以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
ここでは、まず、本実施例による車両用駆動装置の説明に先立って、まず、本実施例による車両用駆動装置が適用されるのが好適な電動車両用のモータ駆動システムSMについて説明する。なお、電動車両用モータ駆動システムSMに関する図1の説明において、特に言及しない限り、各種の要素間の“接続”という用語は、“電気的な接続”を意味する。
図1は、モータ駆動システムSMの全体構成の一例を示す図である。モータ駆動システムSMは、高圧バッテリHBの電力を用いて回転電機1を駆動することにより車両を駆動させるシステムである。なお、電動車両は、電力を用いて回転電機1を駆動して走行するものであれば、その方式や構成の詳細は任意である。電動車両は、典型的には、動力源がエンジンと回転電機1であるハイブリッド自動車や、動力源が回転電機1のみである電気自動車を含む。以下、車両とは、特に言及しない限り、モータ駆動システムSMが搭載される車両を指す。
モータ駆動システムSMは、図1に示すように、高圧バッテリHB(電源の一例)、平滑コンデンサSCと、インバータIV(電力変換器の一例)、回転電機1、及びインバータ制御装置6Aを備える。
高圧バッテリHBは、電力を蓄積して直流電圧を出力する任意の蓄電装置であり、ニッケル水素バッテリ、リチウムイオンバッテリや電気2重層キャパシタ等の容量性素子を含んでよい。高圧バッテリHBは、典型的には、定格電圧が100Vを超えるバッテリであり、定格電圧が例えば288Vである。
インバータIVは、正極ラインと負極ラインとの間に互いに並列に配置されるU相、V相、W相の各アームを含む。U相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)Q1、Q2の直列接続を含み、V相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q3、Q4の直列接続を含み、W相アームはスイッチング素子(本例ではIGBT)Q5、Q6の直列接続を含む。また、各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、それぞれ、エミッタ側からコレクタ側に電流を流すようにダイオードD11~D16が配置される。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、MOSFET(metal oxide semiconductor field-effect transistor)のような、IGBT以外の他のスイッチング素子であってもよい。
回転電機1は、例えば3相の交流モータであり、U、V、W相の3つのコイル110の一端が中性点で共通接続される。U相コイルの他端は、スイッチング素子Q1、Q2の中点M1に接続され、V相コイルの他端は、スイッチング素子Q3、Q4の中点M2に接続され、W相コイルの他端は、スイッチング素子Q5、Q6の中点M3に接続される。スイッチング素子Q1のコレクタと負極ラインとの間には、平滑コンデンサSCが接続される。
インバータ制御装置6Aには、回転電機1を流れる電流を検出する電流センサ(図示せず)等の各種センサが接続される。インバータ制御装置6Aは、各種センサからのセンサ情報に基づいて、インバータIVを制御する。インバータ制御装置6Aは、例えばCPU、ROM、メインメモリ(全て図示せず)などを含み、インバータ制御装置6Aの各種機能は、ROM等に記録された制御プログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現される。インバータIVの制御方法は、任意であるが、基本的には、U相に係る2つのスイッチング素子Q1、Q2が互いに逆相でオン/オフし、V相に係る2つのスイッチング素子Q3、Q4が互いに逆相でオン/オフし、W相に係る2つのスイッチング素子Q5、Q6が互いに逆相でオン/オフする。
なお、図1に示す例では、モータ駆動システムSMは、単一の回転電機1を備えるが、追加のモータ(発電機を含む)を備えてもよい。この場合、追加のモータ(複数も可)は、対応するインバータと共に、回転電機1及びインバータIVと並列な関係で、高圧バッテリHBに接続されてもよい。また、図1に示す例では、モータ駆動システムSMは、DC/DCコンバータを備えていないが、高圧バッテリHBとインバータIVの間にDC/DCコンバータを備えてもよい。
高圧バッテリHBと平滑コンデンサSCとの間には、図1に示すように、高圧バッテリHBから電力供給を遮断するための遮断用スイッチSW1が設けられる。遮断用スイッチSW1は、半導体スイッチやリレー等で構成されてもよい。遮断用スイッチSW1は、常態でオン状態であり、例えば車両の衝突検出時等にオフとされる。なお、遮断用スイッチSW1のオン/オフの切換はインバータ制御装置6Aにより実現されてもよいし、他の制御装置により実現されてもよい。
図2は、一実施例(実施例1)による車両用駆動装置100の構成を示す断面図である。図2は、車両用駆動装置100の軸方向に沿う断面図であり、油路構造90の説明用に局所的に別の断面(紙面垂直方向の位置が異なる断面)で切断した部分P1からP3も併せて示されている。図3は、車両用駆動装置100のスケルトン図である。
車両用駆動装置100は、車輪の駆動力源となる回転電機1と、回転電機1と車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に設けられた駆動伝達機構10と、を備える。本実施例では、一例として、回転電機1及び駆動伝達機構10は、ケース2に収容される。また、本実施例では、一例として、駆動伝達機構10は、入力部材3と、カウンタギヤ機構4と、差動歯車機構5と、第1出力部材61及び第2出力部材62と、を備える。
回転電機1は、その回転軸心としての第1軸A1上に配置される。本実施例では、一例として、入力部材3も第1軸A1上に配置される。カウンタギヤ機構4は、その回転軸心としての第2軸A2上に配置される。差動歯車機構5は、その回転軸心としての第3軸A3上に配置される。本実施例では、一例として、第1出力部材61及び第2出力部材62も第3軸A3上に配置される。第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3は、互いに異なる仮想軸であり、互いに平行に配置される。
以下の説明では、上記の軸A1~A3に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、入力部材3に対して回転電機1が配置される側を「軸方向第1側L1」(第1側の一例)とし、その反対側を「軸方向第2側L2」(第2側の一例)とする。また、上記の第1軸A1、第2軸A2、及び第3軸A3のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合やどの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
本実施例では、一例として、ケース2は、ケース部材21と、第1カバー部材22と、第2カバー部材23とを含む。ケース部材21は、回転電機1及び駆動伝達機構10の径方向Rの外側を囲む筒状に形成される。第1カバー部材22及び第2カバー部材23は、径方向Rに沿って延在するように形成される。第1カバー部材22は、ケース部材21の軸方向第1側L1の開口を閉塞するように、ケース部材21の軸方向第1側L1の端部に固定される。第2カバー部材23は、ケース部材21の軸方向第2側L2の開口を閉塞するように、ケース部材21の軸方向第2側L2の端部に固定される。
本実施例では、ケース部材21は、周壁部とともに、隔壁部24を形成し、一ピースのケース部材により実現される。第1カバー部材22は、一ピースにより実現され、第2カバー部材23は、一ピースにより実現される。このようにして、本実施例では、ケース2は、実質的に3ピースの部材により形成される。これにより、上述した特許文献1に記載するような従来技術に比べて、ケース用部材のピース数を低減でき、効率的な低コスト化を図ることができる。
ケース部材21の隔壁部24は、ケース部材21の径方向Rの内側の空間であって、第1カバー部材22と第2カバー部材23との間の空間を2つの室SP1、SP2へと軸方向Lに区画するように形成される。本実施例では、一例として、隔壁部24と第1カバー部材22との間の室SP1(第1室の一例)には、回転電機1が配置される。そして、隔壁部24と第2カバー部材23との間の室SP2(第2室の一例)には、駆動伝達機構10が配置される。
回転電機1は、ステータ11とロータ12とを有する。なお、用語「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いる。
ステータ11は、非回転部材(例えば、ケース2)に固定されたステータコア111を有する。ロータ12は、ステータ11(ステータコア111)に対して回転可能なロータコア121と、ロータコア121と一体的に回転するように連結されたロータシャフト122と、を有する。本実施例では、一例として、回転電機1は回転界磁型の回転電機である。そのため、ステータコア111には、当該ステータコア111から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部112が形成されるようにコイル110が巻装される。そして、ロータコア121には、永久磁石123が設けられる。また、本実施例では、一例として、回転電機1はインナロータ型の回転電機であるため、ステータコア111よりも径方向Rの内側にロータコア121が配置される。そして、ロータコア121の内周面に、ロータシャフト122が連結される。
ロータシャフト122は、第1軸A1まわりに回転する。ロータシャフト122は、軸方向Lに沿って延在する筒状に形成される。本実施例では、一例として、ロータシャフト122は、第1ロータ軸受B1a及び第2ロータ軸受B1bを介して、ケース2に対して回転可能に支持される。具体的には、ロータシャフト122の軸方向第1側L1の端部が、第1ロータ軸受B1aを介して、ケース2の第1カバー部材22に対して回転可能に支持される。そして、ロータシャフト122の軸方向第2側L2の端部が、第2ロータ軸受B1bを介して、隔壁部24に対して回転可能に支持される。また、本実施例では、一例として、ロータシャフト122は、その軸方向Lの両端面が開放する。そして、ロータシャフト122の内部空間は、油が流動するロータ軸油路122aとして機能する。
入力部材3は、駆動伝達機構10の入力要素である。入力部材3は、入力軸31と、入力ギヤ32とを有する。
入力軸31は、第1軸A1まわりに回転する回転部材である。入力軸31は、軸方向Lに沿って延在するように形成される。本実施例では、一例として、入力軸31は、隔壁部24を軸方向Lに貫通する貫通孔に挿通される。そして、入力軸31の軸方向第1側L1の端部が、ロータシャフト122の軸方向第2側L2の端部と連結される。図示の例では、ロータシャフト122の径方向Rの内側に入力軸31が位置するように、入力軸31の軸方向第1側L1の端部がロータシャフト122の軸方向第2側L2の端部に挿入され、これらの端部同士がスプライン係合によって連結される。
本実施例では、一例として、入力軸31は、第1入力軸受B3a及び第2入力軸受B3bを介して、ケース2に対して回転可能に支持される。具体的には、入力軸31における、軸方向Lの中心部よりも軸方向第1側L1の部分であって、ロータシャフト122との連結部分よりも軸方向第2側L2の部分が、第1入力軸受B3aを介して、隔壁部24に対して回転可能に支持される。そして、入力軸31の軸方向第2側L2の端部が、第2入力軸受B3bを介して、第2カバー部材23に対して回転可能に支持される。
また、本実施例では、一例として、入力軸31は、その軸方向第2側L2の端面が開放した筒状に形成される。そして、入力軸31の内部空間は、機械式油圧ポンプ71からの油が流動する入力軸油路31aとして機能する。
入力ギヤ32は、回転電機1からの駆動力をカウンタギヤ機構4に伝達するギヤである。入力ギヤ32は、入力軸31と一体的に回転するように、入力軸31に連結される。本実施例では、一例として、入力ギヤ32は、入力軸31と一体的に形成される。また、本実施例では、一例として、入力ギヤ32は、第1入力軸受B3aと第2入力軸受B3bとの間に配置される。
カウンタギヤ機構4は、動力伝達経路において、入力部材3と差動歯車機構5との間に配置される。カウンタギヤ機構4は、カウンタ軸41と、第1カウンタギヤ42と、第2カウンタギヤ43とを有する。
カウンタ軸41は、第2軸A2まわりに回転する回転部材である。カウンタ軸41は、軸方向Lに沿って延在するように形成される。本実施例では、一例として、カウンタ軸41は、第1カウンタ軸受B4a及び第2カウンタ軸受B4bを介して、ケース2に対して回転可能に支持される。具体的には、カウンタ軸41の軸方向第1側L1の端部が、第1カウンタ軸受B4aを介して、隔壁部24に対して回転可能に支持される。そして、カウンタ軸41の軸方向第2側L2の端部が、第2カウンタ軸受B4bを介して、第2カバー部材23に対して回転可能に支持される。
本実施例では、一例として、カウンタ軸41は、その軸方向Lの両端面が開放した筒状に形成される。そして、カウンタ軸41の内部空間は、機械式油圧ポンプ71からの油が流動するカウンタ軸油路41aとして機能する。
第1カウンタギヤ42は、カウンタギヤ機構4の入力要素である。第1カウンタギヤ42は、入力部材3の入力ギヤ32と噛み合う。第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。本実施例では、一例として、第1カウンタギヤ42は、カウンタ軸41に対してスプライン係合によって連結される。また、本実施例では、一例として、第1カウンタギヤ42は、第1カウンタ軸受B4aと第2カウンタ軸受B4bとの間であって、第2カウンタギヤ43よりも軸方向第1側L1に配置される。ただし、変形例では、第1カウンタギヤ42は、第1カウンタ軸受B4aと第2カウンタ軸受B4bとの間であって、第2カウンタギヤ43よりも軸方向第2側L2に配置されてもよい(図3参照)。
第2カウンタギヤ43は、カウンタギヤ機構4の出力要素である。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、第1カウンタギヤ42よりも小径に形成される。第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に回転するように、カウンタ軸41に連結される。本実施例では、一例として、第2カウンタギヤ43は、カウンタ軸41と一体的に形成される。
差動歯車機構5は、回転電機1の側から伝達される駆動力を、第1出力部材61と第2出力部材62とに分配する。差動歯車機構5は、差動入力ギヤ51と、差動ケース52と、ピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ54と、第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56と、を備える。本実施例では、一例として、一対のピニオンギヤ54、並びに第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、いずれも傘歯車である。
差動入力ギヤ51は、差動歯車機構5の入力要素である。差動入力ギヤ51は、カウンタギヤ機構4の第2カウンタギヤ43と噛み合う。差動入力ギヤ51は、差動ケース52と一体的に回転するように、差動ケース52に連結される。本実施例では、一例として、差動入力ギヤ51に対して軸方向第1側L1に、回転電機1が配置される。
差動ケース52は、第3軸A3まわりに回転する回転部材である。本実施例では、一例として、差動ケース52は、第1差動軸受B5a及び第2差動軸受B5bを介して、ケース2に対して回転可能に支持される。具体的には、差動ケース52の軸方向第1側L1の端部が、第1差動軸受B5aを介して、隔壁部24に対して回転可能に支持される。そして、差動ケース52の軸方向第2側L2の端部が、第2差動軸受B5bを介して、第2カバー部材23に対して回転可能に支持される。
差動ケース52は、中空の部材である。差動ケース52の内部には、ピニオンシャフト53と、一対のピニオンギヤ54と、第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56とが収容される。
ピニオンシャフト53は、第3軸A3を基準とした径方向Rに沿って延在する。ピニオンシャフト53は、一対のピニオンギヤ54に挿通され、それらを回転可能に支持する。ピニオンシャフト53は、差動ケース52を貫通するように配置される。ピニオンシャフト53は、例えば棒状のピンの形態である係止部材58により差動ケース52に係止され、差動ケース52と一体的に回転する。
一対のピニオンギヤ54は、第3軸A3を基準とした径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態で、ピニオンシャフト53に取り付けられる。一対のピニオンギヤ54は、ピニオンシャフト53を中心として回転(自転)可能、かつ、第3軸A3を中心として回転(公転)可能に構成される。
第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、差動歯車機構5における分配後の回転要素である。第1サイドギヤ55と第2サイドギヤ56とは、互いに軸方向Lに間隔を空けて、ピニオンシャフト53を挟んで対向するように配置される。第1サイドギヤ55は、第2サイドギヤ56よりも軸方向第1側L1に配置される。第1サイドギヤ55と第2サイドギヤ56とは、差動ケース52の内部空間において、それぞれ周方向に回転するように構成される。第1サイドギヤ55及び第2サイドギヤ56は、一対のピニオンギヤ54に噛み合う。第1サイドギヤ55は、第1出力部材61と一体的に回転するように連結される。一方、第2サイドギヤ56は、第2出力部材62と一体的に回転するように連結される。
第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、車輪Wに駆動連結される。第1出力部材61及び第2出力部材62のそれぞれは、差動歯車機構5によって分配された駆動力を車輪Wに伝達する。
本実施例では、一例として、第1出力部材61は、第1車軸611を含む。第1車軸611は、軸方向第1側L1の車輪Wに駆動連結される。第1車軸611は、第1サイドギヤ55と一体的に回転するように連結される。なお、第1車軸611と第1サイドギヤ55との間に、中継部材(図示せず)が設けられてもよい。
また、本実施例では、一例として、第2出力部材62は、第2車軸621を含む。第2車軸621は、軸方向第2側L2の車輪Wに駆動連結される。第2車軸621は、第2サイドギヤ56と一体的に回転するように連結される。
次に、図2とともに、図4及び図5を参照して、インバータモジュールMJの配置と、インバータモジュールMJと回転電機1との間の電気的な接続構造について説明する。
図4は、ケース2の外観を概略的に示す斜視図であり、図5は、車両用駆動装置100の軸方向Lに垂直な概略断面図であり、L2側からL1側を視た室SP2を通る断面図である。なお、図4の説明では、車両に搭載した状態の車両用駆動装置100の鉛直方向を「上下方向V」とする。そして、上下方向Vの上側(V1側)の位置は、例えば、上方、上端等のように「上」を用いて表し、上下方向Vの下側(V2側)の位置は、例えば、下方、下端等のように「下」を用いて表す。また、上下方向Vに視て、軸方向Lに直交する方向を「奥行方向D」とする。そして、奥行方向Dにおいて、回転電機1に対して差動歯車機構5の側を「D1側」とし、その反対側を「D2側」とする。なお、D1側は、例えば車両前側に対応するが、車両後側に対応してもよい。
本実施例では、一例として、ケース2は、インバータケース部2aを含む。インバータケース部2aは、ケース2と一体に形成されてよい。すなわち、インバータケース部2aは、回転電機1が収容される室SP1を形成するケース部材21の側壁部により仕切られる態様で、当該ケース部材21と一体に形成されてよい。あるいは、インバータケース部2aの一部又は全部は、ケース部材21とは別体であり、ケース部材21に取り付けられてもよい。
インバータケース部2aは、図4に示すように、ケース2の上部に配置される。インバータケース部2aには、インバータモジュールMJが収容される。インバータモジュールMJは、上述したインバータIVやインバータ制御装置6A等を内蔵するモジュールであり、平滑コンデンサSCを更に内蔵してもよい。インバータケース部2aは、好ましくは、蓋部材25により外部に対して閉じられる。すなわち、インバータケース部2aは、閉塞空間を形成し、当該空間内にインバータモジュールMJが配置される。これにより、インバータモジュールMJに係るEMC(Electromagnetic Compatibility)対策を適切に実現できるとともに、空間共鳴等の問題も低減できる。
バスバー7U、7V、7Wは、ケース2内に延在する。バスバー7U、7V、7Wは、例えば板状の形態(例えば板金部材)であるが、断面が円形の導体線により実現されてもよい。バスバー7U、7V、7Wは、それぞれ、U相、V相、及びW相の各相に対応して設けられ、回転電機1からの各相の動力線(リード線)1U、1V、1W(図1も参照)に接合される。動力線1U、1V、1Wは、室SP1から室SP2内へと引き出されて、バスバー7U、7V、7Wに接続される。図5には、バスバー7U、7V、7Wと動力線1U、1V、1Wとの間の接合部9U、9V、9Wが模式的に示される。なお、バスバー7U、7V、7Wと動力線1U、1V、1Wとの間の接合は、例えばボルトの締付けにより実現されてよい。
バスバー7U、7V、7Wは、一端側がケース2の内部で動力線1U、1V、1Wに接合され、他端側がケース2の外部でインバータモジュールMJ内のインバータIV側のバスバー(図示せず)に接合される。なお、バスバー7U、7V、7Wは、インバータIVの中点M1、M2、M3(図1参照)まで延在してもよいし、他のバスバーを介してインバータIVの中点M1、M2、M3に電気的に接続されてもよい。
バスバー7U、7V、7Wは、接合部9U、9V、9Wを形成する部分が露出する態様で樹脂部(図示せず)により封止されてもよい。この場合、樹脂部は、バスバー7U、7V、7Wを保持する端子台の態様で、ケース2に固定されてよい。なお、図5では、バスバー7U、7V、7Wは、ケース2の上部に支持される。
なお、回転電機1からの動力線1U、1V、1Wは、ステータコア111に巻装されるコイル110に接合される。あるいは、動力線1U、1V、1Wは、ステータコア111のコイル110の一部として形成されてもよい。動力線1U、1V、1Wは、ステータコア111のコイル110と同じコイル線(例えば平角線)の形態であってもよい。あるいは、動力線1U、1V、1Wは、バスバー7U、7V、7Wと同様の板状の形態(例えば板金部材)であってもよいし、断面が円形の導体線により実現されてもよい。また、動力線1U、1V、1Wと、バスバー7U、7V、7Wとの間には、他のバスバー(中間バスバー)が介在されてもよい。この場合、中間バスバーも樹脂部により封止された形態であり、ケース2に固定されてよい。
なお、動力線1U、1V、1Wは、室SP2の上部に延在する。この場合、動力線1U、1V、1W及びバスバー7U、7V、7Wは、好ましくは、室SP2内の空気中に延在する。すなわち、動力線1U、1V、1W及びバスバー7U、7V、7Wは、室SP2の下方の油溜め部80(図11参照)よりも上方に位置する。この場合、動力線1U、1V、1W及びバスバー7U、7V、7Wのうちの一部だけが、油溜め部80よりも上方に位置してもよいし、全体が油溜め部80よりも上方に位置してもよい。この場合、油溜め部80に溜まる油内に混入しうる異物が動力線1U、1V、1W及びバスバー7U、7V、7Wに付着する等の不都合を防止できる。
このように図4及び図5に示すインバータモジュールMJと回転電機1との間の電気的な接続構造によれば、回転電機1の軸方向第2側L2の室SP2を利用して配線が実現されるので、室SP1の上部や室SP1の軸方向第1側L1で配線が実現される場合に比べて、ケース2の室SP1に係る体格の低減を図ることができる。
なお、図5に示す例では、カウンタギヤ機構4の軸心(第2軸A2)は、回転電機1の軸心(第1軸A1)及び差動歯車機構5の軸心(第3軸A3)の双方よりも下方に配置される。また、図5に示す例では、第1軸A1と第2軸A2と第3軸A3とが、上方から第1軸A1、第3軸A3、第2軸A2の順で配置される。
インバータモジュールMJは、差動歯車機構5の差動入力ギヤ51よりも軸方向第1側L1に配置されてもよい。また、インバータモジュールMJは、第1軸A1に対してD1側にオフセットして配置されてもよい。更に、インバータモジュールMJは、差動歯車機構5の軸心(A3)よりも上方に配置されてもよい。そして、インバータモジュールMJは、軸方向Lに視て、差動入力ギヤ51と重複する位置に配置されてもよい。なお、2つの要素の配置に関して、「特定方向に視て重複する」とは、当該特定方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
インバータモジュールMJの一部は、軸方向Lで回転電機1と差動入力ギヤ51との間に配置されてもよい。そして、インバータモジュールMJの一部は、上下方向Vに視て、カウンタギヤ機構4と重複する位置に配置されてもよい。
次に、図6を参照して、油に関連する構成について説明する。
図6は、図2に示した断面図に油の流れを矢印R1からR11で模式的に示す図である。
本実施例では、車両用駆動装置100は、動力伝達経路を伝わる駆動力により駆動される機械式油圧ポンプ71(オイルポンプの一例)を備えるものの、動力伝達経路から独立した専用の駆動力源により駆動される電動式油圧ポンプは備えていない。
機械式油圧ポンプ71は、ケース2内の油溜め部80(図11参照)に貯溜された油を汲み上げ、当該汲み上げた油を吐出するポンプである。本実施例では、一例として、機械式油圧ポンプ71は、ケース2に収容される。また、本実施例では、一例として、機械式油圧ポンプ71は、駆動伝達機構10が備える回転部材の回転によって駆動される。具体的には、機械式油圧ポンプ71は、カウンタ軸41のL2側端部に、カウンタ軸41と同軸に一体的に結合されるエクステンション軸711に設けられる。なお、機械式油圧ポンプ71は、例えばギアポンプの形態であってよい。なお、変形例では、機械式油圧ポンプ71は、カウンタ軸41のL1側端部に接続されてもよいし、差動歯車機構5の差動ケース52の回転により駆動されるように接続されてもよい。
本実施例では、車両用駆動装置100が備える油路構造90は、ケース2の第1カバー部材22内に形成される第1カバー油路91(第1油路の一例)と、ロータシャフト122内に形成されるロータ軸油路122a(第2油路の一例)と、ケース2の第2カバー部材23内に形成される第2カバー油路93(第3油路の一例)と、ケース部材21内に形成されるケース油路94とを含む。また、油路構造90は、その他、入力軸油路31aや、カウンタ軸油路41a等を含む。
第1カバー油路91は、軸方向Lに延在し、軸方向第2側L2の端部がケース油路94の軸方向第1側L1の端部に接続される。第1カバー油路91は、第1カバー部材22の上部(第1軸A1よりも上方)に形成される。第1カバー油路91は、P1部に示すように、軸方向第1側L1のコイルエンド部112に向けて径方向に開口する。具体的には、第1カバー部材22には、径方向の油穴911が形成され、油穴911の径方向外側は第1カバー油路91に接続され、径方向内側は室SP1に開口する。油穴911の径方向内側の開口部は、軸方向第1側L1のコイルエンド部112に径方向に対向する位置に形成される。
ロータ軸油路122aは、上述したように、ロータシャフト122の中空内部により実現される。ロータ軸油路122aは、軸方向第2側L2が入力軸油路31aに接続される。
第2カバー油路93は、径方向の油路931と、軸方向の油路932とを含む。径方向の油路931は、径方向R2延在し、一端が機械式油圧ポンプ71の吐出側に接続され、他端が軸方向の油路932に接続される。軸方向の油路932は、軸方向第2側L2が径方向の油路931に接続され、軸方向第1側L1がケース油路94に接続される(P3部参照)。軸方向の油路932は、第1軸A1よりも上方に形成される。
ケース油路94は、軸方向に延在し、軸方向第1側L1が第1カバー油路91に接続され、軸方向第2側L2が第2カバー油路93の軸方向の油路932に接続される。ケース油路94は、第1軸A1よりも上方に形成される。ケース油路94は、P2部に示すように、軸方向第2側L2のコイルエンド部112に向けて径方向に開口する。具体的には、ケース部材21には、径方向の油穴941が形成され、油穴941の径方向外側はケース油路94に接続され、径方向内側は室SP1に開口する。油穴941の径方向内側の開口部は、軸方向第2側L2のコイルエンド部112に径方向に対向する位置に形成される。
かかる油路構造90では、機械式油圧ポンプ71から吐出された油は、第2カバー油路93の径方向の油路931を通って上方へと流れ(矢印R1参照)、最上部にて第2カバー油路93の軸方向の油路932に流入する油を含む(矢印R2参照)。かかる油は、軸方向の油路932を軸方向に流れ、軸方向の油路932から連続的にケース油路94に流入する。ケース油路94に流入した油は、油穴941を介して、軸方向第2側L2のコイルエンド部112に径方向外側から供給(滴下)される(矢印R3参照)。これより、軸方向第2側L2のコイルエンド部112が冷却される。また、ケース油路94に流入した油のうちの、油穴941を通らずに軸方向に流れる油(矢印R4参照)は、軸方向第1側L1で第1カバー油路91に流入する。第1カバー油路91に流入した油は、油穴911を介して、軸方向第1側L1のコイルエンド部112に径方向外側から供給(滴下)される(矢印R5参照)。これより、軸方向第1側L1のコイルエンド部112が冷却される。
また、機械式油圧ポンプ71から吐出された油は、カウンタ軸油路41aに流入する油や、第2カバー油路93の径方向の油路931を通って上方へと流れ(矢印R1参照)、入力軸油路31aに流入する油を含む。かかる油は、入力軸油路31aを軸方向に流れ(矢印R7参照)、ロータ軸油路122aに流入する。ロータ軸油路122aに流入した油は、ロータ12の回転時の遠心力の作用によりロータシャフト122の内周面122dを伝って軸方向に流れ(矢印R9参照)、ロータコア121及び永久磁石123を径方向内側から冷却する。また、ロータ軸油路122aに流入した油は、ロータシャフト122を径方向Rに貫通するように形成された第1供給油路122b(油孔の一例)と第2供給油路122c(油孔の一例)とのそれぞれに流入する(矢印R8,R10参照)。ここで、第1供給油路122bは、ロータシャフト122の径方向Rに視て、軸方向第1側L1のコイルエンド部112と重複する位置に形成される。また、第2供給油路122cは、ロータシャフト122の径方向Rに視て、軸方向第2側L2のコイルエンド部112と重複する位置に形成される。そのため、ロータシャフト122の回転に伴い、第1供給油路122bと第2供給油路122cとのそれぞれから、対応するコイルエンド部112に向けて油が径方向内側から噴射される。そして、コイルエンド部112に付着した油によってコイルエンド部112が冷却される。第1供給油路122bと第2供給油路122cとのそれぞれから吐出される油は、直接的にコイルエンド部112に供給されてもよいし、図6に示すように、エンドプレートのような部材を介して供給されてもよい。
なお、このようにして各種の冷却対象部位の冷却に供された油は、ケース2のケース部材21の下部に形成された油路98を介して、油溜め部80(図11参照)へと戻される。油溜め部80に戻された油は、機械式油圧ポンプ71を介して再び第2カバー油路93等へと供給される。このようにして、油路構造90では、油が循環しながら各種の冷却対象部位を冷却する。なお、油路構造90を通る油は、各種の軸受(例えば第1ロータ軸受B1a等)の潤滑に利用されてよい。
ここで、このようにして油路構造90において循環される油は、オイルクーラ73により冷却される。オイルクーラ73は、例えば、油が流動する配管を備え、当該配管の外部を流動する冷媒(例えば、冷却水、空気等)と配管内の油との間で熱交換を行うことで、油を冷却するように構成される。このように、本実施例では、一例として、オイルクーラ73は、図6に模式的に示すように、ケース部材21における室SP2を形成する部分に設けられる。また、オイルクーラ73は、インバータケース部2aの近傍に設けられる。この場合、オイルクーラ73は、インバータモジュールMJ内を通る冷却水と、軸方向の油路932内の油との間の熱交換を実現できる。かかる配置によれば、インバータモジュールMJからオイルクーラ73へと冷却水を導くための経路の短縮を図ることができ、効率的な構成を実現できる。
なお、オイルクーラ73は、第2カバー油路93の軸方向第2側L2に設けられてもよい。ただし、この場合、車両用駆動装置100の全体としての軸方向Lの体格が、オイルクーラ73に起因して大きくなりやすい。この点、オイルクーラ73が、ケース2の上部であってインバータモジュールMJの近傍に設けられる場合、車両用駆動装置100の全体としての軸方向Lの体格の増加を招くことは実質的にない。
次に、図2及び図7A~図10を参照して、冷却水に関連する構成について説明する。
本実施例では、車両用駆動装置100は、ステータ11等を冷却するための冷却水が通る冷却水路13を更に有する。具体的には、ケース2のケース部材21には、冷却水が通る冷却水路13が形成される。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)である。冷却水路13を通る冷却水は、ケース部材21に径方向で当接するステータ11からの熱を奪うことができる。すなわち、ステータ11(及びそれに伴いコイル110)を冷却できる。
図7A~図7Dは、冷却水路13の説明図であり、具体的には、図7Aは、ケース2におけるケース部材21の部分を取り出した概略的な斜視図であり、図7Bは、図7Aにおけるケース部材21から、一部の表面部分(径方向外側の表面部分)を切除した概略的な斜視図であり、図7Cは、ケース部材21における冷却水路形成用の空間130内に、一部(いくつか)の第2仕切壁部135を挿入した状態を示し、図7Bと同様、図7Aにおけるケース部材21から、一部の表面部分(径方向外側の表面部分)を切除した概略的な斜視図である。また、図7Dは、第2仕切壁部135の単品状態の斜視図である。図8は、ケース2におけるケース部材21(及び冷却水路13)を周方向に展開したときの概略的な平面図であり、図9は、図8のラインC-Cに沿った概略的な断面図であり、図10は、図8に示す図に冷却水の流れを矢印R20で模式的に示す図である。なお、図8~図10は、外壁部214が切除された状態(図7C参照)でケース部材21を示す。また、図10には、第1カバー部材22(壁部222)が併せて模式的に示されている
ケース部材21の内部は、図2及び図7Aに示すように、冷却水路13を形成するための空間(キャビティ)130が円筒状に形成される。空間130は、ケース部材21の内壁部213と外壁部214との間(径方向の隙間)に形成される。内壁部213及び外壁部214は、ともに円筒状の形態であり、内壁部213が外壁部214よりも径方向内側に配置される。
径方向で内壁部213と外壁部214との間に形成される空間130は、円筒状であるが、ケース油路94に起因して周方向で分断され、当該分断により不連続となる。空間130は、軸方向第2側L2に向かうほど径方向の幅が小さくなる態様で形成されてよい(図2参照)。この場合、空間130が形成されるケース部材を鋳造で形成する場合、かかる空間130を形成するための型抜きが容易となる。すなわち、空間130を有するケース部材21は、例えば軸方向Lに対応する開閉方向となる金型を利用して容易に製造できる。
空間130(及びそれに伴い冷却水路13)は、図2に示すように、軸方向第2側L2で壁部212により閉塞される。なお、壁部212は、ケース部材21の一部である。空間130の周方向の延在範囲に対応して、周方向に連続的に延在する。
ケース部材21における空間130(及びそれに伴い冷却水路13)は、図2に示すように、軸方向第1側L1で軸方向に開口する。ただし、空間130(及びそれに伴い冷却水路13)は、軸方向第1側L1で第1カバー部材22により閉塞される。具体的には、第1カバー部材22は、円環状の壁部222を有し、壁部222は、空間130の軸方向第1側L1を塞ぐ。このようにして、ケース部材21に第1カバー部材22が組み付けられた状態(すなわちケース2が組み上がった状態)では、空間130は、軸方向Lの両側において、周方向全体にわたり閉塞される。
ケース部材21には、空間130に連通する冷却水の入口部131及び出口部132が形成される。入口部131及び出口部132は、径方向に空間130に連通する。
具体的には、入口部131は、径方向に延在し、径方向外側がケース部材21の外周面で開口し、径方向内側が空間130に開口する。入口部131は、図7Aに示すように、周方向でケース油路94に隣接して設けられてよい。また、入口部131は、ケース部材21における軸方向第1側L1に設けられてよい。
出口部132は、入口部131と同様、径方向に延在し、径方向外側がケース部材21の外周面で開口し、径方向内側が空間130に開口する。出口部132は、図7Aに示すように、周方向でケース油路94に隣接して設けられてよい。また、出口部132は、ケース部材21における軸方向第1側L1に設けられてよい。この場合、出口部132は、ケース油路94を挟んで入口部131と周方向で隣り合う。すなわち、冷却水路13は、ケース油路94を周方向に挟む位置に入口部131と出口部132とを有することになる。これにより、入口部131から導入される冷却水を、ケース部材21内の冷却水路13を通って軸まわりに周回させてから、出口部132から排出できる。この結果、ケース部材21の周方向に沿って冷却水による冷却機能を高めつつ、冷却水による周方向に沿った冷却機能の均一化を図ることができる。
なお、変形例では、入口部131と出口部132は、空間130に軸方向に連通する態様で設けられてもよい。例えば、第1カバー部材22に入口部131及び出口部132に係る流路が形成されてもよい。この場合、当該流路は、油穴911等に連通しない態様で形成される。なお、この場合、空間130は、当該入口部131と出口部132に係る局所的な位置で、軸方向に開口されてよい。
ケース部材21は、内壁部213と外壁部214との間に、径方向に延在する第1仕切壁部211を有する。第1仕切壁部211は、径方向内側が内壁部213に結合され、径方向外側が外壁部214に結合される。第1仕切壁部211は、軸方向Lの一部の範囲d1で空間130(及びそれに伴い冷却水路13)を周方向に分断する。第1仕切壁部211は、ケース部材21と一体に形成される。第1仕切壁部211は、軸方向第2側L2が壁部212に接続され、軸方向第1側L1がケース部材21の軸方向第1側L1の端面219よりも所定距離d2(第1距離の一例)だけ軸方向第2側L2の位置で終端する(図7B参照)。
また、ケース部材21における内壁部213と外壁部214との間には、第2仕切壁部135が設けられる。第2仕切壁部135は、径方向内側が内壁部213に当接され、径方向外側が外壁部214に当接される。第2仕切壁部135は、軸方向Lの一部の範囲d3で空間130(及びそれに伴い冷却水路13)を周方向に分断する。第2仕切壁部135は、軸方向第1側L1がケース部材21の軸方向第1側L1の端面219まで延在し、軸方向第2側L2が壁部212よりも所定距離d4(第2距離の一例)だけ軸方向第1側L1の位置で終端する。所定距離d4は、上述した所定距離d2と同様であってよい。第2仕切壁部135は、上述した第1仕切壁部211と周方向で交互に配置される。なお、周方向で隣り合う一の第1仕切壁部211と第2仕切壁部135との間の距離(周方向長)は、上述した所定距離d2と同様であってよい(図7C参照)。
ここで、軸方向Lで第2仕切壁部135と壁部212との間には空間130の一部が残るので、第2仕切壁部135は、第1仕切壁部211とは異なり、通常の鋳造ではケース部材21と一体に形成できない。従って、本実施例では、第2仕切壁部135は、ケース部材21とは別部材であり、ケース部材21に取り付けられる。ただし、変形例では、ケース部材21は、崩壊性中子を用いて形成されてもよい。この場合、第1仕切壁部211及び第2仕切壁部135を備えるケース部材21を一体的に形成できる。
第2仕切壁部135は、例えば、メタルガスケットにより形成される。第2仕切壁部135は、例えば図7D及び図9に示すように、軸方向の溝部215に嵌合されるように空間130内に挿入されることで、取り付けられてよい。この場合、第2仕切壁部135は、溝部215に嵌る凸条部1351を有する。これにより、第2仕切壁部135と外壁部214及び内壁部213との間の密着性が向上し、第2仕切壁部135の径方向両端面を乗り越えて周方向に流れる冷却水を効果的に低減できる。なお、溝部215は、ケース部材21の外壁部214と内壁部213の双方に形成されるが、一方だけに形成されてもよい。
このようして、本実施例では、冷却水路13は、第1仕切壁部211及び第2仕切壁部135により分断された空間130により形成される。すなわち、冷却水路13は、ケース部材21における第1軸A1まわりに、軸方向第1側L1の端部から軸方向第2側L2の端部まで軸方向に延在する複数の軸方向水路13A(図8参照)を含む。そして、複数の軸方向水路13Aは、軸方向第1側L1の端部又は軸方向第2側L2の端部で互いに連通する。すなわち、周方向で第1仕切壁部211の両側の軸方向水路13Aは、軸方向第1側L1の端部(所定距離d2の区間)で周方向に連通し、周方向で第2仕切壁部135の両側の軸方向水路13Aは、軸方向第2側L2の端部(所定距離d4の区間)で周方向に連通する。従って、冷却水路13は、軸方向第1側L1と軸方向第2側L2との間で蛇行する形態で第1軸A1まわりを周回する。具体的には、入口部131から導入される冷却水は、図10に矢印R20で示すように、軸方向第1側L1と軸方向第2側L2との間で蛇行する形態で第1軸A1まわりを周回して、出口部132から排出される。これにより、ケース部材21の全周にわたって軸方向Lに沿って均等に冷却水を流すことができる。この結果、ステータ11を均等に冷却できる。
次に、図11を参照して、上述した油路構造90による油冷と冷却水路13による水冷の全体を説明する。
図11は、車両用駆動装置100の冷却構造に関する全体構成を概略的に示す図である。
図11に示す例では、冷却水路13は、インバータモジュールMJ内に連通する。具体的には、ウォーターポンプ78は、インバータモジュールMJ、冷却水路13、及びオイルクーラ73をこの順で通過するように、冷却水を循環させる(矢印R120~矢印R122参照)。オイルクーラ73からの冷却水は、ラジエータ79により冷却される。なお、ラジエータ79は、空気(例えば車両の走行時に通過する空気)と冷却水との間で熱交換を実現するものであってよい。なお、ウォーターポンプ78やラジエータ79の位置は、図11に示す位置に限られず、例えば、ウォーターポンプ78は、オイルクーラ73とラジエータ79の間に設けられてもよい。このようにして、図11に示す例では、冷却水は、インバータモジュールMJ内にてパワーモジュール(図示せず)のような発熱素子の熱を奪い、ついで、冷却水路13にてステータ11の熱を奪い、ついで、オイルクーラ73にて油路構造90内の油の熱を奪ってから、ラジエータ79にて冷却される。この場合、インバータモジュールMJ(及びそれに伴いパワーモジュール)は、ラジエータ79に対して最も上流側に配置されるので冷却水により効果的に冷却される。また、図11に示す例では、ケース部材21内の冷却水路13は、ラジエータ79に対してインバータモジュールMJ(及びそれに伴いパワーモジュール)の次に上流側に配置されるので、ステータ11を効果的に冷却できる。ただし、変形例では、ラジエータ79に対して上流側から順に、冷却水路13及びインバータモジュールMJが設けられてもよい。また、更なる他の変形例ではラジエータ79からの循環経路が、インバータモジュールMJへの経路と、冷却水路13への経路へと分岐してもよい。この場合、インバータモジュールMJからの分岐路と、冷却水路13から分岐路は、合流してから、ラジエータ79に導かれてよい。
また、図11に示す例では、油路構造90内の油は、ラジエータ79からの冷却水が通るオイルクーラ73にて冷却されるので、上述した各種冷却対象部位を適切に冷却できる。具体的には、機械式油圧ポンプ71から吐出される油は、オイルクーラ73にて冷却されてから、コイルエンド部112に向けて径方向外側から供給される(矢印R110参照)。また、機械式油圧ポンプ71から吐出される油は、コイルエンド部112に向けて径方向内側から供給される(矢印R111参照)。これにより、コイルエンド部112を径方向両側から効果的に冷却できる。このようしてコイルエンド部112の冷却に供された油は、落下して油溜め部80に溜まる(矢印R112参照)。そして、油溜め部80内の油は、機械式油圧ポンプ71によりストレーナ74等を介して(矢印R113参照)、再び、コイルエンド部112等へと吐出される。
このように、本実施例によれば、油によりコイルエンド部112を径方向両側から効果的に冷却するとともに、冷却水によりステータ11を径方向外側から効果的に冷却することができる。また、油は、ロータ軸油路122aを通されるので、ロータコア121及び永久磁石123を径方向内側から冷却できる。このようにして、本実施例によれば、回転電機1全体を効率的に冷却できる。
また、ステータ11の冷却に供される冷却水は、インバータモジュールMJの冷却に供される冷却水と同じであるので、これらを別個独立に循環させる場合に比べて、簡易な構成を実現できる。すなわち、一のウォーターポンプ78を利用して、冷却水によりステータ11及びインバータモジュールMJを冷却できる。
なお、図11に示す例では、オイルクーラ73は、機械式油圧ポンプ71とケース部材21との間の油路(例えば図6に示すような油路932)に設けられるが、これに限られない。例えば、オイルクーラ73は、ストレーナ74と機械式油圧ポンプ71との間に設けられてもよいし、機械式油圧ポンプ71とロータ軸油路122aとの間に設けられてもよい。
以上説明した本実施例によれば、とりわけ、以下のような優れた効果が奏される。
本実施例によれば、上述したように、上述したように、周壁部を形成するケース部材21に、冷却水路13が形成され、冷却水路13は、軸方向第1側L1のみ軸方向に開口し、軸方向第2側L2はケース部材21の部位により閉塞される。これにより、冷却水路13の軸方向第2側L2を閉塞するためのカバー部材が不要となり、ケース2を3つのピースから形成可能となる。この結果、ケース2用の部品点数を低減することで、コスト低減を図ることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、冷却水路13は、軸方向で軸方向第1側L1と軸方向第2側L2との間を行き来しながら、第1軸A1まわりを周回する態様で形成される。これにより、ステータ11に対する冷却水による冷却性能を周方向に沿ってかつ軸方向に沿って均一化を図ることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、コイル110とインバータモジュールMJとの間の電気的な配線は、室SP2を介して実現される。これにより、室SP1の上部や室SP1の軸方向第1側L1から同電気的な配線を実現する場合に比べて、冷却水路13の配置の自由度を高めることができる。すなわち、冷却水路13は、配線用のスペース等を考慮せずに形成できるので、冷却に最適な形成範囲で形成できる。また、かかる配線に起因して、ケース部材21における室SP1まわりの、他の周辺要素(図示せず)のレイアウトに有意な制約が生じる可能性を低減できる。すなわち、ケース部材21における第1室を形成する部分まわりに他の周辺要素の搭載スペースを確保しやすくなる。
また、本実施例によれば、上述したように、機械式油圧ポンプ71により吐出される油が、ロータシャフト122の中空の内部(ロータ軸油路122a)に供給されるので、ロータ12の回転時に、ロータコア121(及びそれに伴い、ロータコア121に設けられうる永久磁石123)に対する冷却能力を確保できる。また、ロータ12の非回転時は、機械式油圧ポンプ71が油を供給できなくなるが、この場合も、冷却水路13を介してステータコア111及びコイル110を径方向外側から冷却できる。また、ロータ12の非回転時は、ロータコア121に対する冷却の必要性が比較的低いので、機械式油圧ポンプ71からの油の供給の停止は実質的な不都合を生じない。このようにして、本形態によれば、回転電機1に対する冷却能力を適切に確保しつつ、電動式油圧ポンプを廃してコスト低減を図ることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、油路構造90と冷却水路13が設けられるので、油路構造90によりコイルエンド部112を効果的に冷却しつつ、冷却水路13によりステータ11を効果的に冷却できる。これにより、油路構造90のみによりコイルエンド部112を冷却する場合に比べて、ステータ11に対する冷却能力を更に高めることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、冷却水路13は、インバータモジュールMJ内に連通するので、インバータモジュールMJ内に連通する冷却水を利用してステータ11を冷却できる。すなわち、冷却水路13への冷却水の供給を効率化できる。
また、本実施例によれば、上述したように、オイルクーラ73がインバータモジュールMJの近傍に配置されるので、オイルクーラ73とインバータモジュールMJとの間の冷却水用の管路の接続が容易かつ効率的となる。
また、本実施例によれば、上述したように、ケース部材21にケース油路94が形成されるので、ケース油路94を介して軸方向第1側L1と軸方向第2側L2との間で油を通すことができる。また、ケース油路94は、ケース部材21における冷却水路13の形成範囲に対して有意な制約を与えることなく、第1軸A1よりも上側(例えば天頂部)に形成できる。また、ケース油路94は、第1軸A1よりも上側(例えば天頂部)に形成されるので、第1軸A1よりも上側(例えば天頂部)に形成されるのが好適な油穴911を有する第1カバー油路91との接続や、第1軸A1よりも上側(例えば天頂部)に形成されるのが好適な油穴941との接続が容易となる。
また、本実施例によれば、上述したように、冷却水路13は、ケース油路94を周方向に挟む位置に入口部131と出口部132とを有する。この場合、ケース油路94と冷却水路13とを、ケース部材21において効率的に配置できる。また、ケース油路94と冷却水路13とが近接するので(すなわち周方向で隣り合うので)、当該近接した箇所での熱交換を実現できる。
また、本実施例によれば、上述したように、ケース油路94は、ステータ11の上下方向の中心位置(第1軸A1の位置)よりも上側を通り、かつ、第1カバー油路91に連通する。この場合、第1カバー油路91を、コイルエンド部112に向けて油を滴下させるのに好適な比較的上方(例えば天頂部付近)に形成した場合でも、当該第1カバー油路91にケース油路94を、効率的に連通させることができる。
また、本実施例によれば、上述したように、機械式油圧ポンプ71は、カウンタギヤ機構4のカウンタ軸41における軸方向第2側L2の端部に設けられる。この場合、機械式油圧ポンプ71から吐出される油を、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1へと導きながら、各種冷却対象部位を冷却できる。
また、本実施例によれば、上述したように、機械式油圧ポンプ71により吐出される油は、第2カバー油路93、ケース油路94、第1カバー油路91、及びロータ軸油路122aの順に、流れる。この場合、機械式油圧ポンプ71により吐出される油を第2カバー油路93、ケース油路94、第1カバー油路91、及びロータ軸油路122aの順へと導きながら、各種冷却対象部位を効率的に冷却できる。
次に、図12を参照して、他の実施例について説明する。以下、区別のため、上述した実施例を、「実施例1」とも称し、本実施例を、「実施例2」とも称する。
図12は、実施例2による車両用駆動装置100Aの構成を示す断面図である。
実施例2による車両用駆動装置100Aは、上述した実施例1による車両用駆動装置100に対して、ケース2がケース2Aで置換され、かつ、入力軸31が入力軸31Aで置換された点が主に異なる。実施例2によるケース2Aは、上述した実施例1によるケース2に対して、第1カバー部材22が第1カバー部材22Aで置換された点が異なる。
第1カバー部材22Aは、径方向の油路912が形成される点が、上述した実施例1による第1カバー部材22と異なる。径方向の油路912は、径方向に延在し、径方向内側がロータ軸油路122aに接続され、径方向外側が第1カバー油路91(軸方向の油路)に接続される。
入力軸31Aは、上述した実施例1による入力軸31に対して中実である点が異なる。すなわち、入力軸31Aは、入力軸油路31aを有していない。この場合、機械式油圧ポンプ71から吐出された油は、第2カバー油路93、ケース油路94、第1カバー油路91、及び径方向の油路912を介してロータ軸油路122aに供給される。
このような本実施例2による油路構造90Aによっても、上述した実施例1による油路構造90と同様の効果が奏される。特に本実施例によれば、オイルクーラ73により冷却された油が、油溜め部80を介さずに、ロータ軸油路122aに供給されるので、ロータ軸油路122aを介した油の冷却能力を高めることができる。
なお、本実施例2では、上述した実施例1と同様に、機械式油圧ポンプ71から吐出された油は、軸方向第2側L2から軸方向第1側L1へと供給されるが、これに限られない。例えば、機械式油圧ポンプ71から吐出された油は、径方向の油路912を介して第1カバー油路91及びケース油路94に供給されるとともに、径方向の油路912を介してロータ軸油路122aに供給されてもよい。この場合、例えば、機械式油圧ポンプ71は、カウンタ軸41のL1側端部に接続されてもよい。また、この場合、オイルクーラ73は、機械式油圧ポンプ71と径方向の油路912との間に設けられてもよい。
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。