JP7183536B2 - ポリエステルエラストマーを溶着する成形体用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物および複合成形体 - Google Patents
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Description
しかし、射出成形品の成形効率は良いが、その流動特性や金型構造の点から形状に制限があり、例えば、中空成形体などの成形が困難であった。このため、従来、製品形状の複雑な部品同士の接合においては、接着剤による接合、ボルトなどによる機械的接合などが行われてきた。しかしながら、接着剤ではその接着強度が、また、ボルトなどによる機械的接合では、費用、締結の手間、重量増が問題となっている。
[1] ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)20~95質量%、ポリエステルエラストマー(B)4~42質量%、共重合ポリエステル樹脂(C)0~50質量%、及び繊維断面が非円形であるガラス繊維(D)1~60質量%を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、ポリエステルエラストマーを溶着する成形体用であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[2] 前記ガラス繊維(D)が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5~8である扁平断面ガラス繊維、またはまゆ形断面ガラス繊維である[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3] 前記共重合ポリエステル樹脂(C)が、エチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位に、アルキル側鎖含有グリコール及びイソフタル酸の少なくとも一方を共重合したポリエステル樹脂である[1]または[2]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体とポリエステルエラストマーが溶着された複合成形体。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体を金型内にインサート材として配し、ポリエステルエラストマーを射出成形により溶着させる複合成形体の製造方法。
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジカルボン酸と、1、4-ブタンジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主たる成分とするジオールとを重縮合反応させるなどの一般的な重合方法によって得ることができる重合体である。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ブチレンテレフタレートの繰返し単位が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
本発明で使用するポリエステルエラストマー(B)とは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族及び/又は脂環族のグリコールを構成成分とするポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリカーボネートから選ばれる少なくとも1種のソフトセグメントが結合したポリエステルエラストマーであることが好ましい。
また、脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペートなどが挙げられる。
本発明における共重合ポリエステル樹脂(C)としては、構成する全酸成分を100モル%、構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、エチレングリコールが40モル%以上かつ、テレフタル酸とエチレングリコールの合計が80~180モル%を占める樹脂、または1,4-ブタンジオールが40モル%以上かつ、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの合計が80~180モル%を占める樹脂が好ましい。共重合成分として、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコール及び2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。エチレングリコール、1,4-ブタンジオールは、主成分に含まれないポリエステル樹脂において、共重合成分となり得る。
共重合ポリエステル樹脂(C)を構成する全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合は20~60モル%が好ましく、25~50モル%がより好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、繊維断面が非円形であるガラス繊維(D)を含有する。ガラス繊維(D)の平均繊維長は特に限定されないが、例えば0.1~20mmの範囲で選ぶことが好ましく、0.3~5mmであることがより好ましい。平均繊維長が0.1mm未満であると、補強効果が十分に発現しない恐れがあり、20mmを超えると、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形が困難になる恐れがある。
その他、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料等の着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料等が挙げられる。
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
これら各種添加剤は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を100質量%とした時、合計で5質量%まで含有させることができる。つまり、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物100質量%中、前記(A)、(B)、(C)、(D)の合計は95~100質量%であることが好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する製造法としては、上記配合組成にて任意の配合順列で配合した後、タンブラー或いはヘンシェルミキサー等で混合し、溶融混錬される。溶融混錬方法は、当業者に周知のいずれかの方法が可能であり、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等が使用できるが、なかでも2軸押出機を使用することが好ましい。また、加工時の揮発成分、分解低分子成分を除去するため、ガラス繊維投入部分のサイド口と押し出し機先端のダイヘッドとの間で真空ポンプによる吸引を行うことが望ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、射出成形等の公知の成形方法により、成形体とすることができる。この成形体は、以下に説明する複合材料に供することができる。
以下、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体とポリエステルエラストマーが溶着された複合成形体について説明する。この複合成形体は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体を金型内にインサート材として配し、ポリエステルエラストマーを射出成形により溶着させることにより得られる。インサート成形において、金型内に配置される材料(インサート材)は、一次材料と呼ばれ、本発明においては、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体がこれに相当する。インサート材が配置された金型に、射出される材料は、二次材料と呼ばれ、本発明においては、ポリエステルエラストマーが該当する。
0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
(2)ポリエステルエラストマーの還元粘度
0.05gのサンプルを25mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比))に溶かし、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。(単位:dl/g)
(3)ポリエステルエラストマーの硬度(表面硬度)
JIS K7215(-1986)に準じて測定した。試験片は、シリンダー温度240℃、金型温度50℃にて作製した射出成形品(長さ100mm、幅100mm、厚み2mm)を3枚重ねたものを使用し、測定圧5000g、タイプDの圧子を用いたデュロメーターにより測定し、測定開始5秒後の値をD硬度(ショアD硬度)とした。
コンパウンドして得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物ペレットを射出成形機(日本製鋼所社製J110AD-110H)で、シリンダー温度=230℃、金型温度=50℃、射出速度=50mm/sec、保圧40MPaでISO3167に準じた引張試験ダンベルの半分の形状のものを得た。
(5)インサート成形
前記で得たISOの引張試験の半ダンベルをISO引張試験ダンベル成形金型キャビティに装着後、ポリエステルエラストマーをシリンダー温度230℃で残りのダンベル部分を射出成形し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とポリエステルエラストマーとが中央部で接合(溶着)したISO引張試験ダンベルを得た。ポリエステルエラストマーとしては、下記に示すポリエステルエラストマー(B-2)を用いた。
(6)接合性の評価
前記で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とポリエステルエラストマーとが中央部で接合したISO引張試験ダンベルをISO-527-1.2に準じて測定し、当該ダンベルの破断伸度(%)を求め、さらにポリエステルエラストマーの状態を評価した。
上記引張試験において、伸度30%以上の試験後試験片を確認すると、ポリブチレンテレフタレート組成物の接合部にポリエステルエラストマーが付着しており、接合の痕跡が確認された。よって、伸度30%以上の場合、応力発生部位において十分な接合強度を有していると判断した。
ISO-178に準じて測定した。
(8)シャルピー衝撃強度
JIS K7111に準じて測定した。
(9)外観評価
上記の製造方法で得られたペレットを130℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製J110AD-110H)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度60℃の条件で成形した100×100×2mmtの射出成形試験片を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
不良:試験片表面全体に白い斑がある
良:試験片表面全体に白い斑がわずかにある
最良:試験片表面全体に白い斑がほとんど観察されない
以上の評価結果を、以下の表1に示す。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A);
(A-1)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 東洋紡社製 固有粘度0.83dl/g
(A-2)ポリブチレンテレフタレート樹脂: 東洋紡社製 固有粘度1.30dl/g
(B-1)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BG)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量1000)が100//71.8/28.2(モル%)のポリエステルエラストマー: 融点は172℃、還元粘度は2.22dl/g、酸価は35eq/ton、D硬度は38
(B-2)テレフタル酸(TPA)//1,4-ブタンジオール(BG)/ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG;数平均分子量2000)が100//75/25(モル%)のポリエステルエラストマー: 融点は180℃、還元粘度は2.50dl/g、酸価は21eq/ton、D硬度は31
(B-3)アクリル系エラストマー: 日油(株)製、モディパーA6300(エチレンエチルアクリレート(EEA)-グラフト-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート(P(BA/MMA))
(C-1)TPA//EG(エチレングリコール)/NPG(ネオペンチルグリコール)=100//70/30(モル%)の組成比の共重合体: 東洋紡社製、バイロン(登録商標)の試作品、ガラス転移温度75℃、固有粘度 0.83dl/g
(C-2)TPA/IPA(イソフタル酸)//EG/NPG(ネオペンチルグリコール)=50/50//50/50(モル%)の組成比の共重合体: 東洋紡社製、バイロン(登録商標)の試作品、ガラス転移温度67℃、固有粘度 0.53dl/g
(D-1)ガラス繊維(平均繊維長3mm): CSG3PL830F、扁平断面、長径と短径の比:2(短径10μm、長径20μm)(日東紡社製)
(D-2)ガラス繊維(平均繊維長3mm): ECS303T、扁平断面、長径と短径の比:3.5(短径8μm、長径28μm)(CPIC社製)
(D-3)ガラス繊維(平均繊維長3mm、平均繊維径11μm): T-120H、丸断面、長径と短径の比:1(日本電子硝子社製)
酸化防止剤1: イルガノックス1010(チバスペシャリティケミカルズ社製)
酸化防止剤2: シーノックス412S(シプロ化成社製)
離型剤: WE40(クラリアントジャパン社製)
表1に示す組成になるように、各成分をタンブラーにてブレンド後、二軸押出機(コペリオン社製STS35使用)で溶融混練して組成物ペレットを得た。
得られた組成物ペレットを乾燥後、上記した方法によって評価した。物性評価の(7)~(9)は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に対して行われ、接合性評価(6)は、複合成形体に対して行われた。その結果を表1に示した。
実施例8~10のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られる成形品では、共重合ポリエステル樹脂を併用することで接着性の向上が確認できる。接着時に海島構造の海部分であるポリブチレンテレフタレート樹脂のTc2が下がることで、ポリエステルエラストマー同士の接着がしやすくなったことに由来する。さらに異形断面ガラス繊維と共重合ポリエステル樹脂を併用することで、更なる外観向上が可能になったことが明らかである。
実施例11~13より、前記種々効果は、特定の材料を使用した場合に限られたものではないことが分かる。
比較例1~5より、前記種々効果は、本願発明で規定する材料を全て併用することで効果が最大限に発揮されるものであることが分かる。
Claims (4)
- ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)20~95質量%、ポリエステルエラストマー(B)4~42質量%、共重合ポリエステル樹脂(C)0~50質量%、及び繊維断面が非円形であるガラス繊維(D)1~60質量%を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記ガラス繊維(D)が、繊維断面の長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5~8である扁平断面ガラス繊維、またはまゆ形断面ガラス繊維であり、ポリエステルエラストマーを溶着する成形体用であるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 前記共重合ポリエステル樹脂(C)が、エチレンテレフタレート単位またはブチレンテレフタレート単位に、アルキル側鎖含有グリコール及びイソフタル酸の少なくとも一方を共重合したポリエステル樹脂である請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 請求項1~2のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体とポリエステルエラストマーが溶着された複合成形体。
- 請求項1~2のいずれかに記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形体を金型内にインサート材として配し、ポリエステルエラストマーを射出成形により溶着させる複合成形体の製造方法。
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