JP6746920B2 - フレキシブル電子デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで本発明者らは、さらに改良を重ね、カップリング剤処理を行った無機基板に、部分的に不活性化処理を行い、カップリング剤の活性度の高い部分と低い部分を形成し、高分子フィルムを貼り合わせた際に、比較的剥離しにくい良接着部と、比較的剥離しやすい易剥離部とを作り、易剥離部に電子デバイスを形成し、高分子フィルムの易剥離部/良接着部との境目に切り込みを入れて、易剥離部のみを剥離することにより、電子デバイスに与えるストレスを減じた状態にて剥離可能とする技術を提案している(特許文献7)。
そこで、本発明は、高分子フィルムの表面活性化処理時や高分子フィルムと無機基板の加熱加圧時に真空装置を用いる必要がなく、高分子フィルムと無機基板の積層体が安定して貼り合わされると共に、電子デバイス実装後に無機基板から高分子フィルムを容易に剥離可能な方法を提供することを課題として掲げた。
[1] 高分子フィルムを無機基板に貼り合わせ、該高分子フィルム上に電子デバイスを形成した後に該高分子フィルムを該無機基板から剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法において、少なくとも無機基板に貼り合わせる高分子フィルムの面が、オキシアルキルアミンを含むアルカリ性溶液により表面活性化処理されていることを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[2] 前記オキシアルキルアミンが、モノオキシモノアミン、及びモノアミノ多価アルコールからなる群より選択される1種以上である[1]に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[3] 前記高分子フィルムが縮合系の高分子フィルムである[1]または[2]に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[4] 前記高分子フィルムがポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム又は液晶ポリマーフィルムである[1]〜[3]のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[5] 前記無機基板と前記高分子フィルムとの貼り合わせが、表面活性化処理した無機基板と、表面活性化処理した高分子フィルムとを加熱・加圧することによって行われる[1]〜[4]のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
[6] 高分子フィルムに貼り合わせる前記無機基板の面が、シランカップリング剤で処理されている[1]〜[5]のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
本発明においては高分子フィルムの支持体として無機基板を用いる。無機基板とは無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス、セラミック、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス、セラミック、半導体ウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
シリコンウエハ以外に、ゲルマニウム、シリコン−ゲルマニウム、ガリウム−ヒ素、アルミニウム−ガリウム−インジウム、窒素−リン−ヒ素−アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛)などの半導体ウエハ、化合物半導体ウエハなどを用いることが出来る。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。厚さの下限については特に制限されないが、例えば0.07mm以上、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.3mm以上が用いられる。
本発明における高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、全芳香族ポリエステル、その他の共重合ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、その他の共重合アクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリイミド、脂環族ポリイミド、フッ素化ポリイミド、酢酸セルロース、硝酸セルロース、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフェノール、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、液晶ポリマー等のフィルムを用いることが出来る。
本発明ではこれら高分子フィルムのうち、縮重合反応により得られる高分子フィルム(縮合系の高分子フィルム)が好ましい。本発明において特に効果が顕著・有用であるものは耐熱性が100℃以上の高分子、所謂エンジニアリングプラスチックのフィルムである。ここに耐熱性とはガラス転移温度ないしは熱変形温度が100℃以上である性質を云う。本発明で好ましく用いられる縮重合高分子フィルム(縮合系の高分子フィルム)はポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリベンザゾールフィルム、ポリイミドベンザゾールフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルムであり、より好ましくはポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム又は液晶ポリマーフィルムである。
本発明において、ヤング率の上限は特に限定されないが、現実的には15GPa程度である。ヤング率が高すぎる素材は、フィルムが脆く、割れやすくなることが多いため、フレキシブル電子デバイス用の基材としては適切でない。
前記脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4'−メチレンビス(2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。
芳香族ジアミン類以外のジアミン(脂肪族ジアミン類および脂環式ジアミン類)の合計量は、全ジアミン類の20質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。換言すれば、芳香族ジアミン類は全ジアミン類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
脂環族テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
フィルムの厚さ斑(%)=100×(最大フィルム厚−最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
ポリイミドフィルムの場合、例えば、i)一方のポリイミドフィルムを作製後、このポリイミドフィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布してイミド化する方法、ii)一方のポリアミド酸溶液を流延しポリアミド酸フィルムを作製後、このポリアミド酸フィルム上に他方のポリアミド酸溶液を連続的に塗布した後、イミド化する方法、iii)共押し出しによる方法、iv)滑材を含有しないか又はその含有量が少量であるポリアミド酸溶液で形成したフィルムの上に、滑材を多く含有するポリアミド酸溶液をスプレーコート、Tダイ塗工などで塗布してイミド化する方法などを例示できる。本発明では、上記i)ないし上記ii)の方法を用いることが好ましい。
本発明の高分子フィルムは、オキシアルキルアミンを含むアルカリ性溶液を用い、表面活性化処理される。オキシアルキルアミンは、好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜5である。
オキシアルキルアミンは、モノオキシモノアミン、及びモノアミノ多価アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
中でも、前記アルカリ性溶液は、作業性の点で水溶液であることが好ましい。
かかる追加成分はその添加総量がオキシアルキルアミンの含有量と同量以下である事が好ましい。追加成分の含有量は、前記アルカリ性溶液100質量%中、例えば0〜10質量%であり、好ましくは0〜5質量%である。
本発明では必要に応じて保護フィルムを用いる事が出来る。保護フィルムは、文字通り、主体となる被保護物を、汚染やキズから保護する役割を担う物であるが、本発明に於いては、さらに、分割された高分子フィルムをまとめて、無機基板と貼り合わせる工程を省力化する働きを担う。
本発明において無機基板と高分子フィルムとの接着手段は、(1)無機基板と貼り合わせる高分子フィルムの面を前記アルカリ性溶液により表面活性化処理して高分子フィルムと無機基板を接着させる手段、(2)高分子フィルムと貼り合わせる無機基板の面をシランカップリング剤で処理し高分子フィルムと無機基板を接着させる手段、(3)粘着剤又は接着剤により高分子フィルムと無機基板を接着させる手段であってもよく、これらを併用してもよい。
本発明において無機基板と高分子フィルムの接着手段は、前記(1)を必須手段とし、前記(1)と前記(2)、前記(1)と前記(3)、又は前記(1)と前記(2)と前記(3)の組み合わせであってもよく、前記(1)の後に、前記(2)及び/又は(3)を行えばよい。
無機基板と貼り合わせる高分子フィルムの面が、前記アルカリ性溶液で塗布されることが好ましく、高分子フィルムをアルカリ性溶液に浸漬することが好ましい。
当該時間は、例えば1秒〜30分、好ましくは5秒〜10分、より好ましくは10秒〜5分である。処理時間が所定の時間を超えると、フィルムが溶解して強度が落ちる等の問題が生じる場合がある。また処理時間が所定の範囲に満たないと、処理が不均一になり、斑が出やすくなる。浸漬方法を用いた場合、浸漬後、複数回水洗し、90±30℃程度で数十秒〜10分程度の熱処理(乾燥処理)を行うことが好ましい。
シランカップリング剤は、無機基板(仮支持体)と高分子フィルムとの間に物理的ないし化学的に介在し、両者間の接着力を高める作用を有する化合物を云う。
シランカップリング剤の好ましい具体例としては、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
なお本発明では必要に応じて、リン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等を併用しても良い。
シランカップリング剤の塗布方法としては、液相での塗布方法、気相での塗布方法を用いることが出来る。
液相での塗布方法としては、シランカップリング剤をアルコールなどの溶媒で希釈した溶液を用いて、スピンコート法、カーテンコート法、ディップコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、バーコート法、コンマコート法、アプリケーター法、スクリーン印刷法、スプレーコート法等の一般的な液体塗布方法を例示することが出来る。液相での塗布方法を用いた場合、塗布後に速やかに乾燥し、さらに100±30℃程度で数十秒〜10分程度の熱処理を行うことが好ましい。熱処理により、シランカップリング剤と被塗布面の表面とが化学反応により結合される。
なおシランカップリング剤処理前の無機基板表面を短波長UV/オゾン照射などの手段により清浄化すること、ないしは液体洗浄剤で清浄化すること等は、好ましい。
粘着剤又は接着剤として、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などの公知の接着剤、粘着剤を用いることができる。本発明では、たとえば、冷却することによって粘着力が減じる性質を有する側鎖結晶性高分子を用いた粘着剤を用いることができる。
接着手段は、厚さが5μm以下の接着剤・粘着剤による接着手段であってもよく、実質的に接着剤・粘着剤を用いない接着手段であってもよい。
本発明では、無機基板側に、シランカップリング剤処理、UVオゾン処理などの有機化処理、活性化処理を行い、同様に高分子フィルム側にも真空プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、イトロ処理、UVオゾン処理、活性ガスへの暴露処理などの活性化処理を行い、両処理面を密着させて加圧、加熱処理を行う接着方法を用いてもよい。
本発明では、少なくとも無機基板表面と、活性化された高分子フィルム表面を重ね合わせ、加熱・加圧することにより接着を行うことができる。
前記無機基板と前記高分子フィルムとの貼り合わせは、表面活性化処理した無機基板と、表面活性化処理した高分子フィルムとを加熱・加圧することによって行われることが好ましい。この場合、高分子フィルムに貼り合わせる前記無機基板の面は、シランカップリング剤で処理されることが好ましい。他方、厚さが5μm以下の粘着剤層乃至接着剤層を介して、表面活性化処理した無機基板又は表面活性化処理していない無機基板と表面活性化処理した高分子フィルムとを貼り合わせてもよい。
加圧・加熱処理は、例えば、大気圧雰囲気下あるいは真空中で、プレス、ラミネート、ロールラミネート等を、加熱しながら行えばよい。またフレキシブルなバッグに入れた状態で加圧加熱する方法も応用できる。生産性の向上や、高い生産性によりもたらされる低加工コスト化の観点からは、大気雰囲気下でのプレスまたはロールラミネートが好ましく、特にロールを用いて行う方法(ロールラミネート等)が好ましい。
加圧加熱処理の際の温度としては、用いる高分子フィルムの耐熱温度を超えない範囲にて行う。非熱可塑性のポリイミドフィルムの場合には好ましくは80℃〜400℃、より好ましくは90℃〜350℃で処理される。
本発明の積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いて積層体の高分子フィルム上に電子デバイスを形成し、積層体から高分子フィルムごと剥離することで、フレキシブルな電子デバイスを作製することができる。
本発明における電子デバイスとは、電気配線を担う配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路の他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどを云う。
高分子フィルムを支持体から剥離する手段については特に限定されず、公知の方法を用いればよい。積層体から高分子フィルムを剥離する方法としては、無機基板側から強い光を照射し、無機基板と高分子フィルム間の接着部位を熱分解、ないし光分解させて剥離する方法、あらかじめ接着強度を弱めておき、高分子フィルムの弾性強度限界値未満の力で高分子フィルムを引きはがす方法、加熱水、加熱蒸気などに晒し、無機基板と高分子フィルム界面の結合強度を弱めて剥離させる方法などを例示することが出来る。
他方、高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いる場合には、アモルファスシリコンの脱水素工程と多結晶化工程が想定される点で、420℃30分間の熱処理後の90度剥離における接着強度として評価されてもよい。高分子フィルムとしてポリエチレンナフタレートフィルムを用いる場合には、250℃30分間の熱処理後の90度剥離における接着強度として評価されてもよい。高分子フィルムとしてLCPフィルムを用いる場合には、300℃30分間の熱処理後の90度剥離における接着強度として評価されてもよい。
無機基板と高分子フィルムの90度剥離における接着強度は、例えば0.1N/cm以上10N/cm未満、好ましくは0.2N/cm以上6N/cm以下、より好ましくは0.3N/cm以上4N/cm以下、さらに好ましくは0.4N/cm以上3N/cm以下である。
無機基板をシランカップリング剤で処理した場合の無機基板と高分子フィルムの熱処理(例えばポリエチレンテレフタレートフィルムの場合140℃30分、ポリイミドフィルムの場合420℃30分、ポリエチレンナフタレートの場合250℃30分、液晶ポリマーの場合300℃30分)後の90度剥離における接着強度は、例えば1.5N/cm以上10N/cm以下、好ましくは1.7N/cm以上、より好ましくは1.9N/cm以上、さらに好ましくは2.1N/cm以上である。
無機基板をシランカップリング剤で処理した場合の無機基板と高分子フィルムの熱処理後の90度剥離における接着強度は、熱処理前の接着強度(初期接着強度)に比べて低いことが好ましい。
無機基板をシランカップリング剤で処理しない場合の無機基板と高分子フィルムの熱処理後の90度剥離における接着強度は、例えば0.1N/cm以上1.5N/cm未満、好ましくは0.2N/cm以上、より好ましくは0.3N/cm以上、さらに好ましくは0.4N/cm以上である。
無機基板をシランカップリング剤で処理しない場合の無機基板と高分子フィルムの熱処理後の90度剥離における接着強度は、熱処理前の接着強度(初期接着強度)に比べて高いことが好ましい。
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液についてウベローデ型の粘度管を用いて30℃で測定した。
高分子フィルムの厚さは、マイクロメーター(ファインリューフ社製「ミリトロン1245D」)を用いて測定した。
測定対象とする高分子フィルムから、流れ方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)がそれぞれ100mm×10mmである短冊状の試験片を切り出し、引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ(登録商標);機種名AG−5000A」)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
測定対象とする高分子フィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)について、下記条件にて伸縮率を測定し、15℃の間隔(30℃〜45℃、45℃〜60℃、…)での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行って、MD方向およびTD方向で測定した全測定値の平均値を線膨張係数(CTE)として算出した。
機器名 ; MACサイエンス社製「TMA4000S」
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 400℃
昇温速度 ; 5℃/分
雰囲気 ; アルゴン
初荷重 ; 34.5g/mm2
IEC 61189−2,Test 2X02 に規定される方法で、加熱条件を400℃1時間として、測定した。
JIS K7251に規定されるA法にて測定した。
積層板から、測定に供する部分を100mm四方程度に切り取り、無機基板と高分子フィルムとの接着強度を、JIS C6481に記載の90度剥離法に従い、下記条件で測定した。
装置名 : 島津製作所社製「オートグラフ(登録商標)AG−IS」
測定温度 : 室温
剥離速度 : 50mm/分
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 10mm
〔製造例1〕
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)398質量部と、パラフェニレンジアミン(PDA)147質量部とを、4600質量部のN、N−ジメチルアセトアミドに溶解させて加え、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)をシリカ(滑材)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量に対して0.08質量%になるように加え、25℃の反応温度で24時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V1を得た。
上記で得られたポリアミド酸溶液V1を、スリットダイを用いて幅1500mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が25μmとなるように塗布し、105℃にて20分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、幅1420mmの自己支持性のポリアミド酸フィルムを得た。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)223質量部と、N,N−ジメチルアセトアミド4416質量部とを加えて完全に溶解させ、次いで、ピロメリット酸二無水物(PMDA)217質量部とともに、滑材としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC−ST30」)とをシリカ(滑材)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.09質量%になるように加え、25℃の反応温度で36時間攪拌して、表1に示す還元粘度を有する褐色で粘調なポリアミド酸溶液V2を得た。
ポリアミド酸溶液V1に代えて、上記で得られたポリアミド酸溶液V2を用い、スリットダイを用いて幅800mmの長尺ポリエステルフィルム(東洋紡株式会社製「A−4100」)の平滑面(無滑材面)上に、最終膜厚(イミド化後の膜厚)が38μmとなるように塗布し、105℃にて25分間乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離して、ピンテンターによって、1段目150℃×5分、2段目220℃×5分、3段目495℃×10分、熱処理を施してイミド化させ、両端のピン把持部分をスリットにて落とし、幅645mmの長尺ポリイミドフィルムF2(1000m巻き)を得た。得られたフィルムF2の特性を表2に示す。
他の高分子フィルムとして、以下のものを用いた。カプトンHは東レデュポン社製の市販品であり、PENフィルムは帝人デュポン社製、LCPフィルムはクラレ社製の市販品であった。
エタノールアミン 15質量部、脱イオン水 85質量部を混合攪拌し、アルカリ性溶液A1とした。別に、エタノールアミン 10質量部、KOH 2質量部、脱イオン水88質量部を混合攪拌し、アルカリ性溶液A2とした。NaOH 5質量部を脱イオン水95質量部に溶解し、アルカリ性溶液A3とした。なおエタノールアミン、KOH、NaOHはいずれも試薬一級を用いた。
フィルムF1を300mm×420mmにカットし、ステンレス鋼性の金枠に固定し、表3に示す所定温度に温度調整されたアルカリ性溶液(処理薬液)を満たし、緩やかに攪拌した水槽に、所定の時間浸し、引き上げたのち直ちに、脱イオン水を満たした水槽に10秒間浸し、十分に水切りした後、別の脱イオン水槽に10秒間浸し、十分に水切りした後、流水洗浄し、60℃の温風乾燥機にて3分間乾燥し、表面活性化処理を行った(実施例1)。以下、高分子フィルム、アルカリ性溶液(処理薬液)、処理温度、処理時間を表3に示す内容に変えた以外は同様に操作した(実施例2〜20、比較例1〜5)。
370×470mm、厚さ0.7mmのコーニング社製LotusGlassにランテクニカルサービス株式会社製のUV/O3洗浄改質装置を用い、大気雰囲気内にて、該UVランプから20mm程度離れた距離からUV照射を5分間行った。本ガラス基板を未処理基板とした。なお、UVランプは185nm(不活性化処理を促進するオゾンを発生させうる短波長)と254nmの波長の輝線を出しており、このとき照度は、照度計「ORC社製UV−M03AUV(254nmの波長で測定)」にて20mW/cm2であった。
表面活性化処理高分子フィルムP1とSC剤塗布無機基板の処理面を合わせるように重ね、MCK社製ロールラミネータを用いて、無機基板側温度100℃、ロール圧力5kgf/cm2、ロール速度5mm/秒にて仮ラミネートした。仮ラミネート後の高分子フィルムはフィルムの自重では剥がれないが、フィルム端部を引っ掻くと簡単に剥がれる程度の接着性であった。その後、得られた仮ラミネート基板をクリーンオーブンに入れ、120℃にて30分間加熱した後、室温まで放冷して、積層体L1を得た。
得られた積層体の、フィルムと基板との90度剥離接着強度、さらにオーブンで加熱処理の外観品位と90度剥離接着強度について評価した。結果を表3に示す。なお、加熱処理は420℃30分とした。
なお、積層体の製作は、温度25℃±2℃、湿度55%±3%に保たれている実験室で行い、表面活性化処理高分子フィルムは当実験室に24時間以上放置した後に積層を行った。
表面活性化処理高分子フィルム、アルカリ性溶液(処理薬液)、無機基板を替え、実施例1と同様に操作を行い、積層体を得た。得られた積層体を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。なお、PENフィルムを使った場合には加熱処理の条件を250℃30分、LCPフィルムを使った場合には加熱処理の条件を300℃30分とした。
表面活性化処理高分子フィルム、アルカリ性溶液(処理薬液)、無機基板を替え、実施例1と同様に操作を行い、積層体を得た。得られた積層体を実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。なお、PENフィルムを使った場合には加熱処理の条件を250℃30分、LCPフィルムを使った場合には加熱処理の条件を300℃30分とした。
実施例1〜20で得られた各積層体を、開口部を有するステンレス製の枠を被せてスパッタリング装置内の基板ホルダーに固定した。基板ホルダーと、支持体面は密着するように固定する。このため、基板ホルダー内に冷媒を流すことによってフィルムの温度を設定できる。基板温度を2℃に設定した。次いでフィルム表面のプラズマ処理を行った。プラズマ処理条件はアルゴンガス中で、周波数13.56MHz、出力200W、ガス圧1×10-3Torrの条件であり、処理時の温度は2℃、処理時間は2分間であった。次いで、周波数13.56MHz、出力450W、ガス圧3×10−3Torrの条件、ニッケル−クロム(クロム10質量%)合金のターゲットを用い、アルゴン雰囲気下にてDCマグネトロンスパッタリング法により、1nm/秒のレートで厚さ11nmのニッケル−クロム合金被膜(下地層)を形成し、次いで、基板の温度を2℃に設定するよう、基板のスパッタ面の裏面を3℃に温度コントロールした冷媒を中に流した、基板ホルダーのSUSプレートと接する状態でスパッタリングを行った。10nm/秒のレートで銅を蒸着し、厚さ0.22μmの銅薄膜を形成させた。各フィルムからの下地金属薄膜形成フィルムを得た。銅およびNiCr層の厚さは蛍光X線法によって確認した。
また、実施例1〜3、実施例6〜8、実施例11〜13、実施例16〜18にて得られた高分子フィルム/無機基板積層体を窒素置換したマッフル炉内で昇温速度10℃/minで400℃に昇温後に400℃で1時間保持しその後自然降温させても、膨れ、剥がれなど発生することは無かった。
一方、比較例1〜5の高分子フィルム/無機基板積層体はいずれも、フィルム剥がれがおきて、いずれも良好なテストパターンが得られなかった。
Claims (6)
- 高分子フィルムを無機基板に貼り合わせ、該高分子フィルム上に電子デバイスを形成した後に該高分子フィルムを該無機基板から剥離するフレキシブル電子デバイスの製造方法において、少なくとも該無機基板に貼り合わせる高分子フィルムの面が、オキシアルキルアミンを含むアルカリ性溶液により表面活性化処理され、該高分子フィルムに貼り合わせる該無機基板の面が、シランカップリング剤で未処理であり、前記無機基板と前記高分子フィルムが、仮固定されることを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記オキシアルキルアミンが、モノオキシモノアミン、及びモノアミノ多価アルコールからなる群より選択される1種以上である請求項1に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムが縮合系の高分子フィルムである請求項1または2に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムがポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム又は液晶ポリマーフィルムである請求項1〜3のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記無機基板と前記高分子フィルムとの貼り合わせが、無機基板と、表面活性化処理した高分子フィルムとを加熱・加圧することによって行われる請求項1〜4のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
- 前記高分子フィルムの表面活性化並びに前記高分子フィルム及び前記無機基板の加熱加圧において真空装置を用いることがない請求項1〜5のいずれかに記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法。
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