JP7192932B2 - 炭素材、及び、非水系二次電池 - Google Patents
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Description
特許文献3で開示されている窒素雰囲気下で500℃~1250℃にて熱処理を施した造粒天然黒鉛では、酸素官能基が低減することにより電解液との副反応を低減させることが可能であり、また適度に表面結晶構造が乱れることにより低温充電特性が向上するものの、黒鉛内部におけるLiイオンの挿入脱離サイトは不足しており、その特性は不十分なものであった。
特許文献4の技術では、石炭系仮焼コークスを原料に球形に造粒しているため、放電容量が低く、その特性は不十分なものであった。
(式1)
100Y+0.26X>α
(式中、Yは下記式2で表される酸素官能基分散度、Xは体積基準平均粒子径(d50)(μm)、α=9.4である)
(式2)
酸素官能基分散度(Y)=元素分析法から求められる全酸素含有率(mol%)/X線光電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)(mol%)
本発明にかかる炭素材が前記効果を奏する理由については、次の様に考えている。
(式1)
100Y+0.26X>α
(式中、Yは下記式2で表される酸素官能基分散度、Xは体積基準平均粒子径(d50)(μm)、α=9.4である)
(式2)
酸素官能基分散度(Y)=元素分析法から求められる全酸素含有率(mol%)/X線光電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)(mol%)
また本発明の他の要旨は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が上記の炭素材を含有することを特徴とする非水系二次電池に存する。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な非水系二次電池用炭素材であって、該炭素材は下記式1の関係を満足する黒鉛粒子であることを特徴とする非水系二次電池用炭素材である。
(式1)
100Y+0.26X>α
(式中、Yは下記式2で表される酸素官能基分散度、Xは体積基準平均粒子径(d50)(μm)、α=9.4である)
(式2)
酸素官能基分散度(Y)=元素分析法から求められる全酸素含有率(mol%)/X線光電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)(mol%)
本発明のリチウムイオンを吸蔵・放出可能な非水系二次電池用炭素材は、酸素官能基分散度と体積基準平均粒子径(d50)(μm)が規定の関係を満足する黒鉛粒子であれば特に限定されないが、例えば、黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛等が挙げられ、高容量且つ高電流密度での充放電特性が良好な点から鱗片状、鱗状、及び塊状の天然黒鉛を造粒した黒鉛であることがより好ましい。
また、黒鉛としては不純物の少ないものが好ましく、不純物の少ない黒鉛は公知である種々の精製処理を施すことで得ることができる。
天然黒鉛の中でも、例えば、鱗状、鱗片状、又は塊状の天然黒鉛、高純度化した鱗片状黒鉛、後述する造粒処理した天然黒鉛(以降、造粒炭素材とよぶことがある)等が挙げられる。中でも、炭素材の内部に好適な緻密な細孔を形成させることができ、優れた粒子の充填性や充放電負荷特性を発揮するという観点から好ましい。
また、バルクメソフェーズ等の黒鉛化可能な骨材又は黒鉛と、黒鉛化可能な有機物とに黒鉛化触媒を添加して混合し、焼成した後、粉砕することにより得た造粒型人造黒鉛を用いることもできる。
焼成温度は、2500℃以上、3200℃以下の範囲とすることができ、焼成の際、珪素含有化合物やホウ素含有化合物などを黒鉛化触媒として用いることもできる。
本発明の非水系二次電池用炭素材は、酸素官能基分散度と体積基準平均粒子径(d50)(μm)が規定の関係を満足する黒鉛粒子となるように製造すれば特に制限はないが、達成手段の一つとしては、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料黒鉛を造粒し、前記造粒工程は、下記1)及び2)の条件を満足する造粒剤の存在下で行うことにより得ることができる。
1)前記原料黒鉛を造粒する工程時に液体
2)造粒剤が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の内、少なくとも1種は引火点を有さない、又は引火点を有する場合には該引火点が5℃以上である。
上記造粒工程を有すれば、必要に応じて別の工程を更に有していてもよい。別の工程は単独で実施しても良いし、複数工程を同時に実施しても良い。
上記方法にて造粒処理を施すと、規定の物性の造粒剤により黒鉛粒子間の液架橋付着力が生じ、炭素材粒子同士がより強固に付着することが可能となるため、ラマンR値が高くLiイオン挿入脱離サイトが多い微粉が、造粒処理した炭素材(以降、造粒炭素材と称す。)となる母材に付着、及び/又は造粒炭素材粒子に内包された構造を取り易くなるため、ラマンR値が高くLi挿入脱離サイトが多い造粒炭素材を製造することが可能となる。 さらに、造粒剤が潤滑材として作用することによって炭素材表面への物理的ダメージが軽減され、また、造粒剤が酸素との接触が抑制されることによって造粒処理中の炭素材表面の酸化も抑制されるため、炭素材の分子構造の共役系が崩れることによる不安定炭素の生成・増大を抑制することが可能となる。
これらの結果、酸素官能基分散度と体積基準平均粒子径が規定の関係を満足する炭素材を製造することが可能となる。
上記製造方法のより好ましい実施態様として、下記の第1工程乃至第5工程を含む製造方法が挙げられる。
(第2工程)原料黒鉛と造粒剤とを混合する工程
(第3工程)原料黒鉛を造粒する工程
(第4工程)造粒剤を除去する工程
(第5工程)造粒炭素材を高純度化する工程
以下、これら工程について説明する。
本発明で用いる原料黒鉛は特に限定されず、上述した黒鉛を使用することが出来る。中でも、結晶性が高く高容量であることから天然黒鉛を使用することが好ましい。
粉砕に用いる装置に特に制限はないが、例えば、粗粉砕機としてはせん断式ミル、ジョークラッシャー、衝撃式クラッシャー、コーンクラッシャー等が挙げられ、中間粉砕機としてはロールクラッシャー、ハンマーミル等が挙げられ、微粉砕機としては、機械式粉砕機、気流式粉砕機、旋回流式粉砕機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、振動ミル、ピンミル、攪拌ミル、ジェットミル、サイクロンミル、ターボミル等が挙げられる。特に、10μm以下の炭素材粒子を得る場合には、気流式粉砕機や旋回流式粉砕機を用いることが好ましい。
分級処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、乾式篩い分けの場合は、回転式篩い、動揺式篩い、旋動式篩い、振動式篩い等を用いることができ、乾式気流式分級の場合は、重力式分級機、慣性力式分級機、遠心力式分級機(クラシファイア、サイクロン等)を用いることができ、また、湿式篩い分け、機械的湿式分級機、水力分級機、沈降分級機、遠心式湿式分級機等を用いることができる。
原料黒鉛に含まれる灰分は、全質量に対して、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。また、灰分の下限は1ppm以上であることが好ましい。
灰分が上記範囲内であると非水系二次電池とした場合に、充放電時の負極材と電解液との反応による電池性能の劣化を無視できる程度に抑えることができる。また、負極材の製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要としないため、コストの上昇も抑えられる。
X線回折は以下の手法により測定する。炭素粉末に総量の約15質量%のX線標準高純度シリコン粉末を加えて混合したものを材料とし、グラファイトモノクロメーターで単色化したCuKα線を線源とし、反射式ディフラクトメーター法で広角X線回折曲線を測定する。その後、学振法を用いて面間隔(d002)及び結晶子の大きさ(Lc)を求める。
本発明の非水系二次電池用炭素材を得るには、造粒剤を用いて原料黒鉛を造粒することが好ましい。造粒剤は、1)前記原料黒鉛を造粒する工程時に液体及び2)造粒剤が有機溶剤を含む場合、有機溶剤の内、少なくとも1種は引火点を有さない、又は引火点を有する場合には該引火点が5℃以上、の条件を満足するものである。
上記要件を満たす造粒剤を有することで、続く第3工程における原料黒鉛を造粒する工程の際に、原料黒鉛間を造粒剤が液架橋することにより、原料黒鉛間に液橋内の毛管負圧と液の表面張力によって生じる引力が粒子間に液架橋付着力として働くため、原料黒鉛間の液架橋付着力が増大し、原料黒鉛がより強固に付着することが可能となる。
HOPG表面に1.2μlの造粒剤を滴下し、濡れ広がりが収束して一秒間の接触角θの変化率が3%以下となったとき(定常状態ともいう)の接触角を接触角測定装置(協和界面社製自動接触角計DM-501)にて測定する。ここで、25℃における粘度が500cP以下の造粒剤を用いる場合には25℃における値を、25℃における粘度が500cPより大きい造粒剤を用いる場合には、粘度が500cP以下となる温度まで加温した温度における接触角θの測定値とする。
本発明は、少なくとも衝撃、圧縮、摩擦、及びせん断力のいずれかの力学的エネルギーを付与して原料炭素材を造粒する工程により製造されることが好ましい。この工程に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に、原料黒鉛の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し与える装置を用いることができる。
このような装置としては、例えば、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロン、クリプトロンオーブ(アーステクニカ社製)、CFミル(宇部興産社製)、メカノフュージョンシステム、ノビルタ、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)、シータコンポーザ(徳寿工作所社製)、COMPOSI(日本コークス工業製)等が挙げられる。これらの中で、奈良機械製作所社製のハイブリダイゼーションシステムが好ましい。
また、原料黒鉛に機械的作用を与える処理は、単に原料黒鉛を通過させるだけでも可能であるが、原料黒鉛を30秒以上、装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、より好ましくは1分以上、更に好ましくは3分以上、特に好ましくは5分以上、装置内を循環又は滞留させて処理する。
このような様々なタイプの粒子構造の造粒炭素材を安定して製造できることの一例として、全固形原料重量に対する造粒炭素材重量比で表される歩留まり(造粒炭素材重量/全固形原料重量)が通常60%以上であり、80%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
本発明においては、前記造粒剤を除去する工程を有していてもよい。造粒剤を除去する方法としては、例えば、溶剤により洗浄する方法や、熱処理により造粒剤を揮発・分解除去する方法が挙げられる。
熱処理温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは200℃以上、より更に好ましくは300℃以上、特に好ましくは400℃以上、最も好ましくは500℃であり、好ましくは1500℃以下、より好ましくは1000℃以下、更に好ましくは800℃以下である。上記範囲内にあると、十分に造粒剤を揮発・分解除去でき生産性を向上できる。
本発明においては、造粒炭素材を高純度化する工程を有していてもよい。造粒炭素材を高純度化する方法としては、硝酸や塩酸を含む酸処理を行う方法が挙げられ、活性の高い硫黄元となりうる硫酸塩を系内に導入することなく炭素材中の金属、金属化合物、無機化合物などの不純物を除去できるため好ましい。
なお、上記酸処理は、硝酸や塩酸を含む酸を用いればよく、その他の酸、例えば、臭素酸、フッ酸、ホウ酸あるいはヨウ素酸などの無機酸、または、クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸あるいはトリフルオロ酢酸などの有機酸を適宜混合した酸を用いることもできる。好ましくは濃フッ酸、濃硝酸、濃塩酸であり、より好ましくは濃硝酸、濃塩酸である。なお、本発明において硫酸にて黒鉛を処理してもよいが、本発明の効果や物性を損なわない程度の量と濃度にて用いることとする。
浸漬温度は、通常25℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは、60℃以上である。水系の酸を用いる場合の理論上限は水の沸点である100℃である。
前記処理炭素材と水との混合割合は、通常100:10以上、好ましくは100:30以上、より好ましくは、100:50以上、更に好ましくは、100:100以上であり、また100:1000以下、好ましくは100:700以下、より好ましくは100:500以下、更に好ましくは100:400以下である。
本発明においては、造粒炭素材の不安定炭素量や結晶性を調整するため、熱処理する工程を有していてもよい。上述の造粒処理を施す場合には炭素材粒子表面の不安低炭素量が増大しすぎる場合があり、熱処理を行なうことによって、不安低炭素量を適度に少なくすることができる。
熱処理時の温度条件は特に制限されないが、目的とする結晶化度の程度に応じて、通常300℃以上、好ましくは500℃、更に好ましくは700℃、特に好ましくは800℃以上、また、通常2000℃以下、好ましくは1500℃以下、特に好ましくは1200℃以下の範囲である。上記温度条件であると、炭素材粒子表面の結晶性を適度に高めることができる。
また、造粒炭素材として結晶性が低い炭素材を含有する場合、放電容量を大きくすること目的とし、本工程において結晶性の低い炭素材を黒鉛化して結晶性を高めることが出来る。熱処理時の温度条件は特に制限されないが、目的とする結晶化度の程度に応じて、通常600℃以上、好ましくは900℃、更に好ましくは1600℃、特に好ましくは2500℃以上、また、通常3200℃以下、好ましくは3100℃以下の範囲である。上記温度条件であると、炭素材粒子表面の結晶性を高めることができる。
熱処理を行なう時に、温度条件を上記範囲に保持する保持時間は特に制限されないが、通常10秒より長時間であり、72時間以下である。
熱処理は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下、又は、原料黒鉛から発生するガスによる非酸化性雰囲気下で行なう。熱処理に用いる装置としては特に制限はないが、例えば、シャトル炉、トンネル炉、電気炉、リードハンマー炉、ロータリーキルン、直接通電炉、アチソン炉、抵抗加熱炉、誘導加熱炉等を用いることができる。
造粒炭素材に、さらに造粒炭素材より結晶性が低い炭素質物を添着した複合炭素材を「炭素質物複合炭素材」と呼ぶことがある)。
また、分解系重質油を熱処理することで得られるエチレンタールピッチ、FCCデカントオイル、アシュランドピッチなどの熱処理ピッチ等を挙げることができる。さらにポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール等のビニル系高分子と3-メチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、3,5-ジメチルフェノールホルムアルデヒド樹脂等の置換フェノール樹脂、アセナフチレン、デカシクレン、アントラセンなどの芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジンなどの窒素環化合物、チオフェンなどのイオウ環化合物などを挙げることができる。また、固相で炭素化を進行させる有機化合物としては、セルロースなどの天然高分子、ポリ塩化ビニリデンやポリアクリロニトリルなどの鎖状ビニル樹脂、ポリフェニレン等の芳香族系ポリマー、フルフリルアルコール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等熱硬化性樹脂やフルフリルアルコールのような熱硬化性樹脂原料などを挙げることができる。これらの中でも石油系重質油が好ましい。
形状は任意であるが、平均粒径は、通常2~50μmであり、5~35μmが好ましく、特に8~30μmである。上記粒径範囲となるよう、必要に応じて、解砕及び/又は粉砕及び/又は分級を行う。
炭素質物複合炭素材中の炭素質物の含有量は、原料となる造粒黒鉛に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.3%以上、特に好ましくは0.7質量%以上であり、また前記含有量は、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは7質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。
一方、含有量が小さすぎると、被覆による効果が得られにくくなる傾向がある。
(w1を造粒炭素材の質量(kg)、w2を炭素質物複合炭素材の質量(kg)とする)
また、本発明では、極板の配向性、電解液の浸透性、導電パス等を向上させ、サイクル特性、極版膨れ等の改善を目的とし、前記造粒炭素材とは異なる炭素材料を混合することができる(以下、前記造粒炭素材に、前記造粒炭素材とは異なる炭素材料を混合して得られた炭素材を「混合炭素材」と呼ぶことがある)。
前記炭素材とは異なる炭素材料としては、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、炭素材を炭素質物で被覆した被覆黒鉛、非晶質炭素、金属粒子や金属化合物を含有した炭素材の中から選ばれる材料を用いることができる。これらの材料は、何れかを一種を単独で用いても良く、二種以上を任意の組み合わせ及び組成で併用しても良い。
天然黒鉛のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、また、通常30m2/g以下、好ましくは15m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
また、天然黒鉛のタップ密度は、通常0.6g/cm3以上、0.7g/cm3以上が好ましく、0.8g/cm3以上がより好ましく、0.85g/cm3以上が更に好ましい。また、通常1.3g/cm3以下、1.2g/cm3以下が好ましく、1.1g/cm3以下がより好ましい。この範囲であれば高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm、更に好ましくは30μm以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
人造黒鉛のBET比表面積は、通常0.5m2/g以上、好ましくは1.0m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下、更に好ましくは4m2/g以下の範囲である。この範囲であれば、極板膨れの抑制や工程性が良好となるため好ましい。
被覆黒鉛のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは2.5m2/g以上、また、通常20m2/g以下、好ましくは10m2/g以下、更に好ましくは8m2/g以下、特に好ましくは5m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素の体積基準平均粒径は、通常5μm以上、好ましくは12μm以上、また、通常60μm以下、好ましくは40μm以下の範囲である。この範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
非晶質炭素のBET比表面積は、通常1m2/g以上、好ましくは2m2/g以上、更に好ましくは2.5m2/g以上、また、通常8m2/g以下、好ましくは6m2/g以下、更に好ましくは4m2/g以下の範囲である。比表面積がこの範囲であれば、高速充放電特性、工程性が良好となるため好ましい。
金属粒子の体積基準平均粒径は、サイクル寿命の観点から、通常0.005μm以上、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.03μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒径がこの範囲であると充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性を得ることができる。
金属粒子のBET比表面積は、通常0.5m2/g以上120m2/g以下、1m2/g以上100m2/g以下であることが好ましい。比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
・酸素官能基分散度と体積基準平均粒子径(d50)の関係
本発明の炭素材は、下記式(1)の関係を満足するものである。
(式1)
100Y+0.26X>α
(式中、Yは下記式2で表される酸素官能基分散度、Xは体積基準平均粒子径(d50)(μm)、α=9.4である)
(式2)
酸素官能基分散度(Y)=元素分析法から求められる全酸素含有率(mol%)/X線光
電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)(mol%)
上記式(1)で表される関係が満足できない場合、粒子内部において効率良くLiイオン挿入脱離を行うことが出来ずに、低温入出力特性や容量が低下する傾向がある。
本発明の炭素材の体積基準平均粒径(「d50」とも記載する)は好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上、最も好ましくは12μm以上である。また平均粒径d50は、通常50μm以下、好ましくは40μm以下、より好ましくは35μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。平均粒径d50が小さすぎると、前記炭素材を用いて得られる非水系二次電池の不可逆容量の増加、初期電池容量の損失を招く傾向があり、一方平均粒径d50が大きすぎるとスラリー塗布における筋引きなどの工程不都合の発生、高電流密度充放電特性の低下、低温入出力特性の低下を招く場合がある。
X線光電子分光法測定(XPS)としてX線光電子分光器(例えば、アルバック・ファイ社製ESCA)を用い、測定対象(ここでは黒鉛材料)を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280~300eV)とO1s(525~545eV)のスペクトルを測定する。得られたC1sのピークトップを284.3eVとして帯電補正し、C1sとO1sのスペクトルのピーク面積を求め、更に装置感度係数を掛けて、CとOの表面原子濃度をそれぞれ算出する。得られたそのOとCの原子濃度比O/C(O原子濃度/C原子濃度)×100を炭素材料の表面官能基量O/C値と定義する。
XPSより求められるO/C値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、特に好ましくは0.5以上、最も好ましくは0.7以上、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.2以下、特に好ましくは1以下、最も好ましくは0.8以下である。この表面官能基量O/C値が上記範囲内であれば、負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が促進され急速充放電特性が良好となり、電解液との反応性が抑制され充放電効率が良好となる傾向がある。
酸素窒素水素量測定として、酸素窒素水素分析装置(LECO社製ONH分析計TCH600)を用い、炭素材50mgをインパルス炉にて不活性ガス雰囲気下で溶融分解し、排出されたキャリアガス中の一酸化炭素量、及び二酸化炭素量を赤外検出器で検出することにより、炭素材に含まれる全含有酸素量(mol%)を算出する。
酸素窒素水素量測定より求められる全含有酸素量(mol%)は、好ましくは0.001mol%以上、より好ましくは0.01mol%以上、更に好ましくは0.02mol%以上、特に好ましくは0.03mol%以上、最も好ましくは0.04mol%以上、好ましくは0.5mol%以下、より好ましくは0.2mol%以下、更に好ましくは0.15mol%以下、特に好ましくは0.1mol%以下、最も好ましくは0.08mol%以下である。全含有酸素量(mol%)が上記範囲内であれば、負極活物質表面におけるLiイオンと電解液溶媒の脱溶媒和反応性が促進され急速充放電特性が良好となり、電解液との反応性が抑制され充放電効率が良好となる傾向がある。
本発明の炭素材の酸素官能基分散度は、通常0.01以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.07以上、通常1以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
上記範囲内であるということは、粒子表面における酸素官能基の偏在が抑制され、酸素官能基が粒子内部にも分散していることを示している。酸素官能基はLiイオンの挿入脱離サイトとして機能する黒鉛結晶端面部分に存在することから、本炭素材は粒子表面だけでなく内部にも適度なLiイオン挿入脱離サイトを有していることが示唆される。このため上記範囲内であれば、粒子内部においても効率良くLiイオン挿入脱離を行うことが可能になり、高容量且つ良好な低温入出力特性を示す傾向がある。
本発明の炭素材の下記式3で表されるラマンR値は、通常0.01以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.3以上、最も好ましくは0.35以上である。また、ラマンR値の上限に特に制限はないが、通常1以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
ラマン値R=ラマンスペクトル分析における1360cm-1付近のピークPBの強度IB/1580cm-1付近のピークPAの強度IA
なお、本明細書において「1580cm-1付近」とは1580~1620cm-1の範囲を、「1360cm-1付近」とは1350~1370cm-1の範囲を指す。
試料上のレーザーパワー :25mW
分解能 :4cm-1
測定範囲 :1100cm-1~1730cm-1
ピーク強度測定、ピーク半値幅測定:バックグラウンド処理、スムージング処理(単純平均によるコンボリューション5ポイント)
本発明の炭素材のBET法により測定した比表面積(SA)は、好ましくは1m2/g以上、より好ましくは5m2/g以上、更に好ましくは8m2/g以上、最も好ましくは12m2/g以上、最も好ましくは13m2/g以上である。また、好ましくは30m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、更に好ましくは17m2/g以下である。比表面積が上記範囲内であると、Liが出入りする部位を十分確保することができるため高速充放電特性出力特性に優れ、活物質の電解液に対する活性も適度抑えることができるため、初期不可逆容量が大きくならず、高容量電池を製造できる傾向にある。
本発明の炭素材の円形度は、0.88以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.91以上、更に好ましくは0.92以上である。また、円形度は好ましくは1以下、より好ましくは0.98以下、更に好ましくは0.97以下である。円形度が上記範囲内であると、非水系二次電池の高電流密度充放電特性の低下を抑制できる傾向にある。なお、円形度は以下の式で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
円形度が上記範囲内であると、円形度が上記範囲内であると、Liイオン拡散の屈曲度が下がって粒子間空隙中の電解液移動がスムーズになり、且つ適度に炭素材同士が接触することが可能なため、良好な急速充放電特性、及びサイクル特性を示す傾向がある。
本発明の炭素材のタップ密度は好ましくは0.7g/cm3以上、より好ましくは0.75g/cm3以上、更に好ましくは0.80g/cm3以上、特に好ましくは0.85g/cm3以上、好ましくは1.3g/cm3以下であり、より好ましくは1.2g/cm3以下であり、更に好ましくは1.1g/cm3以下である。
前記タップ密度は、粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して本発明の炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度として定義する。
本発明の炭素材の、学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、好ましくは0.335nm以上、0.340nm未満である。ここで、d値はより好ましくは0.339nm以下、更に好ましくは0.337nm以下である。d002値が上記範囲内にあると、黒鉛の結晶性が高いため、初期不可逆容量が増加を抑制する傾向にある。ここで、0.335nmは黒鉛の理論値である。
本発明の非水系二次電池用負極(以下適宜「電極シート」ともいう。)は、集電体と、集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、活物質層は少なくとも本発明の炭素材とを含有することを特徴とする。更に好ましくはバインダを含有する。
バインダとしては、分子内にオレフィン性不飽和結合を有するものを用いる。その種類は特に制限されないが、具体例としては、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などが挙げられる。このようなオレフィン性不飽和結合を有するバインダを用いることにより、活物質層の電解液に対する膨潤性を低減することができる。中でも入手の容易性から、スチレン-ブタジエンゴムが好ましい。
本発明においては、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダも、本発明の効果が失われない範囲において、上述のオレフィン性不飽和結合を有するバインダと併用することができる。オレフィン性不飽和結合を有するバインダに対する、オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの混合比率は、好ましくは150質量%以下、より好ましくは120質量%以下の範囲である。
オレフィン性不飽和結合を有さないバインダの例としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カラギナン、プルラン、グアーガム、ザンサンガム(キサンタンガム)等の増粘多糖類、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニルアルコール類、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ酸、或いはこれらポリマーの金属塩、ポリフッ化ビニリデン等の含フッ素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのアルカン系ポリマー及びこれらの共重合体などが挙げられる。
スラリーを集電体上に塗布した後、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは195℃以下の温度で、乾燥空気又は不活性雰囲気下で乾燥し、活物性層を形成する。
本発明の非水系二次電池、特にリチウムイオン二次電池の基本的構成は、従来公知のリチウムイオン二次電池と同様であり、通常、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備える。負極としては、上述した本発明の負極を用いる。
正極は、正極活物質及びバインダを含有する正極活物質層を、集電体上に形成したものである。
正極板は、前記したような負極の製造と同様の手法で、正極活物質やバインダを溶剤でスラリー化し、集電体上に塗布、乾燥することにより形成する。正極の集電体としては、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール(SUS)などが用いられるが、何ら限定されない。
非水系電解液に使用される非水系溶媒は特に制限されず、従来から非水系電解液の溶媒として提案されている公知の非水系溶媒の中から、適宜選択して用いることができる。例えば、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;1,2-ジメトキシエタン等の鎖状エーテル類;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、スルホラン、1,3-ジオキソラン等の環状エーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル類などが挙げられる。
また、上述の非水系電解液に有機高分子化合物を含ませ、ゲル状、ゴム状、或いは固体シート状にして使用する場合、有機高分子化合物の具体例としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系高分子化合物;ポリエーテル系高分子化合物の架橋体高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどのビニルアルコール系高分子化合物;ビニルアルコール系高分子化合物の不溶化物;ポリエピクロルヒドリン;ポリフォスファゼン;ポリシロキサン;ポリビニルピロリドン、ポリビニリデンカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのビニル系高分子化合物;ポリ(ω-メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート)、ポリ(ω-メトキシオリゴオキシエチレンメタクリレート-co-メチルメタクリレート)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン-フッ化ビニリデン)等のポリマー共重合体などが挙げられる。
正極と負極との間には通常、電極間の短絡を防止するために、多孔膜や不織布などの多孔性のセパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、多孔性のセパレータに含浸させて用いる。セパレータの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエーテルスルホンなどが用いられ、好ましくはポリオレフィンである。
実施例において、製造した負極材の物性は以下の方法により測定した。また、造粒剤の粘度、接触角、表面張力、rcosθは、それぞれ明細書中に記載の方法により測定した。
実施例又は比較例の黒鉛質粒子を用い、活物質層密度1.35±0.03g/cm3、又は1.60±0.03g/cm3の活物質層を有する極板を作製した。具体的には、負極材50.00±0.02gに、1質量%カルボキシメチルセルロースナトリウム塩水溶液を50.00±0.02g(固形分換算で0.500g)、及び重量平均分子量27万のスチレン・ブタジエンゴム水性ディスパージョン1.00±0.05g(固形分換算で0.5g)を、キーエンス製ハイブリッドミキサーで5分間撹拌し、30秒脱泡してスラリーを得た。
上記方法で作製した、負極材料が9.0±0.3mg/cm2付着した、活物質層の密度が1.60±0.03g/cm3の電極シートを直径12.5mmの円盤状に打ち抜き、リチウム金属箔を直径14mmの円板状に打ち抜き対極とした。両極の間には、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:7)に、LiPF6を1mol/Lになるように溶解させた電解液を含浸させたセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、2016コイン型電池をそれぞれ作製した。
上記方法で作製した、負極材料が6.0±0.3mg/cm2付着した、活物質層の密度が1.35±0.03g/cm3の電極シートを4cm×3cmに切り出し負極とし、NMCからなる正極を同面積で切り出し、負極と正極の間にはセパレータ(多孔性ポリエチレンフィルム製)を置き、組み合わせた。エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(容積比=3:3:4)に、LiPF6を1.2mol/Lになるように溶解させた電解液を200μl注液してラミネート型電池を作製した。
上述の方法で作製した非水系二次電池(2016コイン型電池)を用いて、下記の測定方法で電池充放電時の容量を測定した。
0.05Cの電流密度でリチウム対極に対して5mVまで充電し、さらに5mVの一定電圧で電流密度が0.005Cになるまで充電し、負極中にリチウムをドープした後、0.1Cの電流密度でリチウム対極に対して1.5Vまで放電を行った。引き続き同電流密度で2回目の充放電を行い、この2サイクル目の放電容量を本材料の放電容量とした。
上記非水電解液二次電池の作製法により作製したラミネート型非水電解液二次電池を用いて、下記の測定方法で低温出力特性を測定した。
充放電サイクルを経ていない非水電解液二次電池に対して、25℃で電圧範囲4.1V~3.0V、電流値0.2C(1時間率の放電容量による定格容量を1時間で放電する電流値を1Cとする、以下同様)にて3サイクル、電圧範囲4.2V~3.0V、電流値0.2Cにて(充電時には4.2Vにて定電圧充電をさらに2.5時間実施)2サイクル、初期充放電を行った。
さらに、SOC50%まで電流値0.2Cで充電を行った後、-30℃の低温環境下で、1/8C、1/4C、1/2C、1.5C、2Cの各電流値で2秒間定電流放電させ、各々の条件の放電における2秒後の電池電圧の降下を測定し、それらの測定値から充電上限電圧を3Vとした際に、2秒間に流すことのできる電流値Iを算出し、3×I(W)という式で計算される値をそれぞれの電池の低温出力特性とした。
X線光電子分光法測定としてX線光電子分光器を用い、測定対象を表面が平坦になるように試料台に載せ、アルミニウムのKα線をX線源とし、マルチプレックス測定により、C1s(280~300eV)とO1s(525~545eV)のスペクトルを測定した。
酸素窒素水素分析装置(LECO社製ONH分析計TCH600)を用い、炭素材50mgをインパルス炉にて不活性ガス雰囲気下で溶融分解し、排出されたキャリアガス中の一酸化炭素量、及び二酸化炭素量を赤外検出器で検出することにより、炭素材に含まれる全含有酸素量を算出した。
表面積計(大倉理研社製比表面積測定装置「AMS8000」)を用い、炭素材0.4gをセルに充填し、炭素材試料に対して窒素流通下350℃で15分間予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET法によって測定した。
<d50>
界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(例として、ツィーン20(登録商標)が挙げられる)の0.2質量%水溶液10mLに、炭素材0.01gを懸濁させ、これを測定サンプルとして市販のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えばHORIBA製LA-920)に導入し、測定サンプルに28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、前記測定装置において体積基準のメジアン径として測定した。
フロー式粒子像分析装置(東亜医療電子社製FPIA-2000)を使用し、円相当径による粒径分布の測定および平均円形度の算出を行った。分散媒としてイオン交換水を使用し、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)モノラウレートを使用した。円相当径とは、撮影した粒子像と同じ投影面積を持つ円(相当円)の直径であり、円形度とは、相当円の周囲長を分子とし、撮影された粒子投影像の周囲長を分母とした比率である。測定した相当径が1.5~40μmの範囲の粒子の円形度を平均し、平均円形度とした。
粉体密度測定器を用い、直径1.6cm、体積容量20cm3の円筒状タップセルに、目開き300μmの篩を通して本発明の炭素材を落下させて、セルに満杯に充填した後、ストローク長10mmのタップを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から求めた密度として定義した。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を乾式旋回流式粉砕機により粉砕し、d50が8.1μm、Tapが0.39g/cm3、水分量0.08質量%の鱗片状天然黒鉛を得た。得られた鱗片状天然黒鉛100gに造粒剤として流動パラフィン(和光純薬工業社製、一級、25℃における物性:粘度=95cP、接触角=13.2°、表面張力=31.7mN/m、rcosθ=30.9)を12g添加して撹拌混合した後、得られたサンプルをハンマーミル(IKA社製MF10)で回転数3000rpmにて解砕混合し、造粒剤が添着した鱗片状天然黒鉛を得た。得られたサンプルを、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による造粒処理を行った。得られたサンプルを窒素雰囲気化、500℃で熱処理を行い、造粒剤が除去された造粒炭素材を得た。前記測定法でd50、SA、Tap、円形度、O/C、全含有酸素量、酸素官能基分散度、放電容量、低温出力特性を測定した。結果を表1、表2に示す。
熱処理温度を700℃とした以外は実施例1と同様の方法にてサンプルを得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を粉砕ローターとライナーを有する機械式粉砕機により粉砕し、d50が30μm、水分量0.03質量%の鱗片状天然黒鉛を得た。得られた鱗片状天然黒鉛100gに造粒剤として流動パラフィン(和光純薬工業社製、一級、25℃における物性:粘度=95cP、接触角=13.2°、表面張力=31.7mN/m、rcosθ=30.9)を4g添加して撹拌混合した後、得られたサンプルをハンマーミル(IKA社製MF10)で回転数3000rpmにて解砕混合し、造粒剤が添着した鱗片状天然黒鉛を得た。得られたサンプルを、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による造粒処理を行った。得られたサンプルを窒素雰囲気化、700℃で熱処理を行い、造粒剤が除去された造粒炭素材を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
造粒剤として流動パラフィン(和光純薬工業社製、一級)を6g添加した以外は実施例3と同様の方法にてサンプルを得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度85m/秒で10分間の機械的作用による造粒処理を行った。得られたサンプルには母材に付着、及び造粒粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉が多く存在していることが確認された。このサンプルを分級し、上記鱗片黒鉛状微粉を除去し、d50が10.9μmの造粒炭素材を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
比較例1の造粒炭素材に、窒素雰囲気化、700℃で熱処理を行った以外は実施例1と同様の方法にてサンプルを得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度85m/秒で5分間の機械的作用による造粒処理を行った。得られたサンプルには母材に付着、及び造粒粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉が多く存在していることが確認された。このサンプルを分級により上記鱗片黒鉛状微粉を除去して、d50が15.4μmの造粒炭素材を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
d50が100μmの鱗片状天然黒鉛を、奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度70m/秒で3分間の機械的作用による造粒処理を行った。得られたサンプルには母材に付着、及び造粒粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉が多く存在していることが確認された。このサンプルを分級により上記鱗片黒鉛状微粉を除去して、d50が19.5μmの造粒炭素材を得た。得られた造粒炭素材をさらに奈良機械製作所製ハイブリダイゼーションシステムNHS-1型にて、ローター周速度70m/秒で3分間の機械的作用による造粒処理を行った後、分級により母材に付着、及び造粒粒子に内包されていない状態の鱗片黒鉛状微粉を除去して、d50が18.2μmの造粒炭素材を得た。実施例1同様の測定を行った結果を表1、表2に示す。
Claims (6)
- リチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な非水系二次電池用炭素材であって、該炭素材は下記式1の関係を満足し、
該炭素材のX:体積基準平均粒径(d50)は、12.7μm以上、19.4μm以下、
該炭素材のY:酸素官能基分散度は、0.047以上、0.108以下である黒鉛粒子であることを特徴とする非水系二次電池用炭素材。
(式1)
100Y+0.26X>α
(式中、Yは下記式2で表される酸素官能基分散度、Xは体積基準平均粒子径(d50)(μm)、α=9.4である)
(式2)
酸素官能基分散度(Y)=元素分析法から求められる全酸素含有率(mol%)/X線光電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)(mol%) - X線光電子分光法から求められる表面含酸素率(O/C)が2mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 前記炭素材のTap密度が0.7g/cm3以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 前記炭素材のフロー式粒子像分析より求められる平均円形度が0.88以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- 前記黒鉛粒子が鱗片状、鱗状黒鉛、及び塊状黒鉛からなる球状黒鉛粒子であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非水系二次電池用炭素材。
- リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに、電解質を備えると共に、該負極が集電体と該集電体上に形成された負極活物質層とを備えると共に、該負極活物質層が請求項1乃至5の何れか一項に記載の炭素材を含有することを特徴とする非水系二次電池。
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