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JP7200657B2 - メタクリレートモノマー、重合体、樹脂組成物、積層体および成型体 - Google Patents

メタクリレートモノマー、重合体、樹脂組成物、積層体および成型体 Download PDF

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JP7200657B2 JP2018238008A JP2018238008A JP7200657B2 JP 7200657 B2 JP7200657 B2 JP 7200657B2 JP 2018238008 A JP2018238008 A JP 2018238008A JP 2018238008 A JP2018238008 A JP 2018238008A JP 7200657 B2 JP7200657 B2 JP 7200657B2
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Description

本発明は、メタクリレートモノマー、重合体、樹脂組成物、積層体および成型体
に関する。
近年、世界的に環境破壊が深刻化してきており、持続可能な社会の構築に向けた環境負荷低減のための取り組みが活発化している。その中の1つとして、天然材料を積極的に活用することにより環境負荷の低減をはかる取り組みが挙げられ、例えば特許文献1に示されるように既存の石油化学製品の一部の材料を天然物から誘導した材料に置き換える手法が開示されている。また、単純に石油化学製品の置き換えではなく、天然物ならではの構造を活用するという取り組みも行われており、例えば特許文献2では、天然物から誘導されたイソソルビドをポリカーボネート樹脂に使用することで優れた機械特性と耐久性を得ることができるという発明が開示されている。
一方、近年のテクノロジーの発展は目覚ましく、特にスマートフォン、携帯電話、ノート型パソコン、センサーデバイス等の電子機器、リチウムイオン二次電池等の電池デバイス、自動車等のモビリティ等の普及が進み、更にIoT技術との連携により生活の利便性が大幅に向上してきている。生活を支えるこれらの電子機器やモビリティの内外装には、一般的に大量のプラスチック成型品が使用されている。特にプラスチック成型品の外装においては、成型後に意匠性を高めるため、通常その表面には塗装や印刷等による加飾を施している。またこのような加飾体表面を保護する目的で更にハードコート性を有する保護コーティング層が設けられる。
このようなプラスチックの加飾法においても環境負荷低減、生産性の向上等の観点から予め加飾処理や保護コーティング処理が施されたプラスチックフィルム(以下、加飾フィルムと呼ぶ)を直接貼り付け接合させる製造法への積極的置き換えが試みられている。このような加飾フィルムを接合させる手法としては、例えば、真空成型法、圧空成型法、メンブレンプレス成型法、インモールド成型法、インサートモールド成型法、オーバーレイ真空成型法等の多くの手法があり、一般的に被加飾体の形状や金型の形状にあわせて数十度~数百度の熱を加えた状態で加飾フィルムが延伸、屈曲される工程を伴う。しかし、ハードコート性を有する保護コーティング層が一般的に高架橋度の構造を有しているため、柔軟性、伸長性が不十分であることが多く、成型時に白化や割れ、剥離などの成型不良が生じてしまい意匠性を大きく損ねてしまうという課題があった。
これを解決する手法として、特許文献3では熱可塑性樹脂と感光性樹脂とを組み合わせたハードコート層を有する加飾フィルムが開示されているが、伸長性とハードコート性の両立が困難であるという課題があった。
また、特許文献4では、ハードコート層に感光性組成物と熱架橋が可能な組成物を用いて、成型後の後工程で熱処理する手法が開示されているが、十分なハードコート性を得るためには長時間の熱印加が必要となるため、生産性や環境負荷低減の観点から望ましくない。
このように、ハードコート性を有する保護コーティング層が設けられた加飾フィルムにおいて、より環境負荷の少ないプロセスにより伸長性とハードコート性を高いレベルで両立することが大きな課題となっており、更に持続可能な社会の構築を見据えた場合、このようなプラスチック成型体に対して天然物を有効活用することができれば環境負荷低減の観点からより好ましいものとなる。
特許第5826814号 国際公開2016/098898号 国際公開2017/183634号 特許第5389904号
本発明は、上記の現状を鑑みてなされたものであり、天然物を活用し、種々の成型加工に対してより環境負荷の少ないプロセスで優れた伸長性とハードコート性を両立した保護コーティング層を具備する低環境負荷材料を提供することを目的とする。
本発明は、γ-オリザノール構造を有することを特徴とするメタクリレートモノマー(A)に関する。
また、本発明は、ウレタン結合を有することを特徴とする前記メタクリレートモノマー(A)に関する。
また、本発明は、モノマー混合物100重量%に対し、前記メタクリレートモノマー(A)3~85重量%、及びその他の共重合モノマー(B)15~97重量%を含むモノマー混合物の重合体(P)に関する。
また、本発明は、重量平均分子量が5万~100万であることを特徴とする前記重合体(P)に関する。
また、本発明は、ガラス転移温度が0~120℃であることを特徴とする前記重合体(P)に関する。
また、本発明は、前記重合体(P)と、アクリレート基及び/又はアクリルアミド基含有多官能モノマー(Q)とを含有することを特徴とする樹脂組成物(R)に関する。
また、本発明は、基材上に前記樹脂組成物(R)からなる硬化膜を有することを特徴とする積層体(S)に関する。
また、本発明は、加飾成型用である、前記積層体(S)に関する。
また、本発明は、前記積層体(S)から形成されてなる加飾成型体に関する。
本発明のメタクリレートモノマー(A)を含有する重合体は、非架橋でありながら極めて高い凝集力を有する天然物由来の構造を有しており、本発明のメタクリレートモノマー(A)を共重合した樹脂を用いることによって低環境負荷でありながら、優れた伸長性とハードコート性を両立した保護コーティング層を有する積層体および成形体を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本説明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
<メタクリレートモノマー(A)>
本発明のメタクリレートモノマー(A)は、γ-オリザノール由来の構造を有するメタクリレートである。γ-オリザノールとはフェルラ酸と、シクロアルテノール、2,4-メチレンシクロアルタノール、シクロプラノール、カンペステロール、βシトステロール等のステロールがエステル結合により連結したエステル類の総称であり、一般式(1)に示されるような代表的な構造を有する。γ-オリザノールは天然由来の原料中に存在し、例えば、米糠の脂質等に含有される。
一般式(1)
Figure 0007200657000001

(R~Rは、水素原子、および不飽和結合を有していても良い炭素数1~10のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、ただしRとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明のメタクリレートモノマー(A)は、以下の一般式(2)に示すように、γ-オリザノールのフェルラ酸構造が持つ水酸基に対して、直接結合又は2価の連結基を介してメタクリレート基が導入された構造である。なお、メタクリレート基ではなくアクリレート基である場合、重合体の製造時にゲル化が起こりやすい。
一般式(2)
Figure 0007200657000002

(Lは直接結合又はウレタン結合を有する分子量200以下の2価の連結基を示し、R~Rは、水素原子、不飽和結合を有していても良い炭素数1~10のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、ただしRとRは互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明のメタクリレートモノマー(A)は、γ-オリザノール構造を有することによって、後述の重合体(P)の形態をとった際に非架橋状態であっても高い凝集力を発現し、その結果、保護コーティング剤として優れたハードコート性を付与することができる。また、非架橋状態であるため成型加工時の熱印加の際は優れた伸長性を発現することが可能となる。また、メタクリレートモノマー(A)を重合する際にゲル化が起こりにくいという点や、重合後により強い凝集力が得られるという利点がある。
本発明のメタクリレートモノマー(A)は、更に強い凝集力が得られるという点から、ウレタン結合を有することが好ましく、一般式(2)に示す2価の連結基部分に導入することができる。ウレタン結合の導入方法としては、以下に限定されるわけではないが、γ-オリザノールのフェルラ酸構造が持つ水酸基に対してイソシアネート基及びメタクリレート基を有する化合物のイソシアネート基を反応させることにより得ることができる。なお、水酸基とイソシアネート基を反応させる際には、公知の溶媒や反応触媒を用いても良い。
イソシアネート基及びメタクリレート基を有する化合物としては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート等が挙げられ、市販品としては、昭和電工社製のカレンズMOI等が挙げられる。
<重合体(P)>
本発明の重合体(P)は、γ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)と、その他の共重合モノマー(B)とを含むモノマー混合物の重合体である。γ-オリザノール構造体を有するメタクリレートモノマー(A)を含有することにより、重合体(P)として高い凝集力を発現することができ、本重合体(P)を保護コーティング剤に用いた場合、優れたハードコート性と伸長性を両立することができる。
本発明の重合体(P)は、モノマー混合物100重量%に対して、γ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)を3~85重量%、共重合モノマー(B)を15~97重量%の範囲で含むことが好ましく、更に好ましくはメタクリレートモノマー(A)を10~65重量%、共重合モノマー(B)を35~90重量%の範囲である。
共重合モノマー(B)としては、以下に限定されるわけではないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、ビニルナフタレン、インデン等の芳香族ビニル系モノマー;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートモノマー;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレートモノマー;
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のカルボキシル基含有モノマー;
無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の酸無水物基含有モノマー;
スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸アンモニウム、スチレンスルホン酸リチウム、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸アンモニウム、ビニルスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸、アリルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリルオキシベンゼンスルホン酸アンモニウム等のスルホン酸基含有モノマー;
2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル-2-アクリロイルオキシシエチルホスフェート等のリン酸基含有モノマー;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基含有モノマー;
2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のケト基含有モノマー;
グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有モノマー;
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有モノマー;
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPE-90、200、350、350G、AE-90、200、400等)ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート(日本油脂社製、ブレンマー50PEP-300、70PEP-350等)、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(日本油脂社製、ブレンマーPME-400、550、1000、4000等)等のポリエチレンオキサイド基含有モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ジビニル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等の2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明で使用される共重合モノマー(B)は、重合体(P)の重合反応時にゲル化が起こりにくいという点から共重合モノマー(B)100重量%のうち80重量%以上がメタクリレートモノマーであることが好ましい。
本発明の重合体(P)は、上記モノマー混合物を公知の重合手法により重合することができる。公知の重合手法としては、例えば、(リビング)ラジカル重合、(リビング)アニオン重合、(リビング)カチオン重合、配位重合等が挙げられる。
上記重合を行う際、モノマー混合物を溶剤で希釈し重合反応を行っても良い。溶剤としては、公知の溶剤が使用でき、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、水等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。反応時の発熱を考慮すると、重合時に溶剤を用いる方が好ましい。
本発明の重合体(P)は、上記重合反応の際に公知の重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、例えば、アゾ系開始剤、過酸化物等が挙げられる。上記アゾ系開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられ、過酸化物としては、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明で使用される重合開始剤の配合量は、モノマー混合物100重量%に対して0.02~10重量%用いることが好ましく、0.05~5重量%がより好ましい。重合時の反応温度は、適宜調整できるが、一般的に50~150℃程度である。
本発明の重合体(P)は、重量平均分子量を調整するために、公知の連鎖移動剤を使用できる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明の重合体(P)の重量平均分子量は、優れたハードコート性、伸長性を発現できるという点から、5万~100万の範囲が好ましく、より好ましくは10万~80万の範囲である。なお、本発明で使用される重合体(P)の重量平均分子量は、試料がテトラヒドロフランに可溶な場合は、ポリスチレンを分子量標準として、テトラヒドロフランを展開溶媒に用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された値である。
本発明の重合体(P)のガラス転移温度は、優れたハードコート性を発現できるという点から、0~120℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは30~100℃の範囲である。なお、本明細書において重合体(P)のガラス転移温度は、JIS K7121に準じてDSC測定により求めることができる。
<樹脂組成物(R)>
本発明では、重合体(P)に加えてアクリレート基及び/又はアクリルアミド基を有する多官能モノマー(Q)を含有する樹脂組成物(R)の形態とすることにより、樹脂皮膜としてのハードコート性を高めることができる。
<アクリレート基及び/又はアクリルアミド基含有多官能モノマー(Q)>
本発明で使用される多官能モノマー(Q)としては、以下に限定されるわけではないが、例えば、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールビス(2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ビス(4-アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノベンゾエート、ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、PO変性ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、PO変性ビスフェノールFジアクリレート、EO変性テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン等の2官能アクリレートモノマー;
グリセリンPO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、イソシアニル酸EO変性ε-カプロラクトン変性トリアクリレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-s-トリアジン、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレートトリプロピオネート等の3官能アクリレートモノマー;
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルテトラアアクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)ホスフェート等の4官能以上のアクリレートモノマー;
N,N’-ジアクリロイル-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン等の2官能のアクリルアミドモノマー;
N,N’,N’’-トリアクリロイル-ジエチレントリアミン等の3官能のアクリルアミドモノマー;
N,N’,N’’,N’’’-テトラアクリロイルトリエチレンテトラミン、N,N’-{[(2-アクリルアミド-2-[(3-アクリルアミドプロポキシ)メチル]プロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(プロパン-1,3-ジイル)}ジアクリルアミド等の4官能以上のアクリルアミドモノマー等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明における多官能モノマー(Q)の配合量としては、重合体(P)と多官能モノマー(Q)の和100重量%に対して、20~80重量%の範囲であることが好ましい。
本発明では、樹脂組成物(R)を硬化させるために、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を使用することが好ましい。
活性エネルギー線が紫外線の場合、より硬化性を高めるために、紫外線の照射によりラジカル活性種を発生させる光重合開始剤を用いることが好ましい。
本発明で使用される光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、2-ヒドロキシ-1-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル}フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン類;
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン類;
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィン類;
その他フェニルグリオキシリックメチルエステル等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明で使用される光重合開始剤の市販品としては、以下に限定されるわけではないが、例えば、BASF社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア500、イルガキュア1000、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア1700、イルガキュア149、イルガキュア1800、イルガキュア1850、イルガキュア819、イルガキュア784、イルガキュア261、イルガキュアOXE-01、ADEKA社製のアデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717、Lamberti社のEsacure1001M等が挙げられる。
本発明で使用される光重合開始剤の配合量としては、重合体(P)と多官能モノマー(Q)の和100重量%に対して、0.1~15重量%の範囲であることが好ましい。
本発明では、硬化性をより高めることを目的として、光重合開始剤とあわせて光増感剤を使用することができる。光増感剤としては公知の光増感剤を使用することができ、例えば、カルコン誘導体やジベンザルアセトン等の不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノン等の1,2-ジケトン類、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体、ミヒラーケトン誘導体、ビイミダゾール誘導体等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、二種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明で使用される光増感剤の配合量は、重合体(P)と多官能モノマー(Q)の和100重量%に対して、0.1~30重量%の範囲であることが好ましい。
本発明の樹脂組成物(R)は、膜厚や平滑性をコントロールするために溶剤を添加してコーティング剤として使用することができる。
本発明で使用される溶剤としては、公知の有機溶剤が使用でき、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;
エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶媒;
ジメチルホルムアミド等、ジエチルホルムアミド等のアミド系溶媒;
酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;
ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;
n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;
水等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明の樹脂組成物(R)の不揮発分比率は塗工性、膜厚、乾燥性、レベリング性等の観点から最適な塗工粘度となるよう有機溶剤を用いて調整することができ、好ましい範囲としては15~50重量%である。
本発明の樹脂組成物(R)は、樹脂皮膜としてのハードコート性を高めるために無機粒子を使用することができる。無機粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等のシリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛などの金属酸化物が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
本発明で使用される無機粒子は、樹脂皮膜としてのハードコート性をより高めることができるという観点から粒子表面にラジカル重合性の官能基を有していることが好ましい。ラジカル重合性の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリレート基、アリル基等が挙げられる。ラジカル重合性の官能基を粒子表面に導入する方法としては、例えば、これらの官能基を有するシランカップリング剤による表面処理等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物(R)は、更に目的に応じて、本発明の効果を損ねない範囲で公知の添加剤を使用することができる。公知の添加剤としては、例えば、染料、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、表面調整剤、粘度調整剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
<積層体(S)>
プラスチックや金属等の基材上に本発明の樹脂組成物(R)からなる硬化膜を形成することにより積層体を得ることができる。本発明の樹脂組成物(R)は優れたハードコート性を有することから、積層体(S)はハードコート性に優れる。
本発明の積層体(S)で用いられる基材としては公知の基材が挙げられ、例えば、ポリエステル基材、ナイロン基材、ポリエチレン基材、ポリプロピレン基材、ポリビニルアセタール基材、ポリカーボネート基材、ポリアセテート基材、ポリ塩化ビニル基材、セルロース基材等のプラスチック基材、これらプラスチック基材にアルミ等の金属蒸着加工を施した蒸着プラスチック基材、アルミ箔、銅箔、SUS基材、ガラス、ITO等の無機基材、紙、綿、麻、絹、毛等の天然基材が挙げられる。基材の厚さは、通常25~10000μm程度である。
本発明の積層体(S)は、樹脂組成物(R)を公知の印刷方法により塗工し製造することができる。公知の印刷方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ロールナイフコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、オフセットコート法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また必要により、熱風オーブン、電気オーブン、赤外線ヒーター等の公知の装置を用いて基材の予備乾燥や、印刷後の乾燥を行っても良い。
本発明の積層体(S)は、基材上に樹脂組成物(R)の皮膜を形成した後に紫外線や電子線等の活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができ、公知の活性エネルギー線照射装置を使用することができる。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線を発生させるための光源としては、250~450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましく、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、ND-YAG3倍波レーザー、HE-CDレーザー、窒素レーザー、XE-CIエキシマレーザー、XE-Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー、LEDランプ光源等が挙げられる。
活性エネルギー線として電子線を用いる場合、高電圧を印加し電子を加速させビームとして利用する電子線照射装置が好適に用いられる。電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の電子線加速器が挙げられる。加速電圧としては10~150kVの範囲であることが好ましく、更に好ましくは60~100kVの範囲である。
本発明における積層体(S)は、必要に応じて基材上にアンカー層、絵柄層、接着層、離形層、帯電防止層等の層を設けても良い。これらの層は樹脂被膜と基材との間に位置することが好ましいが、特に限定されない。
<加飾成型用積層体>
本発明の樹脂組成物(R)は、前述のように優れたハードコート性に加えて熱印加時に優れた伸長性を有することから、本発明の積層体(S)は加飾成型用途の加飾シートとして好適に用いられる。
本発明の加飾シートの種類としては、例えば、ラミネート用加飾シート、転写用加飾シート等が挙げられる。ラミネート用加飾シートは、基材上の片側の面に本発明の樹脂組成物(R)の硬化膜より成る層を設け、もう一方の面に絵柄層や接着層を積層した積層構成を有する。また、転写用加飾シートは、基材上の片側の面に離形層を形成し、離形層上に、本発明の樹脂組成物(R)の硬化膜より成る層、絵柄層、接着層の順で積層された転写層を設けた積層構成を有する。
<加飾成型体>
本発明の加飾シートを用いて、加飾シートにおける樹脂組成物(R)の硬化膜よりなる層が外側になるよう成型体の表面を覆うことにより加飾成型体を製造することができる。成形体の素材としては、以下に限定されるわけでないが、例えば、木材、紙、金属、プラスチック、繊維強化プラスチック、ゴム、ガラス、鉱物、粘土等が挙げられる。
本発明の加飾シートを用いて加飾成型体を成型する方法としては、以下に限定されるわけはないが、例えば、インサート成型、インモールド成型、真空成型、圧空成型、TOM成型、プレス成型等の方法が挙げられる。
本発明の加飾シートを用いて加飾成型体を成型する際に、加熱工程を伴うことが好ましい。加熱温度としては、加飾シートで用いられる基材の種類にもよるが、80~200℃の範囲が好ましい。
以下に、実施例をもって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例で「部」とあるのは「重量部」を、「%」とあるのは「重量%」を意味する。
<重量平均分子量の測定>
重量平均分子量は、重合体(P)を試料として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。溶離液にテトラヒドロフランを用い、測定機器として、TSKgel superHZM-Nのカラムを2本接続した東ソー株式会社製HLC-8220GPCシステムにより、カラム温度を40℃とし、流量毎分0.35mlの条件にて測定した。サンプルは、2mgの資料を、5mlの上記溶離液に溶解して調整した。また、重量平均分子量は標準ポリスチレン換算で算出した。
<ガラス転移温度の測定>
ガラス転移温度は、重合体(P)を試料として、示差走査熱量計(DSC)による測定により決定した。ロボットDSC(示差走査熱量計、セイコーインスツルメンツ社製「RDC220」)に「SSC5200ディスクステーション」(セイコーインスツルメンツ社製)を接続して測定に使用した。測定試料には、重合体(P)を十分に乾燥させたものを用いた。測定試料10mgを上記示差走査熱量計にセットし、100℃の温度で5分後保持した後、液体窒素を用いて―140℃まで急冷した。その後、昇温速度10℃/分で昇温し、250℃まで昇温してDSC測定を行った。得られたDSCチャートから、ガラス転移温度を決定した。
<不揮発分比率>
不揮発分比率は、試料約1gをメンタム缶にとり、電気オーブンで200℃―10分後の乾燥前後の重量変化から求めた。
<転化率>
転化率は以下の計算式から求めた。
転化率(%)=反応溶液の実測不揮発分比率/反応溶液の理論不揮発分比率×100
反応溶液の理論不揮発分比率(%)={モノマー(A)の配合量(g)+共重合モノマー(B)の配合量(g))/全原料の配合量(g)×100
<モノマー(A)の製造>
以下に示す方法に従いγ-オリザノール構造を有するメタアクリレートモノマー(A)を製造した。
<実施例1> モノマー(A-1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に空気を吹き込みながら、γ-オリザノール(東京化成社製)329.0部、酢酸ナトリウム(東京化成社製)2.5部、4-メトキシフェノール(東京化成社製)0.3部、酢酸n-プロピル500部仕込み、攪拌しながら90℃になるまで昇温した。その後、反応容器に滴下管からメタクリル酸無水物(東京化成社製)168.3gを2時間かけて滴下し、そのまま90℃で24時間反応を行い、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/メタノール=100/2)でγ-オリザノール由来のスポットが消失したのを確認し反応を終了させた。次いで、反応容器を40℃まで冷却した後に40℃、5.2kPaの条件で溶剤を減圧留去した。その後反応容器にメタノール800部を加え、40℃で1時間攪拌した後にろ過を行い、ろ紙上に残った固形物をメタノール200部で十分に洗浄した後に固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥することにより目的物である、メタクリレートモノマー(A-1)を得た。得られた固形物について、H-NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)測定を行い、γ-オリザノール由来のシグナルに加えて、以下に示すメタクリル酸骨格由来のスペクトルが得られたことから、得られた固形物はγ-オリザノールのメタクリル酸エステルであると同定した。
H-NMRスペクトル]
(σ値)6.42(1H)、6.18(1H)、2.01(3H)
<実施例2> モノマー(A-2)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に空気を吹き込みながら、γ-オリザノール(東京化成社製)288.1部、ネオスタンU-810(日東化成社製、ジオクチル錫系触媒)0.2部、4-メトキシフェノール(東京化成社製)0.4部、トルエン600部仕込み、攪拌しながら70℃になるまで昇温した。その後、反応容器に滴下管から2-イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工社製 カレンズMOI)111.3部を2時間かけて滴下し、そのまま70℃で18時間反応を行い、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/メタノール=100/2)でγ-オリザノール由来のスポットが消失したのを確認し反応を終了させた。次いで、反応容器を50℃まで冷却した後にメタノールを50部加えて、50℃で3時間攪拌を行った。その後、40℃、5.2kPaの条件で溶剤を減圧留去し、反応容器にメタノール800部を加え、40℃で1時間攪拌した後にろ過を行い、ろ紙上に残った固形物をメタノール200部で十分に洗浄した後に固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥することにより目的物であるメタクリレートモノマー(A-2)を得た。得られた固形物について、H-NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)測定を行い、γ-オリザノール由来のシグナルに加えて、以下に示すカレンズMOIの反応物由来のスペクトルが得られたことから、得られた固形物はγ-オリザノールとカレンズMOIの反応物であると同定した。
H-NMRスペクトル]
(σ値)8.03(1H)、6.41(1H)、6.16(1H)、2.01(3H)、4.32(2H)、3.21(2H)
<比較例1> モノマー(A-3)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に空気を吹き込みながら、γ-オリザノール(東京化成社製)295.6部、ネオスタンU-810(日東化成社製)0.2部、4-メトキシフェノール(東京化成社製)0.4部、トルエン600部仕込み、攪拌しながら70℃になるまで昇温した。その後、反応容器に滴下管から2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工社製 カレンズAOI)103.8部を2時間かけて滴下し、そのまま70℃で18時間反応を行い、薄層クロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/メタノール=100/2)でγ-オリザノール由来のスポットが消失したのを確認し反応を終了させた。次いで、反応容器を50℃まで冷却した後にメタノールを50部加えて、50℃で3時間攪拌を行った。その後、40℃、5.2kPaの条件で溶剤を減圧留去し、反応容器にメタノール800部を加え、40℃で1時間攪拌した後にろ過を行い、ろ紙上に残った固形物をメタノール200部で十分に洗浄した後に固形物を回収した。得られた固形物を減圧乾燥することにより目的物であるアクリレートモノマー(A-3)を得た。得られた固形物について、H-NMR(溶媒:重クロロホルム、基準:テトラメチルシラン)測定を行い、γ-オリザノール由来のシグナルに加えて、以下に示すカレンズAOIの反応物由来のスペクトルが得られたことから、得られた固形物はγ-オリザノールとカレンズAOIの反応物であると同定した。
H-NMRスペクトル]
(σ値)8.03(1H)、6.38(1H)、6.05(1H)、5.59(1H)、2.01(3H)、4.34(2H)、3.19(2H)
<重合体(P)の製造>
以下に示す方法に従い重合体(P-1)~(P-10)を製造した。表1に製造した原料および配合量と得られた化合物の性状を示す。
<実施例3> 重合体(P-1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル80部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)6部、n-ブチルメタクリレート(東京化成社製)49部、ベンジルメタクリレート(東京化成社製)45部、重合開始剤としてV-65(富士フィルム和光純薬社製)1.0部、酢酸n-ブチル20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間の間、反応容器に1時間毎にV-65(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-1)は、重量平均分子量が6.5万、ガラス転移温度が39℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が6重量%、共重合モノマー(B)の含有量が94重量%であった。
<実施例4> 重合体(P-2)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル80部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)6部、メチルメタクリレート(東京化成社製)54部、n-ブチルメタクリレート(東京化成社製)40部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.05部、酢酸n-ブチル20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-2)は、重量平均分子量が92.3万、ガラス転移温度が66℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が6重量%、共重合モノマー(B)の含有量が94重量%であった。
<実施例5> 重合体(P-3)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル80部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)75部、n-ブチルメタクリレート(東京化成社製)25部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、メチルシクロヘキサン20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-3)は、重量平均分子量が58.4万、ガラス転移温度が78℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が75重量%、共重合モノマー(B)の含有量が25重量%であった。
<実施例6> 重合体(P-4)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル80部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)25部、n-ブチルメタクリレート(東京化成社製)25部、2-エチルヘキシルメタクリレート(東京化成社製)50部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、酢酸n-ブチル(東京化成社製)20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-4)は、重量平均分子量が56.6万、ガラス転移温度が7℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が25重量%、共重合モノマー(B)の含有量が75重量%であった。
<実施例7> 重合体(P-5)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル60部、メチルイソブチルケトン20部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)60部、メチルメタクリレート(東京化成社製)20部、ベンジルメタクリレート(東京化成社製)10部、メタクリル酸10部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、メチルシクロヘキサン(東京化成社製)20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-5)は、重量平均分子量が71.2万、ガラス転移温度が107℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が60重量%、共重合モノマー(B)の含有量が40重量%であった。
<実施例8> 重合体(P-6)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル50部、メチルイソブチルケトン30部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-1)40部、メチルメタクリレート(東京化成社製)35部、2-ヒドロキエチルメタクリレート(東京化成社製)25部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、メチルシクロヘキサン20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-6)は、重量平均分子量が70.4万、ガラス転移温度が90℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が40重量%、共重合モノマー(B)の含有量が60重量%であった。
<実施例9> 重合体(P-7)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル50部、メチルイソブチルケトン30部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-2)20部、メチルメタクリレート(東京化成社製)35部、ベンジルメタクリレート20部、2-ヒドロキエチルメタクリレート(東京化成社製)25部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、酢酸n-ブチル20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-7)は、重量平均分子量が65.5万、ガラス転移温度が82℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が20重量%、共重合モノマー(B)の含有量が80重量%であった。
<比較例2> 重合体(P-8)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル50部、メチルイソブチルケトン30部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、モノマー(A-3)20部、メチルメタクリレート(東京化成社製)35部、ベンジルメタクリレート20部、2-ヒドロキエチルメタクリレート(東京化成社製)25部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、酢酸n-ブチル(東京化成社製)20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下したところ、滴下開始から40分後に反応溶液がゲル化してしまい、目的の重合体(P-8)を得ることができなかった。重合体(P-8)は後述の性能試験を実施しなかった。
<比較例3> 重合体(P-9)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル50部、メチルイソブチルケトン30部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート(東京化成社製)55部、ベンジルメタクリレート20部、2-ヒドロキエチルメタクリレート(東京化成社製)25部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、酢酸n-ブチル20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行い、反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-9)は、重量平均分子量が61.3万、ガラス転移温度が81℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が0重量%、共重合モノマー(B)の含有量が100重量%であった。
<比較例4> 重合体(P-10)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら酢酸n-ブチル50部、メチルイソブチルケトン30部を仕込み、70℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート(東京化成社製)50.7部、ベンジルメタクリレート40部、2-ヒドロキエチルメタクリレート(東京化成社製)5部、重合開始剤としてV-601(富士フィルム和光純薬社製)0.1部、酢酸n-ブチル20部を混合したモノマー溶液を滴下管から2時間かけて滴下した。滴下終了後、反応容器に1時間毎にV-601(富士フィルム和光純薬社製)を0.02部ずつ加え、更に70℃で反応を行った。反応溶液の転化率が98%以上になったところで反応容器を50℃まで冷却し、4-メトキシフェノール(東京化成社製)0.1部を加え均一になるまで攪拌し、カレンズAOI(昭和電工社製)4.3部、ネオスタンU-810(日東化成社製)0.05部を加えて、50℃で8時間反応させた。反応物の透過IR測定からイソシアネート基由来のピークが消失していることを確認し、反応を終了した。
こうして得られた重合体(P-10)は、重量平均分子量が54.7万、ガラス転移温度が76℃、モノマー混合物100重量%に対するモノマー(A)の含有量が0重量%、共重合モノマー(B)の含有量が100重量%であった。
Figure 0007200657000003
表1中の略号の意味は以下の通りである。
MMA:メチルメタクリレート
nBMA:nブチルメタクリレート
2EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
BzMA:ベンジルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
HEMA:2-ヒドロキエチルメタクリレート
AOI:カレンズAOI
MCH:メチルシクロヘキサン
MIBK:メチルイソブチルケトン
<樹脂組成物(R)の製造>
実施例3~9、比較例2~4の重合体(P-1)~(P-10)を用いて、以下に示す方法に従い樹脂組成物(R-1)~(R-10)を製造した。表2に製造した原料の配合量と得られた化合物の性状を示す。
<実施例10> 樹脂組成物(R-1)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-1)溶液160部、KAYARAD PET-30(日本化薬社製、3官能アクリレート)120部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル300部、メチルイソブチルケトン220部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-1)とした。
<実施例11> 樹脂組成物(R-2)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-2)溶液160部、SR399(サートマー社、5官能アクリレート)120部、TPO(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル300部、メチルイソブチルケトン220部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-2)とした。
<実施例12> 樹脂組成物(R-3)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-3)溶液240部、SR399(サートマー社、5官能アクリレート)80部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン180部、メチルイソブチルケトン100部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-3)とした。
<実施例13> 樹脂組成物(R-4)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-4)溶液200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)100部、TPO(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル300部、メチルイソブチルケトン200部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-4)とした。
<実施例14> 樹脂組成物(R-5)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-5)溶液200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)100部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル300部、メチルイソブチルケトン200部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-5)とした。
<実施例15> 樹脂組成物(R-6)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-6)溶液200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)80部、紫光UV-7650B(日本合成化学社製、ウレタンアクリレートオリゴマー)20部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン50部、メチルイソブチルケトン250部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-6)とした。
<実施例16> 樹脂組成物(R-7)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-7)溶液200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)80部、紫光UV-7650B(日本合成化学社製、ウレタンアクリレートオリゴマー)20部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン50部、メチルイソブチルケトン250部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-7)とした。
<比較例5> 樹脂組成物(R-8)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながらA-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)160部、紫光UV-7650B(日本合成化学社製、ウレタンアクリレートオリゴマー)40部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン50部、メチルイソブチルケトン250部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-8)とした。
<比較例6> 樹脂組成物(R-9)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-9)200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)80部、紫光UV-7650B(日本合成化学社製、ウレタンアクリレートオリゴマー)20部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン50部、メチルイソブチルケトン250部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-9)とした。
<比較例7> 樹脂組成物(R-10)の製造
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下管、窒素導入管を備えた反応容器に窒素ガスを吹き込みながら重合体(P-10)200部、A-DPH(新中村化学工業社、6官能アクリレート)80部、紫光UV-7650B(日本合成化学社製、ウレタンアクリレートオリゴマー)20部、イルガキュア184(BASF社製、光重合開始剤)5部、酢酸n-ブチル200部、メチルシクロヘキサン50部、メチルイソブチルケトン250部を仕込み、1時間攪拌を行った。こうして得られたコーティング剤を、樹脂組成物(R-10)とした。
Figure 0007200657000004
<試験片の製造>
実施例10~16、比較例5~7の樹脂組成物(R-1)~(R-10)を用いて、以下に示す方法に従い試験用の積層体(S-1)~(S-10)及び成型体(T-1)~(T-10)を製造した。
<積層体(S)の製造>
実施例10~16、比較例5~7の樹脂組成物(R-1)~(R-10)をそれぞれ乾燥後皮膜の膜厚が約5μmとなるように厚さ1mmのポリカーボネート基材(三菱ガス化学社製「ユーピロン・シートNF-2000」)に塗工し、100℃の熱風オーブンで1分間乾燥した。次いで、実施例10以外の樹脂組成物を用いた塗工膜に対して、ベルトコンベア式の紫外線照射装置(120W/cm高圧水銀灯)を用いて、コンベアスピード10m/分で積算光量が400mJ/cmとなるよう紫外線照射を行い、硬化処理を行った。また、実施例10の樹脂組成物を用いた塗工膜に対しては、電子線照射装置を用いて、加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の条件で電子線照射を行い、硬化処理を行った。こうして試験用の積層体(S)を得た。
<成型体(T)の製造>
積層体(S-1)~(S-10)を、上下2室のチャンバーボックスにわかれた真空成型機の真ん中に、硬化被膜側が上側を向くようにセットした。また、下のチャンバーボックスには、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレイ状である深絞り成型用の金型をセットした。次に、真空ポンプでチャンバーボックス内を真空状態にし、チャンバー上部の加熱ヒーターにより積層体(S)の表面温度が160℃になるまで加熱を行った。積層体(S)が十分に熱軟化した状態になったら、下チャンバーボックスの金型を上昇させて、積層体(S)が金型を覆った状態にした。
次に、上チャンバーボックスを大気開放状態にし、更に上チャンバーボックスに圧縮空気を送入することにより積層体(S)と金型を十分に密着させた。そして下チャンバーボックスを大気開放状態にし、上チャンバーボックスを上昇させて、大気下で冷却した後に金型から成型された積層体(S)を取り出した。こうして試験用の成型体(T)を得た。
<性能試験>
積層体(S-1)~(S-10)及び成型体(T-1)~(T-10)を用いて、以下に示す性能試験を行った。表3に各種性能試験の結果を示す。
<ハードコート性の評価>
積層体(S-1)~(S-10)に対して、熱風オーブンを用いて160℃で10分間加熱処理を行った。その後積層体(S)を室温まで冷却した後に、JIS K7204、K6264[摩耗性試験]に準拠して試験を行った。耐摩耗性の結果から、積層体(S)のハードコート性を評価した。評価基準を以下に示す。なお、試験に用いた装置としては、東洋精機社製「ロータリーアブレージョンテスタ」であり、摩耗輪として「CS-10」を用い、荷重500gで500回転の摩耗量を評価した。
◎:摩耗量が5mg未満。優秀。
〇:摩耗量が5mg以上、20mg未満。良好。
△:摩耗量が20mg以上、50mg未満。実用下限。
×:摩耗量が50mg以上。実用不可。
<伸長性の評価>
成型体(T-1)~(T-10)について、成型後の外観を目視で観察することで、積層体(S)の伸長性を評価した。評価基準を以下に示す。
◎:皺や割れ等、外観変化が全くない。優秀。
〇:皺や割れがないが、一部に浮きが見られる。良好。
△:全体の10%未満の範囲に皺や割れ等の外観変化が見られる。実用下限。
×:全体の10%以上の範囲に皺や割れ等の外観変化が見られる。実用不可。
<耐薬品性の評価>
積層体(S-1)~(S-10)の硬化被膜表面(平滑部)及び成型体(T-1)~(T-10)の凸型に加工された部分を含む硬化被膜表面(成型部)に対して、日焼け止めクリーム(ジョンソン・エンド・ジョンソン社製、「Neutrogena Ultra Sheer DRY-TOUCH SUNSCREEN SPF55」を30mg塗布し、直径1.8cmの円状にクリームを均一に伸ばし、上からアルミホイルを重ねた状態で80℃の恒温オーブン内に12時間静置した。その後試験片を取り出し、大気下で室温まで冷却した後、イオン交換水でクリームを洗い流し、クリームが塗られていた硬化被膜表面部分の外観変化を目視で観察することにより耐薬品性を評価した。評価基準を以下に示す。
〇:外観変化なし。優秀。
△:うっすらと曇っている。実用下限。
×:白化又は硬化被膜と基材間で浮きが発生。実用不可。
Figure 0007200657000005
表3に示すように、比較例8は重合体(P)を含まないため、ハードコート性と伸長性のバランスが悪く、伸長性及び成型部の耐薬品性が著しく悪化した。
比較例9では、重合体(P)にγ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)を含有していないため、ハードコート性と伸長性のバランスが悪く、ハードコート性と成形部の耐薬品性が著しく悪化した。
比較例10では、重合体(P)は側鎖にラジカル重合性官能基を有しているが、比較例9と同じくγ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)を含有していないため、ハードコート性と伸長性のバランスが悪く、伸長性と成形部の耐薬品性が著しく悪化した。
一方、実施例17~23は、γ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)を有する重合体(P)または共重合モノマー(B)を好適な範囲で含有した重合体(P)を含有する樹脂組成物の硬化被膜であるため、ハードコート性、伸長性、耐薬品性をバランスよく満たしていた。
中でも、実施例23が最も優れた性能を示した。実施例23は、重合体(P)のγ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)の含有量が10~65重量%という好適な範囲であるため、範囲外の実施例17、18、19と比べてハードコート性と伸長性のバランスに優れ、伸長性と成型部の耐薬品性が優れていた。また、実施例19は重合体(P)の重量平均分子量が10万~80万という好適な範囲であるため、範囲外の実施例17、18と比べてハードコート性と伸長性のバランスに優れ、耐薬品性も優れた性能を示した。
また、実施例23は、重合体(P)のガラス転移温度が30~100℃という好適な範囲であるため、範囲外の実施例20、21に比べてハードコート性と伸長性のバランスに優れ、ハードコート性と伸長性が共に優れた性能を示した。
また、実施例23は、重合体(P)がウレタン結合を有するγ-オリザノール構造を有するメタクリレートモノマー(A)を含有しているため、含有していない実施例22に比べて成形部の耐薬品性に優れた性能を示した。
本発明のメタクリレートモノマーを含有する重合体及び樹脂組成物は、ガラス、金属、樹脂等の材料からなる基材表面に塗布し活性エネルギー線照射により硬化させることで、その基材表面にハードコート性と伸長性に優れた硬化被膜を形成させることができることから、日用品や生活用品等の機器本体、食品の容器類、電子機器や事務用品等の筐体類といった射出成型品で、該成形品の表面にハードコート性が必要な用途に対して好適に用いられ、特にハードコート性と伸長性の両立が必要とされる用途に好適に使用される。

Claims (8)

  1. 下記一般式(2)で表されるメタクリレートモノマー(A)。
    一般式(2)
    Figure 0007200657000006
    (式中、Lは直接結合又はウレタン結合を有する分子量200以下の2価の連結基を示し、R ~R は、水素原子、不飽和結合を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を示し、ただしR とR は互いに結合して環を形成してもよい。)
  2. モノマー混合物100重量%に対し、請求項1に記載のメタクリレートモノマー(A)3~85重量%、及びその他の共重合モノマー(B)15~97重量%を含むモノマー混合物の重合体(P)。
  3. 重量平均分子量が5万~100万であることを特徴とする請求項に記載の重合体(P)。
  4. ガラス転移温度が0~120℃であることを特徴とする請求項2又は3に記載の重合体(P)。
  5. 請求項2~4いずれか1項に記載の重合体(P)と、アクリレート基及び/又はアクリルアミド基含有多官能モノマー(Q)とを含有することを特徴とする樹脂組成物(R)。
  6. 基材上に請求項に記載の樹脂組成物(R)からなる硬化膜を有することを特徴とする積層体(S)。
  7. 加飾成型用である、請求項に記載の積層体(S)。
  8. 請求項に記載の積層体(S)から形成されてなる加飾成型体。
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