JP7196886B2 - 床スラブ付鉄骨梁 - Google Patents
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Description
床スラブ11は、建物外周部などでは、図15に示すように、鉄骨梁の上部と梁材軸直交方向の一方側のみに配置されている。なお、床スラブ11は、鉄筋コンクリートの他に例えば打設の際に用いるデッキプレート15が構成要素とされている。
また、デッキプレート15には型枠用のフラットデッキとコンクリートと一体となって挙動する波形の合成デッキがある。
この点、特許文献1では、鉄骨梁に接合されている床スラブのねじれ剛性を鉄骨梁のねじれ剛性の10倍とすることで横座屈補剛材がなくても横座屈を防止できる設計法を提案している。
しかしながら、鉄骨梁に横座屈が生じる場合、頭付きスタッドには梁材軸直交方向のせん断力が作用し、頭付きスタッドから床スラブの縁までの距離が短いと、コンクリートにコーン状破壊が生じる。図16はこのようなコーン状破壊のひび割れを示しており、ひび割れ17は、図16に示すように、梁材軸直交水平方向から約45度の方向に生じ(図16(b)、(c)参照)、床縁側面で半円状に投影される(図16(a)参照)。
このようなひび割れ17が生ずることで、頭付きスタッド13のせん断耐力が低下する恐れがある。
しかしながら、発明者の知見によると、鉄骨梁に横座屈が生じる場合、梁には構面外変形と同時にねじれ変形が生じる。その際、床スラブと鉄骨梁のねじれ剛性が異なるため、両者をつなぐ頭付きスタッドには鉄骨梁の上フランジを支点として引抜力が作用し、引抜力が作用すると、コンクリートに鉛直方向のコーン状破壊が生じる。図17はこのようなコーン状破壊のひび割れ19を示しており、ひび割れ19は、図17に示すように、鉄骨梁の上フランジ7上部の頭付きスタッド13の頭部から鉛直下方向から約45度の方向に生じて床スラブ下面に円状に投影される。この投影線をひび割れ投影線という。
この点、例えば特許文献3の解析ではスタッドを梁材軸直交水平方向のバネとしてモデル化しており、従来例においては、上述したようなねじれによる鉛直下方向の引抜力は考慮しておらず、鉄骨梁の横座屈を十分に防止することはできない。
本発明はかかる知見に基づくものであり、具体的には以下の構成を備えるものである。
梁端から梁長さの少なくとも2割の範囲に配置される前記頭付きスタッドの引抜時の有効投影面積の合計ΣsAcが下式(1)を満たすことを特徴とするものである。
ΣsAc≧1.2×bN×bAc ・・・(1)
但し、bAc:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における頭付きスタッド1本当りの引抜時の有効投影面積
bN:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち、(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲と同じ範囲に必要とされる頭付きスタッドの本数
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
梁端から梁長さの少なくとも2割の範囲に配置される前記頭付きスタッドの引抜時の有効投影面積の合計ΣsAcが下式(1)を満たすように、前記頭付きスタッドの形状及び又は本数を設定することを特徴とするものである。
ΣsAc≧1.2×bN×bAc ・・・(1)
但し、bAc:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における頭付きスタッド1本当りの引抜時の有効投影面積
bN:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち、(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲と同じ範囲に必要とされる頭付きスタッドの本数
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
本実施の形態に係る床スラブ付鉄骨梁を図1に基づいて説明する。なお、図1において、従来例を示した図13~図16と同一部分には同一の符号を付している。
本実施の形態に係る床スラブ付鉄骨梁1は、図1に示すように、両端部が柱3に剛接合されると共に、鉄骨梁の上フランジ7に接合部材としての頭付きスタッド13を介して鉄筋コンクリートからなる床スラブ11が接合され、かつ床スラブ11が梁材軸直交方向の一方側に連続し、他方側には連続することなく縁部となっている床スラブ付鉄骨梁である。
ΣsAc≧1.2×bN×bAc ・・・(1)
但し、bAc:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における頭付きスタッド1本当りの引抜時の有効投影面積
bN:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち、(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲と同じ範囲に必要とされる頭付きスタッドの本数
一般的な床スラブ付鉄骨梁は、床スラブ11が梁材軸直交方向の一方側にのみ連続している場合と、床スラブ11が梁材軸直交方向の両側に連続している場合とで、床スラブ11を接合するための頭付きスタッド13の数や形状は同じである。
しかしながら、発明者の知見によれば、45度方向のひび割れ投影線が円状になるよう床縁と頭付きスタッド13間の距離が確保されている場合、すなわち投影面積が梁材軸直交方向の両側に床スラブ11が接合されている場合と同等に確保しても、ひび割れ投影線と床縁が近い場合に耐力がやや低くなることが確認されている。
引抜試験の結果を表1に示す。
また、「実験値と計算値の差(実験値/計算値)」を記載しているのは、試験体の形状(鋼板や頭付きスタッドの形状)の違いを捨象するためである。
以上の検討から、(1)式では、頭付きスタッド13の引抜時の有効投影面積の合計ΣsAcを、鉄骨梁の上フランジ7上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブ11が頭付きスタッド13を介して接合されている床スラブ付鉄骨梁1における頭付きスタッド13の引抜時の有効投影面積(=bN×bAc)の1.2倍以上とした。
また、頭付きスタッド13の引抜時の有効投影面積を増やす方法としては、頭付きスタッド13の数を増加させることに限られず、頭付きスタッド13の高さを高くしたり、頭付きスタッド13の頭部径を大きくするなどの形状を工夫するようにしてもよい。
なお、(1)式を満たすように頭付きスタッド13が配置された範囲以外の範囲に設ける頭付きスタッド13の本数は、鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち、(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲以外の範囲に必要とされる頭付きスタッドの本数としてもよいし、あるいはそれ以上としてもよい。
実施の形態1では、頭付きスタッド13の抜け出し防止を主眼としたものであった。これは、例えば鉄骨梁の上フランジ7のフランジ幅が広く、頭付きスタッド13から床スラブ11の縁までの距離が十分に確保されている場合を想定している。
しかし、頭付きスタッド13から床スラブ11の縁までの距離が短いと、横座屈により鉄骨梁が材軸直交水平方向に変位した場合、前述した図16に示すように、梁材軸直交水平方向から約45度の方向にひび割れ17が生じ(図16(b)、(c)参照)、このひび割れ17は床縁側面で半円状に投影される(図16(a)参照)。
そこで、本実施の形態2では、耐力低下により頭付きスタッド13の梁材軸直交方向せん断耐力が、鉄骨梁の両側に床スラブ11が付いている完全合成梁より低くなる場合は、その耐力低下分を補えるだけの補強鉄筋27を梁材軸直交方向に配置するようにしたものである。
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
また、sQsは、本実施の形態の床スラブ付き鉄骨梁のように、梁材軸直交方向の一方側のみに床スラブ11がついている場合の頭付きスタッド13の破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッド13のせん断耐力であり、(3)式によって与えられる。
補強鉄筋27は頭付きスタッド13のせん断耐力の補強用であるが、床スラブ11がねじれにより大きくひび割れる場合は頭付きスタッド13のせん断耐力がさらに低下する恐れもある。そこで、ねじれによるひび割れを防止して補強するために2段で配筋している。
試験体は、図8~図10に示す3体(No.1~3)であり、いずれの試験体も所定の間隔を離して立設された一対の柱体31と、両端が一対の柱体31に剛接合された大梁33と、各柱体31における大梁材軸直交方向の両側に接合された4本の直交梁35と、鉄筋37が格子状に配筋された鉄筋コンクリートからなり大梁33及び直交梁35に接合された床スラブ39によって構成されている。
試験体No.2は、図9に示すように、大梁33の梁材軸直交方向の一方側にのみ床スラブ39が付いており、頭付きスタッド13本数は試験体No.1と同様に完全合成梁として機能するのに必要な最小数に設定され、補強鉄筋27を1段のみ配筋したものであり、比較例に相当する。
試験体No.3は、図10に示すように、梁材軸直交方向の一方側にのみ床スラブ39が付いている点は試験体No.2と同様であるが、梁端の柱面から梁材長の2割の範囲において、前記(1)式、(2)式に従って頭付きスタッド13本数を増加し、梁材軸直交方向に補強鉄筋27を2段で配筋したものであり、発明例に相当するものである。
試験体の梁はいずれも規格降伏強度385N/mm2の鋼材を用い、床スラブ39のコンクリートはいずれも設計強度21N/mm2の普通コンクリートである。
大梁33、直交梁35の仕様を表2に、コンクリート床、頭付きスタッド13及び補強鉄筋27の仕様を表3にそれぞれ示す。
図12は、各試験体の最大耐力時の大梁下フランジの構面外変位分布を示すものであり、縦軸が構面外変位[mm]、横軸が梁材軸方向位置[mm]を示している。図12に示されるように、いずれの試験体でも変位のピークは梁端から大梁長さの2割の位置以下となっており、このことから頭付きスタッド13や補強鉄筋27による補強の範囲は梁端から梁全長の少なくとも2割を行うことが有効であることが分かる。なお、本発明では補強の範囲を梁全長の2割を越える場合を排除するものではないが、この実験結果からすれば、梁端から2割の範囲を補強すれば効果が得られるとも言える。
表4に他の試験結果を示す。
これによって、本発明の頭付きスタッド13及び補強鉄筋27の配設形態を施すことの効果が実証された。
3 柱
5 ダイアフラム
7 上フランジ
9 鉄筋
11 床スラブ
13 頭付きスタッド
15 デッキプレート
17 ひび割れ
19 ひび割れ
21 鋼板
23 異形鉄筋
25 コンクリート
27 補強鉄筋
28 床スラブ付鉄骨梁(実施の形態2)
29 デッキプレート
31 柱体
33 大梁
35 直交梁
37 鉄筋
39 床スラブ
41 架台
43 載荷梁
45 油圧ジャッキ
100 床スラブ付鉄骨梁(従来例)
Claims (4)
- 両端部が柱に剛接合されると共に、鉄骨梁の上フランジに接合部材としての頭付きスタッドを介して床スラブが接合され、かつ前記床スラブが梁材軸直交方向の一方側に連続し、他方側には連続することなく縁部となっている床スラブ付鉄骨梁であって、
梁端から梁長さの少なくとも2割の範囲(梁全長を範囲とするものは除く)に配置される前記頭付きスタッドの引抜時の有効投影面積の合計ΣsAcが下式(1)を満たし、前記範囲外に配置される前記頭付きスタッドは、前記鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち前記範囲外の範囲に必要とされる本数以上で、かつ下式(1)を満たす梁端から少なくとも2割の範囲に配置される頭付きスタッドのピッチより大きなピッチで配置されていることを特徴とする床スラブ付鉄骨梁。
ΣsAc≧1.2×bN×bAc ・・・(1)
但し、bAc:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における頭付きスタッド1本当りの引抜時の有効投影面積
bN:鉄骨梁の上フランジ上部において梁材軸直交方向の両側に床スラブが頭付きスタッドを介して接合されている床スラブ付鉄骨梁における、地震荷重時の荷重条件で完全合成梁として必要とされる頭付きスタッドの本数のうち、(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲と同じ範囲に必要とされる頭付きスタッドの本数 - (1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲において、梁材軸直交方向に補強鉄筋を配設していることを特徴とする請求項1に記載の床スラブ付鉄骨梁。
- 前記床スラブが鉄筋コンクリート床スラブであって、かつ(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲において、梁材軸直交方向に補強鉄筋を2段以上で配設し、各段における補強鉄筋の断面積の合計ΣsArが下式(2)を満たすことを特徴とする請求項2記載の床スラブ付鉄骨梁。
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積 - 前記床スラブが合成デッキ床スラブであって、かつ(1)式を満たすように頭付きスタッドが配置された範囲において、梁材軸直交方向に補強鉄筋を1段で配設し、該補強鉄筋の断面積の合計ΣsArが下式(2)を満たすことを特徴とする請求項2記載の床スラブ付鉄骨梁。
sca :頭付きスタッドの軸部断面積
Fc :コンクリート強度
Ec :コンクリートのヤング係数
sQs :頭付きスタッドの破断又はコンクリートの破壊によって決まる頭付きスタッドのせん断耐力
rσy :補強鉄筋の降伏応力
sN :(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの本数
Aqc :頭付きスタッドが抜け出る際のせん断力に対する(1)式を満たすように配置された頭付きスタッドの有効投影面積
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