルト接合により接合されていれば、セグメントピースを分割することにより分断された主桁の剛性一様(分断の有無に関わらず剛性が連続している状態)を確保することができる。
ここで、引張接合方式とは、ボルトに強い締付け力を加えて鋼製セグメント間に大きな圧縮力を生じさせ、ボルト軸方向に作用する引張外力がこれと打ち消し合う形で応力の伝達を行う接合方式である。なお、引張接合を行う場合には、高力ボルトを使用することが多いが、普通ボルトであっても差し支えない。引張接合方式を採用すれば、継手部での剛性低下を抑制することが可能となり、さらには、継手部の目開きを抑制することが可能となる。
さらに、前記ピース部材の凹部の内壁面に沿って設置された水膨潤材を備えていれば、止水性能が向上する。
なお、下部躯体は、前後左右に隣接するセグメントピース同士を接合することにより形成するのが望ましい。
本発明の地下構造物によれば、逆巻工法により、短期かつ安価に構築することが可能となる。
本発明の実施形態に係る地下構造物の横断面図である。 コンクリート躯体の配筋図である。 コンクリート躯体の鉄骨配置図である。 本発明の実施形態に係る地下構造物の破断斜視図である。 (a)は床版用鋼製セグメントおよび隅角部用鋼製セグメントの平面図、(b)は同じく横断面図である。 (a)はピース部材を示す斜視図、(b)は鋼殻躯体と中壁との取付部を示す平面図である。 (a)は図6の(b)のX1−X1断面図、(b)は(a)のX2−X2断面図である。 (a)は側壁用鋼製セグメントの側面図、(b)は(a)のX3−X3断面図である。 (a)は一次掘削工程を示す横断面図、(b)は第一の躯体構築工程を示す横断面図である。 (a)は図9の(b)に続く工程を示す横断面図、(b)は二次掘削工程を示す横断面図である。 (a)および(b)は第二の躯体構築工程を示す横断面図である。 第三の躯体構築工程を示す横断面図である。
本発明の実施形態に係る地下構造物は、図1に示すように、開削工法によって構築されたカルバートであり、山留め支保工を兼ねるコンクリート躯体(上部躯体)Aと、コンクリート躯体Aの下側に形成された鋼殻躯体(下部躯体)Bと、コンクリート躯体Aと鋼殻躯体Bとの間に形成された中壁Cとを備えている。
<コンクリート躯体A>
コンクリート躯体Aは、土水圧や上載荷重に耐え得るように設計された本設躯体であるが、鋼殻躯体Bとの接合部以外は、鋼殻躯体Bおよび中壁Cに先立って構築され、山留壁W,W間を掘り下げる際には山留め支保工として機能する。本実施形態のコンクリート躯体Aは、頂版部A1と、山留壁Wに沿う側壁部A2と、縦断方向に延在する縦梁部A3とを備えている。
コンクリート躯体Aは、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC構造)であり、場所打ちコンクリートと鉄骨11〜13や鉄筋(図示略)などの補強鋼材とによって構成されている。本実施形態では、横断鉄骨11、側壁芯鉄骨12、縦断鉄骨13などのほか、図2に示すように、スラブ主筋14、側壁主筋15、縦梁主筋16、せん断補強筋17、ハンチ筋18などによってコンクリートが補強されている。なお、コンクリート躯体Aをプレキャスト化しても勿論差し支えない。
横断鉄骨11は、図3に示すように、前後方向(縦断方向)に間隔を置いて複数並設されている。なお、図3では、鉄筋の図示を省略している。各横断鉄骨11は、その材軸方向が横方向(左右方向)となるように配置にされている。本実施形態の横断鉄骨11は、H形鋼からなるが、I形鋼や溝形鋼に変更してもよい。
隣り合う横断鉄骨11,11は、複数の繋ぎ材11a,11a,…によって連結されている。なお、繋ぎ材11aの端部は、横断鉄骨11のスチフナーに接続されている。図2に示すように、横断鉄骨11の端部は、山留壁Wの芯材W1に設けたブラケットW2に載置されており、横断鉄骨11の端面と山留壁Wの内壁面との間には、サポート部材11bが介設されている。また、横断鉄骨11の中間部は、中間杭(既設杭)Mの上面に載置されている。つまり、横断鉄骨11は、両端部が山留壁Wにより支持されているとともに、中間部が中間杭Mにより下方から支持されている。なお、中間杭Mは、H形鋼を芯材とするソイルセメント杭からなり、掘削とともに芯材であるH形鋼が露出して仮の支持柱として機能する。
側壁芯鉄骨12は、側壁部A2に配置された補強鋼材であり、材軸方向が上下方向となるように配置されている。側壁芯鉄骨12の上端部は、横断鉄骨11の端部の下面に接合されている。横断鉄骨11と側壁芯鉄骨12の接合部の内隅には、三角形状の補強リブ12aが配置されている。本実施形態の側壁芯鉄骨12は、H形鋼からなるが、I形鋼や溝形鋼などに変更してもよい。
縦断鉄骨13は、縦梁部A3の上半部分に配置された補強鋼材であり、材軸方向が縦断方向となるように配置されている(図3参照)。縦断鉄骨13の端部は、横断鉄骨11のウェブから張り出すブラケットに接続されている。本実施形態の縦断鉄骨13は、溝形鋼からなるが、H形鋼、I形鋼、山形鋼などに変更してもよい。
スラブ主筋14は、頂版部A1の上面および下面に沿って配筋された補強鋼材であり、長手方向が横方向となるように配筋にされている。スラブ主筋14は、縦梁部A3を貫通しており、スラブ主筋14の両端部は、側壁部A2,A2のコンクリートに定着されている。
側壁主筋15は、側壁部A2の外壁面(山留壁W側の壁面)および内壁面(内空側の壁面)に沿って配筋された補強鋼材であり、長手方向が上下方向となるように配筋されている。なお、側壁主筋15は、鋼殻躯体Bに入り込んでいる。
縦梁主筋16は、縦梁部A3の上面および下面に沿って配筋された補強鋼材であり、長手方向が縦断方向となるように配筋されている。
せん断補強筋17は、スラブ主筋14若しくは側壁主筋15と交差する方向に配筋された補強鋼材である。
ハンチ筋18は、ハンチ部分に配筋された補強鋼材であり、ハンチ筋18の上半部は、頂版部A1のコンクリートに定着されている。
<鋼殻躯体B>
図1に示す鋼殻躯体Bは、土水圧や上載荷重に耐え得るように設計された本設躯体である。鋼殻躯体Bは、床付面T2に沿う鋼殻構造の床版部B1と、山留壁Wに沿う鋼殻構造の側壁部B2とを有し、横断面視U字状を呈している。
既設杭である中間杭M,Mは、鋼殻躯体Bを貫通している。
床版部B1は、地下部分の床を構成するものである。また、側壁部B2は、地下部分の側壁の一部を構成するものであり、上コンクリート躯体Aの側壁部A2に接合されている(側壁接合部J2)。
本実施形態の鋼殻躯体Bは、図4に示すように、二種類の床版用鋼製セグメント(セグメントピース)20、30と、隅角部用鋼製セグメント(セグメントピース)40と、二種類の側壁用鋼製セグメント(セグメントピース)50,60とによって構成されている。すなわち、鋼殻躯体Bは、複数の鋼製セグメント(床版用鋼製セグメント20,30、隅角部用鋼製セグメント40および側壁用鋼製セグメント50,60)によって形成されている。
なお、以下の説明においては、四つの鋼製セグメント20,30,40,50,60からなるU字状のユニットを、シールドトンネルに倣って「リング」と称する。また、同一のリングに属する鋼製セグメント同士の継手部分(接合部分)を「セグメント継手」と称し、縦断方向に隣接するリング同士の継手部分(接合部分)を「リング継手」と称する。
また、「前後左右」は、図4の状態を基準とする。
床版用鋼製セグメント20,30、隅角部用鋼製セグメント40および側壁用鋼製セグメント50,60は、イモ組み状態となるように並設されていて、セグメント継手が縦断方向に連続している。すなわち、一のリングのセグメント継手の位置が隣接する他のリングのセグメント継手の位置と一致している。
第一の床版用鋼製セグメント20は、その前後左右に他の鋼製セグメントが配置される普通タイプの鋼製セグメントであり、上面が開口した有底箱状を呈している。図5の(a)および(b)に示すように、第一の床版用鋼製セグメント20は、スキンプレート21と、前後一対の主桁プレート22,22と、左右一対の継手プレート23,23と、主桁プレート22,22の間に設けられた複数の縦リブ24,24,…とを備えている。第一の床版用鋼製セグメント20は、各継手プレート23を介して、同一のリングに属する二つの鋼製セグメント(他の床版用鋼製セグメント20,30や隅角部用鋼製セグメント40)に接合され、各主桁プレート22を介して、隣接する他のリングに属する床版用鋼製セグメント20に接合される。なお、図示は省略するが、主桁プレート22と継手プレート23の外面には、シール材が貼着されている。
スキンプレート21は、第一の床版用鋼製セグメント20の外殻(底)となるものであり、平面視矩形状を呈する鋼板からなる。
主桁プレート22は、スキンプレート21の前縁および後縁に立設されており、縦断方向に隣接する他の床版用鋼製セグメント20,30の主桁プレート22に突き合わされる。主桁プレート22には、リング継手用の固定ボルトb1が挿通される。本実施形態では、固定ボルトb1を利用して、主桁プレート22同士を接合する。
継手プレート23は、スキンプレート21に立設された止水用の端面板23aと、端面板23aの前縁および後縁に配置された構造用の補強板23b,23bとを備えている。端面板23aは、同一のリング内において隣接する他のセグメントの継手プレートに突き合わされる。端面板23aは、スキンプレート21と主桁プレート22,22に固着されている。補強板23bは、主桁プレート21の左右の縁部に配置されており、主桁プレート21および端面板23aの内面に固着されている。端面板23aおよび補強板23bには、セグメント継手用の固定ボルトb2が挿通される。本実施形態では、固定ボルトb2を利用して、引張接合方式により主桁プレート22同士を連続させる。つまり、固定ボルトb2は、セグメント継手において、端面板23a同士を接合するとともに、主桁プレート22同士を連結している。なお、固定ボルトb2には、初期導入軸力として、固定ボルトb2の降伏軸力の75%に相当する軸力を導入する。固定ボルトb2による固定方法は、これに限定されるものではない。
なお、セグメント継手に目開きを生じさせるような力が作用した場合、主桁プレート22と固定ボルトb2との間の荷重伝達は、主として補強板23bを介して行われるようになる。「てこ反力」の支点を超えた部分(端面板23aだけの部分)は、上記荷重伝達に寄与しないので、端面板23aの薄肉化を図ることができ、ひいては、継手構造の合理化を図ることができる。
縦リブ24は、継手プレート23と平行に配置されている。縦リブ24は、スキンプレート21に立設されており、スキンプレート21と主桁プレート22,22に固着されている。
第二の床版用鋼製セグメント30は、図4に示すように、中間杭(既設杭)Mが鋼殻躯体Bを貫通する位置に配設された鋼製セグメントであって、その前後左右には第一の鋼製セグメント20が配置されている。
第二の床版用鋼製セグメント30は、中間杭Mを挟むように付き合わされた二つのピース部材3A,3Bを接合することにより形成されている。第二の床版用鋼製セグメント30は、ピース部材3A,3Bを組み合わせることで、第一の床版用鋼製セグメント20と同じ外形となるように構成されている。
図5の(a)および(b)に示すように、ピース部材3A,3Bは、いずれもスキンプレート31と、前後一対の主桁プレート32,32と、継手プレート33と、主桁プレート32,32の間に設けられた複数の縦リブ34と、継手部材35と、を備えている。
スキンプレート31は、第二の床版用鋼製セグメント30の外殻(底)となるものであり、平面視矩形状を呈する鋼板からなる。このスキンプレート31は、一対の主桁プレート32,32と、継手プレート33と、縦リブ34とにより囲まれた部分の底部を遮蔽している。
一方、縦リブ34の他方のピース部材3B,3A側の底部には、図6の(a)に示すように、スキンプレート31が配設されておらず開口しており、主桁プレート32,32と縦リブ34とにより平面視コ字状を呈する凹部36が形成されている。
このように、ピース部材3A,3Bには、それぞれ凹部36が形成されているため、ピース部材3A,3Bを互いに突き合わせることで、中間杭Mを挿通する矩形状の開口部3Cが形成される。
開口部3Cは、図5の(a)に示すように、中間杭Mの外形寸法よりも大きく形成されているため、第二の床版用鋼製セグメント30の内周面と中間杭Mとの間には隙間が形成されている。
主桁プレート32は、スキンプレート31の前縁および後縁に立設されており、縦断方向に隣接する第一の床版用鋼製セグメント20の主桁プレート22に突き合わされる。主桁プレート32には、リング継手用の固定ボルトb1が挿通される。本実施形態では、固定ボルトb1を利用して、主桁プレート32を主桁プレート22に接合する。
継手プレート33は、スキンプレート31に立設された止水用の端面板33aと、端面板33aの前縁および後縁に配置された構造用の補強板33b,33bとを備えている。端面板33aは、同一のリング内において隣接する第一のセグメント20の継手プレート23に突き合わされる。端面板33aは、スキンプレート31と主桁プレート32,32に固着されている。補強板33bは、主桁プレート32の一方の縁部に配置されており、主桁プレート31および端面板33aの内面に固着されている。端面板33aおよび補強板33bには、セグメント継手用の固定ボルトb2が挿通される。本実施形態では、固定ボルトb2を利用して、引張接合方式により主桁プレート32を第一の床版用構成セグメント20の主桁プレート22に接続する。つまり、固定ボルトb2は、セグメント継手において、端面板23a,33aを接合するとともに、主桁プレート22,32同士を連結している。なお、固定ボルトb2には、初期導入軸力として、固定ボルトb2の降伏軸力の75%に相当する軸力を導入する。
なお、セグメント継手に目開きを生じさせるような力が作用した場合、主桁プレート32と固定ボルトb2との間の荷重伝達は、主として補強板33bを介して行われるようになる。「てこ反力」の支点を超えた部分(端面板33aだけの部分)は、上記荷重伝達に寄与しないので、端面板33aの薄肉化を図ることができ、ひいては、継手構造の合理化を図ることができる。
縦リブ34は、継手プレート33と平行に配置されている。縦リブ34は、スキンプレート31に立設されており、スキンプレート31と主桁プレート32,32に固着されている。
継手部材35は、主桁プレート32の他方の縁部(継手プレート33が設けられている縁部とは反対側の縁部)の内面に固着されている。継手部材35には、ボルト孔が多数形成されており、固定ボルトb3が挿通される。
一方のピース部材3Aの継手部材35と、これに突き合わされる他方のピース部材3Bの継手部材35とは、継手部材35,35を貫通する固定ボルトb3を利用して引張接合方式により接合されている。つまり、固定ボルトb3は、ピース部材3A,3B間において、継手部材35,35同士を接合するとともに、主桁プレート32,32同士を連結している。
固定ボルトb3の中心と主桁プレート32との離隔距離は、主桁プレート32の部材厚よりも小さくなるように設定する。この状態で継手部材35,35同士を固定ボルトb3により強固に締着すると、接合部での剛性低下を抑制することができ、隣り合う主桁プレート32,32を一体に連続した桁部材(剛性一様)としてみなすことができる。
ピース部材3A,3Bには、凹部36の内面に沿って定着部37が形成されている。つまり、主桁プレート32および縦リブ34の凹部36側の板面には、鋼板からなる定着部37が固着されている。定着部37は、予めピース部材3A,3Bに一体に形成されている。主桁プレート32に固着された定着部37は、左右方向に延在しており、縦リブ34に固着された定着部37は前後方向に延在している。
定着部37には、複数の貫通孔37a,37a,…が形成されており、後記する補強鉄筋38の固定が可能に構成されている。
このように、第二の床版用鋼製セグメント30は、ピース部材3A,3B同士が接合されることにより形成されている。また、第二の床版用鋼製セグメント30は、各継手プレート33を介して同一のリングに属する二つの第一の床版用鋼製セグメント20に接合され、各主桁プレート32を介して隣接する他のリングに属する第一の床版用鋼製セグメント20に接合される。なお、主桁プレート32と継手プレート33の外面には、シール材s1が貼着されている。
開口部3Cには、図6の(b)に示すように、コンクリート部3Dが形成されている。コンクリート部3Dは、中間杭Mの周囲を囲むように配筋された補強鉄筋38と、この補強鉄筋38を巻き込むように打設されたコンクリート硬化体39とにより形成されている。
なお、本実施形態では、図7に示すように、コンクリート部3Dを中壁Cと一体に形成している。
補強鉄筋38は、水平面に沿って配筋されているが、両端部が折り曲げられていて、定着部37の貫通孔37aに挿入(係止)されている。
本実施形態では、補強鉄筋38の両端部にネジ切りが施されており、ナットn1により各両端部が定着部37に螺着されている。
開口部3Cに打設されたコンクリート硬化体39は、補強鉄筋38とともにコンクリート部3Dを形成し、このコンクリート部3Dが、設計上、開口部3Cを遮蔽する板材として機能する。つまり、コンクリート部3Dは、補強鉄筋38を介して第二の床版用鋼製セグメント30と一体に固定されており、スキンプレート31とともに地下水圧や地盤反力等の外圧を受け持つ。
なお、凹部36の内壁面(開口部3Cの内周面)には、図6の(a)に示すように、水膨潤材s2が配設されており、第2の床版鋼製セグメント30とコンクリート部3Dとの境界からの地下水の浸入が防止されている。ここで、本実施形態では、水膨潤材s2として、シール材s1と比較して膨張率が小さいものを使用するが、水膨潤材s2の材質は限定されるものではない。
隅角部用鋼製セグメント40は、図4に示すように、床版部B1と側壁部B2とが交差する隅角部に配置されるものであり、第一の床版用鋼製セグメント20と側壁用鋼製セグメント50との間に介設されている。なお、本実施形態では、イモ組み状態となるように隅角部用鋼製セグメント40を並設しているので、複数の隅角部用鋼製セグメント40,40,…の上端面は、面一となる。
本実施形態の隅角部用鋼製セグメント40は、図5の(a)および(b)に示すように、外殻となるスキンプレート41と、スキンプレート41の前縁および後縁に設けられた主桁プレート42,42と、スキンプレート41の側縁および上縁に設けられた継手プレート43,43と、主桁プレート42,42の間に設けられた縦リブ44,44を備えている。また、図示は省略するが、主桁プレート42と継手プレート43の外面には、シール材が貼着されている。
スキンプレート41は、床付面T2(図1参照)に沿うように配置される鋼板と山留壁W(図1参照)に沿うように配置される鋼板とを繋ぎ合わせたものであり、断面L字状を呈している。
主桁プレート42は、スキンプレート41に対応してL字状を呈している。図5の(a)に示すように、主桁プレート42は、縦断方向に隣接する他の隅角部用鋼製セグメント40の主桁プレート42に突き合わされる。
継手プレート43,43は、いずれも、止水用の端面板43aと、端面板43aの前縁および後縁に配置された構造用の補強板43b,43bとを備えている。端面板43aは、同じリング内の床版用鋼製セグメント20または側壁用鋼製セグメント50に突き合わされる。
下段の側壁用鋼製セグメント50は、図4に示すように、その前後上下に他の鋼製セグメントが配置される普通タイプの鋼製セグメントであり、内側面(内空側の側面)が開口した箱状を呈している。
下段の側壁用鋼製セグメント50は、普通タイプの第一の床版用鋼製セグメント20と同様の構成を具備するものであり、図8の(a)および(b)に示すように、外殻となるスキンプレート51と、前後一対の主桁プレート52,52と、上下一対の継手プレート53,53と、主桁プレート52,52の間に設けられた複数の縦リブ54,54,…とを備えている。なお、図示は省略するが、主桁プレート52と継手プレート53の外面には、シール材が貼着されている。
下段の側壁用鋼製セグメント50は、各継手プレート53を介して、同一のリングに属する二つの鋼製セグメント(隅角部用鋼製セグメント40および第二の側壁用鋼製セグメント60)に接合され、各主桁プレート52を介して、隣接する他のリングに属する側壁用鋼製セグメント50に接合される。
上段の側壁用鋼製セグメント60は、図4に示すように、上コンクリート躯体の側壁部A2と鋼殻躯体Bの側壁部B2との境界部分に設置される境界設置タイプの鋼製セグメントであって、内側面が開口した箱状の本体部6Aと、上面が開口した有底角筒状の筒状部6Bとを備えている。本体部6Aは、同一のリングに属する第一の側壁用鋼製セグメント50に接合されるとともに、隣接する他のリングに属する側壁用鋼製セグメント60の本体部6Aに接合される。また、筒状部6Bは、隣接する他のリングに属する側壁用鋼製セグメント60の筒状部6Bに接合される。なお、図示は省略するが、主桁プレート62と継手プレート63の外面には、シール材が貼着されている。
上段の側壁用鋼製セグメント60は、図8の(a)に示すように、スキンプレート61、主桁プレート62、継手プレート63および縦リブ64に加えて、仕切プレート65と、応力伝達プレート66と、孔あき鋼板ジベル67,67,…と、貫通鉄筋68,68,…とを備えている。
スキンプレート61、主桁プレート62,62、継手プレート63および縦リブ64は、普通タイプの側壁用鋼製セグメント50のものと同様の構成を具備している。
すなわち、スキンプレート61は、本体部6Aおよび筒状部6Bの外殻となるものであり、主桁プレート62は、スキンプレート61の前縁および後縁に立設されている。また、継手プレート63は、スキンプレート61に立設された止水用の端面板63aと、端面板63aの前縁および後縁に配置された構造用の補強板63b,63bとを備えており、縦リブ64は、継手プレート63と平行に配置されている。
仕切プレート65は、本体部6Aと筒状部6Bとの境界に配置されるものである。本実施形態の仕切プレート65は、縦リブ64の上方に配置されており、かつ、継手プレート63と平行である。仕切プレート65は、補強板63bと同等の厚さを有する一枚の鋼板からなり、スキンプレート61と主桁プレート62,62とに固着されている。
応力伝達プレート66は、筒状部6Bの内側面を構成するものであり、スキンプレート61の上半部(筒状部6Bの外側面)に対向して配置されている。応力伝達プレート66は、鋼板からなる。応力伝達プレート66の前縁部および後縁部は、複数の固定ボルトb4を利用して、第一接続板62a,62aに接合され、応力伝達プレート66の下縁部は、複数の固定ボルトb4を利用して、第二接続板65aに接合される。なお、第一接続板62aは、主桁プレート62の側端に固着されており、第二接続板65aは、仕切プレート65の側端に固着されている。
孔あき鋼板ジベル67,67,…は、せん断伝達部材として機能するものであり、仕切プレート65よりも上側に配置されていて、筒状部6Bの内周面(スキンプレート61、主桁プレート62または応力伝達プレート66)に固着されている。スキンプレート61および応力伝達プレート66には、上下方向に延在する孔あき鋼板ジベル67,67,…が複数(本実施形態では四つ)並設されており、主桁プレート62には、横方向に延在する孔あき鋼板ジベル67,67,…が複数(本実施形態では三つ)並設されている。なお、同一面に配置された複数の孔あき鋼板ジベル67,67,…は、それぞれに設けた透孔が一直線上に並ぶように配置されている。
貫通鉄筋68は、孔あき鋼板ジベル67の透孔に挿通されている。スキンプレート61に沿って配置される複数の貫通鉄筋68,68,…は、いずれも前後方向(水平方向)に配筋されており、スキンプレート61に突設された複数の孔あき鋼板ジベル67,67,…と交差している。図示は省略するが、応力伝達プレート66に沿って配置される複数の貫通鉄筋についても同様である。主桁プレート62に沿って配筋される複数の貫通鉄筋68,68,…は、いずれも上下方向(鉛直方向)に配筋されており、主桁プレート62に突設された複数の孔あき鋼板ジベル67,67,…と交差している。
<上コンクリート躯体Aと鋼殻躯体Bとの接合部>
側壁接合部J1(上コンクリート躯体Aから鋼殻躯体Bへと遷移する区間)は、側壁主筋15やせん断補強筋17を筒状部5Bの内部空間(スキンプレート51と一対の主桁52,52と応力伝達プレート56とで囲まれた空間)に配筋した状態で、筒状部5Bの内部空間にコンクリート(図示略)を充填することによって形成されている。
すなわち、側壁接合部J1は、側壁用鋼製セグメント50の筒状部5B(スキンプレート51、一対の主桁52,52および応力伝達プレート56)と、筒状部5Bの内部空間に至る複数の側壁主筋15,15,…と、側壁主筋15と交差する方向に配筋された複数のせん断補強鉄筋17,17,…と、筒状部5Bの内部空間に充填されたコンクリートとによって構成されている。
なお、側壁接合部J1の構成は、これに限定されるものではない。
<中壁C>
中壁Cは、図1に示すように、コンクリート躯体Aと鋼殻躯体Bとの間に形成された壁部材であって、中間杭Mを巻き込んだ状態で形成されている。
中壁Cの上端部のコンクリート躯体Aとの接合部および下端部の鋼殻躯体Bとの接合部には、それぞれハンチ部C1、C2が形成されている。
中壁Cは、図7に示すように、鉄筋コンクリート構造(RC構造)であり、場所打ちコンクリートと補強鋼材(鉄筋)とによって構成されている。また、中壁Cは、中間杭Mが配置された位置においては、中間杭Mを巻き込んだ状態で部分的に鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC構造)を構成している。
本実施形態では、中壁主筋81、中壁横筋82、せん断補強筋83、ハンチ筋84、ハンチ横筋85などによってコンクリートが補強されている。
なお、中壁Cは、中間杭M同士の間に、プレキャスト部材を配設し、中間杭Mの周囲に打設された現場打ちコンクリート部分と一体化することにより形成してもよい。
中壁主筋81は、中壁Cの壁面に沿って配筋された補強鋼材であり、長手方向が上下方向となるように配筋されている。なお、中壁主筋81の下端部は、鋼殻躯体Bに入り込んでいる。
中壁横筋82は、中壁Cの壁面に沿って配筋された補強鋼材であり、長手方向が横方向となるように配筋されている。
せん断補強筋83は、中壁主筋82若しくは中壁横筋83と交差する方向に配筋された補強鋼材である。
ハンチ筋84およびハンチ横筋85は、ハンチ部C1,C2に配筋された補強鋼材である。ハンチ筋84の一方の端部(図7の(a)では上端部)は、中壁Cのコンクリートに定着されていて、他方の端部はコンクリート躯体Aまたは鋼殻躯体Bに挿入されている。
下側のハンチ部C2に配筋されたハンチ筋84は、図7の(a)に示すように、下側の端部が、第一の床版用鋼製セグメント20の継手プレート23と第二の床版用鋼製セグメント30の継手プレート33を貫通している。つまり、ハンチ筋84が、継手プレート23,33に係止されていることで、中壁Cと鋼殻躯体Bとの接合性が強化されている。
<地下構造物の構築方法>
本実施形態に係る地下構造物の構築方法は、図10に示すように、本設躯体の一部分となる上コンクリート躯体Aを形成し、上コンクリート躯体Aを山留め支保工として利用しつつ地盤を掘り下げた後、図11に示すように、上コンクリート躯体Aの下側に複数の鋼製セグメント20〜60を並設し、隣接する鋼製セグメント20〜60を接合することで、本設躯体の他の部分となる鋼殻躯体Bを形成する、というものである。
以下、図9乃至図12を参照して、本実施形態に係る地下構造物の構築方法をより詳細に説明する。
本実施形態に係る地下構造物の構築方法は、一次掘削工程と、第一の躯体構築工程と、二次掘削工程と、第二の躯体構築工程と、第三の躯体構築工程と、を含むものである。
一次掘削工程は、図9の(a)に示すように、山留壁W,Wの間の地盤を、コンクリート躯体Aの構築予定位置の下側まで掘り下げる工程である。なお、山留壁Wは、いわゆる柱列式連続地中壁である。山留壁Wを構築するには、地盤をアースオーガで掘削しつつ、原位置にて掘削土とセメントスラリーを混合・攪拌してソイルセメントを形成し、掘削孔からアースオーガを引き上げた後、ソイルセメントが固まらないうちに、芯材W1を地中(掘削孔)に建て込めばよい。
地盤を掘削する際には、芯材W1の内側にあるソイルセメントを削り取り、芯材W1を露出させる。芯材W1を露出させたならば、芯材W1にブラケットW2を設置する。
地盤を床付面T1まで掘り下げたら、山留壁W,Wの間に中間杭(既設杭)M,Mを構築する。なお、中間杭M,Mは、上コンクリート躯体Aの中間部分を仮受けするものであり、H形鋼を芯材とするソイルセメント杭からなる。
第一の躯体構築工程は、図9の(b)に示すように、コンクリート躯体Aを形成する工程である。第一の躯体構築工程では、まず、床付面T1上にスラブ型枠や梁型枠などを設置し、その上に下側のスラブ主筋14や縦梁主筋15(図2参照)などを配筋する。次に、横断鉄骨11をブラケットW2,W2間に架設し、横断鉄骨11の端面と山留壁の内壁面との間に、サポート部材11b(図2参照)を設置し、横断鉄骨11の横移動を拘束する。このとき、横断鉄骨11は、中間杭M,Mにより支持されている。また、側壁芯鉄骨12は、横断鉄骨11に予め接合しておく。
複数の横断鉄骨11,11,…を設置したら、縦断鉄骨13および繋ぎ材11a(図3参照)を設置し、さらに、図2に示す上側のスラブ主筋14、側壁主筋15、上側の縦梁主筋16、せん断補強筋17、ハンチ筋18などを配筋する。その後、コンクリートを打設し、所定強度に達するまで養生する。
而して、型枠を脱型すると、図10の(a)に示すように、山留め支保工を兼ねる上コンクリート躯体Aが出現する。なお、既設構造物の下方に地下構造物を構築する場合には、既設構造物を上コンクリート躯体Aに受け替える。
二次掘削工程は、図10の(b)に示すように、上コンクリート躯体Aの下側の地盤を床付面T2まで掘り下げる工程である。二次掘削工程では、上コンクリート躯体Aを山留め支保工として利用する。本実施形態では、上コンクリート躯体Aの下方に切梁Kを設置しているが、切梁Kの有無や段数等は、掘削深さ掘削幅等に応じて適宜設定すればよい。
床付面T2まで掘削したら、図示は省略するが、床付面T2および山留壁Wの内壁面に沿って防水シートを敷設し、防水シート上に保護モルタルおよび基礎コンクリートを打設する。
第二の躯体構築工程は、図11に示すように、上コンクリート躯体Aの下側に複数の鋼製セグメント20、30,40,50,60を並設し、これらを互いに接合することで鋼殻躯体Bを形成する工程である。第二の躯体構築工程には、鋼床版構築工程、鋼壁構築工程などが含まれている。
鋼床版構築工程は、図11の(a)に示すように、左右の床付面T2,T2の上に鋼殻構造の床版部B1を形成する工程である。鋼床版構築工程では、複数の床版用鋼製セグメント20,30および複数の隅角部用鋼製セグメント40をイモ組み状態となるように並設し、これらを互いに接合することで床版部B1を形成する。鋼製セグメントの設置作業は、例えば、セグメントを把持した状態で床付面T2上を自走可能なハンドリングマシンを利用して行うか、あるいは、セグメントを吊持可能な小型の揚重機械を利用して行えばよい。
また、中間杭M,Mに対応する箇所では、ピース部材3A,3Bを、中間杭Mの両側から挟むように配置した後、ピース部材3A,3B同士を引張接合方式により接合して、第二の床版用鋼製セグメント30を形成する。そして、第二の床版用鋼製セグメント30を隣接する第一の床版用鋼製セグメント20に接合することで、床版部B1を形成している。
セグメントを「イモ組み」する場合には、組立順序が制約され難くなるので、様々な組立順序を採用することできるが、例えば、三種類の鋼製セグメント20,30,40を横一列に並設し、横方向に隣接する鋼製セグメント20,30,40を互いに接合して横長の構造体を形成した後に、その前側または後側において他の鋼製セグメント20,30,40を横一列に並設し、横方向に隣接する鋼製セグメント20,30,40を接合するとともに、縦断方向に隣接する同種のセグメント同士を接合すればよい。なお、一種類のセグメントを縦断方向に並設した後に、その横において他種のセグメントを縦断方向に並設してもよい。
隣接するセグメント同士は、固定ボルトb1,b2(図5参照)を利用して接合する。本実施形態では、横断方向に隣接するセグメント同士(セグメント継手)を、固定ボルトb2を使用した引張接合方式により接合することで、セグメント継手における剛性低下を生じ難くさせて、剛性一様な構造体として設計する。
次に、開口部3Cに対して補強鉄筋38を配筋し、コンクリートを打設することによりコンクリート部3Dを形成する。補強鉄筋38の配筋に伴ない、中壁Cと鋼殻躯体Bとの接続部における中壁Cの中壁主筋81やハンチ筋84等の配筋もしておく。なお、コンクリート部3Dの形成は、後記する第三の躯体構築工程において、中壁Cの形成と同時に行ってもよい。
次に、隅角部用鋼製セグメント40と山留壁Wとの間の隙間にモルタルなどの裏込材71(図11の(b)参照)を注入する。
裏込材71が硬化すると、鋼製セグメント20,30を連設してなる構造体が山留め支保工として機能し得るようになるので、切梁Kを撤去することができる。
また、以後の作業を円滑に行えるよう、図11の(b)に示すように、第一の床版用鋼製セグメント20の内部および隅角部用鋼製セグメント30の内部に、間詰め材72を打設して、床版部B1の上面を平滑にする。なお、間詰め材72の種類や材質に制限はないが、本実施形態では、低コスト化を図るべく、非構造材料(例えば、貧配合のコンクリートや流動化処理土など)を使用している。
鋼壁構築工程は、山留壁Wに沿って鋼殻構造の側壁部B2を形成する工程である。鋼壁構築工程では、複数の側壁用鋼製セグメント50,60をイモ組み状態となるように並設し、これらを互いに接合することで側壁部B2,B2を形成する。隣接するセグメント同士は、固定ボルトb1,b2(図8参照)にて接合する。
鋼製セグメントの設置作業は、例えば、セグメントを把持した状態で間詰め材72上を自走可能なハンドリングマシンを利用して行うか、あるいは、セグメントを吊持可能な小型の揚重機械を利用して行えばよい。床版部B1の上面が平坦に均されており、かつ、施工機械の移動を妨げる切梁K(図11の(a)参照)が既に撤去されているので、鋼製セグメントの設置作業をスムーズに行うことができる。
なお、下段の側壁用鋼製セグメント50は、隅角部用鋼製セグメント40の上端面(図5の(b)に示す上側の継手プレート43)に載置する。本実施形態では、複数の隅角部用鋼製セグメント40,40,…の上端面の高さ位置が揃っているので(図4参照)、側壁用鋼製セグメント50を容易に設置することができる。
図示は省略するが、セグメントを千鳥組みにする場合には、複数の隅角部用鋼製セグメント40,40,…の上端面の高さ位置に高低差が生じ、低い方の隅角部用鋼製セグメント40の上に側壁用鋼製セグメント50を設置する際には、その両側の隅角部用鋼製セグメント40,40の間に挿入する必要があるので、両セグメントに設けたシール材が剥離等しないよう注意する必要がある。
上段の側壁用鋼製セグメント60は、応力伝達プレート56を取り付けない状態で、下段の側壁用鋼製セグメント50の上端面(図5の(b)に示す上側の継手プレート53)に載置する。本実施形態では、下段の側壁用鋼製セグメント50,50,…の上端面の高さ位置が揃っているので(図4参照)、上段の側壁用鋼製セグメント60を容易に設置することができる。
側壁用鋼製セグメント50,60を設置したら、図11に示すように、側壁用鋼製セグメント50,60と山留壁Wとの間の隙間にモルタルなどの裏込材73を注入し、側壁部B2の側部を拘束する。
続いて、側壁用鋼製セグメント60の筒状部6Bを形成する(筒状部形成工程)とともに、筒状部6Bの内側に側壁主筋15やせん断補強筋を配筋し、筒状部6Bの内部空間にコンクリートを充填する(コンクリート充填工程)。コンクリートを打設する際には、上コンクリート躯体Aを上下に貫通するコンクリート注入孔(図示略)を使用する。なお、コンクリートは、筒状部6Bの上縁まで打設する。
コンクリートが硬化したら、図12に示すように、コンクリートの上面と上コンクリート躯体Aの下面との間に、無収縮モルタル19を充填する。無収縮モルタル19を充填する際には、上コンクリート躯体Aを上下に貫通するモルタル注入孔(図示略)を使用する。なお、既設構造物を上コンクリート躯体Aに受け替えた場合には、既設構造物の重量が上コンクリート躯体Aを介して山留壁Wに作用することになるが、上コンクリート躯体Aと鋼殻躯体Bとが接合されると、上コンクリート躯体A、鋼殻躯体Bによって矩形枠状の構造体が形成されるようになり、当該構造体を介して既設構造物の重量の一部が床付面T2等に作用するようになるので、山留壁Wの負担を低減することが可能になる。
第三の躯体構築工程は、図12に示すように、中壁Cを形成する工程である。第三の躯体構築工程では、まず、中壁主筋81、中壁横筋82、せん断補強筋83、ハンチ筋84、ハンチ横筋85などを配筋し、その周囲に型枠を設置する。このとき、中間杭M,Mの周囲にも、鉄筋を配筋する。
その後、コンクリートを打設し、所定強度に達するまで養生する。
而して、型枠を脱型すると、図12に示すように、中壁Cが出現する。
その後、コンクリートの強度が所定強度に達した後、上コンクリート躯体Aの上側の空間に地盤材料を埋め戻すと、図1の状態となる。
本実施形態に係る地下構造物によれば、既設杭(中間杭M)との干渉が避けられない環境下において、床版構造に鋼製セグメントを用いることが可能となる。
そして、本設躯体の一部を鋼殻構造としているので、本設躯体の全体をコンクリート構造とする場合に比べて、コンクリートの使用量を削減することが可能となり、ひいては、鉄筋や型枠の数量を削減することが可能となる。
既設杭を残置させたまま、鋼製セグメントを配設することが可能なため、既設杭の盛り替え等に要する手間と費用を省略することができる。
第二の床版用鋼製セグメント30は、2つのピース部材3A,3Bに分割されることで主桁(主桁プレート32)も分割されるが、コーベル理論を適用した引張接合方式によるボルト接合によりピース部材3A,3B同士を接合しているため、一体の鋼製セグメントとしての性能を維持する。
既設杭(中間杭M)や鋼製セグメント等に施工誤差が生じた場合であっても、開口部3Cが、既設杭の外形に対して十分な隙間を有しているため、当該施工誤差を吸収した状態で第二の床版用鋼製セグメント30を配置することができる。
開口部3Cには、水圧や地盤反力等の外圧を担うスキンプレート31の代替としてコンクリート部3Dが一体に形成されているため、開口部3Cが弱点となることはない。
コンクリート部3Dは、補強鉄筋38の端部を定着部37に固定することで、鋼殻躯体Bと一体構造を形成する。
また、コンクリート部3Dと第二の床版用鋼製セグメント30との境界部分には、水膨潤材が配設されているため、背面からの地下水の浸入が防止されている。
また、本実施形態に係る地下構造物の構築方法によれば、コンクリート、型枠、鉄筋等の数量を削減することができるので、コンクリートの打設時間帯に制約があるような状況下であっても、あるいは、大型の揚重機械を使用できないような作業空頭であっても、工期の長期化を招き難くなる。
本実施形態では、鋼製セグメント20,30,40,50,60を、イモ組み状態となるように並設しているので、組立順序の自由度が高まり、ひいては、施工効率を向上させることが可能となる。なお、本実施形態では、隣接する鋼製セグメント同士を引張接合方式により接合することで、セグメント継手やリング継手での剛性低下を抑制することが可能となり、さらには、継手部の目開きを抑制することが可能となる。
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
A コンクリート躯体(上部躯体)
B 鋼殻躯体(下部躯体)
20 第一の床版用鋼製セグメント(セグメントピース)
30 第二の床版用鋼製セグメント(セグメントピース)
3A,3B ピース部材
3C 開口部
36 凹部
37 定着部
38 補強鉄筋
39 コンクリート硬化体
40 隅角部用鋼製セグメント(セグメントピース)
50,60 側壁用鋼製セグメント(セグメントピース)
M 中間杭(既設杭)
W 山留壁
T1,T2 床付面

Claims (6)

  1. 上部に形成された上部躯体と、
    前記上部躯体の下側に形成された下部躯体と、
    前記下部躯体を貫通する既設杭と、を有する地下構造物であって、
    前記下部躯体は、複数のセグメントピースを並設し、隣接する前記セグメントピース同士を接合することで形成されており、
    前記既設杭の位置に対応するセグメントピースは、前記既設杭を挟むように突き合された二つのピース部材を接合することにより形成されており、
    前記ピース部材は、底部に設けられたスキンプレートと、一対の主桁と、当該一対の主桁の間に設けられた縦リブと、を備えていて、
    前記二つのピース部材は、互いの前記主桁同士を接合することで接合されており、
    少なくとも一方の前記ピース部材には、他方の前記ピース部材側の端部に凹部が形成されていて、当該ピース部材同士を突き合わせたときに前記既設杭を挿通する開口部が前記一対の主桁の間に形成されることを特徴とする、地下構造物。
  2. 上部に形成された上部躯体と、
    前記上部躯体の下側に形成された下部躯体と、
    前記下部躯体を貫通する既設杭と、を有する地下構造物であって、
    前記下部躯体は、複数のセグメントピースを並設し、隣接する前記セグメントピース同士を接合することで形成されており、
    前記既設杭の位置に対応するセグメントピースは、前記既設杭を挟むように突き合された二つのピース部材を接合することにより形成されており、
    少なくとも一方の前記ピース部材には、他方の前記ピース部材側の端部に凹部が形成されていて、当該ピース部材同士を突き合わせたときに前記既設杭を挿通する開口部が形成されており、
    前記開口部には、前記既設杭の周囲を囲うように補強鉄筋が配筋されているとともに、前記補強鉄筋を巻き込むコンクリート硬化体が形成されており、
    前記ピース部材には前記凹部の内面に沿って定着部が形成されていて、前記補強鉄筋が前記定着部に固定されていることを特徴とする、地下構造物。
  3. 前記補強鉄筋は、端部にネジ切りが施されており、前記定着部にナットを介して螺着されていることを特徴とする、請求項2に記載の地下構造物。
  4. 前記ピース部材同士が、引張接合方式によるボルト接合により接合されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の地下構造物。
  5. 上部に形成された上部躯体と、
    前記上部躯体の下側に形成された下部躯体と、
    前記下部躯体を貫通する既設杭と、を有する地下構造物であって、
    前記下部躯体は、複数のセグメントピースを並設し、隣接する前記セグメントピース同士を接合することで形成されており、
    前記既設杭の位置に対応するセグメントピースは、前記既設杭を挟むように突き合された二つのピース部材を接合することにより形成されており、
    少なくとも一方の前記ピース部材には、他方の前記ピース部材側の端部に凹部が形成されていて、当該ピース部材同士を突き合わせたときに前記既設杭を挿通する開口部が形成されており、
    前記ピース部材の凹部の内壁面に沿って水膨潤材が設置されていることを特徴とする、地下構造物。
  6. 上部に形成された上部躯体と、
    前記上部躯体の下側に形成された下部躯体と、
    前記下部躯体を貫通する既設杭と、を有する地下構造物であって、
    前記下部躯体は、複数のセグメントピースを並設し、前後左右に隣接する前記セグメントピース同士を接合することで形成されており、
    前記既設杭の位置に対応するセグメントピースは、前記既設杭を挟むように突き合された二つのピース部材を接合することにより形成されており、
    少なくとも一方の前記ピース部材には、他方の前記ピース部材側の端部に凹部が形成されていて、当該ピース部材同士を突き合わせたときに前記既設杭を挿通する開口部が形成されることを特徴とする、地下構造物。
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