以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
本発明においては、タイヤを正規リムに組み込み、タイヤの内圧が正規内圧に調整され、このタイヤに荷重がかけられていない状態は、正規状態と称される。本発明では、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
図1は、本発明の一実施形態に係る重荷重用空気入りタイヤ2(以下、単に「タイヤ2」と称することがある。)の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。
図1は、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。この図1においてタイヤ2は、リムR(正規リム)に組み込まれている。
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のビード8、一対のチェーファー10、カーカス12、ベルト14、一対のクッション層16、インナーライナー18及び一対のスチール補強層20を備える。
トレッド4は、その外面22において路面と接触する。図1において符号PCは、トレッド4の外面22と赤道面との交点である。この交点PCはタイヤ2の赤道である。
このトレッド4は、ベース部24と、このベース部24の径方向外側に位置するキャップ部26とを備える。ベース部24は、接着性が考慮された低発熱性の架橋ゴムからなる。キャップ部26は、耐摩耗性及びグリップ性能が考慮された架橋ゴムからなる。図1に示されるように、キャップ部26はベース部24全体を覆う。
このタイヤ2では、トレッド4の端部に周方向細溝28が刻まれる。これにより、このトレッド4には、トレッド本体30と細陸部32とが構成される。細陸部32は、トレッド本体30の外側に位置する。周方向細溝28は、周方向に連続して延びる。このタイヤ2では、トレッド4の外面22のうち、トレッド本体30の外面に対応する部分がトレッド面34である。
このタイヤ2では、少なくとも4本の周方向溝36がトレッド本体30に刻まれる。これにより、このトレッド本体30には少なくとも5本の陸部38が構成される。図1に示されたタイヤ2では、4本の周方向溝36がトレッド本体30に刻まれ、このトレッド本体30に5本の陸部38が構成されている。
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、トレッド4の端から径方向内向きに延びる。サイドウォール6は、架橋ゴムからなる。
それぞれのビード8は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。ビード8は、コア40と、エイペックス42とを備える。
コア40は、周方向に延びる。コア40は、巻き回されたスチール製のワイヤ44を含む。コア40は略六角形の断面形状を有する。このコア40の断面において、符号PAで示された角部がコア40の軸方向内端である。なお、このコア40の角部は、コア40の断面に含まれる、ワイヤ44の断面束の輪郭に基づいて特定される。
エイペックス42は、コア40の径方向外側に位置する。エイペックス42は、内側エイペックス42uと外側エイペックス42sとを備える。内側エイペックス42uはコア40から径方向外向きに延びる。外側エイペックス42sは内側エイペックス42uよりも径方向外側に位置する。内側エイペックス42u及び外側エイペックス42sは架橋ゴムからなる。外側エイペックス42sは内側エイペックス42uに比して軟質である。
それぞれのチェーファー10は、ビード8の軸方向外側に位置する。このチェーファー10は、サイドウォール6よりも径方向内側に位置する。チェーファー10は、リムRと接触する。チェーファー10は、架橋ゴムからなる。
カーカス12は、トレッド4、サイドウォール6及びチェーファー10の内側に位置する。カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ46を備える。このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ46からなる。このタイヤ2では、カーカスプライ46はそれぞれのコア40の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。
図示されないが、カーカスプライ46は並列された多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードは、トッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。このタイヤ2では、カーカスコードが赤道面に対してなす角度は70°以上90°以下である。このカーカス12は、ラジアル構造を有する。このタイヤ2では、カーカスコードの材質はスチールである。有機繊維からなるコードが、カーカスコードとして用いられてもよい。
ベルト14は、トレッド4の径方向内側に位置する。このベルト14は、カーカス12の径方向外側に位置する。
ベルト14は、径方向に積層された複数の層48で構成される。このタイヤ2のベルト14は、4枚の層48で構成される。このタイヤ2では、ベルト14を構成する層48の数に特に制限はない。ベルト14の構成は、タイヤ2の仕様が考慮され適宜決められる。
図示されないが、それぞれの層48は並列された多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。ベルトコードの材質はスチールである。
図示されないが、ベルトコードは赤道面に対して傾斜する。このタイヤ2では、一の層48のベルトコードは、この一の層48に積層される他の層48のベルトコードと交差するように、ベルト14は構成される。
このタイヤ2では、4枚の層48のうち、第一層48Aと第三層48Cとの間に位置する第二層48Bが最大の軸方向幅を有する。径方向において最も外側に位置する第四層48Dが、最小の軸方向幅を有する。
図1に示されるように、第二層48B及び第三層48Cの端部はそれぞれゴム層50で覆われる。ゴム層50で覆われたそれぞれの端部の間には、さらに2枚のゴム層50が配置される。このタイヤ2では、第二層48Bの端部と第三層48Cの端部との間に、計4枚のゴム層50からなるエッジ部材52が挟み込まれる。これにより、第三層48Cの端部は、径方向外向きに迫り上げられ、第二層48Bの端部から引き離して配置される。このエッジ部材52は架橋ゴムからなる。
それぞれのクッション層16は、ベルト14の端の部分、すなわち、ベルト14の端部において、このベルト14とカーカス12との間に位置する。クッション層16は、架橋ゴムからなる。
インナーライナー18は、カーカス12の内側に位置する。インナーライナー18は、タイヤ2の内面を構成する。このインナーライナー18は、空気遮蔽性に優れた架橋ゴムからなる。インナーライナー18は、タイヤ2の内圧を保持する。
それぞれのスチール補強層20は、ビード8の部分に位置する。スチール補強層20は、カーカスプライ46に沿って、コア40の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返される。このタイヤ2では、スチール補強層20の少なくとも一部はカーカスプライ46と接する。
図示されないが、スチール補強層20は並列した多数のフィラーコードを含む。スチール補強層20においてフィラーコードはトッピングゴムで覆われる。フィラーコードの材質はスチールである。
図2は、トレッド4の外面22の展開図を示す。この図2において、左右方向はこのタイヤ2の軸方向であり、上下方向はこのタイヤ2の周方向である。この図2の紙面に対して垂直な方向は、このタイヤ2の径方向である。
図2において、符号PEはトレッド面34の端である。なお、タイヤ2において、外観上、トレッド面34の端PEが識別不能な場合には、正規状態のタイヤ2に正規荷重を負荷して、キャンバー角を0゜としトレッド4を平面に接触させて得られる接地面の軸方向外側端がトレッド面34の端PEとして定められる。
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝36がトレッド本体30に刻まれる。これら周方向溝36は、軸方向に並列され、周方向に連続して延びる。
4本の周方向溝36のうち、軸方向において内側に位置する周方向溝36、すなわち赤道PCに近い周方向溝36がセンター周方向溝36cである。軸方向において最も外側に位置する周方向溝36、すなわち、トレッド面34の端PEに近い周方向溝36がショルダー周方向溝36sである。なお、トレッド本体30に刻まれた周方向溝36に、赤道PC上に位置する周方向溝が含まれる場合には、赤道PC上に位置する周方向溝がセンター周方向溝とされる。さらにセンター周方向溝36cとショルダー周方向溝36sとの間に周方向溝が存在する場合には、この周方向溝がミドル周方向溝とされる。
図2において、両矢印RTはトレッド本体30の実幅である。この実幅RTは、トレッド面34に沿って計測される、一方のトレッド面34の端PEから他方のトレッド面34の端PEまでの距離で表される。この図2において、両矢印GCはセンター周方向溝36cの実幅である。両矢印GSはショルダー周方向溝36sの実幅である。実幅GC及び実幅GSは、トレッド面34に周方向溝36がないと仮定して得られる仮想トレッド面に沿って計測される。図1において、両矢印DCはセンター周方向溝36cの深さである。両矢印DSは、ショルダー周方向溝36sの深さである。深さDC及び深さDSは、仮想トレッド面から底までの距離により表される。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、センター周方向溝36cの実幅GCはトレッド本体30の実幅RTの2~10%程度が好ましい。センター周方向溝36cの深さDCは、13~25mmが好ましい。
このタイヤ2では、排水性及びトラクション性能への貢献の観点から、ショルダー周方向溝36sの実幅GSはトレッド本体30の実幅RTの1~7%程度が好ましい。ショルダー周方向溝36sの深さDSは、13~25mmが好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、4本の周方向溝36がトレッド本体30に刻まれることにより、このトレッド本体30には5本の陸部38が構成される。これら陸部38は、軸方向に並列され、周方向に延びる。
5本の陸部38のうち、軸方向において内側に位置する陸部38、すなわち赤道PC上に位置する陸部38がセンター陸部38cである。軸方向において最も外側に位置する陸部38、すなわち、トレッド面34の端PEを含む陸部38がショルダー陸部38sである。さらにセンター陸部38cとショルダー陸部38sとの間に位置する陸部38が、ミドル陸部38mである。なお、トレッド本体30に構成された陸部のうち、軸方向において内側に位置する陸部が赤道PC上でなく、赤道PCの近くに位置する場合には、この赤道PCの近くに位置する陸部、すなわち赤道PC側に位置する陸部がセンター陸部とされる。
図2において、両矢印RCはセンター陸部38cの実幅である。両矢印RSは、ショルダー陸部38sの実幅である。両矢印RMは、ミドル陸部38mの実幅である。実幅RC、実幅RS及び実幅RMは、トレッド面34に沿って計測される。
このタイヤ2では、操縦安定性及びウェット性能の観点から、センター陸部38cの実幅RCは、トレッド本体30の実幅RTの10~18%程度が好ましい。同様の観点から、ミドル陸部38mの実幅RMは、トレッド本体30の実幅RTの10~18%程度が好ましい。
このタイヤ2では、センター陸部38c、ミドル陸部38m及びショルダー陸部38sのそれぞれに、サイプ54が設けられる。このタイヤ2では、図2に示されるように、それぞれの陸部38に多数のサイプ54が設けられる。これらサイプ54は周方向に間隔をあけて配置される。
サイプ54は、前述の周方向溝36と同じく溝の一種ではある。特に、溝の壁間の距離で表される幅が1.5mm以下である、溝が、サイプ54と称される。なお、サイプ54の深さについては、タイヤの仕様に応じて適宜設定される。図2においては、サイプ54の幅が狭いため壁間の隙間は示されていない。
図2に示されるように、センター陸部38cに設けられるサイプ54は、このセンター陸部38cの一方側のセンター周方向溝36cとその他方側のセンター周方向溝36cとの間を架け渡す。このサイプ54は、陸部38を横断する、横断サイプ56である。このセンター陸部38cには、多数の横断サイプ56cが刻まれ、これら横断サイプ56cは周方向に間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、センター陸部38cに多数の横断サイプ56cが刻まれることにより、このセンター陸部38cには多数のブロック58cが構成される。このタイヤ2のセンター陸部38cは、周方向に断続的に延びる。このセンター陸部38cにおいて、横断サイプ56cの間隔は、30mm以上36mm以下の範囲で設定される。
このタイヤ2では、ミドル陸部38mに設けられるサイプ54は、このミドル陸部38mの軸方向内側に位置するセンター周方向溝36cとその軸方向外側に位置するショルダー周方向溝36sとの間を架け渡す。このサイプ54も、陸部38を横断する、横断サイプ56である。このミドル陸部38mには、多数の横断サイプ56mが刻まれ、これら横断サイプ56mは周方向に間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、ミドル陸部38mに多数の横断サイプ56mが刻まれることにより、このミドル陸部38mには多数のブロック58mが構成される。このタイヤ2のミドル陸部38mは、周方向に断続的に延びる。このミドル陸部38mにおいて、横断サイプ56mの間隔は、30mm以上36mm以下の範囲で設定される。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに設けられるサイプ54は、ショルダー周方向溝36sと連通する。このサイプ54は、ショルダー周方向溝36sから外向きに延びる。図2に示されるように、このサイプ54の終端60はこのショルダー陸部38s内に位置する。このサイプ54は、陸部38内に終端60を有する、行き止まりサイプ62である。このショルダー陸部38sには、多数の行き止まりサイプ62が刻まれ、これら行き止まりサイプ62は周方向に間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、ショルダー陸部38sは、その内側部分においては周方向に断続的に延び、それ以外の部分においては周方向に途切れることなく連続して延びる。
このタイヤ2では、センター陸部38cの実幅RCに対するショルダー陸部38sの実幅RSの比は1.15以上1.45以下である。
センター陸部38cの実幅RCに対するショルダー陸部38sの実幅RSの比が1.15以上であるので、ショルダー陸部38sの剛性が十分に確保される。路面に接触してからこの路面から離れるまでのショルダー陸部38sの動きが抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部38s全体が摩耗する片減り)の発生が抑制される。耐偏摩耗性の向上の観点から、この比は1.20以上がより好ましい。
センター陸部38cの実幅RCに対するショルダー陸部38sの実幅RSの比が1.45以下であるので、ショルダー陸部38s内での周長差が適切に維持される。ショルダー陸部38sの各部における路面に対する滑りに違いが生じにくいので、このタイヤ2では、このショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この場合においても、このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。耐偏摩耗性の向上の観点から、この比は1.40以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの軸方向外側に周方向細溝28を挟んで細陸部32が設けられる。
図2において、両矢印RLは細陸部32の実幅である。この実幅RLは、トレッド4の外面22に沿って計測される、トレッド4の外面22の端TEから細陸部32の内端までの距離により表される。このタイヤ2では、この細陸部32の実幅RLは通常、3mm以上7mm以下の範囲で設定される。
図1において、両矢印DTは周方向細溝28の深さである。図2において、両矢印GTはこの周方向細溝28の実幅である。このタイヤ2では、周方向細溝28の実幅GTはショルダー周方向溝36sの実幅GSの30%以下に設定される。この周方向細溝28の深さDTは、ショルダー周方向溝36sの深さDSの0.6倍以上1.0倍以下の範囲に設定される。
タイヤ2が路面を踏みしめると、細陸部32がショルダー陸部38sと当接し、細陸部32がショルダー陸部38sを支持する。このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの外端部、すなわち、トレッド面34の端PEの部分における接地圧の過度の上昇が抑えられる。この細陸部32は、耐偏摩耗性の向上に貢献する。
このタイヤ2では、センター陸部38c及びミドル陸部38mには多数の横断サイプ56が刻まれる。これら横断サイプ56は、エッジ成分として機能する。そして、これら横断サイプ56は、それぞれの陸部38に柔軟性を付与するとともに、濡れた路面の走行において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排出に貢献する。このタイヤ2では、良好なウェット性能が確保される。このタイヤ2では、ウェット性能確保のために、従来のタイヤのように陸部38に浅溝を設ける必要はない。
このタイヤ2のトレッド本体30には、周方向溝36及びサイプ54以外の溝は刻まれない。言い換えれば、トレッド本体30の外面、すなわちトレッド面34のうち、周方向溝36及びサイプ54以外の部分は平坦なランド面である。このタイヤ2では、トレッド本体30、詳細には、センター陸部38c、ミドル陸部38m及びショルダー陸部38sの外面に、例えば、偏摩耗の発生の起点となる恐れのある浅溝は設けられない。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上が図られる。この観点から、このタイヤ2のランド比は80%以上が好ましい。一方、ウェット性能の確保の観点から、このランド比は83%以下が好ましい。
ランド比は、トレッド本体30に周方向溝36及びサイプ54を含む溝が刻まれていないと仮定して得られるトレッド面34全体の面積に対する、前述のランド面の面積の比率により表される。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分に多数の行き止まりサイプ62が設けられる。これら行き止まりサイプ62は、この軸方向内側部分に柔軟性を付与する。このため、このタイヤ2では、この軸方向内側部分に作用する荷重が分散され、この軸方向内側部分における、局所的な接地圧の高まりが抑えられる。このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分を起点とする起動摩耗の発生が抑えられる。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上が図られる。
このタイヤ2では、センター陸部38c及びミドル陸部38mに刻まれた横断サイプ56がウェット性能の発揮に貢献する。そして、ショルダー陸部38sの実幅RSの適正なコントロールと、このショルダー陸部38sの外側に設けた細陸部32と、このショルダー陸部38sの軸方向内側部分に刻まれた行き止まりサイプ62とが、路面に対するショルダー陸部38sの過剰な滑りと、このショルダー陸部38sの路面に対する特異な接触とを効果的に抑える。このタイヤ2のショルダー陸部38sでは、段差摩耗等の摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が効果的に抑制される。このタイヤ2では、ウェット性能の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成される。
このタイヤ2では、好ましくは、ショルダー周方向溝36sの実幅GSはセンター周方向溝36cの実幅GCよりも狭い。これにより、このショルダー陸部38sの幅RSが十分に確保される。ショルダー陸部38sが適度な剛性を有するので、このショルダー陸部38sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、偏摩耗(例えば、ショルダー陸部38s全体が摩耗する片減り)が効果的に抑制される。この観点から、センター周方向溝36cの実幅GCに対するショルダー周方向溝36sの実幅GSの比は0.9以下が好ましい。
一方、ショルダー周方向溝36sの実幅GSがセンター周方向溝36cの実幅GCよりも過剰に狭いと、ショルダー陸部38s内での周長差が増加し、ショルダー陸部38sの各部における路面に対する滑りに違いが生じる恐れがある。この場合、ショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが懸念される。また、過剰に狭いショルダー周方向溝36sは、ウェット性能に影響する。ウェット性能の確保と、耐偏摩耗性の向上との観点から、センター周方向溝36cの実幅GCに対するショルダー周方向溝36sの実幅GSの比は0.7以上が好ましい。
このタイヤ2では、センター陸部38cの実幅RCに対するミドル陸部38mの実幅RMの比は0.95以上が好ましく、1.05以下が好ましい。この比が0.95以上に設定されることにより、適切な実幅RSを有するショルダー陸部38sが構成されるので、ショルダー陸部38s内での周長差が適切に維持される。ショルダー陸部38sの各部における路面に対する滑りに違いが生じにくいので、このタイヤ2では、このショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この比が1.05以下に設定されることにより、ショルダー陸部38sの実幅RSが十分に確保されるので、このショルダー陸部38sは十分な剛性を有する。ショルダー陸部38sの動きが抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、ショルダー陸部38s全体が摩耗していく片減りの発生が効果的に抑制される。
図2において、両矢印C1は行き止まりサイプ62のみかけ幅である。このみかけ幅C1は、トレッド面34に沿って、行き止まりサイプ62の始端64から終端60までの軸方向長さを計測することにより得られる。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの実幅RSに対する、行き止まりサイプ62のみかけ幅C1の比は、0.08以上が好ましく、0.10以下が好ましい。これにより、行き止まりサイプ62が、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分における、局所的な接地圧の高まりの抑制に効果的に貢献するので、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分を起点とする起動摩耗の発生が抑えられる。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上が図られる。
図2において、両矢印C2は行き止まりサイプ62の間隔である。この間隔C2は、トレッド面34に沿って、一の行き止まりサイプ62の終端60から他の行き止まりサイプ62の終端60までの周方向長さを計測することにより得られる。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分において、一様な接地圧分布が得られる観点から、この軸方向内側部分において、行き止まりサイプ62は等間隔に配置されるのが好ましい。そして、行き止まりサイプ62の間隔C2は15mm以上が好ましく、18mm以下が好ましい。
このタイヤ2では、行き止まりサイプ62の深さはショルダー周方向溝36sの深さDSよりも浅い。具体的には、行き止まりサイプ62の深さはショルダー周方向溝36sの深さDSの95%以下である。行き止まりサイプ62が、ショルダー陸部38sの軸方向内側部分における、局所的な接地圧の高まりの抑制に効果的に貢献する観点から、この行き止まりサイプ62の深さは、ショルダー周方向溝36sの深さDSの80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
図3は、センター陸部38cに設けられる横断サイプ56cの断面を示す。この図3に示されるように、このタイヤ2では、横断サイプ56には、底が深い深底部66と、底が浅い浅底部68とが構成される。この横断サイプ56は、深底部66と浅底部68とを備える。図示されないが、ミドル陸部38mに設けられる横断サイプ56mも、この横断サイプ56cと同等の構成を有する。
図3において、両矢印WRは横断サイプ56の幅である。この横断サイプ56の幅WRは、陸部38の外面において計測される横断サイプ56の長さにより表される。一点鎖線MLは、この幅WRの中心を通る、この陸部38の外面の法線である。この一点鎖線MLは、横断サイプ56の幅方向中心線である。このタイヤ2では、横断サイプ56の底の形状はこの中心線MLに対して対称な形状を有する。
このタイヤ2では、横断サイプ56の底には中心線MLを挟んで2つの浅底部68が設けられる。この2つの浅底部68の間、すなわち陸部38の中央部分と、この浅底部68の外側、すなわち陸部38の端の部分とが深底部66である。
このタイヤ2では、深底部66は、陸部38に対して柔軟性を付与するとともに、横断サイプ56の容積確保に貢献する。このタイヤ2は、良好なウェット性能を発揮する。これに対して、浅底部68は、陸部38の剛性確保に貢献する。このタイヤ2では、路面に接触してからこの路面から離れるまでの陸部38の動きが効果的に抑制されるので、良好な耐偏摩耗性が発揮される。この観点から、横断サイプ56の底は、深底部66と浅底部68とを備えるのが好ましい。
図3において、符号PBは深底部66と浅底部68との境界である。この境界PBは、深底部66と、この深底部66と浅底部68の頂面とを架け渡す、浅底部68の傾斜面との交点に基づいて特定される。両矢印WDは、陸部38の中央部分に設けられた深底部66の幅である。この深底部66の幅WDは、この深底部66の両側に位置する境界PB間の距離により表される。両矢印WSは、浅底部68の幅である。この浅底溝の幅WSは、この浅底部68の両側に位置する境界PB間の距離により表される。
前述したように、このタイヤ2では、陸部38の中央部分に深底部66が設けられる。この深底部66は、陸部38への柔軟性付与及び横断サイプ56の容積確保に貢献する。このタイヤ2では、良好なウェット性能が発揮される。この観点から、横断サイプ56の幅WRに対する深底部66の幅WDの比は0.1以上が好ましい。この深底部66による剛性への影響が抑えられる観点から、この比は0.3以下が好ましい。
このタイヤ2では、浅底部68は、陸部38の剛性確保に貢献する。このタイヤ2では、路面に接触してからこの路面から離れるまでの陸部38の動きが効果的に抑制されるので、良好な耐偏摩耗性が発揮される。この観点から、横断サイプ56の幅WRに対する浅底部68の幅WSの比は0.1以上が好ましい。この浅底部68による柔軟性への影響が抑えられる観点から、この比は0.3以下が好ましい。
このタイヤ2では、深底部66は、陸部38の中央部分以外に陸部38の端の部分に設けられる。この深底部66は、陸部38の端における、局所的な接地圧の高まりの抑制にも貢献する。このタイヤ2では、耐偏摩耗性の向上が図られる。この観点から、陸部38の端の部分に深底部66が設けられるのが好ましい。
図3において、両矢印dは深底部66における横断サイプ56の深さである。両矢印d1は、浅底部68における横断サイプ56の深さである。
このタイヤ2では、浅底部68における横断サイプ56の深さd1に対する、深底部66における横断サイプ56の深さdの比は、1.7以上が好ましく、3.5以下が好ましい。この比が1.7以上に設定されることにより、浅底部68のボリュームが確保される。この浅底部68が陸部38の剛性に貢献し、陸部38の動きが抑えられる。このタイヤ2では、良好な耐偏摩耗性が得られる。この観点から、この比は2.0以上がより好ましい。この比が3.5以下に設定されることにより、摩耗が進行した状態においても横断サイプ56がエッジ成分として十分に機能する。このタイヤでは、良好なウェット性能が得られる。この観点から、この比は3.0以下がより好ましい。
このタイヤ2では、横断サイプ56がウェット性能の確保と耐偏摩耗性の向上と効果的に貢献する観点から、センター周方向溝の深さDCに対する、深底部66における横断サイプ56の深さdの比は、0.5以上が好ましく、0.7以下が好ましい。
図2において、一点鎖線HLはミドル陸部38mの実幅中心位置を示す。この実幅中心位置HLは、実幅RMに基づいて特定される。このタイヤ2では、このミドル陸部38mにおいて、この実幅中心位置HLよりも軸方向内側の領域がミドル陸部内側領域70である。この実幅中心位置HLよりも軸方向外側の領域がミドル陸部外側領域72である。
このタイヤ2では、ミドル陸部38mに設けられた横断サイプ56の形状は、ミドル陸部内側領域70に中心ACを有する円弧を含む。図2において、矢印Rはこの円弧の半径である。
このタイヤ2では、ミドル陸部38mの横断サイプ56mの形状がミドル陸部内側領域70に中心ACを有する円弧を含むので、ミドル陸部38mが路面に対して滑った際、ミドル陸部38mを構成するブロック58m同士が効果的に支えあう。ブロック58mの倒れ込みが抑えられるので、このタイヤ2では、このブロック58mの倒れ込みにより生じる、ヒール・アンド・トー摩耗の発生が効果的に抑えられる。この横断サイプ56mは、耐偏摩耗性の向上に貢献する。この観点から、このタイヤ2では、ミドル陸部38mの横断サイプ56mの形状がミドル陸部内側領域70に中心ACを有する円弧を含むのが好ましい。
このタイヤ2では、ミドル陸部38mの実幅RMに対する、前述の半径Rの比は0.75以上が好ましく、1.05以下が好ましい。この比が0.75以上に設定されることにより、横断サイプ56mの形状において、円弧で表される部分(以下、凸部分とも称される。)の湾曲の程度が適正に維持され、この凸部分を起点とする摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比は0.80以上がより好ましい。この比が1.05以下に設定されることにより、凸部分がブロック58mの倒れ込み防止に貢献するので、ヒール・アンド・トー摩耗の発生が効果的に抑えられる。そしてこの横断サイプ56mが排水に貢献するので、良好なウェット性能が確保される。この観点から、この比は1.00以下がより好ましい。
前述したように、このタイヤ2では、センター陸部38c及びミドル陸部38mはそれぞれ多数のブロック58を含む。これらブロック58はそれぞれ、径方向外向きに延びる4つの角部74を備える。このタイヤ2では、ブロック58の欠け防止の観点から、4つの角部74のうち、少なくとも2つの角部74sにダイアモンドカットが施される。図2及び3に示されるように、隣り合う二つのブロック58において、対向する角部74のいずれか一方の角部74sにダイアモンドカットが施される。
図4は、図1に示された、このタイヤ2の断面の一部を示す。この図4において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。この図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
このタイヤ2のベルト14は、第一層48A、第二層48B、第三層48C及び第四層48Dで構成される。図4に示されるように、このベルト14を構成する、第一層48A、第二層48B、第三層48C及び第四層48Dの端は、軸方向において、ショルダー周方向溝36sの外側に位置する。
このタイヤ2では、ベルトを構成する複数の層のうち、最も広い軸方向幅を有する層48は第一基準層76とも称され、この第一基準層76の外側に積層される層48は第二基準層78とも称される。このタイヤ2では、最も広い軸方向幅を有する第二層48Bが第一基準層76であり、径方向において、この第二層48Bの外側に積層される第三層48Cが第二基準層78である。
図4(a)において、矢印WTはトレッド本体30の軸方向幅である。この軸方向WTは、トレッド面34の一方の端PEから他方の端PEまでの軸方向距離で表される。矢印W1は、第一基準層76としての第二層48Bの軸方向幅である。この軸方向幅W1は、第二層48Bの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。矢印W2は、第二基準層78としての第三層48Cの軸方向幅である。この軸方向幅W2は、第三層48Cの一方の端から他方の端までの軸方向距離により表される。
このタイヤ2では、トレッド本体30の軸方向幅WTに対する第一基準層76の軸方向幅W1の比は0.85以上が好ましく、1.00以下が好ましい。
トレッド本体30の軸方向幅WTに対する第一基準層76の軸方向幅W1の比が0.85以上であるので、ベルト14がトレッド本体30全体を十分に拘束する。このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの外端部、すなわち、トレッド面34の端PEの部分における特異な寸法成長が抑えられるので、このショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.90以上がより好ましく、0.92以上がさらに好ましい。
トレッド本体30の軸方向幅WTに対する第一基準層76の軸方向幅W1の比が1.00以下であるので、ショルダー陸部38sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド本体30の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部38sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比は0.97以下がより好ましく、0.95以下がさらに好ましい。
このタイヤ2では、トレッド本体30の軸方向幅WTに対する第二基準層78の軸方向幅W2の比は0.80以上が好ましい。この第二基準層78はトレッド本体30の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド本体30全体を十分に拘束するので、ショルダー陸部38sの外端部における特異な寸法成長が抑えられる。このタイヤ2では、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。
このタイヤ2では、軸方向において、第二基準層78の端は第一基準層76の端よりも内側に位置する。軸方向において、第二基準層78の端と第一基準層76の端とが一致しないので、ベルト14の端部に歪が集中することが防止される。このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が生じにくい。しかも、ショルダー陸部38sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される上に、タイヤの周長に関し、赤道部分の周長とトレッド本体30の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持される。ショルダー陸部38sの路面に対する滑りが抑えられるので、このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
図4(a)において、両矢印Dは、第一基準層76としての第二層48Bの端から第二基準層78としての第三層48Cの端までの軸方向距離である。
このタイヤ2では、第一基準層76の端から第二基準層78の端までの軸方向距離Dは3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。
距離Dが3mm以上に設定されることにより、軸方向において、第二基準層78の端と第一基準層76の端とが適度な間隔をあけて配置される。ベルト14の端部への歪の集中が抑えられるので、このタイヤ2では、ベルト14の端部においてルースのような損傷が発生することが防止される。この観点から、この距離Dは4mm以上がより好ましい。
距離Dが8mm以下に設定されることにより、ベルト14がトレッド本体30全体を十分に拘束する。ショルダー陸部38sの外端部における特異な寸法成長が抑えられるので、このタイヤ2では、このショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。この観点から、この距離Dは7mm以下がより好ましい。
図4(a)において、両矢印Yは、第二基準層78としての第三層48Cの端におけるこの第三層48Cから、第一基準層76としての第二層48Bまでの距離である。この距離Yは、第二層48Bの外面の法線に沿って計測される。前述したように、第二層48Bの端部と第三層48Cの端部との間には、エッジ部材52が位置する。この距離Yはこのエッジ部材52の厚さでもある。
このタイヤ2では、第二基準層78の端においてこの第二基準層78から第一基準層76までの距離Y(又は、第二基準層78の端におけるエッジ部材52の厚さY)は、2.5mm以上が好ましく、4.0mm以下が好ましい。
距離Yが2.5mm以上に設定されることにより、第一基準層76の端部に対して第二基準層78の端部が十分な間隔をあけて配置される。このタイヤ2では、トレッド本体30に対するベルト14の拘束力を確保しつつ、ベルト14の端部への歪の集中が十分に抑えられる。このタイヤ2では、ベルト14の端部における損傷の発生を防止しながら、偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この距離Yは3.0mm以上がより好ましい。
距離Yが4.0mm以下に設定されることにより、トレッド面34に対して第二基準層78の端部が適切な距離をあけて配置される。第二基準層78の端部がトレッド面34に近接することにより生じる接地圧の上昇が抑えられるので、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに段差摩耗のような摩耗が発生することが防止される。さらに、第二基準層78の端部の垂れ下がりが防止されるので、この第二基準層78の端部の動きが抑えられる。この端部の動きに伴う発熱が抑えられるので、ルースのような損傷の発生が防止される。この観点から、この距離Yは3.5mm以下がより好ましい。
前述したように、第一基準層76の端の部分と第二基準層78の端の部分との間には、エッジ部材52が位置し、このエッジ部材52は積層された4枚のゴム層50で構成される。このタイヤ2では、このエッジ部材52の厚さYのコントロールが容易であるとともに正確である。
図4(b)において、符号P1は第一基準層76としての第二層48Bの端を通り、径方向に延びる直線と、トレッド面34との交点である。この交点P1は、第一基準層76の端に対応するトレッド面34上の位置である。符号P2は、第二基準層78としての第三層48Cの端を通り、径方向に延びる直線と、トレッド面34との交点である。この交点P2は、第二基準層78の端に対応するトレッド面34上の位置である。
この図4(b)において、両矢印S1はショルダー陸部38sの内端から、第一基準層76の端に対応するトレッド面34上の位置P1までの、トレッド面34に沿って計測される長さである。本発明においては、この長さS1がショルダー陸部38s内での第一基準層76の実幅である。両矢印S2は、ショルダー陸部38sの内端から、第二基準層78の端に対応するトレッド面34上の位置P2までの、トレッド面34に沿って計測される長さである。本発明においては、この長さS2がショルダー陸部38s内での第二基準層78の実幅である。なお、この図4(b)における両矢印RSは、図2に示された、ショルダー陸部38sの実幅である。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの実幅RSに対する、このショルダー陸部38s内での第一基準層76の実幅S1の比は0.8以上が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ベルト14がトレッド本体30全体を十分に拘束する。このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの外端部における特異な寸法成長が抑えられるので、このショルダー陸部38sに肩落ち摩耗が発生することが抑えられる。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.85以上がより好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの実幅RSに対する、このショルダー陸部38s内での第一基準層76の実幅S1の比は1.00以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド本体30の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部38sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの実幅RSに対する、このショルダー陸部38s内での第二基準層78の実幅S2の比は0.6以上が好ましい。これにより、このタイヤ2では、第二基準層78がトレッド本体30の拘束に貢献する。このタイヤ2では、ベルト14がトレッド本体30全体を十分に拘束するので、ショルダー陸部38sの外端部における特異な寸法成長が抑えられる。このタイヤ2では、肩落ち摩耗のような偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、この比は0.70以上がより好ましい。
このタイヤ2では、ショルダー陸部38sの実幅RSに対する、このショルダー陸部38s内での第二基準層78の実幅S2の比は0.9以下が好ましい。これにより、このタイヤ2では、ショルダー陸部38sに対するベルト14の拘束力が適切に維持される。タイヤ2の周長に関し、赤道部分の周長とトレッド本体30の端PEの部分の周長との周長差が適切に維持されるので、ショルダー陸部38sの路面に対する滑りが抑えられる。このタイヤ2では、段差摩耗のような偏摩耗の発生が抑えられる。この観点から、この比は0.85以下がより好ましい。
従来のタイヤにおいては、トレッド面の端は通常、軸方向において、コアの内端よりも外側に位置する。これに対して、このタイヤ2では、図1に示されるように、軸方向において、トレッド面34の端PEの位置は、コア40の内端PAの位置と一致するか、このトレッド面34の端PEはコア40の内端PAよりも内側に位置する。このタイヤ2では、トレッド本体30の軸方向幅WTが従来のタイヤに比べて狭いため、トレッド面34の端PEの部分において接地圧が高まり、偏摩耗の発生が促されることが懸念される。
しかしこのタイヤ2では、これまで説明してきたように、ショルダー陸部38sの軸方向外側に周方向細溝28を挟んで細陸部32を設け、その軸方向内側部分に行き止まりサイプ62を刻むとともに、センター陸部38cの実幅RCに対するショルダー陸部38sの実幅RSの比の適正化を図ることにより、路面に対するショルダー陸部38sの過剰な滑りと、このショルダー陸部38sの路面に対する特異な接触とが効果的に防止され、ショルダー陸部38sにおいて段差摩耗等の摩耗は生じにくい。このタイヤ2では、トレッド本体30の軸方向幅WTが狭く、偏摩耗の抑制の点において不利であるにも関わらず、耐偏摩耗性の向上が図られる。しかもセンター陸部38c及びミドル陸部38mに刻まれる、横断サイプ56が、ウェット性能の確保に貢献する。このタイヤ2では、ウェット性能の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成される。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ウェット性能の確保と、耐偏摩耗性の向上とが達成された、重荷重用空気入りタイヤ2が得られる。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた重荷重用空気入りタイヤ(タイヤサイズ=295/80R22.5)を得た。
この実施例1では、センター陸部の実幅RCに対するショルダー陸部の実幅RSの比(RS/RC)は1.40であった。センター陸部の実幅RCに対するミドル陸部の実幅RMの比(RM/RC)は1.00であった。この実施例1では、センター陸部の実幅RCは29.5mmに設定された。
この実施例1では、センター周方向溝の実幅GCに対するショルダー周方向溝の実幅GSの比(GS/GC)は、0.85であった。この実施例1では、センター周方向溝の実幅GCは9.6mmに設定された。この実施例1には、細陸部が設けられているので、このことが表の「細陸部」の欄に「Y」で表されている。
この実施例1では、浅底部における横断サイプの深さd1に対する深底部における横断サイプの深さdの比(d/d1)は、2.2であった。この実施例1では、深底部における横断サイプの深さdは9.1mmであった。
この実施例1では、ショルダー陸部の実幅RSに対する、行き止まりサイプのみかけ幅C1の比(C1/RS)は0.09であった。この行き止まりサイプの間隔C2は、15mmであった。
この実施例1では、ミドル陸部の横断サイプの形状はこのミドル陸部内側領域に中心を有する円弧を含み、このミドル陸部の実幅RMに対するこの円弧の半径Rの比(R/RM)は、0.82であった。
この実施例1では、トレッド本体の軸方向幅WTに対する第一基準層(すなわち、第二層)の軸方向幅W1の比(W1/WT)は0.96であった。トレッド本体の軸方向幅WTに対する第二基準層(すなわち、第三層)の軸方向幅W2の比(W2/WT)は0.90であった。トレッド本体の軸方向幅WTは、103.45mmに設定された。
この実施例1では、ショルダー陸部の実幅RSに対するこのショルダー陸部内での第一基準層の実幅S1の比(S1/RS)は0.92であった。ショルダー陸部の実幅RSに対するこのショルダー陸部内での第二基準層の実幅S2の比(S2/RS)は0.72であった。第一基準層の端から第二基準層の端までの軸方向距離Dは5.0mmに設定された。第二基準層の端におけるこの第二基準層から第一基準層までの距離Y、すなわち、エッジ部材の厚さYは3mmに設定された。
[実施例2]
半径Rを変えて比(R/RM)を下記の表1に示された通りにした他は実施例1と同様にして、実施例2のタイヤを得た。
[実施例3]
深さd1及び半径Rを変えて比(d/d1)及び比(R/RM)を下記の表1に示された通りにした他は実施例1と同様にして、実施例3のタイヤを得た。
[実施例4]
深さd1、みかけ幅C1、距離C2及び半径Rを変えて比(d/d1)、比(C1/RS)及び比(R/RM)を下記の表1に示された通りにするとともに、距離C2をこの表1に示された通りにした他は実施例1と同様にして、実施例4のタイヤを得た。
[比較例1]
実幅RS、深さd1、みかけ幅C1及び半径Rを変えて比(RS/RC)、比(d/d1)、比(C1/RS)及び比(R/RM)を下記の表1に示された通りにするとともに、距離C2をこの表1に示された通りにした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
[比較例2及び3]
実幅RS、実幅GS、深さd1、みかけ幅C1及び半径Rを変えて比(RS/RC)、比(GS/GC)、比(d/d1)、比(C1/RS)及び比(R/RM)を下記の表1に示された通りにし、そして距離C2をこの表1に示された通りにするとともに、細陸部を設けなかった他は実施例1と同様にして、比較例2及び3のタイヤを得た。なお、細陸部が設けられていないことが、表の「細陸部」の欄に「N」で表されている。
[WET性能]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×9.00)に組み込み、タイヤの内部に空気を充填した。タイヤの内圧が900kPaに調整された。このタイヤをトラック(2-D車)の駆動輪に装着した。2mmの水膜を有するアスファルト路面において、速度65km/hから急制動をかけて、タイヤがロックをしてから停車するまでの制動距離を測定した。その結果が、下記の表1に示されている。数値が大きいほど、制動距離が短く、WET性能に優れる。
このWET性能の評価試験では、それぞれのタイヤについて、摩耗状態の異なる、3タイプのタイヤが準備された。摩耗状態は、台上試験機においてタイヤを走行させることで、コントロールされた。摩耗初期とは、周方向溝の深さが初期の深さの85%に到達した状態を意味する。摩耗中期とは、周方向溝の深さが初期の深さの50%に到達した状態を意味する。摩耗末期とは、周方向溝の深さが初期の深さの25%に到達した状態を意味する。なお、下記の表1では、摩耗初期が「初期」として、摩耗中期が「中期」として、そして、摩耗末期が「末期」として表されている。
[耐偏摩耗性]
試作タイヤをリム(サイズ=22.5×9.00)に組み込み空気を充填しタイヤの内圧を900kPaに調整した。このタイヤを、高速バスのフロント軸に装着し、タイヤのローテーションをすることなく、6か月間、この高速バスを走行させた。走行後、タイヤの外観を観察し、偏摩耗(片減り又は肩落ち摩耗、軌道摩耗及びヒール・アンド・トー摩耗)の発生状況を確認した。この結果が以下の格付けで下記の表1に示されている。
A・・・偏摩耗の発生が抑えられていた場合
B・・・偏摩耗は発生したが走行性能に変化が認められなかった場合
C・・・偏摩耗が発生しており走行に支障のない程度の性能低下が認められた場合
D・・・偏摩耗が発生しており交換が必要であると判断された場合
表1に示されるように、実施例では、ウェット性能が確保されているとともに、偏摩耗の発生が抑えられていることが確認される。実施例では、比較例に比して評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。