以下、本発明の実施形態による減衰力調整式緩衝器を、車両用の減衰力調整式油圧緩衝器に適用した場合を例に挙げて、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下の説明では、油圧緩衝器(例えば、シリンダ1またはピストン2等)の一端側(一側)を下端側(下側)として説明し、他端側(他側)は上端側(上側)として説明する。
ここで、図1ないし図11は第1の実施形態を示している。図1において、円筒状のシリンダ1は、例えば単筒型の減衰力調整式油圧緩衝器100(以下、油圧緩衝器100という)における外殻を構成している。なお、本発明は単筒型に限るものではなく、例えば複筒型の減衰力調整式油圧緩衝器の場合は、その内筒をシリンダ1が構成し、その外側には外筒が配置される。また、前記シリンダ1内には、作動流体(例えば、オイル等の作動液からなる圧油)が封入されている。そして、シリンダ1内には、ピストン2が移動可能に挿嵌されている。
シリンダ1の下端側は、ボトムキャップ(図示せず)により閉塞されている。また、シリンダ1の上端側には、後述するピストンロッド3の筒状ロッド4を軸方向に変位可能にガイドするロッドガイド(図示せず)が設けられると共に、このロッドガイドを覆うようにアッパキャップおよびばね受(いずれも図示せず)等が取付けられている。前記ばね受は、車両の懸架ばね(図示せず)を下側から支持するものである。
ピストン2はシリンダ1内に摺動可能に挿嵌された可動隔壁で、このピストン2は、シリンダ1内を2つの室(即ち、ロッド側油室Aとボトム側油室B)に画成している。ピストン2には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとを連通可能な油路2A,2Bがそれぞれ複数個、周方向に離間して形成され、これらの油路2A,2Bは、ピストン2の軸線に対し斜めに傾いた油穴により構成されている。このうち、例えば油路2Bは、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間で油液を流通させる後述の第1通路35を構成している。
図2に示すように、ピストン2の上側端面には、各油路2Aの上側開口を取囲むように形成された環状凹部2Cと、該環状凹部2Cの径方向外側に位置し後述の縮み側減衰力発生部33(即ち、ディスクバルブ)が離着座する環状弁座2Dとが設けられている。ピストン2の下側端面には、各油路2Bの下側開口を取囲むように形成された環状凹部2Eと、該環状凹部2Eの径方向外側に位置し後述の伸び側減衰力発生部21(即ち、メインディスク25A)が離着座する環状弁座2Fとが設けられている。
ピストン2の環状弁座2Fとメインディスク25Aとの間には、例えば切欠き等により形成される絞り通路2Gが設けられている。この絞り通路2Gは、例えば図7に示す固定絞りC1を構成し、ピストン2の油路2Bおよび環状凹部2Eがメインディスク25Aにより閉塞(閉弁)されているときにも、例えば図8中の矢示E1方向へと環状凹部2Eからボトム側油室Bに向けて圧油が小流量で流通するのを許す通路である。そして、このように絞り通路2Gを流通する圧油は、固定絞りC1(図7参照)の効果により予め決められた小さな減衰力を発生する。
ここで、ピストン2の下面側に設けられた伸び側減衰力発生部21は、後述の如く、ピストンロッド3の伸長(伸び)行程でピストン2が上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室A内の圧力が開弁設定圧を越えると開弁し、このときの圧油を各油路2Bを介してボトム側油室B側に流通させる。また、ピストン2の上面側に設けられた縮み側減衰力発生部33は、後述の如く、ピストンロッド3の縮み行程でピストン2が下向きに摺動変位するときに開弁し、これ以外のときには閉弁状態に保持される。
ピストンロッド3はシリンダ1内を軸方向(上,下方向)に延びている。このピストンロッド3は、一端側(即ち、下端側)がシリンダ1内に挿入された長尺な筒状ロッド4と、該筒状ロッド4の一側(下端側)に螺着して設けられた段付ロッド5とを含んで構成されている。ピストンロッド3の一端側(即ち、段付ロッド5の雄ねじ部5C)にはナット6が螺着され、このナット6によりピストン2は、段付ロッド5(後述の小径筒部5D)の下端側に環状のスペーサ7等を介して締結(固着)されている。また、ピストンロッド3の他端側(筒状ロッド4の上端側)は、前記ロッドガイド、アッパキャップ等を介してシリンダ1の外部に突出している。ナット6は、ピストン2を段付ロッド5(小径筒部5D)に取付けると共に、ピストン2の上,下両面側に後述の縮み側減衰力発生部33,伸び側減衰力発生部21等を着脱可能に締結して固定するものである。
筒状ロッド4の内周側には、図1に示すようにロッド挿入穴4Aが軸方向に貫通して設けられ、このロッド挿入穴4A内には、後述のコントロールロッド15が隙間をもって挿入されている。段付ロッド5の内周側には、その下端側に開口してシャッタ装入穴5Aが形成され、該シャッタ装入穴5A内には後述のシャッタ14が回動可能に挿嵌されている。シャッタ装入穴5Aの上端側は、筒状ロッド4のロッド挿入穴4Aと上,下方向で互いに連通し、ロッド挿入穴4Aとシャッタ装入穴5Aとは、互いに軸線がほぼ一致する位置に配置されている。
段付ロッド5の外周側には、後述のスペーサ19,20が軸方向に位置決めされる環状の段部5Bが形成されている。ピストンロッド3の一端側(即ち、段付ロッド5の下端側)は、ナット6が螺着される雄ねじ部5Cとなっている。段付ロッド5は、段部5Bと雄ねじ部5Cとの間が軸方向に延びる小径筒部5Dとなり、該小径筒部5Dの内周側は、軸方向に延びる前述のシャッタ装入穴5Aとなっている。小径筒部5Dの外周側には、スペーサ19,20とナット6との間に位置してピストン2、後述の伸び側減衰力発生部21および縮み側減衰力発生部33等が取付けられている。
ピストンロッド3(段付ロッド5)の小径筒部5Dには、図2に示すようにシャッタ装入穴5Aから径方向外向きに延びた複数のオリフィス8,9,10,11,12がそれぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。これらのオリフィス8~12のうち最も上側に位置するオリフィス8は、例えば図5に示すように、小径筒部5Dの径方向で互いに対向した2個の油孔8A,8Aと、該各油孔8Aから小径筒部5Dの周方向に所定角度(例えば90度)だけ離間して配置され油孔8Aよりも小径に形成された他の2個の油孔8B,8Bとにより構成されている。該各油孔8Bも、小径筒部5Dの径方向で互いに対向した位置に配設されている。
オリフィス8は、図2に示すように、後述するスペーサ20の通路溝20Aを介してロッド側油室Aに連通している。そして、このオリフィス8は、後述する第4通路38の途中に位置し、後述のシャッタ14により通路面積が可変に設定される第2オリフィスC2(図7参照)を構成している。このオリフィス8の油孔8A,8Bはシャッタ14の回動により、図7に示す第2オリフィスC2の如く可変オリフィスとして作動される。これにより、第4通路38内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が可変に調整され、減衰力モードが図10に示すソフトな特性であるコンフォートモード(特性線39,40)と、ハードな特性であるスポーツモード(特性線41,42)とのいずれかに変更される。
オリフィス8の下側に位置するオリフィス9は、後述の油通路34を介してピストン2の環状凹部2Cおよび油路2Aと連通する複数の油孔により構成されている。これらの油孔(オリフィス9)は、オリフィス8の油孔8A,8Bとほぼ同様に小径筒部5Dの径方向で互いに対向した位置に配設されている。しかし、オリフィス9の各油孔は、オリフィス8の油孔8A,8Bよりも大径の油孔であってシャッタ14により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。そして、下側のオリフィス9は、シャッタ14の油溝14Aを介して上側のオリフィス8に連通している。
次に、オリフィス9の下側に位置するオリフィス10は、後述の油通路30を介してピストン2の環状凹部2Eおよび油路2Bと連通する複数の油孔10A,10B(図6参照)により構成されている。そして、このオリフィス10は、後述する第2通路36の途中に位置し、シャッタ14により通路面積が可変に設定される第1オリフィスS1(図7参照)を構成している。このオリフィス10の油孔10A,10Bはシャッタ14の回動により、図7に示す第1オリフィスS1の如く可変オリフィスとして作動される。これにより、第2通路36内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が可変に調整され、周波数応答のカットオフ周波数fc1,fc2が図11に示すコンフォートモード(特性線43)とスポーツモード(特性線44)の如く変更される。
図6に示すように、オリフィス10は、小径筒部5Dの径方向で互いに対向した2個の油孔10A,10Aと、該各油孔10Aから小径筒部5Dの周方向に所定角度(例えば90度)だけ離間して配置され油孔10Aよりも大径に形成された他の2個の油孔10B,10Bとにより構成されている。該各油孔10Bも、小径筒部5Dの径方向で互いに対向した位置に配設されている。なお、オリフィス10の油孔10A,10Bは、前記オリフィス8の油孔8A,8Bとは異なる孔径に形成されており、後述するシャッタ14の油溝14Bと選択的に連通されることによって、周波数感応部(後述のフリーバルブ27)によるカットオフ周波数fc1,fc2(図11参照)が切替えられるものである。
オリフィス10の下側に位置するオリフィス11は、後述する伸び側減衰力発生部21の背圧室26に背圧導入路31を介して連通する複数の油孔により構成されている。オリフィス11の油孔は、オリフィス10の油孔10A,10Bとほぼ同様に小径筒部5Dの径方向で互いに対向した位置に配設されている。しかし、オリフィス11の各油孔は、シャッタ14により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。そして、下側のオリフィス11は、シャッタ14の油溝14Bを介して上側のオリフィス10と下側のオリフィス12とに連通している。
さらに、オリフィス8~12のうち最も下側(オリフィス11の下側)に位置するオリフィス12は、後述する第2弁支持部材23のダンパ上室B1に導油路32を介して連通する複数の油孔により構成されている。そして、このオリフィス12は、後述する第3通路37の途中に位置し、シャッタ14の油溝14Bを周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)に連通させる第3オリフィスS3(図7参照)を構成している。
オリフィス12の各油孔は、オリフィス10の油孔10A,10Bとほぼ同様に小径筒部5Dの径方向で互いに対向した位置に配設されている。しかし、オリフィス12の各油孔は、シャッタ14により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。そして、最も下側に位置するオリフィス12は、シャッタ14の油溝14Bを介して上側のオリフィス10,11に連通している。なお、場合によってはシャッタ14の回動位置により、オリフィス12を油溝14Bに対して遮断することもでき、このときには周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)をシャッタ14により遮断して周波数感応の動作を停止させることができる。
次に、本実施形態で採用した通路面積可変機構13について説明する。この通路面積可変機構13は、シャッタ14、コントロールロッド15およびロータリアクチュエータ16を含んで構成されている。通路面積可変機構13のロータリアクチュエータ16は、例えば筒状ロッド4の突出端側に設けられたステッピングモータ等の電動モータにより構成されている。ロータリアクチュエータ16は、その出力軸(図示せず)がコントロールロッド15に連結され、コントロールロッド15を介してシャッタ14を回動操作するものである。
なお、本実施形態では、ロータリアクチュエータ16によりコントロールロッド15を介してシャッタ14を回動操作する構成としたが、手動でシャッタ14を回動操作する構成とした通路面積可変機構であってもよい。また、ロータリアクチュエータ16は、必ずしもピストンロッド3(筒状ロッド4)の突出端側に設ける必要はなく、例えば筒状ロッド4の途中部位(例えば、長さ方向中間部)に内蔵するかたちで設けることも可能である。
シャッタ14は、図3に示す如く中実な棒状体として形成され、段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内に回動可能に挿嵌して設けられる。シャッタ14は、通路面積可変機構13の稼働部材を構成し、ロータリアクチュエータ16によりシャッタ装入穴5A内で回動(稼働)されるものである。稼働部材としてのシャッタ14は、コントロールロッド15の下端側に一体回転するように嵌合して設けられ、段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内でコントロールロッド15と一緒に回動される。コントロールロッド15は、筒状ロッド4のロッド挿入穴4A内に挿通して設けられ、その上端側がロータリアクチュエータ16の出力軸に連結されている。
図3、図4に示すように、シャッタ14の外周面には、軸方向に延びる横断面がU字状の凹溝として形成された上側(他側)の油溝14Aと、該油溝14Aから軸方向に離間し同じく軸方向に延びる断面U字状の凹溝として形成された下側(一側)の油溝14Bとが設けられている。シャッタ14の油溝14Aは、図2に示すように段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス8,9と径方向で対向する位置に配置され、シャッタ14の回動位置に応じてオリフィス8の油孔8Aまたは8Bをオリフィス9に対して連通させる。なお、場合によっては、オリフィス8とオリフィス9との間をシャッタ14の回動操作で遮断し通路面積を変える構成としてもよい。
シャッタ14の油溝14Bは、シャッタ14の軸方向で油溝14Aから所定寸法だけ離隔した位置に形成され、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス10,11,12と径方向で対向する位置に配置されている。そして、油溝14Bは、シャッタ14の回動位置に応じてオリフィス10の油孔10Aまたは10Bをオリフィス11,12に対して連通させる。
オリフィス10の油孔10A,10Bは、周波数感応バルブとして作動するフリーバルブ27のカットオフ周波数fc1、fc2(図11参照)を2段階で切替えるため、予め定められたオリフィス面積に異なる孔径をもって形成されている。オリフィス10の油孔10Aは、図6に示す如く油孔10Bよりも小径に形成されている。シャッタ14の油溝14Bを油孔10Aの位置に回動したときには、後述の如く低周波寄りのカットオフ周波数fc1に切替えられる。一方、シャッタ14の油溝14Bを油孔10Bの位置に回動したときには、後述の如く高周波寄りのカットオフ周波数fc2に切替えられる。
段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内には、シャッタ14の下側(軸方向の一側)に位置して筒体17が設けられ、シャッタ14の上側(軸方向の他側)には合成樹脂製の筒体18が設けられている。該筒体18と前記筒体17とは、シャッタ14がシャッタ装入穴5Aの中で上,下方向に移動するのを防ぐ軸方向の位置決め部材を構成している。筒体17の内周側は、ボトム側油室Bに連通する内孔17Aとなっており、シャッタ14の下端側端面は、ボトム側油室B内の圧力を内孔17Aを介して受圧している。合成樹脂製の筒体18は、例えばロッド側油室A内の圧油が段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内に流入または漏出するのを防ぐシール部材でもあり、段付ロッド5内でコントロールロッド15を回動可能に支持する軸受用ブッシュでもある。
ピストンロッド3(段付ロッド5)の小径筒部5Dには、後述の縮み側減衰力発生部33と段部5Bとの間に位置して複数のスペーサ19,20が重合わせ状態で設けられている。これらのスペーサ19,20は、段付ロッド5(小径筒部5D)の外周側に嵌合して設けられた環状のリング等により構成され、上側のスペーサ19は段部5Bに当接して位置決めされている。
一方、スペーサ19の下面に当接したスペーサ20は、後述の第4通路38を形成する通路形成部材であり、スペーサ20の下面側には、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス8に常時連通する複数の通路溝20Aが径方向に延びて形成されている。これらの通路溝20Aは、ロッド側油室Aとシャッタ14の油溝14Aとを段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス8を介して連通させる第4通路38の一部を構成している。
次に、ピストン2の上,下両面側に位置してピストンロッド3(段付ロッド5)の小径筒部5Dに設けられた伸び側減衰力発生部21と縮み側減衰力発生部33との具体的構成について、図1および図2を参照して説明する。
伸び側減衰力発生部21は、ピストンロッド3の伸び行程でピストン2の移動によって生じる上流側の室(ロッド側油室A)から下流側の室(ボトム側油室B)への作動液の流れを抑制して減衰力を発生させる主減衰バルブ(即ち、減衰力制御弁25)と、該主減衰バルブの閉弁方向に背圧を作用させる背圧室26と、前記上流側の室からの作動液を背圧室26に導入するための背圧導入路31と、背圧室26のパイロット圧(背圧)により前記主減衰バルブの開弁圧を可変に調整する圧力調整機構(例えば、後述の弾性シール部材25B)と、シャッタ14の油溝14Bから小径筒部5Dのオリフィス11,12、導油路32を介して作動液が供給され、高周波の振動に対して減衰力を低減させる周波数感応部(後述のフリーバルブ27)と、を備えている。
伸び側減衰力発生部21は、図2に示すように、シリンダ1のボトム側油室B内に位置してピストン2の下面側に固定するように取付けられている。伸び側減衰力発生部21は、ピストンロッド3の伸長(伸び)行程でピストン2がシリンダ1内を上向きに摺動変位するときに、ロッド側油室Aからピストン2の各油路2B、環状凹部2E等を介してボトム側油室Bに向け流通する圧油に抵抗力を与え、予め決められた特性で伸び側の減衰力を発生するものである。
伸び側減衰力発生部21は、ピストン2とスペーサ7との間に位置してピストンロッド3(小径筒部5D)の外周側に固定された上,下の第1,第2弁支持部材22,23と、該第1,第2弁支持部材22,23間に配置されたリリーフ弁24と、主減衰バルブとしての減衰力制御弁25と、後述のフリーバルブ27(即ち、周波数感応バルブとして働く第2バルブ)等とを含んで構成されている。減衰力制御弁25は、第1弁支持部材22の内周側(後述する短尺筒部22Bの内周面)に締代をもって嵌合する後述の弾性シール部材25Bを有し、第1弁支持部材22との間に環状の背圧室26を形成する第1バルブである。
2つの弁支持部材22,23のうち、上側の第1弁支持部材22は、小径筒部5Dの外周側に嵌合して設けられた環状部22Aと、該環状部22Aの外周側から軸方向上側(他側)へとピストン2の下側端面に近い位置まで延設された短尺筒部22Bと、環状部22Aの下側面に形成されリリーフ弁24により開,閉される環状凹部22Cと、短尺筒部22B内を環状凹部22C内と連通させるように環状部22Aの径方向中間部に穿設され上,下方向に開口した複数の貫通孔22Dとを含んで構成されている。
2つの弁支持部材22,23のうち、下側の第2弁支持部材23は、リリーフ弁24を第1弁支持部材22との間で上,下方向から挟むように、小径筒部5Dの外周側に嵌合して設けられた環状部23Aと、該環状部23Aの外周側から軸方向一側へと下向きに延設された短尺な一側筒部23Bとを含んで構成されている。下側の第2弁支持部材23は、一側筒部23Bの内側に後述のフリーバルブ27を収納する構成となっている。
リリーフ弁24は、小径筒部5Dの外周側で弁支持部材22,23間に挟持して設けられたディスクバルブにより構成されている。リリーフ弁24は、第1弁支持部材22の環状凹部22Cを下面側から塞ぐように、常時は環状凹部22C内をボトム側油室Bに対して閉塞している。しかし、環状凹部22C内に貫通孔22Dを介して連通する背圧室26内の圧力が、リリーフ弁24の開弁設定圧(減衰力制御弁25の開弁設定圧よりも高い圧力)まで上昇すると、リリーフ弁24は弁支持部材22の下側端面から離座(開弁)され、このときの過剰圧をボトム側油室B側にリリーフさせる安全弁として機能する。
減衰力制御弁25は、ピストン2の環状弁座2Fに離着座するメインディスク25Aと、該メインディスク25Aの下面外周側に加硫、焼付け等の手段で固着して設けられた環状の弾性シール部材25Bとにより構成されている。この弾性シール部材25Bは、ゴム等の弾性材料を用いて厚肉なリング状に形成され、外側のボトム側油室Bに対して内側の背圧室26(即ち、短尺筒部22Bとの間)を液密にシールしている。
減衰力制御弁25の弾性シール部材25Bは、第1弁支持部材22の短尺筒部22Bの内周面に弾性変形状態で接触することにより、背圧室26の背圧によってメインディスク25A(主減衰バルブ)の開弁圧を調整する圧力調整機構を構成している。減衰力制御弁25の開弁設定圧は、弾性シール部材25Bの弾性的な撓み変形により可変幅をもって調整される。
減衰力制御弁25においては、ピストンロッド3の伸び行程でロッド側油室Aからの圧油が、図8中に点線で示す矢示E2方向へとピストン2の各油路2B、環状凹部2E、油通路30、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10,11、シャッタ14の油溝14Bおよび背圧導入路31等を介して背圧室26内に導入される。このときに、ロッド側油室A(環状凹部2E)と背圧室26(即ち、短尺筒部22Bの内側)との間には、油通路30、オリフィス10,11または背圧導入路31の少なくとも何れかにより圧力差が発生される。そして、この圧力差が予め決められた開弁設定圧以上に大きくなったときに、減衰力制御弁25のメインディスク25Aは、環状弁座2Fから離座し、所定の伸び側減衰力を発生する。
なお、減衰力制御弁25のメインディスク25Aは、閉弁状態にあるときにピストン2の環状弁座2Fと減衰力制御弁25のメインディスク25Aとの間に形成される絞り通路2G(図7に示す固定絞りC1)により、予め決められた小さな減衰力を発生する。そして、メインディスク25Aが環状弁座2Fから離座したときには、メインディスク25Aが開弁して前述した所定の伸び側減衰力を発生することができる。
減衰力制御弁25(メインディスク25A)の開弁時には、ロッド側油室Aとボトム側油室Bとの間がピストン2の油路2B、環状凹部2Eおよび環状弁座2Fを介して連通する。一方、減衰力制御弁25(メインディスク25A)の閉弁時には、例えばロッド側油室A内の圧油がピストン2の油路2B、環状凹部2Eから、図8中に点線で示す矢示E2方向へと油通路30、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10,11、シャッタ14の油溝14Bおよび背圧導入路31等を介して背圧室26内に導入される。
伸び側減衰力発生部21は、第2弁支持部材23の一側筒部23B内に設けられたフリーバルブ27を有している。このフリーバルブ27は、ディスク弁27Aと環状の弾性シール部材27Bとにより構成されている。フリーバルブ27のディスク弁27Aは、第2弁支持部材23の一側筒部23B内に複数枚の弁座ディスク28および蓋板29を介して取付けられ、弁座ディスク28の外周側に離着座する逆止弁体として構成されている。
フリーバルブ27の弾性シール部材27Bは、ディスク弁27Aの外周側に加硫、焼付け等の手段で固着して設けられている。この弾性シール部材27Bは、ゴム等の弾性材料を用いてリング状に形成され、一側筒部23Bの内周面に液密に締代をもって接触している。これにより、第2弁支持部材23の一側筒部23Bは、その内部がフリーバルブ27により周波数感応のダンパ上室B1(即ち、周波数感応の圧力室)とダンパ下室B2とに画成されている。
また、第2弁支持部材23の環状部23Aの下面とフリーバルブ27のディスク弁27Aとの間には、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス12をダンパ上室B1(周波数感応の圧力室)に連通させる導油路32が設けられている。このため、ダンパ上室B1は、導油路32、オリフィス12、シャッタ14の油溝14B、オリフィス11および背圧導入路31を介して背圧室26と連通している。
ここで、周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)内の容積は、ディスク弁27Aと弾性シール部材27Bの変位(弾性変形を含む)により拡,縮される。この場合、フリーバルブ27は、背圧室26内の圧力(内圧)を調整する第2バルブとして構成されている。蓋板29は、小径筒部5Dの外周側と一側筒部23Bの内周側との間に嵌合して設けられ、弁座ディスク28とスペーサ7との間でナット6からの締結力により挟持されている。蓋板29の径方向中間部位には、複数の貫通孔29Aが上,下方向に穿設されている。これらの貫通孔29Aは、第2弁支持部材23の一側筒部23B(ダンパ下室B2)内を外側のボトム側油室Bに常時連通させる連通孔である。
フリーバルブ27は、ピストンロッド3の伸び行程で逆止弁体としてのディスク弁27Aが弁座ディスク28の外周側に着座し続け、この状態でピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数に応じて一側筒部23B内を上,下に移動または停止するように相対変位する。これにより、フリーバルブ27は、ダンパ上室B1(即ち、圧力室)の内圧を前記振動周波数に応じて調整する周波数感応バルブとして作動する。
一方、ピストンロッド3の縮み行程では、ダンパ下室B2がダンパ上室B1よりも相対的に高圧となるので、フリーバルブ27は、逆止弁体としてのディスク弁27Aが弁座ディスク28の外周側から離座するように開弁する。これによって、ボトム側油室B内の圧油(作動液)は、例えば図9中に点線で示す矢示D2方向へと、ダンパ下室B2からダンパ上室B1、導油路32、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス12、シャッタ14の油溝14B、オリフィス10および油通路30等を介してピストン2の環状凹部2E、油路2Bからロッド側油室Aに向けて流通する。
ピストン2の下面(環状凹部2E)と減衰力制御弁25のメインディスク25Aとの間には、ピストン2の油路2B(環状凹部2E内)をピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10に連通させる油通路30が設けられている。また、減衰力制御弁25のメインディスク25Aと第1弁支持部材22との間には、前記オリフィス11を背圧室26に連通させる背圧導入路31が設けられている。この背圧導入路31は、ロッド側油室Aからピストン2の油路2B、環状凹部2E、油通路30および前記オリフィス10を介してシャッタ14の油溝14B内に導かれた圧油を、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス11を介して背圧室26へと導入する通路である。
さらに、第2弁支持部材23の環状部23Aの下面とフリーバルブ27との間には、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス12をダンパ上室B1(周波数感応の圧力室)に連通させる導油路32が設けられている。この導油路32は、前記オリフィス12を通じてシャッタ14の油溝14B内に連通し、これにより、第2弁支持部材23とフリーバルブ27との間のダンパ上室B1(周波数感応の圧力室)には、ロッド側油室Aからの圧油がピストン2の油路2B、環状凹部2E、油通路30、オリフィス10、シャッタ14の油溝14B、オリフィス12および導油路32を介して供給される。
ここで、ピストンロッド3の伸び行程では、フリーバルブ27のディスク弁27Aと弾性シール部材27Bの変位(弾性変形を含む)によりダンパ上室B1内の容積が拡大される。この拡大範囲において、背圧室26内の圧油は、背圧導入路31、オリフィス11,12(シャッタ14の油溝14B)を介してダンパ上室B1内に向けて流通する。このため、背圧室26内の圧力はフリーバルブ27の変位により低下し、これに伴って減衰力制御弁25の開弁設定圧が下げられる。これにより、伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25は、図11に示す特性線43,44のように、カットオフ周波数fc1、fc2の前,後で発生減衰力の特性がハードな状態からソフトな状態へと切替えられる。
このように、フリーバルブ27は、ピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数に応じてダンパ上室B1と背圧室26との内圧を調整する周波数感応バルブとして作動する。この場合、前記カットオフ周波数fc1、fc2は、例えばピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10(即ち、油孔10A,10B)のオリフィス面積により決められる周波数であり、例えば1Hz前,後の周波数に設定するのが好ましい。但し、カットオフ周波数fc1は、カットオフ周波数fc2よりも低周波寄りの周波数であり、カットオフ周波数fc2は、カットオフ周波数fc1よりも高周波寄りの周波数である。
これにより、伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25は、図11に示す特性線43,44のように、ピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数がカットオフ周波数fc1、fc2よりも低い低周波のときには、フリーバルブ27により背圧室26内の圧力が下げられることはなく、減衰力制御弁25の開弁設定圧は相対的に高い圧力に保たれる。しかし、前記振動周波数がカットオフ周波数fc1、fc2以上となる高周波時(例えば、悪路走行時)には、フリーバルブ27により背圧室26内の圧力が下げられ、減衰力制御弁25の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性はソフトな状態に切替わる。
縮み側減衰力発生部33は、ピストン2の油路2Aをロッド側油室Aに対して遮断するように、ピストン2の上側端面(環状凹部2C)とスペーサ20との間に設けられたディスクバルブにより構成されている。この縮み側減衰力発生部33は、ピストンロッド3の縮み行程でピストン2がシリンダ1内を下向きに摺動変位するときに、ボトム側油室Bからピストン2の各油路2A、環状凹部2Cを介してロッド側油室Aに向け流通する圧油に抵抗力を与え、予め決められた特性で縮み側の減衰力を発生するものである。
ピストン2の上面(環状凹部2C)と縮み側減衰力発生部33の前記ディスクバルブとの間には、ピストン2の油路2A(環状凹部2C内)をピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス9に連通させる他の油通路34が設けられている。この油通路34は、スペーサ20の通路溝20A、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス8、シャッタ14の油溝14Aおよびオリフィス9と共に後述の第4通路38(例えば、図8中に一点鎖線で示す矢示E3方向に沿った通路または図9中に一点鎖線で示す矢示D3方向に沿った通路)を構成している。
ここで、本実施形態の構成要件である第1~第4通路35~38について説明する。
第1通路35は、ピストン2の一方向への移動によりシリンダ1内の2つの室(ロッド側油室Aとボトム側油室B)のうちいずれか一方の室から他方の室に向けて作動液が流れる通路であり、例えばピストン2の油路2B等を含んで構成される。第1通路35に設けられる主減衰バルブは、ピストン2の移動により生じる前記作動液の流れを規制して減衰力を発生させるバルブであり、例えば伸び側減衰力発生部21(減衰力制御弁25)のメインディスク25Aを含んで構成される。
第1通路35と並列に設けられる第2通路36は、例えば前述した油通路30、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10およびシャッタ14の油溝14B等を含んで構成され、このうちオリフィス10は、第2通路36の途中に位置する第1オリフィスS1(図7参照)を構成している。背圧室26は、第1オリフィスS1(オリフィス10)の下流側の圧力(即ち、第2通路36の圧力)が、シャッタ14の油溝14B、オリフィス11および背圧導入路31を介して導かれ、前記主減衰バルブ(減衰力制御弁25)を閉弁方向に付勢するパイロット圧が発生する室である。
また、第3通路37は、例えばシャッタ14の油溝14B、オリフィス12および導油路32等により構成されている。第3通路37の一側(油溝14B)は、前記第2通路36の第1オリフィスS1(オリフィス10)の下流側に接続され、他側(導油路32)は周波数感応の圧力室であるダンパ上室B1に接続されている。前記圧力室に移動可能に設けられた移動部材(即ち、フリーバルブ27のディスク弁27A)は、例えばピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数に応じてダンパ上室B1(圧力室)の容積を変更可能な部材である。
第4通路38は、前記第1通路35(油路2B)と並列に設けられた油路2A、油通路34、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス9、シャッタ14の油溝14A、オリフィス8およびスペーサ20の通路溝20Aを含んで構成されている。第4通路38の通路溝20Aは、前記主減衰バルブの上流側(ピストン2の外側)で前記他方の室(ロッド側油室Aまたはボトム側油室B)に接続されており、第4通路38の途中には、第2オリフィスC2(図7参照)を構成するオリフィス8が設けられている。
前記第1オリフィスS1(図7参照)を構成するオリフィス10と前記第2オリフィスC2(図7参照)を構成するオリフィス8とは、ピストンロッド3(段付ロッド5)の小径筒部5D内に配置される稼働部材(即ち、シャッタ14)により通路面積が可変になっている。即ち、オリフィス8は、シャッタ14の油溝14Aを油孔8A,8B(図5参照)のいずれに連通させるかにより、その通路面積が可変に設定される。また、オリフィス10は、シャッタ14の油溝14Bを油孔10A,10B(図6参照)のいずれに連通させるかにより、その通路面積が可変に設定される。
オリフィス10の油孔10A,10Bは、周波数感応バルブとして作動するフリーバルブ27のカットオフ周波数fc1、fc2(図11参照)を2段階で切替えるため、予め定められたオリフィス面積に異なる孔径をもって形成されている。オリフィス10の油孔10Aは、図6に示す如く油孔10Bよりも小径に形成されている。シャッタ14の油溝14Bを油孔10Aの位置に回動したときに、周波数感応部(フリーバルブ27)は、後述の如く低周波寄りのカットオフ周波数fc1に切替えられる。一方、シャッタ14の油溝14Bを油孔10Bの位置に回動したときには、高周波寄りのカットオフ周波数fc2に切替えられる。
本実施形態による油圧緩衝器100は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
油圧緩衝器100を車両に実装するときには、ピストンロッド3の上端側が車両の車体側に取付けられ、シリンダ1の下端側は車輪側に取付けられる。車両の走行時には、路面の凹凸等により上,下方向の振動が発生すると、ピストンロッド3がシリンダ1から伸長、縮小するように変位し、伸び側減衰力発生部21と縮み側減衰力発生部33等により減衰力を発生することができ、車両の振動を緩衝することができる。
即ち、ピストンロッド3の伸び行程では、図8中に白抜き矢印で示すように、ピストンロッド3がシリンダ1内を上向きに移動し、ロッド側油室A内がボトム側油室Bよりも高圧となる。これにより、ロッド側油室A内の圧油は、図8中に実線で示す矢示E1方向へとピストン2の油路2Bから環状凹部2E内に流入する。この流入油は、その一部が図8中に点線で示す矢示E2方向へと、ピストン2の環状凹部2Eから油通路30、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス10を介してシャッタ14の油溝14Bに流入する。シャッタ14の油溝14Bに流入した圧油(作動液)は、小径筒部5Dのオリフィス11から背圧導入路31を介して背圧室26へと導入され、さらに、小径筒部5Dのオリフィス12、第2弁支持部材23側の導油路32を介してダンパ上室B1にも導かれる。
また、図8中に一点鎖線で示す矢示E3方向において、ロッド側油室Aからスペーサ20の通路溝20A内へと流入した圧油は、小径筒部5Dのオリフィス8,9、シャッタ14の油溝14Aおよび油通路34(即ち、第4通路38)を介してピストン2の油路2Aからボトム側油室Bに流出する。このように第4通路38(即ち、油路2B等の第1通路35と並列に配置された通路)を流れる圧油は、シャッタ14の回動操作でオリフィス8の通路面積を変えることにより、発生減衰力がソフトとハードとの間で2段階に切替えられる。
即ち、図5に示すようにシャッタ14は、油溝14Aをオリフィス8の油孔8Aと対向する位置に回動したときに発生減衰力がソフトな特性となって、図10中に示す伸び側の特性線39の如く、減衰力モードはコンフォートモードに設定される。一方、シャッタ14を90度程度回動して、油溝14Aがオリフィス8の油孔8Bと対向する位置となったときには、小径の油孔8Bにより発生減衰力がハードな特性となって、図11の特性線41の如く減衰力モードはスポーツモードに設定される。
伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25においては、ピストンロッド3の伸び行程でロッド側油室Aからの圧油がピストン2の油路2B、環状凹部2E、油通路30、オリフィス10、シャッタ14の油溝14B、オリフィス11および背圧導入路31等を介して、図8中に点線で示す矢示E2方向へと背圧室26内に導入されるとき、ロッド側油室A(環状凹部2E)と背圧室26との間に圧力差が発生する。そして、この圧力差が予め決められた開弁設定圧以上に大きくなったときに、減衰力制御弁25のメインディスク25Aは環状弁座2Fから離座し、環状凹部2Eからボトム側油室Bへと圧油は矢示E1方向に流れて所定の伸び側減衰力を発生する。
ここで、伸び側減衰力発生部21の第2弁支持部材23には、ピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数に応じてダンパ上室B1(即ち、背圧室26)の内圧を調整する周波数感応バルブとしてのフリーバルブ27が設けられている。即ち、ピストンロッド3の伸び行程では、車両の振動に応じてフリーバルブ27が変位すると、背圧室26内の圧油が第3通路37を介して矢示E2方向へとダンパ上室B1内に向けて流通する。このため、背圧室26内の圧力はフリーバルブ27の変位によって低下し、これに伴って減衰力制御弁25の開弁設定圧が下げられる。
この場合、第2通路36の途中でシャッタ14により通路面積が可変に設定されるオリフィス10(図7に示す第1オリフィスS1)は、図6に示すようにシャッタ14の油溝14Bがオリフィス10の油孔10Aと対向する位置に回動されているときに、第2通路36の通路面積を小さくする。これによりフリーバルブ27は、周波数応答のカットオフ周波数fc1が低周波寄りに下げられるように、第2通路36内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が調整される。
しかも、このときにシャッタ14は、図5に示す如く油溝14Aがオリフィス8の油孔8Aと対向する位置に回動され、発生減衰力がソフトとなって、図11の特性線39の如く減衰力モードはコンフォートモードに設定されている。このため、車両の振動周波数に対する減衰力モードは、図11に示す特性線43のようにコンフォートモードに設定される。
即ち、伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25は、ピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数が図11に示す特性線43のように、カットオフ周波数fc1よりも低い低周波のときには、フリーバルブ27により背圧室26内の圧力が下げられることはなく、減衰力制御弁25の開弁設定圧は相対的に高い圧力に保たれる。しかし、前記振動周波数がカットオフ周波数fc1よりも大きくなる高周波時(例えば、悪路走行時)には、フリーバルブ27により背圧室26内の圧力が下げられ、減衰力制御弁25の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性はソフトな状態に切替わる。
次に、シャッタ14を回動してスポーツモード(図10に示す特性線41)を選択するときには、シャッタ14の油溝14Aがオリフィス8の油孔8Bと対向する位置となり、小径の油孔8Bにより発生減衰力がハードとなって、減衰力モードはスポーツモードに設定される。しかも、このときにはシャッタ14の油溝14Bがオリフィス10の油孔10B(図6参照)と対向する位置となっているので、第2通路36の通路面積を大きくすることができる。これによりフリーバルブ27は、周波数応答のカットオフ周波数fc2(図11参照)が高周波寄りになるように変更され、第2通路36内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が調整される。
このため、伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25は、ピストンロッド3および/またはシリンダ1の振動周波数が図11に示す特性線44のように、カットオフ周波数fc2よりも低い低周波のときには、フリーバルブ27により背圧室26内の圧力が下げられることはなく、減衰力制御弁25の開弁設定圧は相対的に高い圧力に保たれる。しかし、前記振動周波数がカットオフ周波数fc2よりも大きくなる高周波時(例えば、悪路走行時)には、フリーバルブ27によって背圧室26内の圧力が下げられ、減衰力制御弁25の開弁設定圧が下げられるので、発生減衰力の特性は特性線44のようにソフトな状態に切替わる。
一方、ピストンロッド3の縮み行程では、図9中に白抜き矢印で示すように、ピストンロッド3がシリンダ1内を下向きに移動(シリンダ1内へと進入)し、ボトム側油室B内がロッド側油室Aよりも高圧になる。このため、ボトム側油室B内の圧油は、図9中に実線で示す矢示D1方向へとピストン2の油路2Aから環状凹部2C内に流入し、この流入油は、縮み側減衰力発生部33により所定の減衰力を発生させつつ、ロッド側油室Aへと流れる。
このとき、ピストン2の油路2Aから環状凹部2C内に流入する圧油は、その一部が図9中に一点鎖線で示す矢示D3方向へと、油通路34、小径筒部5Dのオリフィス9、シャッタ14の油溝14Aおよびオリフィス8を介してスペーサ20の通路溝20A(即ち、第4通路38)からロッド側油室Aに流出する。このように第4通路38(即ち、第1通路35と並列に配置された通路)を流れる圧油は、シャッタ14の回動操作でオリフィス8の通路面積を変えることにより、発生減衰力がソフトとハードとの間で2段階に切替えられる。
即ち、図5に示すようにシャッタ14は、油溝14Aをオリフィス8の油孔8Aと対向する位置に回動したときに発生減衰力がソフトとなって、図10中に示す縮み側の特性線40の如く減衰力モードはコンフォートモードに設定される。一方、シャッタ14を90度程度回動して、油溝14Aがオリフィス8の油孔8Bと対向する位置となったときには、小径の油孔8Bにより発生減衰力がハードとなって、図10中に示す縮み側の特性線42の如く減衰力モードはスポーツモードに設定される。
また、ピストンロッド3の縮み行程では、ボトム側油室B内の圧油は、図9中に点線で示す矢示D2方向に流れるようになり、ダンパ下室B2がダンパ上室B1よりも相対的に高圧となるので、フリーバルブ27は、逆止弁体としてのディスク弁27Aが弁座ディスク28の外周側から離座するように開弁する。これによって、ボトム側油室B内の圧油(作動液)は、第3通路37内を矢示D2方向に流れる。即ち、このときの圧油は、ダンパ下室B2からダンパ上室B1、導油路32、ピストンロッド3(小径筒部5D)のオリフィス12、シャッタ14の油溝14B、オリフィス10および油通路30等を介してピストン2の環状凹部2E、油路2Bからロッド側油室Aに向けて矢示D2方向へと流通する。
この場合、第2通路36の途中でシャッタ14により通路面積が可変に設定されるオリフィス10(図7に示す第1オリフィスS1)は、図6に示す如く、油溝14Bがオリフィス10の油孔10Aと対向する位置となるようにシャッタ14が回動されているときに、第2通路36の通路面積を油孔10Aの孔径により小さくすることができる。これにより、第2通路36内を流通する圧油は油孔10Aの孔径により絞り抵抗(流路抵抗)が調整される。
また、図5に示す油溝14Aがオリフィス8の油孔8Aと対向する位置となるようにシャッタ14を回動したときには、第2通路36の通路面積を油孔10BAの孔径により大きくすることができる。これにより、第2通路36内を流通する圧油は油孔10Bの孔径により絞り抵抗(流路抵抗)が調整される。なお、ピストンロッド3の縮み行程では、逆止弁体としてのディスク弁27Aが弁座ディスク28の外周側から離座するように開弁するので、ボトム側油室B内の圧油(作動液)は、ディスク弁27Aと弁座ディスク28との間を矢示D2方向に流通するときに流量が絞られる。
この結果、ピストンロッド3の縮み行程では、減衰力モードをコンフォートモード(図10の特性線40)に設定するか、スポーツモード(図10の特性線42)に設定するかは、第4通路38側の通路面積(即ち、シャッタ14の回動操作でオリフィス8の通路面積を変えること)により実質的に決められ、発生減衰力がソフトとハードとの間で2段階に切替えられる。
かくして、本実施形態による油圧緩衝器100は、作動流体(圧油)が封入されたシリンダ1と、該シリンダ1内に移動可能に嵌装され該シリンダ1内に2つの室(ロッド側油室Aとボトム側油室Bと)を画成するピストン2と、一端側が該ピストン2に固着され他端側がシリンダ1の外部に突出したピストンロッド3と、ピストン2の一方向への移動によりシリンダ1内の2つの室(ロッド側油室Aとボトム側油室B)のうちいずれか一方の室から他方の室に向けて圧油が流れる第1通路35と、第1通路35に設けられピストン2の移動により生じる圧油の流れを規制して減衰力を発生させる主減衰バルブ(例えば、伸び側減衰力発生部21の減衰力制御弁25)と、第1通路35と並列に設けられ第1オリフィスS1(図7参照)としてのオリフィス10を有する第2通路36と、前記第1オリフィスS1の下流側の圧力が導かれ前記主減衰バルブを閉弁方向に付勢する背圧室26と、第2通路36の前記第1オリフィスS1の下流側に一側が接続され他側が周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)に接続される第3通路37と、前記圧力室に移動可能に設けられ、該圧力室の容積を変更可能な移動部材(即ち、フリーバルブ27のディスク弁27A)と、前記第1通路35と並列に設けられ、前記主減衰バルブの上流側(ピストン2の外側)で前記他方の室に接続され、第2オリフィスC2(図7参照)としてのオリフィス8を有する第4通路38と、を備えている。
そして、前記第1オリフィスS1および前記第2オリフィスC2は、ピストンロッド3(段付ロッド5の小径筒部5D)内に配置される稼働部材(シャッタ14)により通路面積が可変になる構成としている。即ち、第2オリフィスC2を構成するオリフィス8は、シャッタ14の油溝14Aをオリフィス8の油孔8A,8B(図5参照)のいずれに連通させるかにより、その通路面積が可変に設定される。また、第1オリフィスS1を構成するオリフィス10は、シャッタ14の油溝14Bをオリフィス10の油孔10A,10B(図6参照)のいずれに連通させるかにより、その通路面積が可変に設定される。
この場合、シャッタ14を図5、図6に示す第1の回動位置としたときには、シャッタ14の油溝14Aによりオリフィス8の油孔8Aが選択(開口)され、油溝14Bによりオリフィス10の油孔10Aが選択(開口)される。次に、シャッタ14を図5、図6に示す第1の回動位置から、例えば90度分だけ回転し第2の回動位置としたときには、シャッタ14の油溝14Aによりオリフィス8の油孔8Bが選択(開口)され、油溝14Bによりオリフィス10の油孔10Bが選択(開口)される。
そして、オリフィス8の油孔8A,8Bとオリフィス10の油孔10A,10Bとは、孔径の大小関係が互いに逆となるように、油孔8Aは油孔8Bよりも大径に形成され、油孔10Aは油孔10Bよりも小径に形成されている。換言すると、オリフィス8の油孔8A,8Bとオリフィス10の油孔10A,10Bとは、シャッタ14により一方で孔径の大きい方を開口(選択)したときに、他方では孔径の小さい方が開口(選択)される。逆に、シャッタ14により一方で孔径の小さい方を開口(選択)したときには、他方では孔径の大きい方が開口(選択)される。
即ち、シャッタ14を第1の回動位置としたときに、オリフィス8は通路面積が比較的大きい油孔8Aが選択され、オリフィス10は通路面積が比較的小さい油孔10Aが選択される。そして、シャッタ14を第2の回動位置に回動すると、オリフィス8は通路面積が比較的小さい油孔8Bが選択され、オリフィス10は通路面積が比較的大きい油孔10Bが選択される。
ここで、第2オリフィスC2を構成するオリフィス8は、伸び行程での減衰力モードをソフトなコンフォートモード(図10の特性線39)とハードなスポーツモード(図10の特性線41)とに切替えるための可変オリフィスであり、第1オリフィスS1を構成するオリフィス10は、周波数可変(低周波ハード、高周波ソフト)のカットオフ周波数をコンフォートモード(図11の特性線43)とスポーツモード(図11の特性線44)とで互いに異なるカットオフ周波数fc1,fc2(fc1<fc2)に可変に切替えるためのオリフィスである。
これにより、シャッタ14を第1の回動位置として油溝14Aでオリフィス8の油孔8Aを選択し、減衰力モードをコンフォートモードに設定したときには、油溝14Bでオリフィス10の小径な油孔10Aを選択することによって、コンフォートモードでのカットオフ周波数fc1を低周波寄りに変更できる。一方、シャッタ14を第2の回動位置に回動して油溝14Aでオリフィス8の小径な油孔8Bを選択し、減衰力モードをスポーツモードに設定したときには、油溝14Bでオリフィス10の比較的大径な油孔10Bを選択することにより、スポーツモードでのカットオフ周波数fc2を高周波寄りに変更することができる。
従って、ロータリアクチュエータ16によりコントロールロッド15を介して回動される1つのシャッタ14を用いて、減衰力モード切替用のオリフィス8とカットオフ周波数fc1,fc2の切替用のオリフィス10との2か所の通路面積を可変にすることにより、図10に示す伸び側の特性線39,41のように、コンフォートモードとスポーツモードとの減衰力モードの切替えと同時に、各減衰力モードの特性に合わせて、オリフィス10(第1オリフィスS1)によりカットオフ周波数fc1,fc2を適切な周波数に切替えることができる。
このため、ハンドリングが良いスポーツモードでも、周波数感応部(フリーバルブ27)側のカットオフ周波数fc2を高周波寄りに、適切な周波数に切替えることにより、安定した乗り心地と、遅れのない快適な操縦安定性を実現できる。また、ゆったりしたハンドリングのコンフォートモードでも、周波数感応部(フリーバルブ27)側のカットオフ周波数fc1を低周波寄りに、適切な周波数に切替えることによりフリーバルブ27を適度に周波数感応部として作動させ、ソフト感、つまり振動を吸収したやわらかい、上質な乗り心地が実現可能となる。
また、コンフォートモードとスポーツモードとの各減衰力モードで、周波数感応部のカットオフ周波数fc1,fc2を適切に切替えることができるので、性能面だけでなく、異音等の発生も抑えることができ、各モードで両立させた設定が可能となる。
これに対し、従来技術の緩衝器では、減衰力モードをハード固定にすると、車両の乗り心地が犠牲になり易く、操縦安定性と乗り心地の両立ができておらず、ハード固定(スポーツモード)では乗り心地の向上を諦めていた。しかし、本実施形態にあっては、前述の如く、高いレベルで操縦安定性と乗り心地の両立が実現可能となる。
また、本実施形態では、1つのシャッタ14を回動するだけで、オリフィス8による減衰力モードの切替えと、オリフィス10によるカットオフ周波数fc1,fc2の切替えとを、2か所の通路面積を可変にすることによって、第2オリフィスC2を構成するオリフィス8と第1オリフィスS1を構成するオリフィス10との2か所において、同時に流路調整を行うことができる。そして、第1,第2オリフィスS1,C2の2か所で同時に切り替わるが、それぞれの通路(流路)面積は、独立に設定することができる。
しかも、本実施形態では、例えば比例ソレノイドを使った従来技術(セミアクティブダンパ)よりも、非常に廉価で、かつ操縦安定性と乗り心地の両立が可能な電制ダンパ(例えば、ロータリアクチュエータ16を用いた油圧緩衝器100)を実現することができる。また、1つのシャッタ14で、減衰力(ハード/ソフト)切替えと、周波数感応部(フリーバルブ27)でのカットオフ周波数fc1,fc2の切替えとの両方を調整することができる。さらに、車両の高周波振動を機械的に緩和または遮断できる周波数感応部(フリーバルブ27)の効果により、減衰力ハード固定(スポーツモード)でも、従来の汎用緩衝器では実現できないようなレベルまで乗り心地を向上させ、操縦安定性も確保することができる。
次に、図12ないし図15は第2の実施形態を示し、本実施形態の特徴は、通路面積可変機構のシャッタをリニアアクチュエータで稼働する構成したことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
第2の実施形態では、前記第1の実施形態で述べたオリフィス8~12に替えて、複数のオリフィス51~56がピストンロッド3(段付ロッド5)の小径筒部5Dに形成されている。図12、図13に示すように、オリフィス51,52,53,54,55,56は、段付ロッド5の小径筒部5Dにおいてシャッタ装入穴5Aから径方向外向きに延び、それぞれ軸方向と周方向とに離間して設けられている。
これらのオリフィス51~56は、例えば小径筒部5Dの径方向で互いに対向した複数の油孔によりそれぞれ構成されている。このうち最も上側に位置するオリフィス51は、スペーサ20の通路溝20Aを介してロッド側油室Aに連通している。この場合、オリフィス51は、後述のシャッタ58により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。
オリフィス51の下側に位置するオリフィス52は、油通路34を介してピストン2の環状凹部2Cおよび油路2Aと連通する複数の油孔により構成されている。この場合、下側のオリフィス52は、後述するシャッタ58の油溝58Aを介して上側のオリフィス51に連通または遮断される。このオリフィス52は、第4通路38の途中に位置し、シャッタ58により通路面積が可変に設定される第2オリフィスC2(図7参照)を構成している。
ここで、オリフィス52は、シャッタ58により油溝58Aと連通するか、遮断されるかにより前述した第2オリフィスC2の如く可変オリフィスとして作動される。これによって、第4通路38内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が可変に調整され、減衰力モードが図12に示すようにハードな特性であるスポーツモード(例えば、図10に示した特性線41,42)と、図13に示すようにソフトな特性であるコンフォートモード(例えば、図10に示した特性線39,40)とのいずれかに切替えられる。
次に、オリフィス52の下側に位置するオリフィス53,54は、油通路30を介してピストン2の環状凹部2Eおよび油路2Bと連通する複数の油孔により構成されている。そして、オリフィス53,54は、第2通路36の途中に位置し、後述のシャッタ58により通路面積が可変に設定される第1オリフィスS1(図7参照)を構成している。オリフィス53,54は、シャッタ58の軸方向変位により、前述した第1オリフィスS1の如く可変オリフィスとして作動される。これによって、第2通路36内を流通する圧油は絞り抵抗(流路抵抗)が可変に調整され、周波数応答のカットオフ周波数fc1,fc2が図11に例示したスポーツモード(特性線44)とコンフォートモード(特性線43)の如く変更される。
図12は、減衰力モードがスポーツモードにおけるシャッタ58の位置を示しており、このときに、オリフィス53,54は、後述するシャッタ58の油溝58Bに対して共に連通した状態となる。一方、図13は、減衰力モードがコンフォートモードにおけるシャッタ58の位置を示しており、このときに、シャッタ58の油溝58Bはオリフィス53に対して遮断され、オリフィス54だけが油溝58Bに連通した状態となる。このように、シャッタ58の油溝58Bがオリフィス53,54の両方または一方に連通することによって、周波数感応部(後述のフリーバルブ27)によるカットオフ周波数fc1,fc2(図11参照)が切替えられるものである。
オリフィス53,54の下側に位置するオリフィス55は、伸び側減衰力発生部21の背圧室26に背圧導入路31を介して連通する複数の油孔により構成されている。オリフィス55の各油孔は、後述のシャッタ58により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。そして、下側のオリフィス55は、シャッタ58の油溝58Bを介して少なくとも上側のオリフィス54と下側のオリフィス56とに連通している。
さらに、オリフィス51~56のうち最も下側(オリフィス55の下側)に位置するオリフィス56は、第2弁支持部材23のダンパ上室B1に導油路32を介して連通する複数の油孔により構成されている。そして、このオリフィス56は、第3通路37の途中に位置し、シャッタ58の油溝58Bを周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)に連通させる第3オリフィスS3(図7参照)を構成している。オリフィス56の各油孔は、シャッタ58により通路面積が変えられることはなく、通路面積がほぼ一定に保持される油孔である。そして、最も下側に位置するオリフィス56は、シャッタ58の油溝58Bを介して少なくとも上側のオリフィス54,55に連通している。なお、場合によってはシャッタ58の軸方向変位により、オリフィス56を油溝58Bに対して遮断することもでき、このときには周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)をシャッタ58により遮断して周波数感応の動作を停止させることができる。
次に、第2の実施形態で採用した通路面積可変機構57について説明する。この通路面積可変機構57は、シャッタ58、コントロールロッド59およびリニアアクチュエータ60を含んで構成されている。通路面積可変機構57のリニアアクチュエータ60は、例えば筒状ロッド4の突出端側に設けられたリニアモータまたはソレノイド等の電磁アクチュエータにより構成されている。リニアアクチュエータ60は、その出力軸(図示せず)がコントロールロッド59に連結され、コントロールロッド59を介してシャッタ58を直動、即ち軸方向に駆動(稼働)操作するものである。
なお、本実施形態では、リニアアクチュエータ60によりコントロールロッド59を介してシャッタ58を軸方向に移動(直動)させる構成としたが、手動でシャッタ58を軸方向に移動させる構成とした通路面積可変機構であってもよい。また、リニアアクチュエータ60は、必ずしもピストンロッド3(筒状ロッド4)の突出端側に設ける必要はなく、例えば筒状ロッド4の途中部位(例えば、長さ方向中間部)に内蔵するかたちで設けることも可能である。
シャッタ58は、図3に示す如く中実な棒状体として形成され、段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内で軸方向に変位可能に挿嵌して設けられる。シャッタ58は、通路面積可変機構57の稼働部材を構成し、リニアアクチュエータ60によりシャッタ装入穴5A内で直動(稼働)されるものである。稼働部材としてのシャッタ58は、コントロールロッド59の下端側に一体で移動するように固定して設けられ、段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内でコントロールロッド59と一緒に移動される。コントロールロッド59は、筒状ロッド4のロッド挿入穴4A内に挿通して設けられ、その上端側がリニアアクチュエータ60の出力軸に連結されている。
図14、図15に示すように、シャッタ58の外周面には、軸方向に延びる環状の凹溝として形成された上側(他側)の油溝58Aと、該油溝58Aから軸方向に離間し同じく軸方向に延びる環状の凹溝として形成された下側(一側)の油溝58Bとが設けられている。シャッタ58の油溝58Aは、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス51,52と径方向で対向する位置に配置され、図13または図12に示すように、シャッタ58の移動位置に応じてオリフィス51をオリフィス52に対して連通または遮断させる。
シャッタ58の油溝58Bは、シャッタ58の軸方向で油溝58Aから所定寸法だけ離隔した位置に形成され、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス53,54,55,56と径方向で対向する位置に配置されている。そして、油溝58Bは、シャッタ58の移動位置に応じてオリフィス53,54の両方または一方をオリフィス55,56に対して連通させる。
オリフィス53,54は、周波数感応バルブとして作動するフリーバルブ27のカットオフ周波数fc1、fc2(図11参照)を2段階で切替えるため、予め定められた軸方向間隔で段付ロッド5(小径筒部5D)に形成されている。図13に示す如く、シャッタ58をコンフォートモードの位置に移動させ、オリフィス54だけを油溝58Bに連通させたときには、周波数感応部(フリーバルブ27)が低周波寄りのカットオフ周波数fc1に切替えられる。一方、図12に示す如く、シャッタ58をスポーツモードの位置に移動させ、シャッタ58の油溝58Bをオリフィス53,54の両方に連通したときには、周波数感応部(フリーバルブ27)が高周波寄りのカットオフ周波数fc2に切替えられる。
段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内には、シャッタ58の下側(軸方向の一側)に位置して筒体61が設けられ、シャッタ58の上側(軸方向の他側)には合成樹脂製の筒体62が設けられている。筒体61,62は、シャッタ58がシャッタ装入穴5Aの中で軸方向(上,下方向)に移動するストローク範囲を規定する部材を構成している。筒体61の内周側は、ボトム側油室Bに連通する内孔61Aとなっており、シャッタ58の下端側端面は、ボトム側油室B内の圧力を内孔61Aを介して受圧している。合成樹脂製の筒体62は、例えばロッド側油室A内の圧油が段付ロッド5のシャッタ装入穴5A内に流入または漏出するのを防ぐシール部材であり、段付ロッド5内でコントロールロッド59を軸方向に移動可能に支持するブッシュでもある。
かくして、このように構成される第2の実施形態でも、通路面積可変機構57のリニアアクチュエータ60でシャッタ58を軸方向に移動することにより、図12に示すスポーツモードでは、オリフィス51の下側に位置するオリフィス52をシャッタ58の油溝58Aから遮断するように塞ぎ、例えばオリフィス51をピストン2の油路2A(第4通路38)から遮断する。これにより、減衰力モードをハードな特性(スポーツモード)とすることができる。このとき、オリフィス53,54はシャッタ58の油溝58Bに対して共に連通した状態となるので、第2通路36の通路面積を大きくすることができ、これによりフリーバルブ27は、周波数応答のカットオフ周波数fc2(図11参照)が高周波寄りになるように変更できる。
一方、図13に示すコンフォートモードの位置に、シャッタ58を移動させたときには、オリフィス51,52をシャッタ58により油溝58Aにより連通させ、例えばスペーサ20の通路溝20Aとピストン2の油路2Aとを連通できるので、第4通路38の通路面積を大きくして減衰力モードをソフトな特性(コンフォートモード)とすることができる。このとき、オリフィス53はシャッタ58の油溝58Bから遮断され、オリフィス54のみが油溝58Bに連通した状態となるので、第2通路36の通路面積を小さくすることができ、これによりフリーバルブ27は、周波数応答のカットオフ周波数fc1(図11参照)が低周波寄りになるように変更できる。
なお、前記第2の実施形態では、図12に示すスポーツモードにおいて、段付ロッド5(小径筒部5D)のオリフィス52を油溝58Aから遮断するようにシャッタ58により塞ぐ場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばオリフィス52をシャッタ58により部分的に塞いで、第4通路38の通路面積を可変にする構成(即ち、第2オリフィスC2の如く可変オリフィスとして作動される構成)としてもよい。
また、前記第1の実施形態では、例えば図5に示すように、オリフィス8の油孔8A,8Bの孔径を変えることにより、第4通路38の通路面積を可変にする場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図16に示す変形例のように、段付ロッド5(小径筒部5D)にオリフィス8に替えて、複数の油孔71A,71Bからなるオリフィス71を設け、シャッタ14の油溝14Aにより油孔71A,71Bのいずれかを選択的に開口させることにより、第4通路38の通路面積を可変にする構成としてもよい。
また、図6に示したオリフィス10に替えて、図17に示す変形例のように、段付ロッド5(小径筒部5D)に複数の油孔72A,72Bからなるオリフィス72を設け、シャッタ14の油溝14Bにより油孔72A,72Bのいずれかを選択的に開口させることにより、第2通路36の通路面積を可変にする構成としてもよい。図16および図17に示す変形例は、シャッタで開口(選択)される油孔の個数によりオリフィスの通路面積を可変にするものである。
また、前記第1の実施形態では、段付ロッド5(小径筒部5D)に設けた複数のオリフィス8~12のうち最も下側に位置するオリフィス12を、シャッタ14の油溝14Bと周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)との間で、両者を連通させる第3オリフィスS3(図7参照)として構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばシャッタ14の回動位置により、場合によってはオリフィス12を油溝14Bに対し遮断することも可能である。この場合には、周波数感応の圧力室(ダンパ上室B1)をシャッタ14により遮断して周波数感応の動作を停止させることができる。この点は、第2の実施形態についても同様である。換言すると、前記圧力室の上流側に位置して第3通路37に設けられる第3オリフィスS3は、その通路面積がシャッタを介して外部から調整可能となるように構成してもよい。
次に、上記の実施形態に含まれる減衰力調整式緩衝器として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。減衰力調整式緩衝器の第1の態様としては、作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に移動可能に嵌装され該シリンダ内に2つの室を画成するピストンと、一端側が該ピストンに固着され、他端側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、前記ピストンの一方向への移動により前記シリンダ内の2つの室のうちいずれか一方の室から他方の室に向けて作動流体が流れる第1通路と、前記第1通路に設けられ、前記ピストンの移動により生じる前記作動流体の流れを規制して減衰力を発生させる主減衰バルブと、前記第1通路と並列に設けられ、第1オリフィスを有する第2通路と、前記第1オリフィスの下流側の圧力が導かれ前記主減衰バルブを閉弁方向に付勢する背圧室と、前記第2通路の前記第1オリフィスの下流側に一側が接続され、他側が圧力室に接続される第3通路と、前記圧力室に移動可能に設けられ、該圧力室の容積を変更可能な移動部材と、前記第1通路と並列に設けられ、前記主減衰バルブの上流側で前記他方の室に接続され、第2オリフィスを有する第4通路と、を備え、前記第1オリフィスおよび前記第2オリフィスは、前記ピストンロッド内に配置される稼働部材により通路面積が可変になることを特徴としている。
また、減衰力調整式緩衝器の第2の態様としては、前記第1の態様において、前記第3通路には前記圧力室の上流側に位置して第3オリフィスが設けられ、該第3オリフィスは通路面積が外部から調整可能に構成されていることを特徴としている。一方、前記第1オリフィスと前記第2オリフィスとは、前記稼働部材により一方で孔径の大きい油孔を開口(選択)させ大なる通路面積としたときに、他方では孔径の小さい油孔を開口(選択)させ小なる通路面積とする。逆に、前記稼働部材により一方で孔径の小さい油孔を開口(選択)したときには、他方では孔径の大きい油孔を開口(選択)する構成としている。