JP6982593B2 - 鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
上記マイクロハイブリッド車やマイルドハイブリッド車には、エンジン始動用および再始動用にアイドリングストップ用の鉛蓄電池が使用されている。アイドリングストップ機能は、電池の劣化がある程度進むと車両側の制御によりその機能を停止するが、そのまま始動用として鉛蓄電池を使用する場合がある。このような場合であっても、突然電圧が低下し、エンジンが始動できなくなるという問題が発生しないようにする必要がある。
(1)隔壁により区画された複数のセル室を有する電槽と、複数のセル室にそれぞれ収納された複数の極板群と、複数のセル室に注入された電解液と、を備える。
(2)極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、正極板と負極板との間に配置されたセパレータと、複数枚の正極板および負極板の上方に配置された正極ストラップおよび負極ストラップと、を有する。正極ストラップは、複数枚の正極板同士を、正極板の幅方向の別の位置で、正極板の厚さ方向に連結する。負極ストラップは、複数枚の負極板同士を、負極板の幅方向の別の位置で、負極板の厚さ方向に連結する。
(3)隣り合う二つのセル室の一方に配置された極板群の正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と、他方に配置された極板群の負極ストラップから立ち上がる負極中間極柱とが、隔壁に形成された貫通孔内を埋める金属部で接続されている。
(4)正極板および負極板は、それぞれ、活物質を含む合剤が保持された基板と、基板の外枠から上側へ突出する集電用の耳部と、を有する。正極板の耳部は正極ストラップで連結されている。負極板の耳部は負極ストラップで連結されている。
(5)セル室毎に、複数枚の正極板および負極板の合計質量Wpに対する複数枚の正極板および負極板に保持された電解液の合計質量Weの比(We/Wp)が、0.04以上0.12以下になっている。
上述の耳部の破断の原因について、本発明者らが種々検討した結果、負極においてはPSOC下での使用により、正極においては腐食により耳やせしやすいことに加え、アイドリングストップ車に特有の頻繁なアイドリングストップ後の再スタートによる振動も、耳部の破断の原因の一つではないか、という推測に至った。なお、PSOC下で負極が耳やせしやすい理由は、PSOC下では負極がサルフェーションし易く、サルフェーションのまま使用すると耳部が活物質化して、やがて脱落するからである。
そして、本発明者らは、耳やせが始まっている鉛蓄電池では、極板の重さが耳部の破断に影響を及ぼすのではないかと考えて、種々検討を行った。その結果、正極板、負極板の合計質量(Wp)と正極板、負極板に保持されている電解液の合計質量(We)との比(We/Wp)が0.04以上0.12以下のとき、耳部の破断が抑制され、且つ、減水特性が優れた電池となることが分かった。
また、比(We/Wp)が0.12よりも大きいと、電解液中の水分減少量が多くなる。この理由も定かではないが、上記の理由により、極板が劣化しても比重が下がりにくく、液抵抗が低いので、充電電流が流れ易くなることで、充電中に水の電気分解が進行し易くなるためではないかと考えられる。
(11)耳部の高さ方向に沿った寸法L(mm)と、耳部の幅方向(正極板および負極板の幅方向と同じ)に沿った寸法W(mm)と、耳部の厚さ方向(正極板および負極板の厚さ方向と同じ)に沿った寸法T(mm)と、を用いて下記の(1)式で算出されるXが、50mm-1以上500mm-1以下である。
X=L3/(W×T3)‥‥(1)
(12)複数のセル室は一方向に沿って配列され、配列方向の一端のセル室に配置された極板群は、正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と負極ストラップから立ち上がる負極端子極柱を有し、配列方向の他端のセル室に配置された極板群は、正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と負極ストラップから立ち上がる負極端子極柱を有する。
(13)セル室内での電解液の液面高さは、配列方向の両端にあるセル室とその他のセル室とで異なる。
一態様の鉛蓄電池が上記構成(12)を有する場合、両端のセル室内に収納された極板群とその他のセル室内に収納された極板群とでは、電槽に対する固定状態が異なる。
つまり、一態様の鉛蓄電池が上記構成(12)を有する場合、上記構成(13)を有することで、耳部の破断の抑制効果が高くなると考えられる。
(14)セル室内での電解液の液面高さは、配列方向の両端にあるセル室の方がその他のセル室よりも高い。
配列方向の両端にあるセル室では、配列方向の一方には隣のセル室が存在するが、他方にはセル室が存在しない。その他のセル室(配列方向の両端以外のセル室)では、配列方向の両方に隣のセル室が存在する。そのため、両端のセル室はその他のセル室と比較して、内部に存在する極板群の正極板、負極板、およびセパレータからなる積層体を圧迫する力が弱く、積層体とセル室との空間にガスが溜まりやすい。よって、両端のセル室内では電解液の液面が上昇し易い。
よって、初期状態で、両端のセル室内での電解液の液面高さをその他のセル室内での電解液の液面高さよりも高くしておくと、鉛蓄電池を使用している間に、セル室内での電解液の液面高さが配列方向の両端にあるセル室とその他のセル室とで異なる状態が継続すると考えられる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
図1に示すように、極板群3は、複数枚の正極板32および負極板31と、セパレータ33と、正極ストラップ320と、負極ストラップ310とを有する。
なお、図1では、一個の極板群3を構成する正極板31の枚数と負極板32の枚数が同じになっているが、正極板31の枚数が負極板32の枚数よりも一枚多いことが好ましいものの、正極板32の枚数が負極板31の枚数よりも一枚多くても良い。また、図1〜3において、セル室41〜46の配列方向をX方向、高さ方向をZ方向、X方向およびZ方向に垂直な方向をY方向と表示する。
図3において、正極板の耳部322および負極板31の耳部312をそれぞれ連結している正極ストラップ320および負極ストラップ310は、正極ストラップ320の幅方向中心線L320および負極ストラップ310の幅方向中心線L310のみが記載されている。
つまり、正極板32は正極ストラップ320により、負極板31は負極ストラップ310により、それぞれ幅方向(セル室に入った時にY方向となる方向)の別の位置で連結された状態となっている。
X=L3/(W×T3)‥‥(1)
図1には、主に、配列方向の一端のセル室41およびその隣のセル室(その他のセル室)42の上側部分が表示されている。つまり、図1は図2のA−A断面図に相当する。一方(左側)のセル室41内の負極ストラップ310の右端から立ち上がる負極中間極柱310aと、他方(右側)のセル室42内の正極ストラップ320の左端から立ち上がる正極中間極柱320aとが、隔壁13に形成された貫通孔13a内を埋める金属部330aで接続されている。金属部330aは、負極中間極柱310aと正極中間極柱320aとで、隔壁13の貫通孔13aが形成されている部分を挟み、両中間極柱同士を抵抗溶接することで、貫通孔13aに生じさせたものである。
また、セル室41〜46毎に、複数枚の正極板32および負極板31の合計質量Wpに対する複数枚の正極板32および負極板31に保持された電解液の合計質量Weの比(We/Wp)が、0.04以上0.12以下になっている。
この実施形態の鉛蓄電池は、セル室41〜46毎に比(We/Wp)が0.04以上0.12以下となっているため、部分充電状態で使用された場合でも耳部312,322の破断を抑制できるとともに、電解液5の減少も抑制できる。これに加えて、この実施形態の鉛蓄電池は、耳部312,322の寸法L,W,Tを用いて(1)式で算出されるXが50mm-1以上500mm-1以下を満たすとともに、電解液の液面高さの関係H1>H2を満たしているため、耳部312,322の破断抑制効果が高く、電解液5の減少抑制効果も高いものとなっている。
実施形態の鉛蓄電池は、従来公知の方法によって、例えば以下の方法で製造することができる。
先ず、極板群を構成する化成前の正極板と負極板を作製する。その際に、(1)式で算出されるXが50mm−1以上500mm−1以下を満たすように、負極板の耳部312および正極板の耳部322の耳部の高さ方向に沿った寸法L,耳部の幅方向に沿った寸法W,耳部の厚さ方向に沿った寸法Tを決定する。また、各セル室41〜46で比(We/Wp)が0.04以上0.12以下となるように、使用する活物質の粒径を調整する。活物質の粒径は化成温度によりコントロールした。なお、化成温度が高い程、正極、負極活物質が粗大化することは周知の事実である。
次に、この積層体をCOS(キャストオンストラップ)方式の鋳造装置を用い、正極板の耳部322同士を接続した正極ストラップ320、負極板の耳部311同士を接続した負極ストラップ310、前記正極ストラップ320から立ち上がる正極中間極柱および正極端子極柱、負極ストラップから立ち上がる負極中間極柱310aまたは負極端子極柱361を形成して極板群3とした後、前記極板群3を電槽の各セル室に収容した。
その後、配列方向の一端のセル室41および他端のセル室46内に電解液5を追加して、それ以外のセル室42〜45内よりも電解液5の液面高さを高くすることで、完成品とする。
実施形態の鉛蓄電池と同じ構造の鉛蓄電池として、サンプルNo.1〜No.90の鉛蓄電池を作製した。
サンプルNo.1〜No.90の鉛蓄電池はD23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池であって、表1および表2に示すように、それぞれ、比(We/Wp)、耳部の寸法に関するXの値、および電解液の液面高さが両端のセル室とその他のセル室とで違うかどうか(以下、「液面高さの関係」)の少なくともいずれかが異なるものであり、それ以外の点は全て同じ構成を有する。
なお、各サンプルの鉛蓄電池を構成する正極板および負極板は、Xの値が同じか略同じである。つまり、表に示すXは正極板および負極板の両方の値を示している。
No.43が基準のサンプルであって、No.43の正極板では、T=1.04mm、L=13mm、W=13mmを(1)式に代入して算出されたXが150.2mm-1になっている。No.43の負極板では、T=1.02mm、L=13mm、W=14mmを(1)式に代入して算出されたXが150.8mm-1になっている。よって、表1には、Xを150mm-1と表記した。
次に、隣接するセル室間の中間極柱同士の抵抗溶接、電槽と蓋の熱溶着、注液孔から各セル室内への電解液の注入、および注液口を液口栓で塞ぐなどの通常の工程を行うことにより、D23型のアイドリングストップ用液式鉛蓄電池を組み立てた。その後、通常の方法で電槽化成を行うことで、電槽化成後の比重を1.285(20℃換算値)とした。
また、Xの値が異なると、耳部の体積が異なるため、Wpの値が変化する。よって、Xの値が同じグループ(No.1〜15、No.16〜30、No.31〜45、No.46〜60、No.61〜75、No.76〜90)内で、体積Vが異なる正極板および負極板を用いてWeを変化させることにより、比(We/Wp)を変化させた。
得られた各鉛蓄電池について、以下の方法で試験を行った。
PSOC寿命試験として、SBA S 0101(2014)のアイドリングストップ寿命試験を30,000サイクル実施した後、EN50342−1:2015記載の「Vibration resistance Level V4」を実施した。その後、鉛蓄電池を解体して、一端のセル室41とその二つ隣のセル室43から取り出した極板群の全ての正極板および負極板について、耳部の状態を目視で確認した。そして、破断が生じていた耳部の数を合計極板枚数である30で割った値の百分率を、「耳部破断割合(%)」として算出した。
サンプルNo.1〜No.90のうち比(We/Wp)が0.04以上0.12以下を満たすものを抜き出して、セル室内の液面高さの関係毎に以下の表3〜5にまとめた。各表では比(We/Wp)毎に、Xの値の違いによる試験結果の違いを見ることができる。
サンプルNo.1〜No.90のうち比(We/Wp)が0.04以上0.12以下を満たすものを、Xの値毎に以下の表6および表7にまとめた。各表では比(We/Wp)毎に、セル室内の液面高さの関係の違いによる試験結果の違いを見ることができる。
13 隔壁
13a 隔壁の貫通孔
2 蓋
3 極板群
31 負極板
311 負極基板(負極板の基板)
312 負極板の耳部
310 負極ストラップ
310a 負極中間極柱
361 負極端子極柱
32 正極板
321 正極基板(正極板の基板)
322 正極板の耳部
320 正極ストラップ
320a 正極中間極柱
362 正極端子極柱
330a 貫通孔内を埋める金属部
41 配列方向の一端のセル室
46 配列方向の他端のセル室
42〜45 その他のセル室
5 電解液
L310 負極ストラップの幅方向中心線
L320 正極ストラップの幅方向中心線
Claims (4)
- 隔壁により区画された複数のセル室を有する電槽と、
前記複数のセル室にそれぞれ収納された複数の極板群と、
前記複数のセル室に注入された電解液と、
を備え、
前記極板群は、交互に配置された複数枚の正極板および負極板と、前記正極板と前記負極板との間に配置されたセパレータと、前記複数枚の正極板および負極板の上方に配置され、前記複数枚の正極板同士および前記複数枚の負極板同士をそれぞれ前記正極板および前記負極板の幅方向の別の位置で、前記正極板および前記負極板の厚さ方向に連結する正極ストラップおよび負極ストラップと、を有し、
隣り合う二つの前記セル室の一方に配置された前記極板群の前記正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と、他方に配置された前記極板群の前記負極ストラップから立ち上がる負極中間極柱とが、前記隔壁に形成された貫通孔内を埋める金属部で接続され、
前記正極板および前記負極板は、それぞれ、活物質を含む合剤が保持された基板と、前記基板から上側に突出した集電用の耳部と、を有し、前記耳部は、前記正極ストラップおよび前記負極ストラップでそれぞれ連結され、
前記セル室毎に、前記複数枚の正極板および負極板の合計質量Wpに対する前記複数枚の正極板および負極板に保持された電解液の合計質量Weの比(We/Wp)が0.04以上0.12以下になっている鉛蓄電池。 - 前記耳部の高さ方向に沿った寸法L(mm)と、前記耳部の前記幅方向に沿った寸法Wと、前記耳部の前記厚さ方向に沿った寸法T(mm)と、を用いて下記の(1)式で算出されるXが、50mm-1以上500mm-1以下である請求項1記載の鉛蓄電池。
X=L3/(W×T3)‥‥(1) - 前記複数のセル室は一方向に沿って配列され、
前記配列方向の一端のセル室に配置された前記極板群は、前記正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と前記負極ストラップから立ち上がる負極端子極柱を有し、前記配列方向の他端のセル室に配置された前記極板群は、前記正極ストラップから立ち上がる正極中間極柱と前記負極ストラップから立ち上がる負極端子極柱を有し、
前記セル室内での前記電解液の液面高さは、前記配列方向の両端にあるセル室とその他のセル室とで異なる請求項1または2記載の鉛蓄電池。 - 前記セル室内での前記電解液の液面高さは、前記配列方向の両端にある前記セル室の方がその他の前記セル室よりも高い請求項3記載の鉛蓄電池。
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