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JP7260731B2 - 高清浄鋼とその精錬方法 - Google Patents

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Description

本発明は造船材、ラインパイプ、厚鋼板、油井管等に用いられる高清浄鋼板用鋼ならびにその溶製方法に関し、詳しくは、鋼中非金属介在物組成を特定の範囲内に精密に制御することにより複数種類の有害介在物を同時に低減することで高い清浄性を有した鋼とその製造方法に関する。
耐食性向上、靭性向上あるいは加工性向上などを目的に、従来から鋼中の非金属介在物(以下、介在物)の低減や無害化を図る技術が多数開発されてきた。特に、介在物の低減には処理時間延長など工業的制約が生じやすいことから、介在物を無害化する形態制御について多くの技術が開発されている。例えば、Caを溶鋼に添加することで介在物をCaO含有酸硫化物とすることで介在物の球状化やMnS抑制する技術は良く知られている。
さらに、近年ではLa,Ce,NdといったランタノイドあるいはCaとランタノイドを併用することで、介在物を制御し、鋳造性向上と鋼材性能向上を両立する技術も多数開発されている。
例えば、特許文献1ではランタノイドを0.001~0.05%を含有させることで表面清浄性と耐リジング性を向上させる技術が、特許文献2ではランタノイドを0.0001~0.03%含有したステンレス鋼を溶製する際に鋼中Al濃度とランタノイド濃度を適正条件に制御することで鋳造性を改善する技術が示されている。
また、特許文献3では鋼中ランタノイド濃度を0.001~0.0044%とし、かつ、介在物中ランタノイド酸化物濃度を適正範囲に制御することで鋳造性と表面清浄および内質に優れた鋳片を得る技術が、特許文献4では介在物中のCaOとランタノイド酸化物との濃度を適正に制御することで表面清浄を改善させる技術が示されている。
さらに、特許文献5では介在物中のCa酸化物やランタノイド酸化物に加えてTi酸化物の濃度を制御することでより優れた鋼材を製造する技術が示されている。
以上の様にランタノイドもしくはランタノイドとCaを活用する技術が多数開発されてきた。
ところで、これまで鋼材に要求される性能は例えば耐食性や溶接性など、単一の特性に対する要求が多かったため、単一の特性を満足させるために限定された種類の介在物のみを制御すればよかった。例えば、耐水素誘起割れ性を向上させるには、割れ基点となるMnSを抑制するために溶鋼にCaを添加して介在物をMnSからCaSに変化させるなどの技術は良く知られている。
しかしながら、近年では鋼材に要求される性能は複数となり、例えば耐食性と低温靱性さらに溶接性等を同時に満足する事などが要求されることが一般的になりつつある。この様な要求に応えるには複数種類の介在物対策が必要であり、限定された介在物に対応することを目的とした従来の技術では十分に対応することができなかった。また、複数種類の介在物に対応するために複数種類の従来技術を適用する方法もあるが、処理時間の延長などの理由で工業的な生産は困難であった。
さらに、複数種類の介在物に同時に対応する方法として以下の方法も知られている。有害な介在物としてMnS、TiNなどのTi系炭窒化物、Caあるいはランタノイドなどの粗大な酸硫化物、粗大なアルミナクラスターが挙げられるが、これらの介在物を構成する軽元素としてS,O,Nが共通する。例えば、上記有害介在物を同時に抑制しようとすると構成元素であるS,O,Nを同時に低減すればよいことになるが、そのためには溶銑脱硫、溶鋼脱硫、溶鋼脱窒、溶鋼脱酸ならびに介在物除去処理のすべての処理を行う必要があり、さらに鋼材性能向上には各処理を徹底する必要がある。このため、精錬コスト、特に二次精錬コストが大幅に増加し、安価な製造が困難という課題があった。
加えて、介在物無害化ではランタノイドが有効であることは前述したとおりであるが、連続鋳造時のノズル閉塞という課題があったため、ノズル閉塞技術抑制方法も多数示されている。これらの技術により、ノズル閉塞は抑制されているものの、閉塞に至らないまでも介在物のノズル内付着までを抑制することができなかった。ノズル閉塞は鋳造中止となり、ノズル内付着では鋳造は可能であるためこれまで大きな課題とされてこなかったが、近年の介在物に対する要求では重要な課題となりつつある。ノズル内に介在物が付着するとノズル断面の均等性が失われるため、結果的に連続鋳造鋳型内の溶鋼流動が不均質化する。流動が不均質化すると鋳型内での介在物浮上分離性悪化、介在物の凝集肥大化促進、鋳片特定位置への介在物集積、といった現象を誘発する。したがって、ノズル閉塞はもちろんのこと、ノズル内付着までを抑制する必要性が高まっていた。
特開2001-279388号公報 特開2001-192723号公報 特開2006-97110号公報 特開2000-8138号公報 特開平11-343516号公報
本発明は、上記課題に鑑み、介在物中のCaとランタノイドの酸硫化物ならびにAl酸化物の濃度を特定の範囲に制御することで粗大介在物、MnS、Ti系炭窒化物を同時に大幅低減すると同時に連続鋳造時の鋳造安定性を格段に向上させた鋼を工業的に容易に製造することが可能である鋼とその溶製方法を提供することにある。
本発明者等は上記の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、介在物の組成範囲を所定の範囲に制御すると鋼の清浄性が向上することを見出した。
本発明は以上の知見に基づいてなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.002%以上0.400%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Si:0.001%以上1.000%以下、S:0.001%以上0.005%以下、Al:0.005%以上1.000%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、Ti:0.01%以上0.30%以下、ランタノイドのうちの1種又は2種以上を合計濃度が0.0003%以上0.0020%以下含有した鋼において、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼であって、ランタノイドの1種または2種以上からなる酸硫化物、Caの酸硫化物、Alの酸化物及びこれらを2種以上含む、3μm以上10μm以下の個々の非金属介在物の組成が、上記化合物の合計を100とした濃度換算でCaの酸硫化物濃度が質量%で30%以上90%以下かつランタノイドの酸硫化物とAlの酸化物の質量濃度比(ランタノイドの酸硫化物濃度)/(Alの酸化物濃度)が1.0以上2.4以下であり、前記組成を満足する非金属介在物の個数が全非金属介在物の個数の95%以上であることを特徴とする高清浄鋼。
(2)質量%で、C:0.002%以上0.400%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Si:0.001%以上1.000%以下、S: 0.001%以上0.005%以下、Al:0.005%以上1.000%以下、N:0.007%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、Ti:0.01%以上0.30%以下、ランタノイドのうちの1種又は2種以上を合計濃度が0.0003%以上0.0020%以下を含有し、かつ、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ランタノイドの1種または2種以上からなる酸硫化物、Caの酸硫化物、Alの酸化物及びこれらを2種以上含む、3μm以上10μm以下の個々の非金属介在物の組成が、上記化合物の合計を100とした濃度換算でCaの酸硫化物濃度が質量%で30%以上90%以下かつランタノイドの酸硫化物とAlの酸化物の質量濃度比(ランタノイドの酸硫化物濃度)/(Alの酸化物濃度)が1.0以上2.4以下であり、前記組成を満足する非金属介在物の個数が全非金属介在物の個数の95%以上である高清浄鋼を製造する際の精錬方法であって、精錬中に全Ca添加量の35%以上50%以下を添加し、その1分以上3分以下の後にランタノイドの酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上と残りのCa分をCaまたはCa合金として混合したフラックスを添加することを特徴とする前記高清浄鋼の精錬方法。
本発明により、高清浄高機能鋼を効率よく、しかも安定的に製造することができる。
介在物組成と介在物状態ならびにノズル付着との関係を示す図である。 先行Ca分量、添加間隔と介在物制御精度との関係を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の処理対象となる鉄以外の鋼成分を以下の理由により特定した。なお、本明細書において、鋼組成およびランタノイド濃度(詳細は後述。)における「%」は特にことわりがない場合は「質量%」を意味する。
C:Cは減圧下で脱酸元素として作用する他に、S,Nの活量に影響する。このため、Cが0.002%未満では低酸素化効果が不安定となり、0.400%を超えて高くなるとSの活量が大きく変化し、反応機構が変化してしまう。そこで、Cは0.002%以上0.400%以下とした。
Mn:Mnも脱酸元素であり、各種鋼材特性を改善することから、必須元素である。従って、0.1%未満では脱酸が不安定になり、2.0%を超えて高くなるとSの活量を低下させ、脱硫を困難とする。従って、Mn濃度は0.1%以上2.0%以下とした。
Si:SiもMn同様脱酸安定に欠くことのできない元素であるが、0.001%未満では脱酸が不安定となり、1.000%を超えて高くなると介在物中のSiO2濃度が高くなり、本発明が意図する介在物組成への制御が困難となる。よって、Siは1.000%以下とする。
Al:Alは最も強い脱酸力を有する元素であるため、低O、低Sかつ低Nを実現するためには必須である。この脱酸効果を得るには0.005%以上が必要である。一方、1.000%を超えて高くなると再び溶解酸素濃度が高くなって低Oを実現することが困難となるため、1.000%以下が必要である。
S:Sは除去対象元素であるが、0.005%を超えて高くなると、ランタノイド,Caなどの硫化物に加えMnSが多数生成し、介在物制御精度が低下する。一方、0.001%未満では脱硫剤使用量が大幅に増加するため、コストが増加する。そこで、本発明では0.001%以上0.005%以下の溶鋼を処理対象とした。
O:Oは除去対象元素であるが、Si,AlおよびMnが上記の濃度範囲にあると、O濃度が0.005%を超えて高い場合には、大量に非金属介在物(以下、「介在物」という。)が溶鋼中に存在することとなる。よって、O濃度は0.005%以下とした。
Ca:Caは脱酸や脱硫に有効な元素であると同時に介在物形態制御にも有効である。Ca濃度が0.0005%未満では脱酸が不足するため、脱酸に要するランタノイドが増加するためランタノイド添加量が増加しコストが増加してしまう。Ca濃度が0.0035%を超えて高くなるとCaS介在物の生成が活発となり、本発明の意図するランタノイド硫化物の生成を抑制する。よって、本発明ではCaは0.0005%以上0.0035%以下とした。
Ti:Tiは析出強化による強度向上や延性・加工性を向上させるに有効な元素である。これらの効果を得るには0.01%以上が必要である。一方、Tiは連続鋳造時のモールドパウダーと反応してモールドパウダーを変質させてしまうため、0.30%以下とした。
ランタノイド:これらランタノイドは本発明の目的とする清浄鋼を得るための介在物の構成元素であり、1種または2種以上を含有する。これらの濃度が合計で0.0003%未満では介在物中にランタノイド化合物を形成させることができない。一方、0.002%を超えて高くなるとSの活量を低減してしまい、Sと介在物との反応速度が低下することが予測される。よって、本発明ではランタノイドの1種または2種以上の合計濃度を0.0003%以上0.002%以下とした。なお、ランタノイド元素番号57~71の元素で、化学的特性が極めて近いことは良く知られているが、工業的に利用されているのは元素番号57~61であり、さらに安価かつ大量に使用できるのはLa,Ce,Ndであることから、これらの元素を使用することが望ましい。
なお、その他に強度や耐食性の確保を目的にCu、Ni、Nb、V、Cr、Moなどの成分を0.005%以上3%以下の範囲であれば必要に応じて含有しても本発明の効果に影響しない。
次に介在物組成範囲を限定した理由を説明する。
前述した鋼成分系において10μm以上の粗大な介在物を形成するのはアルミナ、CaSとCaOからなるCa系酸硫化物およびCeとCeSなどからなるランタノイド系酸硫化物の複合介在物とMnSとTiN、TiC、NbCなどからなるTiN系炭窒化物の3種類である。
次に介在物の生成機構から推定すると溶鋼段階から凝固初期の高温に置いて酸硫化物からなる複合介在物が生成し、その後凝固進行に伴って温度が低下するとMnSが、さらに温度が低下するとTiN系炭窒化物が生成する。つまり、MnSやTiN系炭窒化物の生成を抑止するには最初に生成する複合介在物の状態が重要である。
また、複合介在物中の硫化物生成によって鋼中S濃度が低下することでMnS生成が抑止され、複合介在物表面にTiN系炭窒化物が析出することでTiN系炭窒化物介在物生成が抑止されることから、複合介在物の組成が介在物全体の状態に強く影響する。
さらに、連続鋳造時のノズル内付着は複合介在物の付着と考えることができるので、付着の状態も複合介在物組成の影響が強い。
以上の考察から、 複合介在物組成とその他の介在物状態ならびにノズル内介在物付着の状態との関係を以下に述べる方法で鋭意調査した。
溶鋼300kgを高周波誘導真空溶解炉で溶解し、成分を前述した範囲に制御した。その後、溶鋼を浸漬ノズルを模擬したノズル(30mmφ×250mmL)を有した中間容器を介して鋳型内に鋳造した。得られた鋼塊からサンプルを切り出し、20×20mmの視野をSEM-EDSを用いて介在物を観察した。3μm以上の介在物を観察対象とし、10μmを超えて大きい介在物を粗大介在物とした。また、介在物は複数の元素から構成されているが、介在物組成をAl2、LAN、LANS、CaO、CaSの合計を100として算出し、Al2とLANのLANS合計とCaOとCaSの合計の3元系で整理した。なお、本調査ではランタノイドとして工業的に広く用いられている金属Ce、あるいは金属Laと金属Ceの混あるいは金属Laと金属Ndと金属Ceの混合物を用いた。LANはLa,Ce,Ndなどのランタノイド元素を示す。加えて、MnSとTi、Nb,C,Nなどを主成分とする炭窒化物介在物をTiNとして個数と大きさを計測した。ノズル付着性に関してはノズルを回収し、縦断面を観察してノズル内壁への介在物付着有無を観察した。
観察結果を図1に示す。図中に示す大きさが不満足とは複合介在物の大きさが10μmを超えて大きかった結果を示す。介在物組成によって鋼中の介在物状態が変化しており、粗大な介在物、TiN、MnSのすべてが存在せず、かつ、ノズル付着も示さなかったすべてを満足する介在物組成は〇で示す結果であった。なお、TiN炭窒化物、MnS、10μmを超えて大きい介在物については観察視野内で存在が確認できなかった場合を存在せずと判断し、ノズル付着についてはノズル内壁に付着物が確認された場合をノズル付着有と判断し図1で□で示した。なお、観察視野内にTiNが観察された場合はTiN不満足、MnSが確認された場合はMnS不満足と示した。また、金属Ce、あるいは金属Laと金属Ceの混あるいは金属Laと金属Ndと金属Ceの混合物といった添加物による効果への差異は認められなかった。
従って、ランタノイドの酸硫化物、Caの酸硫化物、Alの酸化物から構成される非金属介在物の組成がCaの酸硫化物濃度が質量%で30%以上90%以下かつランタノイドの酸硫化物とAlの酸化物の質量濃度比(ランタノイドの酸硫化物濃度)/(Alの酸化物濃度)が1.0以上2.4以下なる狭い組成範囲に介在物組成を制御することで従来困難であった複数の有害介在物を抑制し、かつ、鋳造不安定による性能劣化も同時に抑制できることを見出した。この組成を以下好適範囲と称する。
次に、この狭い好適範囲に介在物組成を制御する方法を検討した。本発明ではCaとランタノイドを併用するため、一般的な添加方法として金属もしくは合金のCaとランタノイドを同時添加、Ca添加後ランタノイド添加、ランタノイド添加後Ca添加の方法が知られている。
そこで、これらの方法を用いて好適範囲への制御精度を調査した。実験方法は前述の方法と同一であり、Caとランタノイドの添加方法としてCaSi合金とランタノイド(ミッシュメタル)との同時添加、CaSi合金添加2分後にランタノイド添加、そしてランタノイド添加2分後にCaSi合金添加の3種類とした。CaSi合金はCa純分34%である。CaSi合金添加量とランタノイド添加量を0.01~0.1Kg/溶鋼トンの範囲で各種変化させて介在物組成を調査し、Ca、Alとランタノイドの介在物制御精度の指標として精度=(図1の好適範囲に入る介在物個数/全介在物個数×100)を定義してこれを指標として用いた。なお、Ca,Alとランタノイドの全介在物個数とは20mm×20mmの視野をSEM-EDSを用いて介在物を観察した際に確認された3μm以上のCa系酸硫化物介在物とAl酸化物介在物、ランタノイド酸硫化物介在物およびこれらを2種類以上含む介在物の合計であり、好適範囲に入る介在物個数とは同視野内で図1に示すCa系酸硫化物(CaO+CaS)、Al酸化物(Al2)、ランタノイド酸硫化物(LAN+LANS)の成分範囲が図1の好適範囲を満足する3μm以上10μm以下の介在物個数の総数である。なお、95%以上の介在物が好適範囲となっていれば各種製品欠陥は十分抑制可能であることから、本発明では先に定義した介在物制御精度が95%以上となることを目的とした。結果、一般的な添加方法である金属CaもしくはCaの合金aとランタノイドを同時添加、Ca添加後ランタノイド添加、ランタノイド添加後Ca添加の方法では介在物制御精度は20~40%となった。つまり、金属もしくは合金のCaとランタノイドを用いると、活性が強いためどちらか一方が支配的となり、Ca化合物とランタノイド化合物の中間的な組成範囲である好適範囲への制御は難しいことが解った。
Caの支配性をより高めるにはCaのみを添加し、ランタノイド酸化物添加前にCa単独脱酸の状態を一時的に作ることが適当である。しかし、この状態が強すぎるとランタノイドの効果が消失し、弱すぎれば同時添加と同一となる。つまり、初めに添加するCaの量と続いて添加するCaとランタノイド酸化物の混合物の添加の間隔が重要となる。以上の検討から溶鋼実験を行い、初めに添加するCaの量と続いて添加するCaとランタノイド酸化物の混合物の添加の間隔が介在物制御精度に与える影響を調査した。
結果を図2に示す。Caとランタノイド酸化物を同時に添加した結果である◆は介在物制御精度48.1%とCaとランタノイドの組み合わせでも前述した従来から知られている方法で得られた20~40%よりは高い介在物制御精度が得られ、その他の先行添加Ca分と時間間隔によらず70%以上の介在物制御精度が得られているが、先行添加Ca分である初めに添加するCa添加量が総添加量の35%以上50%以下かつ添加間隔が1分以上3分以下の場合に限り目標とする介在物制御精度を95%以上と著しく高められることが解る。
以上から、溶鋼に全Ca添加量の35%以上50%以下を添加し、その1分以上3分以下の後にLa、CeO、Ndからなる群から選ばれる1種または2種以上と残りのCa分をCaまたはCa合金として混合したフラックスを添加することにより介在物組成を安定的に好適範囲に制御できることを見出した。
本発明は、溶鋼の状態であれば添加開始はどのタイミングでも構わず、前述の全Ca添加量の35%以上50%以下を添加した後、その1分以上3分以下の後にランタノイドの酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上と残りのCa分をCaまたはCa合金として混合したフラックスを添加すればよい。
以上の方法にて本発明を実施した後、取鍋を連続鋳造装置に移送し、鋳造を行う。
溶銑250tを上底吹き転炉に装入し、溶鉄中C含有率が0.03~0.2%になるまで脱炭吹錬を行い、終点温度を1600~1630℃として溶鋼を取鍋内に出鋼し、出鋼時に各種脱酸剤および合金を添加して取鍋内溶鋼のC,Si,Mn,P、S濃度を前述した範囲内に制御した。さらに、出鋼時にAlとCaOを添加し、スラグ中CaO/Al重量比を2~2.5、スラグ中FeOとMnOとの合計濃度を3%以下に調整した。なお、この時の溶鋼中Al濃度は0.007%~0.01%とした。
その後、取鍋をRHへ移送し、RH処理を開始した。RHでは初めに温度調整を行い、引き続き溶鋼成分調整(合金添加)を行った。なお、本試験では鋼種をC:0.01-0.035%、Mn:1.2-1.3%、Si:0.2-0.4%、S:0.003%,Al:0.03-0.07%、O:0.002-0.003%、Ti:0.01-0.2%もしくはC:0.002-0.003%、Mn:0.2-0.%、Si:0.2-0.3%、Al:0.007-0.015%、O:0.0025-0.004%、Ti;0.05-0.07%ならびにC:0.1-0.3%、Mn:0.7-1.3%、Si:1.2-2.3%、Al:0.3-0.5%、O:0.00075-0.0015%、Ti;0.1-0.2%の3種類とし、各鋼種で同一の効果を確認することとした。その後、真空槽内圧力を100~400Paとして脱水素処理を行い、RH処理を終了した。
取鍋を不活性ガス吹込み可能な精錬装置に移動し、溶鋼に浸漬ランスを溶鋼表面から溶鋼深さの4/5までし浸漬させ、Arガスを3Nm/minで吹き込んだ。
次に、CaSi合金をCa純分で0.03~0.1kg/tonを0.03kg/(min・ton)の速度で溶鋼に吹込み、吹込み終了後2分間Arガスのみを吹き込んだ。その後、CaSi合金をCa純分で0.13kg/tonと酸化セリウム、酸化セリウムと酸化ランタンの混合物あるいはミッシュメタルの酸化物(25%La酸化物,55%Ce酸化物,15%Nd酸化物,5%Pr酸化物)を0.15kg/tonを混合したものを溶鋼に吹き込んだ。吹込み速度は合計で0.06kg/(min・ton)とした。なお、最初に添加するCaSi添加量を変化させたのは、CaSi添加量を意図的に変化させることで、様々な介在物を生成させるためである。
二回目のCaSi添加後にArガスのみを3分間吹込みを行って処理を終了し、連続鋳造機にてスラブに鋳造した。スラブは200mm厚、1300mm幅で鋳造速度は1.3m/minである。
鋼中のLa,Ce,Nd,Prのランタノイド合計濃度は0.005-0.0018%、Ca濃度は0.0006%-0.0031%となった。
得られたスラブの幅方向で1/2,1/4,3/4幅位置、厚さ方向で表面から1/2,1/4厚さ位置から20×20×10mmのサンプルを採取し、20×20mm面の表皮側を研磨し、SEM-EPMAにて介在物を測定した。3μm以上の介在物を観察対象とし、10μmを超えて大きい介在物を粗大介在物とした。また、介在物は複数の元素から構成されているが、介在物組成をAl2、RE、RES、CaO、CaSの合計を100として算出し、Al2とLANのLANS合計とCaOとCaSの合計の3元系で整理した。なお、LANはLa,Ce,Nd、Prなどのランタノイド元素を示し、これらの元素の化合物の合計をLAN、LANSとした。加えて、MnSとTi、Nb,C,Nなどを主成分とする炭窒化物介在物をTiNとして個数と大きさを計測した。
ノズル付着性に関してはノズルを回収し、縦断面を観察してノズル内壁への介在物付着有無を観察した。
介在物観察結果を表1、表2に示す。介在物組成が本発明請求項1を満足している場合に限り、粗大介在物、MnS、TiN系炭窒化物を同時に抑制し、かつ、ノズル付着も抑制できていることが解る。
次に、処理方法の影響を評価した。CaSi総添加量をCa純分で0.18kg/ton、CeOを0.15kg/ton、ランタノイドを用いる場合は金属Ceを0.12kg/tonを用い、表3に示すプロセスでCaとランタノイドの添加を行った。処理はRH終了後に前述した取鍋精錬装置条件である。
鋼中のランタノイド、Caの濃度範囲は前述と同等であった。
前述と同様の方法で介在物調査を行い、精度を求めた。結果を表3に示す。本発明請求項2に従った場合は極めて高い精度ることが解る。また、これらの効果は前述した3種類の鋼種いずれでも確認され、本発明で特定した鋼成分範囲であれば本発明の効果が得られることが確認された。
以上の様に本発明に従うことで溶鋼の清浄性を安定的に高めることができる。
Figure 0007260731000001
Figure 0007260731000002
Figure 0007260731000003

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.002%以上0.400%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Si:0.001%以上1.000%以下、S:0.001%以上0.005%以下、Al:0.005%以上1.000%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、Ti:0.01%以上0.30%以下、ランタノイドのうちの1種又は2種以上を合計濃度が0.0003%以上0.0020%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼であって、
    ランタノイドの1種または2種以上からなる酸硫化物、Caの酸硫化物、Alの酸化物及びこれらを2種以上含む、3μm以上10μm以下の個々の非金属介在物の組成が、上記化合物の合計を100とした濃度換算でCaの酸硫化物濃度が質量%で30%以上90%以下かつランタノイドの酸硫化物とAlの酸化物の質量濃度比(ランタノイドの酸硫化物濃度)/(Alの酸化物濃度)が1.0以上2.4以下であり、前記組成を満足する非金属介在物の個数が全非金属介在物の個数の95%以上であることを特徴とする高清浄鋼。
  2. 質量%で、C:0.002%以上0.400%以下、Mn:0.1%以上2.0%以下、Si:0.001%以上1.000%以下、S: 0.001%以上0.005%以下、Al:0.005%以上1.000%以下、N:0.007%以下、O:0.005%以下、Ca:0.0005%以上0.0035%以下、Ti:0.01%以上0.30%以下、ランタノイドのうちの1種又は2種以上を合計濃度が0.0003%以上0.0020%以下を含有し、かつ、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、ランタノイドの1種または2種以上からなる酸硫化物、Caの酸硫化物、Alの酸化物及びこれらを2種以上含む、3μm以上10μm以下の個々の非金属介在物の組成が、上記化合物の合計を100とした濃度換算でCaの酸硫化物濃度が質量%で30%以上90%以下かつランタノイドの酸硫化物とAlの酸化物の質量濃度比(ランタノイドの酸硫化物濃度)/(Alの酸化物濃度)が1.0以上2.4以下であり、前記組成を満足する非金属介在物の個数が全非金属介在物の個数の95%以上である高清浄鋼を製造する際の精錬方法であって、精錬中に全Ca添加量の35%以上50%以下を添加し、その1分以上3分以下の後にランタノイドの酸化物からなる群から選ばれる1種または2種以上と残りのCa分をCaまたはCa合金として混合したフラックスを添加することを特徴とする前記高清浄鋼の精錬方法。
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