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JP6799836B1 - タモギタケ子実体の生産方法、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度の向上方法およびエルゴチオネイン含有組成物の製造方法 - Google Patents

タモギタケ子実体の生産方法、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度の向上方法およびエルゴチオネイン含有組成物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を効率的に生産する技術、および、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度を向上させる技術、ならびに、エルゴチオネイン含有組成物を製造する技術を提供する。【解決手段】培地を充填した第1の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程と、タモギタケ子実体の発生に使用した既使用培地を前記第1の栽培容器から第2の栽培容器に詰め替える工程と、前記既使用培地を充填した第2の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程とを有する、タモギタケ子実体の生産方法。【選択図】図2

Description

本発明は、タモギタケ子実体を生産する方法、および、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度を向上させる方法、ならびに、エルゴチオネイン含有組成物を製造する方法に関する。
タモギタケ(Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus)はヒラタケ科ヒラタケ属の木材腐朽菌であり、その子実体は鮮やかな黄色の傘を有していて、食用とされる。天然では、ニレ類やカエデ類等の広葉樹の枯木、倒木および伐根に自生するが、商業生産では、菌床によるビン栽培が主流となっている(非特許文献1)。
タモギタケ子実体は、食味が良いことに加えて、β−Dグルカンやマンニトール、グルコシルセラミド、エルゴチオネインなど複数の機能性成分を含有している。特にエルゴチオネインは、ビタミンEの7000倍という高い抗酸化作用を持つ親水性アミノ酸であり、その他に、腸内での抗菌物質の産生促進作用や(特許文献1)、免疫応答活性化作用(特許文献2)をも有することなどから、近年注目されている機能性成分である。エルゴチオネインは、キノコ類の中でもタモギタケにおいて含有量が顕著に多いことが報告されている(特許文献3、非特許文献2)。
特許第5088911号公報 特許第6121597号公報 特許第4865083号公報
標準技術集、きのこの栽培方法、2−1−1−2 タモギタケ(Pleurotus cornucopiae var. citrinopileatus)、[online]、[掲載日:2006年5月12日]、[検索日:2019年7月14日]、<URL: http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10342974/www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kinoko/2-1-1.pdf#2> 株式会社スリービー、たもぎ茸、機能性&旨み成分、2.抗酸化成分 エルゴチオネイン、[online]、[検索日:2019年7月14日]、<URL: https://www.three-b.co.jp/tamogidake/kinousei/index.html>
本発明者らは、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体をより効率的に生産できれば、付加価値の高いタモギタケ子実体の生産性向上や生産コストの低下に寄与できると考えた。また、それにより、タモギタケ子実体を原料として製造するエルゴチオネイン含有組成物の生産性向上や製造コストの低下にもつながることから、エルゴチオネインの普及や機能性評価等の研究開発活動の促進に寄与できると考えた。さらに、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度を向上できれば、タモギタケ子実体の付加価値向上や消費拡大に寄与できると考えた。
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を効率的に生産する技術、および、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度を向上させる技術、ならびに、それにより得られたタモギタケ子実体を用いてエルゴチオネイン含有組成物を製造する技術を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、タモギタケ子実体の発生に既に使用された培地において再度の発生を行うと、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体が得られることを見出した。また、前記再度の発生を、前回の発生とは異なる栽培容器で行うと、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を、高い収量で効率よく生産できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
(1)本発明に係るタモギタケ子実体の生産方法は、培地を充填した第1の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程と、タモギタケ子実体の発生に使用した既使用培地を前記第1の栽培容器から第2の栽培容器に詰め替える工程と、前記既使用培地を充填した第2の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程とを有する。
(2)本発明に係る生産方法においては、第1の栽培容器は栽培ビンとし、第2の栽培容器は栽培袋とすることができる。
(3)本発明に係る生産方法は、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を生産する方法であってよい。
(4)本発明において、既使用培地は、タモギタケ子実体の発生後に新たな培地材料を追加していない培地であってよい。
(5)本発明において、既使用培地は、タモギタケ子実体の発生後に殺菌処理を施していない培地であってよい。
(6)本発明に係るタモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度の向上方法は、タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地を充填した栽培容器において、再度、タモギタケ子実体を発生させる工程を有する。
(7)本発明に係るエルゴチオネイン含有組成物の製造方法は、タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地で、再度、発生させたタモギタケ子実体からエルゴチオネインを抽出する工程を有する。
本発明によれば、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度を向上することができる。また、本発明によれば、タモギタケ子実体を効率的に生産することができる。さらに、本発明によれば、エルゴチオネイン含有組成物を効率的に製造することができる。これらのことから、本発明によれば、タモギタケ子実体の付加価値向上や消費拡大、生産性向上や生産コストの低下、あるいは、エルゴチオネイン含有組成物の生産性向上や製造コストの低下、それによるエルゴチオネインの普及や機能性評価等の研究開発活動の促進に寄与することができる。
栽培ビンで1次発生させたタモギタケ子実体の、収穫直前の様子を示す写真である。 左側は、タモギタケ子実体を収穫した後の栽培ビンを示す写真である。右側は、既使用培地を詰め込んだ栽培袋を示す写真である。 栽培袋で2次発生させたタモギタケ子実体の、収穫直前の様子を示す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明は、タモギタケ子実体の生産方法を提供する。本生産方法は、下記(a)〜(c)の工程を有する。
(a)培地を充填した第1の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程、
(b)タモギタケ子実体の発生に使用した既使用培地を前記第1の栽培容器から第2の栽培容器に詰め替える工程、
(c)前記既使用培地を充填した第2の栽培容器においてタモギタケ子実体を発生させる工程。
本発明において「既使用培地」とは、タモギタケ子実体の菌床栽培に用いられる培地であって、1回以上の子実体発生に使用された培地をいう。
すなわち、本生産方法は、既使用培地を別の栽培容器に詰め替えて、再度、タモギタケ子実体を発生させることを特徴としている。一方の栽培容器から既使用培地を掻き出して他方の栽培容器に詰め替えることにより、当該培地中に生えた菌糸が断裂されると予想される。しかしながら、意外なことに、後述する実施例で示すように、この詰め替えにより子実体の発生が促され、高い収率が達成される。
新たに調製した培地で子実体を発生させることを「1次発生」といい、1次発生に使用した培地で子実体を発生させることを「2次発生」、2次発生に使用した培地で子実体を発生させることを「3次発生」・・・(以下同様)という場合において、工程(a)は1次発生でもよく、2次発生以上であってもよい。同様に、工程(c)も、工程(a)で用いられた既使用培地で子実体発生を行うものである限り、2次発生でもよく、3次発生以上であってもよい。
本発明において、培地は、タモギタケ子実体の栽培に通常用いられるものであってよい。すなわち、培地の主材料としては、おが粉と栄養材とが挙げられる。おが粉は、広葉樹および針葉樹のいずれも使用可能である。針葉樹のおが粉を用いる場合には、散水堆積処理を行うことが望ましい。また、おが粉の代替材料として、バガスやビートパルプ等の農業および食品製造副産物、クマイザサ等の森林未利用資源も活用可能である。栄養材としては、米ぬかやフスマを例示することができる。培地には、市販の菌糸活性剤など、各種添加物を添加してもよい。本発明においては、培地を構成する各成分ないし各物質を「培地材料」という場合がある。
培地調製も定法に従って行うことができる。具体的には、下記の方法を例示することができる。すなわち、おが粉と栄養材を充分に混合し培地水分が60〜65%程度になるように調整する。栄養材は、800〜850mL容量の栽培容器(栽培ビンや栽培袋など)あたり40〜85g(絶乾重量)添加する。なお、針葉樹のおが粉を用いる場合には、消石灰を1容器あたり0.5〜1g程度添加したほうが良い。調製した培地は、栽培容器に適当量充填し接種孔を開けた上で、常圧あるいは高圧による殺菌処理を行う。
栽培容器は、栽培ビンや栽培袋など、キノコの栽培で通常用いられる各種の容器を用いることができる。栽培ビンおよび栽培袋のいずれも、キノコ栽培用として市販されているもの(例えば、耐熱性のポリプロピレン製栽培ビンや、通気孔フィルターを備えたポリエチレン製栽培袋やポリプロピレン製栽培袋など)を用いることができる。本生産方法においては、第1の栽培容器と第2の栽培容器とは、例えば、いずれも栽培ビンとするといったように同じ形態のものであってもよく、第1の栽培容器は栽培ビンとし、第2の栽培容器は栽培袋とするといったように、異なる形態としてもよい。
培地におけるタモギタケ子実体の発生も、従来法に従って行うことができる。すなわち、殺菌処理後の培地を放冷した後に種菌を接種する。接種後、培養工程、芽出し・生育工程を経て子実体を収穫する。なお、既使用培地におけるタモギタケ子実体の発生では、培地材料の追加、殺菌処理および種菌の接種のいずれも必須ではない。培地材料の追加や殺菌処理、あるいは種菌接種を省略することにより、収穫までの日数の短縮や生産コストの低減といった効果を得ることができる。
培養工程は、菌糸を培地全体に蔓延させる工程である。種菌を接種後、温度22〜26℃前後、相対湿度50〜70%程度、炭酸ガス濃度3000ppm以下、暗条件下で培養する方法を例示することができる。
芽出し・生育工程は、子実体原基を形成させ、それを生育する工程である。温度16〜24℃、相対湿度80〜90%、炭酸ガス濃度1500ppm以下、明条件下で静置する方法を例示することができる。子実体の傘部が円形かつ中央がくぼんで縁が巻き込み、傘直径が2〜3cmになったら収穫適期である。
次に、本発明は、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度の向上方法を提供する。本向上方法は、タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地を充填した栽培容器において、再度、タモギタケ子実体を発生させる工程を有する。子実体発生に1回以上使用された培地は、比較的栄養素に乏しいと考えられる。しかしながら、意外なことに、後述する実施例で示すように、この比較的栄養素に乏しい既使用培地での培養により、エルゴチオネイン濃度の向上が達成される。
本発明において、「エルゴチオネイン濃度」とは、タモギタケ子実体が含有しているエルゴチオネインの濃度をいう。エルゴチオネイン濃度は、後述する実施例で示すように、タモギタケ子実体の乾燥物の抽出液を測定試料として、HPLCに供することにより測定することができる。
エルゴチオネイン濃度が向上したか否かの比較対象としては、新たに調製した培地で発生させたタモギタケ子実体を例示することができる。すなわち、新たに調製した培地で発生させたタモギタケ子実体と比較して、既使用培地で発生させたタモギタケ子実体の方がエルゴチオネイン濃度が大きければ、「エルゴチオネイン濃度が向上した」と判断することができる。
最後に、本発明は、エルゴチオネイン含有組成物の製造方法を提供する。本製造方法は、タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地で、再度、発生させたタモギタケ子実体からエルゴチオネインを抽出する工程を有する。タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地で再度発生させたタモギタケ子実体は、上述のとおり、エルゴチオネインを高濃度で含有する。したがって、当該子実体から抽出することにより、高い純度でエルゴチオネインを含有するエルゴチオネイン含有組成物を効率的に製造することができる。
なお、本発明において、「エルゴチオネイン含有組成物」とは、エルゴチオネインを含有する組成物をいう。エルゴチオネイン含有組成物におけるエルゴチオネインの含有割合は、0質量%超から100質量%までのいずれであってもよい。すなわち、エルゴチオネイン含有組成物は、エルゴチオネインのみからなる物質であってもよく、エルゴチオネインとエルゴチオネイン以外の物質とからなる混合物であってもよい。また、エルゴチオネイン含有組成物の形態は、液体、個体、コロイドなどのいずれでもよい。すなわち、エルゴチオネイン含有組成物の形態として、具体的には、溶液やゾル、ゲル、結晶、非晶質などを例示することができ、より具体的には、水溶液や粉末、顆粒、錠剤、カプセル、クリーム、ペーストなどを例示することができる。また、エルゴチオネイン含有組成物の用途としては、食品(健康食品や食品添加物、飲料を含む)、動物飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生用品などを例示することができる。
タモギタケ子実体からのエルゴチオネインの抽出は、例えば、水中で加熱することにより行うことができる。具体的には、生の子実体150kg〜200kgを水200Lに入れて加熱し、沸騰させた状態で5分間煮出した後、濾過して150Lの濾液を得る方法を例示することができる。本濾液には相当量のエルゴチオネインが含まれるため、これをそのままエルゴチオネイン含有組成物として用いることができる。
また、さらに精製あるいは濃縮等する場合は、本濾液を、5000rpm、10℃の条件下で30分間遠心分離を行って135Lの上清を回収する。5×30cmのカラムに充填したイオン交換樹脂(アンバーライトIR120B H型;オルガノ社)に、回収した上清のうちの7.5Lを入れ、一晩自然落下させる。続いて、イオン交換樹脂を回収し、蒸留水2.5Lを用いて洗浄して糖質成分を除去した後、0.28%(w/w)アンモニア水10Lを用いて溶出し、イオン交換樹脂に吸着していた陽イオン性化合物を含む溶出液10mLを得る。ロータリーエバポレーターを用いてこの溶出液を濃縮した後、下記の条件により定法に従って高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、流出開始3〜4分に検出されるピークの画分を分取する。分取した画分を合わせた後、凍結乾燥機を用いて凍結乾燥することにより、粉末状のエルゴチオネイン含有組成物1.7g(7.4mmol)を得ることができる。
《HPLCの条件》
HPLCシステム;日立高速液体クロマトグラフLaChrom Elite
溶離液;0〜1%(v/v)アセトニトリル水溶液
カラム;Inertsil ODS−SP(ジーエルサイエンス社)
検出器;UV検出器(250nm)
次に、本発明の各実施例について説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
<試験方法>
(1)用語
本実施例において、百分率(%)は、特段の記載のない限り質量%を意味する。
本実施例において、「1次発生」は、新たに調製した培地で子実体を発生させることをいう。また、「2次発生」は、1次発生で使用した培地で子実体を発生させることをいう。
(2)原菌
タモギタケの登録品種「エルムマッシュ291」(登録第15387号)の菌株を、SMYP平板培地(組成((w/v)%);可溶性デンプン2.0、麦芽エキス1.0、酵母エキス0.1、ポリペプトン0.1、寒天1.5)で継代培養したものを原菌として用いた。培養終了後は1.5℃の冷蔵庫で保存し、使用時は、菌糸体の先端部から平板培地ごとコルクボーラーで直径4mmのディスクを打ち抜いて使用した。
(3)おが粉種菌の調製
カラマツのおが粉150g、フスマ(江別製粉)73gおよび消石灰1gを混合した後、水道水を加えて水分60%に調製し、これを種菌培地とした。800mL容量のポリプロピレン製栽培ビンに種菌培地を約470g充填し、培地表面の中央部に直径約15mmの接種孔を開けた。専用のフィルター付きキャップを装着して、高圧殺菌(120℃、100分)した後、放冷した。試験方法(2)の原菌ディスクを、種菌培地の肩口と接種孔とに置くことにより原菌を接種した。その後、栽培ビンを、温度22〜24℃、相対湿度50%、暗条件下で、10〜12日間静置することにより培養し、これをおが粉種菌とした。
(4)栽培培地の調製
培地ミキサーにカラマツのおが粉2.6m、フスマ(江別製粉)380kg、ケイ酸質菌糸活性剤「V1」(バイオファーム)20kgおよび消石灰4.5kgを入れた後、水道水1150Lをシャワー状に加えながら十分に撹拌して水分65%に調製し、これを栽培培地とした。
(5)エルゴチオネインの定量
タモギタケ子実体をメッシュ付きトレイに入れ、熱風乾燥機で一晩(12時間以上)乾燥させて乾燥子実体とした。乾燥子実体をワーリングブレンダーで粉砕して粉末とした。この粉末0.5gに蒸留水20mLを加え、超音波振動を10分間与えた。次に、5分間沸騰浴処理をした後、3000回転/分(rpm)で5分間遠心分離を行い、上清を回収した。これを濾過して得られた濾液を測定試料とした。測定試料を下記の条件によりHPLCに供して、エルゴチオネインの含有量を測定した。エルゴチオネイン含有量は、濃度既知の標準試料のピーク面積に対する、測定試料のエルゴチオネインピークの面積割合から算出した。測定結果に基づいて、タモギタケの乾燥子実体重量(Dry Weight)1g当たりのエルゴチオネインの濃度(mg/gDW)を算出した。
《HPLCの条件》
溶離液;水
カラム;Devolosil C30−UG−5(4.6φ×250mm)(野村化学)
流速;1mL/分
温度;40℃
検出器;UV検出器(258nm)
<比較例>栽培ビンによる1次発生
800mL容量のポリプロピレン製栽培ビンに、試験方法(4)の栽培培地を450〜470g充填し、培地表面に直径12mmの接種孔を3ケ所開けた。これを高圧殺菌(121℃、100分)した後、放冷した。栽培ビン1本あたり6gのおが粉種菌を接種孔に入れることにより接種した。この栽培ビンを温度24±2℃、相対湿度50〜70%、暗条件下で9〜11日間、静置することにより培養し、菌糸を培地全体に蔓延させた。続いて、温度18±1℃、相対湿度85〜90%、明条件(24時間照明/日)下で3日間、静置することにより芽出し(発茸)を行い、子実体原基を形成させた。続いて、温度22±1℃、相対湿度85±5%、明条件(24時間照明/日)下で約4〜6日間、静置することにより子実体の生育を行った。子実体菌傘の半数以上が25〜30mm程度に成長した時点(図1に示す。)で子実体を採取(収穫)した。本方法による栽培試験は計3回行った。
<実施例1>栽培袋による2次発生
子実体収穫後の比較例の栽培ビン(図2の左側写真に示す。)から子実体の根元を除去し、自動掻き出し機を用いて栽培培地を掻き出した。以下、本実施例においては、この1次発生で使用した栽培培地を「既使用培地」という。続いて、掻き出した既使用培地を自動袋詰め装置を用いて栽培袋に詰め込み、袋の口を折り込んだ(図2の右側写真に示す。)。このとき、栽培袋は2.5kg菌床用ポリプロピレン製栽培袋を用いて、1袋につき栽培ビン7本分の既使用培地を詰め込んだ。この栽培袋を、温度24±2℃、相対湿度50〜70%、暗条件下で6〜8日間、静置することにより培養し、菌糸を培地全体に蔓延させた。続いて、温度22±2℃、相対湿度85±5%、明条件(24時間照明/日)下で2〜3日間、静置することにより発茸を行い、子実体原基を形成させた。続いて、温度20±2℃、相対湿度85±5%、明条件(24時間照明/日)下で約4〜6日間、静置することにより子実体の生育を行った。子実体菌傘の半数以上が30〜35mm程度に成長した時点(図3に示す。)で子実体を収穫した。本方法による栽培試験は計3回行った。
比較例で収穫した子実体(栽培ビンで1次発生させた子実体)と、本実施例1で収穫した子実体(栽培袋で2次発生させた子実体)とについて、試験方法(5)に記載の方法によりエルゴチオネインの含有量を測定した。その結果を表1に示す。
表1に示すように、エルゴチオネイン含有量は、比較例の5.08±0.22mg/gDW(平均値)に対して、実施例1では9.77±0.56mg/gDW(平均値)であり、比較例の約2倍の値であった。すなわち、2次発生させたタモギタケ子実体は、1次発生の約2倍量のエルゴチオネインを含有することが明らかになった。この結果から、既使用培地で発生させることにより、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体が得られることが明らかになった。
また、比較例と実施例1とで、生産方法を比較評価した。その結果、比較例では栽培日数(培地調製から収穫までに要する日数)が18〜20日間であったのに対して、実施例1では栽培日数(培地掻き出しから収穫までに要する日数)が12〜14日間であり、実施例1の方が約6日間短かった。また、実施例1では、1次発生で使用した培地に栄養剤の添加や殺菌を行わず、そのまま用いたが、問題無く子実体を発生させることができた。この結果から、既使用培地を1次発生とは異なる栽培容器に詰め替えてタモギタケ子実体を2次発生させる生産方法は、栽培日数の短縮、新たな培地原料の不要、および、培地の殺菌不要という点で、生産コストを抑えて短期間にタモギタケ子実体を生産できる、効率的な方法であることが明らかになった。
<実施例2>栽培ビンによる2次発生
子実体収穫後の比較例の栽培ビンから子実体の根元を除去した。この栽培ビンをそのまま、温度24±2℃、相対湿度50〜70%、暗条件下で7〜9日間、静置することにより培養した。続いて、温度22±2℃、相対湿度85±5%、明条件(24時間照明/日)下で2〜3日間、静置することにより発茸を行い、子実体原基を形成させた。続いて、温度20±2℃、相対湿度85±5%、明条件(24時間照明/日)下で約4〜6日間、静置することにより子実体の生育を行った。子実体菌傘の半数以上が30〜35mm程度に成長した時点で子実体を収穫した。収穫した子実体について、試験方法(5)に記載の方法によりエルゴチオネインの含有量を測定した。
実施例1で収穫した子実体(栽培袋で2次発生させた子実体)と、本実施例2で収穫した子実体(栽培ビンで2次発生させた子実体)とについて、エルゴチオネイン含有量および収量を比較した。収量は、収穫した子実体の総重量を、使用した培地の総重量を100%とした場合の重量割合(%)に換算して比較した。その結果を表2に示す。
表2に示すように、本実施例2の子実体のエルゴチオネイン含有量は9.67±0.14mg/gDW(平均値)であり、実施例1の9.77±0.56mg/gDW(平均値)とほぼ同等であった。すなわち、栽培ビンで2次発生させたタモギタケ子実体は、栽培袋で2次発生させたタモギタケ子実体と同様に、エルゴチオネインを高濃度で含有することが明らかになった。この結果から、既使用培地で発生させることにより、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体が得られることが明らかになった。
また、実施例1と実施例2とで、生産方法を比較評価した。その結果、実施例2では子実体が発生しなかった栽培ビンが散見されたのに対して、実施例1ではいずれの栽培袋からも子実体が発生した。このことから、使用した培地総量に対する子実体の総収量の割合は、実施例2よりも実施例1の方が大きい値となった。また、実施例2では、1次発生の子実体収穫後に培地上面がえぐれて低くなり、2次発生の子実体の発生位置が低下した結果、2次発生の子実体については機械による収穫が困難であった。これに対して、実施例1では、2次発生の子実体も機械により問題なく収穫することができた。この結果から、1次発生とは異なる栽培容器に既使用培地を詰め替えて2次発生を行う生産方法は、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を、高収率で効率的に栽培できる点で、優れた方法であることが明らかになった。
<実施例3>容量を変化させた栽培袋による2次発生
実施例1に記載の方法によりタモギタケ子実体を栽培して収穫した。ただし、栽培袋は、2.5kg菌床用ポリプロピレン製栽培袋に代えて、1.5kg菌床用ポリプロピレン製栽培袋を用いて、1袋につき栽培ビン3本分の既使用培地を詰め込んだ。収穫した子実体について、試験方法(5)に記載の方法によりエルゴチオネインの含有量を測定した。
実施例1で収穫した子実体(2.5kg菌床用栽培袋で2次発生させた子実体)と、本実施例3で収穫した子実体(1.5kg菌床用栽培袋で2次発生させた子実体)とについて、収量およびエルゴチオネイン含有量を比較した。収量は、栽培ビン1本分の既使用培地当たりの収量(g)に換算して比較した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、子実体の収量は、実施例1では30.7g/栽培ビン1本分の既使用培地、実施例3では32g/栽培ビン1本分の既使用培地であり、両者はほぼ同等であった。エルゴチオネイン含有量も、実施例1では9.77±0.56mg/gDW、実施例2では10.8mg/gDWであり、両者はほぼ同等であった。すなわち、2.5kg菌床用栽培袋に栽培ビン7本分の培地を詰め込んで2次発生させた場合と、1.5kg菌床用栽培袋に栽培ビン3本分の培地を詰め込んで2次発生させた場合とで、子実体の収量およびエルゴチオネイン含有量はほぼ同等であることが明らかになった。この結果から、栽培容器の容量ないし培地量にかかわらず、既使用培地を1次発生とは異なる栽培容器に詰め替えて2次発生させることにより、エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を高収率で生産できることが明らかになった。

Claims (6)

  1. 培地を充填した栽培ビンにおいてタモギタケ子実体を発生させる工程と、
    タモギタケ子実体の発生に使用した既使用培地を前記栽培ビンから栽培袋に詰め替える工程と、
    前記既使用培地を充填した栽培袋においてタモギタケ子実体を発生させる工程と
    を有する、タモギタケ子実体の生産方法。
  2. エルゴチオネインを高濃度で含有するタモギタケ子実体を生産する方法である、請求項1に記載の生産方法。
  3. 前記既使用培地が、タモギタケ子実体の発生後に新たな培地材料を追加していない培地である、請求項1または請求項2に記載の生産方法。
  4. 前記既使用培地が、タモギタケ子実体の発生後に殺菌処理を施していない培地である、請求項1〜のいずれかに記載の生産方法。
  5. おが粉を主材料として含有し、かつ、タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地を充填した栽培容器において、再度、タモギタケ子実体を発生させる工程を有する、タモギタケ子実体におけるエルゴチオネイン濃度の向上方法。
  6. タモギタケ子実体の発生に使用された既使用培地で、再度、発生させたタモギタケ子実体からエルゴチオネインを抽出する工程を有する、エルゴチオネイン含有組成物の製造方法。
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WO2023063230A1 (ja) * 2021-10-13 2023-04-20 サントリーホールディングス株式会社 セサミン類及びエルゴチオネイン又はその塩を含有する組成物

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