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JP6682857B2 - 水系インク - Google Patents

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Description

本発明は、ポリエステル樹脂粒子を含有する水系インク、及び該水系インクを用いたインクジェット記録方法に関する。
商品包装印刷や広告等に用いられる商業用ラベル印刷等の分野では、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、NY(ナイロン)等の樹脂製記録媒体に対し、従来、溶剤系インクやUV硬化インク等によって印刷が行われてきた。これに対し、環境負荷の低減、省エネルギー、安全性等の観点から、水系インクを用いる印刷方法として、インクジェット記録方式やフレキソ印刷方式の活用が求められている。特に、インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出して付着させて、文字や画像を得る記録方式であり、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、そして、記録部材として普通紙が使用可能であり、被印字物に対して非接触であるという数多くの利点があるため普及が著しい。そこで、前記樹脂製記録媒体に対しても、インクジェット記録方式の活用が試みられている。
例えば、特許文献1では、着色剤及びポリエステル系樹脂粒子を含有するインクジェット記録用水系インクであって、ポリエステル系樹脂粒子を構成するポリエステル系樹脂が、ポリエステル樹脂からなるセグメント及び付加重合系樹脂からなるセグメントが共有結合してなる複合樹脂を含有し、前記セグメントが炭素数12〜18のアルキル基を有するアクリル酸エステル及び炭素数12〜18のアルキル基を有するメタクリル酸エステルの少なくとも1種に由来の構成単位を、前記セグメント中、5〜50質量%含有するインクジェット記録用水系インクが記載されており、PET、PP等の樹脂製記録媒体への密着性及び光沢性に優れることが示されている。
また、特許文献2では、(a)アルケニルコハク酸、アルケニルコハク酸無水物、アルキルコハク酸、及びアルキルコハク酸無水物からなる群から選択される1種又は2種以上の化合物と、(b)スチレン系単量体と、を特定量含有する組成物を共重合して得られる水性顔料分散体用樹脂を用いたインクジェット記録用インクが、粗大粒子数が極めて少なく、吐出安定性に優れることが示されている。
また、特許文献3では、顔料を分散させてなる水系インクにおいて、実質的に無色透明なポリエステルサスペンションを含有することを特徴とする水系インクが、紙やOHPシート等の被印字物への定着性及び耐水性に優れることが示されている。
特開2015−124353号公報 特開2012−219143号公報 特開平10−46081号公報
しかしながら、従来技術では、環境負荷が小さく安全性の高い水系インクでの樹脂製記録媒体への密着性については改善の必要があった。また密着性を改善させる目的で、ポリエステル樹脂粒子を含有させる際、インク中でのポリエステルの加水分解が発生することも課題であり、インクの安定性に課題があった。
そこで、本発明は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性に優れる水系インク、及び該水系インクを用いたインクジェット記録方法を提供する。
本発明者らは、特定の構成単位を有するポリエステルを含有するポリエステル樹脂粒子を含有する水系インクが、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は次の〔1〕又は〔2〕に関する。
〔1〕着色剤及びポリエステル樹脂粒子を含有する水系インクであって、
該ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、
該アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物を、該アルコール成分中50モル%以上100モル%以下含有し、
該カルボン酸成分として、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を該カルボン酸成分中10モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する、水系インク。
〔2〕前記〔1〕に記載の水系インクを、インクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
本発明によれば、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性に優れる水系インク、及び該水系インクを用いたインクジェット記録方法を提供することができる。
[水系インク]
本発明の水系インクは、着色剤及びポリエステル樹脂粒子を含有する。該水系インクは、ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物をアルコール成分中50モル%以上100モル%以下含有し、カルボン酸成分として、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸をカルボン酸成分中10モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する。
本発明の水系インクが、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性に優れる理由は明らかではないが、以下のように考えられる。
本発明の水系インク(以下、単に「インク」ともいう。)は、着色剤及びポリエステル樹脂粒子を含有する。印刷時に該インクが樹脂製記録媒体上に付着すると、ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが記録媒体の印刷面上に拡散し、着色剤の定着助剤として作用する。ここで、該ポリエステルは、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であり、アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物をアルコール成分中50モル%以上100モル%以下含有する。更に、該ポリエステルは、カルボン酸成分として、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸をカルボン酸成分中10モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する。
ポリエステルの原料モノマーとして、特定量のビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、及び特定量の炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることで、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物によって疎水性が増した分子鎖中で、極性の高いエステル結合部位と極性の低いアルキル基又はアルケニル基とが存在し、該分子鎖中で適度な間隔で存在することになる。その結果、該ポリエステルが、PVC等の極性を有する樹脂製記録媒体中の樹脂が有する極性基と強く相互作用するため、本発明のインクの該樹脂製記録媒体への密着性が向上するものと考えられる。
また、本発明の水系インク中で、前記ポリエステルは、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸の該アルキル基又はアルケニル基と、3価以上の多価カルボン酸成分由来の架橋構造により、エステル結合周辺の疎水性が高められるため、水系インク中のポリエステルの加水分解を効果的に抑制できるものと考えられる。
<ポリエステル樹脂粒子>
本発明で用いるポリエステル樹脂粒子(以下、単に「樹脂粒子」ともいう。)は、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステルを含む。
(ポリエステル)
本発明で用いるポリエステルは、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステルを含み、該アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物を該アルコール成分中50モル%以上100モル%以下含有する。そして、該カルボン酸成分として、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を該カルボン酸成分中10モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する。
該ポリエステルは、水性媒体中でのポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、分子鎖末端に酸基を有することが好ましい。該酸基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等が挙げられ、水性媒体中での樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、カルボキシ基が好ましい。
本発明で用いるアルコール成分としては、樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物をアルコール成分中50モル%以上100モル%以下含有する。
アルコール成分中におけるビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物の含有量は、樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、50モル%以上であり、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、更に好ましくは70モル%以上、より更に好ましくは80モル%以上、より更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
本発明で用いるビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物のプロピレンオキシドの平均付加モル数は、樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下である。
該ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
前記アルコール成分としては、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物以外に、ジオール、3価以上の多価アルコール等が含まれていてもよい。
該ジオールとしては、主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、及び脂環式ジオールが挙げられる。
主鎖炭素数2以上12以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA等の芳香族ジオール又はそれらのエチレンオキシド(平均付加モル数1以上16以下)付加物等が挙げられる。ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物のエチレンオキシドの平均付加モル数は、樹脂製記録媒体への密着性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下である。
脂環式ジオールとしては、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール等が挙げられる。
これらの中でも、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が好ましく、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。
前記アルコール成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で用いるカルボン酸成分は、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸をカルボン酸成分中10モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する。なお、カルボン酸成分には、カルボン酸のみならず、それらの無水物及びそれらの炭素数1以上3以下のアルキルエステル等も含まれる。すなわち、本明細書中では、単にカルボン酸の名称のみを記載している場合、そのカルボン酸の無水物及び炭素数1以上3以下のアルキルエステルも含めて記載されているものとする。
本発明で用いる炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸(以下、単に「置換コハク酸」ともいう。)の置換基がアルキル基の場合、該アルキル基の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
また、本発明で用いる置換コハク酸の置換基がアルケニル基の場合、該アルケニル基の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
置換コハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等が挙げられる。これらの中でも、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくはドデシルコハク酸及びドデセニルコハク酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはドデシルコハク酸無水物、及びドデセニルコハク酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはドデセニルコハク酸無水物である。
置換コハク酸の含有量は、PVC製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、カルボン酸成分中、10モル%以上であり、好ましくは15モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは28モル%以上、より更に好ましくは30モル%以上、より更に好ましくは35モル%以上、より更に好ましくは40モル%以上であり、そして、50モル%以下、好ましくは48モル%以下、より好ましくは47モル%以下である。
本発明で用いる3価以上の多価カルボン酸としては、好ましくは3価以上の芳香族カルボンが挙げられ、3価以上の芳香族カルボン酸の炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられる。樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくはトリメリット酸であり、これらの中でも、同様の観点から、より好ましくはトリメリット酸及びその無水物、更に好ましくはトリメリット酸無水物である。
3価以上の多価カルボン酸の含有量は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、前記カルボン酸成分中、好ましくは4モル%以上、より好ましくは8モル%以上、更に好ましくは9モル%以上であり、そして、好ましくは25モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下、より更に好ましくは11モル%以下である。
前記カルボン酸成分としては、好ましくは、更に、置換コハク酸以外のジカルボン酸も含む。
該ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂環式ジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは、テレフタル酸である。
脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、アゼライン酸、コハク酸等が挙げられ、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは、フマル酸、アジピン酸、及びセバシン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはフマル酸又はアジピン酸、更に好ましくはフマル酸である。
脂環式ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
置換コハク酸以外のジカルボン酸の含有量は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、前記カルボン酸成分中、好ましくは25モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは43モル%以上であり、そして、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは55モル%以下、より更に好ましくは50モル%以下である。
前記カルボン酸成分中のジカルボン酸の総含有量は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは75モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは85モル%以上、より更に好ましくは89モル%以上であり、そして、好ましくは96モル%以下、より好ましくは92モル%以下、更に好ましくは91モル%以下である。
前記カルボン酸成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明で用いるアルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)のモル当量比(COOH基/OH基)は、樹脂製記録媒体に対する密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.80以上であり、そして、好ましくは1.20以下、より好ましくは1.10以下である。
前記ポリエステルの軟化点は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
前記ポリエステルのガラス転移温度は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは80℃以下、更に好ましくは70℃以下、より更に好ましくは65℃以下である。
前記ポリエステルの酸価は、水性媒体中でのポリエステル樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは15mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは35mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは25mgKOH/g以下、より更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
前記ポリエステルの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、いずれも、ポリエステルの製造に用いるモノマーの種類、配合比率、重縮合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができ、また、それらの値は、後述の実施例に記載の方法により求められる。
前記ポリエステルは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、ポリエステルを2種以上混合して使用する場合は、その軟化点、ガラス転移温度及び酸価は、それら2種以上のポリエステルの混合物として、実施例記載の方法によって得られる値を用いる。
〔ポリエステルの製造方法〕
本発明で用いるポリエステルは、アルコール成分及びカルボン酸成分を、重縮合反応させることによって製造することができる。例えば、前記アルコール成分と前記カルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒、エステル化助触媒、及び重合禁止剤を用いて、120℃以上250℃以下の温度で重縮合することにより製造することができる。
エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、ジ(2−エチルヘキサン酸)錫等の錫化合物やチタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等のエステル化触媒を使用することができる。
エステル化触媒の使用量に制限はないが、前記アルコール成分及び前記カルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
エステル化助触媒としては、ピロガロール、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸(「没食子酸」と同じ。)、没食子酸エステル等のピロガロール化合物;2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,3,4−テトラヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート等のカテキン誘導体等が挙げられる。
エステル化助触媒の使用量は、前記アルコール成分及び前記カルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
また、重合禁止剤としては、4−tert−ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、前記アルコール成分及び前記カルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
なお、前記ポリエステルには、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれてもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開2015−124353号公報等に記載の方法により、付加重合系樹脂からなるセグメントを有する複合樹脂や、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
本発明で用いるポリエステル樹脂粒子中、前記ポリエステルの含有量は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは100質量%である。
また、本発明で用いるポリエステル樹脂粒子は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル以外の樹脂、例えば、スチレン−アクリル共重合体、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン等の樹脂を含有してもよい。
また、該ポリエステル樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤等の添加剤等を任意成分として含有させてもよい。
(ポリエステル樹脂粒子の製造方法)
本発明で用いるポリエステル樹脂粒子は、前述のポリエステルを含む樹脂を水性媒体中に分散して、ポリエステル樹脂粒子の水性分散液として得る方法により製造することが好ましい。
水性媒体としては、水を主成分とするものが好ましい。水性媒体中の水の含有量は、樹脂粒子の水性分散液の分散安定性を向上させる観点及び環境安全性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水、イオン交換水又は蒸留水が好ましく用いられる。水とともに水性媒体を構成し得る水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等の炭素数1以上5以下のアルキルアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
該ポリエステル樹脂粒子の水性分散液を得る方法としては、前記ポリエステルを含む樹脂を水性媒体に添加して分散機等によって分散処理を行う方法、前記ポリエステルを含む樹脂に水性媒体を徐々に添加して転相乳化させる方法(以下、「転相乳化法」ともいう。)等が挙げられ、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性に優れる水系インクを得る観点から、転相乳化法が好ましい。転相乳化法としては、はじめに前記ポリエステルを含む樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液を調製し、次いで、該溶液に水性媒体を添加して転相させた後、有機溶媒を除去することが好ましい。以下、転相乳化法について述べる。
〔転相乳化法〕
転相乳化法としては、はじめに、前記ポリエステルを含む樹脂を有機溶媒に溶解させて、ポリエステルを含む溶液を得る。
複数種のポリエステル又はポリエステル以外の樹脂を含む場合には、予め、これらポリエステルとその他の樹脂とを混合したものを用いてもよいが、これらの樹脂を同時に有機溶媒に添加して溶解させ、ポリエステルを含む溶液を得てもよい。
また、ポリエステルを含む樹脂の水性媒体への親和性を向上させ、樹脂粒子の水性分散液の分散安定性を向上させる観点から、塩基性水溶液を使用することが好ましい。
ポリエステルを含む溶液を得る方法としては、ポリエステルを含む樹脂及び有機溶媒を容器に入れて溶解させ、次いで塩基性水溶液を容器に入れ、撹拌器によって撹拌して溶液を得る方法が好ましい。
ポリエステルを含む樹脂の有機溶媒への溶解操作、及びその後の塩基性水溶液の添加は、通常、用いる有機溶媒の沸点以下の温度で行う。
該有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びジエチルケトン等のケトン系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル等の酢酸エステル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。これらの中では、水性媒体添加後の樹脂粒子、水性媒体及び有機溶媒の混合液からの除去が容易である観点から、好ましくはケトン系溶媒及び酢酸エステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはメチルエチルケトン、酢酸エチル及び酢酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはメチルエチルケトンである。
樹脂粒子中の樹脂に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒/樹脂)は、樹脂を溶解し水性媒体への転相を容易にする観点、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である。
前記塩基性水溶液に用いられる塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びトリブチルアミン等の含窒素塩基性物質等が挙げられる。これらの中でも、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは水酸化ナトリウム又はアンモニアである。
樹脂の酸基に対する塩基性化合物の使用当量(モル%)は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは150モル%以下、より好ましくは120モル%以下、更に好ましくは100モル%以下である。
なお、塩基性化合物の使用当量(モル%)は、次の式によって求めることができる。塩基性化合物の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義であり、下記式で中和剤の使用当量が100モル%を超える場合には、中和剤が樹脂の酸基に対して過剰であることを意味し、この時の樹脂の中和度は100モル%とみなす。
塩基性化合物の使用当量(モル%)=〔{塩基性化合物の添加質量(g)/塩基性化合物の当量}/[{樹脂の酸価(mgKOH/g)×樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
塩基性水溶液中の塩基性化合物の濃度は、樹脂粒子の水性分散液の分散安定性及び生産性を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
次いで、前記ポリエステルを含む溶液に対して水性媒体を添加して、転相させる。
水性媒体の添加量は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、好ましくは100質量部以上、より好ましくは150質量部以上、更に好ましくは200質量部以上であり、そして、好ましくは900質量部以下、より好ましくは500質量部以下、更に好ましくは350質量部以下、より更に好ましくは300質量部以下である。
水性媒体の添加速度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点、並びに樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、転相が終了するまでは、樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部/分以上、より好ましくは3質量部/分以上、更に好ましくは5質量部/分以上であり、そして、好ましくは50質量部/分以下、より好ましくは30質量部/分以下、更に好ましくは20質量部/分以下である。転相後の水性媒体の添加速度には制限はない。
水性媒体を全量添加した後の、前記有機溶媒に対する該水性媒体の質量比(水性媒体/有機溶媒)は、好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、更に好ましくは55/45以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
水性媒体を混合する際の温度は、樹脂粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは50℃以下である。
前記転相乳化の後に、必要に応じて、得られた樹脂粒子、水性媒体及び有機溶媒の混合液から有機溶媒を除去する工程を有していてもよい。有機溶媒の除去方法は、有機溶媒が水に溶解しているため蒸留するのが好ましい。この場合、撹拌を行いながら、使用する有機溶媒の沸点以上の温度に昇温して留去するのが好ましい。また、樹脂粒子の分散安定性を維持する観点から、減圧下で蒸留するのがより好ましい。なお、減圧した後に昇温しても、昇温した後に減圧してもよい。
また、有機溶媒は、完全に除去されず樹脂粒子の水性分散液中に残留していてもよい。この場合、得られる樹脂粒子の水性分散液中の有機溶媒の残存量は、水性分散液中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
このようにして得られたポリエステル樹脂粒子の水性分散液は、金網等で濾過し、粗大粒子等を除去するのが好ましい。また、有機溶媒の除去を行った場合には、有機溶媒とともに水も共沸して減じているため、水を添加して該水性分散液の固形分濃度を調整することが好ましい。
固形分濃度を調整後のポリエステル樹脂粒子の水性分散液の固形分濃度は、インクの生産性を向上させる観点、並びに樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
なお、固形分濃度を求める際の固形分量は、樹脂、並びに必要に応じて添加されうる界面活性剤、着色剤の任意成分等の不揮発性成分の総量である。
水性分散液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径(D)は、樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは20nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは60nm以上、より更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは100nm以下、より更に好ましくは90nm以下である。該体積平均粒径(D)は、動的光散乱法で測定されるものであり、後述する実施例に記載の方法で求められる。
<着色剤>
本発明で用いる着色剤とは、顔料又は染料をいう。また、着色剤は、界面活性剤や分散用ポリマーを用いてインク中で安定な微粒子にしてもよい。
本発明で用いる着色剤としては、顔料、疎水性染料、水溶性染料(酸性染料、反応染料、直接染料等)等が挙げられる。これらの中でも、インクの分散安定性、印刷物の耐水性、光沢性、及び表面平滑性を向上させる観点から、好ましくは、顔料及び疎水性染料から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは顔料である。着色剤は、1種を単独で又は2種以上の組み合わせを任意の割合で混合して用いることができる。
顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、黒色インクに用いる場合、好ましくはカーボンブラックである。
有機顔料としては、シアン顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、黒色顔料が挙げられる。シアン顔料としては、フタロシアニン顔料が好ましく、銅フタロシアニンがより好ましい。イエロー顔料としては、モノアゾ顔料、イソインドリン顔料、ベンズイミダゾロン顔料が好ましい。マゼンタ顔料としては、キナクリドン顔料、BONAレーキ顔料等の溶性アゾ顔料、ナフトールAS顔料等の不溶性アゾ顔料が好ましい。
また、該有機顔料としては、好ましくは、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントレッド、C.I.ピグメントオレンジ、C.I.ピグメントバイオレット、C.I.ピグメントブルー、及びC.I.ピグメントグリーンからなる群より選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
また、本発明では、自己分散型顔料を用いることもできる。自己分散型顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を、直接又は他の原子団を介して顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水性媒体に分散可能である無機顔料や有機顔料を意味する。ここで、他の原子団としては、炭素数1以上12以下のアルカンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。
前記顔料は、1種を単独で又は2種以上の組み合わせを任意の割合で混合して用いることができる。
疎水性染料とは、100gの水中(20℃)における溶解度が、好ましくは6質量%未満の染料のことをいう。疎水性染料としては、油溶性染料、分散染料等が挙げられる。
前記染料は、1種を単独で又は2種以上の組み合わせを任意の割合で混合して用いることができる。
着色剤の含有量は、インクの分散安定性及び画像濃度を向上させる観点から、インク中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
前記ポリエステル樹脂粒子に対する該着色剤の質量比〔着色剤/ポリエステル樹脂粒子〕は、樹脂製記録媒体に対する密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、インク中、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下、より更に好ましくは50/50以下である。
(着色剤を含有するポリマー粒子)
前記着色剤は、好ましくは、ポリマー、界面活性剤等を用いて、インク中で安定な微粒子にする。すなわち、前記着色剤は、ポリマー分散剤で分散された着色剤、又は着色剤を含有するポリマー粒子として用いることが好ましく、インクの分散安定性及び画像濃度を向上させる観点、並びに印刷物の表面平滑性を向上させる観点から、着色剤を含有するポリマー粒子として用いることがより好ましい。
着色剤を含有するポリマー粒子の体積平均粒径(D)は、画像濃度を向上させる観点から、好ましくは40nm以上、より好ましくは50nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは150nm以下である。着色剤を含有するポリマー粒子の体積平均粒径(D)は、動的光散乱法で測定されるものであり、具体的には実施例の方法によって測定される。
着色剤を含有するポリマー粒子には、インク中でのポリマー粒子の水分散性及び画像濃度を向上させる観点から、水不溶性ポリマーを用いることが好ましい。ここで、「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
水不溶性ポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられ、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくはビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーである。
ビニル系ポリマーとしては、インクの保存安定性及び吐出性を向上させる観点から、イオン性モノマー由来の構成単位と、疎水性モノマー由来の構成単位とを有するものが好ましい。
イオン性モノマーとしては、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性モノマーである。アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
アニオン性モノマーの中でも、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
イオン性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、前記水不溶性ポリマー中、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
なお、該含有量は、各モノマー成分の配合量から算出できる。
疎水性モノマーとしては、好ましくは炭素数1以上、より好ましくは炭素数6以上、そして、好ましくは炭素数22以下、より好ましくは炭素数18以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、2−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくはスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートである。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる少なくとも1種を示す。
着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
疎水性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、前記水不溶性ポリマー中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
なお、該含有量は、各モノマー成分の配合量から算出できる。
前記ビニル系ポリマーとしては、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、更に片末端に(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性官能基を有する数平均分子量500以上、好ましくは1,000以上、そして、100,000以下、好ましくは10,000以下のマクロマー、及びポリオキシアルキレングリコール鎖を有するノニオン性モノマー等を含有してもよい。
該マクロマー及び該ノニオン性モノマー成分の量は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、前記水不溶性ポリマー中、それぞれ、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
なお、該含有量は、各モノマー成分の配合量から算出できる。
前記ビニル系ポリマーのモノマー成分は、それぞれ1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記水不溶性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点、及び画像濃度を向上させる観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上であり、そして、好ましくは500,000以下、より好ましくは400,000以下、更に好ましくは300,000以下、より更に好ましくは200,000以下である。なお、重量平均分子量(Mw)の測定は実施例に記載の方法により行うことができる。
水不溶性ポリマーは、モノマー混合物を公知の重合法により共重合させることによって製造される。重合法としては、例えば、モノマー混合物を溶媒中で重合開始剤や重合連鎖移動剤等とともに加熱して重合させる、溶液重合法が好適例として挙げられる。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離及び精製してもよい。
〔着色剤を含有するポリマー粒子の製造方法〕
前記着色剤を含有するポリマー粒子は、例えば、水不溶性ポリマー、有機溶媒、着色剤、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を含有する混合物を分散処理して、着色剤を含有するポリマー粒子の分散液を得たのち、該分散液から有機溶媒を除去して、着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液を得る方法で製造することができる。
水不溶性ポリマーを溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、炭素数3以上5以下のケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、ケトン類がより好ましく、メチルエチルケトンが更に好ましい。水不溶性ポリマーを溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
水不溶性ポリマーがアニオン性ポリマーの場合、中和剤を用いて水不溶性ポリマー中のアニオン性基を中和してもよい。中和剤を用いる場合、pHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液中、着色剤は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中での分散安定性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
前記水不溶性ポリマーの量に対する着色剤の量の質量比〔着色剤/水不溶性ポリマー〕は、着色剤を含有するポリマー粒子のインク中及び水性媒体中での分散安定性を向上させる観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上、更に好ましくは70/30以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下である。
着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液の分散方法に特に制限はない。公知の混練機、分散機(例えば、高圧ホモジナイザー)等を用いて着色剤を含有するポリマー粒子の体積平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。得られた分散液から、有機溶媒を蒸留等の方法で除去することで、着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液を得ることができる。なお、分散を行う前に、予め前記着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液を、フィルター(例えば、金網、プラスチック製メッシュ)等で濾過し、粗大粒子等を除去するのが好ましい。
得られた着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液は、フィルター(例えば、金網、プラスチック製メッシュ)等で濾過し、粗大粒子等を除去するのが好ましい。また、着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点から、着色剤を含有するポリマー粒子を架橋処理したり、後述の水系インク中に任意に添加される、有機溶媒、防腐剤、防黴剤等の各種添加剤を、着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液に添加してもよい。
着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液の固形分濃度は、水性分散液の生産性及び保存安定性を向上させる観点、並びに樹脂製記録媒体への密着性及び耐加水分解性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
<水系インクの任意成分>
本発明の水系インクには、有機溶媒、界面活性剤、濡れ剤、浸透剤、分散剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
該有機溶媒としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、環状カーボネート、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、テトラエチレングリコール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、3−メチル−1,3,5−ペンタントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテルとしては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
アミドとしては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
アミンとしては、モノエタノ−ルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、チオジグリコール等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよいが、2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
これらの中でも、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、及び含窒素複素環化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上が好ましく、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及び2−ピロリドンから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
有機溶媒の含有量は、インクの分散安定性を向上させる観点から、インク中で、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤等が挙げられる。なお、該界面活性剤は、濡れ剤、浸透剤、分散剤として用いてもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のグリコールエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
該界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、ノニオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく、グリコールエーテル、アセチレングリコール、ポリエステル変性シリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アセチレングリコール及びポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
界面活性剤の含有量は、インクの分散安定性を向上させる観点から、インク中で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤等が挙げられる。
防腐剤及び防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼすことなくpHを7以上に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて任意の物質を使用することができ、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
<水系インクの製造方法>
本発明の水系インクは、例えば、前記ポリエステル樹脂粒子の水性分散液と、着色剤を含有する水性分散液とを混合することで得られ、好ましくは前記ポリエステル樹脂粒子の水性分散液と、前記着色剤を含有するポリマー粒子の水性分散液とを混合することで得られる。
ここで、着色剤を含有する水性分散液とは、着色剤を水性媒体に分散した着色剤粒子の分散液のことをいい、好ましくは前記着色剤と前記水性媒体とを、前記界面活性剤等の存在下、分散機を用いて分散して得ることが好ましい。
ここでは、前述した任意成分の少なくとも1種を更に混合してもよい。混合には、例えば、各種撹拌装置を用いることができる。
水系インク中の、前記ポリエステル樹脂粒子及び前記着色剤の好適含有量は、前述のとおりである。
本発明の水系インクに含まれる水の含有量は、インクの粘度を適正に保つ観点から、インク中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
[インクジェット記録方法]
本発明の水系インクは、インクジェット記録用のインクとして用いることができる。本発明の水系インクをインクジェット記録方法に用いる際の好適な態様としては、本発明の水系インクをインクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する。
該樹脂製記録媒体としては、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)製記録媒体及びポリエチレンテレフタレート(PET)製記録媒体等の記録媒体、より好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)製記録媒体に対して、本発明の水系インクを付着させ画像を形成する方法に好適に用いることができる。
本発明の水系インクは、オフィス用印刷、並びに、カタログ、チラシ、パッケージ、ラベル等の商業及び産業用印刷のいずれにも使用することができる。商業及び産業用ラベル又はパッケージ印刷に適する樹脂製記録媒体、特にPVC製記録媒体へ好適に用いることができる。
樹脂製記録媒体としては、コロナ処理された基材を用いてもよい。基材はフィルム形状となっているものが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インクジェット記録装置としては、サーマル式インクジェット記録装置、ピエゾ式インクジェット記録装置が挙げられる。本発明の水系インクは、ピエゾ式のインクジェット記録用水系インクとして用いることがより好ましい。
また、本発明のインクジェット記録方法は、水系インクを樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する。水系インク中のポリエステル樹脂粒子を構成する樹脂が、該樹脂製記録媒体の印字面に拡散し、塗膜を形成する際に着色剤の定着助剤として作用することができ、樹脂製記録媒体、好ましくはPVC製記録媒体及びPET製記録媒体、より好ましくはPVC製記録媒体に対する密着性を更に向上させることができる。
該樹脂製記録媒体の加熱温度は、樹脂製記録媒体、好ましくはPVC製記録媒体及びPET製記録媒体、より好ましくはPVC製記録媒体への密着性を向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは85℃以下である。
以下の各製造例、各実施例、及び各比較例における各物性は次の方法により測定、評価した。
[ポリエステルの酸価]
JIS K0070−1992に記載の中和滴定法に従って測定した。ただし、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕とした。
[ポリエステルの軟化点、ガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT−500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却して、測定用サンプルを調製した。その後、該測定サンプルを昇温速度10℃/minで昇温して、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とし、吸熱の最大ピーク以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜の示す接線との交点の温度を該試料のガラス転移温度とした。
[ポリエステル樹脂粒子、及び着色剤を含有するポリマー粒子(顔料含有アニオン性ポリマー粒子)の体積平均粒径(D)]
(1)測定装置:ゼータ電位及び粒径測定システム「ELSZ−2」(大塚電子株式会社製)
(2)測定条件:キュムラント解析法にて測定した。測定する粒子の濃度が約5×10−3質量%になるように水で希釈した分散液を測定用セルに入れ、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力して測定した。
[ポリエステル樹脂粒子の水性分散液の固形分濃度]
赤外線水分計「FD−230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、水分量の変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水性分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100−水分(質量%)
[水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の重量平均分子量]
以下の測定装置と分析カラムを用い、N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法により測定した。試料の重量平均分子量(Mw)は、数種類の単分散ポリスチレン(製品名:「TSKgel標準ポリスチレン」;タイプ名:「A−500」、「A−2500」、「F−1」、「F−10」;いずれも東ソー株式会社製)を標準試料として、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。試料はN,N−ジメチルホルムアミドに溶解し固形分0.3質量%の溶液とした。
<測定条件>
測定装置:「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「TSK−GEL α−M」×2本(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:1mL/min
[着色剤を含有するポリマー粒子(顔料含有アニオン性ポリマー粒子)の水性分散液の固形分濃度]
30mLのポリプロピレン製容器(内径40mm、高さ30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取った後、更に試料約1.0gを添加して、混合した。その後、該混合物を正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で15分間放置した後、乾燥後の質量を測定した。乾燥後の混合物の質量から硫酸ナトリウムの質量を引いたものを試料の固形分として、乾燥前の試料の質量で除して固形分濃度(質量%)とした。
[水系インクの密着性]
インクジェットプリンター「IPSiO GX 2500」(株式会社リコー製、ピエゾ方式)に水系インクを充填し、PVCフィルム(製品名:「透明塩ビRE−137」、株式会社ミマキエンジニアリング製)にA4ベタ画像を印刷した。80℃の乾燥機にて10分乾燥し、室温25℃、相対湿度50%の環境室にて1日静置して試料を調製した。その後、試料の印刷面に長さ5cm、幅15mmのテープ「セロテープCT15」(登録商標)(ニチバン株式会社製)を、1cmの余白を残し4cm貼りつけ、角度90°で10cm/sの速度で該テープを剥がし、試料の塗工面の残存面積を目視により次の5段階で評価した。点数が高いほどPVCへの密着性に優れる。
<評価基準>
剥離なし、又は、剥離があるが剥離面積5%未満:5点
剥離面積5%以上25%未満:4点
剥離面積25%以上50%未満:3点
剥離面積50%以上75%未満:2点
剥離面積75%以上:1点
[水系インクの耐加水分解性]
水系インクに5N水酸化ナトリウム水溶液を滴下しpHを8へ調整した試料を20mL容のガラス製容器に入れ、70℃に設定した恒温槽内で静置した。1週間後に恒温槽から取り出し室温(25℃)まで冷却した後、pHを測定し、pHの変化量(70℃1週間後のpHから最初のpH8を引いた値)を求めた。ポリエステルが加水分解された場合には分解により発生する酸成分によりpHが酸側へシフトすることから、pH変化量を求めることで加水分解性を評価することができる。pH変化量が少ないほど、加水分解が抑制されており、すなわち、耐加水分解性に優れることを表す。
[ポリエステルの製造]
製造例R1(ポリエステルAの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1270g、ドデセニルコハク酸無水物1556g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物288gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルAを得た。ポリエステルAの特性を表1に示す。
製造例R2(ポリエステルBの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1121g、ドデセニルコハク酸無水物1796g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物317gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルBを得た。ポリエステルBの特性を表1に示す。
製造例R3(ポリエステルCの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1494g、ドデセニルコハク酸無水物1197g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、7時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物346gを加え、215℃で2時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルCを得た。ポリエステルCの特性を表1に示す。
製造例R4(ポリエステルDの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3675g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1463g、テレフタル酸1270g、ドデセニルコハク酸無水物1556g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、7時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物288gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルDを得た。ポリエステルDの特性を表1に示す。
製造例R5(ポリエステルEの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2625g、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2438g、テレフタル酸1270g、ドデセニルコハク酸無水物1556g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物288gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルEを得た。ポリエステルEの特性を表1に示す。
製造例R6(ポリエステルFの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1743g、ドデセニルコハク酸無水物804g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物346gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルFを得た。ポリエステルFの特性を表1に示す。
製造例R7(ポリエステルGの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1494g、ドデシルコハク酸無水物1206g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、7時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物346gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルGを得た。ポリエステルGの特性を表1に示す。
製造例R8(ポリエステルHの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン4875g、テレフタル酸1270g、ドデセニルコハク酸無水物1556g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、215℃まで冷却し、大気圧に戻した後、トリメリット酸無水物288gを加え、215℃で1時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルHを得た。ポリエステルHの特性を表2に示す。
製造例R9(ポリエステルIの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5600g、テレフタル酸1594g、トリメリット酸無水物369g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸557g及び4−tert−ブチルカテコール2gを加え、210℃で5時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルIを得た。ポリエステルIの特性を表2に示す。
製造例R10(ポリエステルJの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン5250g、テレフタル酸1494g、ドデセニルコハク酸無水物1197g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、230℃に昇温し、6時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて1時間保持した。その後、210℃まで冷却し、大気圧に戻した後、フマル酸348g及び4−tert−ブチルカテコール1gを加え、210℃で5時間保持した後に、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて所望の軟化点まで反応させ、ポリエステルJを得た。ポリエステルJの特性を表2に示す。
製造例R11(ポリエステルKの製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン6160g、フマル酸2125g、4−tert−ブチルカテコール4g、及びジ(2−エチルヘキサン酸)錫40gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、5時間かけて210℃まで昇温し、2時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、−8.3kPa(G)にて軟化点が100℃に達するまで反応させ、ポリエステルKを得た。ポリエステルKの特性を表2に示す。
[ポリエステル樹脂粒子の水性分散液の製造]
製造例D1(ポリエステル樹脂粒子Aの水性分散液の製造)
窒素導入管、還流冷却管、撹拌器(「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製))及び熱電対を装備した内容積2Lの四つ口フラスコに、ポリエステルA 150gを入れ、30℃でメチルエチルケトン(MEK)300gと混合し樹脂を溶解させた。次いで、5質量%水酸化ナトリウム水溶液24.4gを添加して30分撹拌し、有機溶媒系スラリーを得た。30℃、撹拌下、20mL/minの速度で脱イオン水426gを滴下した。その後、60℃に昇温した後、メチルエチルケトンを減圧下で留去し、更に一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網で濾過し、脱イオン水にて固形分濃度を30質量%に調整し、ポリエステル樹脂粒子Aの水性分散液を得た。得られた水性分散液中のポリエステル樹脂粒子Aの体積平均粒径(D)を表3に示す。
製造例D2〜D11(ポリエステル樹脂粒子B〜Kの水性分散液の製造)
製造例D1において、ポリエステルの種類、5質量%水酸化ナトリウム水溶液の添加量、及び脱イオン水の添加量を表3及び表4に示すものへと変更した以外は製造例D1と同様にして、ポリエステル樹脂粒子B〜Kの水性分散液を得た。得られた水性分散液中のポリエステル樹脂粒子の体積平均粒径(D)を表3及び表4に示す。
[着色剤(顔料)を含有する水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)粒子の水性分散液の製造]
製造例X1(着色剤(顔料)を含有する水不溶性ポリマー粒子X1の水性分散液の調製)
水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の合成
2つの滴下ロートを装備した内容積3Lの四つ口フラスコに、ベンジルメタクリレート399g(和光純薬工業株式会社製)、メタクリル酸91g(和光純薬工業株式会社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(製品名:「M−230G」、新中村化学工業株式会社製、オキシエチレン基の平均付加モル数:23)140g、スチレンマクロモノマー(製品名:「AS−6S」、東亞合成株式会社製、固形分:50%)140gを混合し、モノマー混合液(770g)を調製した。反応容器内に、メチルエチルケトン15.75g及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.350g、前記モノマー混合液の10質量%(77g)を入れて混合し、窒素ガス置換を行った。
一方、滴下ロートに、前記モノマー混合液の80質量%(616g)、前記重合連鎖移動剤2.45g、メチルエチルケトン173.25g及び重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(製品名:「V−65」、和光純薬工業株式会社製)5.6gを混合したものを入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を撹拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を4.5時間かけて滴下した。その後、前記モノマー混合液の残り10質量%(77g)、前記重合連鎖移動剤0.7g、メチルエチルケトン126g及び前記重合開始剤1.4gを混合したものを2段目滴下として75℃、1.7時間かけて滴下した。
滴下終了後、前記開始剤2.1gを混合し、80℃まで昇温し、1.5時間撹拌した。前記開始剤の混合、昇温及び撹拌操作を更に2回行なうことで水不溶性ポリマーの溶液(水不溶性ポリマーの重量平均分子量Mw:26,000)を得た。
(2)顔料を含有する水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)粒子(以下、「顔料含有アニオン性ポリマー粒子」ともいう。)の水性分散液の製造
内容積2Lの容器中で、前記(1)の水不溶性ポリマー(アニオン性ポリマー)の合成で得られた水不溶性ポリマーの溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー20gを、メチルエチルケトン62.8gに溶解し、その中に、5N水酸化ナトリウム水溶液5.01g、25質量%アンモニア水1.13g、及び脱イオン水236.5gを加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて2,000r/minで15分間撹拌混合を行なった。
続いてマゼンタ顔料:PV19(製品名:「Inkjet Magenta E5B02」、クラリアントジャパン株式会社製)45g、及びマゼンタ顔料:PR122(製品名:「6111T」、大日精化工業株式会社製)25gを加え、10〜15℃でディスパー翼を用いて7,000r/minで3時間撹拌混合した。
得られた分散液を200メッシュ濾過し、マイクロフルイダイザー「M−110K」(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー)を用いて、150MPaの圧力で20パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、液層部分を孔径5μmのフィルター(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過して粗大粒子を除いた。さらにこの分散液80gに防腐剤(製品名:「プロキセルXL2」、アビシア社製)0.2g、及び脱イオン水19.8gを混合し、70℃で1時間の滅菌処理を行なった後、25℃まで冷却し、前記孔径5μmのフィルターで濾過することで、顔料含有アニオン性ポリマー粒子の水性分散液(固形分濃度:20質量%、体積平均粒径(D):133nm)を得た。
[水系インクの製造]
実施例1〜7、比較例1〜4(水系インクA〜Kの製造)
100mLスクリュー管に、プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)20.0質量部、1,2−ブタンジオール(和光純薬工業株式会社)10.0質量部、濡れ剤(製品名:「オルフィンE1010」(オルフィンは登録商標)、アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製)1.0質量部、及び脱イオン水26.6質量部を混合し、マグネチックスターラーを用い、室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次に、製造例X1で得られた顔料含有アニオン性ポリマー粒子の水性分散液25.7質量部(顔料分換算4.0質量部(水系インク100質量部中))を、マグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液全量を混合し、更に表5及び6に示すポリエステル樹脂粒子の水性分散液16.7質量部(固形分換算5.0質量部(水系インク100質量部中))をスポイトで滴下しながら撹拌混合した。最後に孔径1.2μmのフィルター(製品名:「ミニザルト」(登録商標)、Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過し、水系インクを得た。得られた水系インクA〜Kの評価結果を表5及び6に示す。
表5の結果から、実施例1〜7の各水系インクは、PVC製フィルムへの密着性、及び耐加水分解性がともに優れていることがわかる。
一方で、表6の結果から、アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物を含まない比較例1の水系インクは、各実施例の水系インクに比べてPVC製フィルムへの密着性が劣ることがわかる。
また、カルボン酸成分として炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を含まない比較例2、カルボン酸成分として3価以上の多価カルボン酸を含まない比較例3、並びにカルボン酸成分として炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸、及び3価以上の多価カルボン酸のいずれも含有しない比較例4の水系インクは、いずれも、各実施例の水系インクに比べて耐加水分解性が劣ることがわかる。

Claims (7)

  1. 着色剤及びポリエステル樹脂粒子を含有する水系インクであって、
    該ポリエステル樹脂粒子に含まれるポリエステルが、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であって、該ポリエステルの酸価が5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であり、
    該アルコール成分として、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物を、該アルコール成分中60モル%以上100モル%以下含有し、
    該カルボン酸成分として、炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸を該カルボン酸成分中25モル%以上50モル%以下含有し、更に3価以上の多価カルボン酸を含有する、水系インク。
  2. カルボン酸成分中の3価以上の多価カルボン酸の含有量が、4モル%以上25モル%以下である、請求項1に記載の水系インク。
  3. 3価以上の多価カルボン酸がトリメリット酸である、請求項1又は2に記載の水系インク。
  4. 炭素数1以上20以下のアルキル基又は炭素数2以上20以下のアルケニル基で置換されたコハク酸が、ドデセニルコハク酸である、請求項1〜3のいずれかに記載の水系インク。
  5. カルボン酸成分として、更にテレフタル酸を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の水系インク。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の水系インクを、インクジェット記録方式で樹脂製記録媒体に付着させた後、該水系インクが付着した樹脂製記録媒体を40℃以上100℃以下に加熱する、インクジェット記録方法。
  7. 樹脂製記録媒体が、ポリ塩化ビニル製記録媒体である、請求項6に記載のインクジェット記録方法。
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