JP7169818B2 - 吸収性物品 - Google Patents
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Description
(A)排泄によって、シートに配合した酸性の成分が流れ落ちると、排泄を繰り返した場合に、酸性成分によるアルカリ化抑止効果を期待できない。
(B)吸収性物品の着用者が排泄していない状態では、酸性の成分(例えばpH3程度)を含むシートが着用者の肌に触れ続けることになり、肌に負担がかかる。
(C)吸収性物品のうち、体圧がかかる部位では、排泄物とともに、まだ反応していない酸性成分が逆戻りして、着用者の肌に触れてしまうおそれがある。
特許文献1記載の吸収性物品は、表面シートに凸部を設ける必要があり、弱酸性化剤の配合部位も限定されるため、吸収性物品の構造が限定されるとともに、製造方法を簡略化しづらいという問題がある。
<第1の態様>
肌側に設けたトップシートと、前記トップシートの裏側に設けた吸収体を有する吸収性物品であって、
前記トップシートは複数の層で構成され、
前記複数の層のうち、肌側に位置する層は酸を含んでおらず、裏側に位置する層は酸を含んでいることを特徴とする吸収性物品。
第1の態様においては、トップシートに酸が含まれている。このトップシートは、中間シートや包装シートと異なり、着用者の肌に直接触れるという特殊性がある。そのため、トップシートに付着した排泄物がアルカリ側へ傾くことを防止することが特に重要となる。そこで、トップシートに酸を含ませることにより、アルカリ側への傾きを防ぐことができ、着用者の肌への負担を軽減することができる。例えば、着用者が排尿した場合、ウレアーゼによって、尿中に含まれる尿素がアンモニアに分解されるが、トップシートの酸によって、このアンモニアを中和することができる。
前記トップシートに含まれる酸は、水溶性の酸であり、
前記トップシートは、前記水溶性の酸とともに親水剤を含む前記第1の態様に記載の吸収性物品。
トップシートに含まれる酸は、水溶性の酸が好ましい。難溶性の酸は、親水剤との親和性が低く、トップシートを構成する繊維に付着しづらいからである。
前記親水剤は、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル-ポリエステルブロック共重合体、ポリエーテル変性シリコーンもしくはエチレンオキサイド付加多価アルコールの脂肪酸エステルまたはこれらの組み合わせを含む前記第2の態様に記載の吸収性物品。
トップシートに含ませる親水剤は、水溶性の酸が流れ落ちることを防止する効果が高いものが好ましい。このような効果が高い親水剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエーテル-ポリエステルブロック共重合体、ポリエーテル変性シリコーンおよびエチレンオキサイド付加多価アルコールの脂肪酸エステルを単体で用いても良いし、これらを組み合わせて用いても良い。また、これらのいずれかの物質と公知の他の物質を組み合わせたものを用いても良い。
前記水溶性の酸と前記親水剤を含む前記トップシートは、
人工尿の滴下試験において、第1回目の計測結果が10点、第2回目の計測結果が10点、かつ第3回目の計測結果が9点以上である前記第2の態様または第3の態様に記載の吸収性物品。
トップシートが複数の層で構成されており、その複数の層のうち、肌側に位置する層は水溶性の酸を含んでおらず、裏側に位置する層は水溶性の酸を含んでいるトップシートを用意し、このトップシートに対して人工尿の滴下試験を行い、第1回目の計測結果が10点、第2回目の計測結果が10点、かつ第3回目の計測結果が9点以上となるトップシートを吸収性物品に用いると良い。なぜならば、着用者が複数回排泄した場合であっても、このトップシートから水溶性の酸と親水剤が流れ落ちにくいため、長期にわたって着用者の肌への負担を軽減することができるからである。なお、人工尿の滴下試験に用いるトップシートの層の数や層の厚み、トップシートの繊維の素材、製造方法などの条件は、実際に吸収性物品に搭載するトップシートとすべて同一のものにする。
<人工尿の滴下試験>
(1)ろ紙を10枚重ねた上に前記トップシートを置き、前記トップシートの上に10個の穴が開いた金属製の治具を置く。
(2)前記金属製の治具の10個の穴に、マイクロピペットを用いて、それぞれ1mLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第1回目の計測結果として記録する。
(3)前記(2)で人工尿を滴下してから3分間経過後、前記金属製の治具の10個の穴に、マイクロピペットを用いて、それぞれ1mLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第2回目の計測結果として記録する。
(4)前記(3)で人工尿を滴下してから6分間経過後、前記金属製の治具の10個の穴に、ガラスピペットを用いて、それぞれ500μLずつ人工尿を滴下し、滴下した後、2秒以内に、前記トップシートが前記人工尿を吸収したか否かを確認し、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を第3回目の計測結果として記録する。
前記トップシートと前記吸収体の間に中間シートが設けられ、
前記中間シートが水溶性の酸とともに親水剤を含む前記第1~4の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
中間シートは着用者の肌に直接触れないが、着用者が排泄したときに、中間シート内に排泄物が残る可能性がある。そして、この中間シート内の排泄物がアルカリ化し、トップシートの肌面側に逆戻りする(中間シート内の排泄物がトップシートの肌面側へ移動する)と、着用者の肌に触れて、着用者の肌に負担がかかる。そこで、この中間シートに水溶性の酸を含ませることで、着用者の肌に負担がかかることを防ぐことができる。
前記吸収体を包む包装シートが設けられ、
前記包装シートが水溶性の酸とともに親水剤を含む前記第1~5の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
包装シートは着用者の肌に直接触れないが、着用者が排泄したときに、包装シート内に排泄物が残る可能性がある。そして、この包装シート内の排泄物がアルカリ化し、トップシートの肌面側に逆戻りする(包装シート内の排泄物がトップシートの肌面側へ移動する)と、着用者の肌に触れて、着用者の肌に負担がかかる。そこで、この包装シートに水溶性の酸を含ませることで、着用者の肌に負担がかかることを防ぐことができる。また、一般的に、包装シートは、排泄物を保持する吸収体と接触する機会が多い。すなわち、吸収体が保持する排泄物に対して、包装シートに含まれる水溶性の酸が作用するため、排泄物のアルカリ側への傾きの抑止効果が高い。
前記トップシートの繊維径が4.0dtex以上である前記第1~6の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
トップシートの繊維径を太くすることにより、排泄物を迅速に吸収することができる。そのため、着用者の肌に排泄物が接触している時間を減らすことができる。それとともに、トップシートの表面に排泄物が堆積して広範囲に広がることを防ぐことができるため、排泄物が着用者の肌に付着する面積を小さくすることができる。その結果、排泄物のアルカリ側への傾きによる肌への負担を低減することができる。このようなトップシートの繊維径は、4.0dtex以上にすることが好ましく、5.0dtex以上にすることがより好ましい。
前記トップシートの前記複数の層のうち、肌側に位置する層の繊維径が、裏側に位置する層の繊維径よりも小さい前記第1~7の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
トップシートを複数の層で構成し、肌側に位置する層の繊維径を小さくすることにより、肌触りが良くなるため、着用者の肌への負担を軽減することができる。また、裏側に位置する層の繊維径を大きくすることで、前記第7の態様と同様の作用効果を得ることもできる。
前記トップシートの前記複数の層のうち、前記肌側に位置する層の繊維径が2.5dtex以下であり、前記裏側に位置する層の繊維径が4.0dtex以上である前記第8の態様に記載の吸収性物品。
トップシートを複数の層で構成し、肌側に位置する層の繊維径を小さくすることにより、肌触りが良くなるため、着用者の肌への負担を軽減することができる。また、裏側に位置する層の繊維径を大きくすることで、前記第7の態様で記載した内容と同様の作用効果を得ることもできる。
前記トップシートと前記吸収体の間に中間シートが設けられ、
前記中間シートの目付が20gsm以上である請求項1~9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
吸収性物品に着用者の体圧がかかると、吸収体が保持する排泄物が肌側へ移動する逆戻り現象が発生するおそれがある。そこで、中間シートの目付を厚目付にすることで、逆戻りする排泄物の量を減らすことができる。特に、トップシートに含まれる酸の一部が流れ落ちて吸収体に保持されている状態で、逆戻りが生じると、トップシートの酸が着用者の肌に付着して、着用者の肌に負担をかけるおそれがある。中間シートの目付を厚目付にして、逆戻りを防止することによって、このような負担を軽減することができる。中間シートの目付は、20gsm以上にすることが好ましく、30gsm以上にすることがより好ましい。
前記吸収体を包む包装シートが設けられ、
前記包装シートの目付が20gsm以上である前記第1~10の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
第9の態様では、中間シートの目付を厚目付にすることで、逆戻りを防止しているが、包装シートを厚目付にすることによっても、同様効果を得ることができる。包装シートの目付は、20gsm以上にすることが好ましく、30gsm以上にすることがより好ましい。
前記酸はクエン酸である前記第1~10の態様のいずれか1つの態様に記載の吸収性物品。
クエン酸は食品添加物に用いられるほど安全性が高く、アルカリ化を抑止する効果が高いため、好適である。
(吸収体)
吸収体56は、排泄液を吸収し、保持する部分であり、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、2.54cm当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いることができる。
吸収体56には、その一部又は全部に高吸収性ポリマー粒子を含有させることができる。高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子としては、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用できる。高吸収性ポリマー粒子の粒径は特に限定されないが、例えば500μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)、及びこのふるい分けでふるい下に落下する粒子について180μmの標準ふるい(JIS Z8801-1:2006)を用いたふるい分け(5分間の振とう)を行ったときに、500μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が30重量%以下で、180μmの標準ふるい上に残る粒子の割合が60重量%以上のものが望ましい。
高吸収性ポリマー粒子の抜け出しを防止するため、あるいは吸収体56の形状維持性を高めるために、吸収体56は包装シート58で包んでなる吸収要素50として内蔵させることができる。包装シート58としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレンなどを使用できる。
トップシート30は液透過性を有するものであり、例えば、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシートなどを用いることができる。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維などや、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維などを例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
トップシート30を透過した液を速やかに吸収体56へ移行させるために、トップシート30より液の透過速度が速い、中間シート(「セカンドシート」とも呼ばれている)40を設けることができる。この中間シート40は、液を速やかに吸収体56へ移行させて吸収体56による吸収性能を高め、吸収した液の吸収体56からの「逆戻り」現象を防止するためのものである。中間シート40は省略することもできる。
液不透過性シート11は、特に限定されるものではないが、透湿性を有するもが好ましい。液不透過性シート11としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを好適に用いることができる。また、液不透過性シート11としては、不織布を基材として防水性を高めたものも用いることができる。
外装不織布12は液不透過性シート11の裏側全体を覆い、製品外面を布のような外観とするものである。外装不織布12としては特に限定されず、素材繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2のものが望ましい。
トップシート30上を伝わって横方向に移動する排泄物を阻止し、いわゆる横漏れを防止するために、表面の幅方向WDの両側には、装着者の肌側に立ち上がる起き上がりギャザー60が設けられていると好ましい。もちろん、起き上がりギャザー60は省略することもできる。
図示例のテープタイプ使い捨ておむつは、吸収体56の前側及び後側にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のエンドフラップ部EFと、吸収体56の両方の側縁よりも側方にそれぞれ延出する、吸収体56を有しない一対のサイドフラップ部SFとを有している。サイドフラップ部SFは、図示例のように、吸収体56を有する部分から連続する素材(外装不織布12等)からなるものであっても、他の素材を取り付けて形成してもよい。
各サイドフラップ部SFには、糸ゴム等の細長状弾性部材からなるサイド弾性部材64が前後方向LDに沿って伸長された状態で固定されており、これにより各サイドフラップ部SFの脚周り部分が平面ギャザーとして構成されている。脚周り弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート11との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート11と外装不織布12との間に設けることもできる。脚周り弾性部材64は、図示例のように各側で複数本設ける他、各側に1本のみ設けることもできる。
背側部分Bにおけるサイドフラップ部SFには、腹側部分Fの外面に対して着脱可能に連結される連結テープ13がそれぞれ設けられている。使い捨ておむつ10の装着に際しては、連結テープ13を腰の両側から腹側部分Fの外面に回して、連結テープ13の連結部13Aを腹側部分F外面の適所に連結する。
腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所には、ターゲット部を設けることが好ましい。ターゲット部は、図示例のように、連結を容易にするためのターゲットシート20を腹側部分Fの外面に貼り付けることにより設けることができる。ターゲットシート20は、連結部13Aがフック材の場合、フック材の係合突起が絡まるようなループ糸がプラスチックフィルムや不織布からなるシート基材の表面に多数設けられたものを用いることができ、また粘着材層の場合には粘着性に富むような表面が平滑なプラスチックフィルムからなるシート基材の表面に剥離処理を施したものを用いることができる。また、腹側部分Fにおける連結テープ13の連結箇所が不織布からなる場合、例えば図示例のように外装不織布12を有する場合には、ターゲットシート20を省略し、フック材を外装不織布12の繊維に絡ませて連結することもできる。この場合、目印としてのターゲットシート20を外装不織布12と液不透過性シート11との間に設ける他、外装不織布12や液不透過性シート11の外面に目印を印刷してもよい。
本テープタイプ使い捨ておむつは、図1、図2に示すように、腹側部分Fの前後方向LDの中間から背側部分Bの前後方向LDの中間まで延びる股間部Mを有している。また、腹側部分F及び背側部分Bは、股間部Mよりも幅方向WD外側に延び出たウイング部分WPを有している。腹側部分Fのウイング部分の下縁70は、股間部Mの側縁の前端から前方に向かうにつれて斜め外側に位置するように延びており、背側部分Bのウイング部分の下縁75は、股間部Mの側縁の後端から後方に向かうにつれて斜め外側に位置するように延びている。ウイング部分WPの側縁は図示例では直線状となっているが、これに限定されず、公知の他の形状を採用することもできる。股間部Mの前後方向LDの寸法は適宜定めることができるが、股間部Mの最小幅MXの1.2~1.4倍程度とすることができる。乳幼児用途の場合、股間部Mの前後方向LDの寸法MYは10~30cm程度である。
吸収性物品のトップシート30には水溶性の酸が含まれている。このトップシート30には、さらに親水剤を含ませることが好ましい。また、トップシート30だけではなく、中間シート40および包装シート58のどちらか一方に、もしくは中間シート40および包装シート58の両方に、水溶性の酸を含ませることが好ましい。この場合においても、水溶性の酸とともに親水剤を含ませることが好ましい。なお、以下の説明においては、トップシート30に含まれる水溶性の酸(および親水剤)について説明するが、特段の定めがない場合は、中間シート40や包装シート58においても同様である。
(人工尿の滴下試験方法)
(1)ろ紙を10枚重ねた上に、親水剤を含むトップシート30を置き、前記トップシート30の上に10個の穴が開いた金属製の治具70を置く。なお、本試験は、繰り返し排泄した際に、トップシート30に含まれる親水剤が、流れ落ちにくいものであるか否かを確認するものであるため、この試験に用いるトップシート30に水溶性の酸を含ませる必要はない。
(2)(第1回目の計測)
マイクロピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ1mLの人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下する(すなわち10個の穴に対して合計10mLの人工尿を滴下する)。人工尿を滴下した後、2秒以内に、前記不織布が人工尿を吸収したか否かを確認する。不織布の上に人工尿が残っている時(通常、不織布の上に人工尿が球状になって載っている状態の時)は、不織布が人工尿を吸収していないと記録する。他方、不織布の上に人工尿が残っていない時は、不織布が人工尿を吸収していると記録する。10個の穴のそれぞれについて、この記録作業を行う。すなわち、2秒以内に、不織布を透過した箇所が10か所中何か所であったかを記録する。そして、吸収された穴を1点、吸収されていない穴を0点とカウントし、10個の穴の合計点数を記録する。
(3)(第2回目の計測)
前記(2)で人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下した後、3分間経過するのを待ち、3分間経過後に、再び、マイクロピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ1mLの人工尿を滴下する。そして、前記(2)と同様の要領で、合計点数を記録する。
(4)(第3回目の計測)
前記(3)で人工尿(下記の着色料を添加したもの)を滴下した後、6分間経過するのを待ち、6分間経過後に、ガラスピペットを用いて、1個の穴ごとにそれぞれ500μLの人工尿を滴下する。そして、前記(2)と同様の要領で、合計点数を記録する。
(5)前記(2)~(4)の記録結果において、第1回目の計測結果が10点、かつ第2回目の計測結果が10点、かつ第3回目の計測結果が9点以上となったトップシート30を吸収性物品に搭載すると良い。複数回の排尿があった場合でも、親水剤が流れ落ちにくいと判断できるからである。
(ろ紙)
前記試験に用いるろ紙としては、例えばADVENTEC社のFILTER PAPER 250mm×250mm正方形を用いることができる。
(金属製の治具)
前記金属製の治具70としては、以下のものを用いる。
幅210mm、長さ50mm、厚み5mmの長方形であり、直径15mmの穴71が、幅方向及び長さ方向に4mmの間隔を空けながら、等間隔に10個空いている。重さは400gである。
(人工尿)
前記試験に用いる人工尿としては、以下のものを用いる。
尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの
(着色料)
キリヤ社の食用青色1号(Brilliant Blue FCF)(荷姿:紛体)約5gを、上記の人工尿約300mlに溶解して調整する。
(ピペット)
前記人工尿の滴下試験に用いるマイクロピペットとしては、例えば、Biohit Proline Pipette 100~1000μl(型番:720050)を用いることができる。また、前記人工尿の滴下試験に用いるガラスピペットとしては、例えばマルエム KOMA5 5ml(型番:0801-04)を用いることができる。
(1)例えば、まず、原料投入、加熱、溶融、押出という工程を経て、肌側に位置する層の原料となる原綿(原料となる繊維。以下、同じ。)を製造する。また、原料投入、加熱、溶融、押出、冷却後に酸の塗りこみという工程を経て、裏側に位置する層の原料となる原綿を製造する。
そして、不織布製造装置の複数のライン(例えば、2層構造のトップシートを製造する場合、肌側の層を製造するラインと裏側の層を製造するラインの2つのラインがある。)に、肌側に位置する層の原料となる原綿と、裏側に位置する層の原料となる原綿をそれぞれ別々に供給する。その後、各ラインで別々に、各原綿の一次解繊、計量・混綿、二次解繊、タフト形成(二次解繊された原綿をボックス内に均一に貯留する)、ウェブ成形(カード機によって、ボックス内に貯留された原綿をシート状に成形する)の工程を行う。そして、ウェブ成形によって製造した各シートを重ね合わせて複数層とし、熱融着処理によって結合した後、異物混入検査、巻取りという工程を経て製造する。
なお、上記の説明は、エアスルー製法を用いて、複数層の不織布を製造する方法を例示したものであるが、不織布の融着方法が異なる他の製造方法を用いても、同様に製造できる。他の製造方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、ポイントボンド法等を例示することができる。
また、上記の説明において、裏側に位置する層の原料となる原綿を製造する際、酸とともに親水剤を塗り込んでも良い。それとともに、肌側に位置する層の原料となる原綿を製造する際にも、前記冷却後のタイミングで親水剤を塗り込んでも良い。
(2)例えば、おむつ加工機でおむつを製造する工程において、おむつ本体に貼り合される前のトップシート30の下層側のみに、スプレー塗布で酸性成分を付与する。
トップシート30、中間シート40および包装シート58において、水溶性の酸を含ませる平面範囲は、排泄物の拡散が予測される範囲とすることが好ましい。吸収性物品が図示した使い捨ておむつである場合においては、着用者の排泄口(排尿口、肛門等)の位置を考慮すると、少なくとも股間部Mに酸を付することが好ましい。排泄物の量が多い場合や、複数回の排泄が行われた場合は、排泄物が広範囲に拡散すると予想されるため、望ましくは、トップシート30全体に酸を付することが好ましい。中間シート40や包装シート58においても、トップシート30と同じ位置に、酸を付することが好ましい。親水剤についても、酸と同様の範囲に付することが好ましい。
以下の2つの実験材料を用意した。
(1)材料1:目付が20gsmのエアスルー不織布(おむつのトップシート)であり、肌面が2.0dtexであり、裏面が3.3dtexの2層構造である。不織布の素材としては、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの複合繊維を用いた。このエアスルー不織布には、親水剤としてノニオン性の界面活性剤を含ませている。親水剤の含有量は不織布重量に対し0.4%である。
(2)材料2:目付が20gsmのエアスルー不織布(おむつのトップシート)であり、2.2dtexの1層構造である。不織布の素材としては、ポリエチレンとポリエチレンテレフタレートの複合繊維を用いた。このエアスルー不織布には、親水剤としてノニオン性の界面活性剤を、水溶性の酸としてクエン酸をそれぞれ含ませている。親水剤の含有量は不織布重量に対し0.4%であり、水溶性の酸の含有量は0.05%である。
クエン酸を配合していない測定箇所A~Fと比べて、クエン酸を配合した測定箇所G~Lは、pHの値が低くなる傾向が分かった。また、クエン酸とともに親水剤を配合した測定箇所G~Lにおいては、人工尿を3回滴下した場合であっても、アルカリ化がほとんど進まないことが分かった。親水剤によって、クエン酸がエアスルー不織布の繊維に強く保持されて、複数回の排尿によっても流れ落ちないためと思われる。
本発明に係る吸収性物品によれば、着用者が複数回排泄した場合であっても、トップシート30に酸が残りやすいため、酸によるアルカリ化抑止効果を維持することができる。また、吸収性物品の着用者が、まだ1回も排泄していない状態において、トップシート30に含まれる水溶性の酸が着用者の肌に触れ続けないようにする(例えば、トップシート30の下層に酸を配合する)ことにより、肌への負担を軽減することができる。さらに、中和シート40、包装シート58の少なくともいずれか1つを厚目付にすることで、体圧がかかる部位であっても、排泄物と酸が逆戻りして、着用者の肌に接触する可能性を低くすることができる。
吸収体56の内部の排泄物が逆戻りする可能性もある。この点を考慮すると、吸収体56の内部に存在する排泄物のアルカリ化を防ぐことも有効である。そのため、吸収体56自体(例えば、吸収体のSAP)に水溶性の酸を含ませることも、肌の負担の軽減に有効である。
以上の説明では、水溶性の酸を例に説明したが、トップシート30に含める酸は水溶性の酸に限定されるものではない。すなわち、親水剤との親和性を考慮に入れないならば、トップシート30にフマル酸などの難溶性の酸を含ませても良い。
本発明における排泄物としては、尿、排便(特に軟便)、経血等を例示することができる。特に、排泄物のうち、固形状の便を除く排泄液のアルカリ化抑止に効果的である。尿においては、ウレアーゼ等の分解酵素が、尿中に含まれる尿素をアンモニアに加水分解し、排泄物をアルカリ化してしまうことを水溶性の酸によって抑止する。軟便においては、ウレアーゼ等の分解酵素が、軟便中に含まれる尿素をアンモニアに加水分解し、排泄物をアルカリ化してしまうことを水溶性の酸によって抑止する。
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
Claims (6)
- 肌側に設けたトップシートと、
前記トップシートの裏側に設けた吸収体と、
前記トップシートと前記吸収体の間に設けた、前記吸収体からの排泄液の逆戻りを防止する中間シートと、を有する吸収性物品であって、
前記トップシートは複数の層で構成され、
前記複数の層のうち、肌側に位置する層は酸を含んでおらず、裏側に位置する層は酸を含んでいることを特徴とする吸収性物品。 - 前記トップシートの複数の層のうち、肌側に位置する層には親水剤が含まれておらず、裏側に位置する層には親水剤が含まれている請求項1記載の吸収性物品。
- 前記トップシートの裏側に位置する層に前記親水剤とともに含まれる酸は乳酸である請求項2記載の吸収性物品。
- 前記トップシートは不織布であり、
前記トップシートの裏側に位置する層において、前記不織布の原料繊維には水溶性の前記酸および親水剤が塗り込まれている請求項2記載の吸収性物品。 - 前記トップシートの前記複数の層のうち、肌側に位置する酸を含まない層の繊維径が、裏側に位置する酸を含む層の繊維径よりも小さい請求項1に記載の吸収性物品。
- 前記トップシートの前記複数の層のうち、肌側に位置する酸および親水剤を含まない層の繊維径が、裏側に位置する酸および親水剤を含む層の繊維径よりも小さい請求項5に記載の吸収性物品。
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