JP7318569B2 - 硫化物固体電解質、硫化物固体電解質の前駆体、全固体電池および硫化物固体電解質の製造方法 - Google Patents
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Description
本開示における硫化物固体電解質は、Li元素と、M元素(Mは、P、Ge、Si、Snの少なくとも一種である)と、S元素とを含有する。さらに、硫化物固体電解質は、アルジロダイト型結晶相を有する。また、硫化物固体電解質は、31P-MAS-NMRにおいて、82.1ppm±0.5ppmに現れるピークAと、86.1ppm±0.5ppmに現れるピークBと、を有し、上記ピークAの面積比率をSAとし、上記ピークBの面積比率をSBとした場合に、上記SAに対する上記SBの割合(SB/SA)が所定の値以下である。
本開示における硫化物固体電解質の前駆体は、上述した硫化物固体電解質の前駆体であって、Li2S残存率が所定の範囲にある。
図1は、本開示における全固体電池の一例を示す概略断面図である。図1に示される全固体電池10は、正極活物質を含有する正極層1と、負極活物質を含有する負極層2と、正極層1および負極層2の間に形成された固体電解質層3と、正極層1の集電を行う正極集電体4と、負極層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。さらに、正極層1、負極層2および固体電解質層3の少なくとも一つが、上記「A.硫化物固体電解質」に記載した硫化物固体電解質を含有する。
本開示における正極層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。正極層は、正極活物質の他に、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。
本開示における固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有する層である。また、固体電解質層は、固体電解質の他に、バインダーを含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、上述した内容と同様である。本開示における固体電解質層は、上述した硫化物固体電解質を含有することが好ましい。固体電解質層の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下である。
本開示における負極層は、少なくとも負極活物質を含有する層である。また、負極層は、負極活物質の他に、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。
本開示における全固体電池は、通常、正極活物質の集電を行う正極集電体、および、負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボンが挙げられる。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボンが挙げられる。また、電池ケースには、SUS製電池ケース等の一般的な電池ケースを用いることができる。
本開示における全固体電池は、全固体リチウムイオン電池であることが好ましい。また、全固体電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも、二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。なお、二次電池には、二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。また、全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型が挙げられる。
図2は、本開示における硫化物固体電解質の製造方法の一例を示すフローチャートである。図2では、Li2S、P2S5およびLiX(Xはハロゲンである)を含有する原料組成物を準備する。次に、原料組成物を、例えばメカニカルミリングにより混合し、Li2S残存率が所定の範囲にある前駆体を得る。次に、得られた前駆体を焼成する。これにより、上記「A.硫化物固体電解質」に記載した硫化物固体電解質が得られる。
混合工程は、少なくともLi2Sを含有する原料組成物を混合し、Li2S残存率が所定の範囲にある前駆体を得る工程である。
焼成工程は、上記前駆体を焼成する工程である。
上述した工程により得られる硫化物固体電解質については、上記「A.硫化物固体電解質」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
Li2S(フルウチ化学製)0.6557gと、P2S5(アレドリッチ製)0.8348gと、LiCl(高純度化学製)0.5095gとを秤量し、原料組成物を得た(組成:Li5.4PS4.4Cl1.6)。得られた原料組成物を、5mm径のジルコニアボールとともに、ジルコニアポット(45ml)に投入し、その後、脱水ヘプタン(関東化学工業製)を4g投入し、密閉した。密閉したポットを遊星型ボールミル装置(Fritch P-7)にセットし、500rpmで15時間メカニカルミリングすることで、硫化物固体電解質の前駆体を得た。
メカニカルミリングの条件を、200rpm、10分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの条件を、200rpm、30分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの条件を、200rpm、60分間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの条件を、500rpm、10時間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの条件を、200rpm、15時間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの代わりに、乳鉢で原料組成物が均一になるまで混合したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
焼成温度を400℃、3時間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
メカニカルミリングの条件を、370rpm、25時間に変更したこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質の前駆体を得た。得られた前駆体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして硫化物固体電解質を得た。
(XRD測定)
実施例1~5および比較例1、2、4で得られた前駆体に対して、CuKα線を用いたX線回折(XRD)測定を行った。その結果を図3~5に示す。図3(a)に示すように、実施例1では、2θ=27.0°付近および2θ=31.2°付近にLi2Sのピークが確認された。また、実施例1では、2θ=30.0°付近および2θ=34.8°付近にLiClのピークが確認された。また、図3(b)、図4(a)~図4(c)に示すように、実施例2~5においても、実施例1と同様に、Li2SのピークおよびLiClのピークが確認された。
実施例1~4および比較例1~3で得られた硫化物固体電解質に対して、31P-MAS-NMR測定を行った。測定条件は、以下の通りである。
・装置:INOVA300(Agilent社製)
・試料管:7mmφZrO2ロータ
・回転数:7000Hz
・標準:リン酸=0ppm
・積算回数:100~500 Gain=auto
・繰り返し待ち時間:10秒間
その結果を図7~図9に示す。なお、硫化物固体電解質は、緩和時間が短い材料であるが、繰り返し待ち時間は、例えば8秒間以上であることが好ましい。繰り返し待ち時間が短すぎると、十分な緩和が得られず、波形が乱れやすくなるからである。一方、繰り返し待ち時間は、例えば15秒間以下である。
ピークA:82.1±0.5ppm
ピークB:86.1±0.5ppm
ピークC:89.1±0.5ppm
ピークD:84.1±0.5ppm
実施例1~5および比較例1~4で得られた硫化物固体電解質に対して、イオン伝導度測定(25℃)を行った。得られた硫化物固体電解質の粉末100mgを、ペレット成型機を用いて圧力6ton/cm2でプレスし、ペレットを作製した。交流インピーダンス法によりペレットの抵抗を求め、ペレットの厚さからイオン伝導度を求めた。その結果を表1に示す。
Li2S(フルウチ化学製)0.7896gと、P2S5(アレドリッチ製)0.8304gと、LiCl(高純度化学製)0.3801gとを秤量し、原料組成物を得た(組成:Li5.8PS4.8Cl1.2)。得られた原料組成物を用いたこと以外は、比較例3と同様にして硫化物固体電解質を得た。
Li2S(フルウチ化学製)0.7228gと、P2S5(アレドリッチ製)0.8326gと、LiCl(高純度化学製)0.4446gとを秤量し、原料組成物を得た(組成:Li5.6PS4.6Cl1.4)。得られた原料組成物を用いたこと以外は、比較例3と同様にして硫化物固体電解質を得た。
Li2S(フルウチ化学製)0.5883gと、P2S5(アレドリッチ製)0.8370gと、LiCl(高純度化学製)0.5747gとを秤量し、原料組成物を得た(組成:Li5.2PS4.2Cl1.8)。得られた原料組成物を用いたこと以外は、比較例3と同様にして硫化物固体電解質を得た。
Li2S(フルウチ化学製)0.5205gと、P2S5(アレドリッチ製)0.8393gと、LiCl(高純度化学製)0.6403gとを秤量し、原料組成物を得た(組成:Li5.0PS4.0Cl2.0)。得られた原料組成物を用いたこと以外は、比較例3と同様にして硫化物固体電解質を得た。
参考例1~4で得られた硫化物固体電解質に対して、31P-MAS-NMR測定を行った。測定条件は、上記と同様である。その結果を表2に示す。
2 … 負極層
3 … 固体電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … 全固体電池
Claims (8)
- 硫化物固体電解質の前駆体であって、
前記硫化物固体電解質は、Li元素と、M元素(Mは、P、Ge、Si、Snの少なくとも一種である)と、S元素とを含有し、
前記硫化物固体電解質は、アルジロダイト型結晶相を有し、
前記硫化物固体電解質は、31P-MAS-NMRにおいて、
82.1ppm±0.5ppmに現れるピークAと、
86.1ppm±0.5ppmに現れるピークBと、
を有し、
前記ピークAの面積比率をSAとし、前記ピークBの面積比率をSBとした場合に、前記SAに対する前記SBの割合(SB/SA)が0.23以下であり、
前記前駆体は、Li 2 S残存率が、7.7%以上、54.7%以下である、硫化物固体電解質の前駆体。 - 前記硫化物固体電解質が、89.1ppm±0.5ppmに現れるピークCをさらに有し、
前記ピークCの面積比率をSCとした場合に、前記SAに対する前記SBおよび前記SCの合計の割合((SB+SC)/SA)が0.27以下である、請求項1に記載の硫化物固体電解質の前駆体。 - 前記硫化物固体電解質が、84.1ppm±0.5ppmに現れるピークDをさらに有する、請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質の前駆体。
- 前記Mが、少なくともPを含有する、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質の前駆体。
- 前記硫化物固体電解質が、X元素(Xは、ハロゲンである)をさらに含有する、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質の前駆体。
- 前記Xが、少なくともClを含有する、請求項5に記載の硫化物固体電解質の前駆体。
- 前記硫化物固体電解質が、Li7-yPS6-yXy(yは0<y≦2を満たす)で表される組成を有する、請求項5または請求項6に記載の硫化物固体電解質の前駆体。
- 硫化物固体電解質の製造方法であって、
前記硫化物固体電解質は、Li元素と、M元素(Mは、P、Ge、Si、Snの少なくとも一種である)と、S元素とを含有し、
前記硫化物固体電解質は、アルジロダイト型結晶相を有し、
前記硫化物固体電解質は、 31 P-MAS-NMRにおいて、
82.1ppm±0.5ppmに現れるピークAと、
86.1ppm±0.5ppmに現れるピークBと、
を有し、
前記ピークAの面積比率をS A とし、前記ピークBの面積比率をS B とした場合に、前記S A に対する前記S B の割合(S B /S A )が0.23以下であり、
前記製造方法は、
前記Li元素、前記M元素および前記S元素を含有し、かつ、少なくともLi2Sを含有する原料組成物を混合し、Li2S残存率が7.7%以上、54.7%以下である前駆体を得る混合工程と、
前記前駆体を焼成する焼成工程と、
を有する、硫化物固体電解質の製造方法。
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