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JP7103597B2 - 含窒素有機物の処理システム及び処理方法 - Google Patents

含窒素有機物の処理システム及び処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、含窒素有機物の処理システム及び処理方法に関する。
下水汚泥や畜産汚泥等の含窒素有機物を処理する方法としては、焼却処理や微生物を用いた生物的処理により減容後に焼却処理する方法等が知られている。
近年では、水の臨界点(374℃、22MPa)以上の高温高圧の条件(超臨界条件)下で含窒素有機物を処理する技術が検討されている。超臨界条件下で含窒素有機物を処理すると、含窒素有機物を完全に分解し、無害化することが可能となる。
しかし、超臨界条件下での処理は、腐食の激しい高温高圧条件下で行われるため、装置の耐久性が問題となる。そこで、超臨界条件よりも低温又は低圧である亜臨界条件下で含窒素有機物を処理する方法が提案されている(特許文献1参照)。
特許文献1では、まず、最初の工程で含窒素有機物中の比較的酸化されやすい炭素成分及び水素成分等を二酸化炭素と水に酸化し、窒素成分をアンモニアや低分子量の含窒素有機物に変換する。その後、第二の工程でアンモニアと残存窒素有機物を無害な窒素、二酸化炭素、水に分解している。
特許第4838013号公報
ところで、近年、アンモニアが、水素エネルギーの貯蔵、輸送媒体(エネルギーキャリア)として注目されている。
特許文献1の発明では、含窒素有機物中の窒素をアンモニアの形態で利用することについて考慮されていない。
そこで、本発明は、含窒素有機物からアンモニアをより容易に分離できる含窒素有機物の処理システム及び処理方法を目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]含窒素有機物を水の亜臨界条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する酸化分解装置と、吸着剤を有し、前記第一の流体を前記吸着剤に接触させ、前記第一の流体に含まれるアンモニアを前記吸着剤に吸着させる吸着部を有するアンモニア分離装置とを備え、前記吸着剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、含窒素有機物の処理システム。
M[M’(CN)・zHO ・・・(1)
[式(1)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。]
[2]前記吸着部を減圧する減圧部を備える、[1]に記載の含窒素有機物の処理システム。
[3]前記吸着部を加熱する加熱部を備える、[1]又は[2]に記載の含窒素有機物の処理システム。
[4]分離したアンモニアをエネルギー源として供給するアンモニア供給装置をさらに備える、[1]~[3]のいずれかに記載の含窒素有機物の処理システム。
[5]含窒素有機物を水の亜臨界条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する酸化分解工程と、吸着剤を有する吸着部で前記第一の流体を前記吸着剤に接触させ、前記第一の流体に含まれるアンモニアを前記吸着剤に吸着させる吸着操作を有するアンモニア分離工程とを備え、前記吸着剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、含窒素有機物の処理方法。
M[M’(CN)・zHO ・・・(1)
[式(1)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。]
[6]前記吸着操作の後に、前記吸着部を減圧し、アンモニアを脱離する減圧操作を有する、[5]に記載の含窒素有機物の処理方法。
[7]前記吸着操作の後に、前記吸着部を加熱し、アンモニアを脱離する加熱操作を有する、[5]又は[6]に記載の含窒素有機物の処理方法。
[8]分離したアンモニアをエネルギー源として供給するアンモニア供給工程をさらに備える、[5]~[7]のいずれかに記載の含窒素有機物の処理方法。
本発明の含窒素有機物の処理システム及び処理方法によれば、含窒素有機物からアンモニアをより容易に分離できる。
本発明の第一実施形態に係る含窒素有機物の処理システムの模式図である。 本発明の第二実施形態に係る含窒素有機物の処理システムの模式図である。 吸着剤の種類によるアンモニアの吸着量の違いを示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る吸着剤のアンモニアの吸着量と圧力との関係を示すグラフの一例である。 本発明の他の実施形態に係る吸着剤のアンモニアの吸着量と圧力との関係を示すグラフの一例である。
本明細書において、水の亜臨界条件は、水の臨界温度(374℃)未満かつ水の臨界圧力(22MPa)未満、水の臨界温度以上かつ水の臨界圧力未満、又は水の臨界温度未満かつ水の臨界圧力以上のいずれをも含む。
本明細書では、上記の水の亜臨界条件での有機汚泥等の含窒素有機物の酸化分解を亜臨界水酸化処理という。
[第一実施形態]
<含窒素有機物の処理システム>
本発明の含窒素有機物の処理システムは、酸化分解装置と、アンモニア分離装置とを備える。
以下に、本発明の含窒素有機物の処理システムの第一実施形態について、図1に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の含窒素有機物の処理システム1(以下、単に処理システム1ともいう。)は、供給源10と、酸化分解装置20と、アンモニア分離装置30と、高圧ポンプP1と、排出ポンプP2と、圧力調整バルブB1と、配管L0、L1、L8~L11とを備える。
供給源10と酸化分解装置20とは、配管L0によって接続されている。配管L0には、高圧ポンプP1が設けられている。酸化分解装置20とアンモニア分離装置30とは、配管L1によって接続されている。配管L1には、圧力調整バルブB1が設けられている。酸化分解装置20には、配管L11が接続されている。配管L11には、排出ポンプP2が設けられている。アンモニア分離装置30には、配管L8と、配管L9と、配管L10とが接続されている。
酸化分解装置20は、酸化処理部201と、第一ヒーター22と、第一測定部24とを備える。酸化処理部201には、第一測定部24が接続されている。
アンモニア分離装置30は、吸着部301と、吸着部302と、気液分離器305と、第二ヒーター32と、第三ヒーター36と、第二測定部34と、第三測定部38と、開閉バルブB2、B3と、圧力調整バルブB4~B7と、配管L2~L7とを備える。
配管L1は、分岐101で配管L2と配管L3とに接続されている。配管L2は、吸着部301に接続されている。配管L3は、吸着部302に接続されている。吸着部301には、第二測定部34が接続されている。吸着部302には、第三測定部38が接続されている。吸着部301と気液分離器305とは、配管L6によって接続されている。吸着部301には、配管L4が接続されている。吸着部302には、配管L5が接続されている。配管L4は、分岐102で配管L8と接続されている。配管L5は、分岐102で配管L8と接続されている。気液分離器305には、配管L9と配管L10とが接続されている。吸着部302には、配管L7が接続されている。配管L7は、分岐103で配管L6と接続されている。
配管L2には、開閉バルブB2が設けられている。配管L3には、開閉バルブB3が設けられている。
配管L4には、圧力調整バルブB4が設けられている。配管L5には、圧力調整バルブB5が設けられている。配管L6には、圧力調整バルブB6が設けられている。配管L7には、圧力調整バルブB7が設けられている。
供給源10は、含窒素有機物を酸化分解装置20の酸化処理部201に供給する。供給源10としては、含窒素有機物を供給できればよく、下水処理施設の配水管の一部や有機汚泥を一時貯留することができるタンクや、有機汚泥を積載する車両等が挙げられる。
酸化処理部201としては、例えば、ステンレスやニッケル合金等の金属製の耐圧容器が挙げられる。
吸着部301としては、例えば、第一の流体中のアンモニアを吸着する吸着剤を有する耐圧容器が挙げられる。耐圧容器は、例えば、ステンレスやニッケル合金等の金属製の容器が挙げられる。
吸着部301の内部には、アンモニアを選択的に吸着する吸着剤(不図示)が充填されている。
吸着剤は、下記一般式(1)で表される化合物である。
M[M’(CN)・zHO ・・・(1)
式(1)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。
式(1)で表される化合物は、いわゆるプルシアンブルー及びプルシアンブルー類似体から選ばれる1種以上の化合物である。プルシアンブルー(以下、「PB」ともいう。)は、式(1)におけるMが第一鉄イオン(Fe2+)又は第二鉄イオン(Fe3+)であり、式(1)におけるM’がFe2+又はFe3+である化合物である。PBは、いわゆる紺青と呼ばれる濃青色の錯体である。プルシアンブルー類似体(以下、「PB類似体」ともいう。)は、プルシアンブルーと同様の構造を有し、式(1)におけるM又はM’を鉄以外の遷移金属元素の陽イオンに置き換えた化合物である。PB類似体は、ヘキサシアノ金属イオンを有する金属シアノ錯体である。
式(1)において、xは0~3であり、0.1~2.5が好ましく、0.1~2.0がより好ましい。xが0の場合、PB又はPB類似体が、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンを含有しないことを意味する。
式(1)において、yは0.1~1.5であり、0.2~1.3が好ましく、0.3~1.0がより好ましい。
式(1)において、zは0~6であり、0~5が好ましく、0~4がより好ましい。
PB又はPB類似体は、特定の結晶構造を有し、その結晶構造の内部に、対象となる化学物質を取り込むことができるナノ空隙構造を有する。ナノ空隙構造、すなわち空孔サイズの大きさは、0.3~0.6nmの範囲にあり、これらのナノ空隙構造が規則的に繰り返されているため、PB又はPB類似体は、非常に大きな表面積を有する。このため、PB又はPB類似体は、対象となる化学物質を効率よく取り込むことができる。対象となる化学物質としては、アンモニア、アミン等の臭気ガスが挙げられ、PB又はPB類似体に取り込まれる効率が高いことから、アンモニアが好ましい。
式(1)において、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンである。Aとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオン等が挙げられる。Aとしては、製造コストの観点から、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
式(1)において、Mは、原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)である。Mとしては、バナジウムイオン、クロム(III)イオン、マンガン(II)イオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、ルテニウムイオン、コバルト(II)イオン、コバルト(III)イオン、ロジウムイオン、ニッケルイオン、パラジウムイオン、白金イオン、銅(II)イオン、銀イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオン、インジウムイオン、ランタンイオン、ユーロピウム(III)イオン、ガドリニウム(III)イオン、ルテチウムイオン等が挙げられる。Mとしては、対象となる化学物質の吸着を制御しやすい観点から、マンガン(II)イオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、コバルト(II)イオン、コバルト(III)イオン、ニッケルイオン、銅(II)イオン、亜鉛イオン、カドミウムイオンが好ましく、ニッケルイオン、亜鉛イオンがより好ましい。また、アンモニアを低濃度から高濃度まで定量的、安定的に吸着し、吸着と脱離のための吸着剤として好ましい観点から、Mとしては、インジウムイオンが好ましい。
式(1)において、M’は、原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)である。M’としては、バナジウムイオン、クロム(III)イオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、マンガンイオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、ルテニウムイオン、コバルト(II)イオン、コバルト(III)イオン、ニッケルイオン、白金イオン、銅(II)イオン等が挙げられる。M’としては、シアン化合物の安定性の観点から、マンガンイオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、コバルト(II)イオン、コバルト(III)イオン、ニッケルイオン、銅イオンが好ましく、第二鉄イオン、コバルト(III)イオンがより好ましい。
式(1)におけるMとM’との組合せとしては、様々な組み合わせが可能である。MとM’との組合せとしては、例えば、MがFe3+、M’がFe2+の組合せ、Mが銅(II)イオン(Cu2+)、M’がFe2+の組合せ、Mが亜鉛イオン(Zn2+)、M’がコバルト(III)イオン(Co3+)の組合せ、Mがコバルト(II)イオン(Co2+)、M’がCo3+の組合せが挙げられる。
PB又はPB類似体は、式(1)で表される化合物を含有していればよく、例えば、高分子や樹脂との混合物、ガラスウール、ゼオライトやモレキュラーシーブ等の他の無機物との混合物であってもよい。また、有機物ポリマー又は金属や酸化物の無機物から成るフィルターや板材に固定した態様であってもよい。この他、多孔性容器又はガスを通すことができる二次元状のシートに詰めた態様、もしくは包んで容器とした態様、ジェル、インク、フィルム、プラスチック、樹脂、粉、砂、水やアルコールの液体に混ぜた態様であってもよい。
吸着部302としては、吸着部301と同様の耐圧容器が挙げられる。吸着部302と吸着部301とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
吸着部302の内部には、アンモニアを選択的に吸着する吸着剤(不図示)が充填されている。
吸着部302の内部の吸着剤は、式(1)で表される化合物である。吸着部302の内部の吸着剤と吸着部301の内部の吸着剤とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
気液分離器305としては、熱交換器を備える凝縮器等、従来公知の機器が挙げられる。
第一ヒーター22としては、酸化処理部201の内部を加熱可能なヒーターであればよく、高温の水蒸気を通流させるスチームヒーターや、ガスボイラー等が挙げられる。
第二ヒーター32としては、第一ヒーター22と同様のヒーターが挙げられる。第二ヒーター32と第一ヒーター22とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第二ヒーター32は、吸着部301を加熱する加熱部として機能する。
第三ヒーター36としては、第一ヒーター22と同様のヒーターが挙げられる。第三ヒーター36と第一ヒーター22とは、異なっていてもよく、同じでもよい。第三ヒーター36と第二ヒーター32とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第三ヒーター36は、吸着部302を加熱する加熱部として機能する。
第一測定部24としては、酸化処理部201の内部の温度、圧力、アンモニア濃度等を測定できればよく、公知の温度計、圧力計、濃度測定計等を例示できる。
第二測定部34としては、第一測定部24と同様の計器が挙げられる。第二測定部34と第一測定部24とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第三測定部38としては、第一測定部24と同様の計器が挙げられる。第三測定部38と第一測定部24とは、異なっていてもよく、同じでもよい。第三測定部38と第二測定部34とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
高圧ポンプP1としては、供給源10から含窒素有機物を酸化分解装置20へと圧送できればよく、高圧送液ポンプやコンプレッサー等が挙げられる。
排出ポンプP2としては、酸化分解装置20から含窒素有機物の固形分を外部へと圧送できればよく、吸引ポンプや真空ポンプ等が挙げられる。
圧力調整バルブB1としては、公知のバルブや圧力調整弁等を例示できる。圧力調整バルブB1は、開閉バルブとしての機能を有していてもよい。
圧力調整バルブB4~B7としては、圧力調整バルブB1と同様のバルブが挙げられる。圧力調整バルブB4~B7と圧力調整バルブB1とは、異なっていてもよく、同じでもよい。また、圧力調整バルブB4~B7は、それぞれが異なっていてもよく、同じでもよい。
圧力調整バルブB4は、吸着部301を減圧する減圧部として機能する。
圧力調整バルブB5は、吸着部302を減圧する減圧部として機能する。
開閉バルブB2としては、公知のバルブや開閉弁等を例示できる。
開閉バルブB3としては、開閉バルブB2と同様のバルブが挙げられる。開閉バルブB3と開閉バルブB2とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
第一ヒーター22、第二ヒーター32、第三ヒーター36、第一測定部24、第二測定部34、第三測定部38、高圧ポンプP1、排出ポンプP2、圧力調整バルブB1、B4~B7、開閉バルブB2、B3は、外部に設けられた制御部(不図示)によって、ON、OFF、開閉等を一括して制御することが好ましい。
配管L0としては、ステンレス等の金属製の配管等が挙げられる。
配管L1~L11としては、配管L0と同様の配管が挙げられる。配管L1~L11と配管L0とは、異なっていてもよく、同じでもよい。また、配管L1~L11は、それぞれが異なっていてもよく、同じでもよい。
アンモニア分離装置30へと流入する第一の流体の温度を制御する観点から、処理システム1は、配管L1の圧力調整バルブB1と分岐101との間に冷却部(不図示)を備えることが好ましい。処理システム1が冷却部を備えることにより、吸着部301又は302に流入する第一の流体の温度を下げることができる。その結果、吸着部301又は302の内部の吸着剤の吸着能を維持しやすい。
冷却部としては、配管L1を覆う冷却ジャケット、水流ジャケット等が挙げられる。
<含窒素有機物の処理方法>
本発明の含窒素有機物の処理方法は、含窒素有機物を水の亜臨界条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する酸化分解工程と、第一の流体に含まれるアンモニアを分離するアンモニア分離工程とを備える。
アンモニア分離工程は、第一の流体を吸着剤に接触させ、第一の流体に含まれるアンモニアを吸着剤に吸着させる吸着操作を有する。
処理システム1を用いた含窒素有機物の処理方法について、図1に基づいて説明する。
まず、開閉バルブB2、B3及び圧力調整バルブB1、B4~B7を閉とする。
次に、含窒素有機物を含む混合物と水のスラリー混合物とを供給源10から高圧ポンプP1を介して、それぞれ酸化分解装置20に供給する。
(酸化分解工程)
含窒素有機物を含む混合物と水のスラリー混合物とを酸化処理部201に供給した後、第一ヒーター22を加熱し、かつ、高圧ポンプP1を加圧し、含窒素有機物を水の亜臨界条件とする。
含窒素有機物を水の亜臨界条件とすることで、含窒素有機物は、二酸化炭素、水、アンモニア、窒素等に酸化分解され、第一の流体が生成する。
酸化分解工程における酸化処理部201の内部温度(以下、第一処理温度ともいう。)は、第一測定部24により測定できる。
第一処理温度は、水の臨界温度(374℃)以上であり、374℃以上500℃以下が好ましく、400℃以上450℃以下がより好ましい。第一処理温度が上記下限値以上であると、含窒素有機物を十分に酸化分解することができる。第一処理温度が上記上限値以下であると、第一の流体に含まれるアンモニアへの転化率を向上しやすく、第一ヒーター22を加熱する際のエネルギーを節約しやすい。
第一処理温度は、第一ヒーター22により調整できる。
酸化分解工程における酸化処理部201の内部圧力(以下、第一処理圧力ともいう。)は、第一測定部24により測定できる。
第一処理圧力は、水の臨界圧力(22MPa)未満であり、5MPa以上20MPa以下が好ましく、10MPa以上20MPa以下がより好ましく、10MPa以上15MPa以下がさらに好ましい。第一処理圧力が上記下限値以上であると、含窒素有機物を十分に酸化分解することができる。第一処理圧力が上記上限値以下であると、酸化処理部201にかかる負荷を低減しやすい。
第一処理圧力は、高圧ポンプP1により調整できる。
含窒素有機物とは、窒素成分を含む有機物を指す。含窒素有機物としては、メタン発酵工程から排出されるアンモニア含有消化液、食品廃棄物、家畜排泄物、有機汚泥等のバイオマス廃棄物等が挙げられる。有機汚泥としては、下水処理によって得られる有機汚泥が挙げられ、生汚泥、余剰汚泥、濃縮汚泥、消化汚泥の他、下水汚泥や活性汚泥、畜産汚泥等が挙げられる。
含窒素有機物は水分を含んでおり、通常、脱水してから焼却等が行われる。
本実施形態の処理システム1では、酸化処理部201を高温高圧にして含窒素有機物を酸化分解するため、脱水工程及び焼却工程が不要である。
なお、酸化分解工程で生成する含窒素有機物の固形分は、排出ポンプP2を用いて、配管L11を介して酸化分解装置20の外部へと排出できる。
含窒素有機物の含水率は、90質量%以上が好ましい。含窒素有機物の含水率が上記下限値以上であると、供給源10から酸化分解装置20への流動性に優れ、処理システム1を連続して運転できるため、処理システム1の処理効率を向上しやすい。
酸化分解工程では、酸化剤として空気、空気中の酸素、過酸化水素水等が利用可能である。酸化剤は、含窒素有機物の酸化分解反応に必要な酸素量よりも過剰に供給し、含窒素有機物を完全に酸化分解することが好ましい。このため、酸化分解工程で酸化処理部201に供給する酸化剤は、例えば、酸化処理部201の内部の酸素比を目安に設定できる。酸化処理部201の酸素比は、1.0以上2.5以下が好ましく、1.2以上2.0以下がより好ましく、1.2以上1.5以下がさらに好ましい。酸化処理部201の酸素比が上記下限値以上であると、第一の流体に含まれるアンモニアへの転化率を向上しやすい。酸化処理部201の酸素比が上記上限値以下であると、酸化剤の余剰な供給を抑制できる。
酸化分解工程における加熱加圧時間(以下、第一処理時間ともいう。)は、1分以上30分以下が好ましく、1分以上20分以下がより好ましく、1分以上15分以下がさらに好ましい。第一処理時間が上記下限値以上であると、含窒素有機物を十分に酸化分解することができる。第一処理時間が上記上限値以下であると、第一の流体に含まれるアンモニアへの転化率を向上しやすく、第一ヒーター22を加熱する際のエネルギーを節約しやすい。
酸化分解工程で生成された第一の流体は、圧力調整バルブB1を開とすることにより、配管L1を介してアンモニア分離装置30へと流入する。
(アンモニア分離工程)
アンモニア分離工程は、第一の流体に含まれるアンモニアを分離する工程である。
開閉バルブB2及び圧力調整バルブB6を開とする。開閉バルブB3及び圧力調整バルブB4、B5、B7を閉とする。
アンモニア分離装置30へと流入した第一の流体は、配管L2を介して吸着部301へと流入する。
吸着部301へと流入した第一の流体は、吸着部301の内部に充填された吸着剤と接触する。第一の流体に含まれるアンモニアは、吸着剤によって選択的に吸着され、分離される(吸着操作)。
吸着操作における吸着部301の内部温度(以下、第二処理温度ともいう。)は、第二測定部34により測定できる。
第二処理温度は、20℃以上300℃以下が好ましく、20℃以上200℃以下がより好ましく、20℃以上100℃以下がさらに好ましい。第二処理温度が上記下限値以上であると、第一の流体に含まれるアンモニアが吸着剤に吸着されやすい。第二処理温度が上記上限値以下であると、吸着剤の吸着能を維持しやすい。
第二処理温度は、第二ヒーター32又は冷却部(不図示)により調整できる。
吸着操作における吸着部301の内部圧力(以下、第二処理圧力ともいう。)は、第二測定部34により測定できる。
第二処理圧力は、水の臨界圧力(22MPa)未満であり、1MPa以上20MPa以下が好ましく、1MPa以上15MPa以下がより好ましく、1MPa以上10MPa以下がさらに好ましい。第二処理圧力が上記下限値以上であると、第一の流体に含まれるアンモニアが吸着剤に吸着されやすい。第二処理圧力が上記上限値以下であると、吸着部301にかかる負荷を低減しやすい。
第二処理圧力は、圧力調整バルブB6により調整できる。
アンモニアが吸着された後の第一の流体(第二の流体)は、配管L6を介して気液分離器305へと流入する。
次に、開閉バルブB2及び圧力調整バルブB6を閉とし、開閉バルブB3及び圧力調整バルブB4、B7を開とする。
アンモニア分離装置30へと流入した第一の流体は、配管L3を介して吸着部302へと流入する。
吸着部302へと流入した第一の流体は、吸着部302の内部に充填された吸着剤と接触する。第一の流体に含まれるアンモニアは、吸着剤によって選択的に吸着され、分離される(吸着操作)。
吸着操作における吸着部302の内部温度(以下、第三処理温度ともいう。)は、第三測定部38により測定できる。
第三処理温度は、第二処理温度と同様である。第三処理温度は、第二処理温度と異なっていてもよく、同じでもよい。
第三処理温度は、第三ヒーター36又は冷却部(不図示)により調整できる。
吸着操作における吸着部302の内部圧力(以下、第三処理圧力ともいう。)は、第三測定部38により測定できる。
第三処理圧力は、第二処理圧力と同様である。第三処理圧力は、第二処理圧力と異なっていてもよく、同じでもよい。
第三処理圧力は、圧力調整バルブB7により調整できる。
第二の流体は、配管L7、分岐103、配管L6を介して気液分離器305へと流入する。
圧力調整バルブB4を開とすることにより、吸着部301の内部は減圧される。吸着部301を減圧することで(減圧操作)、吸着部301の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアが脱離する(脱離操作)。
脱離操作は、第二ヒーター32で吸着部301を加熱することによって行ってもよい。吸着部301を加熱することで(加熱操作)、吸着部301の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアが脱離する。
エネルギーを節約してアンモニアを脱離できる観点から、脱離操作は、減圧操作により行うことが好ましい。
減圧操作における吸着部301の内部圧力(以下、第四処理圧力ともいう。)は、第二測定部34により測定できる。
第四処理圧力は、水の臨界圧力(22MPa)未満であり、15MPa以下が好ましく、10MPa以下がより好ましく、5MPa以下がさらに好ましい。第四処理圧力が上記上限値以下であると、吸着剤に吸着されたアンモニアがより脱離しやすい。第四処理圧力の下限値は特に限定されず、常圧(0.1MPa)であってもよく、真空ポンプやアスピレーター等(不図示)を用いて0.02MPa程度まで減圧してもよい。この場合、真空ポンプやアスピレーター等は、減圧部として機能する。
なお、脱離したアンモニアを液体として供給する場合、第四処理圧力は、0.8MPa以上が好ましい。
第四処理圧力は、圧力調整バルブB4により調整できる。
加熱操作における吸着部301の内部温度(以下、第四処理温度ともいう。)は、第二測定部34により測定できる。
第四処理温度は、100℃以上350℃以下が好ましく、150℃以上300℃以下がより好ましく、200℃以上250℃以下がさらに好ましい。第四処理温度が上記下限値以上であると、吸着剤に吸着されたアンモニアがより脱離しやすい。第四処理温度が上記上限値以下であると、吸着剤の吸着能を維持しやすい。加えて、第四処理温度が上記上限値以下であると、第二ヒーター32を加熱する際のエネルギーを節約しやすい。
第四処理温度は、第二ヒーター32により調整できる。
吸着剤から脱離したアンモニアは、配管L4、分岐102、配管L8を介して処理システム1の外部へと供給される。
この際、アンモニアは、気体であってもよく、液体であってもよい。外部へと供給されるアンモニアは、エネルギー源としての利用において取り扱いが容易となる観点から、液体であることが好ましい。例えば、吸着部301の内部の圧力を0.8MPa以上となるように圧力調整バルブB4を調整することにより、液体としてアンモニアを供給できる。
次に、開閉バルブB3及び圧力調整バルブB4、B7を閉とし、開閉バルブB2及び圧力調整バルブB5、B6を開とする。
圧力調整バルブB5を開とすることにより、吸着部302の内部は減圧される。吸着部302を減圧することで(減圧操作)、吸着部302の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアが脱離する(脱離操作)。
脱離操作は、第三ヒーター36で吸着部302を加熱することによって行ってもよい。吸着部302を加熱することで(加熱操作)、吸着部302の内部の吸着剤に吸着されたアンモニアが脱離する。
エネルギーを節約してアンモニアを脱離できる観点から、脱離操作は、減圧操作により行うことが好ましい。
減圧操作における吸着部302の内部圧力(以下、第五処理圧力ともいう。)は、第三測定部38により測定できる。
第五処理圧力は、第四処理圧力と同様である。第五処理圧力は、第四処理圧力と異なっていてもよく、同じでもよい。
第五処理圧力は、圧力調整バルブB5により調整できる。
加熱操作における吸着部302の内部温度(以下、第五処理温度ともいう。)は、第三測定部38により測定できる。
第五処理温度は、第四処理温度と同様である。第五処理温度は、第四処理温度と異なっていてもよく、同じでもよい。
第五処理温度は、第三ヒーター36により調整できる。
吸着剤から脱離したアンモニアは、配管L5、分岐102、配管L8を介して処理システム1の外部へと供給される。
例えば、吸着部302の内部の圧力を0.8MPa以上となるように圧力調整バルブB5を調整することにより、液体としてアンモニアを供給できる。
アンモニア分離工程で、二つの吸着部301と302とを交互に用いることで、一方の吸着部でアンモニアを吸着している間に、他方の吸着部を減圧し、アンモニアを吸着剤から脱離させることができる。
脱離操作においては、一方の吸着部でアンモニアを吸着している間に、他方の吸着部を加熱し、アンモニアを吸着剤から脱離させてもよい。
このように、二つの吸着部301と302とを交互に用いることで、効率よくアンモニアを分離できる。
なお、本実施形態では、二つの吸着部を用いているが、吸着部の数は二つに限られず、一つでもよく、三つ以上でもよい。
アンモニアの状態は、吸着部301又は302の内部の温度及び圧力によって制御できる。
吸着部301の内部の温度は、第二ヒーター32によって制御できる。吸着部302の内部の温度は、第三ヒーター36によって制御できる。吸着部301の内部の圧力は、圧力調整バルブB4によって制御できる。吸着部302の内部の圧力は、圧力調整バルブB5によって制御できる。
第二ヒーター32の熱源としては、酸化分解工程における亜臨界水酸化処理による反応熱を利用できる。前記反応熱を利用することにより、第二ヒーター32の消費エネルギーを節約できる。
第三ヒーター36の熱源としては、酸化分解工程における亜臨界水酸化処理による反応熱を利用できる。前記反応熱を利用することにより、第三ヒーター36の消費エネルギーを節約できる。
気液分離器305へと流入した第二の流体は、気体と液体とに分離される。
第二の流体から分離された気体は、配管L9を介して処理システム1の外部へと排出される。
第二の流体から分離された液体は、配管L10を介して処理システム1の外部へと排出される。
本実施形態の処理システム1によれば、亜臨界水酸化処理によって速やかに含窒素有機物を処理できる。
本実施形態の処理システム1によれば、吸着剤に式(1)で表される化合物を用いているため、含窒素有機物からアンモニアをより容易に分離できる。
[第二実施形態]
<含窒素有機物の処理システム>
図2に、本発明の第二実施形態に係る含窒素有機物の処理システムの模式図を示す。第一実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して、その説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態の含窒素有機物の処理システム2(以下、単に処理システム2ともいう。)は、アンモニア分離装置30の後段に、アンモニア供給装置40と、アンモニア利用装置50とを備える。
アンモニア分離装置30とアンモニア供給装置40とは、配管L8によって接続されている。配管L8には、圧力調整バルブB10が設けられている。アンモニア供給装置40とアンモニア利用装置50とは、配管L12によって接続されている。配管L12には、圧力調整バルブB11が設けられている。
アンモニア供給装置40は、分離されたアンモニアをアンモニア利用装置50へと供給できる装置であればよい。アンモニア供給装置40としては、例えば、高圧ポンプやコンプレッサー、配管や貯留槽等が挙げられる。
アンモニア利用装置50としては、例えば、アンモニアボイラーや燃料電池等、アンモニアをエネルギー源として利用できる装置が挙げられる。
圧力調整バルブB10、B11としては、圧力調整バルブB1と同様のバルブが挙げられる。圧力調整バルブB10、B11と圧力調整バルブB1とは、異なっていてもよく、同じでもよい。また、圧力調整バルブB10、B11は、それぞれが異なっていてもよく、同じでもよい。
第一ヒーター22、第一測定部24、アンモニア分離装置30、高圧ポンプP1、排出ポンプP2、圧力調整バルブB1、B10、B11は、外部に設けられた制御部(不図示)によって、ON、OFF、開閉等を一括して制御することが好ましい。
配管L12としては、配管L0と同様の配管が挙げられる。配管L12と配管L0とは、異なっていてもよく、同じでもよい。
<含窒素有機物の処理方法>
処理システム2を用いた含窒素有機物の処理方法について、図2に基づいて説明する。
(アンモニア供給工程)
アンモニア供給工程は、分離したアンモニアをエネルギー源として供給する工程である。
アンモニア供給装置40へと流入したアンモニアは、圧力調整バルブB11を開とすることにより、配管L12を介してアンモニア利用装置50へと供給される。アンモニア利用装置50へと供給されるアンモニアは、アンモニアボイラーや燃料電池等のアンモニア利用装置50でエネルギー源として利用される。また、アンモニア利用装置50へと供給されるアンモニアは、水素キャリアとして利用される。
この際、アンモニアは、気体であってもよく、液体であってもよい。アンモニア利用装置50へと供給されるアンモニアは、取り扱いが容易となる観点から、液体であることが好ましい。アンモニアの状態は、アンモニア供給装置40の内部の温度及び圧力によって制御できる。
本実施形態の処理システム2によれば、含窒素有機物中の窒素成分をアンモニアとして分離し、エネルギー源として利用できる。このため、含窒素有機物中の未利用エネルギーを有効活用できる。
以上、本発明の含窒素有機物の処理システム及び処理方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
アンモニア分離装置は、上述したアンモニア分離装置30以外の態様であってもよい。例えば、アンモニア分離装置30は、気液分離器305を備えるが、アンモニア分離装置は、気液分離器を備えなくてもよい。
アンモニア分離装置30は、圧力調整バルブB4~B7を備えるが、アンモニア分離装置は、圧力調整バルブに加えて、真空ポンプやアスピレーターを備えていてもよい。
上述の実施形態では、高圧ポンプP1は配管L0に設けられているが、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
高圧ポンプは、一つに限られず、二つ以上設けられてもよい。
装置間の流体の移動には、高圧ポンプの代わりに真空ポンプを用いてもよい。
開閉バルブは、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
圧力調整バルブは、他の配管中の任意の箇所に設けられてもよい。
本実施形態の吸着剤は、繰り返し使用可能である。しかし、吸着剤は、吸着能に応じて未使用の吸着剤に換えてもよい。
本実施形態の酸化分解工程では、第一処理温度は水の臨界温度以上で、かつ、第一処理圧力は水の臨界圧力未満であるが、水の亜臨界条件を満たす第一処理温度、かつ、第一処理圧力であってもよい。水の亜臨界条件を満たす温度と圧力の組合せとしては、第一処理温度が水の臨界温度未満で、かつ、第一処理圧力が水の臨界圧力以上、第一処理温度が水の臨界温度未満で、かつ、第一処理圧力が水の臨界圧力未満の組合せが挙げられる。
本発明の含窒素有機物の処理システムによれば、酸化分解装置で高い転化率でアンモニアを生成できる。
本発明の含窒素有機物の処理システムによれば、アンモニア分離装置で吸着剤を用いてアンモニアを分離できる。アンモニアを分離することで、高い効率でアンモニアを得ることができ、含窒素有機物中の窒素を有効利用できる。
本発明の含窒素有機物の処理システムによれば、含窒素有機物を確実に処理することができる。
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<プルシアンブルー類似体(PB類似体)の調製>
ヘキサシアノコバルト(III)酸カリウム(K[CoIII(CN)])0.3mmolを5mLの純水に添加し、濃度60mMの水溶液を得た。なお、以下で、[CoIII(CN)3-を「HCC」と称する。次に、塩化亜鉛(ZnCl)0.456mmolを5mLの純水に添加し、濃度91.2mMの水溶液を得た。筒状の遠心分離用のプラスチックチューブに上記KHCC水溶液を5mL入れ、室温(20℃)で、上記塩化亜鉛水溶液5mLを一気に添加し、振盪機(Shaking Incubator SI-300C (AsOne))により、室温にて24時間振盪した。
振盪後のプラスチックチューブを取り出し、遠心分離機(テーブルトップ高速冷却遠心機、Sigma(R) 3-3-K)により、沈殿と上澄み液とを分離し、上澄み液を除去した。上澄み液を除去したプラスチックチューブに超純水を加え、振盪し、沈殿を洗浄した。この操作を3回繰り返し、得られた沈殿物をオーブン(Oven OFW-450B (AsOne))にて、100kPa、20℃の環境下で72時間乾燥して、ヘキサシアノコバルト(III)酸亜鉛(以下、「ZnHCC」と称する。)を90mg得た。ZnHCCは、式(1)におけるxが0.19で、yが0.63で、zが3.0で、AがKで、MがZn2+で、M’がCo3+の化合物(PB類似体)である。
ガラス製のビーカーに濃度40mMのKHCC水溶液を5mL入れ、室温で、濃度60mMの塩化コバルト(II)水溶液5mLを一気に添加し、マグネティックスターラー(AsOne社製、SLIM STIRRER、品番KIS-12)により、室温にて16時間攪拌した。
ZnHCCを得たときと同様の手順により沈殿物を得た。得られた沈殿物を上記オーブンにて、100kPa、60℃の環境下で2時間乾燥して、ヘキサシアノコバルト(III)酸コバルト(II)(以下、「CoHCC」と称する。)を60mg得た。CoHCCは、式(1)におけるxが0で、yが0.6で、zが4.2で、MがCo2+で、M’がCo3+の化合物(PB類似体)である。以上の調整を必要に応じて繰り返す、もしくはスケールアップを行い、PB類似体を準備した。
<アンモニア吸着量の測定>
CoHCC10~50mgをガス吸脱着装置(BelsorpMax、マイクロトラックベル社製)用のサンプル管に入れ、圧力0~100kPa、温度100℃の環境下で、アンモニアの分圧を制御しながら接触させた。アンモニアの吸着量は、吸着曲線において、温度100℃、アンモニアの分圧90kPaにおいて、14mmol/gであり、温度100℃、アンモニアの分圧10kPaにおいて、10mmol/gであった。
CoHCCの代わりに、ヘキサシアノ鉄(II)酸亜鉛10~50mgを用いた以外は、上記と同じ条件でアンモニアを接触させた。アンモニアの吸着量は、吸着曲線において、温度100℃、アンモニアの分圧90kPaにおいて、10.5mmol/gであり、温度100℃、アンモニアの分圧10kPaにおいて、3.5mmol/gであった。
CoHCCの代わりに、イオン交換樹脂(Amberlyst-15、オルガノ株式会社製)10~50mgを用いた以外は、上記と同じ条件でアンモニアを接触させた。アンモニアの吸着量は、吸着曲線において、温度100℃、アンモニアの分圧90kPaにおいて、6mmol/gであり、温度100℃、アンモニアの分圧10kPaにおいて、5mmol/gであった。
CoHCCの代わりに、活性炭を用いた場合、公知のデータとして、アンモニアの吸着量は、温度70℃、アンモニアの分圧100kPaにおいて、1.2mmol/gであり、温度120℃、アンモニアの分圧100kPaにおいて、0.5mmol/gである。このデータは、下記の非特許文献の1546ページ(Figure3.参照。)に記載されている。
非特許文献:J. Helminen, J. Helenius, E. Paatero and I. Turunen, AIChE Journal, 2000, 46, 1541-1555.。
これらの結果を図3に示す。図3では、CoHCC(Co置換PB)、ヘキサシアノ鉄(II)酸亜鉛(Zn置換PB)、イオン交換樹脂、活性炭の、温度100℃、アンモニアの分圧90kPaにおけるアンモニアの吸着量を棒グラフで示した。ただし、活性炭のアンモニアの吸着量は、温度120℃、アンモニアの分圧100kPaにおける吸着量である。図3に示すように、吸着剤としてCo置換PBやZn置換PB(PB類似体)を用いた場合、活性炭やイオン交換樹脂よりもアンモニアの吸着量が多いことが分かった。
このようにPB類似体は、活性炭やイオン交換樹脂よりもアンモニアの吸着能に優れる吸着剤であることが分かった。
<アンモニア吸脱着の評価>
得られた各PB類似体について、理想的な真空下におけるアンモニア吸脱着の評価を、ガス吸脱着装置(BelsorpMax、マイクロトラックベル社製)により行った。PB類似体の粉末10mgをBelsorpMax装置用のサンプル管に入れ、純アンモニアガスボンベから供給されるアンモニアガスを用い、サンプル管内のアンモニアガスの圧力を少しずつ変化させ、その直後からサンプル管内のアンモニアガスの圧力変化の測定を行った。
ZnHCC10mgの粉をBelsorpMax装置用のサンプル管に入れ、アンモニア吸脱着の評価を行った。アンモニアの圧力は0から100kPaの間で変化させ、その際のアンモニア吸脱着の量を測定した。始めに、0から100kPaへアンモニアの圧力を増加させアンモニア吸着量を測定した(1a)。その後、100kPaから0へアンモニアの圧力を減少させアンモニア脱離量を測定した(1b)。この吸脱着の測定温度は、100℃で行った。結果を図4に示す。
図4に示すように、ZnHCCは、100℃の条件において、アンモニアが吸着した後、20kPaに減圧すると、アンモニアが大幅に約40%脱離することが分かった。すなわち、PB類似体の一種であるZnHCCに吸着したアンモニアの脱離する有効な条件が、圧力低下(減圧)であることが分かった。
CoHCC10mgの粉をBelsorpMax装置用のサンプル管に入れ、アンモニア吸脱着の評価を行った。アンモニアの圧力は0から100kPaの間で変化させ、その際のアンモニア吸脱着の量を測定した。始めに、0から100kPaへアンモニアの圧力を増加させアンモニア吸着量を測定した(2a、2c、2e)。その後、100kPaから0へアンモニアの圧力を減少させアンモニア脱離量を測定した(2b、2d、2f)。この吸脱着の測定温度は、20℃(2a、2b)、100℃(2c、2d)、250℃(2e、2f)の3通りで行った。結果を図5に示す。
図5に示すように、CoHCCは、20kPaから100kPaの間の圧力において、温度を20℃から100℃に変化させることでアンモニアの吸着量が約40%、大幅に減少することが分かった。また、CoHCCは、温度を20℃から250℃に変化させることでアンモニアの吸着量が約90%、大幅に減少することが分かった。なお、CoHCCは、Thermogravimetry測定により、250℃に温度を上昇させても分解することはなく、250℃付近の高温において安定であることが分かった。すなわち、PB類似体の一種であるCoHCCに吸着したアンモニアの脱離する有効な条件が、温度上昇(加熱)であることが分かった。
以上のように、PB又はPB類似体は、アンモニアを吸着する吸着能に優れることが分かった。特に、PB類似体は、アンモニアを吸着する吸着能に著しく優れることが分かった。
PB類似体に吸着したアンモニアは、減圧によりPB類似体から容易に脱離することが分かった。PB類似体に吸着したアンモニアは、加熱によりPB類似体から容易に脱離することが分かった。
以上のことから、本発明の含窒素有機物の処理システムによれば、含窒素有機物からアンモニアをより容易に分離できることが分かった。
1,2…含窒素有機物の処理システム、10…供給源、20…酸化分解装置、22…第一ヒーター、24…第一測定部、30…アンモニア分離装置、32…第二ヒーター、34…第二測定部、36…第三ヒーター、38…第三測定部、40…アンモニア供給装置、50…アンモニア利用装置、201…酸化処理部、301,302…吸着部、305…気液分離器、P1…高圧ポンプ、P2…排出ポンプ、B1,B4~B7,B10,B11…圧力調整バルブ、B2,B3…開閉バルブ、L0,L1~L12…配管

Claims (8)

  1. 含窒素有機物を374℃超500℃以下で水の亜臨界条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する酸化分解装置と、吸着剤を有し、前記第一の流体を前記吸着剤に接触させ、前記第一の流体に含まれるアンモニアを前記吸着剤に吸着させる吸着部を有するアンモニア分離装置とを備え、
    前記吸着剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、含窒素有機物の処理システム。
    M[M’(CN)・zHO ・・・(1)[式(1)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。]
  2. 前記酸化分解装置は、前記含窒素有機物を5MPa超22MPa未満で水の亜臨界条件とする、請求項1に記載の含窒素有機物の処理システム。
  3. 前記アンモニア分離装置は、20℃以上300℃以下の温度条件下で、前記第一の流体を前記吸着剤に接触させる、請求項1又は2に記載の含窒素有機物の処理システム。
  4. 前記アンモニア分離装置は、22MPa未満の圧力条件下で、前記第一の流体を前記吸着剤に接触させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の含窒素有機物の処理システム。
  5. 含窒素有機物を374℃超500℃以下で水の亜臨界条件とし、アンモニアを含む第一の流体を生成する酸化分解工程と、吸着剤を有する吸着部で前記第一の流体を前記吸着剤に接触させ、前記第一の流体に含まれるアンモニアを前記吸着剤に吸着させる吸着操作を有するアンモニア分離工程とを備え、
    前記吸着剤が、下記一般式(1)で表される化合物である、含窒素有機物の処理方法。
    M[M’(CN)・zHO ・・・(1)[式(1)中、xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表し、Aは、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンからなる群より選択される少なくとも1種の陽イオンを表し、M、M’は、それぞれ独立に原子番号3~83の原子からなる群より選択される少なくとも1種の陽イオン(ただし、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオンを除く。)を表す。]
  6. 前記吸着操作の後に、前記吸着部を減圧し、アンモニアを脱離する減圧操作を有し、
    前記減圧操作は前記吸着部の内部圧力を22MPa未満とする、請求項5に記載の含窒素有機物の処理方法。
  7. 前記吸着操作の後に、前記吸着部を加熱し、アンモニアを脱離する加熱操作を有し、
    前記加熱操作は前記吸着部の内部温度を100℃以上350℃以下とする、請求項5又は6に記載の含窒素有機物の処理方法。
  8. 前記酸化分解工程は、前記含窒素有機物を5MPa超22MPa未満で水の亜臨界条件とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の含窒素有機物の処理方法。
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