JP7302364B2 - コネクタ用端子材及びコネクタ用端子 - Google Patents
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一方、特許文献2のように、アンチモンを銀めっき層に添加することで、銀めっき層中の結晶粒を微細化し、銀めっき層の硬度を高くすることも考えられる。しかし、初期硬度は高いものの、加熱によって銀めっき層中のアンチモンがめっき層最表面に濃化して硬度が低下し、さらに表層のアンチモンが酸化して接触抵抗が増大する。さらに、ニッケルめっき層を下地として用いていた場合、加熱によってニッケルめっき層と銀めっき層との間にニッケル酸化物が生成され、このニッケル酸化物が原因となりめっき層が剥離することがあった。
そこで、特許文献4のように、基材に対して直接銀錫合金めっきを施してめっき層全体の組成を均一に保つことが考えられている。
また、このニッケルめっき層の上に中間層としてCu,Pd,Co,Mnのいずれか一種を主成分として含有する中間層が形成されているので、これらの間の密着性が良好となり、銀錫合金めっき層の耐摩耗性を有効に発揮させることができる。この中間めっき層の膜厚は0.02μm未満では全面に均質に成膜されないため、耐摩耗性向上の効果が低下し、銀錫合金めっき層が剥がれやすくなる。なお、加工性の面から中間めっき層の膜厚は0.5μm以下とするのが好ましい。
なお、銀錫合金めっき層中のAgが70at%未満では、加熱後の接触抵抗が増加し、Agが85at%を超えると、硬い銀錫合金に対する軟らかい銀の割合が増えるため、耐摩耗性が低下する。また全面に均一な成膜が困難となる。
銀錫系金属間化合物としては、Ag3Sn及びAg4Snの金属間化合物を例示できる。
銀錫合金めっき層が0.5μm未満では、コネクタとして使用する際の耐摩耗性向上の効果に乏しくなる。5μmを超える膜厚としても問題はないが、コストと加工性の面から5μm以下とするのが好ましい。
[コネクタ用端子材の構成]
図1は一実施形態のコネクタ用端子材の断面を模式的に示したものである。このコネクタ用端子材1は、少なくとも表面が銅又は銅合金からなる板状の基材2と、該基材2の表面に被覆されたニッケル又はニッケル合金からなるニッケルめっき層3と、ニッケルめっき層3の一部の表面に形成された中間めっき層4と、中間めっき層4の上に形成された銀錫合金めっき層5と、この銀錫合金めっき層5の上に形成された銀めっき層6とを備えている。
銀めっき層6の膜厚は0.1μm以上2.0μm以下である。銀めっき層6の膜厚が0.1μm未満では薄すぎるため、早期に摩耗して消失し易い。2.0μmを超える膜厚では、軟らかい銀めっき層6が厚くなるため、摩擦係数が増大する。
まず、基材2として、銅又は銅合金からなる板材を用意し、この板材に脱脂、酸洗等をすることによって表面を清浄する前処理を行う。
この基材2の表面の少なくとも一部に対して、ニッケル又はニッケル合金めっきを施してニッケルめっき層3を基材2に形成する。例えば、スルファミン酸ニッケル300g/L、塩化ニッケル30g/L、ホウ酸30g/Lからなるニッケルめっき液を用いて、浴温45℃、電流密度3A/dm2の条件下でニッケルめっきを施して形成される。なお、ニッケル層3を形成するニッケルめっきは、緻密なニッケル主体の膜が得られるものであれば特に限定されず、公知のワット浴を用いて電気めっきにより形成してもよい。
基材2に形成されたニッケルめっき層3の表面に5質量%~10質量%の硫酸水溶液を用いて活性化処理を行った後、中間めっき層4を形成する。この中間めっき層4形成のためのめっき浴は、均一に成膜できれば、浴種は問わない。中間めっき層4が銅めっき層であれば硫酸銅浴、パラジウムめっき層であれば塩化パラジウム等のパラジウム化合物を含むめっき浴、コバルトめっき層であれば硫酸コバルトを含むめっき浴、マンガンめっき層であれば硫酸マンガンを含むめっき浴など、その金属種に代表的なめっき浴を用いればよい。
中間めっき層4の表面に銀めっきを短時間施して薄い銀めっき層を形成する。この場合の銀めっきとしては銀ストライクめっきが好ましい。この銀ストライクめっきを施すためのめっき液の組成は、ノーシアン浴(シアン化物であるシアン化銀、シアン化銀カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等を含まないめっき浴)であれば特に限定されないが、メタンスルホン酸銀浴を主体としたものが望ましい。この銀ストライクめっきにより形成される銀ストライクめっき層は、その後に銀錫合金めっき層が形成されることにより、層としての識別は困難になる。
そして、銀ストライクめっきを施した後に銀錫合金めっきを施して銀錫合金めっき層5を形成する。この銀錫合金めっきのためのめっき浴としては、例えば、メタンスルホン酸、メタンスルホン酸錫、メタンスルホン酸銀、硫黄を含有した有機添加剤を含む組成とする。具体的には、メタンスルホン酸濃度を40g/L、Ag濃度を40g/Lを超えて90g/L以下、Sn濃度を5~35g/Lの範囲で調整した銀錫合金めっき液を用いるとよい。なお、この銀錫合金めっき液は、シアン化銀、シアン化銀カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のシアン化物を含んでいない。また、錫陽極は、AgとPt/Ti(チタン製板に白金を被覆した)不溶性電極との両方を用い、これらの面積は、陰極の2倍以上、AgとPt/Tiの電流配分はAg:Pt/Ti=4:1とすることが好ましい。さらに、浴温は40℃~60℃、電流密度1~15A/dm2とし、銀錫合金めっき層5を形成する。
銀錫合金めっき層5の上に、銀めっきを施して銀めっき層6を形成する。この銀めっきのためのめっき浴の組成は、特に限定されないが、例えば、シアン化銀カリウム(K[Ag(CN)2]30g/L~60g/L、シアン化カリウム(KCN)120g/L~160g/L、炭酸カリウム(K2CO3)10g/L~20g/L、めっき層中に取り込まれやすい有機添加剤からなるめっき浴が好適である。有機添加剤としては、例えば、2,2チオエタノールなどのチオアルコール類、ベンゾチアゾール類、ベンゾトリアゾールなどのアゾール類、イミダゾールなどのイミダゾール類を用いることができる。この有機添加剤の添加濃度は0.1g/L以上10g/L以下とするのがよい。メタンスルホン酸、またはヨウ化カリウムと主体にしたノーシアン浴も使用可能である。
そして、この銀めっき浴に対してアノードとして純銀板を用いて、浴温10℃以上40℃以下、電流密度1A/dm2以上10A/dm2以下の条件下で銀めっきを1秒~7分程度施すことにより銀めっき層6が形成される。
銀錫合金めっき層5が形成されているため、表層から酸素が透過せず、加熱試験でニッケルめっき層3から剥離することを抑制できる。なお、銀錫合金めっき層5中のAgが70at%未満では、加熱後の接触抵抗が低下し、Agが85at%を超えると銀錫合金めっき層の粒径が大きくなり、耐摩耗性が低下する。
なお、各めっきの条件は以下のとおりとした。
・めっき浴組成
スルファミン酸ニッケル:300g/L
塩化ニッケル:30g/L
ホウ酸:30g/L
・浴温:45℃
・電流密度:3A/dm2
・めっき浴組成
硫酸銅5水和物 250g/L
硫酸 50g/L
・浴温:50℃
・電流密度:3A/dm2
・アノード:リン含有銅
・めっき浴組成
塩化パラジウム 17g/L
リン酸アンモニウム 100ml/L
塩化アンモニウム 25g/L
・浴温:30℃
・電流密度:1A/dm2
・アノード:Pt/Ti(チタン製板に白金を被覆した不溶性電極)
・めっき浴組成
硫酸コバルト7水和物 140g/L
ホウ酸 40g/L
・浴温:30℃
・電流密度:1A/dm2
・アノード:Pt/Ti
・めっき浴組成
硫酸マンガン 200g/L
硫酸アンモニウム 100g/L
・浴温:30℃
・電流密度:8A/dm2
・アノード:Pt/Ti
・めっき浴組成
大和化成株式会社製ダイシルバー使用
・浴温:25℃
・電流密度:1A/dm2
・アノード:Ir/Ti
(チタン製板にイリジウム酸化物(IrO2)を被覆した不溶性電極)
・めっき浴組成
メタンスルホン酸:40g/L
メタンスルホン酸錫:13~91g/L
メタンスルホン酸銀:75~170g/L
有機添加剤:5mg/L
・浴温:50℃
・電流密度:1~15A/dm2
・めっき浴組成
シアン化銀カリウム:55g/L
シアン化カリウム:130g/L
炭酸カリウム:15g/L
非イオン性界面活性剤:1g/L
2,2チオエタノール:5g/L
・浴温:25℃
・電流密度:5A/dm2
・アノード: 純銀板
収束イオンビーム装置(FIB)にてめっき材を加工して断面試料を作製し、銀錫合金めっき中のAg含有量(at%)は、日本電子株式会社製の電子線マイクロアナライザー:EPMA(型番JXA-8530F)を用いて、加速電圧10kVで各試料の断面を測定した。
収束イオンビーム装置(FIB)にてめっき材を加工して断面試料を作製し、その断面表面を走査イオン顕微鏡(SIM)で観察し、得られたSIM像から膜厚(μm)を測定し、得られた数値を膜厚とした。
加熱前の各試料及び150℃で250時間加熱後の各試料のそれぞれを60mm×10mmの試験片に切り出し、平板サンプルをオス端子の代用とし、この平板サンプルに曲率半径3mmの凸加工を行ったサンプルをメス端子の代用とした。これらを加熱前及び150℃で250時間加熱後について、それぞれ接触抵抗(mΩ)を測定した。測定に際しては、ブルカー・エイエックスエス株式会社の摩擦摩耗試験機(UMT-Tribolab)を用い、水平に設置したオス端子試験片にメス試験片の凸面を接触させ、オス端子試験片を20Nの荷重をかけた時の接触抵抗値を4端子法により測定した。
各試料を60mm×10mmの試験片に切り出し、平板サンプルをオス端子の代用とし、この平板サンプルに曲率半径3mmの凸加工を行ったサンプルをメス端子の代用とした。摺動試験は、ブルカー・エイエックスエス株式会社の摩擦摩耗試験機(UMT-Tribolab)を用い、水平に設置したオス端子試験片にメス試験片の凸面を接触させ、2Nの荷重を負荷した状態で、オス端子試験片を水平に移動距離5mm、摺動速度1Hzで摺動させた。摺動試験後に凸加工サンプルの下地(ニッケル層)が露出しているか否かで耐摩耗性を判定した。この際、摺動試験後に下地が露出していないものを良好「A」、摺動試験後に下地が露出しているものを不可「B」とした。
図2は試料13のSIM像であり、基材(Base Materialと表記)表面のニッケルめっき層(Niと表記)の上に、中間めっき層としてCuからなる層(Cuと表記)、銀錫合金めっき層(AgSnと表記)、銀めっき層(Agと表記)が形成されている。
これに対して、試料5は、銀錫合金めっき層の膜厚が0.4μmと小さいため、耐摩耗性が劣っていた。
試料6は、銀錫合金めっき層中のSnの含有量が多い(Agの含有量が少ない)ため、加熱によって拡散したSnが最表層に酸化膜を形成して接触抵抗が増加している。
試料9は、銀錫合金めっき層中のAg含有量が87at%であったことから、銀錫合金めっき層の結晶粒の大きさが極端にばらついて、均一な成膜ができなかった。
試料12は、中間めっき層の膜厚が0.01μmであったため、耐摩耗性に劣っていた。
中間めっき層を形成しなかった試料18~21は、耐摩耗性に劣っていた。
2 基材
3 ニッケルめっき層
4 中間めっき層
5 銀錫合金めっき層
6 銀めっき層
Claims (4)
- 少なくとも表面が銅又は銅合金からなる基材と、該基材の表面に形成されたニッケルめっき層と、該ニッケルめっき層の上に形成された中間めっき層と、該中間めっき層の上に形成された銀錫合金めっき層とを備え、前記中間めっき層は、Pd,Co,Mnのいずれか一種を主成分として含有し、前記中間めっき層の膜厚が0.02μm以上であり、前記銀錫合金めっき層は、Agを70at%以上85at%以下の範囲で含み、前記銀錫合金めっき層の膜厚は0.5μm以上5μm以下であることを特徴とするコネクタ用端子材。
- 前記銀錫合金めっき層の上に純度99質量%以上のAgからなる銀めっき層が0.1μm以上2.0μm以下の膜厚で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ用端子材。
- 請求項1に記載のコネクタ用端子材からなるコネクタ用端子であって、相手方コネクタ用端子との接点部分の表面が前記銀錫合金めっき層からなることを特徴とするコネクタ用端子。
- 請求項2に記載のコネクタ用端子材からなるコネクタ用端子であって、相手方コネクタ用端子との接点部分の表面が前記銀めっき層からなることを特徴とするコネクタ用端子。
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