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JP7321342B1 - 剥離ライナー付き両面粘着シート - Google Patents

剥離ライナー付き両面粘着シート Download PDF

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Abstract

【課題】剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形を高度に抑制し得る剥離ライナー付き両面接着性粘着シートを提供する。【解決手段】両面接着性粘着シートと、両面接着性粘着シートの第1粘着面を保護する第1剥離ライナーと、両面接着性粘着シートの第2粘着面を保護する第2剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き両面接着性粘着シートが提供される。両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有する。また、粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。さらに、第1剥離ライナーの第1粘着面に対する剥離力R1と第2剥離ライナーの第2粘着面に対する剥離力R2との剥離力差は0.07N/50mm以上である。粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、剥離ライナー付き両面粘着シートに関する。
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、スマートフォン等の携帯電子機器や家電製品から自動車、OA機器等の各種産業分野において、典型的には粘着剤層を含む粘着シートの形態で、部品の接合や表面保護等の目的で広く利用されている。かかる粘着シートの用途の好適例として、電子機器内における部材の接合や固定、保護等が挙げられる。また、例えば、電子機器における液晶表示装置のバックライトモジュール等の光源や有機EL(electroluminescence)等の自発光素子からの光漏れの防止や、被着体の隠蔽、粘着シート越しの被着体外観の調整、意匠性等を目的として、所定の遮光性や減光性を有する粘着シートが利用されている。この種の技術に関する文献として特許文献1が挙げられる。特許文献2,3は、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として用いて重合されたアクリル系ポリマーを含む粘着剤を開示する先行技術文献である。
特開2020-37657号公報 国際公開第2021/125247号 国際公開第2021/125278号
被着体の隠蔽や外観の調整、意匠性付与等を目的として用いられる粘着シートは、被着体の視認側表面全体を覆うことで隠蔽等の目的を達成する。かかる粘着シートは、外部から視認され得るため、良好な外観品質を有することが求められる。例えば、電子機器の表示部において、有機ELパネル等の裏面側に配置される金属部材の隠蔽に用いられる粘着シートは、表示部の照明を落としたときに使用者の目に触れ得るため、外観品質よく被着体を隠蔽することが求められる。
ところで、上記携帯電子機器等の各種部材の接合等に用いられる両面接着性粘着シート(両面粘着シートともいう。)は、使用前(すなわち、被着体に貼り付けられる前)においては、取扱い性などの観点から、2枚の剥離ライナーで各粘着面が保護された形態で流通、保管、加工され得る。粘着面を剥離ライナーで保護することにより、粘着面は平滑に保持され、被着体表面によく密着して所期の粘着特性を発揮することができる。また、剥離ライナーに保護されて平滑に保持された粘着面を有する粘着シートは、被着体に均質に貼り付けられて、上記被着体表面が視認される場合に良好な外観を提供し得る。
上記2枚の剥離ライナーで各粘着面が保護された形態の剥離ライナー付き両面粘着シートは、通常、1枚目の剥離ライナーを剥離して一方の粘着面を露出させて、該粘着面を被着体に貼り付けた後、2枚目の剥離ライナーを剥離して他方の粘着面を露出させ、該粘着面を異なる被着体に貼り付ける態様で用いられて、2つの被着体を接合する。例えば、上記有機ELパネル等の裏面側に配置される金属部材の隠蔽に用いられる両面粘着シートは、金属部材と透明部材とに貼り付けられて両者を接合しつつ、視認側から金属部材を隠蔽する。
しかし、上記剥離ライナー付き両面粘着シートにおいて、2枚の剥離ライナーの剥離力差が小さいと、1枚目の剥離ライナーを剥がす際に、反対側の剥離ライナーに浮きが生じ、上記浮きを原因として、反対側の粘着面の平滑性が視認可能なレベルで損なわれることがある。また、剥離ライナーが剥離される側の粘着面では、剥離ライナーに粘着面が引っ張られて、粘着面が波打ったりスジ状の荒れが生じるなど、粘着面が主として厚さ方向に変形し、かかる変形が被着体に貼り付けた後も残存し視認されてしまうことがある。そのような視認可能なサイズの粘着面の変形は、被着体に貼り付けられて安定してしまうと解消しない。特に、粘着剤層が着色剤を含むなど着色された粘着シートは、透明粘着シートよりも粘着面の変形のコントラストが出やすく、粘着面の変形による外観の変化が目立ちやすい傾向がある。さらに、近年、電子機器の表示部に対して、より高度な外観品質が求められる傾向があり、従来は問題とされなかったレベルの微細な変形が抑制された粘着面が求められることが想定される。上記のような剥離ライナー剥離時に生じる粘着面の変形は、剥離操作者や剥離条件などに依存し得るため、剥離ライナーの工夫や剥離力の設計だけでは、通常、高度に制御することが難しい。剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形が高度に抑制された着色両面粘着シートが実現されれば、部材の接合固定等に用いられる両面粘着シートが適用される表面の外観品質を向上することができ、有用である。
本発明は、上記の事情に鑑みて創出されたものであり、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形を高度に抑制し得る剥離ライナー付き両面接着性粘着シートを提供することを目的とする。
この明細書によると、両面接着性粘着シートと、該両面接着性粘着シートの第1粘着面を保護する第1剥離ライナーと、該両面接着性粘着シートの第2粘着面を保護する第2剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き両面接着性粘着シートが提供される。上記剥離ライナー付き両面接着性粘着シートにおいて、上記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有する。また、上記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。さらに、上記第1剥離ライナーの上記第1粘着面に対する剥離力R[N/50mm]と、上記第2剥離ライナーの上記第2粘着面に対する剥離力R[N/50mm]との剥離力差は0.07以上である。そして、上記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である。
上記構成の剥離ライナー付き両面粘着シートは、第1剥離ライナーの剥離力Rと第2剥離ライナーの剥離力Rとの剥離力差が0.07N/50mm以上に設計されているので、剥離ライナー剥離時に浮きが生じにくく、粘着面に変形(波打ちやスジ状の荒れ等の変形)が生じにくい。また、粘着剤層の0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下であるので、剥離ライナー剥離時に粘着面に変形が生じても、かかる変形は粘着剤の表面形状緩和作用により高度に抑制され得る。上記両面粘着シートは、着色された粘着剤層を有するため、粘着面の変形が目立ちやすいが、上記0℃貯蔵弾性率を有する粘着剤層を備える構成によると、上記変形が高度に抑制されるので、粘着面は、優れた外観品質を有するものとなる。
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数が4~8である鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートを含む。炭素原子数が4~8である鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレート(C4-8アルキルアクリレート)をモノマー成分として含むアクリル系ポリマーによると、粘着剤層の0℃貯蔵弾性率を適度に低下させることができる。ここに開示される技術は、C4-8アルキルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーを用いる態様で好ましく実施される。
いくつかの好ましい態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む。モノマー成分としてヘプチルアクリレートを含むアクリル系ポリマーを用いることにより、0℃貯蔵弾性率が所定値以下となる柔軟な粘着剤を形成しやすく、粘着剤の表面形状緩和作用が得られやすい。
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はn-ブチルアクリレートを含む。ここに開示される技術によると、モノマー成分としてn-ブチルアクリレートを含むアクリル系ポリマーを用いる組成で、0℃貯蔵弾性率が所定値以下となる表面形状緩和性のよい粘着剤を得ることができる。
いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤層は黒色着色剤を含む。黒色着色剤は、少量の使用により光透過性を効率的に調節することができ、高い被着体隠蔽性が得られやすい。ここに開示される技術による効果(剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形の高度抑制)は、黒色着色剤を含む粘着剤層を有する両面粘着シートにおいて効果的に発揮され得る。
いくつかの好ましい態様において、上記粘着剤層は、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物と、を含む。上記2種の着色剤を使用することにより、光学特性(光透過率等)を調節しつつ、目的とする意匠性や色味を好ましく実現することができる。ここに開示される技術による効果は、上記2種の着色剤を含む粘着剤層を有する両面粘着シートにおいて効果的に発揮され得る。
いくつかの好ましい態様において、上記第1剥離ライナーの上記第1粘着面に対する剥離力R[N/50mm]は、上記第2剥離ライナーの上記第2粘着面に対する剥離力R[N/50mm]よりも低い。また、上記第1剥離ライナーの上記第1粘着面に対する剥離力Rは0.3N/50mm以下である。第1剥離ライナーを先に剥がして使用する態様において、軽剥離側の第1剥離ライナーの剥離力を0.3N/50mm以下に設定することで、第1剥離ライナー剥離時に、粘着面に波打ちやスジ状の荒れなどの変形が生じにくい傾向がある。
いくつかの態様において、上記両面粘着シートは、上記粘着剤層からなる基材レス粘着シートである。基材レス両面粘着シートは、基材を有しない分、薄厚化することが可能であり、両面粘着シートが適用される製品の小型化、省スペース化に貢献し得る。また、基材レス両面粘着シートによると、接着力等の粘着剤層の作用を最大限発現させることができる。また、ここに開示される技術による効果は、基材レス両面粘着シートに対して効果的に発揮され得る。
他のいくつかの態様において、上記両面粘着シートは、上記粘着剤層と支持基材層とを含む基材付き両面粘着シートである。基材を有する両面粘着シートは、加工性や取扱い性の点で有利である。
ここに開示される両面粘着シートは、例えば、家電製品や、OA機器、スマートフォン等の携帯電子機器を含む電子機器の部材を接合するために好ましく用いられ得る。例えば、電子機器は、使用者の目に触れる部分を有し、優れた外観品質が求められ得る。ここに開示される両面粘着シートは、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形が高度に抑制されており、外観品質に優れた粘着面を有し得るので、電子機器の視認される個所に適用されて、外観品質のよい表面を実現し得る。
一実施形態に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを模式的に示す断面図である。 他の一実施形態に係る剥離ライナー付き両面粘着シートの構成を模式的に示す断面図である。 積層体の一構成例を模式的に示す断面図である。 表示装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の剥離ライナー付き両面粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
本明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamentals and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
この明細書において、バイオマス由来の炭素とは、バイオマス材料、すなわち再生可能な有機資源に由来する材料に由来する炭素(再生可能炭素)を意味する。上記バイオマス材料とは、典型的には、太陽光と水と二酸化炭素とが存在すれば持続的な再生産が可能な生物資源(典型的には、光合成を行う植物)に由来する材料のことをいう。したがって、採掘後の使用によって枯渇する化石資源に由来する材料(化石資源系材料)は、ここでいうバイオマス材料の概念から除かれる。粘着剤層および粘着シートのバイオマス炭素比、すなわち該粘着剤層および粘着シートに含まれる全炭素に占めるバイオマス由来炭素の割合は、ASTM D6866に準拠して測定される質量数14の炭素同位体含有量から見積もることができる。
<剥離ライナー付き両面粘着シートの構成例>
ここに開示される剥離ライナー付き両面粘着シートは、2枚の剥離ライナーで各粘着面が保護された両面粘着シートを有しており、第1剥離ライナーと両面粘着シートと第2剥離ライナーとの積層構造を有する。具体的には、剥離ライナー付き両面粘着シートは、両面粘着シートと、両面粘着シートの第1粘着面を保護する第1剥離ライナーと、両面粘着シートの第2粘着面を保護する第2剥離ライナーと、を含む。第1剥離ライナーおよび第2剥離ライナーは、両面粘着シートの第1粘着面および第2粘着面に対し、それぞれ剥離可能に積層されている。また、両面粘着シートは、例えば、粘着剤層の一方の表面により構成された第1粘着面と、該粘着剤層の他方の表面により構成された第2粘着面と、を備える基材レス両面粘着シートの形態であり得る。あるいは、両面粘着シートは、上記粘着剤層が支持基材の各面に積層された基材付き両面粘着シートの形態であってもよい。以下、支持基材のことを単に「基材」ということがある。なお、ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される剥離ライナー付き両面粘着シートは、ロール状に巻回された形態であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態を有していてもよい。
一実施形態に係る剥離ライナー付き両面粘着シートの構成を図1に模式的に示す。この剥離ライナー付き両面粘着シート100は、第1粘着面1Aおよび第2粘着面1Bを有する両面粘着シート1と、第1粘着面1Aに積層されている第1剥離ライナー31と、第2粘着面1Bに積層されている第2剥離ライナー32とを含む。両面粘着シート1は、粘着剤層21からなる基材レスの両面粘着シートであり、基材レスの粘着剤層21の各面21A,21Bは、それぞれ両面粘着シート1の第1粘着面1A,第2粘着面1Bでもある。粘着剤層21は、着色されている。第1剥離ライナー31は、第1粘着面1A側の面31Aが剥離面、すなわち第1粘着面1Aから剥離可能な面に形成されている。第1剥離ライナー31において、面31Aの反対面(背面)31Bは、剥離面であってもよく、非剥離面であってもよい。第2剥離ライナー32は、第2粘着面1B側の面である面32Aが剥離面、すなわち第2粘着面1Bから剥離可能な面に形成されている。第2剥離ライナー32において、面32Aの反対面(背面)32Bは、剥離面であってもよく、非剥離面であってもよい。
他の一実施形態に係る剥離ライナー付き両面粘着シートの構成を図2に模式的に示す。この剥離ライナー付き両面粘着シート200において、両面粘着シート2は、第1面10Aおよび第2面10Bを有するシート状の支持基材(例えば樹脂フィルム)10と、その第1面10A側に固定的に設けられた第1粘着剤層21と、第2面10B側に固定的に設けられた第2粘着剤層22と、を備える基材付き両面粘着シートとして構成されている。この実施形態において、第1粘着剤層21および第2粘着剤層22は、ともに着色されている。図2に示すように、第1粘着剤層21の表面21A(第1粘着面1A)および第2粘着剤層22の表面22A(第2粘着面1B)には、それぞれ第1剥離ライナー31および第2剥離ライナー32が積層されている。このような基材付き両面粘着シートは、加工性や取扱い性等に優れるので好ましい。
なお、第1粘着剤層および第2粘着剤層は、両方が着色されていなくてもよく、第1粘着剤層および第2粘着剤層のうち少なくとも一方が着色された粘着剤層として構成されていればよい。
ここに開示される技術は、基材レス両面粘着シートを備える形態で好ましく実施され得る。基材レス両面粘着シートは、支持基材を有しないため、薄層化しやすく、また接着力や耐衝撃性等の粘着剤特性を最大限発揮させ得る点でも有利である。一方、基材レス両面粘着シートでは、支持基材を有しないため、剥離ライナー剥離時に粘着面に浮きや荒れが生じやすいが、ここに開示される技術によると、基材レス両面粘着シートに対して、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形を高度に抑制することができる。
<剥離ライナーの剥離力特性>
ここに開示される剥離ライナー付き両面粘着シートは、第1剥離ライナーの第1粘着面に対する剥離力R[N/50mm]と、第2剥離ライナーの第2粘着面に対する剥離力R[N/50mm]との剥離力差(|R-R|)が0.07以上となるよう構成されている。このように、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとの剥離力差が所定値以上となるよう設計することにより、1枚目の軽剥離側の剥離ライナー(例えば第1剥離ライナー)を剥がす際に、反対側の重剥離側の剥離ライナー(例えば第2剥離ライナー)に浮きが生じにくい。また、軽剥離側の剥離ライナーに粘着面が引っ張られにくくなり、剥離ライナーの引張りに起因して、粘着面が波打ったりスジ状の荒れが生じるなど、粘着面の厚さ方向への変形が発生しにくくなる。上記剥離力差を有する構成によると、上記剥離ライナーの剥離に起因して粘着面が変形等する事象の発生が抑制される。
上記剥離力差(|R-R|)は、重剥離側の剥離ライナーの浮き防止や、軽剥離側の剥離ライナーによる粘着面の引張りを抑制する観点から、0.09以上であってもよく、0.11以上でもよく、0.13以上でもよく、0.15以上でもよい。上記剥離力差(|R-R|)の上限は、使用目的や使用態様に応じて適切に設定され、特定の範囲に限定されない。重剥離側の剥離ライナーの剥離作業性や、剥離ライナーによる粘着面保護性等の観点から、いくつかの態様において、上記剥離力差(|R-R|)は、2.0以下とすることが適当であり、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3未満がさらに好ましく、0.25未満(例えば0.20未満)であってもよい。
ここに開示される剥離ライナー付き両面粘着シートは、まず相対的に剥離力の低い剥離ライナー(軽剥離側の剥離ライナー)を両面粘着シートから剥がし、露出した粘着面を被着体に貼り付けた後、相対的に剥離力の高い剥離ライナー(重剥離側の剥離ライナー)を両面粘着シートから剥がす態様で用いられる。第1剥離ライナー、第2剥離ライナーは、いずれを軽剥離側としてもよい(その場合、他方が重剥離側となる)。したがって、ここに開示される剥離ライナー付き両面粘着シートにおいて、第1粘着面に対する第1剥離ライナーの剥離力R[N/50mm]と、第2粘着面に対する第2剥離ライナーの剥離力R[N/50mm]との関係は、R>Rでもよく、R<Rでもよい。
第1剥離ライナーの剥離力R(両面粘着シートの第1粘着面に対する剥離力)は、上記剥離力差(|R-R|)を満足する範囲で適切に設定され、特定の範囲に限定されない。いくつかの態様において、上記剥離力Rは上記剥離力Rよりも低い。かかる態様では、第1剥離ライナーは、軽剥離側の剥離ライナーとして、第2剥離ライナーよりも先に両面粘着シートから剥離される。いくつかの好ましい態様において、上記剥離力Rは、例えば0.50N/50mm未満であり、0.30N/50mm以下であることが適当であり、より好ましくは0.20N/50mm以下であり、0.15N/50mm以下であってもよく、0.12N/50mm以下でもよく、0.10N/50mm以下でもよい。剥離力Rを低く設定することにより、剥離作業性が向上する傾向がある。また、軽剥離側の第1剥離ライナーの剥離力を低く設定することで、第1剥離ライナー剥離時に、粘着面に波打ちやスジ状の荒れなどの変形が生じにくい傾向がある。上記剥離力Rを示す第1剥離ライナーは、軽剥離側の剥離ライナーに好適である。いくつかの態様において、上記剥離力Rは、例えば0.01N/50mm以上であってよく、0.03N/50mm以上でもよく、0.05N/50mm以上でもよく、0.07N/50mm以上(例えば0.09N/50mm以上)でもよい。上記剥離力Rが所定値以上であることにより、例えば、剥離ライナー付き両面粘着シートを加工処理する場合に第1剥離ライナーが浮いたり剥がれたりする事象が生じにくく、第1粘着面は第1剥離ライナーにより良好に保護され得る。
第2剥離ライナーの剥離力R(両面粘着シートの第2粘着面に対する剥離力)は、上記剥離力差(|R-R|)を満足する範囲で適切に設定され、特定の範囲に限定されない。いくつかの態様において、上記剥離力Rは上記剥離力Rよりも高い。かかる態様では、第2剥離ライナーは、重剥離側の剥離ライナーとして、先に第1剥離ライナーが両面粘着シートから剥離された後に両面粘着シートから剥離される。いくつかの好ましい態様において、上記剥離力Rは、例えば1.0N/50mm未満であり、0.50N/50mm以下であることが適当であり、より好ましくは0.30N/50mm以下であり、0.25N/50mm以下であってもよく、0.20N/50mm以下でもよい。剥離力Rを低く設定することにより、剥離作業性が向上する傾向がある。例えば、第1剥離ライナーを第1粘着面から剥離して、露出した粘着面を被着体に貼り付けた後、第2剥離ライナーを第2粘着面から剥離する際に、良好な剥離性が得られやすい傾向がある。また、重剥離側の剥離ライナーの剥離力が高すぎないことは、粘着面の変形防止の観点から好ましい。いくつかの態様において、上記剥離力Rは、例えば0.10N/50mm以上であってよく、0.15N/50mm以上でもよく、0.20N/50mm以上でもよく、0.25N/50mm以上でもよい。上記剥離力Rが所定値以上であることにより、第1剥離ライナーの剥離力との差(剥離力差)が得られやすく、また、第2剥離ライナーにより第2粘着面は良好に保護され得る。上記剥離力Rを示す第2剥離ライナーは、重剥離側の剥離ライナーに好適である。
なお、剥離ライナーの剥離力(第1剥離ライナーの剥離力Rおよび第2剥離ライナーの剥離力R)は、使用する粘着剤の種類に応じて、剥離ライナー種を選定したり、剥離ライナー基材の材質および厚さ、剥離処理層の形成に用いる剥離処理剤の種類、剥離処理層の厚さおよび形成条件、等を選定することにより調節することができる。
第1剥離ライナーの剥離力Rおよび第2剥離ライナーの剥離力Rは、長さ150mm、幅50mmにカットした剥離ライナー付き両面粘着シートを用意して、23℃、50%RHの雰囲気下、引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定される。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
<剥離ライナー>
剥離ライナー(第1剥離ライナーおよび第2剥離ライナーを包含する。特に断りのないかぎり以下同じ。)は、特に限定されず、上記剥離力差(|R-R|)を満足する範囲で適当なものを使用することができる。使用し得る剥離ライナーの非限定的な例には、剥離ライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー;および、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性樹脂からなる剥離ライナー;が含まれる。
ここに開示される剥離ライナーとしては、剥離ライナー基材上に剥離処理層を有するものを好ましく採用し得る。上記剥離処理層は、剥離ライナー基材を剥離処理剤により表面処理して形成されたものであり得る。剥離処理剤は、シリコーン系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、硫化モリブデン(IV)等の公知の剥離処理剤であり得る。いくつかの態様において、シリコーン系剥離処理剤による剥離処理層を有する剥離ライナーを好ましく採用し得る。剥離処理層の厚さや形成方法は特に限定されず、剥離ライナーの粘着面側表面において適切な剥離性が発揮されるように設定することができる。
剥離ライナー基材としては、各種のプラスチックフィルムを用いることができる。この明細書においてプラスチックフィルムとは、典型的には非多孔質のシートであって、例えば不織布とは区別される(すなわち、不織布を含まない)概念である。上記剥離ライナー基材としては、非多孔質の構造であって、典型的には実質的に気泡を含まない(ボイドレスの)樹脂フィルムを好ましく使用し得る。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造(例えば3層構造)であってもよい。
上記プラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、アセテート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の環状ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂のいずれか1種または2種以上の混合物から形成された剥離ライナー基材を用いることができる。なかでも好ましい剥離ライナー基材として、ポリエステル系樹脂から形成されたポリエステル系樹脂フィルム(例えばPETフィルム)が挙げられる。
上述した剥離ライナー基材として用いられるプラスチックフィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、上記プラスチックフィルムは、単層構造であってもよく、2層以上のサブ層を含む多層構造であってもよい。上記プラスチックフィルムには、酸化防止剤、老化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料や染料等の着色剤、滑剤、充填剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、核剤等の剥離ライナー基材に用いられ得る公知の添加剤が配合されていてもよい。多層構造のプラスチックフィルムにおいて、各添加剤は、すべてのサブ層に配合されていてもよく、一部のサブ層にのみ配合されていてもよい。
剥離ライナーの厚さは特に限定されず、例えば10μm~500μm程度であり得る。剥離ライナーの強度や寸法安定性の観点から、剥離ライナーの厚さは、20μm以上であることが適当であり、30μm以上であることが好ましく、40μm以上でもよく、50μm以上でもよく、60μm以上でもよく、70μm以上でもよい。十分な厚さを有する剥離ライナーによって粘着面が保護されることで、粘着面の平滑性は保持されやすい。また、剥離ライナーの取扱い性(例えば、巻回しやすさ)等の観点から、剥離ライナーの厚さは、300μm以下であることが適当であり、200μm以下であることが好ましく、150μm以下でもよく、100μm以下でもよい。剥離ライナーの厚さを所定値以下とすることで、両面粘着シートからの除去がスムーズとなりやすい。
第1剥離ライナーおよび第2剥離ライナーの厚さは同じであってもよく、異なっていてもよい。第2剥離ライナーの厚さtに対する第1剥離ライナーの厚さtの比、すなわち厚さ比(t/t)は、例えば0.3~10程度とすることができる。いくつかの態様において、上記厚さ比(t/t)は、0.5~5程度であってもよく、0.8~1.2程度でもよい。他のいくつかの態様において、比(t/t)は、0.3以上1未満であってもよく、0.5以上1未満でもよく、0.5~0.9でもよい。上記厚さ比(t/t)を有する第1剥離ライナーおよび第2剥離ライナーを使用することにより、良好な剥離作業性や取扱い性が得られやすい。
<粘着剤層>
ここに開示される両面粘着シートにおいて、粘着剤層(第1粘着剤層および第2粘着剤層を備える態様においては、第1粘着剤層および第2粘着剤層の少なくとも一方の粘着剤層。特に断りがないかぎり以下同じ。)は、着色されている。着色された粘着剤層を有する両面粘着シートによると、被着体を接合しつつ、被着体を隠蔽することができる。また、粘着剤層の着色の程度を調整することにより、光透過率等の光学特性の調節、被着体表面への意匠性や色味の付与が可能である。
(粘弾性特性)
ここに開示される両面粘着シートにおいて、粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率(0℃貯蔵弾性率)が0.95MPa以下であることによって特徴付けられる。上記粘着剤層の0℃貯蔵弾性率を0.95MPa以下とすることにより、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形が高度に抑制され得る。より具体的には、上記のように第1剥離ライナーの剥離力Rと第2剥離ライナーの剥離力Rとの剥離力差が0.07N/50mm以上に設計されていることにより、剥離ライナー剥離時に剥離ライナーが粘着面に引っ張られて粘着面の厚さ方向に変形する事象(波打ちやスジ状の荒れ等)の発生が抑制されることに加えて、剥離ライナー剥離の際に粘着面に視認可能なサイズの変形が生じても、上記変形は、上記0℃貯蔵弾性率に基づく粘着剤の表面形状緩和作用により短時間のうちに緩和されて、被着体に貼り付けられた後には上記変形が存在しないか、あるいは上記変形が高度に抑制されたものとなる。また、着色された粘着剤層を有する両面粘着シートでは、粘着面の変形が目立ちやすいが、上記0℃貯蔵弾性率を有する粘着剤層の粘着面では上記変形が高度に抑制されるので、優れた外観品質を有するものとなる。
いくつかの態様において、粘着面の変形抑制の観点から、上記0℃貯蔵弾性率は、0.85MPa以下であり、0.75MPa以下であってもよく、0.65MPa以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記0℃貯蔵弾性率は、0.60MPa以下であり、より好ましくは0.50MPa以下、さらに好ましくは0.40MPa以下、特に好ましくは0.30MPa以下であり、0.25MPa以下であってもよく、0.22MPa以下でもよく、0.20MPa以下でもよく、0.18MPa以下でもよい。また、両面粘着シートの加工性向上等の観点から、上記0℃貯蔵弾性率は、いくつかの態様において、凡そ0.01MPa以上であり、凡そ0.05MPa以上であってもよい。また、剥離ライナーを粘着剤層表面(粘着面)から所定の速度で剥がす際に、粘着剤層表面が剥離ライナーに引っ張られて変形することを抑制する観点から、いくつかの好ましい態様において、上記0℃貯蔵弾性率は、凡そ0.10MPa以上であり、より好ましくは0.15MPa以上であり、0.20MPa以上であってもよく、0.24MPa以上でもよい。他のいくつかの態様において、上記0℃貯蔵弾性率は、0.35MPa以上であってもよく、0.45MPa以上でもよく、0.55MPa以上でもよい。上記0℃貯蔵弾性率は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
特に限定するものではないが、粘着剤層の23℃での貯蔵弾性率(23℃貯蔵弾性率)は、被着体への密着性等の観点から、いくつかの態様において、凡そ0.15MPa以下であり、好ましくは0.13MPa以下、より好ましくは0.12MPa以下、さらに好ましくは0.11MPa以下であり、0.10MPa未満であってもよい。上記23℃貯蔵弾性率を所定値以下とすることで、粘着剤層は剥離ライナーの平滑な剥離面に密接するので、剥離ライナー剥離後も平滑な粘着面となりやすい。また、被着体に貼り付けた後には、粘着剤層は被着体に密着し、浮きや気泡混入のない均質な接着界面となりやすい。いくつかの好ましい態様において、上記23℃貯蔵弾性率は、0.08MPa以下であり、0.07MPa以下であってもよく、0.06MPa以下でもよく、0.05MPa以下でもよい。また、いくつかの態様において、上記23℃貯蔵弾性率は、凡そ0.005MPa以上であり、凡そ0.01MPa以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、上記23℃貯蔵弾性率は、凡そ0.02MPa以上であり、0.03MPa以上であってもよく、0.05MPa以上でもよく、0.06MPa以上でもよく、0.07MPa以上でもよく、0.08MPa以上でもよい。23℃貯蔵弾性率が高くなるほど、粘着剤層の凝集力は向上する傾向があり、例えば加工性が向上し、また、適度な凝集力を有することで接着信頼性が得られやすい傾向がある。上記23℃貯蔵弾性率は、具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
(光透過率)
着色された粘着剤層の光透過率は、使用目的や着色の目的等により異なり、特定の範囲に限定されるものではないが、通常、着色された粘着剤層は、透明な粘着剤層よりも低い光透過率を有する。例えば、いくつかの態様において、粘着剤層の波長550nmの光線透過率(550nm光線透過率。可視光透過率ともいう。)は80%未満であり、70%未満であってもよく、60%未満でもよく、50%未満でもよく、40%未満でもよい。粘着剤層の着色により可視光透過率が低下した両面粘着シートは、被着体の隠蔽に好適であり、意匠性の付与にも利用することができる。また、光漏れ防止等を目的とする遮光性粘着シートとしても利用可能である。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の550nm光線透過率は、30%以下であり、20%以下であってもよく、15%以下でもよく、10%以下でもよく、8%以下でもよく、6%以下でもよい。可視光透過率が低いほど優れた隠蔽性を発揮することができる。より高い隠蔽性が求められる場合、上記550nm光線透過率は、5%未満であってもよく、4%未満でもよく、3%未満でもよく、2%未満でもよく、1%未満でもよく、0.5%未満でもよい。上記550nm光線透過率の下限は特に制限されず、実質的に0%、すなわち検出限界以下であってもよく、0.1%以上であってもよく、1%以上でもよく、3%以上でもよく、5%以上でもよい。いくつかの態様において、上記550nm光線透過率は、10%以上であってもよく、20%超でもよく、30%超でもよい。ある程度の可視光透過率を有することで、被着体を適度に隠蔽したり、被着体(例えば金属材料)の外観を調整したり、被着体の質感を残した意匠性や色味を付与することができる。また、適度に光透過性を有する粘着剤層は、粘着特性の維持や、生産性等の観点からも好ましい。粘着剤層の550nm光線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
特に限定するものではないが、粘着剤層の波長1380nmの光線透過率(1380nm光線透過率。赤外線透過率ともいう。)は90%未満であり、80%未満であってもよく、70%未満でもよく、60%未満でもよく、50%未満でもよく、40%未満でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の1380nm光線透過率は、30%以下であり、20%以下であってもよく、15%以下でもよく、10%以下でもよく、5%以下でもよく、3%以下でもよい。上記赤外線透過率が制限された粘着剤層によると、赤外線を含む広い波長域の光線を遮断することができ、優れた遮光性が得られやすい。また、例えば、赤外線センサ周辺で用いられる場合には、赤外線を遮断することで、該センサの作動精度低下を防止し得る。上記1380nm光線透過率の下限は特に制限されず、実質的に0%、すなわち検出限界以下であってもよく、0.1%以上であってもよく、1%以上でもよく、3%以上でもよく、5%以上でもよい。いくつかの態様において、上記1380nm光線透過率は、10%以上であってもよく、30%以上でもよく、50%以上でもよい。粘着剤層の1380nm光線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
粘着剤層の可視光透過率と赤外線透過率との相対的関係は特に限定されない。いくつかの態様において、粘着剤層の赤外線透過率TIR[%]と可視光透過率TVL[%]との比(TIR/TVL)は、例えば0.1~10の範囲内であり、5以下であってもよく、3以下でもよく、また、0.5以上であってもよく、1以上(例えば1超)でもよく、2以上でもよい。両面粘着シートの使用目的や適用箇所等に応じて、比(TIR/TVL)を適切に設定することにより、目的とする被着体隠蔽性や赤外線遮蔽性を実現することができる。
(アクリル系ポリマー)
ここに開示される両面粘着シートを構成する粘着剤層はアクリル系ポリマーを含む。上記粘着剤層は、典型的にはアクリル系ポリマーをベースポリマーとする粘着剤層である。そのような粘着剤層は、アクリル系粘着剤層ともいう。なお、ベースポリマーとは、粘着剤層に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)の主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。また、粘着剤および粘着剤層に含まれ得る成分に関する下記の説明は、特に断りがないかぎり粘着剤(層)を形成するために用いられる粘着剤組成物にも適用可能である。
また、本明細書において、「アクリル系ポリマー」とは、該ポリマーを構成するモノマー単位として、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来するモノマー単位を含む重合物をいう。以下、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを「アクリル系モノマー」ともいう。したがって、この明細書におけるアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーに由来するモノマー単位を含むポリマーとして定義される。なお、この明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルを包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とはアクリレートおよびメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリルおよびメタクリルを、それぞれ包括的に指す意味である。
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。また、Rは炭素原子数1~20の鎖状アルキル基である。以下、このような炭素原子数の範囲を「C1-20」と表すことがある。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、RがC1-14(例えばC1-10、典型的にはC4-8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとすることが適当である。
がC1-20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、特に限定されないが、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分に占めるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、典型的には50重量%超であり、例えば70重量%以上とすることができ、85重量%以上としてもよく、90重量%以上(例えば90重量%超)としてもよく、92重量%以上が適当であり、94重量%以上としてもよく、95重量%超としてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの割合の上限は特に限定されないが、99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましく、あるいは、カルボキシ基含有モノマー等の副モノマーに基づく特性(例えば凝集力)を好ましく発揮させる観点から、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。あるいは、アクリル系ポリマーは実質的にアルキル(メタ)アクリレートのみを重合したものであってもよい。
いくつかの態様において、上記式(1)中のRが水素原子であってRがC4-8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC4-8アルキルアクリレートともいう。)を主モノマーとすることが好ましい。C4-8アルキルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーによると、粘着剤層の0℃貯蔵弾性率を適度に低下させることができる。モノマー成分としてC4-8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるC4-8アルキルアクリレートの割合は、例えば50重量%超であり、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上(例えば90重量%超)であることがより好ましく、より好ましくは92重量%以上であり、94重量%以上(例えば95重量%超)であってもよい。C4-8アルキルアクリレートの割合の上限は特に限定されないが、例えば99重量%以下とすることが好ましく、カルボキシ基含有モノマー等の副モノマーに基づく特性(例えば凝集力)を好ましく発揮させる観点から、98重量%以下(例えば97重量%未満)としてもよい。C4-8アルキルアクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。C4-8アルキルアクリレートの好適例として、n-ブチルアクリレート(BA)、n-ヘプチルアクリレート(n-HpA)および2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
いくつかの態様において、上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はBAを含む。アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるBAの割合は、例えば50重量%超であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上(例えば90重量%超)であり、92重量%以上でもよく、94重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、96重量%以上でもよい。BAを主モノマー成分として含むアクリル系ポリマーによると、被着体に対する接着信頼性のよい粘着剤が得られやすい。また、モノマー成分としてBAを所定量以上用いることで、例えば黒色着色剤(例えばカーボンブラック)等の着色剤を粘着剤層内に良好に分散させつつ、接着力等の粘着特性を良好に維持することができる。モノマー成分中のBAの割合は、他の共重合性モノマーを共重合する観点から、99重量%以下であってもよく、97重量%以下でもよい。
いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む。ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分を用いて重合されたアクリル系ポリマーは、n-ブチルアクリレート(BA)や2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)等の他のアルキルアクリレートの重合物よりも柔軟性に優れる。その理由は、特に限定的に解釈されるものではないが、ヘプチルアクリレートをモノマー単位として含むポリマーは、ガラス転移温度が低いことに加え、粘着剤内において主鎖間の空間が相対的に大きいためと考えられる。モノマー成分としてヘプチルアクリレートを含むアクリル系ポリマーを用いることにより、0℃貯蔵弾性率が低い粘着剤を形成しやすく、表面形状緩和性のよい粘着剤が得られやすい。ヘプチルアクリレートのなかでも、柔軟性の観点から、n-ヘプチルアクリレートが好ましい。n-ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含んで合成されたアクリル系ポリマーは、比較的長い直鎖状の側鎖を有するため、主鎖間の空間がより大きくなりやすいと考えられる。
アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるヘプチルアクリレートの割合は、例えば、いくつかの態様において、50重量%以上(例えば50重量%超)であり、70重量%以上が適当であり、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上(例えば90重量%超)、特に好ましくは92重量%以上であり、94重量%以上でもよく、95重量%以上でもよく、96重量%以上でもよい。ヘプチルアクリレートの使用量を増大することにより、その使用効果(例えば、粘着剤の0℃貯蔵弾性率の低下、ひいては粘着剤表面形状緩和作用の向上)を効果的に発現させることができる。一方、モノマー成分中のヘプチルアクリレートの割合の上限は100重量%であり、99重量%以下であってもよく、98重量%以下でもよい。カルボキシ基含有モノマーや、その他のモノマーを共重合する観点から、いくつかの態様において、モノマー成分中のヘプチルアクリレートの割合は、97重量%未満である。いくつかの好ましい態様において、モノマー成分中のヘプチルアクリレートの割合は、96重量%以下であり、95重量%以下であってもよく、94重量%以下でもよい。
モノマー成分としてヘプチルアクリレートを使用する態様において、アクリル系ポリマーには、ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートが共重合されていてもよい。上記ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば上記式(1)で表される化合物であって、ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記ヘプチルアクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、上記モノマー成分に含まれるアルキル(メタ)アクリレートの総量に占めるヘプチルアクリレートの割合は、例えば50重量%以上(具体的には50~100重量%、例えば50重量%超)であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上であり、99重量%以上であってもよく、100重量%でもよい。このようなモノマー組成を採用することにより、ヘプチルアクリレートの使用効果が効果的に発揮され得る。
いくつかの態様において、上記モノマー成分は、バイオマス由来のアルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート(以下「バイオマスアルキル(メタ)アクリレート」ともいう。)を含み得る。近年、地球温暖化等の環境問題が重視されるようになり、石油等の化石資源系材料の使用量を低減することが望まれている。このような状況下、粘着剤の分野においても化石資源系材料の使用量を低減することが求められている。バイオマスアルキル(メタ)アクリレートを用いることにより、化石資源系材料への依存抑制に配慮されたアクリル系粘着剤を好適に実現することができる。
バイオマスアルキル(メタ)アクリレートは、特に限定されず、例えば、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルである。バイオマス由来のアルカノールの例には、バイオマスエタノール、パーム油やパーム核油、ヤシ油、ヒマシ油等の植物原料に由来するアルカノール、等が含まれる。バイオマス由来のアルカノールの炭素原子数が3以上である場合、該アルカノールは、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーの合成に用いられるバイオマスアルキル(メタ)アクリレートとして、バイオマス由来のアルカノールと、非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルが用いられる。かかるバイオマスアルキル(メタ)アクリレートでは、アルカノールの炭素原子数が多いほど、該バイオマスアルキル(メタ)アクリレートに含まれる総炭素数に占めるバイオマス由来炭素の個数割合、すなわちアルキル(メタ)アクリレートのバイオマス炭素比が高くなる。したがって、上記のバイオマスアルキル(メタ)アクリレートでは、バイオマス由来となるアルキル基の炭素数が多いことが、化石資源系材料への依存度低減の点で望ましい。その一方で、アルキル(メタ)アクリレートを構成するアルキル基の炭素数が多すぎると、接着力等の粘着特性が得られにくくなる傾向があり、また合成や取扱い性、コストなど生産性の点でも不利になり得る。バイオマスアルキル(メタ)アクリレートとして、バイオマス由来のアルカノールと、非バイオマス由来の(メタ)アクリル酸とのエステルを用いる態様では、粘着特性と、化石資源系材料への依存度低減(より具体的には上記アルキル(メタ)アクリレートのバイオマス炭素比)とをバランスよく両立する材料を用いることが望ましい。
いくつかの好ましい態様において、ヘプチルアクリレートとして、バイオマス由来のヘプチルアクリレート(バイオマスヘプチルアクリレート)が用いられる。バイオマスヘプチルアクリレートを用いることにより、化石資源系材料への依存度を低減しつつ、ここに開示される技術による効果を実現することができる。上記バイオマスヘプチルアクリレートは、バイオマス由来のアルカノールと、バイオマス由来または非バイオマス由来のアクリル酸とのエステルであり、例えば、バイオマス由来のアルカノールと非バイオマス由来のアクリル酸とのエステルが用いられ得る。かかる化合物では、ヘプチル基のみがバイオマス由来となる。バイオマス由来のヘプチルアクリレートとしては、バイオマス由来のn-ヘプチルアクリレート(バイオマスn-ヘプチルアクリレート)の使用が好ましい。
上記アクリル系ポリマーのモノマー成分に占めるバイオマスアルキル(メタ)アクリレート(好ましくはバイオマスヘプチルアクリレート)の割合は、例えば、いくつかの態様において、50重量%以上(例えば50重量%超)であり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、92重量%以上でもよく、94重量%以上でもよく、96重量%以上でもよい。また、モノマー成分のうちバイオマスアルキル(メタ)アクリレート(好ましくはバイオマスヘプチルアクリレート)の割合は、97重量%未満であり、いくつかの態様において、95重量%以下であってもよく、93重量%以下でもよく、91重量%以下でもよい。
また、アクリル系ポリマーのモノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。カルボキシ基含有モノマーは、その極性に基づき凝集力を向上することができる。また、イソシアネート系、エポキシ系架橋剤等の架橋剤を使用する場合には、当該カルボキシ基がアクリル系ポリマーの架橋点となり得る。カルボキシ基含有モノマーを使用することで、適度な凝集力を有する粘着剤が得られやすい。また、カルボキシ基含有モノマーの使用により、例えば高極性材料等の被着体に対して、より優れた接着性が発揮され得る。さらに、適当量のカルボキシ基含有モノマーを共重合させることで、例えばカーボンブラック等の黒色着色剤を粘着剤に配合した場合にも、当該着色剤を層内に良好に分散させやすく、粘着特性を好ましく維持することができる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イソクロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸が挙げられる。また、カルボキシ基含有モノマーは、カルボキシ基の金属塩(例えばアルカリ金属塩)を有するモノマーであってもよい。カルボキシ基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも好ましいカルボキシ基含有モノマーとして、AAおよびMAAが挙げられる。AAが特に好ましい。1種または2種以上のカルボキシ基含有モノマーを使用する場合、上記カルボキシ基含有モノマーに占めるAAの割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。特に好ましい態様において、カルボキシ基含有モノマーは、実質的にAAのみからなる。AAは、そのカルボキシ基に基づく極性、架橋点としての役割、Tg(106℃)等の複合的な作用から、ここに開示されるカルボキシ基含有モノマーにおいて、粘着特性をバランスよく実現するうえで、最適なモノマー材料の一つと考えられる。
アクリル系ポリマーのモノマー成分中のカルボキシ基含有モノマーの割合は、特に限定されず、0.1重量%以上であってもよく、0.5重量%以上でもよく、1重量%以上でもよく、2重量%以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記モノマー成分中のカルボキシ基含有モノマーの割合は、3重量%よりも多く(具体的には3.0重量%超)、好ましくは4.0重量%以上であり、より好ましくは4.5重量%以上、さらに好ましくは5.0重量%以上(例えば5.0重量%超)、特に好ましくは5.5重量%以上であり、6.0重量%以上であってもよく、6.5重量%以上でもよく、7.0重量%以上でもよい。カルボキシ基含有モノマーの使用量を多くすることで、カルボキシ基含有モノマーの作用に基づき粘着剤層の凝集力を向上させることができる。また、カルボキシ基含有モノマーの量は、例えば、モノマー成分の20重量%以下とすることが適当であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。いくつかの好ましい態様において、上記カルボキシ基含有モノマーの量は、10重量%以下であってもよく、8重量%以下でもよく、6重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。カルボキシ基含有モノマー(例えばAA)の使用量を低減することで、0℃貯蔵弾性率は低下する傾向がある。
アクリル系ポリマーには、カルボキシ基含有モノマー以外の官能基含有モノマー(任意官能基含有モノマー)が共重合されていてもよい。アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得る任意官能基含有モノマーとしては、水酸基(OH基)含有モノマー(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等)、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー((メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等)、アミノ基含有モノマー(アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等)、エポキシ基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー(N-ビニル-2-ピロリドン、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー類等が挙げられる。上記任意官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分が上述の任意官能基含有モノマーを含む場合、該モノマー成分における任意官能基含有モノマーの含有量は特に限定されない。任意官能基含有モノマーの使用による効果を適切に発揮する観点から、モノマー成分における任意官能基含有モノマーの含有量は、例えば0.1重量%以上とすることができ、0.5重量%以上とすることが適当であり、1重量%以上としてもよい。また、例えば、アクリル系ポリマーのモノマー成分がヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーを含む態様において、これらのモノマー成分との関係で粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分における任意官能基含有モノマーの含有量は、40重量%以下とすることが適当であり、20重量%以下とすることが好ましく、10重量%以下(例えば5重量%以下)としてもよい。いくつかの態様において、モノマー成分における任意官能基含有モノマーの含有量は、例えば3重量%未満であり、1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーのモノマー成分が任意官能基含有モノマーを実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
なお、本明細書において、モノマー成分がモノマーA(例えば上記任意官能基含有モノマー)を実質的に含まないとは、少なくとも意図的には当該モノマーAを用いないことをいい、当該モノマーAが例えば0.01重量%以下程度、非意図的に含まれることは許容され得る。
また、上記任意官能基含有モノマーとして水酸基含有モノマーを用いてもよい。その場合、水酸基含有モノマーの含有量は、モノマー成分中、凡そ10重量%以下(例えば0.001~10重量%)とすることが適当であり、好ましくは凡そ5重量%以下、より好ましくは凡そ2重量%以下である。いくつかの態様において、モノマー成分における水酸基含有モノマーの含有量は、例えば1重量%未満であってもよく、0.5重量%未満でもよく、0.3重量%未満でもよく、0.1重量%未満でもよく、0.01重量%未満でもよい。アクリル系ポリマーのモノマー成分は水酸基含有モノマーを実質的に含まなくてもよい。ここに開示される技術においては、水酸基含有モノマーの使用量を制限したり、不使用とするモノマー組成で、所望の特性および効果を好ましく実現することができる。
アクリル系ポリマーの共重合成分として使用される官能基含有モノマー全体(カルボキシ基含有モノマーを含む官能基含有モノマー全体)に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合は、カルボキシ基含有モノマーを共重合する効果を効果的に発揮させる観点から、30重量%以上が適当であり、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、例えば95重量%以上であってもよく、97重量%以上であってもよく、98重量%以上でもよく、99重量%以上(例えば99.9重量%以上)でもよい。上記官能基含有モノマー全体に占めるカルボキシ基含有モノマーの割合の上限は100重量%であり、例えば95重量%以下であってもよい。
アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、凝集力向上等の目的で、上述した官能基含有モノマー以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分の例としては、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン等の芳香族ビニル化合物;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート(例えばフェニル(メタ)アクリレート)、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート(例えばフェノキシエチル(メタ)アクリレート)、アリールアルキル(メタ)アクリレート(例えばベンジル(メタ)アクリレート)等の芳香族性環含有(メタ)アクリレート;オレフィン系モノマー;塩素含有モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;等が挙げられる。上記他の共重合成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
かかる他の共重合成分の量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、使用による効果を適切に発揮する観点から、0.05重量%以上とすることが適当であり、0.5重量%以上としてもよい。また、粘着性能のバランスをとりやすくする観点から、モノマー成分における他の共重合成分の含有量は、20重量%以下とすることが適当であり、必須モノマー成分に基づく粘着特性を好適に発揮させる観点から、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは5重量%未満であり、例えば3重量%未満であってもよく、1重量%未満でもよい。ここに開示される技術は、モノマー成分が他の共重合成分を実質的に含まない態様でも好ましく実施され得る。
アクリル系ポリマーは、他のモノマー成分として、(メタ)アクリロイル基やビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性官能基(典型的にはラジカル重合性官能基)を少なくとも2つ有する多官能モノマーを含んでもよい。モノマー成分として、多官能モノマーを用いることにより、粘着剤層の凝集力を高めることができる。多官能モノマーは、架橋剤として用いることができる。多官能モノマーとしては、特に限定されず、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
多官能モノマーの使用量は特に限定されず、該多官能モノマーの使用目的が達成されるように適切に設定することができる。多官能モノマーの使用量は、上記モノマー成分の凡そ3重量%以下とすることができ、凡そ2重量%以下が好ましく、凡そ1重量%以下(例えば凡そ0.5重量%以下)がより好ましい。多官能モノマーを使用する場合における使用量の下限は、0重量%より大きければよく、特に限定されない。通常は、多官能モノマーの使用量をモノマー成分の凡そ0.001重量%以上(例えば凡そ0.01重量%以上)とすることにより、該多官能モノマーの使用効果が適切に発揮され得る。
特に好ましい態様において、アクリル系ポリマーとして、実質的にヘプチルアクリレート(好ましくはn-ヘプチルアクリレート)とカルボキシ基含有モノマー(好ましくはアクリル酸)とからなるモノマー成分を用いて合成されたアクリル系ポリマーが用いられる。上記のモノマー組成によると、ヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの作用が効果的に発揮され、良好な粘着特性を得つつ、所定値以下の0℃貯蔵弾性率を好ましく実現することができる。そのような観点から、上記モノマー成分に占めるヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの合計割合は、90重量%以上(90~100重量%)が適当であり、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上、さらに好ましくは99.5重量%超、特に好ましくは99.9重量%超(例えば99.99重量%超)であり、上記モノマー成分に占めるヘプチルアクリレートおよびカルボキシ基含有モノマーの合計割合は、100重量%であってもよい。
上記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分のバイオマス炭素比(アクリル系ポリマーのバイオマス炭素比)は、例えば1%以上であってもよく、10%以上が適当であり、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上(例えば50%超)であり、70%以上でもよく、80%以上でもよく、90%~100%でもよい。このように設計することにより、化石資源系材料への依存抑制に配慮したアクリル系粘着剤が得られる。
特に限定するものではないが、アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が凡そ-15℃以下(例えば凡そ-70℃以上-15℃以下)となるように設計されていることが適当である。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーの合成に用いられるモノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。
Tgの算出に使用するホモポリマーのガラス転移温度としては、公知資料、具体的には「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。本文献に複数種類の値が記載されているモノマーについては、最も高い値を採用する。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007-51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
特に限定するものではないが、耐衝撃性や、被着体に対する密着性の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、凡そ-25℃以下であることが有利であり、好ましくは凡そ-35℃以下、より好ましくは凡そ-40℃以下である。いくつかの態様において、凝集力の観点から、アクリル系ポリマーのTgは、例えば凡そ-70℃以上であり、凡そ-65℃以上でもよく、凡そ-60℃以上でもよく、凡そ-55℃以上でもよい。ここに開示される技術は、アクリル系ポリマーのTgが凡そ-65℃以上-35℃以下(例えば、凡そ-55℃以上-40℃以下)である態様で好ましく実施され得る。アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、エマルション重合法、バルク重合法、懸濁重合法、光重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく採用し得る。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃~170℃程度(典型的には40℃~140℃程度)とすることができる。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル等の酢酸エステル類;ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1~4の一価アルコール類);tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して凡そ0.005~1重量部程度(典型的には凡そ0.01~1重量部程度)の範囲から選択することができる。
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、上記の0℃貯蔵弾性率特性を実現し得る適当なMwを有するアクリル系ポリマーが用いられる。例えば、アクリル系ポリマーのMwは、凡そ10×10~500×10の範囲であり得る。粘着性能の観点から、ベースポリマーのMwは、凡そ20×10以上であってもよく、凡そ30×10以上でもよく、凡そ40×10以上でもよく、50×10以上でもよい。いくつかの態様において、アクリル系ポリマーのMwは60万よりも大きく、65万よりも大きくてもよく、70万以上が適当であり、75万以上でもよい。アクリル系ポリマーのMwが大きいほど、良好な凝集力を示す粘着剤が得られやすい傾向がある。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーのMwは80万以上であり、85万以上であってもよく、90万以上でもよく、100万以上(例えば100万超)でもよく、120万以上でもよく、140万以上でもよく、150万以上でもよく、160万以上でもよい。例えば、ヘプチルアクリレートを含むモノマー組成によると、粘度を低く維持しやすいため、高分子量体の合成性がよく、上記Mwを有するアクリル系ポリマーが得られやすい。また、モノマー単位としてヘプチルアクリレートを含み、かつMwが所定値以上のアクリル系ポリマーを使用することにより、ポリマーの化学構造に基づく粘弾性特性(具体的には0℃貯蔵弾性率)と、分子量に基づく凝集力に基づき、粘着面の表面形状緩和作用と粘着特性とを好ましく両立することができる。一方、接着力等の粘着特性、合成容易性等の観点から、アクリル系ポリマーのMwは、通常、凡そ300万以下であることが適当であり、好ましくは250万以下、より好ましくは200万以下、さらに好ましくは180万以下であり、150万以下であってもよく、130万以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマーのMwは、110万以下であってもよく、100万以下でもよく、95万以下でもよく、90万以下でもよい。
アクリル系ポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、GPC測定装置として商品名「HLC-8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の条件で測定して求めることができる。後述の実施例においても同様である。
[GPCの測定条件]
サンプル濃度:0.2重量%(テトラヒドロフラン溶液)
サンプル注入量:10μL
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流量(流速):0.6mL/分
カラム温度(測定温度):40℃
カラム:
サンプルカラム:商品名「TSKguardcolumn SuperHZ-H」1本+商品名「TSKgel SuperHZM-H」2本」(東ソー社製)
リファレンスカラム:商品名「TSKgel SuperH-RC」1本(東ソー社製)
検出器:示差屈折計(RI)
標準試料:ポリスチレン
(着色剤)
ここに開示される技術において、着色された粘着剤層は、典型的には着色剤を含む。着色剤を使用することによって、粘着剤層は着色され、目的とする光学特性(光透過率等)や隠蔽性、意匠性、色味を有するものとなり得る。着色剤は、例えば、黒色、灰色、白色、赤色、青色、黄色、緑色、黄緑色、橙色、紫色、金色、銀色、パール色等の着色剤であり得る。上記着色剤は、典型的には粘着剤層の構成材料中に分散した状態(溶解した状態であってもよい。)で該粘着剤層に含まれ得る。着色剤としては、従来公知の顔料や染料を用いることができる。顔料としては、無機顔料や有機顔料が挙げられる。着色剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ここに開示される両面粘着シートが非着色の粘着剤層を含む場合、かかる粘着剤層は着色剤を実質的に含まない。
着色剤としては、特に限定されず、例えば、粘着剤層内を進行する光を吸収し減衰させ得る成分であり、当該着色剤を粘着剤層に含有させることで、粘着剤層の光透過率を減少する成分(したがって「光透過率低減成分」ともいう。)であり得る。そのような着色剤(以下「第1着色剤」ともいう。)としては、少量の使用で隠蔽性や遮光性を効率よく調節し得ることから、黒色着色剤を好ましく使用し得る。黒色着色剤の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、アニリンブラック、ペリレンブラック、シアニンブラック、チタンブラック、無機顔料ヘマタイト、活性炭、二硫化モリブデン、クロム錯体、アントラキノン系着色剤等が挙げられる。黒色着色剤は、1種を単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は着色剤(第1着色剤)としてカーボンブラック粒子を含む。用いられるカーボンブラック粒子としては、一般にカーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)と称されるものを特に制限なく用いることができる。また、カーボンブラック粒子として、カルボキシル基やアミノ基、スルホン酸基、ケイ素含有基(例えばアルコキシシリル基、アルキルシリル基)等の官能基を有する表面改質カーボンブラック粒子を用いることも可能である。このような表面改質カーボンブラック粒子は、自己分散型カーボンブラックとも称され、分散剤の添加が不要になったり、その添加量を低減することができる。上記カーボンブラック粒子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
少量の使用で粘着剤層の光透過率を効率よく調節し得ることから、粒子状の着色剤(顔料)を好ましく使用し得る。いくつかの好ましい態様において、平均粒径約10nm以上(例えば凡そ30nm以上)の着色剤(例えば、カーボンブラック等の粒子状黒色着色剤)を用いることができる。上記平均粒径は、例えば凡そ50nm以上であり、凡そ100nm以上であってもよく、凡そ150nm以上でもよく、凡そ200nm以上でもよく、凡そ300nm以上でもよく、凡そ350nm以上でもよい。上記着色剤の平均粒径の上限は特に限定されず、例えば凡そ3000nm以下であり、凡そ1000nm以下であってもよい。光透過率低減の観点から、上記着色剤の平均粒径は、凡そ500nm以下が適当であり、凡そ300nm以下であってもよく、200nm以下でもよい。
なお、本明細書中における着色剤の平均粒径は、体積平均粒子径を指し、具体的には、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を指す。測定装置としては、例えば、マイクロトラック・ベル社製の製品名「マイクロトラックMT3000II」またはその相当品を用いることができる。
ここに開示される技術において、粘着剤組成物への着色剤(好適にはカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)の添加形態は特に限定されない。カーボンブラック粒子等の着色剤は、当該粒子が分散媒に分散した状態の分散液の形態で粘着剤組成物に添加され得る。分散液を構成する分散媒は特に限定されず、水(イオン交換水、逆浸透水、蒸留水等)や、各種有機溶媒(エタノール等のアルコール類;アセトン等のケトン類;ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類;酢酸エチル等のエステル類;トルエン等の芳香族炭化水素類;それらの混合溶媒)、水と上記有機溶媒との水性混合溶媒が挙げられる。上記分散液は、上述の分散剤を含むものであってもよい。上記分散液を粘着剤組成物に混合することによって、上記粘着剤組成物は着色剤(好適にはカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)を含有し、さらに分散剤も含有し得る。
粘着剤層が第1着色剤を含む態様において、第1着色剤(好適にはカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)の含有量は、被着体隠蔽性や光学特性(光透過率等)の調節、要求される粘着特性等を考慮して適切に設定され、特定の範囲に限定されない。また、第1着色剤の含有量は、粘着剤種、第1着色剤の形状や粒径、粘着剤との相溶性等によっても異なり得る。粘着剤層における第1着色剤の含有量は、凡そ0.01重量%以上であることが適当であり、0.05重量%以上であってもよく、0.1重量%以上でもよく、被着体隠蔽性の観点から、好ましくは凡そ0.3重量%以上、より好ましくは凡そ0.5重量%以上である。いくつかの態様において、上記第1着色剤の含有量は、凡そ1重量%以上(例えば1重量%超)であることが適当であり、好ましくは凡そ2重量%以上である。また、粘着剤層が第1着色剤を含む態様または第1着色剤を含まない態様において、上記第1着色剤(好適にはカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)の含有量は、凡そ30重量%以下とすることができ、凡そ20重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ10重量%以下、より好ましくは凡そ7重量%以下、さらに好ましくは凡そ5重量%以下であり、凡そ3重量%以下であってもよい。いくつかの態様において、上記第1着色剤(好適にはカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)の含有量は、凡そ2重量%以下であってもよく、凡そ1重量%以下でもよく、凡そ0.5重量%以下(例えば0.3重量%以下)でもよい。第1着色剤の含有量を制限することで、接着力等の粘着特性を維持しやすい傾向がある。
他のいくつかの態様において、粘着剤層は、着色剤として、以下で説明する第2着色剤(例えば以下で説明する金属酸化物)を含む態様で実施され得る。第2着色剤は第1着色剤とは異なる着色剤として定義される。例えば、粘着剤層が少なくとも2種類の着色剤を含む場合、複数用いられる着色剤のうち少なくとも1種は上述の第1着色剤であり、上記着色剤のうち他の1種は以下で説明する第2着色剤であり、第1着色剤と第2着色剤とは併用される。他のいくつかの態様において、粘着剤層は、第2着色剤を含み、上述の第1着色剤を実質的に含まないものであり得る。
第2着色剤は、特に限定するものではないが、例えば、第1粘着剤と同様、粘着剤層の光透過率を減少する成分であってもよく、また、粘着剤層内への入光量を減少させ得る成分であってもよい。また、第2着色剤は、第1着色剤と異なる色彩や色合いを付与する成分であってもよい。そのような第2着色剤は、例えば白色着色剤や灰色着色剤から選択され得る。第2着色剤は、無機材料(例えば金属、金属化合物)、有機材料、有機-無機複合体のなかから選択される1種または2種以上であり得る。第2着色剤の具体例としては、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン等の二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の炭酸化合物;水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等の水酸化物;珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム等の珪酸化合物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等;等の無機材料や、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素-ホルマリン系樹脂、メラミン系樹脂等の有機材料等が挙げられる。なお、第2着色剤は、カーボンブラック粒子を含まず、カーボンブラック粒子とは異なる着色剤として定義され得る。典型的には、第2着色剤には、光吸収性の黒色着色剤は含まれない。
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は、第2着色剤として金属酸化物を含む。第1着色剤(好適には黒色着色剤)と金属酸化物とを併用することによって、着色剤の1種使用では得られない色合いを得つつ、光透過率等の光学特性を調節することができる。また、被着体隠蔽性を向上させることも可能である。金属酸化物としては、上述した材料のなかから選択され得る。好適例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムが挙げられ、なかでも、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウムが好ましく、酸化チタンが特に好ましい。金属酸化物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
第2着色剤が粒子形状を有する態様において、当該第2着色剤(例えば白色着色剤、好適には金属酸化物粒子)の平均粒径は、特に限定されない。粘着剤層の厚さや粘着剤種等に応じて、所望の光学特性(光透過率等)を実現し得る適当なサイズの粒子が用いられ得る。第2着色剤の平均粒径は、例えば凡そ1nm以上とすることができ、凡そ5nm以上が適当である。相溶性、取扱い性等の観点から、第2着色剤の平均粒径は、好ましくは凡そ10nm以上、凡そ20nm以上であってもよく、凡そ30nm以上でもよい。上記平均粒径の上限は、粘着特性維持等の観点から、例えば凡そ300nm以下が適当であり、好ましくは100nm未満(例えば90nm以下)、より好ましくは凡そ70nm以下、さらに好ましくは凡そ50nm以下であり、凡そ35nm以下(例えば凡そ25nm以下)であってもよい。
粘着剤層が第2着色剤を含む態様において、粘着剤層中の第2着色剤(例えば白色着色剤、好適には金属酸化物)の含有量は、当該第2着色剤含有の効果と、要求される粘着特性等を考慮して適切に設定され、特定の範囲に限定されない。また、第2着色剤の含有量は、粘着剤種、第2着色剤の形状や粒径、粘着剤との相溶性等によっても異なり得る。粘着剤層における第2着色剤の含有量は、第2着色剤含有の効果を効果的に得る観点から、凡そ1重量%以上が適当であり、好ましくは凡そ2重量%以上、より好ましくは凡そ3重量%以上であり、凡そ4重量%以上であってもよく、凡そ5重量%以上でもよい。また、粘着剤層が第2着色剤を含む態様または第2着色剤を含まない態様において、粘着剤層における第2着色剤の含有量は、粘着剤成分との相溶性や、接着力や耐衝撃性等の粘着特性維持等の観点から、凡そ30重量%以下とすることができ、凡そ25重量%以下が適当であり、凡そ20重量%以下であってもよく、凡そ15重量%以下でもよく、凡そ12重量%以下でもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ8重量%以下でもよい。
粘着剤層が第1着色剤および第2着色剤を含む態様において、第1着色剤の量C1と第2着色剤の量C2との使用割合は、目的とする被着体隠蔽性や、光学特性(光透過率等)の調節、意匠性、色味を実現するよう適切に設定され、特定の範囲に限定されない。いくつかの態様において、第1着色剤(好適には黒色着色剤)の量C1と第2着色剤(例えば白色着色剤、好適には金属酸化物物)の量C2との重量比(C2/C1)は凡そ0.01以上であり、0.1以上が適当であり、1以上(例えば1超)が好ましく、10以上であってもよく、30以上でもよく、50以上(例えば70以上)でもよい。上記重量比(C2/C1)が大きいほど、第2着色剤の添加効果が好ましく発揮される。また、いくつかの態様において、上記重量比(C2/C1)は凡そ1000以下であり、500以下が適当であり、好ましくは300以下であり、100以下であってもよく、80以下でもよく、60以下でもよい。上記重量比(C2/C1)が小さいほど、第1着色剤の添加効果が好ましく発揮される。第1着色剤が黒色着色剤である態様においては、被着体隠蔽性が向上する傾向がある。
粘着剤層が、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物を含む態様において、黒色着色剤および金属酸化物以外の着色剤の含有量は、特に限定されず、例えば粘着剤層全体の30重量%未満とすることができ、10重量%未満が好ましく、例えば5.0重量%未満であってもよく、3.0重量%未満(例えば2.0重量%未満、さらには1重量%未満)とすることができる。ここに開示される技術は、黒色着色剤および金属酸化物以外の着色剤を実質的に含まない粘着剤層を備える態様で実施することができる。なお、本明細書において「実質的に含まない」とは、意図的に添加しないことを意味し、例えば粘着剤層中における含有量が0.3重量%以下(例えば0.1重量%以下、典型的には0.01重量%以下)であり得る。
なお、着色剤としては、粘着剤成分との相溶性の観点から、上述の着色剤として例示した材料(粒子状着色剤)を表面処理剤によって表面処理したものを用いることができる。表面処理としては、コア粒子の種類や分散媒の種類等に応じて適切な処理が選択され得るので、特定の処理に限定されない。
ここに開示される粘着剤組成物は、上記着色剤の分散性向上に寄与する成分を含んでいてもよい。かかる分散性向上成分は、例えば、ポリマー、オリゴマー、液状樹脂、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤)等であり得る。分散性向上成分は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記分散性向上成分は、粘着剤組成物中に溶解していることが好ましい。上記オリゴマーは、例えば、上記で例示したようなアクリル系モノマーの1種または2種以上を含むモノマー成分の低分子量重合物(例えば、Mwが凡そ10×10未満、好ましくは5×10未満のアクリル系オリゴマー)であり得る。上記液状樹脂は、例えば、軟化点が凡そ50℃以下、より好ましくは凡そ40℃以下の粘着付与樹脂(典型的にはロジン系、テルペン系、炭化水素系等の粘着付与樹脂、例えば水添ロジンメチルエステル等)であり得る。このような分散性向上成分により、着色剤(例えばカーボンブラック等の粒子状黒色着色剤)の分散ムラを抑制し、ひいては粘着剤層の色ムラを抑制することができる。したがって、より外観品質のよい粘着剤層を形成することができる。
分散性向上成分の添加形態は、特に限定されず、粘着剤組成物に配合する前の着色剤(例えばカーボンブラック粒子等の黒色着色剤)含有液中に含ませてもよいし、粘着剤組成物中に着色剤と同じタイミングで、あるいは着色剤の添加の前後で供給してもよい。
分散性向上成分の含有量は特に限定されず、粘着特性への影響(例えば凝集性の低下)を抑える観点から、粘着剤層全体の凡そ20重量%以下(好ましくは凡そ10重量%以下、より好ましくは7重量%以下、例えば凡そ5重量%以下)とすることが適当である。いくつかの態様において、分散性向上成分の含有量は、着色剤の重量の凡そ10倍以下(好ましくは凡そ5倍以下、例えば凡そ3倍以下)とすることができる。一方、分散性向上成分の効果を好適に発揮する観点から、その含有量は、粘着剤層全体の凡そ0.2重量%以上(典型的には凡そ0.5重量%以上、好ましくは凡そ1重量%以上)とすることが適当である。いくつかの態様において、分散性向上成分の含有量は、着色剤の重量の凡そ0.2倍以上(好ましくは凡そ0.5倍以上、例えば1倍以上)とすることができる。
粘着剤層中の着色剤の含有量(着色剤を2種以上含む場合、2種以上の総量、合計含有量)は、目的とする被着体隠蔽性や光学特性(光透過率等)、意匠性、色味等や、要求される粘着特性等を考慮して適切に設定され、特定の範囲に限定されない。粘着剤層における着色剤の含有量は、凡そ0.1重量%以上であり、凡そ0.5重量%以上が適当であり、被着体隠蔽性等の観点から、好ましくは凡そ1重量%以上、より好ましくは凡そ1.5重量%以上、さらに好ましくは凡そ2重量%以上である。いくつかの態様において、粘着剤層における着色剤の含有量は、凡そ3重量%以上が適当であり、凡そ5重量%以上であってもよく、凡そ7重量%以上でもよい。粘着剤層における着色剤の含有量は、粘着剤成分との相溶性や、接着力や耐衝撃性等の粘着特性維持等の観点から、凡そ30重量%以下とすることができ、通常は凡そ20重量%以下が適当であり、凡そ15重量%以下であってもよく、凡そ10重量%以下でもよく、凡そ8重量%以下でもよく、凡そ6重量%以下でもよく、凡そ4重量%以下でもよい。
(粘着付与樹脂)
いくつかの好ましい態様において、粘着剤層は粘着付与樹脂を含む。粘着付与樹脂を用いることにより、接着力を向上させることができる。ここに開示される技術によると、粘着付与樹脂を含む組成で、所定の粘弾性特性(具体的には0℃貯蔵弾性率)を有する粘着剤層が実現される。粘着付与樹脂としては、特に制限されず、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。なかでも、ロジンエステルが好ましい。
特に限定するものではないが、ロジンエステル類の具体例として、未変性ロジンまたは変性ロジン(水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)のエステル、例えばメチルエステル、トリエチレングリコールエステル、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の一例としてテルペンフェノール樹脂が挙げられる。
テルペンフェノール樹脂とは、テルペン残基およびフェノール残基を含むポリマーを指し、テルペン類とフェノール化合物との共重合体(テルペン-フェノール共重合体樹脂)と、テルペン類の単独重合体または共重合体をフェノール変性したもの(フェノール変性テルペン樹脂)との双方を包含する概念である。このようなテルペンフェノール樹脂を構成するテルペン類の具体例としては、α-ピネン、β-ピネン、リモネン(d体、l体およびd/l体(ジペンテン)を包含する。)等のモノテルペン類が挙げられる。水素添加テルペンフェノール樹脂とは、このようなテルペンフェノール樹脂を水素化した構造を有する水素添加テルペンフェノール樹脂をいう。水添テルペンフェノール樹脂と称されることもある。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系(C5系)石油樹脂、芳香族系(C9系)石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系(C5/C9系)石油樹脂、これらの水素添加物(例えば、芳香族系石油樹脂に水素添加して得られる脂環族系石油樹脂)、これらの各種変性物(例えば、無水マレイン酸変性物)、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の、各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂として、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。ロジン系粘着付与樹脂および/またはテルペン系粘着付与樹脂をアクリル系粘着剤に含有させることで、接着力など優れた粘着特性が得られやすい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占めるロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂の合計割合は、例えば凡そ50重量%超(50重量%超100重量%以下)とすることができ、凡そ70重量%以上としてもよく、凡そ80重量%以上としてもよく、凡そ90重量%以上としてもよく、95重量%以上としてもよく、99重量%以上としてもよい。
いくつかの好ましい態様として、上記粘着付与樹脂が1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が挙げられる。ここに開示される技術は、例えば、粘着付与樹脂の総量の凡そ25重量%以上(より好ましくは凡そ30重量%以上)がテルペンフェノール樹脂である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の総量に占めるテルペンフェノール樹脂の割合は、凡そ50重量%以上であってもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上でもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95重量%以上100重量%以下、さらには凡そ99重量%以上100重量%以下)がテルペンフェノール樹脂であってもよい。
粘着剤層中のテルペンフェノール樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、テルペンフェノール樹脂の含有量は、接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。また、いくつかの態様において、粘着剤層中のテルペンフェノール樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記テルペンフェノール樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。
粘着付与樹脂の軟化点は特に限定されない。凝集力向上の観点から、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上である粘着付与樹脂を好ましく採用し得る。粘着付与樹脂の軟化点は、凡そ100℃以上であってもよく、凡そ110℃以上でもよい。また、被着体への接着性の観点から、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の軟化点は160℃未満であってもよく、150℃未満でもよい。
なお、本明細書における粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K5902およびJIS K2207に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。具体的には、試料をできるだけ低温ですみやかに融解し、これを平らな金属板の上に置いた環の中に、泡ができないように注意して満たす。冷えたのち、少し加熱した小刀で環の上端を含む平面から盛り上がった部分を切り去る。つぎに、径85mm以上、高さ127mm以上のガラス容器(加熱浴)の中に支持器(環台)を入れ、グリセリンを深さ90mm以上となるまで注ぐ。つぎに、鋼球(径9.5mm、重量3.5g)と、試料を満たした環とを互いに接触しないようにしてグリセリン中に浸し、グリセリンの温度を20℃プラスマイナス5℃に15分間保つ。つぎに、環中の試料の表面の中央に鋼球をのせ、これを支持器の上の定位置に置く。つぎに、環の上端からグリセリン面までの距離を50mmに保ち、温度計を置き、温度計の水銀球の中心の位置を環の中心と同じ高さとし、容器を加熱する。加熱に用いるブンゼンバーナーの炎は、容器の底の中心と縁との中間にあたるようにし、加熱を均等にする。なお、加熱が始まってから40℃に達したのちの浴温の上昇する割合は、毎分5.0プラスマイナス0.5℃でなければならない。試料がしだいに軟化して環から流れ落ち、ついに底板に接触したときの温度を読み、これを軟化点とする。軟化点の測定は、同時に2個以上行い、その平均値を採用する。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂として、軟化点が150℃未満の粘着付与樹脂Tが用いられる。粘着付与樹脂Tを用いることにより、より高い接着力を得ることができる。いくつかの好ましい態様において、上記粘着付与樹脂Tの軟化点は、140℃未満であり、より好ましくは130℃未満、さらに好ましくは120℃未満であり、110℃以下であってもよく、100℃以下でもよく、90℃以下でもよい。上記所定値以下の軟化点を有する粘着付与樹脂を使用することにより、0℃貯蔵弾性率を適度に低下させることができる。粘着付与樹脂Tの軟化点の下限は特に制限されない。いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tの軟化点は、適度な凝集力を発揮させる観点から、例えば凡そ50℃以上であってよく、60℃以上でもよく、70℃以上でもよく、80℃以上でもよく、90℃以上でもよく、100℃以上でもよく、110℃以上でもよい。
粘着付与樹脂Tとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち軟化点が150℃未満のものから適宜選択される1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。粘着付与樹脂Tは、1種のロジン系粘着付与樹脂を単独で含んでもよく、2種以上のロジン系粘着付与を組み合わせて含んでもよい。また、粘着付与樹脂Tは、1種のテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)を単独で含んでもよく、2種以上のテルペン系粘着付与樹脂を組み合わせて含んでもよい。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂T全体に占めるテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ50重量%超とすることができ、凡そ65重量%以上としてもよく、凡そ75重量%以上としてもよく、85重量%以上としてもよく、95重量%以上としてもよい。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂Tの実質的に全部(例えば凡そ97重量%以上、または99重量%以上であり、100重量%でもよい。)がテルペン系粘着付与樹脂である態様で好ましく実施され得る。
特に限定するものではないが、粘着付与樹脂Tとして好ましく採用し得るロジン系粘着付与樹脂の例として、未変性ロジンエステルおよび変性ロジンエステル等のロジンエステル類が挙げられる。変性ロジンエステルの好適例として水素添加ロジンエステルが挙げられる。例えば、未変性ロジンまたは変性ロジン(例えば水素添加ロジン)のエステル、例えばメチルエステル、グリセリンエステル等のロジンエステル類を、粘着付与樹脂Tとして用いることができる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは水素添加ロジンエステルを含んでもよい。また例えば、粘着付与樹脂Tは、非水素添加ロジンエステルを含んでもよい。ここで非水素添加ロジンエステルとは、上述したロジンエステル類のうち水素添加ロジンエステル以外のものを包括的に指す概念である。非水素添加ロジンエステルの例には、未変性ロジンエステル、不均化ロジンエステルおよび重合ロジンエステルが含まれる。粘着付与樹脂Tは、ロジンエステル類として、水素添加ロジンエステルと非水素添加ロジンエステルとを組み合わせて含んでもよく、1種または2種以上の水素添加ロジンエステルのみを含んでいてもよく、1種または2種以上の非水素添加ロジンエステルのみを含んでいてもよい。いくつかの好ましい態様に係る粘着剤層は、粘着付与樹脂Tに含まれるロジンエステル類として、1種または2種以上の水素添加ロジンエステルのみを含む。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂T全体に占めるロジン系粘着付与樹脂の割合は、例えば凡そ1重量%以上とすることができ、凡そ10重量%以上としてもよく、凡そ20重量%以上としてもよく、30重量%以上としてもよく、40重量%以上としてもよい。また、粘着付与樹脂T全体に占めるロジン系粘着付与樹脂の割合は、100重量%であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下でもよく、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂T全体に占めるロジン系粘着付与樹脂の割合は、50重量%未満であり、30重量%以下であってもよく、10重量%以下でもよく、1重量%以下でもよい。
また、粘着付与樹脂Tとして、例えば、軟化点が50℃未満、より好ましくは凡そ40℃以下の粘着付与樹脂(典型的にはロジン系、テルペン系、炭化水素系等の粘着付与樹脂、例えば水添ロジンメチルエステル等)を含んでもよく、含まなくてもよい。このような低軟化点粘着付与樹脂は、30℃において液状を呈する液状粘着付与樹脂であり得る。液状粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。液状粘着付与樹脂の含有量は、凝集力等の観点から、粘着付与樹脂T全体の凡そ30重量%以下とすることができ、凡そ10重量%以下(例えば0~10重量%)とすることが適当であり、凡そ2重量%以下(0.5~2重量%)であってもよく、1重量%未満でもよい。
粘着付与樹脂Tの含有量は、特に限定されないが、いくつかの態様において、アクリルポリマー100重量部に対して70重量部以下程度とすることが適当であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。粘着付与樹脂Tの使用量を所定量以下に制限することにより、0℃貯蔵弾性率を適度に低下させることができる。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂Tの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。また、いくつかの態様において、接着力向上の観点から、粘着付与樹脂Tの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば1重量部以上であり、5重量部以上が適当であり、好ましくは8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは12重量部以上であり、15重量部以上であってよい。
いくつかの態様において、上記粘着剤層は、発明の効果を損なわない範囲で、粘着付与樹脂Tと、軟化点が150℃以上(例えば150℃~200℃)の粘着付与樹脂Tを組み合わせて含んでもよい。粘着付与樹脂Tとしては、上記で例示した粘着付与樹脂のうち軟化点が150℃以上のものから1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
いくつかの態様において、粘着付与樹脂Tは、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量の50重量%超を占めることが好ましい。これにより、粘着付与樹脂T含有の効果が効果的に発現しやすい。粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量に占める粘着付与樹脂Tの割合は、粘着付与樹脂Tの使用効果をより効果的に発揮する観点から、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上であり、95重量%以上であってもよく、98重量%以上でもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂は、実質的に粘着付与樹脂Tのみからなる。かかる態様において、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂の総量に占める粘着付与樹脂Tの割合は99~100重量%の範囲である。
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が20mgKOH/gより高い粘着付与樹脂を含み得る。なかでも水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂が好ましい。以下、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を「高水酸基価樹脂」ということがある。このような高水酸基価樹脂を含む粘着付与樹脂によると、被着体に対する密着性に優れ、かつ凝集力の高い粘着剤層が実現され得る。いくつかの態様において、上記粘着付与樹脂は、水酸基価が50mgKOH/g以上(例えば70mgKOH/g以上)の高水酸基価樹脂を含んでいてもよい。特に限定するものではないが、上記のような高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)は、例えば、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーと組み合わせて好ましく用いられて、接着力と凝集力とを両立し得る。
高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。アクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、通常、凡そ300mgKOH/g以下であり、凡そ200mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ180mgKOH/g以下、より好ましくは凡そ160mgKOH/g以下、さらに好ましくは凡そ140mgKOH/g以下であり、120mgKOH/g以下であってもよく、100mgKOH/g以下でもよく、80mgKOH/g以下(例えば65mgKOH/g以下)でもよい。ここに開示される技術は、粘着付与樹脂が水酸基価30~160mgKOH/gの高水酸基価樹脂(例えばテルペン系粘着付与樹脂、好ましくはテルペンフェノール樹脂)を含む態様で好ましく実施され得る。いくつかの態様において、水酸基価30~80mgKOH/g(例えば30~65mgKOH/g)の高水酸基価樹脂を好ましく採用し得る。
ここで、上記水酸基価の値としては、JIS K0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法は以下に示すとおりである。
[水酸基価の測定方法]
1.試薬
(1)アセチル化試薬としては、無水酢酸約12.5g(約11.8mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を50mLにし、充分に攪拌したものを使用する。または、無水酢酸約25g(約23.5mL)を取り、これにピリジンを加えて全量を100mLにし、充分に攪拌したものを使用する。
(2)測定試薬としては、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を使用する。
(3)その他、トルエン、ピリジン、エタノールおよび蒸留水を準備する。
2.操作
(1)平底フラスコに試料約2gを精秤採取し、アセチル化試薬5mLおよびピリジン10mLを加え、空気冷却管を装着する。
(2)上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷し、冷却管の上部から溶剤としてトルエン35mLを加えて攪拌した後、蒸留水1mLを加えて攪拌することにより無水酢酸を分解する。分解を完全にするため再度浴中で10分間加熱し、放冷する。
(3)エタノール5mLで冷却管を洗い、取り外す。次いで、溶剤としてピリジン50mLを加えて攪拌する。
(4)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液を、ホールピペットを用いて25mL加える。
(5)0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行う。得られた滴定曲線の変曲点を終点とする。
(6)空試験は、試料を入れないで上記(1)~(5)を行う。
3.計算
以下の式により水酸基価を算出する。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B-C)×f×28.05]/S+D
ここで、
B: 空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
C: 試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)、
f: 0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター、
S: 試料の重量(g)、
D: 酸価、
28.05: 水酸化カリウムの分子量56.11の1/2、
である。
高水酸基価樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち所定値以上の水酸基価を有するものを用いることができる。高水酸基価樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、高水酸基価樹脂として、水酸基価が30mgKOH/g以上のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用し得る。テルペンフェノール樹脂は、フェノールの共重合割合によって水酸基価を任意にコントロールすることができるので好都合である。
特に限定するものではないが、高水酸基価樹脂を使用する場合、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、凡そ5重量%以上であってもよく、10重量%以上でもよく、15重量%以上でもよく、20重量%以上でもよい。いくつかの態様において、粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂の割合は、例えば凡そ30重量%以上とすることが好ましい。これにより、高水酸基価樹脂使用の効果が好ましく発揮される。いくつかの好ましい態様において、粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂の割合は、凡そ40重量%以上であり、凡そ50重量%以上(例えば50重量%超)であってもよく、凡そ60重量%以上でもよく、凡そ70重量%以上でもよく、凡そ80重量%以上でもよく、凡そ90重量%以上でもよい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95~100重量%、さらには凡そ99~100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。
上記高水酸基価樹脂の軟化点は特に限定されない。高水酸基価樹脂の軟化点は、例えば凡そ50℃以上であってよく、凝集力向上の観点から、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上である高水酸基価樹脂を好ましく採用し得る。例えば、このような軟化点を有するテルペンフェノール樹脂を好ましく用いることができる。高水酸基価樹脂の軟化点は、凡そ100℃以上であってもよく、凡そ110℃以上でもよい。高水酸基価樹脂の軟化点の上限は特に制限されない。被着体への接着性の観点から、軟化点が凡そ200℃以下(より好ましくは凡そ180℃以下)の高水酸基価樹脂を好ましく使用し得る。いくつかの態様において、高水酸基価樹脂の軟化点は160℃未満であってもよく、150℃未満でもよく、145℃未満でもよく、140℃未満でもよく、130℃未満でもよく、120℃未満でもよい。
粘着剤層中の高水酸基価樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、高水酸基価樹脂の含有量は、接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。また、いくつかの態様において、粘着剤層中の高水酸基価樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、上記高水酸基価樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。
ここに開示される粘着剤層が粘着付与樹脂を含む場合、粘着付与樹脂としては、粘着剤層のバイオマス炭素比向上の観点から、植物に由来する粘着付与樹脂(植物性粘着付与樹脂)を好ましく作用し得る。植物性粘着付与樹脂の例としては、例えば上述のロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂が挙げられる。植物性粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここに開示される粘着剤層が粘着付与樹脂を含む場合、粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には80重量%以上)とすることが好ましい。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の総量に占める植物性粘着付与樹脂の割合は、90重量%以上(例えば95重量%以上、典型的には99~100重量%)である。ここに開示される技術は、植物性粘着付与樹脂以外の粘着付与樹脂を実質的に含まない態様で好ましく実施され得る。
粘着剤層中の粘着付与樹脂の含有量は、目的とする粘弾性特性を満足する限りにおいて特に制限はない。いくつかの態様において、粘着付与樹脂の含有量は、接着力向上の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対して通常は凡そ1重量部以上であり、凡そ5重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ8重量部以上、より好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは凡そ12重量部以上(例えば15重量部以上)である。また、いくつかの態様において、粘着剤層中の粘着付与樹脂の含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば70重量部以下であり、60重量部以下であってもよく、50重量部以下でもよく、40重量部以下でもよく、30重量部以下でもよい。いくつかの好ましい態様において、0℃貯蔵弾性率を低下する観点から、粘着付与樹脂の含有量は、30重量部未満であり、より好ましくは25重量部以下、さらに好ましくは22重量部以下であり、20重量部以下であってもよい。
ここに開示される技術において、粘着剤層中のアクリル系ポリマーおよび粘着付与樹脂の合計量(総量)は、ここに開示される技術による効果が発揮されるよう適切に設定され、特定の範囲に限定されるものではない。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層全体に占めるアクリル系ポリマーおよび粘着付与樹脂の合計量(総量)は、ここに開示される技術による効果を好ましく発揮する観点から、50重量%超であることが適当であり、好ましくは凡そ70重量%以上、より好ましくは凡そ90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上(例えば95重量%以上100重量%以下あるいは100重量%未満)であり、98重量%以上であってもよい。
(アクリル系オリゴマー)
いくつかの態様において、粘着剤層は、アクリル系オリゴマーを含有してもよい。アクリル系オリゴマーを含有させることにより、粘着剤の接着力を向上させ得る。アクリル系オリゴマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記アクリル系オリゴマーは、Tgが約0℃以上約300℃以下、好ましくは約20℃以上約300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上約300℃以下であることが望ましい。Tgが上記範囲内であることにより、接着力を好適に向上させることができる。いくつかの好ましい態様において、粘着剤の凝集性の観点から、アクリル系オリゴマーのTgは約30℃以上であり、より好ましくは約50℃以上(例えば約60℃以上)であり、また接着性の観点から、好ましくは約200℃以下、より好ましくは約150℃以下、さらに好ましくは約100℃以下(例えば凡そ80℃以下)である。なお、本明細書において、アクリル系オリゴマーのTgとは、上述のアクリル系ポリマーのTgと同様、上記モノマー成分の組成に基づいて、Foxの式により求められるTgをいう。
アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、典型的には約1000以上約30000未満、好ましくは約1500以上約20000未満、さらに好ましくは約2000以上約10000未満であり得る。Mwが上記範囲内にあることで、良好な接着力が得られやすい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系オリゴマーのMwは約2500以上(例えば約3000以上)であり、また、接着性の観点から、好ましくは約7000以下、より好ましくは約5000以下(例えば約4500以下、典型的には約4000以下)である。アクリル系オリゴマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定し、標準ポリスチレン換算の値として求めることができる。具体的には、東ソー社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH-H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5mL/分の条件にて測定される。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート);フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt-ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート);フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる観点から好ましい。また、アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有するものが好ましく、アルキル基が分岐構造を有するアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステル(脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)を、アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。なお、上記の分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素基(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレートはいずれも、ここに開示される技術における(メタ)アクリレートモノマーに該当する。脂環式炭化水素基は飽和または不飽和の脂環式炭化水素基であり得る。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分に占める(メタ)アクリレートモノマー(例えば、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレート)の割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。いくつかの好ましい態様において、アクリル系オリゴマーは、実質的に(メタ)アクリレートモノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記の(メタ)アクリレートモノマーに加えて、官能基含有モノマーを用いることができる。上記官能基含有モノマーの好適例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(典型的には窒素原子含有複素環)を有するモノマー;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。これらの官能基含有モノマーは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、AAが特に好ましい。例えば、官能基含有モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーを使用することにより、高極性被着体に対する接着力を向上させやすい。
アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分が官能基含有モノマーを含む場合、上記モノマー成分に占める官能基含有モノマー(例えば、AA等のカルボキシ基含有モノマー)の割合は、凡そ1重量%以上とすることが適当であり、好ましくは2重量%以上、より好ましくは3重量%以上であり、また凡そ15重量%以下とすることが適当であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7重量%以下である。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類は、概ねアクリル系ポリマーの合成にて例示したとおりであり、重合開始剤量や、任意に使用されるn-ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤の量は、所望の分子量となるよう技術常識に基づいて適切に設定されるので、ここでは詳細な説明は省略する。
上記の観点から、好適なアクリル系オリゴマーとしては、例えば、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1-アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1-アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体のほか、CHMAとイソブチルメタクリレート(IBMA)との共重合体、CHMAとIBXMAとの共重合体、CHMAとアクリロイルモルホリン(ACMO)との共重合体、CHMAとジエチルアクリルアミド(DEAA)との共重合体、CHMAとAAとの共重合体、ADAとメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、DCPMAとIBXMAとの共重合体、DCPMAとMMAの共重合体、等を挙げることができる。
ここに開示される粘着剤層にアクリル系オリゴマーを含有させる場合、その含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.1重量部以上(例えば1重量部以上)とすることが適当である。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、好ましくは凡そ5重量部以上、より好ましくは凡そ8重量部以上、さらに好ましくは凡そ10重量部以上、特に好ましくは凡そ12重量部以上である。また、いくつかの態様において、アクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して50重量部未満(例えば40重量部未満)とすることが適当であり、好ましくは30重量部未満、より好ましくは凡そ25重量部以下、さらに好ましくは凡そ20重量部以下である。他のいくつかの態様において、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して10重量部以下であってもよく、5重量部以下でもよく、1重量部以下(例えば1重量部未満)でもよい。ここに開示される技術は、粘着剤層がアクリル系オリゴマーを実質的に含まない態様で実施することができる。
(架橋剤)
ここに開示される技術において、粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アミン系架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましく、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤がより好ましい。架橋剤を適切に選定して使用することにより、粘着剤層は適度な凝集力を有するものとなり得る。なお、ここに開示される技術における粘着剤層は、上記架橋剤を、架橋反応後の形態、架橋反応前の形態、部分的に架橋反応した形態、これらの中間的または複合的な形態等で含有し得る。上記架橋剤は、典型的には、専ら架橋反応後の形態で粘着剤層に含まれている。
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート(1分子当たり平均2個以上のイソシアネート基を有する化合物をいい、イソシアヌレート構造を有するものを包含する。)が好ましく使用され得る。イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能イソシアネートの例として、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環族ポリイソシアネート類、芳香族ポリイソシアネート類等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート類の具体例としては、1,2-エチレンジイソシアネート;1,2-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-テトラメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート等のテトラメチレンジイソシアネート;1,2-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,5-ヘキサメチレンジイソシアネート等のヘキサメチレンジイソシアネート;2-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート類の具体例としては、イソホロンジイソシアネート;1,2-シクロヘキシルジイソシアネート、1,3-シクロヘキシルジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート等のシクロヘキシルジイソシアネート;1,2-シクロペンチルジイソシアネート、1,3-シクロペンチルジイソシアネート等のシクロペンチルジイソシアネート;水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート類の具体例としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート等が挙げられる。
好ましい多官能イソシアネートとして、1分子当たり平均して3個以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートが例示される。かかる3官能以上のイソシアネートは、2官能または3官能以上のイソシアネートの多量体(典型的には2量体または3量体)、誘導体(例えば、多価アルコールと2分子以上の多官能イソシアネートとの付加反応生成物)、重合物等であり得る。例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの2量体や3量体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(イソシアヌレート構造の3量体付加物)、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、等の多官能イソシアネートが挙げられる。かかる多官能イソシアネートの市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の商品名「デュラネートTPA-100」、東ソー社製の商品名「コロネートL」、同「コロネートHL」、同「コロネートHK」、同「コロネートHX」、同「コロネート2096」等が挙げられる。
ここに開示される技術は、架橋剤として少なくともイソシアネート系架橋剤を使用する態様で好ましく実施され得る。イソシアネート系架橋剤の使用量は特に限定されない。イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、例えば、凡そ0.1重量部以上とすることができる。凝集力と密着性との両立等の観点から、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は、通常、凡そ0.3重量部以上(例えば0.5重量部以上)とすることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対するイソシアネート系架橋剤の使用量は凡そ1.0重量部以上であり、より好ましくは凡そ1.5重量部以上、さらに好ましくは凡そ2.0重量部以上、特に好ましくは凡そ2.5重量部以上であり、凡そ2.8重量部以上であってもよい。また、被着体に対する密着性向上の観点から、上記イソシアネート系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して10重量部以下とすることが適当であり、好ましくは8重量部以下、より好ましくは6重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下、特に好ましくは4重量部以下であり、3.5重量部以下であってもよく、3.2重量部以下でもよい。
エポキシ系架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物を特に制限なく用いることができる。1分子中に3~5個のエポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましい。エポキシ系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
特に限定するものではないが、エポキシ系架橋剤の具体例として、例えばN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の市販品としては、三菱ガス化学社製の商品名「TETRAD-C」および商品名「TETRAD-X」、DIC社製の商品名「エピクロンCR-5L」、ナガセケムテックス社製の商品名「デナコールEX-512」、日産化学工業社製の商品名「TEPIC-G」等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤の使用量は特に限定されない。エポキシ系架橋剤の使用量は、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して、0重量部を超えて凡そ1重量部以下(典型的には凡そ0.001~1重量部)とすることができる。凝集力の向上効果を好適に発揮する観点から、通常、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.002重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.005重量部以上であり、例えば凡そ0.01重量部以上であってもよく、凡そ0.02重量部以上でもよい。また、被着体に対する密着性向上の観点から、エポキシ系架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.5重量部以下とすることが適当であり、凡そ0.2重量部以下とすることが好ましく、凡そ0.1重量部以下(例えば0.1重量部未満)がより好ましく、0.07重量部以下であってもよく、0.04重量部以下でもよく、0.03重量部以下でもよい。エポキシ系架橋剤の使用量を所定の範囲で制限することにより、十分な接着力を保持しやすい。
いくつかの好ましい態様において、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤と、該イソシアネート系架橋剤とは架橋性官能基の種類が異なる少なくとも1種の架橋剤とが組み合わせて用いられる。ここに開示される技術は、イソシアネート系架橋剤以外の架橋剤(すなわち、イソシアネート系架橋剤とは架橋性反応基の種類の異なる架橋剤。以下「非イソシアネート系架橋剤」ともいう。)とイソシアネート系架橋剤とを組み合わせて用いる態様で好ましく実施され得る。
イソシアネート系架橋剤と組み合わせて用いられ得る非イソシアネート系架橋剤の種類は特に制限されず、上述の架橋剤から適宜選択して用いることができる。非イソシアネート系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの好ましい態様において、非イソシアネート系架橋剤としてエポキシ系架橋剤を採用することができる。例えば、イソシアネート系架橋剤とエポキシ系架橋剤とを併用することにより、より優れた粘着特性が実現され得る。
イソシアネート系架橋剤の含有量と非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量との関係は特に限定されない。イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量に対して1倍よりも大きく、凡そ10倍以上であることが適当であり、好ましくは凡そ50倍以上、より好ましくは凡そ80倍以上、さらに好ましくは凡そ100倍以上(例えば100倍超)であり、凡そ120倍以上(例えば凡そ140倍以上)であってもよい。また、イソシアネート系架橋剤と非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)とを組み合わせて用いることによる効果を好適に発揮する観点から、通常、非イソシアネート系架橋剤(好適にはエポキシ系架橋剤)の含有量に対するイソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば凡そ1000倍以下であり、凡そ500倍以下とすることが適当であり、好ましくは凡そ300倍以下、より好ましくは凡そ200倍以下、さらに好ましくは凡そ180倍以下であり、凡そ150倍以下であってもよい。
ここに開示される粘着剤組成物における架橋剤の含有量(架橋剤の総量)は、特に限定されない。凝集性の観点から、上記架橋剤の含有量は、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.001重量部以上であり、凡そ0.01重量部以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ0.1重量部以上、より好ましくは凡そ1重量部以上、さらに好ましくは凡そ2重量部以上、特に好ましくは凡そ2.5重量部以上である。また、粘着剤組成物における架橋剤の含有量は、通常、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ20重量部以下であり、凡そ15重量部以下とすることが適当であり、凡そ10重量部以下とすることが好ましい。いくつかの好ましい態様において、アクリル系ポリマー100重量部に対する架橋剤の含有量は5.0重量部以下であり、4.0重量部以下であってもよく、3.5重量部以下でもよい。
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、上述した各成分以外に、必要に応じてレベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、光安定剤等の、粘着剤の分野において一般的な各種の添加剤が含まれていてもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
(粘着剤層の形成方法)
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。溶剤型粘着剤組成物に含まれる有機溶媒としては、上述の溶液重合で用いられ得る有機溶媒(トルエンや酢酸エチル等)として例示した1種または2種以上を特に制限なく用いることができる。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)または非剥離性の表面に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。基材を有する構成の粘着シートでは、例えば、該基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。生産性の観点から、転写法が好ましい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。
架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば40~150℃程度とすることができ、通常は60~130℃程度とすることが好ましい。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
粘着剤層は、単層構造であってもよく、2層以上の多層構造を有するものであってもよい。生産性等の観点から、粘着剤層は単層構造であることが好ましい。
(厚さ)
粘着剤層の厚さは特に制限されず、用途や使用目的等に応じて、例えば0.1~500μmの範囲で適当な厚さを有する粘着剤層を有する構成が採用され得る。いくつかの態様において、両面粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ100μm以下が適当であり、好ましくは凡そ70μm以下、より好ましくは凡そ60μm以下、さらに好ましくは凡そ50μm以下であり、凡そ40μm以下であってもよい。粘着剤層の厚さは凡そ35μm以下とすることができ、例えば凡そ30μm以下であってもよい。厚さの制限された粘着剤層は、薄厚化、軽量化の要請によく対応したものとなり得る。粘着剤層の厚さの下限は、被着体に対する密着性の観点からは、いくつかの態様において、凡そ0.5μm以上が適当であり、凡そ1μm以上であってもよく、凡そ3μm以上とすることが有利であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ12μm以上(例えば12μm超)、さらに好ましくは凡そ15μm以上であり、例えば凡そ18μm以上であってもよい。いくつかの好ましい態様において、粘着剤層の厚さは20μm超であり、24μm以上であってもよく、27μm以上でもよく、凡そ30μm以上でもよく、凡そ35μm以上でもよく、凡そ40μm以上でもよい。粘着剤層の厚さを大きくすることにより、光透過率の低減など光学特性を調節しやすい。また、粘着剤層厚さが大きくなるほど、接着力も向上する傾向がある。なお、基材の各面に第1粘着剤層と第2粘着剤層とをそれぞれ有する基材付き両面粘着シートにおいては、第1粘着剤層と第2粘着剤層とは同一の厚さであってもよく、相互に異なる厚さであってもよい。
(バイオマス炭素比)
いくつかの態様において、粘着剤層はバイオマス由来材料を含み、そのバイオマス炭素比が所定値以上であり得る。粘着剤層のバイオマス炭素比は、例えば1%以上であり、10%以上であってもよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。粘着剤のバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、粘着剤のバイオマス炭素比は高いほど好ましい。例えば、粘着剤層のバイオマス炭素比は、55%以上であってよく、60%以上であってもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、80%超でもよい。バイオマス炭素比の上限は、定義上100%であり、99%以下であってもよく、材料の入手容易性の観点から、95%以下でもよく、90%以下でもよい。良好な粘着性能を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、粘着剤層のバイオマス炭素比は、例えば90%以下であってよく、85%以下でもよく、80%以下でもよい。
<基材>
ここに開示される両面粘着シートが基材付き両面粘着シートの形態である態様において、粘着剤層を支持する基材としては、樹脂フィルム、紙、布、ゴムシート、発泡体シート、金属箔、これらの複合体等を用いることができる。紙の例としては、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布の例としては、各種繊維状物質の単独または混紡等による織布や不織布等が挙げられる。上記繊維状物質としては、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等が例示される。ゴムシートの例としては、天然ゴムシート、ブチルゴムシート等が挙げられる。発泡体シートの例としては、発泡ポリオレフィンシート、発泡ポリウレタンシート、発泡ポリクロロプレンゴムシート等が挙げられる。金属箔の例としては、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられる。なお、基材は、両面粘着シートにおいて基材層ともいう。
基材は、バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよく、非バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよい。化石資源系材料への依存抑制に配慮した粘着シート作製の観点から、バイオマス由来の基材材料(典型的には樹脂フィルム)が好ましく使用される。
また、基材は、リサイクル可能な材料やリサイクルされた材料(リサイクル材料ともいう。)を用いて形成されたものであってもよい。かかるリサイクル材料としては、樹脂フィルムが好ましく用いられる。樹脂フィルム(例えばPETフィルム等のポリエステルフィルム)はリサイクルが可能であるので、植物由来の材料を用いているか否かにかかわらず、使用後の樹脂フィルムを再利用することで、持続的な再生産が可能であり、環境負荷を低減することができる。このような、リサイクル可能な樹脂フィルムや、リサイクルされた樹脂フィルムは、リサイクルフィルムともいう。上記リサイクル材料(例えばリサイクルフィルム)は、バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよく、非バイオマス由来の材料から形成されたものであってもよい。
基材付き両面粘着シートを構成する基材としては、ベースフィルムとして樹脂フィルムを含むものを好ましく用いることができる。上記ベースフィルムは、典型的には、独立して形状維持可能な(非依存性の)部材である。ここに開示される技術における基材は、このようなベースフィルムから実質的に構成されたものであり得る。あるいは、上記基材は、上記ベースフィルムの他に、補助的な層を含むものであってもよい。上記補助的な層の例としては、上記ベースフィルムの表面に設けられた着色層、反射層、下塗り層、帯電防止層等が挙げられる。
上記樹脂フィルムは、樹脂材料を主成分(例えば、当該樹脂フィルム中に50重量%を超えて含まれる成分)とするフィルムである。樹脂フィルムの例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂フィルム;塩化ビニル系樹脂フィルム;酢酸ビニル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;ポリアミド系樹脂フィルム;フッ素樹脂フィルム;セロハン;等が挙げられる。樹脂フィルムは、天然ゴムフィルム、ブチルゴムフィルム等のゴム系フィルムであってもよい。なかでも、ハンドリング性、加工性の観点から、ポリエステルフィルムが好ましく、そのなかでもPETフィルムが特に好ましい。
なお、本明細書において「樹脂フィルム」とは、典型的には非多孔質のシートであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(換言すると、不織布や織布を除く概念)である。上記樹脂フィルムは、無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムのいずれであってもよい。また、そのような樹脂フィルムは非発泡であり得る。ここで非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムのことを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。
基材は、透明性を有するものであってもよく、遮光性や減光性を有するものであってもよい。いくつかの態様において、基材(例えば樹脂フィルム)には着色剤を含有させることができる。これにより基材の光透過性(遮光性)を調整することができる。基材の光透過性(例えば垂直光透過率)を調整することは、該基材の光透過性、さらには該基材を含む両面粘着シートの光透過性の調整にも役立ち得る。
着色剤としては、粘着剤層に含有させ得る着色剤と同様、従来公知の顔料や染料を用いることができる。着色剤は、特に制限されず、例えば、黒色、灰色、白色、赤色、青色、黄色、緑色、黄緑色、橙色、紫色、金色、銀色、パール色等の着色剤であり得る。
いくつかの態様において、少量の着色剤により遮光性(例えば垂直光透過率)を効率よく調節し得ることから、基材用着色剤として、黒色着色剤を好ましく使用し得る。具体的な黒色着色剤としては、粘着剤層に含有させ得る着色剤として例示したものが挙げられる。いくつかの好ましい態様において、平均粒径10nm~500nm、より好ましくは10nm~120nmの顔料(例えば、カーボンブラック等の粒子状黒色着色剤)を用いることができる。
基材(例えば樹脂フィルム)における着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。着色剤の使用量は、基材の重量の0.1~30重量%程度とすることが適当であり、例えば0.1~25重量%(典型的には0.1~20重量%)とすることができる。
上記基材(例えば樹脂フィルム)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、分散剤(界面活性剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。各種添加剤の配合割合は、30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度である。
上記基材(例えば樹脂フィルム)は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造を有するものであってもよい。形状安定性の観点から、基材は単層構造であることが好ましい。多層構造の場合、少なくとも一つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(例えばポリエステル系樹脂)の連続構造を有する層であることが好ましい。基材(典型的には樹脂フィルム)の製造方法は、従来公知の方法を適宜採用すればよく、特に限定されない。例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用することができる。
基材は、ベースフィルム(好ましくは樹脂フィルム)の表面に配置された着色層により着色されていてもよい。このようにベースフィルムと着色層を含む構成の基材において、上記ベースフィルムは、着色剤を含んでもよく、含まなくてもよい。上記着色層は、ベースフィルムのいずれか一方の表面に配置されてもよく、両方の表面にそれぞれ配置されてもよい。ベースフィルムの両方の表面にそれぞれ着色層を配置した構成において、それらの着色層の構成は、同一であってもよく、異なってもよい。
このような着色層は、典型的には、着色剤およびバインダを含有する着色層形成用組成物を、ベースフィルムに塗布して形成することができる。着色剤としては、粘着剤層や樹脂フィルムに含有させ得る着色剤と同様、従来公知の顔料や染料を用いることができる。バインダとしては、塗料または印刷の分野において公知の材料を特に制限なく使用することができる。例えば、ポリウレタン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリメタクリル酸メチル等が例示される。着色層形成用組成物は、例えば、溶剤型、紫外線硬化型、熱硬化型等であり得る。着色層の形成は、従来から着色層の形成に採用されている手段を特に制限なく採用して行うことができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷により着色層(印刷層)を形成する方法を好ましく採用し得る。
着色層は、全体が1層からなる単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上のサブ着色層を含む多層構造であってもよい。2層以上のサブ着色層を含む多層構造の着色層は、例えば、着色層形成用組成物の塗布(例えば印刷)を繰り返して行うことにより形成することができる。各サブ着色層に含まれる着色剤の色や配合量は、同一であってもよく、異なってもよい。遮光性を付与するための着色層では、ピンホールの発生を防止して光漏れ防止の信頼性を高める観点から、多層構造とすることが特に有意義である。
着色層全体の厚さは、1μm~10μm程度が適当であり、1μm~7μm程度が好ましく、例えば1μm~5μm程度とすることができる。2層以上のサブ着色層を含む着色層において、各サブ着色層の厚さは、1μm~2μm程度が好ましい。
基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。
基材を含む態様の両面粘着シートにおいて、該基材の厚さは特に限定されない。両面粘着シートが過度に厚くなることを避ける観点から、基材の厚さは、例えば凡そ200μm以下、好ましくは凡そ150μm以下、より好ましくは凡そ100μm以下とすることができる。両面粘着シートの使用目的や使用態様に応じて、基材の厚さは、凡そ70μm以下であってよく、凡そ50μm以下でもよく、凡そ30μm以下(例えば凡そ25μm以下)でもよい。いくつかの態様において、基材の厚さは、凡そ20μm以下であってよく、凡そ15μm以下でもよく、凡そ10μm以下(例えば凡そ5μm以下)でもよい。基材の厚さを小さくすることにより、両面粘着シートの総厚さが同じであっても粘着剤層の厚さをより大きくすることができ、被着体や基材との密着性向上の観点から有利となり得る。また、厚さの制限された基材は、薄厚化、軽量化の要請によく対応したものとなり得る。基材の厚さは、両面粘着シートの取扱い性(ハンドリング性)や加工性等の観点から、通常は凡そ0.5μm以上(例えば1μm以上)、好ましくは凡そ2μm以上、例えば凡そ6μm以上である。いくつかの態様において、基材の厚さは、凡そ8μm以上とすることができ、凡そ10μm以上でもよい。
<両面粘着シートの総厚>
ここに開示される両面粘着シート(粘着剤層を含み、基材層をさらに含み得るが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されない。両面粘着シートの総厚さは、例えば凡そ1mm以下であり、凡そ500μm以下であってもよく、凡そ300μm以下とすることができ、薄型化の観点から、凡そ200μm以下が適当であり、凡そ150μm以下(例えば凡そ100μm以下)であってもよい。いくつかの好ましい態様において、両面粘着シートの厚さは凡そ50μm以下とすることができ、例えば凡そ35μm以下であってもよい。両面粘着シートの厚さの下限は、例えば0.1μm以上(例えば0.5μm以上)であり、凡そ3μm以上とすることが適当であり、好ましくは凡そ10μm以上、より好ましくは凡そ15μm以上であり、さらに好ましくは凡そ20μm以上であり、凡そ30μm以上であってもよく、凡そ50μm以上でもよい。所定値以上の厚さを有する両面粘着シートは、被着体への密着性が得られやすく、また、取扱い性にも優れる傾向がある。なお、基材レスの両面粘着シートでは、粘着剤層の厚さが両面粘着シートの総厚さとなる。
<両面粘着シートの特性>
(光透過率)
両面粘着シートの光透過率は、使用目的や着色の目的等により異なり、特定の範囲に限定されない。いくつかの態様において、両面粘着シートの波長550nmの光線透過率(550nm光線透過率。可視光透過率ともいう。)は80%未満であり、70%未満であってもよく、60%未満でもよく、50%未満でもよく、40%未満でもよい。粘着剤層の着色により可視光透過率が所定値以下で制限された両面粘着シートは、被着体の隠蔽に好適であり、意匠性の付与にも利用することができる。また、光漏れ防止等を目的とする遮光性粘着シートとしても利用可能である。いくつかの好ましい態様において、両面粘着シートの550nm光線透過率は、30%以下であり、20%以下であってもよく、15%以下でもよく、10%以下でもよく、8%以下でもよく、6%以下でもよい。可視光透過率が低いほど優れた隠蔽性を発揮することができる。より高い隠蔽性が求められる場合、上記550nm光線透過率は、5%未満であってもよく、4%未満でもよく、3%未満でもよく、2%未満でもよく、1%未満でもよく、0.5%未満でもよい。上記550nm光線透過率の下限は特に制限されず、実質的に0%、すなわち検出限界以下であってもよく、0.1%以上であってもよく、1%以上でもよく、3%以上でもよく、5%以上でもよい。いくつかの態様において、上記550nm光線透過率は、10%以上であってもよく、20%超でもよく、30%超でもよい。ある程度の可視光透過率を有することで、被着体を適度に隠蔽したり、被着体(例えば金属材料)の外観を調整したり、被着体の質感を残した意匠性や色味を付与することができる。また、適度に光透過性を有する両面粘着シートは、粘着特性の維持や、生産性等の観点からも好ましい。両面粘着シートの550nm光線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
特に限定するものではないが、両面粘着シートの波長1380nmの光線透過率(1380nm光線透過率。赤外線透過率ともいう。)は90%未満であり、80%未満であってもよく、70%未満でもよく、60%未満でもよく、50%未満でもよく、40%未満でもよい。いくつかの好ましい態様において、両面粘着シートの1380nm光線透過率は、30%以下であり、20%以下であってもよく、15%以下でもよく、10%以下でもよく、5%以下でもよく、3%以下でもよい。上記赤外線透過率が制限された両面粘着シートによると、赤外線を含む広い波長域の光線を遮断することができ、優れた遮光性が得られやすい。また、例えば、赤外線センサ周辺で用いられる場合には、赤外線を遮断することで、該センサの作動精度低下を防止し得る。上記1380nm光線透過率の下限は特に制限されず、実質的に0%、すなわち検出限界以下であってもよく、0.1%以上であってもよく、1%以上でもよく、3%以上でもよく、5%以上でもよい。いくつかの態様において、上記1380nm光線透過率は、10%以上であってもよく、30%以上でもよく、50%以上でもよい。両面粘着シートの1380nm光線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
両面粘着シートの可視光透過率と赤外線透過率との相対的関係は特に限定されない。いくつかの態様において、両面粘着シートの赤外線透過率TIR[%]と可視光透過率TVL[%]との比(TIR/TVL)は、例えば0.1~10の範囲内であり、5以下であってもよく、3以下でもよく、また、0.5以上であってもよく、1以上(例えば1超)でもよく、2以上でもよい。両面粘着シートの使用目的や適用箇所等に応じて、比(TIR/TVL)を適切に設定することにより、目的とする被着体隠蔽性や赤外線遮蔽性を実現することができる。
(対SUS粘着力)
特に限定するものではないが、いくつかの態様において、両面粘着シートは、ステンレス鋼板に対する180度剥離強度(対SUS粘着力)が凡そ1N/25mm以上であり、凡そ5N/25mm以上であることが適当である。いくつかの好ましい態様において、上記対SUS粘着力は、凡そ10N/25mm以上であり、凡そ12N/25mm以上であってもよく、凡そ15N/25mm以上でもよい。上記対SUS粘着力を示す両面粘着シートは、被着体に対して良好な接着力を発揮し、部材の接合固定等に好ましく用いられる。上記対SUS粘着力の上限は特に制限されないが、他の粘着特性との両立の観点から、通常は例えば凡そ50N/25mm以下であり、いくつかの態様において、凡そ30N/25mm以下であってもよい。
上記対SUS粘着力は、被着体としてSUS板を用いて、23℃、50%RHの測定環境下において、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で測定される。より具体的には、下記の方法で測定される。
[対SUS粘着力]
23℃、50%RHの測定環境下において、両面粘着シートの一方の粘着面に厚さ50μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちし、幅25mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を、酢酸エチルで洗浄したステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に72時間放置した後、万能引張圧縮試験機を使用して、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(対SUS粘着力)[N/25mm]を測定する。上記剥離強度の測定において、万能引張圧縮試験機としては、ミネベア社製の「引張圧縮試験機、TG-1kN」またはその相当品が用いられる。
(バイオマス炭素比)
いくつかの態様において、両面粘着シートはバイオマス由来材料を含み、そのバイオマス炭素比が所定値以上であり得る。両面粘着シートのバイオマス炭素比は、例えば1%以上であり、10%以上であってもよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上である。両面粘着シートのバイオマス炭素比が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味する。かかる観点において、両面粘着シートのバイオマス炭素比は高いほど好ましい。例えば、両面粘着シートのバイオマス炭素比は、55%以上であってよく、60%以上であってもよく、70%以上でもよく、75%以上でもよく、80%以上でもよく、80%超でもよい。バイオマス炭素比の上限は、定義上100%であり、99%以下であってもよく、材料の入手容易性の観点から、95%以下でもよく、90%以下でもよい。良好な粘着性能を発揮しやすくする観点から、いくつかの態様において、両面粘着シートのバイオマス炭素比は、例えば90%以下であってよく、85%以下でもよく、80%以下でもよい。
<用途>
ここに開示される両面粘着シートは、着色された粘着剤層を備え、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形が高度に抑制されており、外観品質に優れた粘着面を有するものであり得るので、被着体表面に貼り付けられた両面粘着シートが視認される使用態様、例えば、両面粘着シートによる隠蔽性が求められる用途や、着色された粘着剤層を利用して意匠性や色味を付与する用途、その他、所定の光学特性(光透過率等)が求められる用途など、各種用途に好適である。例えば、携帯電子機器等の電子機器のなかには、両面粘着シートを利用して、部材の隠蔽や外観の調整等が求められるものがある。そのような電子機器に対して、ここに開示される両面粘着シートは好適である。
上記携帯電子機器の非限定的な例には、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等が含まれる。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。また、上記電子機器の例としては、パソコン(デスクトップ型、ノート型、タブレット型等)、テレビ等が挙げられる。これらは、液晶や有機EL等の表示装置(ディスプレイデバイス)を内蔵したものであり得る。
いくつかの態様において、両面粘着シートは、例えば、上記携帯電子機器のうち感圧センサを備える携帯電子機器内において、感圧センサと他の部材とを固定する目的で利用され得る。いくつかの態様において、両面粘着シートは、画面上の位置を指示するための装置(典型的にはペン型、マウス型の装置)と位置を検出するための装置とで、画面に対応する板(典型的にはタッチパネル)の上で絶対位置を指定することを可能とする機能を備える電子機器(典型的には携帯電子機器)内において、感圧センサと他の部材とを固定するために用いられ得る。
また、いくつかの好ましい態様において、両面粘着シートは、携帯電子機器におけるタッチパネルディスプレイ等の表示画面(表示部)の裏面に配置される用途に好適である。いくつかの好ましい態様に係る両面粘着シートを上記表示画面(表示部)の裏面に配置することで、携帯電子機器の使用態様にかかわらず表示画面の視認性の低下を防止することができる。
また、いくつかの態様において、両面粘着シートは、光センサを内蔵する携帯電子機器に好適である。上述した携帯電子機器等の各種機器は、機器の操作や近接物の感知、周囲の明るさ(環境光)の検知、データ通信等を目的として、赤外線や可視光線、紫外線等の光線を利用した光センサを備え得る。特に限定するものではないが、上記光センサとしては、加速度センサ、近接センサ、輝度センサ(環境光センサ)等が挙げられる。このような光センサは、紫外線、可視光線、赤外線等の光線の受光素子を有しており、また、赤外線等の特定光線の発光素子を有するものであり得る。換言すれば、光センサは、紫外線、可視光線および赤外線を含む波長領域のうち特定の波長領域の光線の発光素子および/または受光素子を含むものであり得る。そのような機器に対して、いくつかの態様に係る両面粘着シートを適用して、粘着剤層内で屈折、散乱し得る光の入光を制限することで、機器内の光を制御し、センサの作動精度低下を防止することができる。
ここに開示される両面粘着シートが貼り付けられる材料(被着体材料)としては、特に限定するものではないが、例えば、銅、銀、金、鉄、錫、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、チタン、クロム、亜鉛等、またはこれらの2種以上を含む合金等の金属材料や、例えばポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエーテルニトリル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエステル系樹脂(PET系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミド系樹脂(いわゆるアラミド樹脂等)、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、液晶ポリマー等の各種樹脂材料(典型的にはプラスチック材)、アルミナ、ジルコニア、ソーダガラス、石英ガラス、カーボン等の無機材料等が挙げられる。なかでも、銅やアルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料や、PET等のポリエステル系樹脂や、ポリイミド系樹脂、アラミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂等の樹脂材料(典型的にはプラスチック材)が広く用いられている。上記の材料は、電子機器等の製品を構成する部材の材料であり得る。ここに開示される両面粘着シートは、上記材料から構成された部材に貼り付けられて用いられ得る。また、上記の材料は、上記感圧センサや表示部等の固定対象物(例えば電磁波シールドや補強板等の裏面部材)を構成する材料であり得る。なお、固定対象物とは、両面粘着シートが貼り付けられる対象物、すなわち被着体のことをいう。また、裏面部材とは、例えば携帯電子機器において、上記感圧センサや表示部のおもて面(視認側)の反対側に配置される部材をいい、例えば、後述の図4に示す表示装置500の裏面に配置される支持部540を構成する部材等であり得る。また、上記固定対象物は、単層構造、多層構造のいずれの形態であってもよく、両面粘着シートを貼り付ける表面(貼付け面)には、各種の表面処理が施されていてもよい。特に限定されるものではないが、固定対象物の一例として、厚さが1μm以上(典型的には5μm以上、例えば60μm以上、さらには120μm以上)1500μm以下(例えば800μm以下)程度の裏面部材が挙げられる。
いくつかの態様において、両面粘着シートの貼り付け対象である部材や材料は、光透過性を有するもの(光透過性被着体)であり得る。光透過性被着体に貼り付けられた両面粘着シートの粘着面は、光透過性被着体越しに視認され得るので、外観品質のよい粘着面を有することが望ましい。上記光透過性被着体の光透過率は、例えば50%よりも大きく、70%以上であり得る。いくつかの好ましい態様において、上記被着体の光透過率は80%以上であり、より好ましくは90%以上であり、95%以上(例えば95~100%)であり得る。そのような材料は、携帯電子機器等の各種機器の画像表示部の裏面に配置される樹脂フィルム(例えば、PETフィルム等のポリエステル系樹脂フィルム)であり得る。ここに開示される両面粘着シートは、上記のような光透過率が所定値以上の被着体(例えば部材)に貼り付ける態様で好ましく用いられ得る。上記光透過率は、波長550nmの光線透過率であり、両面粘着シートの波長550nmの光線透過率と同様の方法で測定され得る。
また、いくつかの態様において、両面粘着シートは、金属部材に貼り付けられる態様で用いられる。金属部材の材料としては、上記被着体材料として例示した金属材料が挙げられる。かかる金属部材は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料から形成された表面(粘着シート貼付け面)を有する部材または物品であり、好適例としては、ステンレス鋼製部材やアルミニウム製部材等の金属部材が挙げられる。金属部材表面において隠蔽が求められる領域に、ここに開示される両面粘着シートを貼り付けることで、金属部材の上記領域は隠蔽され得る。両面粘着シートは、金属部材の表面全体を覆うものであってもよく、上記表面の一部(例えば、隠蔽が求められる一部領域)を覆うものであってもよい。上記金属部材は、例えば、後述の図4に示す表示装置500の支持部540を構成する部材等であり得る。上記金属部材は、両面粘着シートの一方の被着体であることが好ましい。
上記より、ここに開示される技術によると、両面粘着シートと、該両面粘着シートが貼り付けられた部材とを備える積層体が提供される。いくつかの態様において、両面粘着シートを含む積層体は、該両面粘着シートと、金属部材(第1部材)と、を備える積層体である。かかる積層体は、金属部材と、該金属部材の表面の少なくとも一部を覆う両面粘着シートと、を備えるものであり得る。両面粘着シートは、金属部材の表面全体を覆うものであってもよく、上記表面の一部(例えば、隠蔽が求められる一部領域)を覆うものであってもよい。典型的には、上記両面粘着シートの一方の面(粘着面)は、上記金属部材に貼り付けられる。また、いくつかの態様において、両面粘着シートが貼り付けられる部材は、上述した被着体材料の光透過率を有するものであり得る。この態様において、両面粘着シートを含む積層体は、該両面粘着シートと、光透過性を有する部材(第2部材)と、を備える積層体である。また、いくつかの好ましい態様において、積層体は、金属部材(第1部材)と、両面粘着シートと、光透過性を有する部材(第2部材)と、をこの順で備える積層体である。なお、基材レス両面粘着シートは、積層体において粘着剤層ともいう。
上記積層体の構成例を図3に示す。図3に示す積層体50は、第1部材41と、基材レスの両面粘着シート1と、第2部材42とを、この順で備える。具体的には、積層体50において、基材レスの両面粘着シート1の一方の粘着面(第1粘着面)1Aが、第1部材41に接着しており、両面粘着シート1の他方の粘着面(第2粘着面)1Bが、第2部材42に接着している。この実施形態では、第1部材41および第2部材42はともにシート状または板状の形状を有しており、積層体50は多層構造を有する。また、この実施形態では、第1部材41は金属部材であり、第2部材42は光透過性部材である。積層体を構成する部材の詳細については、上述の部材、材料、被着体として説明したとおりであるので、重複する説明は繰り返さない。
また、いくつかの態様において、両面粘着シートは、LED(light emitting diode)等の各種光源や、自己発光する有機EL等の発光要素を含む電子機器に好ましく用いられる。例えば、所定の光学特性が要求される有機EL表示装置や液晶表示装置を備える電子機器(典型的には携帯電子機器)に好ましく用いることができる。
図4は、表示装置の構成例を模式的に示す分解斜視図である。図4に示すように、携帯電子機器400が備える表示装置500は、カバー部材や有機ELユニット等から構成される表示部520と、支持部540と、を備える。表示装置500は、両面粘着シート530をさらに含んで構成されている。この構成例では、両面粘着シート530は、表示部520と支持部540を構成する部材を固定している。なお、支持部540は、基板(ステンレス鋼板やアルミニウム板等の金属板)等を含んで構成されている。ここに開示される両面粘着シートは、上記のような表示装置の構成要素として好ましく用いられる。
また、ここに開示される両面粘着シートは、いくつかの態様において、バイオマス炭素比の高いアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有するものであり得ることから、従来の一般的なアクリル系粘着剤(すなわち、バイオマス炭素比の低いアクリル系粘着剤)が使用されている各種の用途において該アクリル系粘着剤の代替として用いられることで、化石資源系材料の依存抑制に貢献することができる。ここに開示される両面粘着シートは、化石資源系材料への依存度が低減された両面粘着シートとして好ましく利用され得る。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
〔1〕 カバー部材および有機ELユニットを含む表示部と、支持部と、を含む表示装置であって、
前記支持部には、両面接着性粘着シートが接合されており、
前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、表示装置。
〔2〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数が4~8である鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートを含む、上記〔1〕に記載の表示装置。
〔3〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の表示装置。
〔4〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はn-ブチルアクリレートを含む、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の表示装置。
〔5〕 前記粘着剤層は黒色着色剤を含む、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の表示装置。
〔6〕 前記粘着剤層は、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物と、を含む、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の表示装置。
〔7〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層からなる基材レス粘着シートである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の表示装置。
〔8〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層と支持基材とを含む基材付き粘着シートである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の表示装置。
〔11〕 両面接着性粘着シートと、該両面接着性粘着シートの第1粘着面を保護する第1剥離ライナーと、該両面接着性粘着シートの第2粘着面を保護する第2剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き両面接着性粘着シートであって、
前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面に対する剥離力R[N/50mm]と、前記第2剥離ライナーの前記第2粘着面に対する剥離力R[N/50mm]との剥離力差が0.07以上であり、
前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔12〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数が4~8である鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートを含む、上記〔11〕に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔13〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む、上記〔11〕または〔12〕に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔14〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はn-ブチルアクリレートを含む、上記〔11〕~〔13〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔15〕 前記粘着剤層は黒色着色剤を含む、上記〔11〕~〔14〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔16〕 前記粘着剤層は、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物と、を含む、上記〔11〕~〔15〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔17〕 前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面からの剥離力R[N/50mm]は、前記第2剥離ライナーの前記第2粘着面からの剥離力R[N/50mm]よりも低く、
前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面からの剥離力Rは0.3N/50mm以下である、上記〔11〕~〔16〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔18〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層からなる基材レス粘着シートである、上記〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔19〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層と支持基材とを含む基材付き粘着シートである、上記〔11〕~〔17〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔20〕 前記両面接着性粘着シートは、電子機器において部材の固定に用いられる、上記〔11〕~〔19〕のいずれかに記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
〔21〕 金属部材(第1部材)と、両面接着性粘着シートと、を備える積層体であって、
前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、積層体。
〔22〕 光透過性を有する部材(第2部材)と、両面接着性粘着シートと、を備える積層体であって、
前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、積層体。
〔23〕 金属部材(第1部材)と、両面接着性粘着シートと、光透過性を有する部材(第2部材)とを、この順で備える積層体であって、
前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、積層体。
〔24〕 前記金属部材は、アルミニウム製部材またはステンレス鋼製部材である、上記〔21〕または〔23〕に記載の積層体。
〔25〕 前記光透過性を有する部材の光透過率は50%よりも大きい、上記〔22〕または〔23〕に記載の積層体。
〔26〕 前記光透過性を有する部材は、樹脂フィルムからなる、上記〔22〕、〔23〕または〔25〕に記載の積層体。
〔27〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、炭素原子数が4~8である鎖状アルキル基を有するアルキルアクリレートを含む、上記〔21〕~〔26〕のいずれかに記載の積層体。
〔28〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はヘプチルアクリレートを含む、上記〔21〕~〔27〕のいずれかに記載の積層体。
〔29〕 前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分はn-ブチルアクリレートを含む、上記〔21〕~〔28〕のいずれかに記載の積層体。
〔30〕 前記粘着剤層は黒色着色剤を含む、上記〔21〕~〔29〕のいずれかに記載の積層体。
〔31〕 前記粘着剤層は、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物と、を含む、上記〔21〕~〔30〕のいずれかに記載の積層体。
〔32〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層からなる基材レス粘着シートである、上記〔21〕~〔31〕のいずれかに記載の積層体。
〔33〕 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層と支持基材とを含む基材付き粘着シートである、上記〔21〕~〔31〕のいずれかに記載の積層体。
〔34〕 電子機器に用いられる、上記〔21〕~〔33〕のいずれかに記載の積層体。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において含有量や添加量の単位として用いられる「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<評価方法>
(貯蔵弾性率)
粘着剤層の貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により求めることができる。具体的には、測定対象である粘着剤層(基材レス両面粘着シートの場合は、両面粘着シート)を複数枚重ね合わせることにより、厚さ約2mmの粘着剤層を作製する。この粘着剤層を直径7.9mmの円盤状に打ち抜いた試料をパラレルプレートで挟み込んで固定し、粘弾性試験機(例えば、ティー・エー・インスツルメント社製、ARESまたはその相当品)により以下の条件で動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率(0℃および23℃での貯蔵弾性率)を求める。
・測定モード:せん断モード
・温度範囲 :-70℃~150℃
・昇温速度 :5℃/min
・測定周波数:1Hz
なお、測定対象である粘着剤層としては、対応する粘着剤組成物を層状に塗布し、乾燥または硬化することにより形成したものを使用してもよい。
(光透過率)
粘着剤層および粘着シートの光透過率[%]は、市販の分光光度計を用いて、剥離ライナーから剥がした粘着剤層および粘着シートの厚さ方向の光透過率(波長550nmおよび1380nmの光線透過率)を測定することにより求められる。分光光度計としては、日立製作所製の分光光度計(装置名「U4150型分光光度計」)またはその相当品が用いられる。なお、波長550nmおよび1380nmの光線透過率は、それぞれ、可視光透過率および赤外線透過率に対応する。また、粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートの上記光透過率は、粘着剤層の光透過率でもある。
(剥離ライナーの剥離力)
第1剥離ライナーの第1粘着面に対する剥離力Rは、下記の方法で測定される。すなわち、各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを幅50mm、長さ150mmの短冊状に裁断して試験片を得る。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片を万能引張圧縮試験機にセットし、JIS Z0237に準拠して、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で第1剥離ライナーを第1粘着面から引き剥がし、このときの180°引きはがし粘着力(上記引張りに対する抵抗力)を測定する。測定は3回行い(N=3)、それらの平均値を、第1剥離ライナーの第1粘着面からの剥離力R[N/50mm]とする。
第2剥離ライナーの第2粘着面に対する剥離力Rは、下記の方法で測定される。すなわち、各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートから第1剥離ライナーを剥がし、露出した第1粘着面に厚さ25μmのPETフィルムを貼付して裏打ちした後、幅50mm、長さ150mmの短冊状に裁断して試験片を得る。23℃、50%RHの環境下にて、上記試験片を万能引張圧縮試験機にセットし、JIS Z0237に準拠して、剥離角度180度、引張速度300mm/分の条件で第2剥離ライナーを第2粘着面から引き剥がし、このときの180°引きはがし粘着力(上記引張りに対する抵抗力)を測定する。測定は3回行い(N=3)、それらの平均値を、第2剥離ライナーの第2粘着面からの剥離力R[N/50mm]とする。
万能引張圧縮試験機としては、ミネベア社製の装置名「引張圧縮試験機、TCM-1kNB」またはその相当品が用いられる。
(ライナー剥離後の粘着面評価)
各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シート(第1剥離ライナー/両面粘着シート/第2剥離ライナーの積層体)を50mm×100mmのサイズに切り出したものを評価用サンプルとする。クリーンルーム環境下において、この評価用サンプルから第1剥離ライナーを剥離角度180度、剥離速度6m/分の条件で剥離し、1時間後、距離が約100cmとなるよう配置された点光源と投影用スクリーンとの間の中間点(点光源からの距離が約50cmの位置)に、評価用サンプルを平面状に保持し、点光源からの光線に対して評価用サンプルの露出粘着剤層表面の角度が約90度となるように配置する。評価用サンプルは、第1剥離ライナーを剥離した粘着剤層表面を上記点光源側に配置する。23℃、50%RHの環境の暗室にて、上記点光源を点灯し、上記評価用サンプルを透過して上記スクリーンに投影された像を目視で観察することにより、粘着剤層表面の変形(具体的には、波打ちやスジ状の荒れなど、粘着面において一方向に延びる変形)の有無を評価する。点光源としては、例えば、浜松ホトニクス社製の「キセノンランプC2577」を使用することができる。各例につき、評価用サンプルを10個作製して10回評価試験を行い(N=10)、視認可能な変形が認められなかった評価試験(合格)の回数X(/10)をライナー剥離後の粘着面の評価結果とする。合格数が6以上(すなわち6/10以上)であれば、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形が十分に抑制されたと判定される。
<実施例1>
(アクリル系ポリマーの調製)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのn-ブチルアクリレート(BA)95部およびアクリル酸(AA)5部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤として0.2部の2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加え、60℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーのMwは約70×10であった。
(粘着剤組成物の調製)
上記アクリル系ポリマー溶液に、該溶液に含まれるアクリル系ポリマー100部に対して、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂20部と、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤3部およびエポキシ系架橋剤0.01部とを加え、さらに着色剤(黒色着色剤)としてのカーボンブラック粒子を粘着剤層中に2.3%(固形分基準)となるよう添加し、攪拌混合して粘着剤組成物を調製した。テルペンフェノール樹脂(粘着付与樹脂)としては、商品名「YSポリスターT-115」(ヤスハラケミカル社製、軟化点約115℃、水酸基価30~60mgKOH/g)を用いた。イソシアネート系架橋剤としては、商品名「コロネートL」(東ソー社製、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物の75%酢酸エチル溶液)を用いた。エポキシ系架橋剤としては、商品名「TETRAD-C」(三菱ガス化学社製、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン)を用いた。カーボンブラック粒子としては、商品名「マルチラックA903」(トーヨーカラー社製、カーボンブラック粒子分散体、平均粒径400nm)を使用した。
(剥離ライナー付き両面粘着シートの作製)
第1剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF F4」、三菱ケミカル社製、厚さ75μm、ポリエステル製剥離ライナー)および第2剥離ライナー(商品名「SCA0」、フジコー社製、厚さ75μm、PET製剥離ライナー)を用意した。上記粘着剤組成物を上記第2剥離ライナーの剥離面に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ35μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に上記第1剥離ライナーの剥離面を貼り合わせた。このようにして、上記粘着剤層からなる厚さ35μmの基材レス両面粘着シートの第1粘着面および第2粘着面がそれぞれ第1剥離ライナーおよび第2剥離ライナーで保護された形態の剥離ライナー付き両面粘着シートを得た。
<実施例2~6>
粘着剤層中の着色剤の種類および量、架橋剤の量、粘着剤層厚さを表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製し、該粘着剤組成物を用いて各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。表中、白色着色剤は、酸化チタン(TiO)粒子(製品名「WHITE PASTE R-2228」、大日精化工業社製、平均粒径50nm)を表す。
<実施例7~10>
(アクリル系ポリマーの合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、モノマー成分としてのn-ヘプチルアクリレート(n-HpA)93部およびAA7部と、重合溶媒としての酢酸エチルとを仕込み、窒素ガスを導入しながら2時間撹拌した。このようにして重合系内の酸素を除去した後、重合開始剤としてAIBN0.2部を加え、60℃~70℃で8時間溶液重合してアクリル系ポリマーの溶液を得た。このアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は120万であった。なお、上記n-HpAは、バイオマス由来のヘプチルアルコールを用いて合成された、バイオマス由来のヘプチル基をエステル末端に有する化合物である。
(剥離ライナー付き両面粘着シートの作製)
上記アクリル系ポリマー溶液を使用し、粘着剤層含有成分の種類および量、粘着剤層厚さを表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を用いて各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。表中、粘着付与樹脂としてのロジン系樹脂は、ハリマ化成社製の商品名「ハリタック SE10」(水添ロジングリセリンエステル、軟化点75~85℃、水酸基価25~40mgKOH/g)である。
<実施例11>
アクリル系ポリマーのモノマー組成をn-HpA97部およびAA3部に変更した他は基本的に実施例7のアクリル系ポリマーの調製と同様の方法により、本例に係るアクリル系ポリマー溶液を得た。得られたアクリル系ポリマー溶液を使用し、架橋剤の種類および量を表1に示すように変更した他は実施例7と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を用いて本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。
<実施例12>
第1剥離ライナーとして、「ダイアホイルMRF F4」に代えて東レ社製のPET製剥離ライナー(商品名「MFAS」、厚さ38μm)を使用した他は実施例7と同様にして、本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。
<実施例13>
実施例2に記載の方法で調製した粘着剤組成物を用意し、上記粘着剤組成物を、基材層としての厚さ2μmのPETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ社製)の一方の表面(第1面)に塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの第1粘着剤層を形成した。上記第1粘着剤層に第1剥離ライナー(商品名「ダイアホイルMRF F4」、三菱ケミカル社製、厚さ75μm、ポリエステル製剥離ライナー)の剥離面を貼り合わせた。第2剥離ライナーとして、フジコー社製のPET製剥離ライナー(商品名「SCA0」、厚さ75μm)を用意し、上記第2剥離ライナーの剥離面に上記粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させて、厚さ20μmの第2粘着剤層を形成した。この第2粘着剤層を、第1粘着剤層が形成された基材層の粘着剤層非形成面に転写した。このようにして、本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シート(基材付き両面粘着シート)を作製した。
<実施例14~16>
粘着剤組成物として、実施例7に記載の方法で調製した粘着剤組成物を使用した他は実施例13と同様にして、実施例14に係る剥離ライナー付き両面粘着シート(基材付き両面粘着シート)を作製した。また、実施例15では、粘着剤層の厚さを35μmに変更した。実施例16では、基材層として厚さ12μmのPETフィルム(商品名「ルミラー」、東レ社製)を使用した。その他は実施例14と同様にして、実施例15および16に係る剥離ライナー付き両面粘着シート(基材付き両面粘着シート)を作製した。
<比較例1>
アクリル系ポリマーのモノマー組成を2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)75部、アクリロイルモルホリン(ACMO)25部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.1部およびAA3部に変更した他は基本的に実施例1のアクリル系ポリマーの調製と同様の方法により、本例に係るアクリル系ポリマー溶液を得た。得られたアクリル系ポリマー溶液を使用し、粘着剤層含有成分の種類および量を表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を用いて本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。
<比較例2~4>
実施例1に記載の方法で調製したアクリル系ポリマーを使用し、粘着剤層含有成分の種類および量、粘着剤層厚さ、粘着シート構成(基材の有無)を表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして、各例に係る粘着剤組成物をそれぞれ調製し、該粘着剤組成物を用いて各例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。
<比較例5>
実施例7において、第1剥離ライナーとして、フジコー社製のPET製剥離ライナー(商品名「SCA0」、厚さ75μm)を使用し、第2剥離ライナーとして、東レ社製のPET製剥離ライナー(商品名「セラピールBX8A」、厚さ75μm)を使用した。その他は実施例7と同様にして、本例に係る粘着剤組成物を調製し、該粘着剤組成物を用いて本例に係る剥離ライナー付き両面粘着シートを作製した。
各例の概要および評価結果を表1および2に示す。
Figure 0007321342000002
Figure 0007321342000003
表1および表2に示されるように、実施例1~16に係る剥離ライナー付き両面粘着シートは、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとの剥離力差が0.07[N/50mm]以上であり、着色された粘着剤層を有しており、該粘着剤層の0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下であり、ライナー剥離後の粘着面評価の合格数が6/10以上であった。一方、粘着剤層の0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa超であった比較例1~4は、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとの剥離力差が0.07以上であったが、ライナー剥離後の粘着面評価結果が実施例1~16よりも劣っていた。粘着剤層の0℃貯蔵弾性率が高かったため、粘着面の変形が十分に緩和されなかったためと考えられる。また、比較例5は、実施例7と同じ両面粘着シートを用いた剥離ライナー変更例であるが、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとの剥離力差が0.06と十分でなく、実施例7と比べて、ライナー剥離後の粘着面評価結果が劣っていた。
上記の結果から、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとを有し、アクリル系ポリマーを含有する着色粘着剤層を有する剥離ライナー付き両面粘着シートにおいて、第1剥離ライナーと第2剥離ライナーとの剥離力差を0.07以上とし、かつ粘着剤層の0℃貯蔵弾性率を0.95MPa以下とすることにより、剥離ライナーの剥離に起因する粘着面の変形を高度に抑制し得ることがわかる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1、2、530 両面粘着シート
1A 第1粘着面
1B 第2粘着面
10 支持基材
10A 第1面
10B 第2面
21 第1粘着剤層(粘着剤層)
22 第2粘着剤層
31 第1剥離ライナー
31A 剥離面
31B 背面
32 第2剥離ライナー
32A 剥離面
32B 背面
41 第1部材
42 第2部材
50 積層体
100、200 剥離ライナー付き両面粘着シート
400 携帯電子機器
500 表示装置
520 表示部
540 支持部

Claims (7)

  1. 両面接着性粘着シートと、該両面接着性粘着シートの第1粘着面を保護する第1剥離ライナーと、該両面接着性粘着シートの第2粘着面を保護する第2剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き両面接着性粘着シートであって、
    前記両面接着性粘着シートは、着色された粘着剤層を有し、
    前記粘着剤層はアクリル系ポリマーを含み、
    前記アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分は、ヘプチルアクリレートを85重量%以上含み、かつ、カルボキシ基含有モノマーを1~15重量%含み、
    前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面に対する剥離力R[N/50mm]と、前記第2剥離ライナーの前記第2粘着面に対する剥離力R[N/50mm]との剥離力差が0.07以上1.0以下であり、
    前記粘着剤層は、0℃での貯蔵弾性率が0.95MPa以下である、剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  2. 前記粘着剤層は黒色着色剤を含む、請求項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  3. 前記粘着剤層は、第1着色剤としての黒色着色剤と、第2着色剤としての金属酸化物と、を含む、請求項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  4. 前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面からの剥離力R[N/50mm]は、前記第2剥離ライナーの前記第2粘着面からの剥離力R[N/50mm]よりも低く、
    前記第1剥離ライナーの前記第1粘着面からの剥離力Rは0.3N/50mm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  5. 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層からなる基材レス粘着シートである、請求項1~のいずれか一項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  6. 前記両面接着性粘着シートは、前記粘着剤層と支持基材とを含む基材付き粘着シートである、請求項1~のいずれか一項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
  7. 前記両面接着性粘着シートは、電子機器において部材の固定に用いられる、請求項1~のいずれか一項に記載の剥離ライナー付き両面接着性粘着シート。
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