JP7323277B2 - 繊維状セルロース複合樹脂 - Google Patents
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Description
平均繊維幅0.1μm以上で、かつフィブリル化率1.0~30%のマイクロ繊維セルロースと、マトリックス成分たる樹脂と、添加剤たる無水マレイン酸変性ポリプロピレンとを含み、
エチレングリコール、エチレングリコールの誘導体、エチレングリコール重合体、及びエチレングリコール重合体の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の添加剤を含み、この添加剤の添加量は、前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対して、0.1~30質量部であり、
前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対する前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの割合が10~100質量部であり、
フタル酸塩類及びフタル酸塩類の誘導体の少なくとも一方を、前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対して70質量部以下の割合で含む、
ことを特徴とする繊維状セルロース複合樹脂。
前記マイクロ繊維セルロースは、平均繊維長0.02~3.0mmである、
請求項1に記載の繊維状セルロース複合樹脂。
マイクロ繊維セルロース(MFC)は、原料繊維(パルプ繊維)を微細化(解繊)処理して得ることができる。原料となる繊維としては、植物由来の繊維、動物由来の繊維、微生物由来の繊維等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、植物繊維であるパルプ繊維を使用するのが好ましい。原料繊維がパルプ繊維であると、安価であり、また、サーマルリサイクルの問題を避けることができる。
原料繊維は化学的手法によって、前処理するのが好ましい。微細化(解繊)処理に先立って化学的手法によって前処理することで、微細化処理の回数を大幅に減らすことができ、微細化処理のエネルギーを大幅に削減することができる。
微細化処理は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー等を使用して原料繊維を叩解することによって行うことができ、リファイナーを使用して行うことが好ましい。
微細化処理して得られたマイクロ繊維セルロースは、水系媒体中に分散していったん分散液とすることができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましいが、一部が水と相溶性を有する他の液体である水系媒体も好ましく使用することができる。他の液体としては、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂の混合に際しては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(MAPP)を添加する。無水マレイン酸変性ポリプロピレンを添加すると、得られる樹脂組成物の強度、特に曲げ強度が向上する。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂の混合に際しては、無水マレイン酸変性ポリプロピレンのほか、多塩基酸、多塩基酸の誘導体、多塩基酸塩類、及び多塩基酸塩類の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の添加剤を添加することができる。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂の混合に際しては、多塩基酸等の添加剤のほか、エチレングリコール、エチレングリコールの誘導体、エチレングリコール重合体、及びエチレングリコール重合体の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の添加剤(第2の添加剤)を添加することができる。この第2の添加剤を添加することで、マイクロ繊維セルロースの分散性が著しく向上する。この点、本発明者等は、セルロース繊維がセルロースナノファイバーである場合は、当該セルロース繊維の分散性が向上しないことを知見している。この点、第2の添加剤がマイクロ繊維セルロース同士の間に入ることで、樹脂中での凝集が抑えられ、分散性を向上すると推測する。しかしながら、セルロースナノファイバーはマイクロ繊維セルロースよりも著しく比表面積が高くなるため、第2の添加剤を過剰に添加してもセルロースナノファイバー同士の間に入り込まないものと推定される。
混練処理には、例えば、単軸又は二軸以上の多軸混練機、ミキシングロール、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー、スクリュープレス、ディスパーザー等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。ただし、これらの中では、二軸以上の多軸混練機を使用するのが好ましい。二軸以上の多軸混練機を2機以上、並列又は直列にして使用しても良い。
マイクロ繊維セルロースには、セルロースナノファイバー、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル状微細繊維、微少繊維セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、スーパーミクロフィブリルセルロース等と称される各種微細繊維の中から1種又は2種以上を含ませることができ、また、これらの微細繊維が含まれていてもよい。また、これらの微細繊維を更に微細化した繊維をも含ませることもでき、また、含まれていてもよい。ただし、全原料繊維中におけるマイクロ繊維セルロースの割合が10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%以上となるようにする必要がある。
マイクロ繊維セルロース及び樹脂(混練物)は、必要により再度混練処理を行った後、所望の形状に成形するのが好ましい。なお、混練物にはマイクロ繊維セルロースが分散しているが、成形加工性に優れている。
明細書中の用語は、特に断りのない限り、以下のとおりである。
固形分濃度0.01~0.1質量%のマイクロ繊維セルロースの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて5000倍、10000倍又は30000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
上記平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
繊維長0.2mm以下の割合とフィブリル化率は、バルメット社製の繊維分析計「FS5」によって測定する。
上記平均繊維長を平均繊維幅(径)で除した値である。
JIS-K0131(1996)の「X線回折分析通則」に準拠して、X線回折法により測定した値である。なお、マイクロ繊維セルロースは、非晶質部分と結晶質部分とを有し、結晶化度は、マイクロ繊維セルロース全体における結晶質部分の割合を意味することになる。
JIS-P8215(1998)に準拠して測定する。なお、パルプ粘度が高いほどマイクロ繊維セルロースの重合度が高いことを意味する。
JIS P8121-2:2012に準拠して測定した値である。
繊維の水分率は、定温乾燥機を用いて、試料を105℃で6時間以上保持し質量の変動が認められなくなった時点の質量を乾燥後質量とし、下記式にて算出した値である。
繊維水分率(%)=[(乾燥前質量-乾燥後質量)÷乾燥前質量]×100
固形分濃度2.75重量%のマイクロ繊維セルロースの水分散液365gに、無水マレイン酸変性ポリプロピレン1g、フタル酸7g、ポリエチレングリコール(400)3g及びポリプロピレン粉末79gを添加し、105℃で加熱乾燥して繊維状セルロース及び樹脂の混合物を得た。当該混合物の含水率は、10%未満であった。
JIS K7171:2008に準拠して測定し、以下の基準で示した。
○:樹脂自体の曲げ弾性率を1として複合樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.5倍以上の場合
×:樹脂自体の曲げ弾性率を1として複合樹脂の曲げ弾性率(倍率)が1.5倍未満の場合
Claims (2)
- 平均繊維幅0.1μm以上で、かつフィブリル化率1.0~30%のマイクロ繊維セルロースと、マトリックス成分たる樹脂と、添加剤たる無水マレイン酸変性ポリプロピレンとを含み、
エチレングリコール、エチレングリコールの誘導体、エチレングリコール重合体、及びエチレングリコール重合体の誘導体の中から選択された少なくともいずれか1種以上の添加剤を含み、この添加剤の添加量は、前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対して、0.1~30質量部であり、
前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対する前記無水マレイン酸変性ポリプロピレンの割合が10~100質量部であり、
フタル酸塩類及びフタル酸塩類の誘導体の少なくとも一方を、前記マイクロ繊維セルロース100質量部に対して70質量部以下の割合で含む、
ことを特徴とする繊維状セルロース複合樹脂。 - 前記マイクロ繊維セルロースは、平均繊維長0.02~3.0mmである、
請求項1に記載の繊維状セルロース複合樹脂。
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