JP6674420B2 - モータ駆動制御装置 - Google Patents
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Description
使用回転速度が決まっているモータでは、使用回転速度での共振を避けることで回避できるが、例えば、軸流ファンモータのように、停止から最高回転速度の間のあらゆる回転速度での振動ピーク値を一定値以下に抑えなければならないモータでは、上記手法は使用できず、対策に苦慮する。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態のモータ駆動制御装置1は、通電制御(進角/遅角調整制御)を実行する。
図1は、第1の実施形態におけるモータ駆動制御装置1の回路構成を示すブロック図である。
図1において、本実施形態に係るモータ20は、3相のブラシレスDCモータであり、各相のコイルLu,Lv,Lwとロータ(不図示)とを備えている。これらコイルLu,Lv,Lwの一端は、Y結線されている。コイルLu,Lv,Lwの他端は、それぞれインバータ回路2のU相出力、V相出力、W相出力に接続され、インバータ回路2から3相交流が供給されることによりモータ20は回転駆動される。
モータ駆動制御装置1は、直流電源Vdに接続され、U相配線、V相配線、W相配線の3相によってモータ20に接続される。モータ駆動制御装置1は、モータ20に駆動電圧を印加して、モータ20の回転を制御する。U相、V相、W相には、それぞれ、端子間電圧Vu、Vv、Vwが印加される。
インバータ回路2(モータ駆動部の一部)は、プリドライブ回路3(モータ駆動部の一部)とモータ20が備える各相のコイルLu,Lv,Lwとに接続される。インバータ回路2は、プリドライブ回路3の駆動信号Vuu〜Vwlに基づき、モータ20の各相のコイルLu,Lv,Lwに通電する。
インバータ回路2は、スイッチング素子Q1,Q2が直列接続されるU相のスイッチングレッグと、スイッチング素子Q3,Q4が直列接続されるV相のスイッチングレッグと、スイッチング素子Q5,Q6が直列接続されるW相のスイッチングレッグとを有している。これらスイッチング素子Q1〜Q6は、例えばFET(Field Effect Transistor)である。
プリドライブ回路3は、制御部4に接続される。プリドライブ回路3は、例えば、6個のゲートドライブ回路を備え、インバータ回路2を駆動するための駆動信号Vuu〜Vwlを生成する。
回転位置算出部41は、抵抗素子R1〜R6を含む回転位置検出回路5により検出されるロータの回転位置情報(相電圧V1、V2、V3)を入力し、それに対応した位置検出信号S1(回転位置情報に対応した信号の一例)を生成する。回転位置検出回路5は、本実施形態では、各相の逆起電圧を検出して、回転位置を検出する。なお、回転位置の検出方法は、本実施形態のように逆起電圧を検出する構成に限定されず、例えば、ホールセンサなどの各種センサを用いて検出する構成であってもよい。
回転速度算出部42は、位置検出信号S1を基に回転速度を算出し、回転速度情報S2(実回転速度の一例)を生成して、通電調整部43および通電信号生成部44に出力する。
通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度以上ならば、回転位置算出部41から出力された位置検出信号S1(すなわち、回転位置検出回路5によって検出された回転位置情報)に基づいて、モータ20の固有振動数とモータ20の回転成分との共振を低減するための通電切替時調整を制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)をプリドライブ回路3に出力する。通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度未満かつ設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば、通電切替時調整は行わず、定常の通電切替を制御する駆動制御信号S4(第2の駆動制御信号)をプリドライブ回路3に出力する。なお、定常の通電制御とは、回転位置検出回路5によって検出された回転位置情報に基づいて、所定のタイミングおよび所定の順序で通電パターンを切り替える通常の通電制御のことである。
本明細書において、進角とは通電期間を短くすることをいい、遅角とは通電期間を長くすることをいう。
制御部4は、モータ20が所定の回転速度範囲にあるならば、通電切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する。本発明では、1回転当たりを1周期として1回発生する現象を1次成分としてとらえ、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する周期をn次成分と定義し、これを回転成分と呼ぶ。また、所定の回転速度範囲は、このn次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む。
制御部4は、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分の電源電流を低減するように駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を出力する。
制御部4は、通電切替時調整として、モータ駆動部が通電切替時の進角と遅角を交互に行うように制御する。その結果、モータ駆動制御装置1は、(n/2)次成分の電源電流は増大するが、n次成分の電源電流が低減する。
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
一般的に、モータを効率的に駆動させるためには、電流波形をムラ無く均一に統一することを目指す。しかし、電流波形をムラ無く均一に統一すると、通電タイミングをきっちりと揃えることになり、結果として、ある一定の回転次数成分を生み出すこととなる。
例えば、6極9スロットのブラシレスモータであれば、1回転につき18回の通電切替が発生する。このため、電流波形をFFT(Fast Fourier Transform)により分析すると、理想的には18次成分のみが発生する。この18次成分が、モータ20の固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となってしまう。
ここで、1回転あたりの通電切替回数は、極数の2分の1に、一極あたりの通電切替回数(例えば3相の場合は6回)を乗算して求められる。
例えば、6極9スロットのブラシレスモータであれば、18次成分がモータの固有値と共振してしまう特定の回転速度領域で、通電切替タイミング毎に、進角と遅角を交互に行うように通電波形を制御する。これにより、18次成分の半分の周波数の9次成分の電源電流が増加する。9次成分の電源電流が増加する一方、18次成分の電源電流が抑制される。これにより、モータの固有振動数との共振を回避することができる。
[比較例]
図2は、比較例の6極9スロットのブラシレスモータの電源電流波形図である。図2の縦軸は、図1の電流Iの電流波形を示し、横軸は、時刻を示している。
図2の符号A0,B0は、6極9スロットのブラシレスモータの通電切替タイミングを示している。図2では、通電切替が周期的に行われている電源電流の波形を示す。
図2に示すように、通電切替タイミングA0,B0間の通電期間Cと、通電切替タイミングB0,A0間の通電期間Dとは、ほぼ同じ長さである。また、図2の破線は、電流波形の最大振幅を繋いだ包絡線を示し、通電切替タイミング毎に、同じような電流波形が繰り返される。
図3は、本実施形態のモータ駆動制御装置1の電源電流波形図であり、図2の比較例の電源電流波形図に対応している。図3の縦軸は、図1の電流Iの電流波形を示し、横軸は、時刻を示している。
図3の符号A,Bは、本実施形態の進角/遅角調整による通電切替タイミングを示している。
本実施形態は、(n/2)次成分の電源電流を増大させ、n次成分の電源電流を低減する。ここでは、18次成分を低減するために、9次成分を含ませる通電切替を行う場合を例に採る。
9次成分を含ませるようにするために、通電切換時、2回に1回電流の振幅を大きくするような通電切替にする。一例として、通電切替時の進角と遅角とを所定パターン(例えば、交互)で繰り返して調整する。具体的には、以下の制御を行う。
(1) 図3に示すように、通電切替タイミングAでは、通常より遅く通電を切り替える遅角制御を行う。
(2) 図3に示すように、通電切替タイミングBでは、通常より早く通電を切り替える進角制御を行う。
(3) 上記(1)(2)の進角/遅角調整は、所定パターン(ここでは、交互)で繰り返す。すなわち、上記(1)の通電切替タイミングAでの遅角分を、次の通電切替タイミングBでの進角分で相殺する。このため、ロータの1回転あたりの通電切替でみると、進角/遅角の影響はない。
具体的には、図3に示すように、通電切替タイミングA,B間の通電期間Eと、通電切替タイミングB,A間の通電期間Fとは、異なる長さである。通電期間Eは、通常時よりも短く、通電期間Dは、通常時より長くなり、通電期間Eと通電期間Fとの合計は通常の通電切替2回分の期間と同じにすることで、ロータの1回転あたりでは、進角/遅角の影響がなくなる。
ステップS101において、制御部4は、モータ20(図1参照)の実回転速度が所定の回転速度範囲にあるか否かを判定する。所定の回転速度範囲は、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む。モータ20の回転速度は、回転位置算出部41(図1参照)が、回転位置検出回路5からの回転位置情報(相電圧V1、V2、V3)に対応した位置検出信号S1を生成し、回転速度算出部42が位置検出信号S1を基に回転速度を算出し、回転速度情報S2を生成することで算出する。さらに、目標回転速度測定部45が外部から目標回転速度情報Scを入力して、目標回転速度を測定し、目標回転速度に対応した目標回転速度信号Stを通電信号生成部44に出力する。
ステップS102で、通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度以上か否かを判定する。これにより通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度の許容範囲(例えば、目標回転速度の98%以上)に達しているかを判定できる。なお、許容範囲(98%)は一例であり、限定されない。
ステップS103で、通電信号生成部44は、駆動制御信号S4の設定デューティが最大値の誤差範囲(例えば、デューティ100%から98%の間)であるか否かを判定する。なお、誤差範囲(デューティ100%から98%)は一例であり、限定されない。
設定デューティが最大値の誤差範囲を外れているならば(ステップS103→NO)、制御部4は、ステップS104の処理に進み、進角/遅角調整を行う。設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば(ステップS103→YES)、制御部4は、通常の通電制御を行い(ステップS105)、その後、ステップS106の処理に進む。
進角/遅角調整は、切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する。以下、例示する。
<進角/遅角調整例1>
図5(a)に示すように、ステップS11において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS12において、通電調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時の進角と遅角を交互に行う。
これにより、(n/2)次成分の電源電流を増大させてn次成分の電源電流を低減させることができる。例えば、9次成分の電源電流を増大させて18次成分の電源電流を低減させる。
図5(b)に示すように、ステップS21において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS22において、通電調整部43が、通電切替の進角と遅角を所定パターンで繰り返す。
これにより、ロータの1回転あたりの通電切替回数nにとしたときのn次成分の電源電流を低減させることができる。
図6の符号aに示すように、比較例では、ロータの1回転につき18回の通電切替に伴い18次成分が発生する。上述したように、この18次成分は、モータ20の固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となる。
本実施形態では、通電切替時の進角と遅角を交互に行うことで、9次成分を増大させて18次成分を低減させる。
図6の破線での囲み領域で示すように、本実施形態では、18次成分に相当する周波数範囲(3200Hz〜4200Hz)における電流値を抑制している(図6の符号b参照)。図6では、所定の回転速度範囲(上記の周波数範囲に対応する回転速度10667rpm〜14000rpmを含む範囲)の区間において、通電制御(進角/遅角調整)を行うことで、モータ20の固有値と18次成分との共振を回避している。
ただし、図6の符号cに示すように、本実施形態では、9次成分が増大することになる。しかし、この9次成分は、モータ20の固有値(固有振動数)と共振しないので電磁振動成分が生じることはない。また、9次成分近傍の周波数領域は、電流値も小さいので系への影響はない。
モータ20の固有値(固有振動数)は、測定により既知であるとする。この固有振動数と共振することで大きな電磁振動成分が生じることになる。図6の場合、共振点(電磁振動成分)が3200[Hz]から4200[Hz]の間にある。それをそれぞれ回転速度に換算すると、3200[Hz]×60÷18=10667[rpm]、4200[Hz]×60÷18=14000[rpm]となる。
すなわち、n次成分の周波数範囲がf1[Hz]〜f2[Hz]に対応する回転速度範囲の下限Rmin[rpm]と上限Rmax[rpm]は、それぞれ、(f1×60÷n)[rpm]、(f2×60÷n)[rpm]となる。
そして、所定の回転速度範囲は、少なくともn次成分に対応する回転速度範囲を含む、すなわち、n次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含むように設定される。
図7の破線で囲んだ18次成分に対応する電磁振動成分の周波数範囲では、振動ピーク値が50%以上低減できるという、大きな振動低減効果が得られた。
また、設定デューティが最大値の誤差範囲内のときには、通電調整信号S3の出力を中止するようにすることで、加速中あるいはまだ、余力がある場合は、通常通電制御を継続することができる。
これにより、安価な構成でありながら、所定の回転速度範囲で生じるモータ固有振動数との共振が回避され、モータ20の振動およびそれに伴う騒音を低減することが可能なモータ駆動制御装置1を提供することが可能となる。
第2の実施形態におけるモータ駆動制御装置1の回路構成は、図1と同様である。ただし、図1の制御部4および通電調整部43は、下記の通電制御(オーバーラップ通電制御)を実行する。本実施形態の通電制御は、第1の実施形態の通電制御(進角遅角調整制御)に代えて実施してもよいし、両者を併用してもよい。
通電信号生成部44は、位置検出信号S1と回転速度情報S2と通電調整信号S3と目標回転速度信号St(目標回転速度に対応した信号の一例)を入力して、駆動制御信号S4を生成する。
制御部4は、モータ20の実回転速度が所定の回転速度範囲内ならば、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)をプリドライブ回路3に出力する。本発明では、1回転当たりを1周期として1回発生する現象を1次成分としてとらえ、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する周期をn次成分と定義し、所定の回転速度範囲は、このn次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含む。
制御部4は、ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分の電源電流Iを低減するように、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を出力する。その結果、モータ駆動制御装置1は、(n/2)次成分の電源電流Iは増大するが、n次成分の電源電流Iが低減する。
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
一般的に、モータを効率的に駆動させるためには、電源電流Iの波形をムラ無く均一に統一することを目指す。しかし、電源電流Iの波形をムラ無く均一に統一すると、通電タイミングをきっちりと揃えることになり、結果として、ある一定の回転次数成分を生み出すこととなる。
例えば、4極6スロットのブラシレスモータであれば、1回転につき12回の通電切替が発生する。このため、電源電流Iの波形をFFT(Fast Fourier Transform)により分析すると、理想的には12次成分のみが発生する。この12次成分が、モータ20の固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となってしまう。
例えば、4極6スロットのブラシレスモータであれば、制御部4は、12次成分がモータ20の固有値と共振してしまう特定の回転速度領域で、通電切替タイミング毎に、オーバーラップ通電を交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)をモータ駆動部に出力し、通電波形を制御する。これにより、12次成分の半分の周波数の6次成分の電源電流Iが増加する。6次成分の電源電流Iが増加する一方、12次成分の電源電流Iが抑制される。これにより、モータ20の固有振動数との共振を回避することができる。
図8(a),(b)は、比較例における駆動波形を示す図である。
図8(a)は、オーバーラップ無しの駆動波形を示している。
波形UHは駆動信号Vuuを示し、波形VHは駆動信号Vvuを示し、波形WHは駆動信号Vwuを示している。これら3つの駆動信号の波形UH,VH,WHは、重複することなく順番にHレベルを繰り返す。
また、波形ULは駆動信号Vulを示し、波形VLは駆動信号Vvlを示し、波形WLは駆動信号Vwlを示している。これら3つの駆動信号の波形UL,VL,WLは、重複することなく順番にHレベルを繰り返す。
次いで波形VLがLレベルに、波形WLがHレベルになり、直流電源Vdからスイッチング素子Q1、コイルLu,Lw、スイッチング素子Q6を介してグランドに電源電流Iが流れる。
次いで波形UHがLレベルに、波形WHがHレベルになり、直流電源Vdからスイッチング素子Q3、コイルLv,Lw、スイッチング素子Q6を介してグランドに電源電流Iが流れる。
次いで波形VHがLレベルに、波形WHがHレベルになり、直流電源Vdからスイッチング素子Q5、コイルLw,Lu、スイッチング素子Q2を介してグランドに電源電流Iが流れる。
次いで波形ULがLレベルに、波形VLがHレベルになり、直流電源Vdからスイッチング素子Q5、コイルLw,Lv、スイッチング素子Q4を介してグランドに電源電流Iが流れる。
以下同様にスイッチング素子Q1〜Q6がオンとオフとを繰り返すことにより、モータ20が回転する。このようなスイッチング素子Q1〜Q6のオンとオフとは、モータ20の12次成分の電源電流Iを増加させてしまう。
波形UH,VH,WHは重複しつつ順番にHレベルを繰り返す。波形UL,VL,WHLは、重複しつつ順番にHレベルを繰り返す。
当初、波形UH,VLがHレベルとなり、直流電源Vdからスイッチング素子Q1、コイルLu,Lv、スイッチング素子Q4を介してグランドに電源電流Iが流れる。
以下同様にスイッチング素子Q1〜Q6がオンとオフとを繰り返すことにより、モータ20が回転する。このようにモータ駆動制御装置1は、スイッチング素子Q1〜Q6のオンとオフに同期してオーバーラップ通電することにより、モータ20の12次成分の電源電流Iを増加させてしまう。
次に、本実施形態のモータ駆動制御装置1の動作について説明する。
図9(a),(b)は、本実施形態における駆動波形を示す図である。
図9(a)に示した駆動波形は、波形UL,VL,WLの立ち下がり時(言い換えると、下アーム側のスイッチング素子Q2,Q4,Q6の通電期間の終了時)のみ、期間t1に亘ってオーバーラップ通電している。つまり、制御部4は、通電切替時のオーバーラップ通電動作の実施と停止とを交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)をプリドライブ回路3に出力する。このようなオーバーラップ通電動作により、モータ20の6次成分の電源電流Iを増加させ、代わりに12次成分の電源電流Iを減少させることができる。
この電源電流Iは、小さな振幅と大きな振幅とが交互に現れている。時刻taの小さな振幅は、オーバーラップ通電時の電流値である。時刻tbの大きな振幅は、オーバーラップ通電を停止しているときの電流値である。このように制御部4は、通電切替時の2回ごとに1回、モータ駆動部にオーバーラップ通電を停止させて、停止時に電源電流Iの振幅を大きくするようにする。つまり、オーバーラップ通電を行うと通電切替時の電源電流Iの振幅を抑える効果があるが、それを2回に1回やめさせることで、2回に1回ごとに電源電流Iの振幅が大きくなる。このように通電切替時の電源電流Iの波形をコントロールすることで、6次成分を増加させ、12次成分を低減させることができる。
ステップS102で通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度以上か否かを判定する。これにより通電信号生成部44は、実回転速度が目標回転速度の許容範囲(例えば、目標回転速度の98%以上)に達しているかを判定できる。なお、許容範囲(98%)は一例であり、限定されない。
ステップS103で通電信号生成部44は、駆動制御信号S4の設定デューティが最大値の誤差範囲(例えば、デューティ100%から98%の間)であるか否かを判定する。なお、誤差範囲(デューティ100%から98%)は一例であり、限定されない。
設定デューティが最大値の誤差範囲を外れているならば(ステップS103→NO)、制御部4は、ステップS201の処理に進み、オーバーラップ通電調整を行う。設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば(ステップS103→YES)、制御部4は、通常の通電制御を行い(ステップS105)、その後、ステップS106の処理に進む。
オーバーラップ通電制御は、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを所定パターンで繰り返して調整するものであり、以下、例示する。
《本実施形態》
図12(a)に示すように、ステップS31において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS32において、通電調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止を交互に繰り返す。具体的に言うと、制御部4における通電信号生成部44は、回転位置算出部41から出力される位置検出信号S1と通電調整部43から出力される通電調整信号S3を入力して、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止を交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を生成して、プリドライブ回路3に出力する。
これにより、モータ駆動制御装置1は、(n/2)次成分の電源電流Iを増大させてn次成分の電源電流Iを低減させることができる。例えば、6次成分の電源電流Iを増大させて12次成分の電源電流Iを低減させる。
図12(b)に示すように、ステップS41において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS42において、通電調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを所定パターンで繰り返すように制御する。具体的に言うと、制御部4における通電信号生成部44は、回転位置算出部41から出力される位置検出信号S1と通電調整部43から出力される通電調整信号S3を入力して、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止を所定パターンで繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を生成して、プリドライブ回路3に出力する。所定パターンとは、例えば、1回の実施と3回の停止とを繰り返すパターンや、3回の実施と1回の停止とを繰り返すパターンなどをいうが、これらには限定されない。
これによっても、ロータの1回転あたりの通電切替回数をnとしたときのn次成分の電源電流Iを低減させることができる。
図13は、4極6スロットのブラシレスモータにて回転速度をスイープさせて取得した電源電流Iの波形のFFTグラフの概念を示す。図13の縦軸は、図1の電源電流Iの電流値を示し、横軸は、周波数を示している。図13の実線は、本実施形態の電流波形のFFTグラフを、破線は、比較例の電流波形のFFTグラフを示している。
図13のFFTグラフに示すように、比較例では、ロータの1回転につき12回の通電切替に伴い12次成分の電源電流Iが発生する。上述したように、この12次成分の電源電流Iは、モータ20の固有値(固有振動数)と共振することで大きな電磁振動成分となる。
本実施形態では、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを交互に繰り返すことで、6次成分の電源電流Iを増大させて12次成分の電源電流Iを低減させる。
図13の破線での囲み領域で示すように、本実施形態のモータ駆動制御装置1では、12次成分に相当する周波数範囲における電流値を抑制している。図13では、所定の回転速度範囲の区間において、通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを交互に繰り返すことで、モータ20の固有値と12次成分との共振を回避している。
ただし、図12に示すように、本実施形態のモータ駆動制御装置1では、6次成分が増大することになる。しかし、この6次成分は、モータ20の固有値(固有振動数)と共振しないので電磁振動成分が生じることはない。また、6次成分近傍の周波数領域は、電流値も小さいので系への影響はない。
モータ20の固有値(固有振動数)は、測定により既知であるとする。この固有振動数と共振することで大きな電磁振動成分が生じることになる。図13の場合、共振点(電磁振動成分)がf1[Hz]からf2[Hz]の間にある。これらをそれぞれ回転速度に換算すると、f1[Hz]×60÷12=5×f1[rpm]、f2[Hz]×60÷12=5×f2[rpm]となる。
すなわち、n次成分の周波数範囲がf1[Hz]〜f2[Hz]に対応する回転速度範囲の下限Rmin[rpm]と上限Rmax[rpm]は、それぞれ、(f1×60÷n)[rpm]、(f2×60÷n)[rpm]となる。
そして、所定の回転速度範囲は、少なくともn次成分に対応する回転速度範囲を含む、すなわち、n次成分とモータ20の固有共振周波数とが共振現象を生じる範囲を含むように設定される。
図14(a)では、制御部4は、通電切替時調整として、通電切替時のオーバーラップ通電にて異なる所定動作を所定パターンで繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1駆動信号)をプリドライブ回路3に出力する。
図14(a)に示した第2変形例の駆動波形は、波形UH,VH,WHの立ち下がり時には、期間t2に亘ってオーバーラップ通電しており、波形UL,VL,WLの立ち下がり時には、期間t1に亘ってオーバーラップ通電していることを示している。
つまり、制御部4は、通電切替時に、期間t2のオーバーラップ通電と期間t1のオーバーラップ通電とを交互に繰り返すように制御している。制御部4が期間t2は期間t1よりも短期間とすることで、期間t2のときに期間t1よりも電源電流Iの振幅を大きくしている。期間t1と期間t2の比率を適切に設定することで、通電切替の2回に1回ごとに電源電流Iの振幅を大きくすることができる。通電切替時のオーバーラップ通電にて異なる所定動作として、このような、通電期間が異なる動作を所定パターンで繰り返すオーバーラップ通電動作により、モータ駆動制御装置1は、モータ20の6次成分の電源電流Iを増加させ、代わりに12次成分の電源電流Iを減少させることができる。
スイッチング有りのオーバーラップ通電期間において、スイッチングパルスのオンデューティおよびスイッチング周波数は適宜設定される。この結果、制御部4は、スイッチング有りの期間はスイッチング無しの期間よりも電源電流Iの振幅を小さくすることができ、通電切替の2回に1回ごとに電源電流Iの振幅を大きくすることができる。
以上のように、制御部4が駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を出力することにより、通電切替時のオーバーラップ通電にて所定パターンで繰り返す異なる所定動作には、オーバーラップ通電期間がそれぞれ異なる動作、または/およびオーバーラップ通電中のスイッチングの有無の動作を含む。このようなオーバーラップ通電動作により、モータ駆動制御装置1は、モータ20の6次成分の電源電流Iを増加させ、代わりに12次成分の電源電流Iを減少させることができる。
図15(a)に示すように、ステップS51において、回転位置算出部41がロータの回転位置を算出する。
ステップS52において、通電調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時に第1期間(期間t1)のオーバーラップ通電と第2期間(期間t2)ののオーバーラップ通電を交互に繰り返すように制御する。具体的に言うと、制御部4における通電信号生成部44は、回転位置算出部41から出力される位置検出信号S1と通電調整部13から出力される通電調整信号S3を入力して、通電切替時に第1期間(期間t1)のオーバーラップ通電と第2期間(期間t2)ののオーバーラップ通電を交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を生成して、プリドライブ回路3に出力する。よって図14(a)に示した波形が生成される。
これにより、モータ駆動制御装置1は、(n/2)次成分の電源電流Iを増大させてn次成分の電源電流Iを低減させることができる。モータ駆動制御装置1は、例えば、6次成分の電源電流Iを増大させて12次成分の電源電流Iを低減させる。
ステップS62において、通電調整部43が、ロータの回転位置を基に、通電切替時のオーバーラップ通電動作にてスイッチングの有無を交互に繰り返すように制御する。具体的に言うと、制御部4における通電信号生成部44は、回転位置算出部41から出力される位置検出信号S1と通電調整部13から出力される通電調整信号S3を入力して、通電切替時のオーバーラップ通電動作にてスイッチングの有無を交互に繰り返すように制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を生成して、プリドライブ回路3に出力する。よって図14(b)に示した波形が生成される。
これにより、モータ駆動制御装置1は、ロータの1回転あたりの通電切替回数をnとしたときのn次成分の電源電流Iを低減させることができる。
特に、実回転速度を目標回転速度より低い所定の回転速度以上には制御できない(設定デューティが上限値であり、余力が無いという意味合いを含む)と判断された場合は、通電調整信号S3の出力を中止(通電切替時調整を中止)することで、通常の通電制御により実回転速度を目標回転速度まで近づける(到達する)ように制御することができる。
本実施形態では、制御部4は、モータ20の実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度以上であれば、通電切替時調整を制御する駆動制御信号S4(第1の駆動制御信号)を出力して、上記オーバーラップ通電動作を維持する。一方で、モータ20の実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度未満かつ設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば、通電切替時調整は行わず、定常の通電切替を制御する駆動制御信号S4(第2の駆動制御信号)を出力する。これにより、実回転速度を目標回転速度まで近づけた上で、所定の回転速度範囲でのモータの固有振動数との共振を回避することができる。
以上により、第1の実施形態と同様に、所定の回転速度範囲で生じるモータ固有振動数との共振を回避できるとともに、所望の回転速度を確保できるモータ駆動制御装置1を提供することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)〜(l)のようなものがある。
(b)所定の回転速度範囲は、使用するモータの固有振動数との共振点によって、適宜、適切に設定されるべきものであり、一義的に限定されるものではない。第1の実施形態は、通電切替時、強制的に進角、遅角を所定パターンで繰り返すところに特徴がある。また、第2の実施形態は、通電切替時にオーバーラップ通電動作を所定パターンで繰り返すところに特徴がある。したがって、どのような回転速度範囲でも適用可能である。
(c) 駆動制御装置の各構成要素は、少なくともその一部がハードウェアによる処理ではなく、ソフトウェアによる処理であってもよい。
(d) 本実施形態では、モータ20は、6極9スロットのブラシレスモータとして説明したが、4極6スロットのブラシレスモータなど、磁極数、スロット数、モータの種類は特に限定されない。また、モータ20の相数も特に限定されない。
(e) 回転位置検出回路は、本実施形態(逆起電圧の検出回路)に限定されず、例えばホールセンサなどであってもよい。回転位置情報も相電圧に限定されない。
(f) 駆動制御装置は、少なくともその一部を集積回路(IC:Integrated Circuit)としてもよい。
(h) 図4、図5、図11、図12や図15に示した制御フローは一例であって、これらのステップの処理に限定されるものではなく、例えば、各ステップ間に他の処理が挿入されてもよい。
(i) オーバーラップ量(時間)は、適切な値になるように、任意に調整してもよい。
(j) 本発明は、120度通電動作に限定されない。
(k) オーバーラップ時間の変更とスイッチングの有無とを組み合わせてもよい。
(l) 図14に示した変形例において、上アーム側と下アーム側の動作は入れ替えてもよい。
Claims (13)
- モータの各相に電圧を印加して駆動するモータ駆動部と、
ロータの回転位置を検出して、回転位置情報を生成する回転位置検出回路と、
前記モータ駆動部の駆動を制御する駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記駆動制御信号として、
前記モータの実回転速度が目標回転速度よりも低い所定の回転速度以上ならば、前記回転位置検出回路によって検出された前記回転位置情報に基づいて、前記モータの固有振動数と前記モータの回転成分との共振を低減するための通電切替時調整を制御する第1の駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力し、
前記実回転速度が前記所定の回転速度未満かつ設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば、前記通電切替時調整は行わず、定常の通電切替を制御する第2の駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する、
ことを特徴とするモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記駆動制御信号の設定デューティが最大値の誤差範囲を外れているならば、前記第1の駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記所定の回転速度は、所定の回転速度範囲に含まれる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記モータの回転成分とは前記ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応するn次成分であって、
前記所定の回転速度範囲は、前記ロータの1回転あたりの通電切替回数nに対応する前記n次成分と前記モータの固有振動数とが共振現象を生じる範囲を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記n次成分の電源電流を低減するように前記第1の駆動制御信号を出力する、
ことを特徴とする請求項4に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、(n/2)次成分の電源電流を増大させて前記n次成分の電源電流を低減する、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記第1の駆動制御信号として、通電切替時の進角と遅角とを所定パターンで繰り返して調整する前記通電切替時調整を行う駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記通電切替時調整として、前記モータ駆動部が通電切替時の進角と遅角を交互に行うように制御する、
ことを特徴とする請求項7に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記第1の駆動制御信号として、通電切替時のオーバーラップ通電動作を所定パターンで繰り返して調整する前記通電切替時調整を行う前記駆動制御信号を前記モータ駆動部に出力する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、前記通電切替時調整として、前記通電切替時のオーバーラップ通電の実施と停止とを交互に繰り返すように制御する前記駆動制御信号を出力する、
ことを特徴とする請求項9に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、通電切替時のオーバーラップ通電にて異なる所定動作を所定パターンで繰り返すように制御する前記駆動制御信号を出力する、
ことを特徴とする請求項9に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記異なる所定動作には、オーバーラップ通電期間がそれぞれ異なる動作、または/およびオーバーラップ通電中のスイッチングの有無の動作を含む、
ことを特徴とする請求項11に記載のモータ駆動制御装置。 - 前記制御部は、
前記回転位置情報に対応した信号を基に、実回転速度を算出する回転速度算出部と、
前記回転速度算出部から出力される実回転速度が前記目標回転速度よりも低い前記所定の回転速度以上ならば、前記通電切替時調整を行うための通電調整信号を出力し、前記実回転速度が前記所定の回転速度未満かつ設定デューティが最大値の誤差範囲内ならば、前記通電調整信号を出力しない通電調整部と、
前記回転位置情報に対応した信号と前記実回転速度と前記通電調整信号と前記目標回転速度に対応した信号とに基づき、前記第1の駆動制御信号または前記第2の駆動制御信号を生成して前記モータ駆動部に出力する通電信号生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置。
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