JP6878870B2 - 積層体、積層体の製造方法およびフレキシブルデバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
更に詳しくは、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子など薄膜からなり、微細な加工が必要となるデバイスを、ポリイミドフィルム表面に形成するにあたり、一時的に、ポリイミドフィルムを支持体となる無機物からなる基板に貼り合わせた積層体とし、デバイス形成後に剥離するフレキシブルデバイスの製造に用いられる積層体に関する発明であり、さらにその積層体を用いたフレキシブルデバイスの製造方法に関する発明である。
特に詳しくは、耐熱性の無機物からなる支持体と、無機物と比肩しうる耐熱性と絶縁性を有し、さらに無機物と同程度の線膨張係数を有する薄いポリイミド層とを構成成分とすることにより、精緻な構造を有する電子デバイスを得るために有用に用いられる積層体に関する発明である。
特許文献1には、フレキシブル電子デバイスに適用される基板構造であって、支持基板、支持基板を第1の面積で覆う剥離層、ならびに、 前記剥離層および前記キャリアを第2の面積で覆うフレキシブル基板を含み、前記第2の面積が前記第1の面積より大きく、かつ、前記フレキシブル基板が、前記剥離層の前記キャリアに対する密着度よりも高い密着度を有する、基板構造なる技術が開示されており、具体例としてガラス基板にパリレンないし環状オレフィンからなる第1の層を形成した後にポリイミド前駆体ないしポリイミド樹脂溶液を塗布・乾燥・硬化して支持体上で直接ポリイミドフィルムを第2の層として形成し、さらにデバイスを形成して第1の層と第2の層の間で剥離する技術が例示されている。すなわち第1の層であるパリレンないし環状オレフィン樹脂層を剥離層として用いた事例である。本技術においてはパリレンないし環状オレフィン樹脂の耐熱性が不十分であるために、用いる事ができるポリイミド樹脂は低温形成が可能なタイプに限定され、デバイス形成プロセスにおいても高温を用いる事はできない。
本技術においては、剥離層として機能するフィルム、すなわち接着性に乏しいフィルムと支持基板とを接着する必要がある点が第1の困難性である。支持体と比較的容易に接着できる剥離層の場合、フレキシブル基板との間の接着性も高くなるために肝心の剥離工程に困難性を生じてしまう。またさらに、支持体との接着性が乏しい剥離層の場合には、剥離層とフレキシブル基板との接着性も低いため、支持体と貼り合わせる以前に、剥離層とフレキシブル基板とが剥離してしまうリスクが非常に高いと云わざるを得ない。
複雑な多層構造を有し、精密なアライメントが必要な高精細なデバイスの製造には、柔軟で形状維持性に乏しく、寸法安定性に劣るフィルム基板をそのまま用いるには高い困難性が伴うため、かかるリジッドな支持体を併用する手法は、現実性が高い手法であると云える。
しかし、かかる技術を実現するためには、寸法安定性に優れたリジッドで堅牢な基板にフレキシブル基板材料を仮固定し、デバイス作成後にこの剥離する方法において、フレキシブル基板と支持基板との剥離がスムースに実施できかつ、かつデバイス製造プロセス中には剥離することのない工程通過性を両立するフレキシブル基板/支持基板との積層体を実現する必要がある。
このような場合の解決手段の一つとして、支持基板側から紫外線レーザーなどの高エネルギー線を照射し、不易シブル基板と支持基板との間の結合を切断する手法が知られているが、装置が高価な上に、大面積に適用しようとする場合には前面をスキャニングしなければならないため、プロセス時間が長大となりコスト面で大きな問題となる。
すなわち、本発明は以下の構成である。
第1のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物であり、
第2のポリイミド層の膜厚斑が5%以下であり、かつ、引っ張り破断強度が200MP以上であり、
無機基板と第1のポリイミド層との接着強度をF1、
第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との接着強度をF2、
とした場合に F1≧2×F2 であり、
第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、
第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、
とした場合に
Temp1≧Temp2
であることを特徴とする積層体。
[2] 第1のポリイミド層の平均膜厚をT、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットをU、とした場合に、
U>T
である事を特徴とする[1]に記載の積層体。
[3] 無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事を特徴とする[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 第2のポリイミド層の、第1のポリイミド層とは反対側にデバイスが形成されている事を特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の積層体
[5] 前記デバイスが電気配線層を含む事を特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記デバイスが半導体素子を含む事を特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 前記デバイスがガスバリア層を含む事を特徴とする[1]から[6]のいずれかに記載の積層体。
[8] 少なくとも、無機基板に、第1のポリイミド層となるポリイミド樹脂の溶液、または前駆体溶液を塗布し、加熱を伴うプロセスにより第1のポリイミド層を形成する工程、次いで、第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートすることにより第2のポリイミド層を形成する工程、を含む事を特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
[9] [4]から[7]のいずれかに記載の積層体の、第1のポリイミド層と第2ポリイミド層の間を剥離することにより第2のポリイミド層上に形成されたデバイスを得ることを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
[10]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[11]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも分子内にエーテル結合を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[12]前記第2のポリイミド層が芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともフェニレンジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[13]前記第2のポリイミド層がビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物のフィルムであることを特徴とする[1]から[7]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[14]前記第1のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分が1000ppm以下である事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[15]前記第2のポリイミド層に含まれる酸化珪素成分が1000ppm以下である事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[16]前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きい事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[17]前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きく、かつ、第2のポリイミド層が無機板と直接接触するエリアを有する事を特徴とする[1]から[7]、[10]から[13]のいずれかに記載の積層体、[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
[18] 第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートする工程が、以下の工程を含む事を特徴とする[8]に記載の積層体の製造方法、[9]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
・第1のポリイミド層が形成された無機基板の、第1のポリイミド層側にシランカップリング処理を行う工程、
・第2のポリイミド層となるポリイミドフィルムをシランカップリング剤処理面に重ねる工程、
・前記ポリイミドフィルムを無機基板側に圧接する工程、
[19] 前記ポリイミドフィルムの第1のポリイミド層と接着する側に、活性化処理を行う事を特徴とする[8]、[18]に記載の積層体の製造方法、[9]、[18]に記載のフレキシブルデバイスの製造方法。
一方で第1のポリイミド層と第2のポリイミド層は、隙間無く密着しているため、所謂真空密着効果に加え、極々至近距離にあるために生じるファンデアワールス力で接着する。これらの接着力はデバイス加工工程中の剥離を防ぎ、なおかつ、デバイス形成後にはフレキシブル基板ごとデバイスを剥離することが出来る程度である。
3:第2のポリイミド層
5:デバイス
10:支持体(無機基板)
脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
本発明における脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
無機板は全体の支持体として作用する。
本発明において、第1のポリイミド層は、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともベンゾオキサゾール骨格を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物であることが必須である。
さらに本発明では、第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、とした場合に Temp1≧Temp2 なる関係が成立していることが必須である。すなわち第1のポリイミド層の熱分解温度が第2のポリイミド層の熱分解温度と同じか、より高い事が必須であり、さらに4℃以上の差があることが好ましく、8℃以上の差があることが好ましく、12℃以上の差があることがなお好ましい。なお、ここに熱分解温度はTGAにて空気雰囲気下、一気圧にて、昇温速度10℃/分の条件下においてで得られる5%重量減温度である。
さらに本発明では、第2のポリイミド層として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくとも分子内にエーテル結合を有するジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
なおさらに本発明では第2のポリイミド層として、芳香族テトラカルボン酸二無水物と、少なくともフェニレンジアミンを含むジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
また本発明では第2のポリイミド層としてビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの縮合物のフィルムを用いる事ができる。
U>T
である事が好ましい。ここにUはアンダーカット[μm]、Tは第1のポリイミド層の平均膜厚[μm]である。また平均膜厚は第1のポリイミド層中の無作為に選んだ10点の平均値である。膜厚は、第2ポリイミド層の除去が可能な場合には触針計でないしマイクロメータで測定可能である。第2のポリイミド層の除去が難しい場合、積層体断面のSEM像にて実測する。
本発明では、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットを大きくすることにより、デバイス加工プロセス中での第1のポリイミド層の剥離事故を大幅に低減させることが可能となる。これは、単純にエッジでの引っかかりが小さくなることに加えて、ポリイミド層のエッジ部での内部応力が、ポリイミド層エッジ部において無機基板に対して食い入る方向になることによる。無機基板にポリイミド前駆体を塗布・乾燥・硬化した際には、塗膜表面層の分子配向が塗膜内部より進みやすいため、塗膜表面層に比較して塗膜内部のCTEが大きめになる。ポリイミドの硬化反応は一般に比較的高温で行われるため、硬化後に冷却した場合、CTEが大きい塗膜内部の収縮が大きくなるため、層内の応力は、内部側ががCTEの小さい表面層を引き込む方向に作用するのである。
本発明におけるアンダーカットは、U>1.5×Tであることが好ましく、U>2.4×Tであることが好ましく、さらに U>3.2×Tであることが好ましい。
本発明ではこのような接着手段としてシランカップリング剤を用いる方法を使用できる。すなわち、本発明では、無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事が好ましい。
本発明におけるシランカップリング剤は、無機板と第1のポリイミド層との間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
本発明では、特に好ましいシランカップリング剤としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで特に高い耐熱性が要求される場合、Siとアミノ基の間を芳香族基でつないだものが望ましい。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
本発明ではこのシランカップリング剤塗布方法として、好ましくは気相を介する気相塗布法を用いる事ができる。気相塗布法とは、気化させたシランカップリング剤に無機基板を暴露することにより塗布を行う。シランカップリング剤塗布をシランカップリング剤処理と言い換えても良い。気化とはシランカップリング剤の蒸気、すなわち実質的に気体状態のシランカップリング剤あるいは、微粒子状態のシランカップリング剤が存在する状態を指す。暴露とは、前記の気化したはシランカップリング剤を含んだ気体あるいは真空状態に有機系高分子フィルムが接触していることを言う。
一方、生産効率向上および生産設備価格低減の観点からは、真空を使わない環境でのシランカップリング剤塗布が望ましい。例えば、チャンバー内に常圧下にて有機系高分子フィルムをセットし、チャンバー内を気化したシランカップリング剤を含む概ね常圧のキャリアガスを満たしてシランカップリング剤を堆積してから、再び気化したシランカップリング剤の無い状態に戻すまで、概略大気圧のままで行うことができる。
ここに本発明におけるデバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、電気二重層キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、一次電池、二次電池、薄膜トランジスタ、量子ドット、量子細線、量子細線トランジスタ、単電子トランジスタ、あるいは単電子メモリなどを云う。
本発明におけるデバイスは電気配線層を含む事が好ましい。また本発明におけるデバイスは半導体素子を含む事が好ましい。さらに本発明のデバイスは、水蒸気バリア、酸素バリア、硫化水素バリア等のガスバリア層を含む事が好ましい。
一方で、本発明では、前記第1のポリイミド層が無機基板を覆う面積が、第2のポリイミド層の面積より大きく、かつ、第2のポリイミド層が無機板と直接接触するエリアを有する事が好ましい。この第2のポリイミド層が無機基板と直接接する領域は、第2のポリイミド層との接着性が高くなるために、プロセス中での第2のポリイミド層の剥離トラブルを防止する効果を期待できる。さらに、第2のポリイミド層を剥離する際に、この無機基板と直接接する部分をきっかけとして用いる事により、第1のポリイミド層にキズなどを付けること無く第2のポリイミド層を剥離することが可能となる。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン(又は、N,N−ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N−ジメチルアセトアミドの場合は、N,N−ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
第1のポリイミド層については、積層体断面のSEM断面観察により求めた。なお、特に断りの無い限り、各ポリイミド層の端部から1mm以上内側の領域において、無作為に選択した5点の膜厚の平均値をポリイミド層の膜厚とした。
第2のポリイミド層においては、ラミネート前のポリイミドフィルムないしは第2のポリイミド層を積層体から90度剥離した後のフィルムの無作為に選択した10点の算術平均値を求め、膜厚とした。また、任意の10点の膜厚の最大値、最小値、算術平均値から、以下の式により膜厚斑[%]を算出した。
膜厚斑=100×(最大値−最小値)/算術平均値 [%]
なお第2のポリイミド層であるポリイミドフィルムの厚さは触針式膜厚計で測定される。
また、良好に剥離できた場合には、剥離後のポリイミドフィルム、膜厚斑と、ラミネート前のポリイミドフィルムの膜厚および膜厚斑はほぼ一致した。
積層板から剥離したポリイミド層(ポリイミドフィルム)を試料とし、150℃にて30分間乾燥した後に、下記条件で熱天秤測定(TGA)を行い、試料の質量が5%減る温度を熱分解温度とした。
装置名 : MACサイエンス社製TG−DTA2000S
パン : アルミパン(非気密型)
試料質量 : 10mg
昇温開始温度 : 30℃
昇温速度 : 20℃/min
雰囲気 : アルゴン
JIS K6854−1:1999に規定される90度剥離法に従って測定した。
装置名 : 島津製作所社製 オートグラフAG−IS
測定温度 : 室温
剥離速度 : 100mm/min
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
図2に示す方法にてアンダーカットを求めた。まず、第1のポリイミド層のエッジ近傍の断面観察を行う。エッジ近傍とはエッジ端からポリイミド層の端部から3mm程度内側までの領域を云う。まずポリイミド層の平均膜厚を、エッジ端から1mm以上内側の領域において無作為に5点測定し、算術平均を求め、これを膜厚Tとする。次にポリイミド層エッジ端の膜厚が0.1Tとなる個所から、膜厚が0.9Tとなる個所までの距離:アンダーカットUを求める。なお、Uに付いても、各試料のエッジ部について無作為に抽出した5個所の断面図から得られたUの算術平均とする。
<線膨張係数>
ポリイミド層を剥離して得られたフィルムにおいて、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃〜45℃、45℃〜60℃、…と15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 : MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ : 20mm
試料幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV1の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール223質量部、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部を加えて完全に溶解させた後、ピロメリット酸二無水物217質量部、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV1」を得た。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物398質量部、パラフェニレンジアミン132質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル30質量部を4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、25℃の反応温度で24時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミド酸溶液[PV2]を得た。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸無水物545質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル500質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV3]を得た。
[ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)溶液PV4の製造]
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、ピロメリット酸二無水物545質量部、パラフェニレンジアミン153質量部、4,4'ジアミノジフェニルエーテル200質量部を8000質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解し、温度を20℃以下に保ちながら同様に反応させてポリアミド酸溶液[PV4]を得た。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル155.9質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながらシクロブタンテトラカルボン酸二無水物142.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で5時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド1000質量部で希釈し、還元粘度4.20dl/gのポリアミド酸溶液[PV5]を得た。
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル176.5質量部とN,N-ジメチルアセトアミド1200質量部を仕込んで溶解させた後、反応容器を冷却しながら1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物122.9質量部を固体のまま分割添加し、室温で18時間攪拌した。その後N,N-ジメチルアセトアミド500質量部で希釈し、還元粘度3.26dl/gのポリアミド酸溶液[PV6]を得た。
ガラス基板[G1]として235mm×185mm、厚さ 0.7mmの日本電気硝子製OA10Gを用いた。
ガラス基板[G2]として235mmX185mm、厚さ 0.7mmの青板ガラスを用いた。
シリコンウエハ[SW]として、直径200mm、厚さ 0.7mmの片面鏡面仕上げウエハを用いた。
得られたポリアミド酸溶液[PV1]をガラス基板1に塗布し、最終膜厚が20〜25μmとなるように適宜塗布膜厚を調整して所定の温度にて乾燥・熱処理によるポリイミド化を行い、ガラス基板から剥離したポリイミド樹脂を評価した結果を表1に示す。表中の「ワニス成膜」はこの方法によって得られたポリイミドを用いた事を示す。
製造例にて得られたポリアミド酸溶液[PV1]を脱泡後にコンマコーターを用いて、東洋紡株式会社製ポリエステルフィルムA4100の平滑面に塗布し、連続式乾燥機にて乾燥温度を95℃にて5分、115℃にて5分間乾燥しポリアミド酸フィルムとした。次いで得られたポリアミド酸フィルムをポリエステルフィルムから剥離し、フィルムの両端をピンにて把持し、連続式の熱処理炉にて250℃にて3分、490℃にて3分間熱処理を行ない、室温まで冷却してポリイミドフィルム[PF1a]を得た。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。表中の「フィルム成膜」はこの方法によって得られたポリイミドフィルムを用いた事を示す。
以下同様にポリアミド酸溶液、成膜方法、塗布膜厚、乾燥、熱処理条件,を代えて溶液成膜を行い表1に示すポリイミドフィルムを得た。結果を表1に示す。
PMDA:ピロメリット酸二無水物、
BPDA:3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
CBA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、
CHA:1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
ODA:4,4'ジアミノジフェニルエーテル、
PDA:フェニレンジアミン、
DAMBO:5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、
BPA:2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
FA:2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、
CTE :線膨張係数、
UV/O3:UVオゾン処理
ホットプレートと無機基板の支持台とを備えたチャンバーをクリーンな乾燥窒素で置換した後、無機基板を支持台に設置し、無機基板の200mm下方に液面が位置するようにシランカップリング剤(3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を満たしたシャーレを置き、シャーレをホットプレートにて100℃に加熱し、無機基板の下面をシランカップリング剤蒸気に3分間暴露した後にチャンバーから取り出し、クリーンベンチ内に設置し、120℃に調温されたホットプレートに無機基板の暴露面とは逆側を熱板に接するように乗せ、1分間の熱処理を行った。
次いで無機基板のシランカップリング剤処理面に、第1のポリイミド層となるポリアミド酸溶液[PV1]をバーコーターにて塗布し、クリーンオーブンにて乾燥・熱処理を行った。乾燥条件、熱処理条件は表1に合わせた。
第1のポリイミド層を形成した無機板を再び、ホットプレートと無機基板の支持台とを備えたチャンバーにて、第1のポリイミド層が形成された無機基板を支持台に第1のポリイミド層が下向きになるように設置し、同様にシランカップリング剤蒸気に暴露し、チャンバーから取り出した後、クリーンベンチ内に設置し、120℃に調温されたホットプレートに無機基板側が熱板に接するように乗せ、1分間の熱処理を行った。
得られた積層体における、第1のポリイミド層と無機基板の接着強度[N/cm]、第2のポリイミド層と第1のポリイミド層の接着強度[N/cm]、実際に第1のポリイミド層から第2のポリイミド層を剥離した際の状況を「剥離性」として評価した。なお剥離性良好は、第2のポリイミド層をフィルムとして問題無く剥離することが出来たことを示す。 さらに同条件で作製した積層体を真空中にて450℃30分の熱処理を行い、室温に冷却し、24時間放置した後に、第2のポリイミド層と第1のポリイミド層の接着強度[N/cm]を測定し、同様に「剥離性」を評価した。結果を表2ないし表3に示す。
以下、無機基板、第1のポリイミド層、第2のポリイミド層を適宜替えて実験を行い表2および表3に示す実施例2〜実施例13、比較例1〜比較例3の積層体を得た。各々の積層体の評価結果を表2ないし表3に示す。なお剥離性において「割け」はフィルム剥離中に第2のポリイミド層が割けてしまい、良質なフィルムを得られなかった事を示す。また「共剥離」は、第2のポリイミド層が剥がれずに、第1のポリイミド層ごと無機基板から剥離してしまったことを示す。また「フィルム欠け」は剥離した第2のポリイミド層のエッジないし角に欠けが生じたことを示す。これはフィルムの劣化ないしフィルムの引張破断強度が接着力に対して十分でない事を示す。
表中の配置Aは図3の配置、配置Bは図4の配置を示す。シリコンウェハを用いた例については、第1のポリイミド層、第2のポリイミド層共に、シリコンウェハと同サイズとした。
無機基板の表面処理には、ランテクニカルサービス社製UV/オゾン洗浄改質装置SKR1102N-03を用い、ランプと無機基板との距離を30mmとして一分間の照射を行った。
Claims (9)
- 無機基板、無機基板と近接する第1のポリイミド層、第1のポリイミド層の無機基板とは反対側に位置する第2のポリイミド層を含む積層体において、
第1のポリイミド層がピロメリット酸二無水物と、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールとの縮合物であり、
第2のポリイミド層の膜厚斑が5%以下であり、かつ、引っ張り破断強度が90MPa以上であり、
無機基板と第1のポリイミド層との接着強度をF1、
第1のポリイミド層と第2のポリイミド層との450℃30分の熱処理を行った後の接着強度をF2、
とした場合に F1≧2×F2 であり、
第1のポリイミド層の熱分解温度をTemp1、
第2のポリイミド層の熱分解温度をTemp2、
とした場合に
Temp1≧Temp2
であることを特徴とする積層体。 - 第1のポリイミド層の平均膜厚をT、第1のポリイミド層のエッジ部のアンダーカットをU、とした場合に、
U>T
である事を特徴とする請求項1に記載の積層体。 - 無機基板と、第1のポリイミド層との間にシランカップリング剤層を有する事を特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
- 第2のポリイミド層の、第1のポリイミド層とは反対側にデバイスが形成されている事を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層体
- 前記デバイスが電気配線層を含む事を特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
- 前記デバイスが半導体素子を含む事を特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
- 前記デバイスがガスバリア層を含む事を特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層体。
- 少なくとも、無機基板に、第1のポリイミド層となるポリイミド樹脂の溶液、または前駆体溶液を塗布し、加熱を伴うプロセスにより第1のポリイミド層を形成する工程、次いで、第1のポリイミド層の無機基板と反対側の面に、膜厚斑が5%以下で有り引っ張り破断強度が90MPa以上であるポリイミドフィルムをラミネートすることにより第2のポリイミド層を形成する工程、を含む事を特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層体の製造方法。
- 請求項4から7のいずれかに記載の積層体の、第1のポリイミド層と第2ポリイミド層の間を剥離することにより第2のポリイミド層上に形成されたデバイスを得ることを特徴とするフレキシブルデバイスの製造方法。
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