JP7111638B2 - リチウム二次電池の正極材料 - Google Patents
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Description
このような構成によれば、リチウム二次電池の抵抗を小さくすることができ、かつリチウム二次電池の高温サイクル特性および甚大な内部短絡時の発熱抑制性能を向上させることができる、正極材料が提供される。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果および高温サイクル特性向上効果が特に高くなる。
ここに開示されるリチウム二次電池の正極材料の好ましい一態様では、前記誘電体の量が、前記正極活物質粒子に対して、0.01質量%以上10質量%以下である。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果および高温サイクル特性向上効果が特に高くなる。
ここに開示されるリチウム二次電池の正極材料の好ましい一態様では、前記硫酸塩の量が、前記正極活物質粒子に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下である。
このような構成によれば、電池抵抗低減効果および高温サイクル特性向上効果が特に高くなる。
また、本明細書において「リチウム二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
Li1+xNiyCozMn(1-y-z)MαO2-βQβ (I)
式(I)中、x、y、z、α、およびβは、0≦x≦0.7、0.1<y<0.9、0.1<z<0.4、0≦α≦0.1、0≦β≦0.5を満たす。Mは、Zr、Mo、W、Mg、Ca、Na、Fe、Cr、Zn、Si、Sn、およびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。Qは、F、ClおよびBrからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。エネルギー密度および熱安定性の観点から、yおよびzはそれぞれ、0.3≦y≦0.5、0.20≦z<0.4を満たすことが好ましい。
なお、正極活物質粒子の平均粒子径(D50)は、例えば、レーザー回折散乱法等により求めることができる。
したがって、本実施形態に係る正極材料に含まれる誘電体の結晶構造は、(M1 mM2 1-m)(TinM3 1-n)O3で表すことができる。(式中、M1は、少なくとも1種のアルカリ土類金属元素であり、M2は、アルカリ金属元素、希土類金属元素、Pb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、M3は、1種以上の遷移金属元素(ただしTiを除く)であり、mおよびnはそれぞれ、0<m≦1、0<n≦1を満たす。
上記アルカリ土類金属の例としては、Ba、Mg、Sr、Ca等が挙げられる。
M1としては好ましくは、Ba、およびSrからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
上記アルカリ金属元素の例としては、Li、Na、K等が挙げられる。
上記希土類元素の例としては、Y、La、Ce、Nd、Sm、Pr等が挙げられる。
M2として好ましくは、Sr、La、Pb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。
上記遷移金属元素の例としては、Zr、Mo、Co、Fe、Ni、Mn、Cu、Cr、V、Nb、Pt、Pd、Ru、Rh、Au、Ag等が挙げられる。
M3として好ましくは、Mn、およびCoからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
mは、好ましくは0.3≦m≦1、より好ましくは0.5≦m≦1を満たす。
nは、好ましくは0.3≦n≦1、より好ましくは0.5≦n≦1を満たす。
ここで、Meは、上記誘電体のAおよびBに含まれる1種以上の元素(言い換えると、上記誘電体のAおよびBとして選択されている元素のうちの1種以上の元素)であり、したがって、硫酸塩は、上記誘電体と共通の元素を含む。Meは、ABO3で表される上記誘電体のAおよびBとして含まれている元素であればよく、よって、AおよびBに必須に含まれる元素であっても、任意に含まれる元素であってもよい。
aおよびbはそれぞれ、1≦a≦2および1≦b≦5を満たし、bは好ましくは1≦b≦3である。aおよびbは、通常、整数である。
本実施形態に係る正極材料においては、典型的には、上記誘電体の被覆(特に、上記誘電体の結晶)および上記硫酸塩の被覆(特に、上記硫酸塩の結晶)がそれぞれ、正極活物質粒子の表面に点在している。すなわち、本実施形態に係る正極材料の表面においては、上記誘電体の被覆および上記硫酸塩の被覆がそれぞれ、島状に存在している。
本実施形態に係る正極材料においては、上記誘電体および上記硫酸塩は、これらが共存する一つの層を形成し、当該層が正極活物質を完全に被覆していてもよい。しかしながら、電池特性の観点から、上記誘電体および上記硫酸塩は、上記のように、正極活物質粒子の表面に点在して、上記誘電体および上記硫酸塩が正極活物質粒子を部分的に被覆していることが好ましい。
また、リチウム二次電池の反応過程において、非水電解液の分解により生じたフッ化水素(HF)が、正極活物質を劣化させる。本実施形態においては、上記誘電体と上記硫酸塩との間で、HFが可逆的に吸着/脱離されるものと考えられる。その結果、HFが正極活物質表面に到達する頻度が減少して、正極活物質の劣化が抑制され、これにより高温サイクル特性が向上するものと考えられる。
さらに、本実施形態においては、正極活物質表面に上記誘電体と上記硫酸塩とが共存することにより、特異的な溶媒和状態の電解液層が形成されるものと考えられる。そして、この電解液層の電気抵抗が、特異的で極めて有利な温度依存性を示すものと考えられる。具体的には、この電解液層の常温での電気抵抗は極めて低いが、高温になると電解液層の電気抵抗が急激に増加するものと考えられる。その結果、甚大な内部短絡時に温度が上昇すると、この電解液層が極度に高抵抗化し、電池内部の電流を遮断して温度のさらなる上昇を抑制するものと考えられる。
上記誘電体と上記硫酸塩とは、少なくとも一部が接触していればよい。
なお、上記誘電体と上記硫酸塩とが接触していることは、正極材料の断面を走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察することにより確認することができる。
なお、上記非水電解質は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した非水溶媒および支持塩以外の成分、例えば、ガス発生剤、被膜形成剤、分散剤、増粘剤等の各種添加剤を含み得る。
〔実施例1〕
まず、正極活物質粒子として層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を、常法に従い作製した。
具体的には、Ni、Co、およびMnの硫酸塩をそれぞれ、NiとCoとMnのモル比が1:1:1になるように水に溶解させた。そこへNaOHを添加して中和することにより、正極活物質の前駆体である、Ni、Co、およびMnを含む複合水酸化物を析出させた。得られた複合水酸化物と炭酸リチウムとを、これらのモル比が1:1となるように混合した。混合物を800℃で15時間焼成して、層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を得た。レーザー回折散乱法により、このLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子の平均粒子径(D50)を測定したところ、10μmであった。
次に、層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を、誘電体としてBaTiO3粉末および硫酸塩としてBaSO4粉末と共にメカノケミカル装置に投入した。このとき、誘電体(BaTiO3)の量は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子に対して1質量%とし、硫酸塩(BaSO4)の量は、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子に対して0.4質量%とした。これらを、6000rpmで30分間、メカノケミカル処理することにより、実施例1の正極材料を得た。
実施例1で作製した層状構造を有するLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子をそのまま、比較例1の正極材料として用いた。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を、BaTiO3粉末のみとメカノケミカル処理した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の正極材料を得た。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子を、BaSO4粉末のみとメカノケミカル処理した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の正極材料を得た。
メカノケミカル処理を、8000rpmで30分間行った以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の正極材料を得た。
表1に記載の誘電体および硫酸塩を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3~13の正極材料を得た。
LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子に対するBaTiO3粉末の量、およびLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子に対するBaSO4粉末の量をそれぞれ表1に示す値とし、メカノケミカル処理を、8000rpmで30分間行った以外は、実施例1と同様の方法により、実施例14~25の正極材料を得た。
各実施例の正極材料の断面をSTEMで観察した。その結果LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2粒子の表面に、誘電体の被覆および硫酸塩の被覆が点在していることが確認された。また、実施例1の正極材料では、誘電体の被覆と硫酸塩の被覆とは接触しておらず、実施例2~25の正極材料では、誘電体の被覆と硫酸塩の被覆は、接触していることが確認された。
上記作製した正極材料と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、正極材料:AB:PVDF=80:8:2の質量比でN-メチルピロリドン(NMP)中でプラネタリミキサを用いて混合し、固形分濃度56質量%の正極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、ダイコータを用いてアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより正極シートを作製した。
また、負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、C:SBR:CMC=90:5:5の質量比でイオン交換水中で混合して、負極活物質層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極シートを作製した。
また、2枚のセパレータシート(多孔性ポリオレフィンシート)を用意した。
作製した正極シートと負極シートと用意した2枚のセパレータシートとを重ね合わせ、捲回して捲回電極体を作製した。作製した捲回電極体の正極シートと負極シートにそれぞれ電極端子を溶接により取り付け、これを、注液口を有する電池ケースに収容した。
続いて、電池ケースの注液口から非水電解液を注入し、当該注液口を気密に封止した。なお、非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)とを1:1:1の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を1.0mol/Lの濃度で溶解させたものを用いた。
上記作製した各評価リチウム二次電池を25℃の環境下に置いた。活性化(初回充電)は、定電流-定電圧方式とし、各評価用リチウム二次電池を1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/50Cになるまで定電圧充電を行い、満充電状態にした。その後、各評価用リチウム二次電池を1/3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。そして、このときの放電容量を測定して初期容量を求めた。
活性化した各評価用リチウム二次電池を、3.70Vの電圧(開放電圧)に調製した後、-5℃の環境下に置いた。この各評価用リチウム二次電池に対し、20Cの電流値で8秒間の放電を行った。このときの電圧降下量ΔVを取得し、電流値とΔVを用いて電池抵抗を算出した。比較例1の正極材料を用いた評価用リチウム二次電池の抵抗を1.00とした場合の、他の比較例および実施例の正極材料を用いた評価用リチウム二次電池の抵抗の比を求めた。結果を表1に示す。
活性化した各評価用リチウム二次電池を60℃の環境下に置き、10Cで4.2Vまで定電流充電および10Cで3.3Vまで定電流放電を1サイクルとする充放電を200サイクル繰り返した。200サイクル目の放電容量を、初期容量と同様の方法で求めた。高温サイクル特性の指標として、(充放電200サイクル目の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。結果を表1に示す。
各評価用リチウム二次電池を、1/3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電を行った後、電流値が1/10Cになるまで定電圧充電を行った。この充電した各評価用リチウム二次電池を25℃の環境下に置き、電池ケースに熱電対を取り付けた。その後、電池ケースの中央部に直径3mmの鉄製の釘を10mm/秒の速度で貫通させた。このときの電池ケースの温度を熱電対により測定し、最高温度を求めた。最高温度が200℃未満となった評価用リチウム二次電池を合格とした。結果を表1に示す。なお、表1では、最高温度が200℃未満を「○」、200℃以上を「×」で示してある。
メカノケミカル処理の条件を変えた実施例2では、BaTiO3とBaSO4とが接触していた。この実施例2では、実施例1と比べてさらなる低抵抗化が達成でき、また、高温サイクル特性がさらに向上した。
実施例3~13の結果より、誘電体および硫酸塩の種類を特定の範囲内で変えても、抵抗低減効果、高温サイクル特性向上効果、および発熱抑制性能向上効果が得られることがわかる。
実施例2および実施例14~19の結果より、誘電体の量を変化させても、抵抗低減効果、高温サイクル特性向上効果、および発熱抑制性能向上効果が得られることがわかる。特に効果が高い誘電体の量は、0.01質量%以上10質量%以下の範囲であると言える。
実施例2および実施例20~25の結果より、硫酸塩の量を変化させても、抵抗低減効果、高温サイクル特性向上効果、および発熱抑制性能向上効果が得られることがわかる。特に効果が高い硫酸塩の量は、0.001質量%以上0.5質量%以下の範囲であると言える。
〔比較例4~9〕
表2に示す組成の正極活物質を準備し、そのまま比較例4~9の正極材料として用いた。
表2に示す組成の正極活物質を準備し、BaTiO3粉末およびBaSO4粉末と共にメカノケミカル装置に投入した。このとき、BaTiO3粉末の量は、正極活物質に対して1質量%とし、BaSO4粉末の量は、正極活物質に対して0.4質量%とした。これらを、8000rpmで30分間、メカノケミカル処理することにより、実施例26~31の正極材料を得た。
実施例26~31の正極材料の断面をSTEMで観察した。その結果、正極活物質粒子の表面に、BaTiO3の被覆およびBaSO4の被覆が点在していることが確認された。また、BaTiO3の被覆とBaSO4の被覆は、接触していることが確認された。
上記作製した各実施例および各比較例の正極材料について、上記と同じ手順にて、電池抵抗測定、高温サイクル特性評価(容量維持率測定)、および発熱抑制性能評価を行った。
電池抵抗については、同じ組成の正極活物質を用いている比較例の正極材料を用いた電池の値を基準(1.00)として、各実施例の抵抗の比を求めた(例えば、実施例26は、比較例4を基準とし、実施例31は、比較例9を基準とした)。
これらの結果を表2に示す。
12 正極活物質粒子
14 誘電体
16 硫酸塩
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
100 リチウム二次電池
Claims (4)
- 正極活物質粒子と、
前記正極活物質粒子の表面に誘電体と、
前記正極活物質粒子の表面に硫酸塩と、
を含み、
前記誘電体は、ABO3型の結晶構造を有する化合物(式中、BaまたはSrの少なくともいずれか一方を含有し、La、Pb、およびBiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含有していてもよく、Bは、Tiを含有し、1種以上の遷移金属元素をさらに含有していてもよい)であり、
前記硫酸塩は、Mea(SO4)b(式中、Meは、上記AおよびBに含まれる1種以上の元素であり、aおよびbはそれぞれ、1≦a≦2および1≦b≦5を満たす)で表される、
リチウム二次電池の正極材料。 - 前記誘電体と、前記硫酸塩とが接触している、請求項1に記載のリチウム二次電池の正極材料。
- 前記誘電体の量が、前記正極活物質粒子に対して、0.01質量%以上10質量%以下である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池の正極材料。
- 前記硫酸塩の量が、前記正極活物質粒子に対して、0.001質量%以上0.5質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池の正極材料。
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