JP7482803B2 - 柱梁架構 - Google Patents
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Description
そこで、以下の特許文献1、2のように、梁端部側の梁主筋の強度を、梁中央部側の梁主筋の強度よりも高くすることによって、降伏ヒンジの発生位置を梁端部と柱梁仕口部の境界面から梁中央側に移動させること(ヒンジリロケーション)が提案されている。
特許文献2には、梁に配筋された梁主筋と、梁端部および柱梁仕口部に跨って配筋された補強筋と、を備える柱梁架構が示されている。補強筋の先端には、定着板が設けられている。
第1の発明の柱梁架構(例えば、後述の柱梁架構1)は、鉄筋コンクリート造の柱(例えば、後述の柱10)と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁(例えば、後述の梁20)と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、前記梁の梁主筋(例えば、後述の梁主筋30)は、前記柱の柱梁接合部(例えば、後述の柱梁接合部11)を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋(例えば、後述の第1梁主筋30A)と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋(例えば、後述の第2梁主筋30B)と、で構成され、前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋(例えば、後述の上側一段目主筋31、下側一段目主筋33)と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋(例えば、後述の上側二段目主筋32、下側二段目主筋34)と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋(例えば、後述のスタラップ40)を複数本束ねた束ね筋(例えば、後述の束ね筋41)が設けられることを特徴とする。
また、ヒンジリロケーションにより、ヒンジ位置が梁中央部側に移動し、梁端部が非ヒンジ領域となる。そこで、この発明によれば、この非ヒンジ領域である梁端部に貫通孔を設け、貫通孔とカットオフ筋の先端に設けた定着部材との間に束ね筋を複数配置した。
貫通孔の近傍に束ね筋を設けることにより、以下の効果がある。すなわち、貫通孔は鉄筋コンクリート躯体の断面欠損であるため、この貫通孔の周囲には大きなせん断応力が集中し、鉄筋コンクリート躯体の損傷が大きくなる。そこで、貫通孔の近傍に束ね筋を設けることにより、貫通孔の際から伸展するひび割れを防止できる。
また、定着部材の近傍に束ね筋を設けることにより、以下の効果がある。すなわち、梁のせん断伝達機構におけるトラス機構のコンクリート圧縮力により、定着部材の近傍には大きな圧縮力が集中する。この圧縮力に対して、束ね筋が負担する引張力によって抵抗することが可能となる。この束ね筋の引張力によって、梁中央部側から伝達される圧縮力(せん断力)が貫通孔の上側または下側に伝達されるので、貫通孔周辺の圧縮力すなわち貫通孔をせん断破壊させる力の流れを緩和でき、鉄筋コンクリート躯体の損傷が軽減される。
また、略コの字形状の一対の折り曲げ筋を対向配置して結束することで、略ロの字形状の上側拘束筋および下側拘束筋を形成した。折り曲げ筋は略コの字形状であるため、梁の両側から差し込んで取り付けることができ、施工性が高くなる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄筋コンクリート造の柱梁架構1の側面図である。図2は、図1の柱梁架構1の破線Aで囲んだ部分の配筋状況を示す縦断面図である。図3(a)は、図2の柱梁架構1のB-B断面図であり、図3(b)は、図2の柱梁架構1のC-C断面図であり、図4は、図2の柱梁架構1のD-D断面図である。
鉄筋コンクリート造の柱梁架構1は、鉄筋コンクリート造の複数の柱10と、これら柱10の柱梁接合部11に接合された鉄筋コンクリート造の梁20と、を備える。
柱10には、柱主筋12と、この柱主筋12を囲んで所定間隔おきに設けられたせん断補強筋としてのフープ13と、を備える。
以下、ヒンジ位置Hよりも柱10側の領域(非ヒンジ領域)を梁端部20Aとし、ヒンジ位置Hよりも梁中央部側の領域(ヒンジ領域)を梁中央部20Bとする。
第1梁主筋30Aは、梁20の上端側に配置される上側一段目主筋31と、上側一段目主筋31の内側つまり梁20の内部側に配置される上側二段目主筋32と、梁20の下端側に配置される下側一段目主筋33と、下側一段目主筋33の内側つまり梁20の内部側に配置される下側二段目主筋34と、を備える。
束ね筋41は、梁端部20Aの貫通孔21と定着金物35との間に2つ配置されている。すなわち、束ね筋41は、一段目主筋31、33と二段目主筋32、34とを囲んで配置されている。一方の束ね筋41は、貫通孔21の近傍に配置され、他方の束ね筋41は、定着金物35(ヒンジ位置)の近傍に配置されている。これら束ね筋41には、685N/mm2以上の降伏強度を有する高強度鉄筋が用いられている。
上述の柱梁架構1を模して、実施例として貫通孔を設けた縮小鉄筋コンクリート試験体を製作し、荷重(せん断力)を加える柱梁架構実験を行った。この試験体の配筋状況を、図6に示す。図6(a)は、試験体全体の配筋状況であり、図6(b)は、試験体の断面図である。図6に示すように、スタラップ(せん断補強筋)として、高強度鉄筋SBPD1275/1420を用いて、束ね筋はこのスタラップを2本束ねたものとした。また、試験体の柱梁接合部の強度低下率βj=1.2、試験体に用いるコンクリートの圧縮強度Fc=42(実験時実強度σB=51)N/mm2とした。
その結果、試験体の破壊状況は、図7のようになった。図7は、-1/100rad時における試験体の破壊状況である。また、ヒンジ位置におけるひずみ分布(せん断力Qと相対変位δとの関係)は、図8および図9のようになった。図8は、定着部材の近傍に設けた束ね筋の位置(ヒンジ位置)のひずみ分布の推移であり、図9は、貫通孔の近傍に設けた束ね筋の位置(貫通孔際)のひずみ分布の推移である。
図8および図9より、試験体のヒンジ位置で回転変形が発生し、ひずみが増大しても、ひずみ量が降伏ひずみεyeを超えることはなく、弾性挙動を示すことが判る。よって、地震荷重相当の荷重を加えた実験終了に至るまで、束ね筋が試験体内に生じるせん断応力を負担し、鉄筋の降伏を回避できている。
図8(b)および図9(b)に示すように、貫通孔際のひずみは、貫通孔周辺にひび割れが発生した直後から急激に増加している。これは、貫通孔際の束ね筋の負担応力が増大していることを示している。
また、実験終了時には、ヒンジ位置のひずみ量は2000μ程度にととまったが、貫通孔際のひずみ量は3500μ程度になった。これにより、貫通孔際の束ね筋が、ヒンジ位置の束ね筋より高いせん断力を負担していることが判る。よって、束ね筋を貫通孔際およびヒンジ位置に配置することによって、柱梁架構の耐震性能(特に変形性能)を向上できることが判る。また、貫通孔際の束ね筋は、貫通孔周辺のひびわれを低減させるために有効であることが確認できた。
(1)一段目主筋31、33および二段目主筋32、34を囲んで配置されたスタラップ40を複数本束ねて束ね筋41とし、この束ね筋41を梁端部20Aに設けたので、束ね筋41が梁端部20Aに作用するせん断力を負担し、ひび割れの進展を抑制できる。
具体的には、ヒンジ位置の近傍に束ね筋41を設けることで、非ヒンジ領域である梁端部20Aにおける躯体損傷を低減できる。また、貫通孔21の近傍に束ね筋41を設けることで、この束ね筋41が非ヒンジ領域である梁端部20Aのせん断力を負担し、貫通孔21を起因とする躯体損傷を低減できる。
また、第1梁主筋30Aを、第2梁主筋30Bに比べて、高強度としたので、梁端部20Aにおける鉄筋の降伏が防止されるため、鉄筋コンクリートの曲げ耐力が向上し、コンクリートのひびわれを低減できる。また、梁20の変形能力を高めることができる。
貫通孔21の近傍に束ね筋41を設けることにより、以下の効果がある。すなわち、貫通孔21は鉄筋コンクリート躯体の断面欠損であるため、この貫通孔21の周囲には大きなせん断応力が集中し、鉄筋コンクリート躯体の損傷が大きくなる。そこで、貫通孔21の近傍に束ね筋41を設けることにより、貫通孔21の際から伸展するひび割れを防止できる。
また、定着金物35の近傍に束ね筋41を設けることにより、以下の効果がある。すなわち、梁20のせん断伝達機構におけるトラス機構のコンクリート圧縮力により、定着金物35の近傍には大きな圧縮力が集中する。この圧縮力に対して、束ね筋41が負担する引張力によって抵抗することが可能となる。この束ね筋41の引張力によって、梁中央部20B側から伝達される圧縮力(せん断力)が貫通孔21の上側または下側に伝達されるので、貫通孔21周辺の圧縮力すなわち貫通孔21をせん断破壊させる力の流れを緩和でき、鉄筋コンクリート躯体の損傷が軽減される。
また、略コの字形状の一対の折り曲げ筋36を対向配置して結束することで、略ロの字形状の上側拘束筋42および下側拘束筋43を形成した。折り曲げ筋36は略コの字形状であるため、梁20の両側から差し込んで取り付けることができ、施工性が高くなる。
図10は、本発明の第2実施形態に係る柱梁架構1Aの配筋状況を示す縦断面図である。
本実施形態では、第1梁主筋30Aの一段目主筋31、33が定着部材としての機械式継手37で接合される点、および、上側拘束筋42および下側拘束筋43が設けられていない点が、第1実施形態と異なる。本実施形態では、第1梁主筋30Aには、第2梁主筋30Bと比べて、高強度の鉄筋を用いる。また、機械式継手37としては、例えば、フリージョイント、エースジョイント、またはボルトップス(東京鉄鋼株式会社製)がある。
なお、これに限らず、第1梁主筋30Aに、第2梁主筋30Bと比べて、太径の鉄筋を用いてもよいし、太径かつ高強度の鉄筋を用いてもよい。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
図11は、本発明の第3実施形態に係る柱梁架構1Bの配筋状況を示す縦断面図である。
本実施形態では、第1梁主筋30Aの一段目主筋31、33に加えて、二段目主筋32、34も機械式継手37で接合される点が、第2実施形態と異なる。本実施形態では、第1梁主筋30Aには、第2梁主筋30Bと比べて、高強度の鉄筋を用いる。なお、これに限らず、第1梁主筋30Aに、第2梁主筋30Bと比べて、太径の鉄筋を用いてもよいし、太径かつ高強度の鉄筋を用いてもよい。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
例えば、上述の第2実施形態および第3実施形態では、図10および図11に示すように、第1実施形態のような上側拘束筋42や下側拘束筋43を設けていないが、これに限らず、上側拘束筋や下側拘束筋を設けてもよい。上側拘束筋や下側拘束筋を設けた場合には、梁端部での躯体損傷をより低減できる。
また、上述の各実施形態では、梁端部20Aに貫通孔21を設けたが、これに限らず、貫通孔を設けなくてもよい。
また、上述の各実施形態では、梁端部20Aの2箇所に束ね筋41を設けたが、これに限らず、束ね筋を3箇所以上に設けてもよい。
また、上述の各実施形態では、束ね筋41を貫通孔21の近傍およびヒンジ位置の近傍に配置したが、これに限らず、束ね筋を、貫通孔を挟んだ両側に配置してもよい。
また、上述の各実施形態では、第1梁主筋30Aの2本の二段目主筋32、34をカットオフ筋としたが、これに限らず、カットオフ筋を1本としてもよいし、3本以上としてもよい。
また、上述の各実施形態では、第1梁主筋30Aを柱梁接合部11に貫通させたが、これに限らず、柱梁接合部11に定着させてもよい。
また、上述の第1実施形態から第3実施形態を適宜組み合わせてもよい。
12…柱主筋 13…フープ
20…梁 20A…梁端部 20B…梁中央部 21…貫通孔
30…梁主筋 30A…第1梁主筋 30B…第2梁主筋
31…上側一段目主筋 32…上側二段目主筋 33…下側一段目主筋
34…下側二段目主筋 35…定着金物(定着部材) 36…折り曲げ筋
37…機械式継手(定着部材)
40…スタラップ(せん断補強筋) 41…束ね筋
42…上側拘束筋 43…下側拘束筋
Claims (3)
- 鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、
前記二段目主筋の少なくとも一部の梁中央部側には、機械式継手が設けられ、
前記複数の束ね筋のうちの1つは、前記機械式継手の長さ方向端部に設けられ、
前記複数の束ね筋のうちの別の1つは、前記機械式継手の長さ方向中間部に設けられることを特徴とする柱梁架構。 - 鉄筋コンクリート造の柱と、前記柱に接合された鉄筋コンクリート造の梁と、を備える鉄筋コンクリート造の柱梁架構であって、
前記梁の梁主筋は、前記柱の柱梁接合部を貫通してまたは前記柱梁接合部に定着されて梁端部に設置される第1梁主筋と、前記梁の梁中央部に設けられる第2梁主筋と、で構成され、
前記第1梁主筋には、前記梁の上下端側に配置される一段目主筋と、前記梁の内部側に配置される二段目主筋と、を囲むように配置される閉鎖型のせん断補強筋を複数本束ねた束ね筋が複数設けられ、
前記梁の梁端部には、前記梁を梁幅方向に貫通する貫通孔が設けられ、
前記二段目主筋の少なくとも一部の先端には、定着部材が設けられ、
前記複数の束ね筋は、前記貫通孔と前記定着部材との間に配置され、
前記梁の梁端部のうち前記貫通孔の上下には、前記梁の上側の一段目主筋および二段目主筋を囲む上側拘束筋と、前記梁の下側の一段目主筋および二段目主筋を囲む下側拘束筋と、が設けられることを特徴とする柱梁架構。 - 前記上側拘束筋および前記下側拘束筋は、略コの字形状の一対の折り曲げ筋を対向配置して結束することで、略ロの字形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の柱梁架構。
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