図1は、本発明の一の実施形態に係る半導体プロセスシートXの部分断面模式図である。半導体プロセスシートXは、半導体パッケージの製造過程で使用することのできるものであり、本発明の一の実施形態に係る熱硬化性粘接着フィルムである粘接着フィルム10、および両面粘着シート20を備える。両面粘着シート20は、粘着面20aおよびこれとは反対の粘着面20bを有し、これら粘着面20a,20b間において、本実施形態では、基材21と、粘着力低減可能型の粘着剤層22と、感圧性粘着剤層である粘着剤層23とを含む積層構造を有する。粘接着フィルム10は、両面粘着シート20における粘着面20b上に剥離可能に密着している。また、半導体プロセスシートXは、例えば、所定サイズの円盤形状を有する。
半導体プロセスシートXにおける粘接着フィルム10は、非硬化状態では表面粘着性を示す粘着剤として機能しうるとともに、熱硬化性を有する接着剤としても機能しうる、構成ないし組成を有する。このような粘接着フィルム10は、樹脂成分として熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とを含む組成(第1の組成)を有してもよいし、硬化剤と反応して結合を生じ得る熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む組成(第2の組成)を有してもよい。また、粘接着フィルム10は、単層構造を有してもよいし、隣接層間で組成の異なる多層構造を有してもよい。
粘接着フィルム10が上述の第1の組成を有する場合の粘接着フィルム10中の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、および熱硬化性ポリイミド樹脂が挙げられる。本実施形態では、粘接着フィルム10は、好ましくはエポキシ樹脂および/またはフェノール樹脂を含有する。エポキシ樹脂は、半導体チップの腐食原因となりうるイオン性不純物等の含有量が少ない傾向にあることから、粘接着フィルム10中の熱硬化性樹脂として好ましい。また、エポキシ樹脂に熱硬化性を発現させるための硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。粘接着フィルム10は、一種類の熱硬化性樹脂を含んでもよいし、二種類以上の熱硬化性樹脂を含んでもよい。
上記のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、テトラフェニロールエタン型、ヒダントイン型、トリスグリシジルイソシアヌレート型、およびグリシジルアミン型の、エポキシ樹脂が挙げられる。フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、およびテトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂は、硬化剤としてのフェノール樹脂との反応性に富み且つ耐熱性に優れることから、粘接着フィルム10中のエポキシ樹脂として好ましい。
エポキシ樹脂の硬化剤として作用しうるフェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、および、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレンが挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、およびノニルフェノールノボラック樹脂が挙げられる。粘接着フィルム10は、エポキシ樹脂の硬化剤として、一種類のフェノール樹脂を含んでもよいし、二種類以上のフェノール樹脂を含んでもよい。
粘接着フィルム10がエポキシ樹脂とその硬化剤としてのフェノール樹脂とを含有する場合、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してフェノール樹脂中の水酸基が好ましくは0.5~2.0当量、より好ましくは0.8~1.2当量である割合で、両樹脂は配合される。このような構成は、粘接着フィルム10の硬化にあたって当該エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の硬化反応を充分に進行させるうえで好ましい。
粘接着フィルム10における熱硬化性樹脂の含有割合は、粘接着フィルム10において熱硬化型接着剤としての機能を適切に発現させるという観点からは、例えば20~70質量%であり、好ましくは30~60質量%である。粘接着フィルム10がエポキシ樹脂およびフェノール樹脂を共に含有する場合、粘接着フィルム10における当該両樹脂の総含有割合は、好ましくは25~65質量%、より好ましくは30~50質量%である。
粘接着フィルム10中の熱可塑性樹脂は例えばバインダー機能を担うものであり、粘接着フィルム10が上述の第1の組成を有する場合の粘接着フィルム10中の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、天然ゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリブタジエン樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、6-ナイロンや6,6-ナイロンなどポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなど飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフッ素樹脂が挙げられる。粘接着フィルム10は、一種類の熱可塑性樹脂を含んでもよいし、二種類以上の熱可塑性樹脂を含んでもよい。アクリル樹脂は、イオン性不純物が少なく且つ耐熱性が高いことから、粘接着フィルム10中の熱可塑性樹脂として好ましい。
粘接着フィルム10が熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂を含有する場合の当該アクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味するものとする。
上記アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステル、即ち、アクリル系ポリマーの構成モノマーである(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、および(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s-ブチルエステル、t-ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、およびエイコシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸のシクロペンチルエステルおよびシクロヘキシルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルおよび(メタ)アクリル酸ベンジルが挙げられる。アクリル系ポリマーの構成モノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。また、アクリル樹脂なすためのアクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
上記アクリル系ポリマーは、例えばその凝集力や耐熱性の改質のために、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとして含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸カルボキシペンチル、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(メタ)アクリル酸(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
粘接着フィルム10が、熱硬化性官能基を伴う熱可塑性樹脂を含む上述の第2の組成を有する場合、当該熱可塑性樹脂としては、例えば、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂を用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多く含む。そのような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、第1の組成を有する場合の粘接着フィルム10に関して、アクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記した、(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。この熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすためのアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとして含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、第1の組成を有する場合の粘接着フィルム10に関して、アクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記したカルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。一方、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂をなすための熱硬化性官能基としては、例えば、グリシジル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、およびイソシアネート基が挙げられる。これらのうち、グリシジル基およびカルボキシ基を好適に用いることができる。すなわち、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂としては、グリシジル基含有アクリル樹脂やカルボキシ基含有アクリル樹脂を好適に用いることができる。また、熱硬化性官能基含有アクリル樹脂における熱硬化性官能基の種類に応じて、それと反応を生じうる硬化剤が選択される。熱硬化性官能基含有アクリル樹脂の熱硬化性官能基がグリシジル基である場合、硬化剤としては、エポキシ樹脂用硬化剤として上記したフェノール樹脂を用いることができる。
ダイボンディングのために硬化される前の粘接着フィルム10、即ち未硬化状態の粘接着フィルム10について、ある程度の架橋度を実現するためには、例えば、粘接着フィルム10に含まれる上述の樹脂成分の分子鎖末端の官能基等と反応して結合を生じうる多官能性化合物を架橋剤として粘接着フィルム形成用樹脂組成物に配合しておくのが好ましい。このような構成は、粘接着フィルム10について、高温下での接着特性を向上させるうえで、また、耐熱性の改善を図るうえで、好適である。そのような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、および、多価アルコールとジイソシアネートとの付加物が挙げられる。粘接着フィルム形成用樹脂組成物における架橋剤含有量は、当該架橋剤と反応して結合を生じうる上記官能基を有する樹脂100質量部に対し、形成される粘接着フィルム10の凝集力向上の観点からは好ましくは0.05質量部以上であり、形成される粘接着フィルム10の接着力向上の観点からは好ましくは7質量部以下である。また、粘接着フィルム10における架橋剤としては、エポキシ樹脂等の他の多官能性化合物をポリイソシアネート化合物と併用してもよい。
粘接着フィルム10は、フィラーを含有してもよい。粘接着フィルム10へのフィラーの配合は、粘接着フィルム10の引張貯蔵弾性率、破断強度や、破断伸度などの物性を調整するうえで好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。フィラーは、球状、針状、フレーク状など各種形状を有していてもよい。また、粘接着フィルム10は、一種類のフィラーを含有してもよいし、二種類以上のフィラーを含有してもよい。
上記の無機フィラーの構成材料としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミニウムウィスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、および非晶質シリカが挙げられる。無機フィラーの構成材料としては、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル等の単体金属や、合金、アモルファスカーボン、グラファイトなども挙げられる。粘接着フィルム10が無機フィラーを含有する場合の当該無機フィラーの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また、同含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
上記の有機フィラーの構成材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、およびポリエステルイミドが挙げられる。粘接着フィルム10が有機フィラーを含有する場合の当該有機フィラーの含有量は、例えば2~20質量%である。
粘接着フィルム10がフィラーを含有する場合の当該フィラーの平均粒径は、好ましくは0.005~10μm、より好ましくは0.05~1μmである。当該フィラーの平均粒径が0.005μm以上であるという構成は、粘接着フィルム10において、半導体ウエハ等の被着体に対する高い濡れ性や接着性を実現するうえで好適である。当該フィラーの平均粒径が10μm以下であるという構成は、粘接着フィルム10において充分なフィラー添加効果を得るとともに耐熱性を確保するうえで好適である。フィラーの平均粒径は、例えば、光度式の粒度分布計(商品名「LA-910」,株式会社堀場製作所製)を使用して求めることができる。
粘接着フィルム10は、熱硬化触媒を含有してもよい。粘接着フィルム10への熱硬化触媒の配合は、粘接着フィルム10の硬化にあたって樹脂成分の硬化反応を充分に進行させたり、硬化反応速度を高めるうえで、好ましい。そのような熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリフェニルフォスフィン系化合物、アミン系化合物、およびトリハロゲンボラン系化合物が挙げられる。イミダゾール系化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-ウンデシルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-エチル-4'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2'-メチルイミダゾリル-(1')]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物としては、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリ(ブチルフェニル)フォスフィン、トリ(p-メチルフェニル)フォスフィン、トリ(ノニルフェニル)フォスフィン、ジフェニルトリルフォスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムクロライド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、およびベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドが挙げられる。トリフェニルフォスフィン系化合物には、トリフェニルフォスフィン構造とトリフェニルボラン構造とを併有する化合物も含まれるものとする。そのような化合物としては、例えば、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、およびトリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。アミン系化合物としては、例えば、モノエタノールアミントリフルオロボレートおよびジシアンジアミドが挙げられる。トリハロゲンボラン系化合物としては、例えばトリクロロボランが挙げられる。粘接着フィルム10は、一種類の熱硬化触媒を含有してもよいし、二種類以上の熱硬化触媒を含有してもよい。
粘接着フィルム10は、必要に応じて、一種類の又は二種類以上の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、難燃剤、シランカップリング剤、およびイオントラップ剤が挙げられる。
粘接着フィルム10の厚さは、好ましくは5μm以上、より好ましくは8μm以上である。また、粘接着フィルム10の厚さは、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下である。
粘接着フィルム10は、幅10mmのフィルム試料片について周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で行われる動的粘弾性測定における、20℃での第1引張貯蔵弾性率が、1GPa以下であり、好ましくは0.9GPa以下、より好ましくは0.8GPa以下であり、且つ、130℃での第2引張貯蔵弾性率が、0.1MPa以上であり、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。第1引張貯蔵弾性率は、好ましくは0.001GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上である。第2引張貯蔵弾性率は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。
このような粘接着フィルム10の引張貯蔵弾性率については、例えば、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-III」,TA Instrument社製)を使用して行う動的粘弾性測定から求めることができる。この測定においては、初期チャック間距離を22.5mmとし、測定モードを引張モードとし、測定温度範囲を0℃~200℃とし、周波数を1Hzとし、動的ひずみを0.05%とし、昇温速度を10℃/分とする。また、測定に付すフィルム試料片について、幅は例えば10mmとし、長さは例えば20mmとする。
また、粘接着フィルム10は、熱硬化状態にある幅10mmのフィルム試料片について周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で行われる動的粘弾性測定における、150℃での第3引張貯蔵弾性率が、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上である。
また、粘接着フィルム10における25℃でのプローブタック力は、好ましくは10gf以上である。このプローブタック力の測定方法は、具体的には、実施例に関して後記するとおりである。
両面粘着シート20の基材21は、両面粘着シート20ないし半導体プロセスシートXにおいて支持体として機能する要素である。基材21は例えばプラスチック基材であり、当該プラスチック基材としてはプラスチックフィルムを好適に用いることができる。当該プラスチック基材の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフィド、アラミド、フッ素樹脂、セルロース系樹脂、およびシリコーン樹脂が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ブテン共重合体、およびエチレン-ヘキセン共重合体が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。基材21は、一種類の材料からなってもよいし、二種類以上の材料からなってもよい。基材21は、単層構造を有してもよいし、多層構造を有してもよい。また、基材21は、プラスチックフィルムよりなる場合、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸フィルムであってもよいし、二軸延伸フィルムであってもよい。
基材21における粘着剤層22側表面および粘着剤層23側表面のそれぞれは、粘着剤層との密着性を高めるための物理的処理、化学的処理、または下塗り処理が施されていてもよい。物理的処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、サンドマット加工処理、オゾン暴露処理、火炎暴露処理、高圧電撃暴露処理、およびイオン化放射線処理が挙げられる。化学的処理としては、例えばクロム酸処理が挙げられる。
基材21の厚さは、両面粘着シート20ないし半導体プロセスシートXにおける支持体として基材21が機能するための強度を確保するという観点からは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。また、両面粘着シート20ないし半導体プロセスシートXにおいて適度な可撓性を実現するという観点からは、基材21の厚さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下である。
両面粘着シート20の粘着剤層22は、粘着力低減可能型の粘着剤を含む粘着力低減可能型粘着剤層である。粘着力低減可能型粘着剤としては、例えば、加熱発泡型粘着剤や、放射線照射によって粘着力が半導体パッケージ製造プロセスにて利用できない程度に低下するタイプの放射線硬化性粘着剤が、挙げられる。本実施形態の粘着剤層22においては、一種類の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着力低減可能型粘着剤が用いられてもよい。
粘着剤層22に用いられうる加熱発泡型粘着剤は、例えば、粘着主剤と、加熱によって発泡や膨張をする成分とを少なくとも含有する。加熱発泡型の粘着剤層は、それに含有される発泡性成分や膨張性成分が充分な加熱を受けると、膨張し、その表面(粘着面)にて凹凸形状を生じる。所定の被着体に粘着面が貼着している状態で加熱発泡型粘着剤層がそのような加熱を受けると、当該粘着剤層が膨張してその粘着面にて凹凸形状を生じて被着体に対する接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。
加熱発泡型粘着剤用の粘着主剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。
粘着剤層22中のアクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、好ましくは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに由来するモノマーユニットを質量割合で最も多いモノマーユニットとして含む。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすための(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、粘接着フィルム10に関してアクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記した(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。アクリル系ポリマーのモノマーユニットをなすためのモノマーとして、一種類の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよいし、二種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられてもよい。(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性をアクリル系粘着剤において適切に発現させるうえでは、アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における(メタ)アクリル酸エステルの割合は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
粘着剤層22アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な一種類の又は二種類以上の他のモノマーを構成モノマーとして含んでもよい。そのようなモノマーとしては、例えば、粘接着フィルム10に関してアクリル樹脂をなすアクリル系ポリマーの構成モノマーとして上記したカルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルが挙げられる。
アクリル系ポリマーは、そのポリマー骨格中に架橋構造を形成するために、(メタ)アクリル酸エステルなどのモノマーと共重合可能な多官能性モノマーに由来するモノマーユニットを含んでいてもよい。そのような多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(即ちポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。アクリル系ポリマーのためのモノマーとして、一種類の多官能性モノマーが用いられてもよいし、二種類以上の多官能性モノマーが用いられてもよい。アクリル系ポリマーを形成するための全モノマー成分における多官能性モノマーの割合は、(メタ)アクリル酸エステルに依る粘着性等の基本特性をアクリル系粘着剤において適切に発現させるうえでは、好ましくは40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。
アクリル系ポリマーは、それを形成するための原料モノマーを重合して得ることができる。重合手法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、および懸濁重合が挙げられる。
両面粘着シート20ないし半導体プロセスシートXの使用される半導体パッケージ製造方法における高度の清浄性の観点からは、両面粘着シート20内の各粘着剤層中の低分子量成分は少ない方が好ましく、アクリル系ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10万以上、より好ましくは20万~300万である。アクリル系ポリマーの数平均分子量は、例えば、採用される重合手法や、用いられる重合開始剤の種類およびその使用量、重合反応の温度および時間、全モノマー成分中の各種モノマーの濃度、モノマー滴下速度などによって制御されうる。
重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤や、過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤などが重合手法に応じて用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、および4,4'-アゾビス-4-シアノバレリアン酸が挙げられる。過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジベンゾイルペルオキシドおよびtert-ブチルペルマレエートが挙げられる。
アクリル系ポリマーの数平均分子量を高めるために例えば、粘着剤層形成用組成物には外部架橋剤が配合されてもよい。アクリル系ポリマーと反応して架橋構造を形成するための外部架橋剤としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリオール化合物(ポリフェノール系化合物など)、アジリジン化合物、およびメラミン系架橋剤が挙げられる。粘着主剤における外部架橋剤の含有量は、アクリル系ポリマー100質量部に対して、好ましくは6質量部以下、より好ましくは0.1~5質量部である。
加熱発泡型粘着剤用の、加熱によって発泡や膨張をする成分としては、例えば、発泡剤および熱膨張性微小球が挙げられる。
加熱発泡型粘着剤用の発泡剤としては、種々の無機系発泡剤および有機系発泡剤が挙げられる。無機系発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、およびアジド類が挙げられる。有機系発泡剤としては、例えば、トリクロロモノフルオロメタンやジクロロモノフルオロメタンなどの塩フッ化アルカン、アゾビスイソブチロニトリルやアゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレートなどのアゾ系化合物、パラトルエンスルホニルヒドラジドやジフェニルスルホン-3,3'-ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アリルビス(スルホニルヒドラジド)などのヒドラジン系化合物、p-トルイレンスルホニルセミカルバジドや4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などのセミカルバジド系化合物、5-モルホリル-1,2,3,4-チアトリアゾールなどのトリアゾール系化合物、並びに、N,N'-ジニトロソペンタメチレンテトラミンやN,N'-ジメチル-N,N'-ジニトロソテレフタルアミドなどのN-ニトロソ系化合物が挙げられる。
加熱発泡型粘着剤用の熱膨張性微小球としては、例えば、加熱によって容易にガス化して膨張する物質が殻内に封入された構成の微小球が挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質としては、例えば、イソブタン、プロパン、およびペンタンが挙げられる。加熱によって容易にガス化して膨張する物質をコアセルベーション法や界面重合法などによって殻形成物質内に封入することによって、熱膨張性微小球を作製することができる。殻形成物質としては、熱溶融性を示す物質や、封入物質の熱膨張の作用によって破裂し得る物質を用いることができる。そのような物質としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、およびポリスルホンが挙げられる。
粘着剤層22が加熱発泡型粘着剤を含有する粘着力低減可能型粘着剤層(加熱発泡型粘着剤層)である場合、当該粘着剤層22の厚さは例えば5~100μmである。
粘着剤層22に用いられうる放射線硬化性粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマーなどのベースポリマーと、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基を有する放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分とを含有する、添加型の放射線硬化性粘着剤が挙げられる。
放射線硬化性粘着剤をなすためのアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。
放射線硬化性粘着剤をなすための放射線重合性モノマー成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、および1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。放射線硬化性粘着剤をなすための放射線重合性オリゴマー成分としては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系などの種々のオリゴマーが挙げられ、分子量100~30000程度のものが適当である。放射線硬化性粘着剤中の放射線重合性のモノマー成分やオリゴマー成分の総含有量は、形成される粘着剤層22の粘着力を放射線照射によって適切に低下させ得る範囲で決定され、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して、例えば5~500質量部であり、好ましくは40~150質量部である。また、添加型の放射線硬化性粘着剤としては、例えば特開昭60-196956号公報に開示のものが用いられてもよい。
粘着剤層22に用いられうる放射線硬化性粘着剤としては、例えば、放射線重合性の炭素-炭素二重結合等の官能基をポリマー側鎖や、ポリマー主鎖中、ポリマー主鎖末端に有するベースポリマーを含有する内在型の放射線硬化性粘着剤も挙げられる。このような内在型の放射線硬化性粘着剤は、形成される粘着剤層22内での低分子量成分の移動に起因する粘着特性の意図しない経時的変化を抑制するうえで好適である。
内在型の放射線硬化性粘着剤に含有されるベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。そのような基本骨格をなすアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好適である。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いことから、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの点では、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好適である。また、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。
粘着剤層22に用いられるうる放射線硬化性粘着剤は、好ましくは光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、α-ケトール系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール系化合物、芳香族スルホニルクロリド系化合物、光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、およびアシルホスフォナートが挙げられる。α-ケトール系化合物としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、例えば、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1が挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびアニソインメチルエーテルが挙げられる。ケタール系化合物としては、例えばベンジルジメチルケタールが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系化合物としては、例えば2-ナフタレンスルホニルクロリドが挙げられる。光活性オキシム系化合物としては、例えば、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシムが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、および3,3'-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジイソプロピルチオキサントンが挙げられる。粘着剤層22に用いられうる放射線硬化性粘着剤中の光重合開始剤の含有量は、アクリル系ポリマーなどのベースポリマー100質量部に対して例えば0.05~20質量部である。
粘着剤層22のための放射線硬化性粘着剤としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、またはX線の照射により硬化するタイプの粘着剤を用いることができ、紫外線照射によって硬化するタイプの粘着剤(紫外線硬化性粘着剤)を特に好適に用いることができる。
粘着剤層22が放射線硬化性粘着剤よりなる粘着力低減可能型粘着剤層(放射線硬化性粘着剤層)である場合、当該粘着剤層22の厚さは例えば2~50μmである。
粘着剤層22は、上述の各成分に加えて、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤などを含有してもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
両面粘着シート20の粘着剤層23は、粘着剤を含む。粘着剤層23用の粘着剤としては、例えば、感圧性粘着剤が挙げられる。本実施形態の粘着剤層23においては、一種類の粘着剤が用いられてもよいし、二種類以上の粘着剤が用いられてもよい。
粘着剤層23に用いられうる感圧性粘着剤としては、アクリル系粘着剤としてのアクリル系ポリマー、ゴム系粘着剤、およびシリコーン系粘着剤が挙げられる。感圧性粘着剤用のアクリル系ポリマーとしては、加熱発泡型粘着剤中の粘着主剤をなすアクリル系ポリマーとして上述したものを採用することができる。
粘着剤層23の厚さは、例えば1~50μmである。
粘着剤層23は、上述の各成分に加えて、粘着付与剤、老化防止剤、着色剤などを含有してもよい。着色剤としては、顔料および染料が挙げられる。また、着色剤は、放射線照射を受けて着色する化合物であってもよい。そのような化合物としては、例えばロイコ染料が挙げられる。
本実施形態では、上述のように、粘着力低減可能型粘着剤層である粘着剤層22は基材21よりも粘着面20a側に位置し、且つ、粘着剤層23は基材21よりも粘着面20b側に位置する。半導体プロセスシートXの両面粘着シート20については、このような積層構成に代えて、粘着剤層22が基材21よりも粘着面20b側に位置し、粘着剤層23が基材21よりも粘着面20a側に位置してもよい。
半導体プロセスシートXの両面粘着シート20は、以上のような基材21、粘着力低減可能型の粘着剤層22、および粘着剤層23に加えて他の層を積層構造中に含んでもよい。そのような他の層としては、例えば、粘着剤層22が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層22上に設けられて粘着面をなす薄い粘着剤層や、粘着剤層22が加熱発泡型粘着剤層である場合の当該粘着剤層22と基材21との間に設けられるゴム状有機弾性層が挙げられる。
加熱発泡型粘着剤層表面を被覆する薄い粘着剤層が所定の被着体に貼着している状態で、加熱によって加熱発泡型粘着剤層が膨張してその表面凹凸形状を変形させると、これに伴って当該薄い粘着剤層も変形し、その対被着体接着総面積を減じ、当該被着体に対する粘着力が低下することとなる。加熱発泡型粘着剤の粘着力低減機能を利用しつつ、薄い粘着剤層における所望の粘着力を利用することが可能なのである。このような加熱発泡型粘着剤層上の薄い粘着剤層の厚さは例えば2~30μmである。
基材と加熱発泡型粘着剤層との間にゴム状有機弾性層を設けることにより、加熱によって加熱発泡型粘着剤層をその厚さ方向へ優先的に且つ均一性高く膨張させやすくなる。このようなゴム状有機弾性層は、例えば、ASTM D-2240に基づくショアD型硬度が50以下の天然ゴム、合成ゴム、または、ゴム弾性を有する合成樹脂により形成される。ゴム状有機弾性層用の合成ゴムや前記合成樹脂としては、例えば、ニトリル系やジエン系、アクリル系などの合成ゴム、ポリオレフィン系やポリエステル系などの熱可塑性エラストマー、並びに、エチレン-酢酸ビニル共重合体やポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂が挙げられる。このようなゴム状有機弾性層の厚さは例えば1~500μmである。
図2から図9は、本発明の一の実施形態に係る半導体パッケージ製造方法を表す。本製造方法は、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを製造するための方法であって、本実施形態では以下のチップ配列工程、封止工程、デタッチ工程、配線形成工程、研削工程、および個片化工程を少なくとも含む。
まず、チップ配列工程では、図2(a)および図2(b)に示すように、粘着面20a側が支持体Sに貼り合わせられている半導体プロセスシートXにおける粘接着フィルム10上に複数の半導体チップCが圧着されて配列される。例えば、ダイシングボンディング装置の備える吸着治具Vによって、粘接着フィルム10に対するチップの圧着ないしボンディングを行う。支持体Sは、例えば、金属製、ガラス製、または透明樹脂製である。半導体チップCは、チップ本体とこれから延出するチップ電極Eとを有する。本実施形態では、半導体チップCのチップ電極Eとは反対の側を半導体プロセスシートXに接合するフェイスアップでの圧着が行われる。本工程での圧着温度は、常温であり、例えば20℃およびその近傍の温度である。
粘接着フィルム10(熱硬化前)は、上述のように、20℃での第1引張貯蔵弾性率が、1GPa以下であり、好ましくは0.9GPa以下、より好ましくは0.8GPa以下である。また、第1引張貯蔵弾性率は、上述のように、好ましくは0.001GPa以上、より好ましくは0.05GPa以上である。これら構成は、粘接着フィルム10に常温で圧着される半導体チップCに対して充分な密着力を発揮するのに適する。このような粘接着フィルム10は、チップ配列工程を、粘接着フィルム10の熱硬化反応の進行を回避・抑制しつつ常温で行うのに適し、従って、チップ配列工程で粘接着フィルム10上に順次に仮固定される複数の半導体チップCに対するチップ間密着力差を抑制するのに適する。粘接着フィルム10に仮固定される半導体チップCに作用する密着力の差が小さいことは、粘接着フィルム10に対する半導体チップCの密着性と、粘接着フィルム10から半導体チップCを脱着させる場合のその脱着性との、両立を図るうえで好適である。
また、粘接着フィルム10における25℃でのプローブタック力は、上述のように、好ましくは10gf以上である。このような構成は、粘接着フィルム10において半導体チップCに対する常温密着性を確保するうえで好適である。
本製造方法では、次に、封止工程が行われる。封止工程では、図3(a)に示すように、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止剤30'が供給され、その後、図3(b)に示すように、封止剤30'が硬化されて封止材部30が形成される。これにより、半導体チップCを包埋して伴う封止材部30としてのパッケージP(チップ包埋封止材部)が得られる。封止剤30'は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など硬化剤、無機フィラー、硬化促進剤、および黒系着色剤を含む組成物であり、本封止工程において、液状組成物、パウダー、およびシートのいずれの形態で供給されてもよい。このような封止剤30'の構成材料としては、例えば、半導体プロセスシートXの粘接着フィルム10の構成材料として上述したのと同様のものを用いることができる。本工程において、封止材部30を形成するための加熱温度は例えば120~200℃であり、加熱時間は例えば30秒~1時間である。
粘接着フィルム10(熱硬化前)は、上述のように、130℃での第2引張貯蔵弾性率が、0.1MPa以上であり、好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。また、第2引張貯蔵弾性率は、好ましくは100MPa以下、より好ましくは50MPa以下である。これら構成は、粘接着フィルム10に圧着された半導体チップCに対して130℃およびその近傍の温度で良好な密着力ないし固定力を発揮するのに適する。このような粘接着フィルム10は、本フィルム上に圧着されている半導体チップCについて封止工程でチップシフトが生ずるのを抑制するのに適する。チップシフトが抑制されることは、半導体パッケージを歩留まり良く製造するうえで好適である。
チップ配列工程および封止工程に関連して上述したように、半導体プロセスシートXないしその粘接着フィルム10(熱硬化性粘接着フィルム)は、その上に順次に仮固定される複数の半導体チップCに対して、チップ間の密着力差が小さな充分な密着力を発揮するのに適するとともに、チップアレイ封止時にチップシフトを抑制するのに適するのである。
本製造方法においては、図2を参照して上述したチップ配列工程の後、半導体プロセスシートX上への封止剤30'の供給より前に、図4に示すように、粘接着フィルム10を熱硬化させてもよい(硬化工程)。この場合、当該硬化工程の後に、半導体プロセスシートX上において複数の半導体チップCを包埋するように封止剤30'が供給され、その後、封止剤30'が硬化されて封止材部30が形成される。本硬化工程において、熱硬化のための加熱温度は例えば80~180℃であり、加熱時間は例えば120秒~5時間である。封止工程の前に粘接着フィルム10の熱硬化を経る場合、半導体プロセスシートXよる半導体チップCの保持力が粘接着フィルム10の硬化によって強化された状態で、封止工程が行われる。したがって、当該構成は、封止工程において、封止剤30'の硬化時の収縮に起因する半導体チップCの位置ずれを抑制するのに適する。このような半導体チップ位置ずれ抑制は、例えば、後の配線形成工程において半導体チップCごとの配線を含む配線構造部を精度よく形成するうえで好ましい。
粘接着フィルム10は、上述のように、熱硬化状態にある幅10mmのフィルム試料片について周波数1Hzおよび昇温速度10℃/分の条件で行われる動的粘弾性測定における、150℃での第3引張貯蔵弾性率が、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上である。このような構成は、半導体チップCが圧着された状態で粘接着フィルム10が熱硬化された場合において、粘接着フィルム10上の半導体チップCに位置ずれが生ずるのを抑制するのに適する。
本製造方法では、次に、デタッチ工程が行われる。デタッチ工程では、図5に示すように、粘接着フィルム10を伴うパッケージPの支持体Sによる支持状態が解除される。本工程では、例えば、半導体プロセスシートXと支持体Sとの間が離され、その後、両面粘着シート20ないしその粘着面20bが、粘接着フィルム10を伴うパッケージP(チップ包埋封止材部)から離される。
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート20の粘着剤層22(粘着力低減可能型粘着剤層)が加熱発泡型粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての加熱によって当該粘着剤層22ないし粘着面20aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート20との間を離すことができる。そのための加熱温度は例えば80~200℃である。
半導体プロセスシートXにおける両面粘着シート20の粘着剤層22(粘着力低減可能型粘着剤層)が上述の放射線硬化性粘着剤層である場合、粘着力低減措置としての紫外線照射など放射線照射によって当該粘着剤層22ないし粘着面20aの粘着力を低下させて、支持体Sと両面粘着シート20との間を離すことができる。そのための放射線照射が紫外線照射である場合、その積算照射量は例えば50~500mJ/cm2である。
次に、研削工程では、図6(a)に示すように、粘接着フィルム10付きパッケージPの粘接着フィルム10側にウエハ加工用テープT1が貼り合わされた後、図6(b)に示すように、封止材部30に対して研削加工が施されてパッケージPが薄化される。本工程では、例えば、半導体チップCの電極Eが露出するように封止材部30に対して研削加工が施される。
次に、配線形成工程では、図7に示すように、半導体チップCごとの配線を含む配線構造部40が封止材部30上ないしパッケージP上に形成される。半導体チップCごとの配線には、本製造方法によって半導体チップCごとに製造されることとなる各半導体パッケージにおけるバンプ電極等の外部電極41が含まれる。
次に、研削工程では、図8(a)に示すように、粘接着フィルム10付きパッケージPの配線構造部40側にバックグラインドテープYが貼り合わされる。バックグラインドテープYは、配線構造部40の外部電極41を包埋可能な厚さの粘着層Yaを有する。
次に、ウエハ加工用テープT1が粘接着フィルム10から剥がされた後、図8(b)に示すように、粘接着フィルム10側に対して研削加工が施されて粘接着フィルム10が除去される。
次に、図8(c)に示すように、バックグラインドテープYに保持されたパッケージPに対し、ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZが貼り合わせられる。ダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZは、粘着層を有するダイシングテープ50とその粘着層上の半導体チップ裏面保護用のフィルム60とを備え、パッケージPの研削加工面に対してダイシングテープ一体型裏面保護フィルムZのフィルム60側が貼り合わせられる。半導体チップ裏面保護用のフィルム60は、黒系着色剤など着色剤が配合された接着剤フィルムである。また、フィルム60は、熱硬化タイプの接着剤フィルムであってもよいし、例えば70℃程度の温度条件下で被着体に貼り合わせられることによって当該被着体に対して十分な密着力を発現することが可能な硬化レスタイプの接着剤フィルムであってもよい。
次に、バックグラインドテープYが除かれる。フィルム60が熱硬化タイプの接着剤フィルムである場合には、バックグラインドテープYの除去の後、図9(a)に示すようにフィルム60が加熱硬化される。
次に、個片化工程では、図9(b)に示すように、例えばブレードダイシングによって封止材部30および配線構造部40が半導体チップCごとに分割される(図9(b)では分割箇所を模式的に太線で表す)。こうして個片化された各半導体パッケージは、この後、ダイシングテープ50からピックアップされることとなる。
以上のようにして、半導体プロセスシートXを使用して半導体パッケージを適切に製造することができる。
上述の半導体パッケージ製造方法では、チップ配列工程に関し、半導体プロセスシートXの粘接着フィルム10に対して半導体チップCがその裏面側にて圧着されて配列される場合、即ちフェイスアップでのチップ配列が、図2(a)および図2(b)に例示的に示されている。これに代えて、本半導体パッケージ製造方法のチップ配列工程では、半導体プロセスシートXの粘接着フィルム10に対して半導体チップCがその表面側(チップ電極Eが形成されている側)にて圧着されて配列される場合、即ちフェイスダウンでのチップ配列が、行われてもよい。フェイスダウンでのチップ配列が行われる場合であっても、図2(a)および図2(b)に示すチップ配列工程ならびに図3(a)および図3(b)に示す封止工程に関連して上述したのと同様に、半導体プロセスシートXないしその粘接着フィルム10(熱硬化性粘接着フィルム)は、その上に順次に仮固定される複数の半導体チップCに対して、チップ間の密着力差が小さな充分な密着力を発揮するのに適するとともに、チップアレイ封止時にチップシフトを抑制するのに適する。
〔実施例1〕
エポキシ樹脂(商品名「KI-3000-4」,新日鉄住金化学株式会社製)25質量部と、フェノール樹脂(商品名「MEH-7851SS」,明和化成株式会社製)15質量部と、アクリル樹脂(商品名「テイサンレジン SG-708-6」,ナガセケムテックス株式会社製)10質量部と、フィラー(商品名「SO-25R」,球状シリカ,平均粒径は0.5μm,株式会社アドマテックス製)50質量部とを、熱硬化触媒(商品名「TPP-K」,北興化学工業株式会社製)0.1質量部とを、メチルエチルケトンに加えて混合し、接着剤組成物を得た。次に、シリコーン離型処理の施された面を有するPETセパレータ(厚さ50μm)のシリコーン離型処理面上にアプリケーターを使用して接着剤組成物を塗布して接着剤組成物層を形成した。次に、この組成物層について130℃で2分間の加熱乾燥を行い、PETセパレータ上に厚さ40μmの実施例1の熱硬化性粘接着フィルムを作製した。実施例1ならびに後記の実施例および比較例における各フィルムの組成を表1に掲げる(表1では、フィルムごとの組成が成分の質量比で表されている)。
〔実施例2〕
エポキシ樹脂の量を25質量部に代えて30質量部としたこと、フェノール樹脂の量を15質量部に代えて20質量部としたこと、アクリル樹脂の量を10質量部に代えて20質量部としたこと、および、フィラーの量を50質量部に代えて30質量部としたこと、以外は実施例1の熱硬化性粘接着フィルムと同様にして、実施例2の熱硬化性粘接着フィルム(厚さ40μm)を作製した。
〔実施例3〕
エポキシ樹脂の量を25質量部に代えて18質量部としたこと、フェノール樹脂の量を15質量部に代えて12質量部としたこと、および、アクリル樹脂の量を10質量部に代えて20質量部としたこと、以外は実施例1の熱硬化性粘接着フィルムと同様にして、実施例3の熱硬化性粘接着フィルム(厚さ40μm)を作製した。
〔比較例1〕
エポキシ樹脂の量を25質量部に代えて15質量部としたこと、フェノール樹脂の量を15質量部に代えて10質量部としたこと、アクリル樹脂の量を10質量部に代えて35質量部としたこと、フィラーの量を50質量部に代えて40質量部としたこと、および、熱硬化触媒を用いなかったこと、以外は実施例1の熱硬化性粘接着フィルムと同様にして、比較例1の熱硬化性粘接着フィルム(厚さ40μm)を作製した。
〔比較例2〕
エポキシ樹脂の量を25質量部に代えて12質量部としたこと、フェノール樹脂の量を15質量部に代えて8質量部としたこと、および、フィラーの量を50質量部に代えて70質量部としたこと、以外は実施例1の熱硬化性粘接着フィルムと同様にして、比較例2の熱硬化性粘接着フィルム(厚さ40μm)を作製した。
〈熱硬化前の引張貯蔵弾性率〉
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-III」,TA Instrument社製)を使用して行う動的粘弾性測定によって20℃および130℃での引張貯蔵弾性率を調べた。動的粘弾性測定に付される試料片は、複数枚の熱硬化性粘接着フィルムを厚さ200μmに積層した積層体を形成した後、当該積層体から幅10mm×長さ40mmのサイズで切り出して用意したものである。また、本測定においては、試料片保持用チャックの初期チャック間距離を22.5mmとし、測定モードを引張りモードとし、測定温度範囲を0℃~200℃とし、周波数を1Hzとし、動的ひずみを0.05%とし、昇温速度を10℃/分とした。求められた20℃での引張貯蔵弾性率E1(GPa)と130℃での引張貯蔵弾性率E2(MPa)を表1に掲げる。
〈熱硬化後の引張貯蔵弾性率〉
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-III」,TA Instrument社製)を使用して行う動的粘弾性測定によって熱硬化後の150℃での引張貯蔵弾性率を調べた。動的粘弾性測定に付される試料片は、複数枚の熱硬化性粘接着フィルムを厚さ200μmに積層した積層体を形成した後、当該積層体から幅10mm×長さ40mmのサイズで切り出し、その後に、130℃で2時間の加熱処理により熱硬化させて、用意したものである。また、本測定においては、試料片保持用チャックの初期チャック間距離を22.5mmとし、測定モードを引張りモードとし、測定温度範囲を0℃~200℃とし、周波数を1Hzとし、動的ひずみを0.05%とし、昇温速度を10℃/分とした。求められた150℃での引張貯蔵弾性率E3(MPa)を表1に掲げる。
〈プローブタック力〉
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、動的粘弾性測定装置(商品名「RSA-III」,TA Instrument社製)を用いてプローブタック力を測定した。測定用の試料片は、熱硬化性粘接着フィルムから直径8mmの円盤形に切り出して用意したものである。測定にあたり、同装置には、2枚一組のパラレルプレート(直径8mm,SUS製)を上下方向に対向する態様でセットし、下側プレートの上面に両面テープを介して試料片を固定した。そして、プローブタック力測定においては、25℃の環境温度下において、上側プレート(本測定にとってのプローブ)を下降させて下側プレート上の試料片に100gfの荷重を1秒間作用させ、その後に上側プレートを上昇させて、上側プレートを試料片から引き剥がすのに必要な荷重を、25℃でのプローブタック力F1(gf)として測定した。また、温度条件を25℃から40℃に変えたこと以外はプローブタック力F1の測定と同様にして、プローブタック力F2(gf)を測定した。これら測定結果を表1に掲げる。
〈密着性〉
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、樹脂製プレートに対する密着性を調べた。まず、熱硬化性粘接着フィルムの片面に裏打ちテープ(商品名「BT-315」,日東電工株式会社製)を貼り合わせた後、当該裏打ちテープ付き熱硬化性粘接着フィルムから試料片(幅10mm×長さ150mm)を切り出した。次に、ラミネータを使用して、試料片における熱硬化性粘接着フィルム側の面を樹脂製プレートに貼り合わせた。樹脂製プレートは、半導体パッケージの製造において封止用樹脂材料として用いられることのあるエポキシ系樹脂材料(商品名「GE-100L」,日立化成株式会社製)よりなる。貼合わせにおいては、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を80℃とし、圧力条件を0.15MPaとした。そして、引張試験機(商品名「オートグラフAGS-J」,株式会社島津製作所製)を使用して、23℃、剥離角度180°および剥離速度300mm/分の条件で樹脂製プレート上の試料片の裏打ちテープを引っ張る剥離試験を行い、樹脂製プレートに対する熱硬化性粘接着フィルムの23℃での剥離粘着力(N/10mm)を測定した。樹脂製プレートに対する熱硬化性粘接着フィルムの密着性について、試料片の熱硬化性粘接着フィルムが樹脂製プレートから剥離せずに同フィルムからの裏打ちテープの剥離が生じた場合(この場合、樹脂製プレートに対する熱硬化性粘接着フィルムの粘着力は8N/10mm以上である)を“良”と評価し、樹脂製プレートからの熱硬化性粘接着フィルムの剥離が生じた場合や、熱硬化性粘接着フィルムの凝集破壊が生じた場合を、“不良”と評価した。その評価結果を表1に掲げる。
〔せん断接着力〕
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、シリコンチップに対するせん断接着力を調べた。まず、ラミネータを使用して、両面粘着シート(商品名「リバアルファ No.3195V」,日東電工株式会社製)に熱硬化性粘接着フィルムを貼り合わせて、半導体プロセスシート構成の複合シートを作製した。使用した両面粘着シートは、加熱発泡型粘着剤層である第1粘着剤層と、感圧性粘着剤よりなる第2粘着剤層と、これらの間のポリエステルフィルム基材とからなる積層構造を有する(このような両面粘着シートの第2粘着剤層側に、熱硬化性粘接着フィルムを貼り合わせた)。貼合わせにおいては、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を常温℃とし、圧力条件を0.2MPaとした。次に、ラミネータを使用して、複合シートをその第1粘着剤層側にてガラス基板に貼り合わせた。貼合わせにおいては、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を常温とし、圧力条件を0.2MPaとした。次に、複合シートにおける熱硬化性粘接着フィルム上にシリコンチップ(厚さ500μm,2mm角)を、圧着ないしボンディングした。このボンディングにおいて、圧着荷重は0.2MPaとし、圧着時間は1.0秒間とした。次に、恒温槽内において、複合シートを130℃で2時間の加熱処理に付した(これにより、熱硬化性粘接着フィルムを熱硬化させた)。そして、接合強度試験機(商品名「Dage4000」,Nordson社製)を使用して、熱硬化性粘接着フィルムとシリコンチップとの間のせん断粘着力を測定した。本測定において、測定温度は150℃であり、チップをせん断方向に押す速度は0.5mm/秒である。シリコンチップに対する熱硬化性粘接着フィルムのせん断接着力について、上記複合シートにおける熱硬化性粘接着フィルムからシリコンチップが外れずに上記両面粘着シートからの熱硬化性粘接着フィルムの脱着が生じた場合を“良”と評価し、複合シートにおける熱硬化性粘接着フィルムからシリコンチップが外れた場合を“不良”と評価した。その評価結果を表1に掲げる。
〔チップシフト試験〕
実施例1~3および比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについて、封止工程を経た場合に生ずるチップシフトの程度を調べた。まず、ラミネータを使用して、両面粘着シート(商品名「リバアルファ No.3195V」,日東電工株式会社製)に熱硬化性粘接着フィルムを貼り合わせて、半導体プロセスシート構成の複合シートを作製した。使用した両面粘着シートは、加熱発泡型粘着剤層である第1粘着剤層と、感圧性粘着剤よりなる第2粘着剤層と、これらの間のポリエステルフィルム基材とからなる積層構造を有する(このような両面粘着シートの第2粘着剤層側に、熱硬化性粘接着フィルムを貼り合わせた)。貼合わせにおいては、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を常温℃とし、圧力条件を0.2MPaとした。次に、ラミネータを使用して、複合シートをその第1粘着剤層側にてガラス基板(直径12インチ)に貼り合わせた。貼合わせにおいては、貼合わせ速度を10mm/秒とし、温度条件を常温℃とし、圧力条件を0.2MPaとした。次に、ダイボンディング装置(商品名「FC3000W」,東レエンジニアリング社製)を使用して、複合シートにおける熱硬化性粘接着フィルム上に481個のシリコンチップ(厚さ500μm,7mm角)をアレイ状の配置で圧着ないしボンディングした。このボンディングにおいて、圧着荷重は0.2MPaとし、圧着時間は1.0秒間とした。次に、CNC(Computer Numerical Control)画像測定システム(商品名「NEXIV VMZ-H3030」,株式会社ニコンインステック製)を使用して、複合シート上の各チップの位置を測定した(第1の位置測定)。次に、封止樹脂シート(商品名「AS-110AB」,エポキシ樹脂製,厚さ800μm,日東電工株式会社製)を複合シートの熱硬化性粘接着フィルム側に対して重ね合わせたうえで加熱プレスし、積層体を得た。プレス温度は125℃である。次に、この積層体を恒温槽内において150℃で1時間の加熱処理に付した。これにより、積層体における封止樹脂シートと熱硬化性粘接着フィルムを熱硬化させた。次に、ホットプレートを使用して、積層体をガラス基板側から170℃で加熱してその両面粘着シートの第1粘着剤層(加熱発泡型粘着剤層)の粘着力を低減させたうえで、当該積層体からガラス基板を外した。次に、ガラス基板取り外し後の積層体から、両面粘着シート部分を熱硬化性粘接着フィルム(熱硬化状態にある)から剥離した。そして、CNC画像測定システム(商品名「NEXIV VMZ-H3030」,株式会社ニコンインステック製)を使用して、複合シート上の各チップの位置を再び測定した(第2の位置測定)。そして、熱硬化性粘接着フィルム上にアレイ状に配置されたシリコンチップのうち、最も外側に位置する四つのシリコンチップについて、第1の位置測定で測定された位置から第2の位置測定で測定された位置への変位量を算出した。実施例1~3の各熱硬化性粘接着フィルムでは、四つのシリコンチップの変位量が全て0.3mm以下であったので、実施例1~3の各熱硬化性粘接着フィルムについては、チップシフト抑制について“良”と評価した。これに対し、比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムでは、四つのシリコンチップの変位量が全て0.3mmを超えたので、比較例1,2の各熱硬化性粘接着フィルムについては、チップシフト抑制について“不良”と評価した。その評価結果を表1に掲げる。