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JP6997456B2 - 植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物及びそれらの使用方法 - Google Patents

植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物及びそれらの使用方法 Download PDF

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Description

本発明は、エステラーゼ及び/又はキシラナーゼを使用することで、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除する方法を提供する。
植物には動物の免疫に準じるような生体防御システムが備わっており、この機能が発動すると、植物は、様々な防御システムを作動し、発病しにくい植物体となる。最近、殺菌剤の開発においては、環境保全や薬剤耐性菌回避の観点から、それらの防御システムを利用して病気を抑えようとする薬剤の探索が盛んに行われている。これらの薬剤には、(1)複数の病原菌に対して予防的な効果がある(作用スペクトルが広い)、(2)耐性菌の出現率が極めて低い、(3)防除効果が長期間持続する、(4)生態系自体への直接の影響は少ないという特徴を有している。一方で、こうした活性を持つ化合物の探索や評価が、殺菌性の農薬と比較して困難なため、実用化に至った化合物は限られている。また、国内で市販されている薬剤は、全てイネを対象としているが、様々な作物でも同様な薬剤が必要とされている。
また、植物の表層は、外界からのストレス、特に蒸散や降雨によって引き起こされる浸透圧ストレス、病原菌の侵入、害虫による食害から身を守るために、クチクラ層とワックスで覆われている。このクチクラ層に含まれるクチン(脂肪酸ポリエステル)を加水分解する酵素はクチナーゼと呼ばれている。
最近、植物常在性の酵母や糸状菌から得た酵素により、生分解性プラスチック製農業資材を使用後に速やかに分解させるための技術が開発されている(特許文献1及び2)。また、複数の酵素を大量生産する技術も開発されており(特許文献3及び4、非特許文献1)、安価な酵素液が市場で大量に入手可能になる見込みがある。そして、これら糸状菌や酵母由来の生分解性プラスチック分解酵素を高濃度で含む培養ろ液を植物に処理すると、植物が枯れる現象が見出されている。このとき、クチクラ層は薄くなっており、植物病原菌に感染しやすくなることから、生分解性プラスチック分解酵素のようなクチクラ層の一部を分解し得る酵素は、除草剤として有害植物の駆除に用いることができる(特許文献5)。また、酵母Pseudozyma antarctica由来の生分解性プラスチック分解酵素を含む培養液には、キシラナーゼ(ヘミセルロース分解酵素)も含まれていることが見出されている(非特許文献2)。しかしながら、酵母由来の生分解性プラスチック分解酵素で、実際にクチン分解活性を有するものは確認されていなかった。また、生分解性プラスチック分解酵素で、植物の病害抵抗性を増強し、植物の病害を防除する方法も知られていなかった。
特許第4915593号 特許第5082125号 特許第5849297号 国際公開第2014/109360号 特開2014-129287号公報
Journal of Oleo Science(2016)、65(3)257-262 AMB Express(2015)、5:36
これまで、生分解性プラスチック分解酵素及びそれを含む糸状菌又は酵母などの微生物の培養物の応用範囲は限られており、その酵素及び培養物の潜在能力を十分に生かし切れていなかった。本発明は、生分解性プラスチック分解酵素及びそれを含む微生物の培養物の新規用途を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、意外なことに、生分解性プラスチック分解酵素として用いられていた微生物の培養物が、その中に含まれているエステラーゼ及び/又はキシラナーゼの作用を介して、病原菌の感染抑制作用及び病原菌発芽抑制作用を奏すること、並びに、植物のストレス抵抗性遺伝子の発現を上昇させることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示す植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物、及び、それらを用いた植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除する方法を提供するものである。
〔1〕エステラーゼ及び/又はキシラナーゼを含む、植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物。
〔2〕前記エステラーゼが、生分解性プラスチック分解酵素を含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記生分解性プラスチック分解酵素が、クチナーゼ及びクチナーゼ様酵素から成る群から選択される、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記エステラーゼ及び/又は前記キシラナーゼが、微生物培養液又は抽出液である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔5〕前記微生物が、シュードザイマ(Pseudozyma)属、パラフォーマ(Paraphoma)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ムコール(Mucor)属、フミコラ(Humicola)属、テルモミセス(Thermomyces)属、タラロミセス(Talaromyces)属、ケトミウム(Chaetomium)属、トルラ(Torula)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、マルブランケア(Malbranchea)属、アルタナリア(Alternaria)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、ぺニシリウム(Penicillium)属、ペキロマイセス(Paecilomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バクテロイデス(Bacteroides)属、及び、アシドボラックス(Acidovorax)属から成る群から選択される、前記〔4〕に記載の組成物。
〔6〕前記エステラーゼの濃度が、0.005~0.5U/mLである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔7〕前記エステラーゼ及び前記キシラナーゼの両方を含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔8〕前記植物が、クチクラ層を有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔9〕前記植物が、高等植物である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の組成物。
〔10〕前記〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の組成物によって植物を処理する工程を含む、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除する方法。
〔11〕前記処理工程が、前記組成物を前記植物に噴霧する工程を含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記噴霧工程が、前記組成物を前記植物の葉1枚あたり0.1~1mL噴霧する工程を含む、前記〔11〕に記載の方法。
本発明に従えば、微生物の培養物中に含まれている生分解性プラスチック分解酵素であるエステラーゼ、及び/又は、同培養物中に含まれているキシラナーゼにより、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除することができる。植物の病害抵抗性増強剤は、古くから研究されているが、現在国内で製品になったものは、イネを対象とする3種の薬剤しか知られていない。しかしながら、本発明のエステラーゼ及び/又はキシラナーゼによる病害抵抗性増強作用又は病害防除作用は、イネ科植物だけではなく、トマト、シロイナズナ、及びタバコなどの幅広い作物種で利用できるものであり、汎用性が高い。また、本発明の有効成分であるエステラーゼ及びキシラナーゼは、従来の病害抵抗性増強剤として知られていたような低分子化合物ではなく、タンパク質であるので、これは自然界で容易に分解され、低分子化合物などで起こる環境中への残存性はなく、環境負荷が低い。
葉の病徴変化を示す写真。 葉の病徴変化を示すグラフ。 病原菌胞子の顕微鏡写真。 病原菌胞子の発芽率のグラフ。 病原菌由来のDNA量のグラフ。 病原菌を含む葉の顕微鏡写真。 植物のストレス抵抗性遺伝子のグラフ。 植物の活性酸素種応答遺伝子のグラフ。 葉の写真。 発病度のグラフ。 葉の写真。 発病度のグラフ。 葉の写真。 病斑直径のグラフ。 葉の写真。 発病度のグラフ。 葉の写真。 発病度のグラフ。
本発明は、エステラーゼ及び/又はキシラナーゼを含む、植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物に関するものである。
本明細書に記載の「エステラーゼ」とは、エステルを水との化学反応で酸とアルコールに分解する加水分解酵素のことをいう。本発明のエステラーゼとしては、クチクラ層の一部を分解する活性を有しているものであれば、種々のエステラーゼを制限なく使用することができ、例えば、生分解性プラスチック分解酵素として利用されている酵素を採用してもよい。
本明細書に記載の「生分解性プラスチック分解酵素」とは、生分解性プラスチックを分解する活性を有する酵素のことをいう。本発明の組成物には、生分解性プラスチックを分解する活性を有する酵素であれば、種々の酵素を制限なく使用することができ、例えば、クチナーゼ又はクチナーゼ様酵素を採用してもよい。前記生分解性プラスチックを分解する活性は、ポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)エマルジョンの分解活性を測定することにより、あるいは、PBSA、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、及びポリ乳酸などの生分解性プラスチックフィルムの分解活性を測定することにより、決定することができる。
本明細書に記載の「キシラナーゼ」とは、キシランをキシロースに分解する活性を有する酵素のことをいい、植物細胞壁中のヘミセルロースを分解することができる。本発明の組成物には、ヘミセルロースを分解する活性を有する酵素であれば、種々のキシラナーゼを制限なく使用することができる。
前記エステラーゼ及び前記キシラナーゼは、微生物によって産生され得る。本発明の組成物には、当該微生物から単離精製したエステラーゼ及び/又はキシラナーゼを使用してもよく、当該微生物の培養液(培養ろ液)又は抽出液をエステラーゼ及び/又はキシラナーゼとして使用してもよい。前記エステラーゼ及び/又は前記キシラナーゼを産生する微生物は、特に限定されるものではないが、例えば、シュードザイマ(Pseudozyma)属、パラフォーマ(Paraphoma)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、ムコール(Mucor)属、フミコラ(Humicola)属、テルモミセス(Thermomyces)属、タラロミセス(Talaromyces)属、ケトミウム(Chaetomium)属、トルラ(Torula)属、スポロトリクム(Sporotrichum)属、マルブランケア(Malbranchea)属、アルタナリア(Alternaria)属、クラドスポリウム(Cladosporium)属、ぺニシリウム(Penicillium)属、ペキロマイセス(Paecilomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バクテロイデス(Bacteroides)属、及び、アシドボラックス(Acidovorax)属から成る群から選択される微生物であってもよい。
前記エステラーゼとしての生分解性プラスチック分解酵素は、好ましくは、Pseudozyma antarctica(例えば、GB-4(1)W株、GB-4(0)-HPM7株(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された酵母;受託番号NITE BP-02238)及びOMM62-2株(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された酵母;受託番号NITE BP-02239)など)により産生されるエステラーゼ(PaE)、Paraphoma属類縁菌クチナーゼ様酵素(PCLE)、又は、クチナーゼ様酵素1(CmCut1)である。PCLEは、Paraphoma属類縁菌B47-9株(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された糸状菌;受託番号NITE P-573;要すれば特許第5082125号参照)などのParaphoma属類縁菌により産生される酵素であり、CmCut1は、Cryptococcus magnus類縁菌BPD1A株(独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された酵母;受託番号NITE P-02134)などのCryptococcus magnus又はその類縁菌により産生される酵素である。
本発明の組成物中における前記エステラーゼの濃度は、適用対象の植物の種類及びその病原菌の種類に応じて適宜調整され得る。前記エステラーゼの濃度は、例えば0.005~0.5U/mLであってもよく、好ましくは0.006~0.2U/mL、さらに好ましくは0.007~0.07U/mLである。
なお、ここで示すエステラーゼの力価は、生分解性プラスチックであるポリブチレンサクシネート-co-アジペート(PBSA)エマルジョン(昭和電工株式会社、EM-301)の濁度の減少量を測定することで決定されたものである。OD660nmの値を1分間に1低下させるときの力価を1Uと定義した。酵素活性測定時の緩衝液としては、例えば、トリス塩酸緩衝液(20mM Tris-HCl、pH6.8、塩化カルシウム(2mM)なし又はあり)を使用してもよい。
本発明の組成物中における前記キシラナーゼの濃度は、適用対象の植物の種類及びその病原菌の種類に応じて適宜調整され得る。前記キシラナーゼの濃度は、例えば0.001~5.0U/mLであってもよく、好ましくは0.005~1.0U/mLである。
なお、ここで示すキシラナーゼの力価は、キシランを分解したときに生じるキシロースの量を、Agric.Biol.Chem.(1980)、44(12)、2943-2949に示されているようなソモギ-ネルソン法の改良法によって測定されたものである。1分間に1μmolのキシロースを生成する力価を1Uと定義した。
本発明の組成物には、前記エステラーゼ又は前記キシラナーゼを単独で使用してもよいが、両者を併せて使用してもよい。作用機序の異なる両酵素を併用することで、相乗的な植物の病害抵抗性増強作用及び/又は植物病害防除作用が奏される。前記エステラーゼ及び前記キシラナーゼを併用する際には、それぞれ単離精製したエステラーゼ及びキシラナーゼを同じ組成物中に配合してもよいが、これらの酵素を始めから含んでいる微生物培養液又は抽出液を使用すると簡便である。あるいは、前記エステラーゼのみ含む組成物及び前記キシラナーゼのみを含む組成物を、同時又は連続的に使用してもよい。
本明細書に記載の「植物の病害抵抗性増強」とは、当該植物に任意の病原体が接触しても感染が成立しないもしくは病徴が軽減されるような状況が誘導されることを指す。「植物の病害抵抗性増強」は、例えば、PIN2(proteinase inhibitor 2)及びLapA1(leucine aminopeptidase A1)などの傷害応答遺伝子の上昇、PR4(pathogenesis related 4)及びPRB1bなどの病害応答遺伝子の上昇、並びに、活性酸素種の放出のように、病害に対する植物の生理的な応答の増強が指標となる場合もある。また、本明細書に記載の「植物病害防除」とは、作用機序に関わらず、結果として植物における病徴変化を抑制することをいう。植物病害防除の作用機序としては、例えば、上述のような植物の生理的な応答の変化、共生微生物叢の変化、又は、病原菌の弱毒化などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の組成物は、植物の種類や病害の種類によらず、非特異的に植物の病害抵抗性増強作用及び植物病害防除作用を奏するので、種々の植物に対して使用することができる。本発明の組成物は、例えば、クチクラ層を有する植物、又は、種子植物(裸子植物又は被子植物)及びシダ植物などの高等植物に対して使用してもよい。また、本発明の組成物は、種々の農作物、例えば、アオイ科、アカザ科、アブラナ科、アヤメ科、イソマツ科、イネ科、イワタバコ科、ウコギ科、ウリ科、カキノキ科、キク科、クルミ科、クワ科、ケシ科、ゴマノハグサ科、サクラソウ科、サトイモ科、サボテン科、シソ科、シュウカイドウ科、ショウガ科、スイレン科、スミレ科、セリ科、センリョウ科、ツツジ科、ツバキ科、トウダイグサ科、ナス科、ナデシコ科、バラ科、ヒガンバナ科、ヒルガオ科、フウロソウ科、ブドウ科、ブナ科、ボタン科、マタタビ科、マメ科、ミカン科、ヤマノイモ科、ユキノシタ科、ユリ科、ラン科、リュウゼツラン科、及び、リンドウ科から成る群から選択される科に属する農作物に対して使用してもよい。そして、本発明の組成物は、例えば、カビ病、バクテリア病、及び、ウイルス病などの種々の病害に対する抵抗性を増強又はそのような種々の病害を防除することができる。
本発明の組成物は、その植物の病害抵抗性増強作用又は植物病害防除作用を阻害しない限り、他の任意の成分をさらに含んでもよい。また、本発明の組成物は、その植物の病害抵抗性増強作用又は植物病害防除作用をより高めるために、他の有効成分をさらに含んでもよい。
ある態様では、本発明は、植物の病害抵抗性増強用組成物又は植物病害防除用組成物によって植物を処理する工程を含む、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除する方法にも関する。当該処理の方法としては、結果として植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除するような方法であれば、種々の方法を制限なく使用することができる。例えば、前記処理工程は、前記組成物を前記植物に噴霧する工程を含んでもよい。前記組成物の適用部位は、特に限定されないが、例えば、前記植物の葉、茎、又は、果実などであってもよい。前記組成物の適用量は、適用方法及び適用部位に応じて適宜調整され得るが、例えば、前記植物の葉1枚あたり0.1~1mL噴霧してもよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(1)Pseudozyma antarctica(P.antarctica)の培養ろ液の調製
P.antarctica(GB-4(1)W株)を表1に示すYM培地(yeast extract malt extract medium)で前培養した。
Figure 0006997456000001
5L容のジャーファーメンターに、表2に示した組成の培地3Lを加え、上記P.antarcticaの前培養液を30mL接種して、これを30℃、撹拌速度500rpm、通気量8LPMで培養した。
Figure 0006997456000002
高泡形成による培養液の流出を防止するため、消泡剤(商品名「信越シリコーンKM-72F」、信越化学工業株式会社製)の50倍希釈液を、消泡センサーを利用して断続的に自動滴下し、培養開始後72時間までにおおよそ40mL添加した。
また、培地中のアンモニウムイオンの消費によるpHの低下をセンサーで感知し、窒素源の追加とpHの調整のため、培地にアンモニア水をアルカリ調整溶液として自動滴下してpHを6.0に調整した。培養開始24時間後から、表3に示した組成の流加培地を0.5L/dの速度で流加した。最終的に72時間培養したときの培養液を孔径0.45μmのCELLULOSE ACETATEろ紙(ADVANTEC製)でろ過して、培養ろ液を調製した。この培養ろ液を、以下の各試験で使用した。なお、P.antarcticaの別の菌株(GB-4(0)-HPM7株又はOMM62-2株)を用いても、GB-4(1)W株を用いた場合と同様の方法で培養ろ液を調製することができ、かつ同様に使用することができた。
Figure 0006997456000003
(2)切り取り葉への噴霧処理
P.antarcticaの培養ろ液(エステラーゼの力価:8.0U/mL)を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)で希釈し、0.01U/mL、0.1U/mL、1.0U/mLの溶液を調製した。矮性のトマト(MicroTom)から切り取った葉1枚に対して、0.01U/mL~8.0U/mLの各溶液を0.6mLずつ噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度22℃)。対照区には、オートクレーブ処理で酵素を失活させた培養ろ液を噴霧した。噴霧72時間後(3日後)に、それぞれの切り取り葉に病原性糸状菌(灰色カビ病菌(ボトリティス・シネレア(Botrytis cinerea)、B.c.))の胞子(5×104胞子/mL)を0.6mLずつ噴霧した。各処理区につき5枚の切り取り葉を用い、酵素処理10日目すなわち胞子処理7日後に、葉の様子を観察した。褐色の病斑を形成する状態(カビに覆われることもある)を病徴、明らかな病徴は見られないが葉の緑色が褪色している状態を黄化、病徴も黄化も見られなかった状態を無変化、として評価をした。図1Aに、各酵素処理の後、病原菌胞子の噴霧処理を行った切り取り葉の写真を示し、図1Bに、観察した切り取り葉の状態(無変化、黄化、又は病徴)の割合についてのグラフを示す。これらの図から理解できるように、1.0U/mL及び8.0U/mL処理区では、感染効率が促進され病徴が助長されたが、0.1U/mL処理区では、対照区と同程度の病徴であり、0.01U/mL処理区では、10日目の病徴が対照区に比べて軽減されていた。
(3)病原菌の発芽率
病原菌(B.c.)の胞子接種後2日目の葉表面のカビ胞子及び菌糸は、トリパンブルーで染色した。各処理区につき4枚の切り取り葉を用い、顕微鏡で観察した。図2Aに、各酵素処理後、病原菌胞子を噴霧した2日後の葉表面のカビ胞子の光学顕微鏡観察写真を示し、図2Bに、観察したカビ胞子の発芽率の平均値のグラフ(誤差範囲は4回の試験から算出した標準誤差)を示す。ここで、図2Bの異なるアルファベット(a、b、及びc)は、テューキーの検定によって有意水準0.05で有意差検定を行った結果、各処理区の間で発芽率が有意に異なっていることを示しており、同じアルファベットは、各処理区の間で発芽率に有意差がないことを示している。具体的には、0.01U/mL、0.1U/mL、1.0U/mL処理区ではいずれも、対照区及び8.0U/mL処理区に比べて病原菌胞子の発芽が有意に抑えられていた(図2A及び2B)。対照区及び8.0U/mL処理区では、病原菌胞子が発芽し、その発芽管が葉表面に広がっている様子が観察された。特に8.0U/mL処理区では、発芽率が対照区よりも有意に高かった。
(4)葉における病原菌の存在量
病原菌(B.c.)の胞子接種後3日目の葉からDNAを抽出し、qPCRで病原菌のDNA量を定量した。各処理区につき5枚の切り取り葉を用いた。図3に、灰色カビ病菌β-チューブリン遺伝子を指標にした解析結果、すなわちトマトのActin遺伝子量で補正に対するβ-チューブリン遺伝子量の相対値の平均値(誤差範囲は5回の試験から算出した標準誤差)を示す。その結果、病原菌の量は、1.0U/mLや8.0U/mL処理区で顕著に高く、病原菌に感染していることが確認できる。一方で、0.01U/mL、0.1U/mL処理区では、対照区に比べて病原菌が明らかに少なく抑えられていることが確認できた。
また、葉の断面における病原菌の存在を調べるために各処理区につき4枚の切り取り葉をパラフィンに包埋し、葉の切片(厚さ10μm)を作製して、チオニン・オレンジGで染色した。カビ胞子及び菌糸は、チオニンで暗紫色に、植物細胞壁は、オレンジGで橙色に染色され得る。作製した葉切片を光学顕微鏡で観察した結果、1.0U/mLや8.0U/mL酵素処理区では、病原菌が葉内部に侵入している様子が観察されたが、0.01U/mL、0.1U/mL処理区では、病原菌の侵入は対照区と同程度であった(図4)。
(5)植物の応答解析
病原菌(B.c.)の胞子接種後3日目の葉からRNAを抽出し、qRT-PCRで植物の各種ストレス抵抗性関連遺伝子(傷害応答遺伝子であるPIN2及びLapA並びに病害応答遺伝子であるPR4及びPRB1b)の発現量を調べた(トマトのActin遺伝子量で補正)。各処理区につき3枚の切り取り葉を用いた。図5に、トマトのActin遺伝子に対する各種ストレス抵抗性関連遺伝子の相対的発現量の平均値(誤差範囲は3回の試験から算出した標準誤差)を示す。その結果、培養ろ液処理濃度に応じて、前記ストレス抵抗性関連遺伝子の発現が上昇していることが確認された。
植物は、クチクラ層の破壊やエリシターなどを検知すると、活性酸素を放出するので、ストレス抵抗性関連遺伝子だけでなく、活性酸素種応答遺伝子も発現することが知られている。抽出したRNAを用いたqRT-PCRで活性酸素種応答遺伝子の発現量の変化を調べたところ、特に0.01U/mLの培養ろ液処理で、トマトのActin遺伝子に対するペルオキシダーゼ(POD)やスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の相対的発現量の平均値(誤差範囲は3回の試験から算出した標準誤差)が上昇することが確認された(図6)。
(6)クチンの分解活性
植物の葉をP.antarcticaの培養ろ液で処理すると、クチクラ層から炭素鎖長16や18の脂肪酸が抽出されることが確認されている(Uedaら、Appl.Micorobiol.Biotechnol.,2015)。そこで、植物表層のクチクラ層を構成する成分のうちクチン(脂肪酸ポリエステル)に関して、P.antarcticaの培養ろ液による分解性を調べた。トマト果皮から調製したクチンを当該培養ろ液で処理すると、反応溶液中に、クチンの分解物であるωヒドロキシヘキサデカン酸が検出された。このことから、P.antarcticaの培養ろ液に、植物からクチンモノマーを遊離させる活性があることがわかった。
<実施例2>
(1)単子葉植物とその病原菌に対する効果
P.antarcticaの培養ろ液を実施例1と同様に希釈した。エステラーゼの力価で0.01U/mLの溶液を、イネ科植物であるエンバクの葉に対して0.6mL噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度22℃)。対照区には、オートクレーブ処理で酵素を失活させた培養ろ液を噴霧した。噴霧72時間後に、単子葉植物であるエンバクに感染する病原性細菌のすじ枯病菌の培養液(OD610:0.65)に浸漬接種した。各処理区につき4枚の切り取り葉を用い、同じ試験を2回反復した。楕円状の褐色斑(病斑)が縦に広がって形成される状態を病徴として観察した。また、病斑面積を観察し、以下の式に基づいて、発病度を計算した(発病度の計算方法については「イネ・ムギ等殺菌剤圃場試験法」(社団法人日本植物防疫協会、平成16年3月発行)を参照)。
発病度=100×(0×n0+0.5×n1+1×n2+2×n3+3×n4+4×n5)/4N
n0:病斑がない葉の数
n1:病斑が葉の1/8以下である葉の数
n2:病斑が葉の1/4前後である葉の数
n3:病斑が葉の1/2前後である葉の数
n4:病斑が葉の3/4前後である葉の数
n5:病斑が葉の7/8以上である葉の数
N:調査した葉の総数
図7Aに、各酵素処理の後、病原性細菌接種後3日目の写真を示し、図7Bに、病原性細菌接種後3日目に観察した病斑から算出した発病度のグラフを示す。これらの図から理解できるように、0.01U/mL処理区では、接種3日目の病徴が対照区に比べて軽減され、発病度が低下した。
(2)アブラナ科植物とその病原菌に対する効果
P.antarcticaの培養ろ液を実施例1と同様に希釈した。エステラーゼの力価で0.01U/mLの溶液を、アブラナ科植物であるシロイヌナズナのロゼット葉に対して0.6mL噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度22℃)。対照区には、オートクレーブ処理で酵素を失活させた培養ろ液を噴霧した。噴霧72時間後に、病原性糸状菌(灰色カビ病菌)の胞子(5×104胞子/mL)を噴霧した。各処理区につき8枚の切り取ったロゼット葉を用い、同じ試験を2回反復した。褐色の病斑が形成される状態を病徴として観察し、以下の式に基づいて、発病度を計算した(発病度の計算方法については「新農薬実用化試験実施の手引き」(社団法人日本植物防疫協会、平成15年2月発行)を参照)。
発病度=100×(0×n0+1×n1+2×n2+3×n3+4×n4)/4N
n0:病斑がない葉の数
n1:病斑がわずか(数個)である葉の数
n2:病斑が葉の1/4未満である葉の数
n3:病斑が葉の1/4~1/2未満である葉の数
n4:病斑が葉の1/2以上である葉の数
N:調査した葉の総数
図8Aに、各酵素処理の後、病原菌胞子噴霧後3日目の写真を示し、図8Bに、病原菌胞子噴霧後3日目に観察した病斑から算出した発病度のグラフを示す。これらの図から理解できるように、0.01U/mL処理区では、胞子噴霧後7日目の病徴が対照区に比べて軽減され、発病度が低下した。
(3)植物病害ウイルスに対する効果
P.antarcticaの培養ろ液を実施例1と同様に希釈した。エステラーゼの力価で0.01U/mLの溶液を、ナス科植物であるタバコ(Samsun NN)の葉に対して0.6mL噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度20℃)。対照区には、オートクレーブ処理で酵素を失活させた培養ろ液を噴霧した。噴霧72時間後に、植物病害ウイルスのタバコモザイクウイルス(TMV-OM株)溶液(4μg/mL)を、カーボランダムを用いて機械接種した。植物がウイルスの拡がりを抑えるために、植物自身が壊死することで形成された病斑を観察し、葉1枚につき少なくとも57個の病斑直径を計測して、その平均直径を求めた。各処理区につき3枚の切り取り葉を用いた。
図9Aに、ウイルス接種後5日目の病斑を示す写真を示し、図9Bに、ウイルス接種後5日目に計測した3枚の葉それぞれにおける病斑の平均直径(mm)の平均値のグラフ(誤差範囲は3回の試験から算出した標準誤差)を示す。ここで、図9Bのアスタリスクは、t検定によって有意水準0.01で有意差検定を行った結果、対照区に対して有意に病斑が小さくなったことを示している。すなわち、0.01U/mL処理区では、接種5日後の病斑の大きさが対照区に比べて有意に小さくなっていた(図9A及び9B)。
以上の結果から、本発明の植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物は、カビ病、バクテリア病、及びウイルス病などの種々の病害に対して、非特異的に抵抗性増強作用及び防除作用を奏することがわかった。
<実施例3>
P.antarcticaの培養ろ液中に含まれる成分のうち、何が植物の病害抵抗性増強作用及び植物病害防除作用に寄与しているのかを確認するため、P.antarcticaの培養ろ液から、エステラーゼであるPaE、及び、キシラナーゼを分離精製した(後述の調製方法を参照)。PaEは、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)を用いて、エステラーゼの力価で0.01U/mLに希釈した。キシラナーゼは、P.antarcticaの培養ろ液を使用した試験結果を考慮して、植物の病害抵抗性増強又は植物病害防除に有効と考えられる濃度範囲になるように、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.8)を用いて、キシラナーゼの力価で0.01U/mLに希釈した。また、糸状菌であるParaphoma属類縁菌B47-9株(受託番号NITE P-573)由来のクチナーゼ様酵素であるPCLEも用意し(後述の調製方法を参照)エステラーゼの力価で0.01U/mLに調製した。なお、PCLEは、ポリエステルであるPBSAを基質に用いた場合に、塩化カルシウム存在下で基質の分解活性が高くなることが知られている。そこで、溶液中に2mM塩化カルシウムあり又はなしの場合で試験を行った。対照区としては、希釈に用いた緩衝液(20mM Tris-HCl、pH8.8)を使用した。
調製した各酵素溶液を、イネ科植物であるエンバクの葉に対して0.6mL噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度22℃)。噴霧72時間後に、単子葉植物に感染するすじ枯病菌の培養液(OD610:0.65)に浸漬接種した。各処理区につき6枚の切り取り葉を用いた。図10Aに、各種酵素処理における、病原性細菌接種後4日目の写真を示し、図10Bに、病原性細菌接種後4日目に観察した病斑から算出した発病度のグラフを示す。これらの図から理解できるように、PaE処理区、キシラナーゼ処理区、及びPCLE(カルシウムあり)処理区では、接種4日目の病徴が対照区に比べて軽減されていた。一方、PCLE(カルシウムなし)処理区では、病徴の軽減効果は確認できなかった(図10A及び10B)。
これらの結果より、エステラーゼ及びキシラナーゼのそれぞれが、病害抵抗性増強作用及び植物病害防除作用に寄与していることがわかった。
(PaEの精製)
P.antarcticaの培養ろ液から、「独立行政法人農業環境技術研究所 平成24年度研究成果情報(第29集)」に掲載されている「酵素と基質の親和性を利用した簡単な生分解性プラスチック分解酵素精製法」(http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_42.html)に従って、PaEを精製した。
(キシラナーゼの精製)
P.antarcticaの培養ろ液を限外濾過で濃縮しつつ、1.2M硫酸アンモニウム/50mMリン酸ナトリウム緩衝液に置換した。この溶液をブチルセファロース4FF(GEヘルスケア)カラムに通して、PaE及びキシラナーゼをカラムに吸着させた。緩衝液中の硫酸アンモニウム濃度を徐々に下げて、キシラナーゼだけをカラムから溶出させて(PaEはまだカラムに吸着されている)、PaE活性画分を含まないキシラナーゼを得た。
(PCLEの精製)
Czapek-Dox液体培地に、唯一の炭素源としてPBSAエマルジョン(昭和電工株式会社、EM-301)を加え、Paraphoma属類縁菌B47-9株(受託番号NITE P-573)を振とう培養した。培養液から糸状菌の菌体を除去して、培養ろ液を調製した。当該培養ろ液から、「独立行政法人農業環境技術研究所 平成24年度研究成果情報(第29集)」に掲載されている「酵素と基質の親和性を利用した簡単な生分解性プラスチック分解酵素精製法」(http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/result/result29/result29_42.html)に従って、PCLEを精製した。
<実施例4>
担子菌であるCryptococcus magnus類縁菌BPD1A株(受託番号NITE P-02134)の培養ろ液から、クチナーゼ様酵素であるCmCut1を分離精製した(後述の調製方法を参照)。CmCut1は、緩衝液(20mM Tris-HCl、pH6.8、塩化カルシウム(2mM))を用いて、エステラーゼの力価で0.01U/mLに調製した。対照区としては、希釈に用いた緩衝液(20mM Tris-HCl、pH6.8、塩化カルシウム(2mM))を使用した。
調製した酵素溶液を、ナス科植物である矮性トマト(MicroTom)の葉に対して0.6mL噴霧し、密閉容器の中で保湿しつつ保温した(湿度100%、温度22℃)。噴霧72時間後に、それぞれの切り取り葉に病原性糸状菌(B.c.)の胞子(5×104胞子/mL)を0.6mLずつ噴霧した。褐色の病斑が形成される状態(カビに覆われることもある)を病徴として観察し、以下の式に基づいて、発病度を計算した(発病度の計算方法については「新農薬実用化試験実施の手引き」(社団法人日本植物防疫協会、平成15年2月発行)を参照)。各試験区につき5枚の切り取り葉を用い、各試験を2回反復した。
発病度=100×(0×n0+1×n1+2×n2+3×n3+4×n4)/4N
n0:病斑がない葉の数
n1:病斑がわずか(数個)である葉の数
n2:病斑が葉の1/4未満である葉の数
n3:病斑が葉の1/4~1/2未満である葉の数
n4:病斑が葉の1/2以上である葉の数
N:調査した葉の総数
図11Aに、緩衝液又はCmCut1溶液を噴霧処理した後、病原菌胞子噴霧後7日目の写真。図11Bは、病原菌胞子噴霧後7日目に観察した病斑から算出した発病度のグラフを示す。これらの図から理解できるように、0.01U/mL処理区では、胞子噴霧後7日目の病徴が対照区に比べて軽減され、発病度が低下した。
(CmCut1の精製)
Curyptcoccus属類縁菌magnus株を、Appl.Microbiol.Biotechnol.(2013)、97:7679-7688に記載された方法に従って培養し、得られた培養液を、7000rpmで5分間遠心分離して、菌体を除去した。得られた培養上清を、孔径0.45μmのろ紙(製品名:Cellulose acetate C045A090C、アドバンテック株式会社製)を使用してフィルターろ過した。そして、Appl.Microbiol.Biotechnol.(2014)、98:4457-4465に従ってPBSAエマルジョンに対するアフィニティークロマトグラフィーを行い、生分解性プラスチック分解酵素であるCmCut1を精製した。精製CmCut1については、SDSゲル電気泳動後の銀染色で単一バンドを示すまで精製されていることを確認した。
以上より、従来生分解性プラスチック分解酵素源として知られていた微生物の培養物は、少なくとも、その中に含まれているエステラーゼ及びキシラナーゼの活性を介して、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除することがわかった。
本発明で使用されたエステラーゼ及びキシラナーゼは、圃場に張った農業用生分解性マルチフィルムの分解促進のために生産性が向上されている微生物培養液から調製され得るものであり、安価に大量生産することができるものである。また、エステラーゼ及びキシラナーゼは、自然界で容易に分解され、低分子化合物などで起こる環境中への残存性はなく、環境負荷が低い。さらに、本発明の植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物は、種々の植物又は種々の病害に対して適用できるものであり、汎用性が高い。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
Figure 0006997456000004

Claims (10)

  1. クチナーゼ様酵素及び/又はキシラナーゼを植物の病害抵抗性増強又は植物病害防除の有効成分として含む、植物の病害抵抗性増強用又は植物病害防除用組成物。
  2. 前記クチナーゼ様酵素及び/又は前記キシラナーゼが、微生物培養液又は抽出液である、請求項1記載の組成物。
  3. 前記微生物が、シュードザイマ(Pseudozyma)属、パラフォーマ(Paraphoma)属、及びクリプトコッカス(Cryptococcus)属ら成る群から選択される、請求項に記載の組成物。
  4. 前記クチナーゼ様酵素の濃度が、0.005~0.5U/mLである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 前記クチナーゼ様酵素及び前記キシラナーゼの両方を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記植物が、クチクラ層を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 前記植物が、高等植物である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 請求項1~のいずれか一項に記載の組成物によって植物を処理する工程を含む、植物の病害抵抗性を増強又は植物の病害を防除する方法。
  9. 前記処理工程が、前記組成物を前記植物に噴霧する工程を含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記噴霧工程が、前記組成物を前記植物の葉1枚あたり0.1~1mL噴霧する工程を含む、請求項に記載の方法。
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