「オーバーレイ」という用語は、本明細書では、広義で使用され、ろう着、クラッディング、構築、充填、及び表面硬化を含め、任意の用途を指し得る。例えば、「ろう着」用途では、金属フィラーが、毛管現象を介して継手の密着して嵌った表面間に分布する。一方、「ブレイズ溶接」用途では、金属フィラーをギャップに流入させる。しかし、本明細書で使用される場合、両技法は広く、オーバーレイ用途と呼ばれる。
図1は、ろう着、クラッディング、構築、充填、表面硬化オーバーレイ、及び継手/溶接用途のうちの任意の用途を実行する、フィラーワイヤフィーダとエネルギー源システム100との組合せの例示的な実施形態の機能概略ブロック図を示す。システム100は、レーザビーム110の焦点を加工物115に合わせて、加工物115を加熱することが可能なレーザサブシステムを含む。レーザサブシステムは高強度エネルギー源である。レーザサブシステムは、二酸化炭素、Nd:YAG、Ybディスク、YBファイバ、ファイバ伝送又はダイレクトダイオードレーザシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプの高エネルギーレーザ源であり得る。更に、白色光レーザ型システム又は石英レーザ型システムが、十分なエネルギーを有する場合、使用可能である。システムの他の実施形態は、高強度エネルギー源として機能する電子ビーム、プラズマアーク溶接サブシステム、ガスタングステンアーク溶接サブシステム、ガスメタルアーク溶接サブシステム、フラックス有芯アーク溶接サブシステム、及びサブマージアーク溶接サブシステムのうちの少なくとも1つを含み得る。以下の本明細書では、レーザシステム、ビーム、及び電源について繰り返し言及するが、任意の高強度エネルギー源を使用し得るため、この言及が例示的なものであることを理解されたい。例えば、高強度エネルギー源は、少なくとも500W/cm2を提供することができる。レーザサブシステムは、レーデバイス120及びレーザ電源130を含み、これらは互いに動作的に接続される。レーザ電源130は、電力を提供してレーザデバイス120を動作させる。
システム100は、レーザビーム110の近傍で加工物115に接触する少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140を提供することができるホットフィラーワイヤフィーダサブシステムも含む。当然ながら、本明細書において加工物115に言及することにより、溶融パドルが加工物115の一部であると見なされ、したがって、加工物115との接触への言及が、パドルとの接触を含むことが理解される。ホットフィラーワイヤフィーダサブシステムは、フィラーワイヤフィーダ150、コンタクトチューブ160、及び熱線電源170を含む。動作中、フィラーワイヤ140は、レーザビーム110を導き、熱線溶接電源170からの電流により抵抗加熱され、熱線溶接電源170は、コンタクトチューブ160と加工物115との間に動作的に接続される。本発明の実施形態によれば、熱線溶接電源170は、パルス直流(DC)電源であるが、交流電流(AC)又は他のタイプの電源も同様に可能である。ワイヤ140は、フィラーワイヤフィーダ150からコンタクトチューブ160を通して加工物115に向けて供給され、管160を超えて延びる。ワイヤ140の突き出し部分は、突き出し部分が、加工物上の溶接パドルに接触する前に、溶融点に近づくか、又は達するように、抵抗加熱される。レーザビーム110は、加工物115のベースメタルの幾らかを溶融して、溶融パドルを形成すると共に、ワイヤ140を加工物115上に溶融するように機能する。電源170は、フィラーワイヤ140を抵抗溶融するのに必要なエネルギーの大部分を提供する。フィーダサブシステムは、本発明の特定の他の実施形態により、1本又は複数のワイヤを同時に提供することが可能であり得る。例えば、第1のワイヤは、表面硬化及び/又は耐腐食性を加工物に提供するために使用し得、第2のワイヤは、構造物を加工物に追加するために使用し得る。
システム100は、レーザビーム110及び抵抗性フィラーワイヤ140が互いに一定の関係のままであるように、レーザビーム110(エネルギー源)及び抵抗性フィラーワイヤ140を加工物115に沿って(少なくとも相対的な意味で)同じ方向125に移動させることが可能な移動制御サブシステムを更に含む。様々な実施形態によれば、加工物115とレーザ/ワイヤ組合せとの相対移動は、加工物115を実際に移動させることにより、又はレーザデバイス120及び熱線フィーダサブシステムを移動させることにより、達成し得る。図1では、移動制御サブシステムは、ロボット190に動作的に接続される移動コントローラ180を含む。移動コントローラ180は、ロボット190の移動を制御する。ロボット190は、加工物115に動作的に接続(例えば、機械的に固定)されて、レーザビーム110及びワイヤ140が加工物115に沿って有効に移動するように、加工物115を方向125において移動させる。本発明の代替の実施形態によれば、レーザデバイス110及びコンタクトチューブ160は、1つのヘッドに統合してもよい。ヘッドは、ヘッドに動作的に接続される移動制御サブシステムを介して加工物115に沿って移動し得る。
一般に、高強度エネルギー源/熱線を加工物に相対して移動し得る幾つかの方法がある。例えば、加工物が丸い場合、高強度エネルギー源/熱線は静止し得、加工物は、高強度エネルギー源/熱線の下で回転し得る。代替的には、ロボットアーム又は線形牽引機が丸い加工物に平行して移動し得、加工物が回転する際、高強度エネルギー源/熱線は、連続移動するか、又は回転毎に1回、割り出されて、例えば、丸い加工物の表面に重なる。加工物が平坦であるか、又は少なくとも丸くない場合、加工物は、図1の場合に示されるように、高強度エネルギー源/熱線の下を移動し得る。しかし、ロボットアーム、線形牽引機、又はビーム搭載キャリッジが、加工物に相対して高強度エネルギー源/熱線のヘッドを移動させるのに使用し得る。
システム100は、検知及び電流制御サブシステム195を更に含み、このサブシステム195は、加工物115及びコンタクトチューブ160に動作的に接続され(すなわち、熱線電源170の出力に有効に接続され)、加工物115と熱線140との電位差(すなわち、電圧V)及び加工物115及び熱線140を通る電流(I)を測定することが可能である。検知及び電流制御サブシステム195は、測定された電圧及び電流から、抵抗値(R=V/I)及び/又は電力値(P=V*I)を計算することが更に可能であり得る。一般に、熱線140は加工物115に接触しているとき、熱線140と加工物115との電位差は、ゼロボルトであるか、又はゼロボルトにかなり近い。その結果、検知及び電流制御サブシステム195は、抵抗性フィラーワイヤ140が加工物115に接触しているときを検知可能であり、熱線電源170に動作的に接続されて、より詳細に本明細書において後述するように、検知に応答して、抵抗性フィラーワイヤ140を通る電流フローを制御することが更に可能である。本発明の別の実施形態によれば、検知及び電流コントローラ195は、熱線電源170の統合部分であってもよい。
本発明の実施形態によれば、移動コントローラ180は、レーザ電源130及び/又は検知及び電流コントローラ195に動作的に更に接続し得る。このようにして、移動コントローラ180及びレーザ電源130は、加工物115が移動しているときをレーザ電源130が知るように、且つレーザデバイス120がアクティブである場合を移動コントローラ180が知るように、互いと通信し得る。同様に、このようにして、移動コントローラ180と検知及び電流コントローラ195とは、加工物115が移動しているときを検知及び電流コントローラ195が知るように、且つホットフィラーワイヤフィーダサブシステムがアクティブである場合を移動コントローラ180が知るように、互いと通信し得る。そのような通信を使用して、システム100の様々なサブシステム間での活動を調整し得る。
図2は、図1のシステム100によって使用される開始方法200の実施形態のフローチャートを示す。ステップ210において、電源170を介して、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140と加工物115との間に検知電圧を印加する。検知電圧は、検知及び制御コントローラ195のコマンド下で、熱線電源170によって印加し得る。更に、印加される検知電圧は、本発明の実施形態により、ワイヤ140をかなり加熱するのに十分なエネルギーを提供しない。ステップ220において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140の先端部を加工物115に向けて進める。進めることは、ワイヤフィーダ150によって実行される。ステップ230において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が加工物115に最初に接触するときを検知する。例えば、検知及び電流コントローラ195は、熱線140を通して非常に低レベルの電流(例えば、3〜5アンペア)を提供するように、熱線電源170に命令し得る。そのような検知は、検知及び電流コントローラ195が、フィラーワイヤ140(例えば、コンタクトチューブ160を介して)と加工物115との間での約ゼロボルト(例えば、0.4V)の電位差を測定することによって達成し得る。フィラーワイヤ140の先端部が、加工物115まで短絡する(すなわち、加工物に接触する)とき、フィラーワイヤ140と加工物115との間に有意の電圧レベル(ゼロボルトを超える)は存在することができない。
ステップ240において、検知に応答して、定義された時間間隔(例えば、数ミリ秒)にわたり、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140への電源170をオフに切り換える。検知及び電流コントローラ195は、オフになるように電源170に命令し得る。ステップ250において、定義された時間間隔の終わりに電源170をオンに切り換えて、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140を通る加熱電流フローを印加する。検知及び電流コントローラ195は、オンになるように電源170に命令し得る。ステップ260において、少なくとも、加熱電流フローを印加している間、エネルギーを高強度エネルギー源110から加工物115に印加して、加工物を加熱する。
選択肢として、方法200は、検知に応答して、ワイヤ140の進行を止めることと、定義される時間間隔の終わりでワイヤ140の進行を再開し(すなわち、再び進め)、加熱電流フローを印加する前に、フィラーワイヤ140の先端部が加工物115に依然として接触していることを確認することとを含み得る。検知及び電流コントローラ195は、供給を止めるようにワイヤフィーダ150に命令し、待機する(例えば、数ミリ秒)ようにシステム100に命令し得る。そのような実施形態では、検知及び電流コントローラ195は、ワイヤフィーダ150に動作的に接続されて、開始及び停止をワイヤフィーダ150に命令する。検知及び電流コントローラ195は、加熱電流を印加して、ワイヤ140を加熱し、ワイヤ140を加工物115に向けて再び供給するように熱線電源170に命令し得る。
開始方法が完了すると、システム100は、開始後動作モードになり得、このモードでは、レーザビーム110及び熱線140は、加工物115に関連して移動して、ろう着用途、クラッディング用途、構築用途、表面硬化用途、又は溶接/継手動作のうちの1つを実行する。図3は、図1のシステム100によって使用される開始後方法300の実施形態のフローチャートを示す。ステップ310において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140が加工物115に向けて供給される際、高強度エネルギー源(例えば、レーザデバイス120)からのエネルギー(例えば、レーザビーム110)及び/又は加熱された加工物115(すなわち、加工物115はレーザビーム110によって加熱される)が、フィラーワイヤ140の先端部を加工物115上に溶融するよう、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が高強度エネルギー源(例えば、レーザデバイス120)に先んじるか、又は一致するように、高強度エネルギー源(例えば、レーザデバイス120)及び少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140を加工物115に沿って移動させる。移動コントローラ180は、レーザビーム110及び熱線140に関連して加工物115を移動させるように、ロボット190に命令する。レーザ電源130は、レーザデバイス120を動作させて、レーザビーム110を形成する電力を提供する。熱線電源170は、検知及び電流コントローラ195によって命令されるように、電流を熱線140に提供する。
ステップ320において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が、加工物115との接触を失おうとしているときがいつであろうと、そのときを検知する(すなわち、予測能力を提供する)。そのような検知は、検知及び電流コントローラ195内の予測回路が、フィラーワイヤ140と加工物115との電位差の変化率(dv/dt)、通る電流の変化率(di/dt)、抵抗の変化率(dr/dt)、又は電力の変化率(dp/dt)のうちの1つを測定することによって達成し得る。変化率が予め定義される値を超える場合、検知及び電流コントローラ195は、接触の喪失が生じつつあることを正式に予測する。そのような予測回路は、アーク溶接の分野において周知である。
ワイヤ140の先端部が、加熱に起因してかなり溶融すると、先端部は、ワイヤ140から加工物115にピンチオフし始め得る。例えば、そのとき、ワイヤの先端部がピンチオフされる際、ワイヤの先端部の断面が急速に低減するため、電位差又は電圧は増大する。したがって、そのような変化率を測定することにより、システム100は、先端部がピンチオフされようとしており、加工物115との接触を失いつつあるときを予測し得る。また、接触が完全に失われる場合、ゼロボルトよりもかなり大きい電位差(すなわち、電圧レベル)が、検知及び電流コントローラ195によって測定し得る。この電位差は、ステップ330での動作が行われない場合、ワイヤ140の新しい先端部と加工物115との間にアーク(これは望ましくない)を形成させる可能性がある。当然ながら、他の実施形態では、ワイヤ140は、感知できるほどのいかなるピンチングも示せず、むしろ、パドルへの略一定の断面を維持しながら、連続してパドルに流入することがある。
ステップ330において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が加工物115との接触を失いつつあることの検知に応答して、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140を通る加熱電流フローをオフにする(又は少なくとも大幅に、例えば95%、低減する)。接触が失われつつあると検知及び電流コントローラ195が判断する場合、コントローラ195は、熱線140に供給される電流を遮断(又は少なくとも大幅に低減する)ように、熱線電源170に命令し得る。このようにして、不要なアークの形成が回避され、スパッタ又は溶け落ち等の任意の望ましくない影響の発生を回避する。
ステップ340において、ワイヤ140が加工物115に向けて引き続き進むことに起因して、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤ140が加工物115に再び接触するときがいつであれ、そのときを検知する。そのような検知は、検知及び電流コントローラ195が、フィラーワイヤ140(例えば、コンタクトチューブ160を介して)と加工物115との間で約ゼロボルトの電位差を測定することによって達成し得る。フィラーワイヤ140の先端部が加工物115と短絡する(すなわち、加工物に接触する)とき、フィラーワイヤ140と加工物115との間に約ゼロボルトを超える有意の電圧レベルは存在することができない。「再び接触する」という語句は、本明細書では、ワイヤ140の先端部が加工物115から実際に完全にピンチオフするか否かに関係なく、ワイヤ140が加工物115に向かって進み、ワイヤ140(例えば、コンタクトチューブ160を介して)と加工物115との間で測定される電圧が約ゼロボルトである状況を指すために使用される。ステップ350において、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤの先端部が加工物に再び接触することの感知に応答して、少なくとも1本の抵抗性フィラーワイヤを通る加熱電流フローを再印加する。検知及び電流コントローラ195は、加熱電流を再印加して、ワイヤ140を加熱し続けるように、熱線電源170に命令し得る。このプロセスは、オーバーレイ用途の持続時間にわたり継続し得る。
例えば、図4は、図3の開始後方法300にそれぞれ関連付けられた電圧波形410及び電流波形420の対の第1の例示的な実施形態を示す。電圧波形410は、コンタクトチューブ160と加工物115との間で、検知及び電流コントローラ195によって測定される。電流波形420は、ワイヤ140及び加工物115を通して検知及び電流コントローラ195によって測定される。
抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が、加工物115との接触を失いつつあるときは常に、電圧波形410の変化率(すなわち、dv/dt)は、所定の閾値を超え、ピンチオフが生じつつあることを示す(波形410の点411での傾きを参照)。代替として、フィラーワイヤ140及び加工物115の電流の変化率(di/dt)、抵抗の変化率(dr/dt)、又は電力の変化率(dp/dt)が代わりに、ピンチオフが生じつつあることを示すのに使用可能である。そのような変化率予測技法は、当技術分野で周知である。その時点で、検知及び電流コントローラ195は、ワイヤ140を通る電流フローをオフにする(又は少なくとも大幅に低減する)ように、熱線電源170に命令する。
幾らかの時間間隔430後、フィラーワイヤ140の先端部が再び、加工物115に接触したことを検知及び電流コントローラ195が検知する(例えば、電圧レベルは、点412において約ゼロボルトに降下する)場合、検知及び電流コントローラ195は、抵抗性フィラーワイヤ140を通る電流フローを所定の出力電流レベル450に向かってランプアップする(ランプ425参照)ように、熱線電源170に命令する。本発明の実施形態によれば、ランプアップは設定点値440から開始する。このプロセスは、エネルギー源120及びワイヤ140が加工物115に相対して移動する際、及びワイヤ140が、ワイヤフィーダ150に起因して加工物115に向かって進む際、繰り返される。このようにして、ワイヤ140の先端部と加工物115との接触は大部分が維持され、ワイヤ140の先端部と加工物115との間でのアークの形成が回避される。加熱電流のランピングは、電圧の変化率をピンチオフ状況又はアーク状況として、そのような状況が存在しない場合に不注意で解釈することの回避に役立つ。電流の任意の大きい変化は、加熱回路内のインダクタンスに起因して、誤った電圧読み取りを測定させ得る。電流が徐々にランプアップする場合、インダクタンスの影響は低減する。
図5は、図3の開始後方法にそれぞれ関連付けられた電圧波形510及び電流波形520の対の第2の例示的な実施形態を示す。電圧波形510は、コンタクトチューブ160と加工物115との間で、検知及び電流コントローラ195によって測定される。電流波形520は、ワイヤ140及び加工物115を通して検知及び電流コントローラ195によって測定される。
抵抗性フィラーワイヤ140の先端部が、加工物115との接触を失いつつあるときは常に、電圧波形510の変化率(すなわち、dv/dt)は、所定の閾値を超え、ピンチオフが生じつつあることを示す(波形510の点511での傾きを参照)。代替として、フィラーワイヤ140及び加工物115の電流の変化率(di/dt)、抵抗の変化率(dr/dt)、又は電力の変化率(dp/dt)が代わりに、ピンチオフが生じつつあることを示すのに使用可能である。そのような変化率予測技法は、当技術分野で周知である。その時点で、検知及び電流コントローラ195は、ワイヤ140を通る電流フローをオフにする(又は少なくとも大幅に低減する)ように、熱線電源170に命令する。
幾らかの時間間隔530後、フィラーワイヤ140の先端部が再び、加工物115に接触したことを検知及び電流コントローラ195が検知する(例えば、電圧レベルは、点512において約ゼロボルトに降下する)場合、検知及び電流コントローラ195は、抵抗性フィラーワイヤ140を通る加熱電流(加熱電流レベル525参照)を印加するように、熱線電源170に命令する。このプロセスは、エネルギー源120及びワイヤ140が加工物115に相対して移動する際、及びワイヤ140が、ワイヤフィーダ150に起因して加工物115に向かって進む際、繰り返される。このようにして、ワイヤ140の先端部と加工物115との接触は大部分が維持され、ワイヤ140の先端部と加工物115との間でのアークの形成が回避される。この場合、加熱電流は徐々にランピングされていないため、特定の電圧読み取り値は、加熱回路内のインダクタンスに起因した不注意又は誤った読み取り値として無視し得る。
まとめると、ワイヤフィード及びエネルギー源システムの組合せを開始し、ろう着、クラッディング、構築、充填、及び表面硬化オーバーレイ用途のうちの任意の用途に使用する方法及びシステムが開示される。高強度エネルギーが、加工物に印加されて、加工物を加熱する。1本又は複数本の抵抗性フィラーワイヤが、高強度エネルギーが印加される場所又はその直前において、加工物に向けて供給される。1本又は複数本の抵抗性フィラーワイヤの先端部が、高強度エネルギーが印加される場所又はその近傍において加工物に接触するときの検知が達成される。1本又は複数本の抵抗性フィラーワイヤへの電気加熱電流は、1本又は複数本の抵抗性フィラーワイヤの先端部が加工物に接触するか否かに基づいて制御される。印加される高強度エネルギー及び1本又は複数本の抵抗性フィラーワイヤは、互いに一定の関係で、加工物に沿って同じ方向で移動する。
更なる例示的な実施形態では、本発明のシステム及び方法は、溶接動作又は継手動作に利用される。上記の実施形態は、オーバーレイ動作において金属フィラーを使用することに焦点を合わせた。しかし、本発明の態様は、加工物が溶接動作及び金属フィラーの使用を使用して継手される溶接動作及び継手用途で使用することもできる。金属フィラーのオーバーレイに向けられるが、上記の実施形態、システム、及び方法は、より詳細に後述される溶接動作で利用されるものと同様である。したがって、以下の考察では、別段のことが記載されない限り、上記考察が一般に当てはまることが理解される。更に、以下の考察は、図1〜図5への参照を含み得る。
溶接/継手動作が通常、金属フィラーが加工物金属の少なくとも幾つかと結合して、継手を形成する溶接動作において、複数の加工物を一緒に継手することが既知である。溶接動作での製造スループットを増大させることが望ましいため、標準以下の品質を有する溶接を生じさせないより高速の溶接動作への必要性が常にある。更に、遠隔作業現場等の不利な環境状況下で迅速に溶接することができるシステムを提供する必要性がある。後述するように、本発明の例示的な実施形態は、既存の溶接技術を上回る大きい利点を提供する。そのような利点としては、限定ではないが、加工物に生じる歪みを低くする総入熱の低減、非常に高い溶接移動速度、非常に低いスパッタ率、遮蔽なしでの溶接、スパッタがわずかであるか又はない状態での高速でのめっき又は被覆された材料の溶接、及び高速での複雑な材料の溶接が挙げられる。
本発明の例示的な実施形態では、通常はかなりの準備作業を必要とし、アーク溶接方法を使用してはるかに遅い溶接プロセスである被覆加工物を使用して、アーク溶接と比較して非常に高い溶接速度を得ることができる。例として、以下の考察は、亜鉛めっきされた加工物の溶接に焦点を合わせる。金属の亜鉛めっきは、金属の耐腐食性を増大させるために使用され、多くの産業用途で望ましい。しかし、亜鉛めっき加工物の従来の溶接には問題があり得る。特に、溶接中、亜鉛めっき中の亜鉛が蒸発し、この亜鉛蒸気が、パドルが固化する際に溶接パドル内に捕捉され、多孔性を生じさせることがある。この多孔性は、溶接継手の強度に悪影響を及ぼす。このため、既存の溶接技法では、亜鉛めっきを除去するか、又はより低い処理速度で、幾らかのレベルの欠陥を伴った亜鉛めっきを通して溶接する第1ステップを必要とする − これは非効率的であり、遅延を生じさせるか、又は遅く進む溶接プロセスを必要とする。溶接プロセスを遅くすることにより、溶接パドルは、より長い時間期間にわたり溶融したままであり、気化した亜鉛を排出する。しかし、低速により、製造速度は遅く、溶接への全体入熱は高くなり得る。同様の問題を生じさせ得る他の被覆としては、限定ではなく、塗料、スタンピング潤滑剤、ガラスライニング、アルミめっき被覆、表面熱処理、窒化又は炭化処理、クラッディング処理、又は他の気化被覆若しくは材料が挙げられる。本発明の例示的な実施形態は、以下に説明するように、これらの問題をなくす。
図6及び図6A(それぞれ断面図及び側面図)を参照して、代表的な重ね継ぎの溶接を示す。この図中、2つの被覆(例えば、亜鉛めっきされた)加工物W1/W2が、重ね継ぎを用いて継手される。重ね継ぎ表面601及び603は最初は、加工物W1の表面605と同様に、被覆で覆われている。典型的な溶接動作(例えば、GMAW)では、覆われた表面605の部分が溶融される。これは、標準溶接動作の典型的な溶込み深さのためである。表面605は溶融されるため、表面605上の被覆は気化するが、溶接プールの表面からの表面605の距離により、溶接プールが固化する際にガスが捕捉され得る。本発明の実施形態を用いる場合、これは生じない。
図6及び図6Aに示されるように、レーザビーム110は、レーザデバイス120から溶接継手、特に表面601及び603に向けられる。レーザビーム110は、一般の溶接パドルを生成する、溶融パドル601A及び603Aを生成する溶融表面の部分を溶融するエネルギー密度のものである。更に、フィラーワイヤ140 − これは、上述したような抵抗加熱される − は、溶融パドルに向けられて、溶融ビードに必要とされるフィラー材料を提供する。大半の溶融プロセスとは異なり、フィラーワイヤ140は、溶接プロセス中、溶融パドルに接触し、溶融パドル内に突入する。これは、このプロセスが、フィラーワイヤ140の移動に溶接アークを使用せず、むしろ、単純にフィラーワイヤを溶融して、溶接パドル内に入れるためである。
フィラーワイヤ140は、溶融点又はその近くまで予備加熱されるため、溶油パドル中に存在することで、パドルを顕著には冷却又は固化せず、溶接パドル中に迅速に吸収される。フィラーワイヤ140の一般的な動作及び制御は、オーバーレイ実施形態に関して上述したものと同様である。
レーザビーム110は、表面601/603に精密に焦点を合わせ、向けることができるため、プール601A/603Aの溶込み深さは、精密に制御することができる。この深さを慎重に制御することにより、本発明の実施形態は、表面605のいかなる不必要な溶込み又は溶融を回避する。表面605は過度には溶融されないため、表面605上のいかなる被覆も気化せず、溶接パドル中に捕捉されることがない。更に、溶接継手601及び603の表面上のいかなる被覆も、レーザビーム110によって容易に気化され、そのガスは、溶接パドルが固化する前に、溶接ゾーンから出る。ガス排出システムを利用して、任意の気化した被覆材料の除去を支援し得ることが意図される。
溶接パドル溶込みの深さは、精密に制御することができるため、多孔性を大幅に最小化又はなくしながら、被覆加工物を溶接する速度を大幅に増大することができる。幾つかのアーク溶接システムは、溶接に良好な移動速度を達成することができるが、より高い速度では、多孔性及びスパッタ等の問題が生じ得る。本発明の例示的な実施形態では、多孔性又はスパッタがわずかであるか又はない状態で、非常に高い移動速度を達成することができ(本明細書に記載のように)、実際に、多くの異なるタイプの溶接動作で、50インチ/分を超える移動速度を容易に達成することができる。本発明の実施形態は、80インチ/分を超える溶接移動速度を達成することができる。更に、他の実施形態は、本明細書に考察されるように、多孔性又はスパッタが最小又はない状態で、100〜150インチ/分の範囲の移動速度を達成することができる。当然ながら、達成される速度は、加工物特性(厚さ及び組成)及びワイヤ特性(例えば、直径)に依存するが、これらの速度は、本発明の実施形態を使用する場合、多くの異なる溶接及び継手用途で容易に達成可能である。更に、これらの速度は、100%二酸化炭素シールドガスを用いて達成することができるか、又は遮蔽が全くない状態で達成することができる。更に、これらの移動速度は、溶接パドルの生成及び溶接の前に、任意の表面被覆を除去せずに達成することができる。当然ながら、より高い移動速度を達成可能なことが意図される。更に、溶接への入熱の低減のため、これらの高速は、通常は歪みを回避するために入熱を低く維持しなければならないためにより低速の溶接速度を有するより薄い加工物115で達成することができる。本発明の実施形態は、多孔性又はスパッタがわずかであるか又はない状態で、上述した高い移動速度を達成することができるのみならず、混合が低い状態で、非常に高い堆積速度を達成することもできる。特に、本発明の実施形態は、シールドガスなしで、且つ多孔性又はスパッタがわずかであるか又はない状態で、10lb/時以上の堆積速度を達成することができる。幾つかの実施形態では、堆積速度は10〜20lb/時の範囲である。
本発明の例示的な実施形態では、これらの極めて高い移動速度は、多孔性又はスパッタがわずかであるか又はない状態で達成される。溶接の多孔性は、断面及び/又は溶接ビードの長さを調べて、多孔率を識別することによって特定することができる。断面多孔率とは、所与の断面での合計多孔面積をそのポイントでの溶接継手の合計断面積で割ったものである。長さ多孔率とは、溶接継手の所与の単位長内の孔の合計累積長である。本発明の実施形態は、断面多孔度0〜20%で上述した移動速度を達成することができる。したがって、気泡又はキャビティがない溶接ビードは多孔度0%を有する。他の例示的な実施形態では、断面多孔度は0〜10%の範囲であり得、別の例示的な実施形態では、2〜5%の範囲であり得る。幾つかの溶接用途では、幾らかのレベルの多孔度が許容可能であることが理解される。更に、本発明の例示的な実施形態では、溶接の長さ多孔度は、0〜20%の範囲であり得、0〜10%であり得る。更なる例示的な実施形態では、長さ多孔率は1〜5%の範囲である。したがって、例えば、断面多孔度が2〜5%であり、長さ多孔率が1〜5%である溶接を製造することができる。
更に、本発明の実施形態は、スパッタがわずかであるか又はない状態で、上記で識別した移動速度で溶接することができる。スパッタは、溶接パドルの液滴が溶接ゾーン外に飛び跳ねる場合に生じる。溶接スパッタが生じる場合、溶接の品質が損なわれ、通常、溶接プロセス後に、加工物からクリーニングして除去しなければならないため、製造遅延を生じさせ得る。更に、加工物が被覆される、例えば、亜鉛めっきされる場合、スパッタは、亜鉛めっきに付着する傾向を有し、腐食の侵入点を作り出す。したがって、スパッタなしで高速で溶接することには大きい利点がある。本発明の実施形態は、0〜0.5の範囲のスパッタ係数で、上記の高い移動速度で溶接することが可能であり、ここで、スパッタ係数とは、所与の移動距離Xにわたるスパッタの重量(mg単位)を同じ距離Xにわたり消費されたフィラーワイヤ140の重量(Kg単位)で割ったものである。すなわち、
スパッタ係数=(スパッタ重量(mg)/消費されたフィラーワイヤ重量(Kg))
である。
距離Xは、溶接継手の代表サンプリングが可能な距離であるべきである。すなわち、距離Xが短すぎる場合、例えば、0.5インチである場合、溶接の代表ではない可能性がある。したがって、スパッタ係数0の溶接継手は、距離Xにわたり、消費されたフィラーワイヤでスパッタを有さず、スパッタ係数2.5の溶接は、消費されるフィラーワイヤ2Kgに対して5mgのスパッタを有した。本発明の例示的な実施形態では、スパッタ係数は0〜1の範囲である。更なる例示的な実施形態では、スパッタ係数は0〜0.5の範囲である。本発明の別の例示的な実施形態では、スパッタ係数は0〜0.3の範囲である。本発明の実施形態が、任意の外部遮蔽 − シールドガス又はフラックスシールドを含む − の使用あり又はなしで、上述したスパッタ係数範囲を達成し得ることに留意されたい。更に、上のスパッタ係数範囲は、亜鉛めっきされた加工物を含め、非被覆加工物又は被覆加工物を、溶接動作前に亜鉛めっきを除去せずに溶接する場合、達成することができる。
溶接継手のスパッタを測定する幾つかの方法がある。一方法は、「スパッタボート」の使用を含むことができる。そのような方法では、代表的な溶接サンプルが、溶接ビードによって生成されるスパッタの全て又は略全てを捕捉するのに十分なサイズを有する容器内に配置される。容器又は容器の部分 − 上部等 − は、溶接プロセスに伴って移動して、スパッタが捕捉されることを保証することができる。通常、ボートは銅から作られ、それにより、スパッタは表面に付着しない。代表的な溶接は、溶接中に生成されるいかなるスパッタも容器内に落ちるように、容器の底部の上方で実行される。溶接中、消費されるフィラーワイヤの量がモニタされる。溶接が完了した後、スパッタボートは、容器の溶接前の重量と溶接後の重量との差があれば、その差を特定するのに十分な精度を有するデバイスによって重量測定されるべきである。この差は、スパッタの重量を表し、次に、消費されたフィラーワイヤのKg単位での量で除算される。代替的には、スパッタがボートに付着しない場合、スパッタはそれ自体で除去され、重力測定することができる。
上述したように、レーザデバイス120の使用により、溶接パドルの深さの精密な制御が可能である。更に、レーザ120の使用により、溶接パドルのサイズ及び深さの容易な調整が可能である。これは、レーザビーム110が容易に合焦/脱焦することができるか、又はビーム強度を非常に容易に変更させることができるためである。これらの能力により、加工物W1及びW2上の熱分布を精密に制御することができる。この制御により、精密な溶接のために非常に狭い溶接パドルを生成することができると共に、加工物上の溶接ゾーンのサイズを最小することができる。これは、溶接ビードによって影響されない加工物のエリアを最小化することにおいても利点を提供する。特に、溶接ビードに隣接する加工物のエリアは、溶接動作から最小の影響を受け、これは多くの場合、アーク溶接動作では当てはまらない。
本発明の例示的な実施形態では、ビーム110の形状及び/又は強度は、溶接プロセス中、調整/変更することができる。例えば、加工物上の特定の場所で、溶込み深さを変更するか、又は溶接ビードのサイズを変更することが必要であり得る。そのような実施形態では、ビーム110の形状、強度、及び/又はサイズは、溶接プロセス中に調整して、溶接パラメータの必要な変更を提供することができる。
上述したように、フィラーワイヤ140は、レーザビーム110と同じ溶接パドルに衝突する。例示的な実施形態では、フィラーワイヤ140は、レーザビーム110と同じロケーションで溶接パドルに衝突する。しかし、他の例示的な実施形態では、フィラーワイヤ140は、レーザビームから離れた同じ溶接パドルに衝突することができる。図6Aに示される実施形態では、フィラーワイヤ140は、溶接動作中、ビーム110を後行する。しかし、フィラーワイヤ140は先頭に位置決めすることができるため、それは必ずしも必要なことではない。フィラーワイヤ140は、ビーム110と同じ溶接パドルに衝突する限り、ビーム110に相対して他の位置に位置決めすることが可能なため、本発明は、この観点に限定されない。
上述した実施形態は、亜鉛めっき等の被覆を有する加工物に関して説明された。しかし、本発明の実施形態は、被覆を有さない加工物に対して使用することもできる。特に、上述した同じ溶接プロセスは、非被覆加工物と共に利用することができる。そのような実施形態は、被覆金属に関して上述したものと同じ性能属性を達成する。
更に、本発明の例示的な実施形態は、鋼加工物の溶接に限定されず、更に後述するように、アルミニウム又はより複雑な金属の溶接に使用することもできる。
本発明の別の有利な態様は、シールドガスに関する。典型的なアーク溶接動作では、シールドガス又はシールドフレックスが使用されて、大気中の酸素及び窒素又は他の有害な要素が溶接パドル及び金属移行と相互作用しないようにする。そのような干渉は、溶接の品質及び外観にとって有害である。したがって、略全てのアーク溶接プロセスでは、シールドが、外部供給されるシールドガス、フラックスを有する電極(棒電極、フラックス芯電極等)の消費によって生成されるシールドガス、又は外部供給される粒状フラックス(例えば、サブアーク溶接)により提供される。更に、特殊化した金属の溶接又は亜鉛めっきされた加工物の溶接等の幾つかの溶接動作では、特別なシールドガス混合物を利用しなければならない。そのような混合物は極めて高価であり得る。更に、極端な環境で溶接する場合、多数量のシールドガスを作業現場(パイプライン等)に輸送することが困難であることが多く、又は風が、シールドガスをアークから離すように吹く傾向がある。更に、ヒューム排出システムの使用は、近年、増大した。これらのシステムは、ヒュームを除去する傾向を有するが、溶接動作の近くに配置される場合、シールドガスを吹き飛ばす傾向も有する。
本発明の利点としては、溶接時に使用されるシールドガスの量が最小であるか、又はなくし得ることが挙げられる。代替的には、本発明の実施形態では、通常は特定の溶接動作に使用することができないシールドガスの使用が可能である。これについて更に後述する。
アーク溶接プロセスを用いて典型的な加工物(非被覆)を溶接する場合、シールドは、その形態に関係なく、必要である。本発明の実施形態を用いて溶接する場合、シールドが必要ないことが発見されている。すなわち、シールドガス、粒状フラックス、及び自己遮蔽電極を使用する必要がない。しかし、アーク溶接プロセスとは異なり、本発明は品質のよい溶接を生成する。すなわち、上記の溶接速度は、いかなるシールドも使用せずに達成することができる。これは、従来のアーク溶接プロセスでは達成されていなかった。
典型的なアーク溶接プロセス中、フィラーワイヤの溶融液滴が、フィラーワイヤから溶接アークを通して溶接パドルに移行する。シールドなしでは、液滴の表面全体が、移行中、大気に露出され、したがって、大気中の窒素及び酸素を捕捉して、窒素及び酸素を溶接パドルに送給する傾向がある。これは望ましくない。
本発明は、液滴の使用なしで、又は同様のプロセスなしで、フィラーワイヤを溶接に送給するため、フィラーワイヤはそれほど大気に露出されない。したがって、多くの溶接用途で、シールドの使用は必要ない。したがって、本発明の実施形態は、多孔性又はスパッタがわずかであるか又はない状態で、高い溶接速度を達成することができるのみならず、シールドガスを使用せずに行うことができる。
シールドを使用する必要なく、溶接中、ヒューム排出ノズルを溶接継手のはるかに近くに配置し、それにより、より効率的で効果的なヒューム排出を提供することが可能である。シールドガスが利用される場合、シールドガスの機能に干渉しないような場所に、ヒューム排出ノズルを配置する必要がある。本発明の利点により、そのような制限は存在せず、ヒューム排出を最適化することができる。例えば、本発明の例示的な実施形態では、レーザビーム110は、レーザ120から加工物115の表面近くへのビームを遮蔽するレーザシュラウド組立体1901によって保護される。この表現は図19で見られる。シュラウド1901(断面で示される)は、ビーム110が干渉しないようにし、動作中、追加の安全を提供する。更に、シュラウドは、ヒューム排出システム1903に結合することができ、このシステムは、いかなる溶接ヒュームも溶接ゾーンから引き離す。実施形態はシールドガスなしで利用することができるため、シュラウド1901は、溶接のかなり近くに位置決めして、ヒュームを溶接ゾーンから引き離すことができる。実際、シュラウド1901は、溶接の上方の距離Zが0.125〜0.5インチの範囲であるように位置決めすることができる。当然ながら、他の距離を使用することもできるが、溶接パドルを妨げず、又はシュラウド1901の有効性をあまり低減しないように注意しなければならない。ヒューム排出システム1903は一般に、理解されており、溶接業界で既知であるため、それらの構造及び動作については、本明細書で詳細に考察しない。図19は、ビーム110のみを保護するシュラウド1901を示すが、当然ながら、ワイヤ140及びコンタクトチップ160の少なくとも部分を包含するように、シュラウド1901を構築することが可能である。例えば、ヒューム排出を増大させるために、シュラウド1901の下部開口部を溶接パドルの略全体を覆うのに十分なように、又は溶接パドルよりも大きくすることが可能である。
亜鉛めっきされた加工物等の被覆加工物の溶接に使用される本発明の例示的な実施形態では、はるかに安価なシールドガスを利用することができる。例えば、100% CO2シールドガスが、軟鉄を含め、多くの異なる材料の溶接に使用することができる。これは、100%窒素シールドガスを用いてのみ溶接することができるステンレス鋼、二相鋼、及び超二相鋼等のより複雑な金属を溶接する場合でも当てはまる。典型的なアーク溶接動作では、ステンレス鋼、二相鋼、又は超二相鋼の溶接は、シールドガスのより複雑な混合物を必要とし、これはかなり高価であり得る。本実施形態の実施形態では、これらの鋼を100%窒素シールドガスのみを用いて溶接することが可能である。更に、他の実施形態は、シールドなしでこれらの鋼を溶接させることができる。亜鉛めっきされた材料で典型的な溶接プロセスでは、アルゴン/CO2ブレンド等の特別な混合シールドガスを利用し得る。このタイプのガスは、部分的に、通常のアーク溶接中、陰極及び陽極が溶接ゾーンに存在するため、使用する必要がある。しかし、上で説明し、更に以下に説明するように、溶接アークがなく、したがって、溶接ゾーンに陽極又は陰極が存在しない。したがって、アークはなく、液滴移行はないため、金属フィラーが大気から有害な要素を捕捉する危険は大幅に低減される。本発明の多くの実施形態では、シールドガスのような遮蔽の使用なしで溶接することができるが、溶接上でガスフローを利用して、溶接ゾーンから蒸気又は汚染物を除去し得ることに留意されたい。すなわち、溶接中、空気、窒素、CO2、又は他のガスを溶接上で吹いて、溶接ゾーンから汚染物を除去し得ることが意図される。
被覆材料を高速で溶接することが可能なことに加えて、本発明の実施形態は、熱影響ゾーン(「HAZ」)を大幅に低減して二相鋼を溶接するために利用することもできる。二相鋼は、フェライト及びマルテンサイト微細構造の両方を有し、したがって、鋼に高強度及び良好な成形性を有するようにすることができる。二相鋼の性質により、二相鋼溶接の強度は、熱影響ゾーンの強度によって制限される。熱影響ゾーンとは、アーク溶接プロセスにより微細構造が不利に変更されるような、溶接プロセスからかなり加熱される溶接継手周囲のゾーン(金属フィラーを含まない)である。既知のアーク溶接プロセスでは、熱影響ゾーンは、アークプラズマのサイズ及び溶接ゾーンへの高い入熱により、かなり大きい。熱影響ゾーンがかなり大きいため、熱影響ゾーンは、溶接の強度制限部分になる。したがって、高強度電極の使用が不必要であるため、アーク溶接プロセスは通常、軟鉄フィラーワイヤ140(例えば、ER70S−6又は−3型電極)を使用して、そのような継手を溶接する。更に、これにより、設計者は戦略上、自動車フレーム、バンパー、エンジンクレードル等の高応力構造外の二相鋼内に溶接継手を配置しなければならない。
上述したように、レーザデバイス120の使用は、溶接パドルの生成に高レベルの精度を提供する。この精度により、溶接ビード周囲の熱影響ゾーンを非常に小さく保つことができるか、又は加工物への熱影響ゾーンの全体的な影響を最小に抑えることができる。実際、幾つかの実施形態では、加工物の熱影響ゾーンを略なくすことができる。これは、パドルが生成される加工物の部分のみにレーザビーム110の合焦を維持することにより、行われる。熱影響ゾーンのサイズを大幅に低減することにより、ベースメタルの強度は、アーク溶接プロセスが使用される場合ほどは大きく損なわれない。したがって、熱影響ゾーンの存在又はロケーションはもはや、溶接構造の設計での制限要因ではない。本発明の実施形態では、より高強度のフィラーワイヤの使用が可能であり、その理由は、加工物の組成及び強度並びにフィラーワイヤの強度が、熱影響ゾーンではなく構造設計での推進要因であり得るためである。例えば、本発明の実施形態では、ここで、ER80S−D2型電極等の少なくとも80ksi降伏力を有する電極の使用が可能である。当然ながら、この電極は例示であることが意図される。更に、全体的な入熱がアーク溶接から次に低いため、パドルの冷却率はより迅速に、これは、使用されるフィラーワイヤの化学的構造をよりリーンにすることができるが、既存のワイヤに等しいか、又は既存のワイヤよりも大きい性能を与えることができる。
更に、本発明の例示的な実施形態は、シールド要件を大きく低減して、チタンを溶接するのに使用することができる。アーク溶接プロセスを用いてチタンを溶接する場合、許容可能な溶接が生成されることを保証することにかなり注意しなければならないことが分かっている。これは、溶接プロセス中、チタンは、酸素と反応する高い親和性を有するためである。チタンと酸素との反応は、二酸化チタンを生成し、これは、溶接プール内に存在する場合、溶接継手の強度及び/又は延性を大幅に低減させ得る。このため、チタンをアーク溶接する場合、パドルが冷却するにつれて、大量の後行シールドガスを提供して、アークのみならず、後行溶融パドルも大気から遮蔽することが必要である。アーク溶接から生成される熱により、溶接パドルはかなり大きくなり得、長い時間期間にわたり溶融したままであり得、したがって、大量のシールドガスを必要とする。本発明の実施形態は、材料が溶融している時間を大幅に低減し、急速に冷却し、それにより、この余分なシールドガスの必要性が低減する。
上で説明したように、レーザビーム110は、非常に慎重に合焦されて、溶接ゾーンへの全体的な入熱を大幅に低減し、したがって、溶接パドルのサイズを大幅に低減することができる。溶接パドルはより小さいため、溶接パドルははるかに急速に冷却する。したがって、後行シールドガスは必要なく、溶接でのシールドのみが必要である。更に、上述した同様の理由により、チタンを溶接する場合、スパッタ係数は大幅に低減し、同時に、溶接速度は増大する。
これより図7及び図7Aを参照して、オープンルート型溶接継手を示す。オープンルート継手は多くの場合、厚い板及びパイプの溶接に使用され、多くの場合、遠隔の環境的に困難なロケーションで行うことができる。シールドメタルアーク溶接(SMAW)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)、ガスメタルアーク溶接(GMAW)、フラックス有芯アーク溶接(FCAW)、サブマージアーク溶接(SAW)、及びフラックス有芯アーク溶接自己シールド(FCAW−S)を含め、オープンルート継手を溶接する幾つかの既知の方法がある。これらの溶接プロセスは、シールドの必要性、速度制限、スラグの生成等の様々な欠点を有する。
したがって、本発明の実施形態は、効率と、これらのタイプの溶接を実行することができる速度とを大幅に改善する。特に、シールドガスの使用をなくすか、又は大幅に低減することができ、スラグの生成は、完全になくすことができる。更に、高速での溶接は、最小のスパッタ及び多孔性で得ることができる。
図7及び図7Aは、本発明の例示的な実施形態により溶接されている代表的なオープンルート溶接継手を示す。当然ながら、本発明の実施形態は、重ね継ぎ又はオープンルート型継手のみならず、広範囲の溶接継手の溶接に利用することができる。図7では、ギャップ705は、加工物W1/W2間に示され、代表的な各加工物は、それぞれ傾斜面701/703を有する。上で考察したように、本発明の実施形態は、レーザデバイス120を使用して、精密な溶融パドルを表面701/703上に生成し、予備加熱されたフィラーワイヤ(図示せず)は、上述したように、それぞれパドル内に堆積される。
実際、本発明の例示的な実施形態は、1本のフィラーワイヤを各溶接パドルに向けることに限定されない。溶接アークは、本明細書に記載される溶接プロセスで生成されないため、2本以上のフィラーワイヤを任意の1つの溶接パドルに向けることができる。所与の溶接パドルへのフィラーワイヤの数を増大することにより、溶接プロセスの全体の堆積速度は、入熱を大幅に増大させずに、大幅に増大させることができる。したがって、オープンルート溶接継手(図7及び図7Aに示されるタイプ等)を1回の溶接パスで充填できることが意図される。
更に、図7に示されるように、本発明の幾つかの例示的な実施形態では、複数のレーザビーム110及び110Aを利用して、溶接継手の2つ以上のロケーションを同時に溶融することができる。これは、幾つかの方法で達成することができる。図7に示される第1の実施形態では、ビームスプリッタ121が利用され、レーザデバイス120に結合される。ビームスプリッタ121は、レーザデバイスの当業者に既知であり、本明細書において詳細に考察する必要はない。ビームスプリッタ121は、レーザデバイス120からのビームを2つ(又は3つ以上)の別個のビーム110/110Aに分割し、それらを2つの異なる表面に向けることができる。そのような実施形態では、複数の表面を同時に照射することができ、溶接での更なる精度及び正確性を提供する。別の実施形態では、別個のビーム110及び110Aのそれぞれは、各ビームがそれ自体の専用デバイスから発せられるように、別個のレーザデバイスによって生成することができる。
そのような実施形態では、複数のレーザデバイスを使用して、溶接動作の多くの態様は、異なる溶接ニーズに適合するように変更することができる。例えば、別個のレーザデバイスによって生成されたビームは、異なるエネルギー分布を有することができ、異なる形状及び/又は溶接継手での異なる断面積を有することができる。この柔軟性を用いて、溶接プロセスの態様は、必要とされる任意の特定の溶接パラメータを満たすように変更しカスタマイズすることができる。当然ながら、これは、シングルレーザデバイス及びビームスプリッタ121の利用により達成することもできるが、柔軟性の幾つかは、シングルレーザ源の使用により制限され得る。更に、本発明は、任意の数のレーザを必要に応じて使用し得ることが意図されるため、シングル又はダブルレーザ構成の何れにも限定されない。
更なる例示的な実施形態では、ビームスキャンデバイスを使用することができる。そのようなデバイスは、レーザ又はビーム放射分野で既知であり、ビーム110を加工物の表面上にパターンでスキャンするのに使用される。そのようなデバイスが用いられる場合、スキャン速度及びパターン並びに滞留時間を使用して、加工物115を所望のように加熱することができる。更に、エネルギー源(例えば、レーザ)の出力電力は、必要に応じて調整して、所望のパドル形成を生成することができる。更に、レーザ120内で利用される光学系は、所望の動作及び継手パラメータに基づいて最適化することができる。例えば、線形及びインテグレータ光学系を利用して、幅広い溶接又はクラッディング動作への合焦線形ビームを生成することができるか、又はインテグレータを使用して、均一な電力分布を有する正方形/矩形ビームを生成することができる。
図7Aは、単一のビーム110がオープンルート継手に向けられて、表面701/703を溶融する。
レーザビーム110及び110Aの精度により、ビーム110/110Aは、表面701/703のみに、ギャップ705から離れて合焦することができる。このため、メルトスルー(通常、ギャップ705を通して落ちる)を制御することができ、これは、裏面溶接ビード(ギャップ705の下面における溶接ビード)の制御を大きく改善する。
図7及び図7Aのそれぞれにおいて、ギャップ705は、加工物W1及びW2間に存在し、溶接ビード707が充填される。例示的な実施形態では、この溶接ビード705は、レーザデバイス(図示せず)によって生成される。したがって、例えば、溶接動作中、高速レーザデバイス(図示せず)は、第1のレーザビーム(図示せず)をギャップ705に向け、加工物W1及びW2をレーザ溶接ビード707と一緒に溶接し、その間、第2のレーザデバイス120は、少なくとも1つのレーザビーム110/110Aを表面701/703に向け、溶接パドルを生成し、溶接パドルで、フィラーワイヤ(図示せず)が堆積され、溶接を完了する。ギャップ溶接ビード707は、ギャップが十分に小さい場合、レーザのみで生成することができ、又はギャップ705により、レーザ及びフィラーワイヤの使用が必要とされる場合、レーザ及びフィラーワイヤの使用により生成することができる。特に、ギャップ705を適宜充填するために、金属フィラーを追加することが必要であり得、したがって、フィラーワイヤを使用すべきである。このギャップビード705の生成は、本発明の様々な例示的な実施形態に関して上述したものと同様である。
本明細書で考察されるレーザデバイス120等の高強度エネルギー源が、所望の溶接動作に必要なエネルギー密度を提供するのに十分な電力を有するタイプのものであるべきであることに留意されたい。すなわち、レーザデバイス120は、溶接プロセス全体を通して安定した溶接パドルを生成し維持すると共に、所望の溶接溶込みに達するのに十分な電力を有するべきである。例えば、用途によっては、レーザは、溶接中の加工物を「キーホール形成」する能力を有するべきである。これは、レーザが、加工物に沿って移動する際、溶込みレベルを維持しながら、加工物に完全に溶け込むのに十分な電力を有するべきであることを意味する。例示的なレーザは、1〜20kWの範囲の電力能力を有するべきであり、5〜20kWの範囲の電力能力を有し得る。より高い電力のレーザを利用することもできるが、非常にコストが高くなり得る。当然ながら、ビームスプリッタ121又は複数のレーザの使用が、他のタイプの溶接継手でも同様に使用することが可能であり、図6及び図6Aに示される等の重ね継ぎで使用可能なことに留意する。
図7Bは、本発明の別の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、溝が狭いディープオープンルート継手が示される。ディープ継手(深さは1インチよりも大きい)をアーク溶接する場合、溝のギャップGが狭いとき、継手の底部を溶接することが難しいことがある。これは、シールドガスをそのような深溝に効率的に送給することが難しく、溝の狭い壁が溶接アークの安定性に干渉を生じさせ得るためである。加工物は通常、鉄鋼材料であるため、継手の壁は、磁気的に溶接アークに干渉し得る。このため、典型的なアーク溶接手順を使用する場合、溝のギャップGは、アークが安定したままであるように十分広いものである必要がある。しかし、溝が広くなるほど、溶接の完了に必要な金属フィラーは多くなる。本発明の実施形態は、シールドガスを必要とせず、溶接アークを使用しないため、これらの問題は最小に抑えられる。これにより、本発明の実施形態は、深く狭い溝を効率的且つ効果的に溶接することができる。例えば、加工物115が1インチを超える厚さを有する本発明の例示的な実施形態では、ギャップ幅Gは、フィラーワイヤ140の直径の1.5〜2倍の範囲であり、側壁角度は0.5〜10度の範囲である。例示的な実施形態では、そのような溶接継手のルートパス準備は、1/16〜1/4インチの範囲のランドを有する1〜3mmの範囲のギャップRGを有することができる。したがって、ディープオープンルート継手は、通常のアーク溶接プロセスよりも高速で、且つはるかに少ないフィラー材料を用いて溶接することができる。更に、本発明の態様が溶接ゾーンに導入する熱ははるかに少ないため、チップ160は、側壁への接触を回避するように、溶接パドルへのはるかに近い送達を促進するように設計することができる。すなわち、チップ160は、より小さくすることができ、狭い構造を有する絶縁ガイドとして解釈することができる。更なる例示的な実施形態では、並進移動デバイス又は機構を使用して、溶接の幅にわたりレーザ及びワイヤを移動させて、継手の両側を同時に溶接することができる。
図8に示されるように、本発明の実施形態を用いて、バット型継手を溶接することができる。図8では、フラッシュバット型継手が示されるが、溶接継手の上面及び下面にV字形切り欠き溝を有するバット型継手も溶接可能なことが意図される。図8に示される実施形態では、2つのレーザデバイス120及び120Aが溶接継手の両側に示され、各レーザデバイスはそれぞれ、それ自体の溶接パドル801及び803を生成する。図7及び図7Aのように、加熱されたフィラーワイヤは、示される図ではレーザビーム110/110Aの背後を後行しているため、示されていない。
既知のアーク技術を用いてバット型継手を溶接する場合、「磁気吹き」に伴う大きい問題があり得、磁気吹きは、溶接アークによって生成される磁場が、アークが互いを不規則に移動させるように互いに干渉する場合に発生する。更に、2つ以上のアーク溶接システムが、同じ溶接継手上で溶接するのに使用されている場合、各溶接電流の干渉によって生じる大きい問題があり得る。更に、アーク溶接方法の溶込み深さにより、部分的に高い入熱に起因して、溶接継手の両側でアークを用いて溶接することができる加工物の厚さは制限される。すなわち、そのような溶接は、薄い加工物で行うことができない。
本発明の実施形態を用いて溶接する場合、これらの問題はなくなる。溶接アークは利用されないため、磁気吹き干渉又は溶接電流干渉の問題がない。更に、入熱の精密制御と、レーザの使用を通して可能である溶込み深さの精密制御とにより、はるかに薄い加工物を溶接継手の両側で同時に溶接することができる。
本発明の更なる例示的な実施形態を図9に示す。この実施形態では、2つのレーザビーム110及び110Aが利用されて − 互いに一直線上に − 独自の溶接プロファイルを生成する。示される実施形態では、第1のビーム110(第1のレーザデバイス120から発せられる)は、第1の断面積及び深さを有する溶接パドル901の第1の部分を生成するのに使用され、一方、第2のビーム110A(第2のレーザデバイス − 図示せず − から発せられる)は、第1のものとは異なる第2の断面積及び深さを有する溶接パドル903の第2の部分を生成するのに使用される。この実施形態は、溶接ビードの残りの部分よりも深い溶込み深さを有する溶接ビードの部分を有することが望ましい場合、使用することができる。例えば、図9に示されるように、パドル901は、広く浅く作られた溶接パドル903よりも深く狭く作られる。そのような実施形態は、加工物が接触する場所で深い溶込みレベルが必要とされるが、溶接継手の部分全体では望ましくない場合に使用することができる。
本発明の更に例示的な実施形態では、第1のパドル903は、継手の溶接を生成する溶接パドルであり得る。この第1のパドル/継手は、第1のレーザ120及びフィラーワイヤ(図示せず)を用いて生成され、適切な溶込み深さに作られる。この溶接継手が作られた後、第2のレーザビーム110Aを発する第2のレーザ(図示せず)は、継手の上を通過して、異なるプロファイルを有する第2のパドル903を生成し、この第2のパドルは、上記実施形態を用いて考察したものと同種のオーバーレイを堆積するのに使用される。このオーバーレイは、第1のフィラーワイヤとは異なる化学的性質を有する第2のフィラーワイヤを使用して堆積する。例えば、本発明の実施形態を使用して、継手が溶接されてから間もなく又はその直後に、溶接継手上に耐腐食性クラッディング層を配置することができる。この溶接動作は、シングルレーザデバイス120を用いて達成することもでき、その場合、ビーム110は、第1のビーム形状/密度と第2のビーム形状/密度との間で振動して、所望の溶接パドルプロファイルを提供する。したがって、複数のレーザデバイスを利用する必要はない。
上で説明したように、加工物の耐腐食性被覆(亜鉛めっき等)は、溶接プロセス中に除去される。しかし、耐腐食性を目的として、溶接継手を再び被覆することが望ましいことがあり、したがって、第2のビーム110A及びレーザを使用して、継手901上にクラッディング層等の耐腐食性オーバーレイ903を追加することができる。
本発明の様々な利点により、溶接動作を介して異種の金属を容易に継手することも可能である。アーク溶接プロセスを用いての異種金属の継手は、アーク溶接プロセスを使用することが困難であり、その理由は、異種材料及びフィラー材料に求められる化学的性質が、亀裂及び劣った溶接に繋がり得るためである。これは特に、非常に異なる溶融温度を有するアルミニウムと鋼を一緒にアーク溶接しようとする場合、又は化学的性質の違いから、ステンレス鋼を軟鉄に溶接しようとする場合に当てはまる。しかし、本発明の実施形態を用いる場合、そのような問題は軽減される。
図10は、本発明の例示的な実施形態を示す。V型継手が示されるが、本発明はこの点で限定されない。図10では、2つの異種金属が、溶接継手1000で継手されて示される。この例では、2つの異種金属はアルミニウム及び鋼である。この例示的な実施形態では、2つの異なるレーザ源1010及び1020が利用される。しかし、全ての実施形態において、2つのレーザデバイスは必要なく、その理由は、単一のデバイスを振動させて、2つの異なる材料を溶融するために必要なエネルギーを提供することができるためである − これについて、更に後述する。レーザ1010はビーム1011を発し、ビーム1011は鋼加工物に向けられ、レーザ1020はアルミニウム加工物に向けてビーム1021を発する。各加工物は異なる金属又は合金から作られるため、異なる溶融温度を有する。したがって、各レーザビーム1011/1021は、溶融パドル1012及び1022において異なるエネルギー密度を有する。エネルギー密度が異なることにより、各溶接パドル1012及び1022は、適切なサイズ及び深さを維持することができる。これにより、より低い溶融温度を有する加工物、例えば、アルミニウムでの過度の溶込み及び入熱も回避される。幾つかの実施形態では、少なくとも溶接継手により、2つの別個の離散した溶接パドル(図10に示されるように)を有する必要はなく、むしろ、両加工物を用いて1つの溶接パドルを形成することができ、その場合、各加工物の溶融部分が1つの溶融パドルを形成する。更に、加工物が異なる化学的性質を有するが、同様の溶融温度を有する場合、一方の加工物が他方よりも溶融するという理解のもとで、1つのビームを使用して、両加工物を同時に照射することが可能である。更に、手短に上述したように、1つのエネルギー源(レーザデバイス120のような)を使用して、両加工物を照射することが可能である。例えば、レーザデバイス120は、第1のビーム形状及び/又はエネルギー密度を使用して、第1の加工物を溶融し、次に、第2のビーム形状及び/又はエネルギー密度に振動/変更して、第2の加工物を溶融することができる。ビーム特性の振動及び変更は、両加工物の適切な溶融が維持され、それにより、溶融パドルが溶接プロセス中に安定して保たれ、一貫したままであることを保証するのに十分な速度で達成されるべきである。他のシングルビーム実施形態は、一方の加工物よりも他方の加工物により高い入熱を提供して、各加工物の十分な溶融を保証する形状を有するビーム110を利用することができる。そのような実施形態では、ビームのエネルギー密度は、ビームの断面で均一であり得る。例えば、ビーム110は、台形又は三角形を有することができ、ビームの形状により、一方の加工物への全体的な入熱は他方の加工物よりも低くなる。代替的には、幾つかの実施形態は、断面において非均一なエネルギー分布を有するビーム110を使用することができる。例えば、ビーム110は、矩形(両加工物に衝突するように)を有することができるが、ビームの第1の領域は第1のエネルギー密度を有し、ビーム110の第2のエネルギーは、第1の領域とは異なる第2のエネルギー密度を有し、したがって、各領域は各加工物を適宜溶融することができる。例として、ビーム110は、鋼加工物を溶融する高エネルギー密度を有する第1の領域を有することができ、一方、第2の領域は、アルミニウム加工物を溶融するより低いエネルギー密度を有する。
図10では、2つのフィラーワイヤ1030及び1030Aが示され、各フィラーワイヤは溶融パドル1012及び1022にそれぞれ向けられる。図10に示される実施形態は2つのフィラーワイヤを利用しているが、本発明はこの点で限定されない。他の実施形態に関して上述したように、所望のビード形状及び堆積速度等の所望の溶融パラメータに応じて、1本のみのフィラーワイヤを使用することもでき、又は3本以上のワイヤを使用することもできることが意図される。1本のワイヤが利用される場合、そのワイヤは共通のパドル(両加工物の溶融部分から形成される)に向けることができるか、又は溶融継手に統合する溶融部分のうちの1つのみに向けることができる。したがって、例えば、図10に示される実施形態では、ワイヤは溶融部分1022に向けることができ、次に、溶接継手を形成するために、溶融部分1022は溶融部分1012と結合される。当然ながら、1本のワイヤが利用される場合、このワイヤは、浸漬されている部分1022/1012内でワイヤを溶融させる温度まで加熱されるべきである。
異種金属が継手されている場合、フィラーワイヤの化学的性質は、ワイヤが、継手中の金属と十分に接合し得ることを保証するように選択されるべきである。更に、フィラーワイヤの組成は、より低温の溶接パドルの溶接パドル内で溶融し吸収されることができる適切な溶融温度を有するように選択されるべきである。実際に、複数のフィラーワイヤの化学的性質が、適切な溶接化学的性質を得るために異なり得ることが意図される。これは特に、2つの異なる加工物が、最小混合が材料間で生じる材料組成を有する場合に当てはまる。図10では、より低い温度の溶接パドルは、アルミニウム溶接パドル1012であり、したがって、フィラーワイヤ1030(A)は、パドル1012に容易に吸収可能なように、同様の温度で溶融するように調合される。上記例では、アルミニウム及び鋼の加工物を使用して、フィラーワイヤは、加工物の溶融温度と同様の溶融温度を有するケイ素青銅、ニッケルアルミニウム青銅、又はアルミニウム青銅系のワイヤであり得る。当然ながら、フィラーワイヤの組成が、所望の機械的特性及び溶接性能特性に合い、それと同時に、溶接される加工物の少なくとも1つと同様の溶融特性を提供するように選択されるべきであることが意図される。
図11A〜図11Cは、利用することができるチップ160の様々な実施形態を示す。図11Aは、構造及び動作が通常のアーク溶接コンタクトチップと非常に類似したチップ160を示す。本明細書に記載される熱線溶接中、加熱電流が、電源170からコンタクトチップ160に向けられ、チップ160からワイヤ140に渡される。次に、電流は、加工物Wへのワイヤ140の接触を介して、ワイヤを通して加工物に向けられる。この電流フローは、本明細書に記載のように、ワイヤ140を加熱する。当然ながら、電源170は、示されるようにコンタクトチップに直接結合されないこともあり、電流をチップ160に向けるワイヤフィーダ150に結合されることもある。図11Bは、本発明の別の実施形態を示し、この実施形態では、チップ160は2つの構成要素160及び160’で構成され、電源170の負端子は第2の構成要素160’に結合される。そのような実施形態では、加熱電流は、第1のチップ構成要素160からワイヤ140に流れ、次に、第2のチップ構成要素160’に流れる。構成要素160及び160’の間でワイヤ140を通る電流フローは、本明細書に記載されるように、ワイヤを加熱させる。図11Cは、チップ160が誘導コイル1110を含む別の例示的な実施形態を示し、誘導コイルは、誘導加熱を介してチップ160及びワイヤ140を加熱させる。そのような実施形態では、誘導コイル1110は、コンタクトチップ160と一体化するように作られることもでき、又はチップ160の表面の周囲に巻くこともできる。当然ながら、チップが必要な加熱電流/電力をワイヤ140に送給し、それにより、ワイヤが溶接動作に望ましい温度を達成することができる限り、チップ160に他の構成を使用することもできる。
本発明の例示的な実施形態の動作について説明する。上述したように、本発明の実施形態は、高強度エネルギー源と、フィラーワイヤを加熱する電源との両方を利用する。次に、このプロセスの各態様について考察する。以下の説明及び考察が、上述したオーバーレイ実施形態に関して上で提供された任意の考察に取って代わる又は置換することが意図されず、溶接又は継手用途に関して考察されたものの補足を意図されることに留意する。オーバーレイ動作に関する先の考察は、継手及び溶接の目的でも組み込まれる。
継手/溶接の例示的な実施形態は、図1に示される実施形態と同様であり得る。上述したように、加熱電流をフィラーワイヤ140に提供する熱線電源170が提供される。電流は、コンタクトチップ160(任意の既知の構造のものであり得る)からワイヤ140へ、その後、加工物へ渡る。この抵抗性加熱電流により、チップ160と加工物との間のワイヤ140は、利用中のフィラーワイヤ140の溶融温度又はその近傍の温度に達する。当然ながら、フィラーワイヤ140の溶融温度は、ワイヤ140のサイズ及び化学的性質に応じて変化する。したがって、溶接中のフィラーワイヤの所望の温度は、ワイヤ140に応じて変化する。以下に更に考察するように、フィラーワイヤの所望の動作温度は、所望の動作温度が溶接中に維持されるような、溶接システムに入力されるデータであり得る。何れの場合でも、ワイヤの温度は、ワイヤが、溶接動作中、溶接パドルに吸収されるようなものであるべきである。例示的な実施形態では、フィラーワイヤ140の少なくとも部分は、ワイヤが溶融パドルに入る際、固体である。例えば、フィラーワイヤの少なくとも30%は、フィラーワイヤが溶接パドルに入る際、固体である。
本発明の例示的な実施形態では、熱線電源170は電流を供給し、電流は、フィラーワイヤの少なくとも部分を溶融温度の75%以上の温度に維持する。例えば、軟鉄フィラーワイヤ140を使用する場合、パドルに入る前のワイヤの温度は、約1,600°Fであり得、それに対して、ワイヤは溶融温度約2,000°Fを有する。当然ながら、各溶融温度及び所望の動作温度が、フィラーワイヤの少なくとも合金、組成、直径、及び供給速度で変わることが理解される。別の例示的な実施形態では、電源170は、フィラーワイヤの部分を溶融温度の90%以上に維持する。更なる例示的な実施形態では、ワイヤの部分は、溶融温度の95%以上であるワイヤの温度に維持される。例示的な実施形態では、ワイヤ140は、加熱電流がワイヤ140及びパドルに与えられるポイントから温度勾配を有し、パドルでの温度は、加熱電流の入力ポイントでの温度よりも高い。ワイヤがパドルに入るポイント又はその近傍でワイヤ140の最高温度を有して、ワイヤ140の効率的な溶融を促進することが望ましい。したがって、上述した温度割合は、ワイヤがパドルに入るポイント又はその近傍でのワイヤで測定されるべきである。フィラーワイヤ140を溶融温度又はその近傍の温度に維持することにより、ワイヤ140は、容易に溶融するか、又は熱源/レーザ120によって生成される溶接パドルに容易に吸収される。すなわち、ワイヤ140は、ワイヤ140がパドルに接触する際、溶接パドルをあまり冷却させない温度のものである。ワイヤ140の高温により、ワイヤは、溶接パドルに接触する際に迅速に溶融する。ワイヤが溶接プール中で底に達しない − 溶接プールの非溶融部分に接触しない − ようなワイヤ温度を有することが望ましい。そのような接触は、溶接の品質に不利に影響し得る。
上述したように、幾つかの例示的な実施形態では、ワイヤ140の完全な溶融は、ワイヤ140がパドルに入ることによってのみ、促進することができる。しかし、他の例示的な実施形態では、ワイヤ140は、パドルと、ワイヤ140の部分に衝突するレーザビーム110との組合せによって完全に溶融することができる。本発明の更に他の実施形態では、ワイヤ140の加熱/溶融は、ビーム110がワイヤ140の加熱に寄与するようなレーザビーム110によって支援することができる。しかし、多くのフィラーワイヤ140は、反射性であり得る材料で作られるため、反射性レーザ型が使用される場合、ワイヤ140は、表面反射性が低減されるような温度まで加熱されるべきであり、それにより、ビーム110はワイヤ140の加熱/溶融に寄与することができる。この構成の例示的な実施形態では、ワイヤ140及びビーム110は、ワイヤ140がパドルに入るポイントで交差する。
図1に関して上述したように、電源170及びコントローラ195は、溶接中、ワイヤ140が加工物との接触を維持し、アークが生成されないように、ワイヤ140への加熱電流を制御する。アーク溶接技術とは逆に、本発明の実施形態を用いて溶接する場合、アークの存在は、大きい溶接欠陥をもたらし得る。したがって、幾つかの実施形態(上述した実施形態として)では、ワイヤ140と溶接パドルとの間の電圧は、0ボルト又はその近傍に維持されるべきである − これは、ワイヤが加工物/溶接パドルに短絡するか、又は接触していることを示す。
しかし、本発明の他の例示的な実施形態では、0ボルトを超える電圧レベルが、アークを生成せずに得られるようなレベルで電流を提供することが可能である。より高い電流値を利用することにより、電極140をより高く、電極の溶融温度により近いレベルの温度に維持することが可能である。これにより、溶接プロセスをより高速に進めることができる。本発明の例示的な実施形態では、電源170は電圧をモニタし、電圧が、0ボルトを超える何らかのポイントの電圧値に達するか、又は近づく場合、電源170は、ワイヤ140への電流フローを停止して、アークが生成されないことを保証する。電圧閾値レベルは通常、少なくとも部分的に、使用されている溶接電極140のタイプに起因して変化する。例えば、本発明の幾つかの例示的な実施形態では、閾値電圧レベルは6ボルト以下である。別の例示的な実施形態では、閾値レベルは9ボルト以下である。更なる例示的な実施形態では、閾値レベルは14ボルト以下であり、追加の例示的な実施形態では、閾値レベルは16ボルト以下である。例えば、軟鉄フィラーワイヤを使用する場合、電圧の閾値レベルはより低いタイプのものであり、一方、ステンレス鋼を溶接する場合のフィラーワイヤは、アークが生成される前により高い電圧を扱うことができる。
更なる例示的な実施形態では、上記のように、電圧レベルを閾値未満に維持するのではなく、電圧は動作範囲内に維持される。そのような実施形態では、電圧を、最小量を超える − 溶融温度又はその近傍にフィラーワイヤを維持するのに十分に高い電流を保証する − が、溶融アークが生成されないような電圧未満に維持することが望ましい。例えば、電圧は、1〜16ボルトの範囲内に維持することができる。更なる例示的な実施形態では、電圧は、6〜9ボルトの範囲内に維持される。別の例では、電圧は、12〜16ボルトに維持することができる。当然ながら、所望の動作範囲は、溶接動作に使用される範囲(又は閾値)が、少なくとも部分的に、使用されるフィラーワイヤ又は使用されるフィラーワイヤの特性に基づいて選択されるように、溶接動作に使用されるフィラーワイヤ140によって影響を受け得る。そのような範囲を利用するにあたり、範囲の底は、フィラーワイヤを溶接パドル中に十分に吸収させることができる電圧に設定され、範囲の上限は、アークの生成が回避されるような電圧に設定される。
上述したように、電圧が所望の閾値電圧を超えると、アークが生成されないように、加熱電流は電源170によって遮断される。本発明のこの態様について、以下に更に考察する。
上述した多くの実施形態では、電源170は、上述したように電圧をモニタし維持するのに利用される回路を含む。そのようなタイプの回路の構造は、当業者に既知である。しかし、従来、そのような回路は、アーク溶接において、特定の閾値を超えて電圧を維持するのに利用されてきた。
更なる例示的な実施形態では、加熱電流は、電源170によってモニタし、及び/又は調整することもできる。これは、代替として、電圧、電力、又は何らかのレベルの電圧/アンペア特性をモニタすることに加えて行うことができる。すなわち、電流は、所望の1つ又は複数のレベルに維持して、ワイヤ140が適切な温度 − 溶接パドルに適宜吸収されるが、それもなおアーク生成電流レベル未満 − に維持されることを保証することができる。例えば、そのような実施形態では、電圧及び/又は電流はモニタされて、一方又は両方が指定された範囲内であるか、又は所望の閾値未満であることを保証する。次に、電源は、供給される電流を調整して、アークが生成されないが、所望の動作パラメータが維持されることを保証する。
本発明の更なる例示的な実施形態では、加熱電力(V×I)も、電源170によってモニタされ制御することができる。特に、そのような実施形態では、加熱電力の電圧及び電流は、モニタされ、所望のレベル又は所望の範囲内に維持される。したがって、電源は、ワイヤへの電圧又は電流を調整するのみならず、電流及び電圧の両方を調整することもできる。そのような実施形態は、溶接システムに対する改善された制御を提供し得る。そのような実施形態では、ワイヤへの加熱電力は、電力が閾値レベル未満又は所望の範囲内に維持されるように、上限閾値レベル又は最適な動作範囲に設定することができる(電圧に関して上述したものと同様に)。ここでも、閾値又は範囲設定は、フィラーワイヤの特性及び実行中の溶接の特性に基づき、少なくとも部分的に、選択されるフィラーワイヤに基づくことができる。例えば、直径0.045インチを有する軟鉄電極に最適な電力設定が、1950〜2,050ワットの範囲であると決定し得る。電源は、電力がこの動作範囲内に留まるように、電圧及び電流を調整する。同様に、電力閾値が2,000ワットに設定される場合、電源は、電力レベルがこの閾値を超えず、この閾値の近くであるように電圧及び電流を制御する。
本発明の更なる例示的な実施形態では、電源170は、加熱電圧の変化率(dv/dt)、電流の変化率(di/dt)、及び又は電力の変化率(dp/dt)をモニタする回路を含む。そのような回路は、多くの場合、予測回路と呼ばれ、その一般的な構造は既知である。そのような実施形態では、電圧、電流、及び/又は電力の変化率はモニタされ、それにより、変化率が特定の閾値を超える場合、ワイヤ140への加熱電流はオフに切り換えられる。
本発明の例示的な実施形態では、抵抗の変化(dr/dt)もモニタされる。そのような実施形態では、コンタクトチップとパドルとの間のワイヤの抵抗がモニタされる。溶接中、ワイヤは、加熱されるにつれて、ネックダウンし始め、アークを形成する傾向を有し、その間、ワイヤの抵抗は指数的に増大する。この増大が検出される場合、電源の出力は、本明細書に記載のようにオフに切り換えられて、アークが生成されないことを保証する。実施形態は、電圧、電流、又は両方を調整して、ワイヤの抵抗が所望のレベルに維持されることを保証する。
本発明の更なる例示的な実施形態では、閾値レベルが検出される場合、加熱電流を遮断するのではなく、電源170は、加熱電流を非アーク生成レベルに低減する。そのようなレベルは、ワイヤが溶接パドルから分離した場合にアークが生成されないバックグラウンド電流レベルであり得る。例えば、本発明の例示的な実施形態は、50アンペアという非アーク生成電流レベルを有することができ、その場合、アーク生成が検出若しくは予測されるか、又は上限閾値(上述)に達すると、電源170は、所定の時間量(例えば、1〜10ms)にわたり、又は検出される電圧、電流、電力、及び/又は抵抗が上限未満に下がるまで、加熱電流を動作レベルから非アーク生成レベルに落とす。この非アーク生成閾値は、電圧レベル、電流レベル、抵抗レベル、及び/又は電力レベルであり得る。そのような実施形態では、アーク生成事象中、電流を、たとえ低レベルであっても維持することにより、加熱電流動作レベルにより迅速に復元させることができる。
本発明の別の例示的な実施形態では、電源170の出力は、溶接動作中、大きいアークが生成されないように制御される。幾つかの例示的な溶接動作では、電源は、大きいアークがフィラーワイヤ140とパドルとの間で生成されないように制御することができる。アークが、フィラーワイヤ140の先端部と溶接パドルとの間の物理的なギャップ間に生成されることが一般に既知である。上述したように、本発明の例示的な実施形態は、フィラーワイヤ140をパドルに接触した状態を保つことにより、このアークの形成を回避する。しかし、幾つかの例示的な実施形態では、わずかなアークの存在は、溶接の品質を損なわない。すなわち、幾つかの例示的な溶接動作では、短期間にわたるわずかなアークの生成は、溶接品質を損なうレベルの入熱を生じさせない。そのような実施形態では、溶接システム及び電源は、アークを完全に回避することに関して本明細書に記載したように制御され動作するが、電源170は、アークが生成されるという点で、アークがわずかであるように制御される。幾つかの例示的な実施形態では、電源170は、生成されるアークが10ms未満の持続時間を有するように動作する。他の例示的な実施形態では、アークは、1ms未満の持続時間を有し、他の例示的な実施形態では、アークは300μs未満の持続時間を有する。そのような実施形態では、そのようなアークの存在は、溶接品質を損なわず、その理由は、アークが溶接への大きい入熱を与えないか、又は大きいスパッタ若しくは多孔性を生じさせないためである。したがって、そのような実施形態では、電源170は、アークが生成されるという点で、アークが続く持続時間が、溶接品質が損なわれないようなわずかな時間期間であるように制御される。他の実施形態に関して本明細書で考察される同じ制御論理及び構成要素は、これらの例示的な実施形態で使用可能である。しかし、上限閾値に対して、電源170は、所定又は予測されるアーク生成点未満の閾値点(電流、電力、電圧、抵抗の)ではなく、アーク生成の検出を使用することができる。そのような実施形態では、溶接動作を限界のより近くで動作させることが可能である。
フィラーワイヤ140は、常に短絡(溶接パドルに常に接触した)状態であることが望ましいため、電流は低速で減衰する傾向を有する。これは、電源、溶接ケーブル、及び加工物に存在するインダクタンスによるものである。幾つかの用途では、ワイヤ中の電流が高速で低減されるように、電流をより高速で強制的に減衰させることが必要であり得る。一般に、電流を高速で低減することができるほど、継手方法で達成される制御はよくなる。本発明の例示的な実施形態では、閾値に達したか、又は閾値を超えたことが検出された後の電流のランプダウン時間は、1ミリ秒である。本発明の別の例示的な実施形態では、電流のランプダウン時間は300マイクロ秒以下である。別の例示的な実施形態では、ランプダウン時間は、300〜100マイクロ秒の範囲である。
例示的な実施形態では、そのようなランプダウン時間を達成するために、ランプダウン回路が電源170に導入され、ランプダウン回路は、アークが予測又は検出される場合、ランプダウン時間の低減を支援する。例えば、アークが検出されるか、又は予測される場合、ランプダウン回路は開放され、これは抵抗を回路に導入する。例えば、抵抗は、電流フローを50マイクロ秒で50アンペア未満に低減するタイプのものであり得る。そのような回路の簡略化した例を図18に示す。回路1800は、抵抗器1801と、電源が動作中であり、電流を提供中であるとき、スイッチ1803が閉じられるように、溶接回路内に配置されるスイッチ1803とを有する。しかし、電源が電力の供給を停止する(アークの生成を回避するために、又はアークが検出された場合)とき、スイッチは開いて、誘導された電流を強制的に抵抗器1801に通す。抵抗器1801は、回路の抵抗を大きく増大させ、より迅速なペースで電流を低減する。そのような回路タイプは一般に、溶接業界で既知であり、オハイオ州クリーブランド(Ohio,Cleverland)に所在のLincoln Electric Company製のPower Wave(登録商標)溶接電源を見つけることができ、これは表面張力移行技術(「STT」)を組み込んでいる。STT技術は一般に、米国特許第4,866,247号明細書、同第5,148,001号明細書、同第6,051,810号明細書、及び同第7,109,439号明細書に記載されており、これらは全体的に参照により本明細書に援用される。当然ながら、これらの特許は一般に、開示される回路を使用して、アークが生成され、維持されることを保証することを記載している − 当業者は、アークが生成されないことを保証するように、そのようなシステムを容易に適合することができる。
上記考察は、例示的な溶接システムが示される図12を参照して更に理解することができる。(明確にするために、レーザシステムが示されていないことに留意されたい)。システム1200は、熱線電源1210(図1において170として示されるものと同様のタイプであり得る)を有して示される。電源1210は、インバータ型電源等の既知の溶接電源構造のものであり得る。そのような電源の設計、動作、及び構造は既知であるため、本明細書では詳述しない。電源1210はユーザ入力1220を含み、ユーザ入力により、ユーザは、ワイヤ供給速度、ワイヤタイプ、ワイヤ直径、所望の電力レベル、所望のワイヤ温度、電圧及び/又は電流レベルを含むが、これらに限定されないデータを入力することができる。当然ながら、必要に応じて他の入力パラメータを利用することもできる。ユーザインターフェース1220はCPU/コントローラ1230に結合され、CPU/コントローラ1230は、ユーザ入力データを受信し、この情報を使用して、電力モジュール1250に必要な動作設定点又は範囲を生成する。電力モジュール1250は、インバータ又は変圧器型モジュールを含め、任意の既知のタイプ又は構造のものであり得る。
CPU/コントローラ1230は、ルックアップテーブルの使用を含め、任意の数の方法で所望の動作パラメータを決定することができる。そのような実施形態では、CPU/コントローラ1230は、入力データ、例えば、ワイヤ供給速度、ワイヤ直径、及びワイヤタイプを利用して、出力(ワイヤ140を適宜加熱するために)に望ましい電流レベル及び閾値電圧又は電力レベル(又は電圧若しくは電力の許容可能な動作範囲)を決定する。これは、ワイヤ140を適切な温度まで加熱するために必要な電流が、少なくとも入力パラメータに基づくためである。すなわち、アルミニウムワイヤ140は、軟鉄電極よりも低い溶融温度を有し得、したがって、ワイヤ140の溶融に必要な電流/電力はより低い。更に、直径の小さいワイヤ140が必要とする電流/電力は、直径の大きい電極が必要とする電流/電力よりも小さい。また、ワイヤ供給速度(ひいては、堆積速度)が増大するにつれて、ワイヤの溶融に必要な電流/電力レベルは高くなる。
同様に、入力データは、CPU/コントローラ1230によって使用されて、アークの生成が回避されるような動作の電圧/電力閾値及び/又は範囲(例えば、電力、電流、及び/又は電圧)を決定する。例えば、軟鉄の場合、0.045インチの直径を有する電極は、6〜9ボルトの電圧範囲を有することができ、電圧モジュール1250が駆動されて、電圧を6〜9ボルトに維持する。そのような実施形態では、電流、電圧、及び/又は電力は、最小で6ボルトを維持する − これは、電流/電力が電極を適宜加熱するのに十分に高いことを保証する − と共に、電圧を9ボルト以下に保ち、アークが生成されず、ワイヤ140の溶融温度を超えないことを保証するように駆動される。当然ながら、電圧、電流、電力、又は抵抗の変化率等の他の設定点パラメータも、必要に応じてCPU/コントローラ1230によって設定することができる。
示されるように、電源1210の正端子1221は、熱線システムのコンタクトチップ160に結合され、電源の負端子は、加工物Wに結合される。したがって、加熱電流は、正端子1221を通してワイヤ140に供給され、負端子1222を通して戻る。そのような構成は一般に既知である。
当然ながら、別の例示的な実施形態では、負端子1222はチップ160にも接続することができる。抵抗性加熱を使用して、ワイヤ140を加熱することができるため、チップは、負端子1221及び正端子1222をコンタクトチップ140に結合して、ワイヤ140を加熱することができる構造(図11に示されるような)のものであり得る。例えば、コンタクトチップ160は、二重構造(図11Bに示されるように)を有することができるか、又は誘導コイル(図11Cに示されるように)を使用することができる。
フィードバック検知リード1223も電源1210に結合される。このフィードバック検知リードは、電圧をモニタし、検出された電圧を電圧検出回路1240に送給することができる。電圧検出回路1240は、検出された電圧及び/又は検出された電圧変化率をCPU/コントローラ1230に通信し、CPU/コントローラ1230は、それに従ってモジュール1250の動作を制御する。例えば、検出された電圧が所望の動作範囲未満である場合、CPU/コントローラ1230は、検出された電圧が所望の動作範囲内になるまで、出力(電流、電圧、及び/又は電力)を増大させるように、モジュール1250に命令する。同様に、検出された電圧が所望の閾値以上である場合、CPU/コントローラ1230は、アークが生成されないように、チップ160への電流フローを遮断するように、モジュール1250に命令する。電圧が所望の閾値未満に降下する場合、CPU/コントローラ1230は、電流、電圧、又は両方を供給して、溶接プロセスを継続するように、モジュール1250に命令する。当然ながら、CPU/コントローラ1230は、モジュール1250に、所望の電力レベルを維持又は供給するように命令することもできる。
検出回路1240及びCPU/コントローラ1230が、図1に示されるコントローラ195と同様の構造及び動作を有し得ることに留意する。本発明の例示的な実施形態では、サンプリング/検出レートは少なくとも10KHzである。他の例示的な実施形態では、検出/サンプリングレートは、100〜200KHzの範囲である。
図13A〜図13Cは、本発明の実施形態で利用される例示的な電流波形及び電圧波形を示す。次に、これらの波形のそれぞれについて考察する。図13Aは、アーク検出事象後、電源出力が再びオンになった後、フィラーワイヤ140が溶接パドルに接触する実施形態の電圧波形及び電流波形を示す。示されるように、電源の出力電圧は、所定の閾値(9ボルト)未満の何らかの動作レベルであり、次に、溶接中、この閾値まで増大する。動作レベルは、様々な入力パラメータ(上述)に基づいて決定されるレベルであり得、設定された動作電圧、電流及び/又は電力レベルであり得る。この動作レベルは、所与の溶接動作で望ましい電源170の出力であり、所望の加熱信号をフィラーワイヤ140に提供するためのものである。溶接中、アークの生成に繋がり得る事象が生じ得る。図13Aでは、事象は電圧を増大させ、電圧をポイントAまで増大させる。ポイントAでは、電源/制御回路は9ボルト閾値(これは、アーク検出点又は単純に、アーク生成点未満であり得る所定の上限閾値であり得る)に達し、電源の出力をオフにして、電流及び電圧をポイントBでの低減レベルまで降下させる。電流降下の傾きは、システムインダクタンスから生じる電流の急速な低減を支援するランプダウン回路(本明細書において考察されるような)の包含により、制御することができる。ポイントBでの電流又は電圧レベルは、所定であってもよく、又は所定の持続時間後に達してもよい。例えば、幾つかの実施形態では、溶接に電源(又は電流又は電力)の上限閾値が設定されるのみならず、下位非アーク生成レベルも設定される。この下位レベルは、電源を再びオンにすることが許され、アークが生成されないように、アークが生成され得ないことを保証する下位電圧、電流、又は電力レベルであり得る。そのような下位レベルを有することにより、電源を迅速に再びオンにすることができ、アークが生成されないことを保証することができる。例えば、溶接の電源設定点が2,000ワットに設定され、電圧閾値が11ボルトである場合、この下位電力設定は500ワットに設定することができる。したがって、上限電圧閾値(これもまた、実施形態に応じて、電流又は電力閾値であり得る)に達すると、出力は500ワットに低減される。(この下限閾値は同様に、下位電流設定、下位電圧設定、又は両方であることもできる)。代替的には、検出下限を設定するのではなく、タイミング回路を利用して、設定された持続時間後、電流の供給をして開始することができる。本発明の例示的な実施形態では、そのような持続時間は、500〜1000msの範囲であり得る。図13Aでは、ポイントCは、出力が再びワイヤ140に供給される時間を表す。ポイントBとポイントCとの間に示される遅延が、意図的な遅延の結果であるか、又は単にシステム遅延の結果であり得ることに留意する。ポイントCにおいて、電流が再び供給されており、フィラーワイヤを加熱する。しかし、フィラーワイヤは依然として溶接パドルに触れていないため、電圧は増大し、一方、電流は増大しない。ポイントDにおいて、ワイヤはパドルに接触し、電圧及び電流は所望の動作レベルに再び落ち着く。示されるように、電圧は、Dにおいて接触する前に上限を超え得、これは、電源が動作閾値よりも高いOCVレベルを有する場合に生じ得る。例えば、このより高いOCVレベルは、設計又は製造の結果として、電源で設定される上限であり得る。
図13Bは、上述したものと同様であるが、電源の出力が増大されるとき、フィラーワイヤ140は溶接パドルに接触している。そのような状況では、ワイヤは溶接パドルを決して出ないか、又はワイヤは、ポイントC前に溶接パドルに接触していた。図13Bは、出力が再びオンになるとき、ワイヤがパドルに接触しているため、ポイントC及びポイントDを一緒に示す。したがって、電流及び電圧は両方とも、ポイントEにおいて、所望の動作設定まで増大する。
図13Cは、出力がオフになるとき(ポイントA)と再びオンになるとき(ポイントB)との間に遅延がわずかであるか又はなく、ポイントBの幾らか前の時間に、ワイヤがパドルに接触する実施形態である。示される波形は、下限閾値が、下限閾値 − 下限閾値が電流であれ、電力であれ、それとも電圧であれ、関係なく − に達したとき、遅延がわずかであるか又はない状態で、出力が再びオンになるように設定される上述した実施形態で利用することができる。本明細書に記載される動作上限閾値又は範囲と同じ又は同様のパラメータを使用して、この下限閾値設定を設定し得ることに留意する。例えば、この下限閾値は、ワイヤの組成、直径、供給速度、又は本明細書に記載される様々な他のパラメータに基づいて設定することができる。そのような実施形態は、溶接に望ましい動作設定点に戻る際の遅延を最小に抑えることができ、ワイヤで生じ得る任意のネッキングを最小に抑えることができる。ネッキングの最小化は、アークが生成される機会の最小化を支援する。
図14は、本発明の更に別の例示的な実施形態を示す。図14は、図1に示されるような実施形態と同様の実施形態を示す。しかし、明確にするために、特定の構成要素及び接続は示されていない。図14は、熱センサ1410が利用されて、ワイヤ140の温度をモニタするシステム1400を示す。熱センサ1410は、ワイヤ140の温度を検出可能な任意の既知のタイプのものであり得る。センサ1410は、ワイヤ140に接触するか、又はチップ160に結合されて、ワイヤの温度を検出することができる。本発明の更なる例示的な実施形態では、センサ1410は、ワイヤ140に接触せずに、フィラーワイヤの直径等の小さい物体の温度を検出可能なレーザビーム又は赤外線ビームを使用するタイプである。そのような実施形態では、センサ1410は、ワイヤ140の温度をワイヤ140の突き出し部分で、すなわち、チップ160の端部と溶接パドルとの間の何らかのポイントで検出することができるように位置決めされる。センサ1410は、ワイヤ140のセンサ1410が溶接パドル温度を検知しないようにも位置決めされるべきである。
センサ1410は、温度フィードバック情報を電源170及び/又はレーザ電源130に提供することができ、それにより、システム1400の制御を最適化することができるように、検知及び制御ユニット195(図1に関して考察)に結合される。例えば、電源170の電力出力又は電流出力は、少なくとも、センサ1410からのフィードバックに基づいて調整することができる。すなわち、本発明の実施形態では、ユーザが所望の(所与の溶接及び/又はワイヤ140で所望の)温度設定を入力することができるか、又は検知及び制御回路が、他のユーザ入力データ(ワイヤ供給速度、電極タイプ等)に基づいて所望の温度を設定することができ、次に、検知及び制御ユニット195が、その所望の温度を維持するように、少なくとも電源170を制御する。
そのような実施形態では、ワイヤが溶接パドルに入る前、ワイヤ140に衝突するレーザビーム110に起因して生じ得るワイヤ140の加熱を説明することが可能である。本発明の実施形態では、ワイヤ140の温度は、電源170を介して、ワイヤ140内の電流を制御することによってのみ制御することができる。しかし、他の実施形態では、ワイヤ140の加熱の少なくともいくらかは、ワイヤ140の少なくとも部分に衝突するレーザビーム110からのものであり得る。したがって、電源170からの電流又は電力のみが、ワイヤ140の温度を表すものではないことがある。したがって、センサ1410の利用は、電源170及び/又はレーザ電源130の制御を通して、ワイヤ140の温度を調整することを支援することができる。
更なる例示的な実施形態(図14にも示される)では、温度センサ1420は、溶接パドルの温度を検知するように向けられる。この実施形態では、溶接パドルの温度も検知及び制御ユニット195に結合される。しかし、別の例示的な実施形態では、センサ1420は、レーザ電源130に直接結合することができる。センサ1420からのフィードバックは、レーザ電源130/レーザ120からの出力を制御するのに使用される。すなわち、レーザビーム110のエネルギー密度は、所望の溶接パドル温度が達成されることを保証するように変更することができる。
本発明の更なる例示的な実施形態では、センサ1420をパドルに向けられるのではなく、センサ1420は、溶接パドルに隣接する加工物のエリアに向けることができる。特に、溶接に隣接した加工物への入熱が最小に抑えられることが望ましいことがある。センサ1420は、溶接に隣接して閾値温度を超えないように、この温度の影響を受けやすいエリアをモニタするように位置決めすることができる。例えば、センサ1420は、加工物温度をモニタし、検知された温度に基づいてビーム110のエネルギー密度を低減することができる。そのような構成は、溶接ビードに隣接した入熱が所望の閾値を超えないことを保証する。そのような実施形態は、加工物への入熱が極めて重要な精密な溶接動作で利用することができる。
本発明の別の例示的な実施形態では、検知及び制御ユニット195は、ワイヤ供給機構(図示せず − しかし、図1の150参照)に結合される供給力検出ユニット(図示せず)に結合することができる。供給力検出ユニットは、既知であり、ワイヤ140が加工物115に供給される際、ワイヤ140に印加されている供給力を検出する。例えば、そのような検出ユニットは、ワイヤフィーダ150内のワイヤ供給モータによって印加されているトルクをモニタすることができる。ワイヤ140は、完全には溶融せずに溶融溶接パドルを通過する場合、加工物の固体部分に接触することになり、モータが設定された供給速度を維持しようとしているため、そのような接触は供給力を増大させる。力/トルクのこの増大は、検出し、制御ユニット195に中継することができ、制御ユニット195はこの情報を利用して、ワイヤ140への電圧、電流、及び/又は電力を調整して、パドル内のワイヤ140の適宜溶融を保証する。
本発明の幾つかの実施形態では、ワイヤが溶融パドルに常時供給されず、所望の溶融プロファイルに基づいて断続的に供給し得ることに留意する。特に、本発明の様々な実施形態の多様性により、オペレータ又は制御ユニット195が、必要に応じてパドルへのワイヤ140の供給を開始及び停止することができる。例えば、金属フィラー(ワイヤ140)の使用が必要な溶接継手の幾つかの部分と、金属フィラーの使用を必要としない同じ継手又は同じ加工物の他の部分とを有し得る、多くの異なるタイプの複雑な溶接プロファイル及びジオメトリがある。したがって、溶接の最初の部分中、制御ユニット195は、レーザ120のみを動作させて、継手のこの第1の部分をレーザ溶接させるが、溶接動作が、金属フィラーの使用を必要とする溶接継手の第2の部分に達すると、コントローラ195は、電源及び170及びワイヤフィーダ150に、溶接パドル内へのワイヤ140の堆積を開始することができる。次に、溶接動作が第2の部分の終わりに達すると、ワイヤ140の堆積を停止することができる。これにより、ある部分から次の部分に大きく変化するプロファイルを有する連続溶接の生成が可能である。そのような能力により、多くの離散した溶接動作を有するのとは対照的に、加工物を1回の溶接動作で溶接することができる。当然ながら、多くの変形形態を実施することができる。例えば、溶接は、レーザ及びワイヤ140の使用が各溶接部分で異なり得るような、様々な形状、深さ、及びフィラー要件を有する溶接プロファイルを必要とする3つ以上の別個の部分を有することができる。更に、同様に、必要に応じて追加のワイヤを追加又は除去することができる。すなわち、第1の溶接部分は、レーザ溶接のみを必要とし得、一方、第2の部分は、1本のフィラーワイヤ140の使用のみを必要とし、溶接の最後の部分は、2本以上のフィラーワイヤの使用を必要とする。コントローラ195は、連続溶接ビードが1回の溶接パスで生成されるように、様々なシステム構成要素を制御して、連続溶接動作でそのような様々な溶接プロファイルを達成可能なようにすることができる。
図15は、本発明の例示的な実施形態により溶接する場合、典型的な溶接パドルPを示す。上述したように、レーザビーム110は、加工物Wの表面にパドルPを生成する。溶接パドルは、ビーム110のエネルギー密度、形状、及び移動の関数である長さLを有する。本発明の例示的な実施形態では、ビーム110は、溶接パドルの後行縁部から距離ZのところでパドルPに向けられる。そのような実施形態では、高強度エネルギー源(例えば、レーザ120)は、エネルギー源120がワイヤ140を溶融しないように、エネルギーをフィラーワイヤ140に直接衝突させ、むしろ、ワイヤ140は、溶融パドルとの接触により溶融を完了する。パドルPの後行縁部は一般に、溶融パドルが終わり、生成された溶融ビードWBが固化を開始するポイントとして定義される。本発明の実施形態では、距離Zは、パドルPの長さLの50%である。更なる例示的な実施形態では、距離Zは、パドルPの長さLの40〜75%の範囲である。
フィラーワイヤ140は、図15に示されるように、溶接の移動方向において、ビーム110の背後でパドルPに衝突する。示されるように、ワイヤ140は、パドルPの後行縁部の前の距離Xとして、パドルPに衝突する。例示的な実施形態では、距離Xは、パドルPの長さの20〜60%の範囲である。別の例示的な実施形態では、距離Xは、パドルPの長さLの30〜45%の範囲である。他の例示的な実施形態では、ワイヤ140及びビーム110は、溶接プロセス中、ビーム110の少なくとも幾らかがワイヤ140に衝突するように、パドルPの表面又はパドルPの上方のポイントで交差する。そのような実施形態では、レーザビーム110を利用して、パドルP内で堆積するためのワイヤ140の溶融を支援する。ビーム110を使用して、ワイヤ140の溶融を支援することは、ワイヤ140が冷たすぎてパドルPに迅速に吸収することができない場合、ワイヤ140がパドルPを冷却しないようにすることを支援する。しかし、上述したように、幾つかの例示的な実施形態(図15に示されるような)では、エネルギー源120及びビーム110は、溶融は溶融パドルの熱によって完了するため、フィラーワイヤ140のいかなる部分もあまり溶融しない。
図15に示される実施形態では、ワイヤ140は、ビーム110を後行し、ビーム110と一直線上になる。しかし、ワイヤ140は先行する(移動方向において)ことができるため、本発明はこの構成に限定されない。更に、ワイヤ140が移動方向においてビームと一直線上にある必要はなく、適するワイヤ溶融はパドル内で行われるため、ワイヤはパドルに任意の方向から衝突することができる。
図16A〜図16Fは、示されるレーザビーム110のフットプリントと共に様々なパドルPを示す。示されるように、幾つかの例示的な実施形態では、パドルPは円形のフットプリントを有する。しかし、本発明の実施形態は、この構成に限定されない。例えば、パドルが同様に楕円形又は他の形状を有することもできることが意図される。
更に、図16A〜図16Fでは、ビーム110は、円形の断面を有して示される。ここでも、ビーム110は、溶接パドルPを効率的に生成するように、楕円形、矩形、又は他の形状を有することができるため、本発明の他の実施形態は、この点で限定されない。
幾つかの実施形態では、レーザビーム110は、溶接パドルPに相対して静止したままであり得る。すなわち、ビーム110は、溶接中、パドルPに対して比較的一貫した位置に留まる。しかし、図16A〜図16Dに例示されるように、他の実施形態はそのように限定されない。例えば、図16Aは、ビーム110が溶接パドルPの周囲を円形パターンで動く実施形態を示す。この図では、ビーム110は、常時、ビーム110の少なくとも一点がパドルの中心Cに重なるように動く。別の実施形態では、円形パターンが使用されるが、ビーム110は中心Cに接触しない。図16Bは、ビームが1本の線に沿って前後に動く実施形態を示す。この実施形態は、パドルPの所望の形状に応じて、パドルPを長尺状にするか、又は広げるのに使用することができる。図16Cは、2つの異なるビーム断面が使用される実施形態を示す。第1のビーム断面110は、第1のジオメトリを有し、第2のビーム断面110’は、第2の断面を有する。そのような実施形態は、必要であればより大きいパドルサイズをなお維持しながら、パドルP内のポイントでの溶込みを増大させるのに使用することができる。この実施形態は、レーザレンズ及び光学系の使用を通してビーム形状を変更することにより、シングルレーザ120を用いて達成することができるか、又は複数のレーザ120の使用を通して達成することができる。図16Dは、パドルP内で楕円形パターンで動いているビーム110を示す。ここでも、そのようなパターンは、必要に応じて溶接パドルPを長尺状にするか、又は広げるのに使用することができる。他のビーム110移動も、パドルPの生成に利用することができる。
図16E及び図16Fは、異なるビーム強度を使用する加工物W及びパドルPの断面を示す。図16Eは、より広いビーム110によって生成される浅くより広いパドルPを示し、一方、図16Fは、より深く狭い溶接パドルP − 通常、「キーホール」と呼ばれる − を示す。この実施形態では、ビームは、焦点が加工物Wの上面近くにあるように合焦される。そのような合焦を用いて、ビーム110は、加工物の全深さを通して溶け込み、加工物Wの下面に裏置きビードBBを生成するのを支援することができる。ビームの強度及び形状は、溶接中に望ましい溶接パドルの特性に基づいて決定されるべきである。
レーザ120は、任意の既知の方法及びデバイスを介して移動させ、動かし、又は動作させることができる。レーザの移動及び光学系は一般に既知であるため、本明細書では詳述しない。図17は、本発明の例示的な実施形態によるシステム1700を示し、システム1700では、レーザ120は、動作中、移動することができ、光学系(レンズ等)を変更又は調整することができる。このシステム1700は、検知及び制御ユニット195をモータ1710及び光学系駆動ユニット1720の両方に結合する。モータl710は、溶接パドルに相対するビーム110の位置が溶接中に移動するように、レーザ120を移動させるか、又は動かす。例えば、モータ1710は、ビーム110を前後に動かし、円形パターンで移動させる等することができる。同様に、光学系駆動ユニット1720は、検知及び制御ユニット195から命令を受信して、レーザ120の光学系を制御する。例えば、光学系駆動ユニット1720は、ビーム110の焦点を加工物の表面に相対して移動させるか、又は変更させ、したがって、溶融パドルの溶込み又は深さを変更することができる。同様に、光学系駆動ユニット1720は、レーザ120の光学系にビーム110の形状を変更させることができる。したがって、溶接中、検知及び制御ユニット195は、レーザ120及びビーム110を制御して、動作中、溶接パドルの特性を維持及び/又は変更する。
図1、図14、及び図17のそれぞれでは、レーザ電源130、熱線電源170、及び検知及び制御ユニット195は、明確にするために別個に示されている。しかし、本発明の実施形態では、これらの構成要素は、1つの溶接システムに統合することができる。本発明の態様では、個々に上述した構成要素は、別個の物理的なユニット又は独立した構造である必要はない。
上述したように、高強度エネルギー源は、溶接電源を含め、任意の数のエネルギー源であり得る。この例示的な実施形態を図20に示し、図20は、図1に示されるシステム100と同様のシステム2000を示す。システム2000の構成要素の多くは、システム100の構成要素と同様であり、したがって、それらの動作及び利用について再び詳述しない。しかし、システム2000では、レーザシステムは、GMAWシステム等のアーク溶接システムで置換されている。GMAWシステムは、電源2130、ワイヤフィーダ2150、及びトーチ2120を含む。溶接電極2110は、ワイヤフィーダ2150及びトーチ2120を介して溶融パドルに送給される。本明細書に記載されるタイプのGMAW溶接システムの動作は、周知であり、本明細書で詳述する必要はない。GMAWシステムが、示される例示的な実施形態に関して示され、考察されるが、本発明の例示的な実施形態が、加工物上の溶融パドルへの消耗材料の移行を支援するために、アークを使用するシステムを含め、GTAW、FCAW、MCAW、及びSAWシステム、クラッディングシステム、ろう着システム、及びこれらのシステムの組合せ等とも併用可能なことに留意されたい。図20には、既知の方法により使用することができるシールドガスシステム又はサブアークフラックスシステムは示されていない。
上述したレーザシステムのように、アーク生成システム(高強度エネルギー源として使用することができる)を使用して、溶融パドルを生成し、溶融パドルに、熱線140が、詳細に上述したようなシステム及び実施形態を使用して追加される。しかし、アーク生成システムを用いる場合、既知のように、追加の消耗材料2110もパドルに追加される。この追加の消耗材料は、本明細書に記載される熱線プロセスによって提供される既に増大された堆積性能を増大させる。この性能について、より詳細に後述する。
更に、一般に既知のように、GMAW等のアーク生成システムは、高レベルの電流を使用して、進んでいる消耗材料と加工物上の溶融パドルとの間にアークを生成する。同様に、GTAWシステムも高電流レベルを使用して、電極と加工物との間にアークを生成し、それに消耗材料が追加される。一般に既知のように、定電流、パルス電流等の多くの異なる電流波形をGTAW又はGMAW溶接動作に利用することができる。しかし、システム2000の動作中、電源2130によって生成される電流は、ワイヤ140の加熱に使用される電源170によって生成される電流に干渉し得る。ワイヤ140は、電源2130によって生成されるアークの近傍にあるため(ワイヤ140はそれぞれ、上述したものと同様に、同じ溶融パドルに向けられるため)、各電流は互いに干渉し得る。特に、各電流は磁場を生成し、磁場は互いと干渉し、動作に悪影響を及ぼし得る。例えば、熱線電流によって生成される磁場は、電源2130によって生成されるアークの安定性に干渉し得る。すなわち、各電流間の適切な制御及び同期なしでは、競合する磁場は、アークを不安定にし、ひいてはプロセスを不安定にする。したがって、例示的な実施形態は、電源2130及び170の電流同期を利用して、安定した動作を保証し、これについては更に後述する。
図21は、本発明の例示的な溶接動作のより近い図を示す。見てわかるように、トーチ2120(例示的なGMAW/MIGトーチであり得る)は、一般に既知であるように、アークの使用を通して消耗材料2110を溶接パドルWPに送給する。更に、熱線消耗材料140は、上述した任意の実施形態により、溶接パドルWPに送られる。トーチ2120及びチップ160が、この図では別個に示されているが、これらの構成要素が、統合的に、消耗材料2110及び140の両方をパドルに送給する1つのトーチユニットにすることも可能なことに留意されたい。当然ながら、統合構造が利用される点において、プロセス中、消耗材料間での電流の移行を回避するために、トーチ内で絶縁を使用しなければならない。上述したように、各電流によって誘導される磁場は、互いに干渉する可能性があり、したがって、本発明の実施形態は各電流を同期する。同期は、様々な方法を介して達成することができる。例えば、検知及び電流コントローラ195を使用して、電源2130及び170の動作を制御して、電流を同期させることができる。代替的には、マスタ−スレーブ関係を利用することもでき、この関係では、電源の1つがその他の出力の制御に使用される。相対電流の制御は、出力電流が安定した動作に向けて同期されるように、電源を制御する状態表又はアルゴリズムの使用を含め、幾つかの方法によって達成することができる。これについては、図22A〜図22Cに関して考察する。例えば、米国特許出願公開第2010/0096373号明細書に記載されるものと同様のデュアル状態ベースのシステム及びデバイスが利用可能である。2010年4月22日に公開された米国特許出願公開第2010/0096373号明細書は、全体的に参照により本明細書に援用される。
図22A〜図22Cのそれぞれは、例示的な電流波形を示す。図22Aは、電流パルス2202を使用して、ワイヤ2110からパドルへの液滴の移行を支援する例示的な溶接波形(GMAW又はGTAW)を示す。当然ながら、示される波形は例示的で代表的なものであり、限定であることは意図されず、例えば、電流波形は、パルススプレー移行、パルス溶接、表面張力移行溶接等での電流波形であり得る。熱線電源170は電流波形2203を出力し、この波形も、一般に上述したような抵抗性加熱を通してワイヤ140を加熱する一連のパルス2204を有する。電流パルス2204は、より低い電流レベルのバックグラウンドレベルによって隔てられる。一般に上述したように、波形2203は、ワイヤ140を溶融温度又はその近傍まで加熱するのに使用され、パルス2204及びバックグラウンドを使用して、抵抗性加熱を通してワイヤ140を加熱する。図22Aに示されるように、各電流波形からのパルス2202及び2204は、互いに同相であるように同期される。この例示的な実施形態では、電流波形は、電流パルス2202/2204が同様又は同じ周波数を有し、示されるように互いに同相であるように制御される。驚くことに、同相の波形を有することにより、アークが、波形2203によって生成される加熱電流によってあまり干渉されない、安定し一貫した動作がもたらされることが発見された。
図22Bは、本発明の別の例示的な実施形態からの波形を示す。この実施形態では、加熱電流波形2205は、パルス2206が、一定の位相角θだけパルス2202からずれるように制御/同期される。そのような実施形態では、位相角は、プロセスの安定した動作を保証すると共に、アークが安定した状態に維持されることを保証するように選択される。本発明の例示的な実施形態では、位相角θは30〜90度の範囲である。他の例示的な実施形態では、位相角は0度である。当然ながら、安定した動作を得るために他の位相角も利用可能であり、0〜360度の範囲であり得、一方、他の例示的な実施形態では、位相角は0〜180度の範囲である。
図22Cは、本発明の別の例示的な実施形態を示し、この実施形態では、熱線電流2207は、溶接パルス2202に対して位相角θが約180度であるよう熱線パルス2208が位相ずれし、この位相ずれが波形2201のバックグラウンド部分2210のみで生じるように、溶接波形2201と同期される。この実施形態では、各電流は同時にはピークに達していない。すなわち、波形2207のパルス2208は、波形2201の各バックグラウンド部分2210中に開始され、終了する。
本発明の幾つかの例示的な実施形態では、溶接及び熱線パルスのパルス幅は同じである。しかし、他の実施形態では、各パルス幅は異なることができる。例えば、熱線パルス波形と共にGMAWパルス波形を使用する場合、GMAWパルス幅は1.5〜2.5ミリ秒の範囲であり、熱線パルス幅は1.8〜3ミリ秒の範囲であり、熱線パルス幅はGMAWパルス幅よりも広い。
加熱電流がパルス電流として示されているが、幾つかの例示的な実施形態では、加熱電流が、上述したように一定電力であり得ることに留意されたい。熱線電流は、パルス加熱電力、定電圧、勾配出力、及び/又はジュール/時間ベースの出力であることもできる。
本明細書に例示されるように、両電流がパルスされる点において、両電流は、安定した動作を保証するように同期される。同期信号の使用を含め、これの達成に使用することができる多くの方法がある。例えば、コントローラ195(何れか又は電源170/2130に統合することができる)は、パルスアークピークを開始する同期信号を設定することができると共に、熱線パルスピークの所望の開始時間を設定することもできる。上で説明したように、幾つかの実施形態では、パルスは、同時に開始するように同期され、一方、他の実施形態では、同期信号は、アークパルスピーク後、幾らかの持続時間において熱線電流のパルスピークの開始を設定することができる − 持続時間は、動作に望ましい位相角を得るのに十分なものである。
図23は、本発明の別の例示的な実施形態を表す。この実施形態では、消耗材料2120が送給されるアークをGTAWトーチ2121及び電極2122が生成する、GTAW溶接/被覆動作が利用される。ここでも、アーク及び熱線140は同じパドルWPに送られて、示されるように、ビードWBを生成する。GTAW実施形態の動作は、アーク及び熱線140が同じ溶接パドルWPと相互作用するという点で、上述したものと同様である。ここでも、上述したGMAW動作と同様に、GTAW動作においてアークの生成に使用される電流は、熱線動作の電流と同期される。例えば、図22A〜図22Cに示されるようなパルス関係を使用することができる。更に、コントローラ195は、デュアル状態表又は他の同様の制御方法を使用して、電源間の同期を制御することができる。消耗材料2120を冷たいワイヤとして溶接に送給してもよく、又は熱線消耗材料であってもよいことに留意されたい。すなわち、両消耗材料2110及び140は、本明細書に記載のように、加熱することができる。代替的には、消耗材料2120及び140のうちの一方のみが、本明細書に記載されるような熱線であり得る。
上述したGTAW又はGMAW型実施形態の何れでも(他のアークタイプ方法の使用を含む)、アークは先行して − 移動方向に関して − 位置決めされる。これを図21及び図23のそれぞれに示す。これは、アークが、加工物内の所望の溶込みを達成するために使用されるためである。すなわち、アークは、溶融パドルを生成し、加工物内で所望の溶込みを達成するのに使用される。次に、アークプロセスの背後に続くのは熱線プロセスであり、このプロセスについて本明細書において詳述する。熱線プロセスの追加により、少なくとも2つのアークが使用される従来のタンデムMIGプロセス等の別の溶接アークの追加入熱なしで、より多くの消耗材料140がパドルに追加される。したがって、本発明の実施形態は、既知のタンデム溶接方法よりもかなり少ない入熱で速い堆積速度を達成することができる。
図21に示されるように、熱線140は、アークと同じ溶接パドルWPに挿入されるが、距離Dだけアークの背後を後行する。幾つかの例示的な実施形態では、この距離は5〜20mmの範囲であり、他の実施形態では、この距離は5〜10mmの範囲である。当然ながら、ワイヤ140が、先行アークによって生成されるものと同じ溶融パドルに供給される限り、他の距離を使用することもできる。しかし、ワイヤ2110及び140は、同じ溶融パドル内に堆積されるべきであり、距離Dは、ワイヤ140の加熱に使用される加熱電流によるアークへの磁気干渉が最小であるようなものであるべきである。一般に、パドル − アーク及びワイヤがまとめて向けられる − のサイズは、溶接速度、アークパラメータ、ワイヤ140への総電力、材料タイプ等に依存し、これらは、ワイヤ2110及び140の間の所望の距離を決定することにおける要因でもある。
熱線電流(例えば、2203、2203、又は2207)の動作が、アーク事象がコントローラ195又は電源170によって検出されるか、又は予測される場合、本明細書において詳述したものと同様であることに留意されたい。すなわち、電流がパルスされる場合であっても、アークが生成又は検出される場合、本明細書に記載されるように、電流を遮断又は最小にすることができる。更に、幾つかの例示的な実施形態では、バックグラウンド部分2211は、ワイヤ140のアーク生成レベル(ユーザ入力情報に基づいて、コントローラ195によって決定することができる)未満の電流レベルを有し、アークが検出される場合、熱線電流を遮断するのではなく、電源170は、ある時間期間中、又はアークが消えるか若しくは生じないと判断される(一般に上述したように)まで、電流をバックグラウンドレベル2211に降下させることができる。例えば、電源170は、所定数のパルス2203/2205/2207をスキップすることができるか、又は10〜100ms等のある持続時間にわたり、単にパルスせず、持続時間後、電源170は再び、パルスを開始して、ワイヤ140を適切な温度に加熱することができる。
上述したように、少なくとも2つの消耗材料140/2110が同じパドル内で使用されるため、シングルアーク動作と同様の入熱で、非常に高い堆積速度を達成することができる。これは、加工物への非常に高い入熱を有するタンデムMIG溶接システムを上回る大きい利点を提供する。例えば、本発明の実施形態は、シングルアークの入熱で、少なくとも23lb/時の堆積速度を容易に達成することができる。他の例示的な実施形態は、少なくとも35lb/時という堆積速度を有する。
本発明の例示的な実施形態では、ワイヤ140及び2110はそれぞれ、同じ組成、直径等を有するという点で同じである。しかし、他の例示的な実施形態では、ワイヤは異なることができる。例えば、ワイヤは、特定の動作に望ましいように、異なる直径、ワイヤ供給速度、及び組成を有することができる。例示的な実施形態では、先行ワイヤ2110のワイヤ供給速度は、熱線140の供給速度よりも高い。例えば、先行ワイヤ2110は、ワイヤ供給速度450ipmを有することができ、一方、後行ワイヤ140はワイヤ供給速度400ipmを有する。更に、ワイヤは異なるサイズ及び組成を有することができる。実際には、熱線140は、パドルに堆積するために、アークを通って移動する必要がないため、通常、アークを通って良好に移行しない材料/成分を有することができる。例えば、ワイヤ140は、アークに起因して、典型的な溶接電極に追加することができない、炭化タングステン又は他の同様の表面硬化材料を有することができる。更に、先行電極2110は、湿潤剤が豊富な組成を有することができ、湿潤剤は、所望のビード形状を提供するようにパドルをウェットアウトさせるのに役立つことができる。更に、熱線140は、パドルの保護を支援するスラグ要素を含むこともできる。したがって、本発明の実施形態では、溶接の化学的性質に大きい柔軟性が可能である。ワイヤ2110が先行ワイヤであるため、先行ワイヤを用いたアーク溶接動作が、熱線が継手の追加の充填を提供する溶接継手の溶込みを提供することに留意されたい。
本発明の幾つかの例示的な実施形態では、アークと熱線との組合せを使用して、実行される特定の動作の要件及び制限に一貫して、溶着物への入熱のバランスを取ることができる。例えば、先行アークからの熱は、アークからの熱が加工物の継手に必要な溶込みの獲得を支援し、熱線が主に、継手の充填に使用される継手用途では、増大させることができる。しかし、クラッディング又は構築プロセスでは、熱線ワイヤ供給速度を増大させて、希釈を最小化し、構築を増大させることができる。
更に、異なるワイヤ化学的性質を使用することができるため、従来、2つの別個のパスによって達成されている、異なる層を有する溶接継手を生成することができる。先行ワイヤ2110は、従来の第1のパスで必要な所要化学的性質を有することができ、一方、後行ワイヤ140は、従来の第2のパスに必要な化学的性質を有することができる。更に、幾つかの実施形態では、ワイヤ140/2110のうちの少なくとも一方は被覆ワイヤであり得る。例えば、熱線140は、所望の材料を溶接パドルに堆積される粉体芯を有する有芯ワイヤであり得る。
図24は、本発明の電流波形の別の例示的な実施形態を示す。この実施形態では、熱線電流2403は、溶接電流2401(GMAWであれ、GTAWであれ、関係なく)と同期されるAC電流である。この実施形態では、加熱電流の正パルス2404は、電流2401のパルス2402と同期され、一方、加熱電流2403の負パルス2405は、溶接電流のバックグラウンド部分2406と同期される。当然ながら、他の実施形態では、正パルス2404がバックグラウンド2406と同期され、負パルス2405がパルス2402と同期されるという意味で、同期は逆であり得る。別の実施形態では、パルス溶接電流と熱線電流との間には位相角がある。AC波形2403を利用することにより、交流電流(ひいては、交番磁場)を使用して、アークの安定化を支援することができる。当然ながら、本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、他の実施形態を利用することもできる。例えば、サブマージアーク溶接(SAW)動作を使用するシステムでは、SAW電流波形はAC波形であり得、熱線電流波形はAC又はパルスDC電力波形であり、各波形は互いに同期される。
溶接電流が一定又は略一定の電流波形であるか否かに関係なく、本発明の実施形態が使用可能なことにも留意する。そのような実施形態では、交流加熱電流2403を使用して、アークの安定性を維持することができる。安定性は、加熱電流2403からの常時変化する磁場により達成される。
図25は、熱線140が2つのタンデムアーク溶接動作間に位置決めされる、本発明の別の例示的な実施形態を示す。図25では、アーク溶接動作はGMAW型溶接として示されるが、GTAW、FCAW、MCAW、又はSAW型システムを使用することもできる。図中、先行トーチ2120は第1の電源2130に結合され、アーク溶接動作を介して第1の電極2110をパドルに送給する。先行アークを後行するのは熱線140(上述したように堆積される)である。熱線140を後行するのは、幾つかの電源2130’、第2のトーチ2120’、及び第2のアーク溶接ワイヤ2110’を使用する後行アーク溶接動作である。したがって、構成は、タンデムGMAW溶接システムの構成と同様であるが、トーチ2120及び2120’の間の共通パドル内に堆積される熱線140を有する。そのような実施形態は、パドルへの材料の堆積速度を更に増大させる。本発明の実施形態が、1回の動作で追加の溶接トーチ及び/又は熱線消耗材料を使用可能であり、図に示される実施形態に限定されないことに留意されたい。例えば、熱線のみではない材料を使用して、追加の材料をパドルに堆積することができる。上述したように、本明細書に一般に考察されるGMAWプロセスよりもむしろ、SAWプロセスを使用することができる。例えば、図25に示される実施形態は、この図に示される構成と同様の構成を用いて、先行及び後行SAWプロセスを利用することができる。当然ながら、シールドガスよりはむしろ、粒状フラックスがアークの遮蔽に使用される。全体の方法又は動作及び制御は、上述したように、SAW等の他の溶接方法論を使用する場合でも同様に適用可能である。例えば、図25Aは、本明細書に記載されるように、熱線を用いるSAWシステムで使用することができる例示的な波形を示す。示されるように、先行SAW電流波形2501は、複数の正パルス2503及び複数の負パルス2505を有するAC波形であり、一方、後行SAW電流2521も複数の正パルス2523及び複数の負パルス2525を有するAC波形であり、後行波形2521は、位相角αだけ先行波形2501から位相がずれる。本発明の例示的な実施形態では、位相角αは、90〜270度の範囲である。示される実施形態では、波形2501及び2521の+/−オフセットが、後行波形2521が先行波形2501よりも大きい負のオフセットを有するという意味で、異なることにも留意する。他の例示的な実施形態では、オフセットは同じであり得るか、又は逆にすることができる。示される熱線電流2510内バックグラウンドレベル2513により隔てられた複数の正パルス2511を有するパルス電流、波形2510は、位相角αとは異なるオフセット位相角θを有する。例示的な実施形態では、熱線位相角θは、45〜315度の範囲であるが、位相角αとは異なる。
上記考察はSAW型動作に向けられたものであったが、同様の同期方法論を使用する他の例示的な実施形態が、GMAW、FCAW、MCAW、若しくはGTAW型動作、又はこれらの組合せのものであり得ることに留意する。
上述したように、本発明の実施形態は、総入熱を従来のタンデムシステムよりも低く保ちながら、パドルへの材料堆積を大きく増大させることができる。しかし、幾つかの例示的な実施形態は、従来のタンデム方法よりも高い溶接ビードWB形状を生成することができる。すなわち、溶接ビードWBは、加工物の表面よりも高く起立する傾向を有し、タンデムシステムほどは溶接ビードWBの側面にウェットアウトしない。一般に、これは、熱線140が、先行アーク溶接動作に続くパドルの冷却を支援するためである。したがって、本発明の幾つかの例示的な実施形態は、溶接/被覆動作中、パドルの広域化又はウェットアウトを支援するシステム及び構成要素を利用する。
図26は、2つのGMAWトーチ2120及び2120’が一直線上に位置決めされず、むしろ、示されるように並んで位置決めされる例示的な実施形態を示し、この実施形態では、熱線140は、2つのトーチ2120/2120’の背後を辿る。この実施形態では、並べた構成の2つのGMAWアークを有することで、パドルWPを広げ、パドルをウェットアウトさせて、溶接ビードWBを平らにするのを支援する。他の実施形態と同様に、熱線140は、アーク溶接動作を後行し、アーク溶接動作の背後の溶接ビードWBの中心線に位置することができる。しかし、熱線は、溶接動作中、パドルに相対して振動又は移動することができるため、熱線140が中心線に留まる必要はない。
図27は、レーザ2720及び2720’が、溶接パドルWPの両側で使用されて、パドルの平坦化に役立つか、又はパドルの湿潤化を支援する別の例示的な実施形態を示す。レーザ2720/2720’はそれぞれ、パドルの両側でそれぞれ、ビーム2710/2710’を発して、パドルに熱を追加し、パドル形状が望ましいものであるように、パドルの湿潤化を支援する。レーザ2720/2720’は、本明細書に記載されたタイプのものであり得、上述したように制御することができる。すなわち、レーザは、コントローラ195又は同様のデバイスにより制御されて、所望の溶接ビード形状を提供することができる。更に、2つのレーザを使用して、所望の溶接ビード形状を達成するよりもむしろ、1つのレーザをビームスプリッタと共に使用することができ、ビームスプリッタは、ビーム2710を分割し、分割されたビームを溶接パドル上の適切な位置に向けて、所望の溶接ビード形状を達成する。明確にするために、先行アーク溶接プロセスが図27に示されていないことに留意する。
更なる例示的な実施形態では、シングルレーザビーム2710を使用することができ、このレーザビームは、アークプロセスのすぐ下流又は熱線140の下流(移動方向において)にあるパドルに向けられ、端から端に振動して、パドルの平坦化を支援する。そのような実施形態では、シングルレーザ2720を使用することができ、シングルレーザ2720は、溶接中、パドルのウェットアウトを支援することが望ましいパドルのエリアに向けられる。レーザ2720の制御及び動作は、図1等に関連して上述したレーザ120の制御及び動作と同様である。
図28は、本発明の別の例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、GTAW(又はGMAW、FCAW、MCAW)電極2801が、アーク溶接プロセスに利用され、磁気プローブ2803が、電極2801に隣接して位置決めされて、溶接中、アークの移動を制御する。プローブ2803は、磁気制御及び電源2805から電流を受け取り、磁気制御及び電源2805は、コントローラ195に結合されてもよく、又はされなくてもよく、電流は、プローブ2803によって磁場MFを生成させる。磁場は、アークによって生成される磁場と相互作用し、したがって、溶接中、アークを移動させるのに使用することができる。すなわち、アークは、溶接中、端から端に移動することができる。この端から端への移動を使用して、パドルを広げ、パドルをウェットアウトして、所望の溶接ビード形状を達成することを支援する。明確にするために、示されていないが、アークの後を本明細書に記載されるような熱線消耗材料が辿り、溶接ビードに追加の充填を提供する。磁気ステアリングシステムの使用及び実施は一般に、溶接業界の当業者に既知であり、本明細書において詳述する必要はない。
当然ながら、図26又は図28(並びに本明細書に記載される他の図示の実施形態)の実施形態が、レーザ2720を使用して、本明細書に記載されるような溶接パドルの形状を支援し得ることが理解される。
図29は、本明細書に記載されるような本発明の例示的な実施形態と併用することができる別の例示的な電流波形を示す。先に説明したように、従来の溶接方法を用いて被覆材料(例えば、亜鉛めっき材料)を溶接する場合、多孔性及びスパッタに起因して問題が生じ得る。更に、本明細書において更に説明されるように、本発明の実施形態は、多孔性及びスパッタの問題に対処することができ、従来の溶接及びオーバーレイシステムを上回る大幅に改善された性能を達成することができる。例えば、アーク溶接と熱線との両方を使用する方法及びシステムは、本明細書の図20〜図28に関して本明細書において考察したように、改善された性能を提供することができる。図29は、図20に一般に示されるアーク溶接動作に使用することができる電流波形の更なる例示的な実施形態を表す。すなわち、図29の電流波形は、電源2130によって生成され、電極2110に提供することができる。図29の電流波形について、これより考察する。
図29に示されるように、例示的な電流波形3000は、正の部分及び負の部分の両方を有するAC型波形である。本発明の例示的な実施形態を使用する場合、波形3000の使用は、上述した多孔性及びスパッタ性能を高い移動速度及び堆積速度で提供することができる。実際には、波形3000の利点は、同じ溶接パドル内で熱線140を使用して、又は使用せずに達成することができる − これについては以下に詳述する。図29に示される波形3000は、例示であることが意図され、本発明の実施形態はそれに限定されない。
示されるように、波形3000は幾つかのフェーズを有する。特に、波形3000は、少なくとも液滴移行フェーズP1と、液滴構築フェーズP2とを有する。液滴移行フェーズP1は、液滴Dを電極2110から加工物115に移行するのに使用される少なくとも1つの液滴移行パルス3010を含む。通常、液滴移行パルス3010は、正電流パルスであり、例えば、限られたスパッタで、液滴Dを加工物にスムーズに移行できるようにするプロファイルを有する。示される実施形態では、パルス3010は、ピーク電流レベル3013への指数的電流ランプレート3011を有する。例示的な実施形態では、ピーク電流レベル3013は、300〜500アンペアの範囲である。当然ながら、本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、他のピーク電流レベル3013を使用することもできる。更に、パルス3010は、電流ランプダウンプロファイル3015を有することができ、このプロファイルにより、電極2110は、液滴Dと電極2110との間で幅を狭め、それにより、液滴Dが切れる際、スパッタが制限される。更に、指数的傾き3011が示されるが、他の実施形態はこのプロファイルに限定されない。電流ランプレートが加工物115への液滴Dのスムーズな移行を可能にする限り、本発明の範囲から逸脱せずに、他の電流ランプレートプロファイルを使用することもできる。すなわち、幾つかの例示的な実施形態では、既知の液滴移行パルスを使用することができる。液滴移行パルス3010の終了時、液滴Dは加工物115上のパドルに接触し、加工物115に移行する。本発明の例示的な実施形態では、液滴移行パルス3010の終了時、電極2110は、液滴Dがパドル及び電極2110の両方に接触しているという意味で、短絡状態にある。そのような例示的な実施形態では、短絡クリア部分3020が、波形3000に存在する。短絡クリア部分3020は、スパッタが最小又はない状態で短絡状態をクリアすることが可能な任意の既知の短絡クリア機能であり得る。例えば、短絡クリア機能は、既知のSTT(表面張力移行)技術で使用されるものと同様であり得る。示される実施形態では、短絡クリア部分3020中、電流は、液滴Dが電極2110から切れるまで、バックグラウンドレベル3025未満のレベル3021まで下げられる。切れた後、電流はプラズマブーストレベル3023に増大されて、パドルから離れて電極2110がバーンバックできるようにし、その後、電流はバックグラウンドレベル3025に戻り、それから、液滴構築フェーズP2が開始する。幾つかの例示的な実施形態では、液滴の移行に短絡移行方法が使用されなくてもよく、したがって、短絡クリア部分3020が波形3000に存在する必要がないことに留意する。当然ながら、そのような実施形態であってもなお、短絡事象が生じ得る可能性がある。したがって、そのような実施形態では、電源2130は、短絡クリア機能を使用して、短絡をクリアする。したがって、幾つかの例示的な実施形態では、液滴移行パルス3010の終了時に生成される意図的な短絡状態はないが、短絡が生じる場合には、短絡クリア機能が開始され、短絡クリア機能は、図29に示される部分3020と同様であり得る。
液滴移行フェーズP1及び任意の短絡クリア部分3020(存在する場合)後、液滴構築フェーズP2が開始される。図29に示されるように、液滴構築フェーズP2は、短絡クリア部分3020後且つ電流がバックグラウンドレベル3025に戻った後、開始される。しかし、他の例示的な実施形態では、液滴構築フェーズP2は、電流がバックグラウンド電流レベル3025に戻らず、そこに留まらないように、短絡クリア部分3020の直後に開始することができる。例えば、電流は、プラズマブースト3023から液滴構築フェーズP2に直接下がることができる。移行される液滴Dは主に、液滴構築フェーズP2中に形成される。示されるように、液滴構築フェーズP2は、AC波形プロファイルを利用して液滴Dを生成する。このAC波形プロファイルは、入熱を最小に抑えながら、同時に所望のサイズ及び安定性の液滴を生成するのに使用される。示されるように、液滴構築フェーズP2中、波形のこのフェーズ中、液滴Dの意図的な移行はない。代わりに、波形のこの部分は、移行フェーズP1において移行する液滴Dの構築に使用される。当然ながら、溶接の現実では、時折、不注意による液滴の移行又は回路短絡があり得ることが認識される。しかし、構築フェーズP2中、意図的な液滴移行はない。
示されるように、液滴構築フェーズP2の開始時、電流は第1の負極液滴構築パルス3030に入る。すなわち、電流は、負バックグラウンドレベル3031で、正極から負極に変化し、時間期間T1にわたりそのレベルに維持される。例示的な実施形態では、電流レベル3031は、30〜300アンペアの範囲である。他の例示的な実施形態では、電流レベル3031は35〜125アンペアの範囲である。更に、例示的な実施形態では、時間T1は400μs〜3msの範囲である。更なる例示的な実施形態では、時間T1は700μs〜2msの範囲である。これは、負極パルスと呼ぶことができる。示されるように、この構築パルス3030中、新しい液滴Dが、電極2110の端部に形成され始め、電流は負であるため、入熱は比較的低い(正電流フローと比較して)。しかし、一般に理解されるように、負電流フロー中、陰極点が電極2110を上に移動する傾向を有し得、これは、液滴Dを上に向かせ、不安定にする傾向を有する。したがって、第1の液滴構築パルス3030後、第1の液滴安定化パルス3040が使用され、第1の液滴安定化パルス3040は、正ピーク電流レベル3041を有する。このピークレベル3041は、時間T3にわたり維持され、例示的な実施形態では、300〜500アンペアの範囲である。他の例示的な実施形態では、電流3041は350〜400アンペアの範囲である。例示的な実施形態では、時間T3は300μs〜2.5msの範囲である。更なる例示的な実施形態では、時間T3は、500μs〜1.5msの範囲である。示されるように、液滴Dの構築を続けることに加えて、安定化パルス3040は、加工物115に向けられたより安定した位置に液滴Dを戻す。示される例示的な実施形態では、安定化パルス3040の電流レベル3041は、パルス3030の電流レベル3031よりも高く(大きさで)、持続時間はより短い(すなわち、T3はT1よりも短い)。例示的な実施形態では、電流レベル3041は、負電流レベル3031の大きさの1.5〜3倍の範囲である。更に、例示的な実施形態では、持続時間T1は、正ピーク電流3041の持続時間T3の1.25〜3倍である。
しかし、他の例示的な実施形態では、正ピーク電流レベル3041は、負ピーク電流3031未満であり(大きさで)、及び/又はより長い持続時間であり得る。例えば、幾つかの例示的な実施形態では、安定化ピークレベル3041は、液滴構築パルス3030のピークレベル3031よりも50〜125アンペア低い範囲である(大きさで)。これは、使用されている電極Eのタイプによる影響を受け得、パルス3030/3040の相対的な持続時間及びピークレベルは、所望の液滴構築特性及び安定性特性を提供するように選択されるべきである。
示されるように、第1の液滴安定化パルス3040後、第2の液滴構築パルス3030’及び安定化パルス3041’が使用される。示される実施形態では、第2の液滴構築パルス3030’及び安定化パルス3041’のそれぞれは、第1のパルス3030/3040と同じ電流レベル3031/3041及び持続時間T1/T3を有する。しかし、他の例示的な実施形態では、持続時間及びピーク電流レベル3031’/3041’の一方又は両方は、第1のパルス3030/3040のもの未満であり得る。すなわち、第1の構築及び安定化パルスを使用して、最大量の液滴構築エネルギーを提供するのに使用することができ、一方、後続パルスは、より低い液滴構築エネルギーを提供する。更に、他の実施形態では、持続時間及びピーク電流レベル3031’/3041’のうちの一方又は両方は、第1のパルス3030/3040のものよりも大きくすることができる。そのような実施形態では、液滴構築エネルギーは、続くパルスで増大することができる。
図29に示されるように、第2の安定化パルス3040’に続くのは、第3の液滴構築パルス3030’’である。このパルス3030’’は、液滴Dの形成を完了するか、又は液滴Dを形成の完了に近いものし、その後、他の液滴移行パルス3010が続き、液滴Dを加工物上に堆積させる。示される実施形態では、パルス3030’’は、前のパルス3030/3030’の電流レベル3031/3031’と同じである電流レベル3031’を有する。しかし、他の例示的な実施形態では、電流レベル3031’’は、所望のエネルギー入力に応じて、前のパルスのものよりも高いか、又は低いレベルであり得る。また、示される実施形態では、電流は液滴移行パルス3010が開始される前に、わずかな間、バックグラウンドレベル3025に戻る。しかし、他の例示的な実施形態では、電流は、液滴移行パルス3010に直接進むことができる。また、示されるように、最終的な液滴構築パルス3030’’は、前のパルス3030/3030’よりも持続時間(例えば、T1)よりも短い持続時間T2にわたり、ピーク電流レベル3031’’を有する。これは、液滴Dを移行する前に、液滴が適切なサイズに達し、不安定化されないことを保証する。しかし、他の例示的な実施形態では、持続時間T2は、前のパルス3030/3030’の持続時間T1と同じであるか、又は持続時間T1よりも長い時間であり得る。これは、移行前の所望の液滴サイズに依存することができる。
図29に示される波形3000が例示であることが意図され、本発明の趣旨又は範囲から逸脱せずに、他の同様に機能する波形も使用可能なことに留意されたい。例えば、図29に示される実施形態と異なり、液滴移行フェーズP1への遷移は、示されるように、液滴構築パルスの代わりに、液滴安定化パルスからのものであり得る。更に、他の例示的な実施形態では、液滴構築フェーズP2は、液滴安定化及び進行段階に遷移することができ、この段階では、電流は、ピークレベル3040’よりも低い(例えば、50%を超えて低い)正電流レベルに変更される(パルス3030/3040の何れかの後)。これは、液滴の安定化を支援し、遷移フェーズP1前に、液滴をワイヤ供給によりパドルのより近くにプッシュすることができるように、液滴の構築を遅くする。更なる例示的な実施形態では、液滴をパドルに接触させ、短絡回路を介して(例えば、表面張力移行−STTを使用して)移行させることができる。他の例示的な実施形態では、液滴は、ワイヤフィーダを介してパドルに進み(構築フェーズP2後)、パドルに接触することができ、次に、電流は、電極がネックダウンし、ワイヤがパドルから逆になり、液滴をパドルに残すように、制御される。更なる例示的な実施形態では、低電流正パルス(上述した安定化パルス)は、構築フェーズP2と移行フェーズP2との間の中間パルス/フェーズであり得る。すなわち、構築フェーズP2から、電流は低正電流パルス安定化フェーズに入り、次に、パルス移行フェーズP1に入る。パルス安定化フェーズ中、電流パルスは、液滴を安定化させ、移行に向けて液滴を準備するような電流ピーク及び持続時間を有するべきである。例示的な実施形態では、この安定化フェーズでの正安定化パルスは、この安定化フェーズの直前のピーク電流レベル3041’の35〜60%の範囲であるピーク電流を有する。この安定化ピーク電流の持続時間は、固定されてもよく(コントローラにより)又は変更可能であってもよい。例えば、コントローラは、液滴構築フェーズP2中に生成されるエネルギー量をモニタし、次に、液滴移行フェーズP1の前に、適切な量のエネルギーが生成されることを保証するように、正安定化パルスのピーク及び/又は持続時間を調整することができる。すなわち、システムコントローラ(例えば、195)は、液滴移行前に達成されるべき所望のエネルギー入力X(例えば、ジュール単位)を決定することができ、フェーズP2中のエネルギー入力量がX未満である場合、コントローラ195は、正電流安定化フェーズ(フェーズP1及びP2の間)を使用して、決定された追加のエネルギーを追加することができる。更なる例示的な実施形態では、移行フェーズP1前に、液滴Dを移行することが望ましいか、又は必要なことがあり、したがって、上述した安定化フェーズ中の電流パルスを使用して、液滴を移行することができる。例えば、構築フェーズ中、液滴Dは、構築フェーズP2の終了時又は終了近くで、液滴が移行可能な状態になるか、又はパドルに接触しつつあるように、所望又は予期されるよりも高速で構築し得る。これは、溶接信号の電流、電圧、電力、及び/又はdv/dtをモニタすることにより、コントローラ195によって検出することができる。これが検出される場合、コントローラは、パルス3040又はより小さい正パルス(安定化フェーズ中に上述したようなパルス)を使用して、パルス3010が開始する前に液滴Dを移行することができる。移行が完了すると、コントローラ195は、移行パルス3010をスキップさせ、その後、次の液滴の構築フェーズP2を開始する。
図29の波形3000は、3つの構築パルス3030/3030’/3030’’及び2つの安定化パルス3040/3040’’を有して示されるが、他の例示的な実施形態がこのように限定されないことに留意されたい。すなわち、幾つかの実施形態では、より多くのパルス3030/3040又はより少数のパルスがあり得る。実際には、幾つかの例示的な実施形態では、1つのみの液滴構築パルス3030及び液滴安定化パルス3040があり得る。当然ながら、パルスの数は、適切な移行を保証するのに所望の液滴サイズ及び安定化を達成するのに使用されるべきである。
本発明の例示的な実施形態では、液滴移行パルス3010は、2〜50msの範囲のサイクル周期を有する。幾つかの例示的な実施形態では、続く液滴移行パルス3010は、20〜300Hzの範囲の周波数を有し、液滴構築パルス及び安定化パルスは、300〜1000Hzの範囲の周波数を有する。当然ながら、所望の性能を達成するために、他の周波数を使用することもできる。しかし、本発明の例示的な実施形態では、構築パルス及び安定化パルスの複数の組合せ(図29でのように)があるという点で、これらのパルスの周波数は、移行パルス3010の周波数よりも高くなる。例示的な実施形態では、構築/安定化パルスの周波数は、移行パルス3010の周波数の1.5〜3倍の範囲である。
他の実施形態に関して上述したように、波形3000は電源2130によって生成され、その出力は、電源2130、コントローラ195、又は両方によって制御することができる。液滴構築フェーズP2の長さに関して、持続時間TDFは、コントローラ195及び/又は電源2130によって制御される。例えば、幾つかの例示的な実施形態では、タイマがコントローラ195又は電源2130で使用され、持続時間TDFは、溶接動作の開始前に予め決定される。動作中、液滴構築フェーズP2の長さは、持続時間TDFの終了時、続く移行パルス3010が開始されるように、所定の持続時間TDFに一致するように制御される。持続時間TDFは、溶接動作に関連するユーザ入力情報に基づいて、アルゴリズム、ルックアップテーブル等を介して決定することができる。更に、例示的な実施形態では、液滴構築フェーズP2でのパルスの周波数及び/又は持続時間は、液滴構築フェーズP2が、液滴移行部分P1への遷移に望ましい時点で終了するように、決定される(例えば、コントローラ195により)。例えば、図29に示されるように、液滴構築フェーズP2は、液滴構築パルス3031’’の終了時に終了する。更なる例示的な実施形態では、コントローラ195(又は電源2130)は、カウンタ型回路を使用して、持続時間TDFは、所定のパルス数Nの発生を可能にする持続時間であるように、液滴構築フェーズP2中、パルスの数をカウントする。換言すれば、コントローラ195は、液滴構築フェーズP2中に使用されるべきパルスの数Nと、パルスの周波数とを決定し、持続時間TDFで、所定数Nのパルスを続く液滴移行フェーズP1前に実施できるように、システムの動作を制御する。他の例示的な実施形態では、コントローラ195は、溶接動作への出力エネルギーに基づいて、構築フェーズP2の持続時間TDFを制御することができる。すなわち、コントローラ195は、構築フェーズP2中、プロセスに入力されるべき所望のエネルギー量を決定することができ、フェーズP2中、パルスと共に所定量のエネルギーが出力されることを保証するように、波形出力を制御し、次に、所与のフェーズP2中、所定量のエネルギー(例えば、ジュール)に達した場合、続く移行パルス3010をトリガーすることができる。他の例示的な実施形態では、移行前に、所望の液滴サイズ及び安定性が達成されることを保証するために、他の制御方法論が使用可能である。
本発明の例示的な実施形態では、構築フェーズの持続時間TDFは、移行フェーズP1の持続時間の1.5〜5倍の範囲である。
上記で確認されたように、幾つかの溶接動作中、液滴構築フェーズP2中、短絡回路状況が存在し得る可能性があり、これは、液滴を時期尚早に移行させることがある(構築フェーズP2中)。そのような状況では、本発明の実施形態は、短絡クリア機能を開始して、短絡状況を破り液滴構築フェーズP2を再開して、適切な液滴が移行前に形成されることを保証する。
図30は、被覆材料を溶接するために、本発明の実施形態と併用することができる別の例示的な波形/溶接プロセスを示す。図29に示される波形のように、図30での実施形態は、本明細書に記載されるような追加の熱線消耗材料あり又はなしで使用することができ、本明細書に更に考察されるように、所望の多孔性及びスパッタ性能を提供することができる。図29のように、図30に示される波形は、例示であることが意図される。以下の考察では、電圧3200及び電流3100波形が一般に、液滴構築フェーズ及び移行フェーズが考察される際に、一緒に考察され、必要に応じてのみ別個に考察されることに留意されたい。互いに対応する各波形3100/3200の部分が、同様の番号(例えば、3101及び3201等)を有して、相関付けを容易にすることができる。
図30は、本発明の例示的な実施形態での電流波形3100及び電圧波形3200の両方を示し、それと同様に、消耗材料2110からの液滴Dの移行フェーズも示される。図29での波形3000のように、図30の波形もAC波形である。波形3000のように、波形3100も、溶接動作中、加工物の任意の被覆(亜鉛等)の相互作用を制御するのを支援する。示されるように、波形3100は、負低電流レベル3101/3201を開始する。この電流レベルは、15〜100アンペアの範囲であり得、動作に使用されているワイヤ供給速度に基づくことができる。例示的な実施形態では、電流レベルは、温度を加工物被覆 − 例えば、亜鉛 − の気化温度未満に保つように選択される。これは、電流が負極状態にあるため、支援される。特に、加工物の代わりに電極2110上に陰極点を有することにより、陽極点は静止し(加工物上に)、温度は、被覆が気化しないように十分低く保つことができる。ポイントAにおいて、被制御ランプフェーズ3103/3203中、電流は増大されて、電極2110の先端部をより迅速に溶融させ、液滴Dを生成する。しかし、電流は、被制御レートで増大されて、アークの陰極点が制御された方法で電極2110を登ることを保証する。ランプレートが高すぎる場合、陰極点は不安定になり得る。例示的な実施形態では、被制御ランプフェーズ3103中、電流ランプレートは、25〜100アンペア/msの範囲である。このフェーズ中、陰極点は、制御された方法で移動し、したがって、アークの電流密度を制御された状態に保つ。例示的な実施形態では、ランプレートは、ワイヤ供給速度及び電極タイプ(電極材料、直径等を組合せて又は別個に含むことができる)等のユーザ入力情報に基づいて、電源のコントローラによって決定することができる。
アークが液滴Dを包むと(ポイントBにおいて)、電流は、負ピーク電流レベル3105/3205までより迅速に上昇することができる。被制御ランプレート部分3103からより高い電流ランプレート(ポイントBにおいて)への遷移は、様々な方法で決定することができる。例示的な実施形態では、電源は、WFS、電極情報等のユーザ入力データに基づいて制御されることにより設定される所定の時間期間にわたり、被制御ランプレートを維持することができる。したがって、持続時間が切れたとき、電流ランプレートは、フェーズ3103中のランプレートからより高いランプレート(電源の可能な限り最高ランプレートであり得る)に変更される。他の例示的な実施形態では、電源は、所定の電圧レベルを使用することができ、この電圧レベルに達したときに、電源は、フェーズ3103中のランプレートからより高いランプレートに変更する。ここでも、この所定の電圧閾値は、WFS、電極タイプ等のユーザ入力データに基づいて、電源によって決定される。例示的な実施形態では、電圧閾値は、アークが、2110電極上に形成された液滴Dを完全に囲んでいること − すなわち、アークの少なくとも幾らかが、液滴Dの上方で電極2110に接触していることが理解される − 電圧レベルであるように決定される。ピーク電流レベル3105は、所望の液滴サイズを提供する電流レベルであり、例示的な実施形態では、150〜400アンペアの範囲であり得る。例示的な実施形態では、ピーク電流レベル3105は、ワイヤ供給速度及び電極タイプ等のユーザ入力情報に基づいて、電源のコントローラによって決定することができる。
波形3100の第1の3つのフェーズ中、電流が負に保たれ、それにより、陽極点(加工物上)が比較的安定しており、加工物上のパドルに合焦されることに留意する。このため、アークは、パドルの外側、例えば、熱影響ゾーンにある任意の新しい被覆(例えば、亜鉛)を気化しない傾向を有する。したがって、新たに気化した被覆の何れも生成されず(又はその限られた量が生成され)、パドルへのその気化した材料を最小化する。
負ピーク電流フェーズ3105中、アークの陰極点は液滴Dの上方を登り続ける。しかし、陰極点が液滴Dの上方を高く登りすぎる場合、アークは不安定になり得る。これが発生しないようにするために、ポイントCにおいて、電流は、第1の正電流レベル3107に達するまで、負から正に迅速に変更される。ランプ部分3103の持続時間のように、負ピーク部分3105の持続時間も、ユーザ入力情報に基づいて設定される所定の持続時間又は所定の電圧閾値によって決定することができる。何れの場合でも、ピーク3105の持続時間は、陰極点が電極2110上の液滴Dよりもあまり高くないように選択されるべきである。点が高すぎる場合、アークは不安定になり、パドル縁部近くで任意の被覆を気化し始める。十分な正電流レベル3107に切り換えることにより、アークの電流密度は、パドル内に合焦して維持される。すなわち、正電流を用いて、電流密度はここで、電極2110を通り、電極2110がネックダウン開始し、したがって、アークピンチ力を最大にする。負ピーク3105から第1の正電流レベルへの遷移は、陰極点(ここでは、加工物に移っている)がパドル内に留まることを保証するように迅速に行われるべきである。本発明の例示的な実施形態では、第1の正電流レベル3107は、50〜200アンペアの範囲の電流レベルであり、幾つかの実施形態では、75〜150アンペアの範囲である。第1の電流レベルは、WFS、電極タイプ(材料及び/又は直径等を含む)等の溶接プロセスに関連するユーザ入力情報に基づいて、電源コントローラによって予め決定することができる。
電流が第1の正電流レベル3107に達すると、電流は正電流ランプフェーズ3109に入り、このフェーズでは、電流は正ピーク電流レベル3111に上げられる。ここでも、負ランプフェーズ3103のように、正ランプフェーズも、例示的な実施形態では、アークの制御された増大及び電極2110の制御された溶融を提供するように制御される。本明細書に記載される他の例示的な実施形態と同様に、電極2110は、中実又は有芯電極タイプであり得る。有芯電極タイプを使用する場合(中実であるか、それともフラックス有芯であるかに関係なく)、被制御電流ランプレート(セクション3103及び3109の両方)は、芯内の要素が過熱されないようにすることを支援し、過熱は溶接品質を損ない得る。本発明の例示的な実施形態では、正の被制御部分3109のランプレートは、負の部分3103のランプレートよりも高速であり、300〜600アンペア/msの範囲であり得る。更なる例示的な実施形態では、ランプレートは400〜500アンペア/msの範囲である。ランプレートは、WFS及び電極を含め、溶接動作に関する入力データに基づいて選択することができる。電流がピークレベル3111に達すると、その増大は停止する。ピークレベル3111は、液滴Dがパドルへの移行に十分なサイズに達し、液滴を分離させるのに十分なピンチ力を生成することを保証する電流レベルであり電流レベルである。例示的な実施形態では、ピーク電流レベル3111は、ピークレベル3105よりも高いピークレベルを有する。例示的な実施形態では、ピーク電流レベル3111は、300〜600アンペアの範囲であり、WFS、電極情報等のユーザ入力溶接データに基づいて選択される。波形のこのフェーズ中、電極2110は、ネックダウンし、波形液滴Dは電極2110から分離し始める。ピーク電流3111は、図30に示されるように、ポイントDまで、持続時間にわたりピークレベルに維持される。例示的な実施形態では、ピーク電流3111の持続時間は、液滴テザー(又はネック)が、液滴Dの移行が生じる可能性が高くなるのに十分に小さくなるまで、維持される。この持続時間は、所定の持続時間(ユーザ入力情報に基づく)を使用して、又はアークのdv/dtをモニタすることによって決定することができ、電圧変化率が所定の閾値に達した場合、液滴が十分に形成され、電流をピークからランプダウンし始めることができると判断される。各実施形態では、持続時間又は電圧変化率(dv/dt)の何れかは、WFS、電極等を含むユーザ入力情報に基づいて、電源コントローラによって設定することができる。示されるように、所定の閾値(持続時間であれ、dv/dtであれ、関係なく)に達すると、ポイントDにおいて、電流は、電流が極性切り換え電流レベル3113に達するまで、被制御ランプダウンフェーズ3112に入る。各実施形態において、所定の持続時間又は所定のdv/dtが、液滴Dの移行が生じる可能性が高いような閾値に設定されることに留意する。例示的な実施形態では、この閾値は、電極2110への液滴DのテザーTが、電極2110の直径の75%以下であるように設定される。他の例示的な実施形態では、液滴のテザーTは、電極2110の直径の50%未満である。
電流のランプダウン3112中、ランプダウンレートは、アークが安定したままであり、パドル上の陰極点がパドルに相対してあまり移動しないように、制御される。幾つかの例示的な実施形態では、このランプダウンレートは、フェーズ3109のランプアップレートと同じである。しかし、他の例示的な実施形態では、ランプダウンレートは、より低速又はより高速であり得る。ランプダウンレートは、WFS、電極タイプ等を含むユーザ入力データに基づいて決定することができる。例示的な実施形態では、ランプダウンレートは300〜1000アンペア/msの範囲である。他の例示的な実施形態では、ランプダウンレートは、400〜750アンペア/msの範囲である。
示されるように、電流は、極性切り換え電流レベル3113までランプダウンされ、極性切り換え電流レベルは、100〜200アンペアの範囲であり得、他の実施形態では、75〜150アンペアの範囲であり得る。幾つかの例示的な実施形態では、極性切り換え電流レベル3113は、ポイント3107と同じ電流レベルであり、他の実施形態では、異なることができる。例示的な実施形態では、WFS、電極タイプ等のプロセスに関するユーザ入力に基づいて予め決定される電流レベル設定点である。この電流レベルに達すると、電流は、可能な限り迅速に負極テールアウトレベル3115に切り換えられる。この切り換えは、電流レベルがあまりに長くあまりに低い状態に留まる場合、パドル上の陰極点がさまよい始め、パドルの縁部に近づき得るため、迅速に行われるべきである。これは、追加の被覆を気化させ、この気化は望ましくない。迅速に負極に切り換えることにより、液滴Dが電極2110からの分離点に近づくにつれて、元の電極2110に移動する。しかし、このとき、電流は液滴Dを迂回せず、なお液滴Dを流れている。これにより、液滴Dの安定した移行が可能である。例示的な実施形態では、負極テールアウトレベル3115は、負低電流レベル3101(バックグラウンドレベルと呼ぶこともできる)よりも高い(大きさで)電流を有する。次に、電流はランプダウンして、スパッタ事象なしの液滴Dの移行を支援する。図30に示される実施形態では、液滴Dは、短絡回路移行を介して移行し、この場合、液滴Dは、電極2110になお接続されていながら、パドルに接触する。この移行方法は、非常に高速な移行方法を提供することができる。しかし、他の例示的な実施形態では、液滴Dは、短絡(物理的接続)が生成されない「自由飛行」移行を介して移行することができる。短絡回路移行方法論の使用が、最短アーク長を利用し、ポイント3117において、電流を低減するか、又は遮断して、液滴が切り離される際にスパッタ事象が生じないようにすることに留意する。短絡回路移行方法を使用する本発明の例示的な実施形態では、パドルの表面張力は、液滴Dを電極2110から引っ張るのに十分なものであるべきである。そのような実施形態では、電流は、低レベル又はバックグラウンドレベル(3101)に低減するのみでよく遮断する必要はない。しかし、他の例示的な実施形態では、短絡クリアルーチンを使用して、液滴Dが電極2110から十分に分離されることを保証することができる。そのような短絡クリアルーチンは、既知であり、本明細書において詳述する必要はない。幾つかの例示的な実施形態では、電極2110が短絡状態(時間3119中)である持続時間を測定することができる。短絡の持続時間が所定の持続時間を超える場合、表面張力が、液滴を引っ張り落とすのに十分ではないと判断され、したがって、短絡クリアルーチンが開始される(例えば、電流は、液滴をピンチオフするように制御することができる)が、短絡が所定の持続時間以内にクリアされる場合、短絡クリア機能は必要ない。例示的な実施形態では、短絡持続時間閾値は、0.5〜1msの範囲に設定される。短絡持続時間閾値は、WFS、電極タイプ等のユーザ入力パラメータに基づいて設定することができる。例示的な実施形態では、短絡クリアルーチンが必要ない(液滴移行が容易に行われる)場合、ポイント3121において、電流はバックグラウンドレベル3101に戻ることができる。必要な場合、短絡クリア又はピンチルーチンは、ポイント3121において開始されて、適切な液滴移行を保証する。図30での電圧波形及び電流波形が、1つの液滴の移行のみを示すことに留意する。
上述した例示的な実施形態の使用を通して、それと同様の移動速度は、純粋なDC+波形を有するが、従来のプロセスよりもはるかに遅いワイヤ供給速度を有する。この性能改善は、記載されるスパッタ低減及び継手多孔性の低減と共に達成される。本発明の実施形態では、任意の被覆(例えば、亜鉛)を制御された方法で焼き払うことができ、焼き払われた亜鉛がパドルに吸収されることを最小に抑える。例えば、本発明の実施形態は、380〜630インチ/分の範囲のワイヤ供給速度を使用しながら、40〜60インチ/分の範囲の移動速度を達成することができる。更に、上述したように、例示的な実施形態は、中実及び有芯ワイヤ(金属又はフラックス)の両方と併用することができる。
先に説明したように、本発明の実施形態では、低い多孔性及びスパッタを有するが、許容可能な入熱で高速で達成することができる、被覆材料(例えば、亜鉛めっき鋼)に溶接を生成することができる。すなわち、図20に示されるものと同様の例示的なシステムは、上述した任意の例示的な波形と併用されて、既知のシステムを上回る大幅に改善された性能を達成することができる。例えば、本発明の実施形態は、10〜150インチ/分の範囲の速度で溶接しながら、上述した多孔性及びスパッタを達成することができる。更に例示的な実施形態では、溶接速度は30〜80ipmの範囲である。
更に、本発明の幾つかの例示的な実施形態では、図20のシステムを使用することができるが、熱線消耗材料140及び熱線電源170はない。すなわち、図29又は図30に示される波形の例示的な実施形態は、一般的に従来通りの溶接システムと併用されて、被覆材料の、従来のシステムを上回る改善された溶接性能を提供することができる。これは、本発明の実施形態では、パドルの固化前に、いかなる気化被覆(例えば、亜鉛)の排出が可能なためである。
本発明の更なる例示的な実施形態では、ワイヤ140及び電極2110のうちの少なくとも一方は、溶融パドルの溶融温度特性を変更して、気化したいかなる被覆材料の排出も更に可能にするように、強化される。特に、消耗材料140/2110の何れか一方又は両方は、追加量のAl、C、及びSiの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを用いて強化される。例えば、幾つかの実施形態では、熱線140のみが強化された消耗材料であり、一方、他の実施形態では、アーク電極2110のみが強化され、更に他の実施形態では、両方を強化することができる。Al、C、及び/又はSiを用いて消耗材料のうちの少なくとも一方の化学的組成を強化することにより、溶接パドルの溶融点が低減し、パドルの溶融範囲が増大する。したがって、強化された消耗材料の例示的な実施形態の使用は、溶接パドルが加工物115上で固化するためにかかる時間を延長する。固化時間を延長することにより、本発明の実施形態は、任意の気化した被覆が溶接パドルから排出される更なる時間を提供する。実際には、本明細書に記載される強化された消耗材料の例示的な実施形態は、本明細書に記載される任意の例示的なシステムと併用することができる。例えば、強化された消耗材料は、図1、図14、図17、及び図20において考察されたものと同様の任意の例示的なシステム及び本明細書において意図される任意の他のシステムと併せて使用することができるか、又は溶接パドルの固化の遅延が望ましい場合、使用することができる。例えば、本発明の例示的な実施形態は、溶接パドルが、1400〜1480℃の範囲の温度で95%固化に達するように、溶接パドルの溶融温度を低減することができ、ここで、溶接パドルは、被覆軟鉄である加工物内に作られる。実施形態では、被覆は亜鉛であり得る。これは、パドルが1520〜1550℃の範囲の温度で95%固化に達することができる従来の消耗材料よりも顕著に低い。したがって、本発明の実施形態では、任意の気化した被覆材料が排出されるのにより多くの時間が可能である − 多孔性が低減する。
強化された消耗材料140/2110は、物理的に、既知の消耗材料と同様にして構築することができる。すなわち、中実又は有芯(フラックス又は金属)構造を有することができる。幾つかの例示的な実施形態では、追加されるAl、C、及び/又はSiは、消耗材料の組成に一体的に追加される。すなわち、追加されるAl、C、及び/又はSiは、中実ワイヤ組成物、金属外装組成物、又は任意のフラックス若しくは金属芯と一体であり得る。他の例示的な実施形態では、追加されるAl、C、及び/又はSiは、消耗材料上の外層として消耗材料に追加することができる。すなわち、Al、C、及びSiの任意の1つ又は組合せを含む外部被覆又は外層を消耗材料140/2110に適用することができ、消耗材料は、この追加された材料をパドルに堆積させて、パドルに所望の溶融特性を達成する。例えば、蒸着プロセス(又は同様)を介して、グラファイトの被覆を消耗材料に適用して、追加量の炭素(C)を提供することができる。この炭素は、パドルに影響を及ぼし、パドルの溶融温度を低減すると共に、上述したような溶融範囲を広げることができる。更に、Al及びSiは両方とも、蒸着プロセス(又は同様)を介して追加されて、消耗材料上に被覆を提供することができる。しかし、被覆消耗材料が使用される場合、消耗材料を熱線消耗材料(例えば、140 − 図20)として使用して、追加の材料がパドル内に十分に堆積されることを保証することが望ましいことに留意する。強化された消耗材料が被覆され、アーク電極(2110)として使用される場合、アークは、パドルに入る前に、被覆を気化させることができる。
上述したように、例示的な強化された消耗材料は、Si、Al、及びCのうちの少なくとも1つ又は組合せを有して、パドルの溶融特性を改善する。特に、例示的な実施形態は、消耗材料の0〜5重量%の範囲のアルミニウム(Al)含有量、消耗材料の0〜0.5重量%の範囲の炭素(C)含有量、及び/又は消耗材料の0〜2重量%の範囲のケイ素(Si)含有量を有することができる。更なる例示的な実施形態では、消耗材料は、消耗材料の1〜5重量%の範囲のアルミニウム(Al)含有量、消耗材料の0.001〜0.5重量%の範囲の炭素(C)含有量、及び/又は消耗材料の0.1〜2重量%の範囲のケイ素(Si)含有量を有することができる。多くの例示的な実施形態が、所望の量で組み合わせられた上述した元素のうちの少なくとも2つを有して、パドルの所望の溶融プロファイルを達成し得ることに留意されたい。当然ながら、これらの消耗材料は、他の元素を有して、所望の溶接組成及び特性を提供する。そのような元素及び組成物は、一般に既知であり、詳述する必要はない。すなわち、本明細書で考察される消耗材料の強化は、亜鉛めっき鋼製品等の被覆鋼の継手に使用される多くの異なるタイプの消耗材料に適用することができる。例えば、そのような消耗材料の一例は、消耗材料の0.05〜0.4重量%の範囲のC、0.6〜2.1重量%の範囲のSi、及び消耗材料の0.35〜1.5重量%の範囲のセリウム(Ce)を有することができ、ここで、C、Si、及びCeの組合せは、消耗材料の1.0〜4重量%の範囲である。セリウムは、ケイ素及び炭素が鉄と共に溶液中に留まることを間接的に可能にし、したがって、パドルの溶融点を低減する脱酸素剤である。他の例及び組合せが本明細書において意図され、上記例は例示であることが意図される。例えば、CONSUMABLE FOR SPECIALTY COATED METALSという名称の係属中の米国特許出願第13/798,398号明細書において考察されるものと同様に構築された例示的な消耗材料が、本発明の実施形態と併用されて、所望のパドル溶融プロファイルを達成することができる。この出願は、全体的に、特に、被覆材料の継手に使用することができる消耗材料に関して、参照により本明細書に援用される。
上で説明したように、本明細書で考察される例示的な強化された消耗材料は、溶接パドル溶融プロファイルの改善を実現して、被覆材料の溶接性能の改善を可能にする溶接パドル組成を提供する。以下の考察は、本明細書において意図される例示的な強化された消耗材料によって生成される非希釈溶接金属組成物の特性に関する。
CとSiとの組合せ(消耗材料内で)を使用して、パドルの溶融温度を低減する、強化された消耗材料の第1の例示的な実施形態では、消耗材料は、非希釈溶融金属の0.05〜0.3重量%の範囲のC及び非希釈溶融金属の0.6〜2.0重量%の範囲のSiを有する非希釈溶融金属(非希釈溶着物と呼ぶこともできる)を提供し、ここで、Alは消耗材料又は堆積物に意図的に追加されない(したがって、Alが存在するという点では、Alはごく微量のみである)。したがって、消耗材料の組成(すなわち、C及びSiの量)は、上述した範囲のC及びSiのそれぞれを提供するように選択される。当然ながら、非希釈溶接金属は、他の元素及び化合物を有し、これらは一般に既知であり、本明細書で考察する必要はない。これらの範囲を用いて、非希釈溶接金属は、溶接強度又は所望の溶接特性を犠牲にせずに、改善された溶融特性を有する。更なる例示的な実施形態では、Cは、非希釈溶融金属の0.1〜0.3重量%の範囲であり、Siは、非希釈溶融金属の1.0〜2.0重量%の範囲である。そのような例示的な実施形態は、セリウム(Ce)を含むこともできる。上述したように、Ceは、ケイ素及び炭素が溶液中に留まることを間接的に可能にし、したがって、溶接パドルの溶融温度を下げることを支援する脱酸素剤である。そのような実施形態では、Ceは、非希釈溶融金属の0.35〜1.5重量%の範囲である。
Al及びSiの組合せ(消耗材料内で)を使用して、パドルの溶融温度を低減する更なる例示的な実施形態では、消耗材料は、非希釈溶融金属の2〜5重量%の範囲のAl及び非希釈溶融金属の1.0〜2.0重量%の範囲のSiを有する非希釈溶融金属を提供する。これらの実施形態では、消耗材料は、消耗材料からの非希釈溶融金属にCは追加されないか、又はわずかに追加されるようなものであり得る。すなわち、そのような実施形態では、非希釈溶融金属中のCは、非希釈溶融金属の0〜0.06重量%の範囲であり得、一方、他の実施形態では、Cは0〜0.03重量%の範囲であり得る。ここでも、Cが消耗材料によって追加されない実施形態では、Cは微量で存在することができる。ここでも、消耗材料組成(すなわち、Al及びSiの量)は、上述した範囲のAl及びSiのそれぞれを提供するように選択される。当然ながら、非希釈溶接金属は、他の元素及び化合物を有し、これらは一般に既知であり、本明細書で考察する必要はない。これらの範囲を用いて、非希釈溶接金属は、溶接強度又は所望の溶接特性を犠牲にせずに、改善された溶融特性を有する。更なる例示的な実施形態では、Alは、非希釈溶融金属の3〜5重量%の範囲であり、Siは、非希釈溶融金属の1.5〜2.0重量%の範囲である。
Al及びCの組合せ(消耗材料内で)を使用して、パドルの溶融温度を低減する追加の例示的な実施形態では、消耗材料は、非希釈溶融金属の1〜5重量%の範囲のAl及び非希釈溶融金属の0.1〜0.3重量%の範囲のCを有する非希釈溶融金属を提供する。これらの実施形態では、消耗材料は、消耗材料からの非希釈溶融金属にSiは追加されないか、又はわずかに追加されるようなものであり得る。すなわち、そのような実施形態では、非希釈溶融金属中のSiは、非希釈溶融金属の0.01〜0.25重量%の範囲であり得る。したがって、いくらかのSiが消耗材料中に存在することができる。ここでも、Siが消耗材料によって追加されない実施形態では、Siは微量で存在することができる。ここでも、消耗材料組成(すなわち、Al及びCの量)は、上述した範囲のAl及びCのそれぞれを提供するように選択される。当然ながら、非希釈溶接金属は、他の元素及び化合物を有し、これらは一般に既知であり、本明細書で考察する必要はない。これらの範囲を用いて、非希釈溶接金属は、溶接強度又は所望の溶接特性を犠牲にせずに、改善された溶融特性を有する。更なる例示的な実施形態では、Alは、非希釈溶融金属の1.5〜4重量%の範囲であり、Cは、非希釈溶融金属の0.2〜0.3重量%の範囲である。
上述したように、本明細書で考察されるシステム及び/又は消耗材料の実施形態は、被覆加工物、例えば、亜鉛めっき加工物に対して改善されたスパッタ及び多孔性性能を提供することができる。この改善された性能は、加工物の溶接面上に少なくとも20μm厚である亜鉛めっき被覆を有する加工物で得ることができる。当然ながら、本実施形態の実施形態は、20μmよりもはるかに厚い被覆を有する加工物で使用することができる。すなわち、本発明の実施形態は、被覆物を溶接する場合、既知の溶接システム、方法、及び消耗材料を上回る改善された多孔度で非希釈溶着物を提供することができる。例えば、例示的な消耗材料(上述)は、単独で又は本明細書で考察されるシステム及び方法と結合して、本願において上述した多孔性及びスパッタ性能を達成することができる。更に、例示的なシステムが50インチ/分のレートの移動速度及び4〜6.5lb/時の範囲の消耗材料堆積速度を有する場合、0.5〜3の範囲の多孔度を達成することができる。同じ例示的な消耗材料は、移動速度40インチ/分であり、堆積速度4〜6.5lb/時である場合、0〜1の範囲の多孔度を提供することができる。本明細書で使用される場合、多孔度は、単位長(インチ)にわたり0.5mmよりも大きい有効径を有する非希釈溶融金属に存在する孔の数である。すなわち、多孔度2は、非希釈溶接金属に沿って、1インチ当たり平均で2個の孔 − 0.5mmよりも大きい有効径を有する − があることを意味する。これは、従来のシステム、方法、及び/又は消耗材料によって得ることができない多孔度である。本明細書で考察される更なる例示的な消耗材料は、移動速度50インチ/分であり、入熱が4〜8kJ/インチの範囲である場合、多孔度0.5〜3を提供し、移動速度40インチ/分であり、入熱が4〜8kJ/インチの範囲である場合、多孔度0〜1を提供することができる。したがって、本発明の実施形態は、溶接の一体性又は特性を犠牲にせずに、低い入熱レベル及び高速溶接で、被覆加工物に対して顕著に改善された多孔性性能を提供することができる。したがって、本発明の実施形態は、多孔性又はスパッタがわずかであるか、ない状態で、広範囲の入熱にわたり高移動速度で被覆材料を溶接できるようにする溶接システム、方法、及び消耗材料を提供する。既知のシステムでは、低多孔性を達成するために、プロセスは、高い入熱(パドル冷却を遅くさせるために)でゆっくりと処理する必要があり、これは過度の入熱に繋がる。この過度の入熱は、加工物(特に薄い加工物)を破損させ、過度の量の被覆を気化させる(溶接近傍)可能性があり、これは腐食を助長する。これらの問題は、本発明の実施形態を用いて回避される。
本明細書で考察される消耗材料は、従来の溶接用途(例えば、GMAW)と併用することができ、大きく改善された性能を提供することができると共に、本明細書で考察される例示的なシステム及び方法と併用されて、被覆物を溶接する従来の方法を上回る追加の性能改善を提供することができる。
本発明について、特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱せずに、様々な変更形態をなし得、均等物で置換し得ることが当業者には理解される。加えて、特定の状況又は材料に適合するように、範囲から逸脱せずに、本発明の教示に対する多くの変更形態をなし得る。したがって、本発明が、開示される特定の実施形態に限定されず、本発明が、本明細書で考察される範囲内にある全ての実施形態を含むことが意図される。